(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178374
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】制流弁の開弁方法
(51)【国際特許分類】
F16K 3/02 20060101AFI20231207BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
F16K3/02 F
F16L55/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177745
(22)【出願日】2023-10-13
(62)【分割の表示】P 2022504578の分割
【原出願日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2020205370
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】中里 謙介
(57)【要約】
【課題】弁体の開弁操作が簡便な制流弁の開弁方法を提供する。
【解決手段】流体管1を密封状態で外嵌する筐体5と、流体管1内の流体を密封状に遮断若しくは開放可能な弁体211,411,511とを備え、流体を制御する制流弁200,400,500の開弁方法であって、弁体211,411,511の遮断状態で、弁体211,411,511を挟む流体管1内の管軸方向一方側と他方側との差圧を小さくする調圧ステップと、弁体211,411,511を開放する開弁ステップとを有する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管を密封状態で外嵌する筐体と、前記筐体内にて前記流体管内の流体を密封状に遮断若しくは開放可能な弁体とを備え、流体を制御する制流弁の開弁方法であって、
前記弁体の遮断状態で、前記弁体を挟む前記流体管内の管軸方向一方側と他方側との差圧を小さくする調圧ステップと、前記弁体を開放する開弁ステップとを有することを特徴とする制流弁の開弁方法。
【請求項2】
前記調圧ステップは、前記弁体を挟む前記流体管内の管軸方向一方側若しくは他方側に連通して形成された注入口より流体を充填することを特徴とする請求項1に記載の制流弁の開弁方法。
【請求項3】
前記調圧ステップは、前記弁体を挟む前記流体管内の管軸方向一方側若しくは他方側に連通して形成された空気抜き口より空気を抜きながら、前記注入口より流体を充填することを特徴とする請求項2に記載の制流弁の開弁方法。
【請求項4】
前記調圧ステップは、前記弁体を挟む前記流体管内の管軸方向一方側の流体を管軸方向他方側に充填することを特徴とする請求項1に記載の制流弁の開弁方法。
【請求項5】
前記調圧ステップは、前記弁体を挟む前記流体管内の管軸方向一方側及び他方側を連通するバイパス路を通じて、流体を充填することを特徴とする請求項4に記載の制流弁の開弁方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内流体を制御する制流弁の開弁方法及びそれに用いられる制流弁に関する。
【背景技術】
【0002】
水やガス等が流れる既設の管路を構成する流体管は、経年劣化の対処や新たな分岐路を形成する際に、既設の流体管の一部を新たな流体管に変更したり、経年劣化した管路を遮断したりする場合がある。このような場合の一例として、既設の流体管の管軸方向に離間して2つの制流弁を取付け、各制流弁の弁体により流体管の所定区間の流体の流れを遮断するとともに、所定区間を挟む両側(上流側と下流側)をバイパス管で迂回して連通させ、バイパス管により流体管内の流体の流れを止めずに、所定区間の一部を新たな流体管に交換する不断流工法が一般的に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1の制流弁は、流体管の外周面に密封状に取付けられる筐体と、筐体の分岐部に密封状に接続されるケースと、ケース内に予め収容され流体管に向けて進退可能な弁体と、を備えている。また、ケースには切削工具が挿通可能な作業孔が形成されており、作業孔を介してケース内に挿通された切削工具を外部から操作することで流体管に孔部を形成できるようになっている。弁体は、ネジ操作により流体管に対して進退する弁本体部と、弁本体の外面に設けられるシール部と、を備えている。この制流弁は、流体管に孔部を形成した後、ネジ操作により弁体を流体管に向けて進行させることで、該弁体が孔部に挿通され、シール部が孔部の内周面及び流体管の内周面に押し付けられることで、流体管内の流体の流れを遮断できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-266273号公報(第3頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の制流弁にあっては、既設の流体管の管軸方向に離間して取付けられた2つの制流弁の間の所定区間の管内流体を排出した状態で、新たな流体管への交換作業を簡便に行うことができるようになっている。しかしながら、管軸方向に所定区間を挟む各制流弁の弁体には、当該所定区間の外側に管内流体が存在し、一方で所定区間の内側に管内流体よりも低圧の大気が存在している。したがって、制流弁の弁体は、流体管路内の流体圧により管軸方向一方側(所定区間の内側)に向けて押圧された状態となるため、該弁体の開弁時には、弁体が流体圧などによって傾く傾向にあり、孔部の内周面と、該孔部の内周面に接触するシール部とが過剰に圧接され、それらの摩擦力により弁体の開弁操作が困難になる虞があった。特に、0.75MPa以上の高圧の場合や流速が速い場合などは、弁体の開弁操作が顕著に困難になる虞があった。また孔部をエンドミルやホールソーなどの切削工具で形成した際には、孔部に形成された切削バリに弁体のシール部が押圧され、強制的な開弁操作でシール部を破損する虞もあった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、弁体の開弁操作が簡便な制流弁の開弁方法及びそれに用いられる制流弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の制流弁の開弁方法は、
流体管を密封状態で外嵌する筐体と、前記筐体内にて形成された前記流体管の孔部の内周面及び前記流体管の内周面に接触して該流体管内の流体を密封状に遮断若しくは開放可能な弁体とを備え、流体を制御する制流弁の開弁方法であって、
前記弁体の遮断状態で、前記弁体を挟む前記流体管内の管軸方向一方側と他方側との差圧を小さくする調圧ステップと、前記弁体を開放する開弁ステップとを有することを特徴としている。
この特徴によれば、弁体の管軸方向一方側と他方側との差圧を小さくした状態で弁体を開弁するため、弁体が流体管を流れる流体の圧力により孔部の内周面と過剰に圧接されることが回避され、弁体を簡便に開弁操作することができる。
【0008】
前記調圧ステップは、前記弁体を挟む前記流体管内の管軸方向一方側の流体を管軸方向他方側に充填することを特徴としている。
この特徴によれば、弁体を挟む流体管内の管軸方向一方側と他方側に流体管内の同じ流体が充填されるため、弁体の管軸方向一方側と他方側とを同圧に調整しやすい。
【0009】
前記弁体は、前記流体管に対して進退可能な弁本体部と、前記弁本体部の外面に設けられるシール部と、前記弁本体部に対して相対移動可能な移動部とを備え、前記移動部は、閉弁位置に配置される前記弁本体部に対し相対移動することで前記シール部を拡張可能となっており、
前記開弁ステップは、前記移動部を開弁方向に移動させる第1ステップと、前記移動部とともに前記弁本体部を開弁方向に移動させる第2ステップと、を有し、
前記第1ステップをトリガーとして前記調圧ステップが開始されることを特徴としている。
この特徴によれば、移動部とともに弁本体部を開弁方向に移動させる第2ステップが行われる前に調圧ステップが開始されるので、第2ステップが行われる際には弁体の管軸方向一方側と他方側との差圧を確実に小さくすることができる。(また、弁体の管軸方向一方側と他方側との差圧を短時間で小さくすることができる。)
【0010】
本発明の制流弁は、
流体管に密封状態で外嵌される筐体と、前記流体管に対して進退可能な弁本体部、及び前記弁本体部の外面に設けられるシール部を有する弁体と、を少なくとも備え、前記筐体内にて形成された前記流体管の孔部の内周面及び前記流体管の内周面に前記シール部が密封状に接触して前記流体管内の流体を遮断若しくは開放可能であり、流体を制御する制流弁であって、
前記弁本体部は、中空形状を成し、管軸方向一方側に連通する第1連通孔と、管軸方向他方側に連通する第2連通孔と、が設けられ、
前記弁体は、前記第1連通孔と前記第2連通孔とを連通状態または非連通状態に切り換える切換手段を有することを特徴としている。
この特徴によれば、弁体の閉弁時には、切換手段により第1連通孔と第2連通孔とを非連通状態とすることで流体管内の流体の流れを遮断することができるとともに、弁体の開弁時には、切換手段により第1連通孔と第2連通孔とを連通状態とすることで弁体の管軸方向両側の差圧を小さくすることができるため、弁体を簡便に開弁操作することができる。
【0011】
前記弁体は、前記弁本体部に対して相対移動可能な移動部を更に備え、前記移動部は、閉弁位置に配置される前記弁本体部に対し相対移動することで前記シール部を拡張可能となっており、
前記切換手段は、前記移動部に設けられ、前記第1連通孔または前記第2連通孔の少なくとも一方を開閉可能な栓部であることを特徴としている。
この特徴によれば、弁体の閉弁時には、移動部及び弁本体部を流体管に向けて進行させ、シール部が流体管の内周面に当接した後、さらに移動部を進行させシール部を拡張させて流体管内の流体の流れを遮断したときに、第1連通孔または第2連通孔の少なくとも一方を栓部により閉塞することができる。また、弁体の開弁時には、弁本体部及びシール部が閉弁状態を保ちながら移動部のみを退避させ、第1連通孔及び第2連通孔を栓部により開放することができるので、弁体の管軸方向両側の差圧を小さくすることができる。
【0012】
前記栓部は、前記移動部の進行方向側に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、移動部の進行方向側に栓部が設けられているため、移動部の移動力を栓部の閉塞方向に伝えやすく、第1連通孔または第2連通孔の少なくとも一方を確実に閉塞することができる。
【0013】
前記移動部には、前記第1連通孔を開閉可能な第1栓部と、前記第2連通孔を開閉可能な第2栓部と、が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、第1栓部及び第2栓部により第1連通孔及び第2連通孔をともに閉塞できるので、第1連通孔と第2連通孔とを確実に非連通状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1における既設の管路を構成する流体管の任意の箇所を不断流状態で新たな流体管に交換する工程の一例を示す概略図である。
【
図2】(a)は実施例1における流体管を外嵌した筐体を示す一部断面正面図、(b)は同じく一部断面側面図、(c)は同じく一部断面平面図である。
【
図3】実施例1における穿孔機により流体管を穿孔している状況を示す正面断面図である。
【
図4】排出機により切り粉を排出している状況を示す一部断面斜視図である。
【
図5】作業弁体で仕切られた筐体に制流弁を収容した挿入機を取付けた状況を示す一部断面斜視図である。
【
図6】(a)は挿入機により制流弁を挿入している状況を示す正面断面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図7】挿入機により制流弁の設置が完了した状況を示す正面断面図である。
【
図8】(a)~(c)は挿入機を制流弁から取外す手順を示す概略図である。
【
図9】実施例1における制流弁の開弁状態及び閉弁状態を示す概略側断面図である。
【
図11】閉弁状態の制流弁を示す正面断面図である。
【
図12】
図11の状況から開弁ステップの第1ステップを行った状況を示す正面断面図である。
【
図13】本発明の変形例1を示す概略側断面図である。
【
図14】本発明の変形例2を示す正面断面図である。
【
図15】本発明の変形例3を示す正面断面図である。
【
図16】本発明の変形例4を示す一部断面正面図である。
【
図17】本発明の変形例5を示す一部断面正面図である。
【
図18】本発明の実施例2における流体管を外嵌した筐体を示す側面断面図である。
【
図19】実施例2における穿孔機により流体管を穿孔している状況を示す側面断面図である。
【
図20】穿孔機により流体管の穿孔が完了した状況を示す一部断面正面図である。
【
図21】実施例2における制流弁の開弁状態及び閉弁状態を示す概略側断面図である。
【
図23】実施例2における制流弁の開弁状態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る制流弁における弁体の開弁方法及びそれに用いられる制流弁を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
実施例1に係る制流弁の開弁方法及びそれに用いられる制流弁につき、
図1から
図12を参照して説明する。
【0017】
本実施例の制流弁10は、例えば、既設の管路を構成する流体管1の任意の箇所を不断流状態で新たな流体管1Aに交換する工事に用いられるものである。先ず、流体管1の任意の箇所を不断流状態で新たな流体管1Aに交換する工事の一例について概略的に説明する。尚、ここでは説明の便宜上、
図1の紙面左側を工事前の管路の上流側、紙面右側を下流側として説明するが、これに限らず本発明の制流弁は、例えば網状に配設された管路で上流側及び下流側が明確に区別できない管路にも適用可能である。
【0018】
図1(a)に示されるように、先ず、流体管1における新たな流体管1Aへの交換予定部分を挟む上流側及び下流側に制流弁10,10’を外嵌して設置する。次いで、流体管1における上流側の制流弁10よりも上流側の部位1aと、下流側の制流弁10’よりも下流側の部位1bと、に分岐筐体2,2’を外嵌し、分岐筐体2,2’をバイパス管19により連通する。
【0019】
分岐筐体2,2’は、流体管1の部位1a,1bをそれぞれ密封状に囲繞している。また、流体管1の部位1a,1bには、分岐筐体2,2’に連通する図示しない開口部がそれぞれ周知の不断流分岐工法などによって形成されており、流体管1を流れる流体の一部は、部位1aの開口部から分岐筐体2、バイパス管19、分岐筐体2’、部位1bに流れるようになっている。
【0020】
次いで、
図1(b)に示されるように、制流弁10,10’の後述する弁体11,11’を閉弁して、制流弁10,10’の間の所定区間Sの流体の流れを遮断するとともに、流体管1における所定区間Sの一部を図示しない切断手段で切断する。ここで遮断とは、所定区間Sでの工事が可能な程度の遮断状態を含むものとする。
【0021】
次いで、
図1(c)に示されるように、所定区間Sの切断箇所に新たな流体管1Aを密封状に接続配置する。その後、制流弁10,10’の弁体11,11’を開弁して、所定区間S内に流体を流すとともに、分岐筐体2,2’とバイパス管19との間に配置される図示しない弁を閉塞し、バイパス管19を取外すことで新たな流体管1Aへの交換作業が完了する。
【0022】
尚、流体管1内の流体は、本実施例では上水であるが、例えば、工業用水、農業用水、下水等の他、水以外の液体でも良いし、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。また、本実施例の制流弁10は、新たな流体管1Aに交換する際に用いられることに限られず、流体管1の流体の流れを制御する弁装置や、流体管1とは異なる方向に分岐させる分岐管を配置する場合に用いられてもよい。
【0023】
本実施例の流体管1は、比較的大口径(例えば口径200mm以上)のダクタイル鋳鉄管であって、
図2に示されるように、断面視略円形状の直管に形成されている。本実施例では、流体管1の管路方向は略水平方向に配設されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、管路方向は略鉛直、若しくは斜めに配設されていてもよい。
【0024】
ここで本発明の流体管とは、本実施例のように直管に限られず、例えば異形管で構成されてもよい。ここで異形管とは、例えば曲管部や、分岐部、十字部、異径部、継ぎ輪部、短管部、排水部等の様々な異形部を少なくとも一部に有する管を総称するものである。
【0025】
次に、制流弁10の構造及びその設置について説明する。尚、制流弁10,10’は同一の構造であるため、制流弁10’の説明を省略する。
【0026】
先ず、
図2(a)~(c)に示されるように、本発明に係る制流弁10の取付箇所となる流体管1の外面を清掃した後、この流体管1の後述する穿孔部分を密封するためのシール部材を介し、制流弁10を構成する筐体5を密封状に外嵌する。筐体5は、複数の分割体からなる分割構造であり、本実施例では、上部側を構成する第1分割体51と、下部側を構成する第2分割体52とから主に構成されている。尚、筐体5の分割構造は、本実施例に限らず例えば、水平方向に分割されてもよいし、また、分割数も3分割以上の所定数に分割されてもよい。また、分割筐体同士は、本実施例では、ボルト・ナットからなる締結部材6により密封状態で接合されるものであるが、これに限らず例えば、溶接接合であっても構わない。また外嵌とは、上下方向に制流弁10の弁体11が適用される態様について説明するが、これに限らず左右方向や斜め方向に弁体が適用されるようにしてもよい。
【0027】
筐体5の第1分割体51は、流体管1に沿って管路方向に延設される管路筐体部5aと、管路筐体部5aの略中央で上下方向に分岐して延設され、上方に開口する開放端部5c、及び側方に開口する開口部5bを有する筒状の首部5dとから構成され、正面視逆T字状に形成されている。
【0028】
更に首部5dの開放端部5c側の端部には、首部5dの外径方向に突出した環状のフランジ部5eを有している。
【0029】
この首部5dの側方に開口する開口部5bは、側面視で横長の略長方形に開口しており、後述するように作業弁装置3の作業弁体31が挿通可能に形成されている。
【0030】
また首部5dの下部には、この首部5dを内外に貫通した連通開口部17が形成され、通常はこの連通開口部17に開閉プラグ18が螺着されている。
【0031】
次に、
図3に示されるように、この首部5dの開口部5bに対し作業弁装置3を密封状に接続する。作業弁装置3は、筐体5内を開閉可能にスライドする作業弁体31と、この作業弁体31を水平方向にスライド可能に収容する収容内部32a、及びその側方の一端が開放された開放部32bを有する作業弁筐体としての収容部材32とから主として構成される。
【0032】
収容部材32は、回転可能で且つ進退不能に枢支され、水平方向に延設された軸部材34を備え、この軸部材34に作業弁体31が螺合しており、この収容部材32の外方に突出した軸部材34の端部に取付けた操作部材35を回転操作することで、作業弁体31が収容部材32に対しスライド可能に構成されている。
【0033】
次に、首部5dの開放端部5cに対し穿孔機7を密封状に接続する。穿孔機7は、取付フランジ筒71と、流体管1を穿孔するためのカッタ72と、取付フランジ筒71内においてカッタ72を回転させるための駆動モータ74と、カッタ72を上下方向に進行・退避させるための進退機構73と、から主に構成されている。カッタ72は、流体管1よりも小径の有底筒状に形成され、その先端に周方向に沿って切断刃を備えたホールソー72aと、該ホールソー72aの回転軸と同軸に配設され切断刃よりも先方に突出したセンタードリル72bとから構成されている。尚、カッタ72は、筐体5の首部5dの開放端部5cと同心円状に配設され、開放端部5c側から筐体5の首部5d内に挿入され、少なくとも流体管1の管頂部の管壁を貫通する位置まで進行可能となっている。
【0034】
穿孔機7の取付手順について説明すると、取付フランジ筒71の先端に形成されたフランジ部75を、首部5dの開放端部5cのフランジ部5eに、周方向に複数の締結部材77によって締結する。
【0035】
また、首部5dのフランジ部5eの上端面と取付フランジ筒71のフランジ部75の下端面との間にはシール部材が設けられており、このシール部材が取付フランジ筒71のフランジ部75に密接することで、この締結状態で穿孔機7の取付フランジ筒71及び筐体5の首部5dは密封されている。
【0036】
なお、首部5dの開口部5bに対する作業弁装置3の接続作業と、首部5dの開放端部5cに対する穿孔機7の接続作業とは、必ずしも上記した順序に限られず、穿孔機7の接続作業を行った後に作業弁装置3の接続作業を行ってもよいし、又はこれらの接続作業を同時並行に行っても構わない。
【0037】
次に、穿孔機7による流体管1の穿孔工程を説明すると、先ず、作業弁装置3の作業弁体31を収容部材32の収容内部32aに配置させ筐体5内を開放した状態において、穿孔機7の駆動モータ74によりカッタ72を回転させるとともに、進退機構73によりカッタ72を下方に進行させ、流体管1の管頂部の管壁を不断流状態で穿孔する。
【0038】
このとき、例えば筐体5内部に連通する開口として、首部5dの側面に形成された連通開口部17(
図2参照)に取付けた図示しないボールバルブを開放することで、穿孔の際に発生する切り粉を流体とともに外部へ排出する。なお後述するように、この連通開口部17は、制流弁10の挿入時の充水のためのバイパスとして用いられる。また上記したボールバルブは、後に不断流状態で取外し、
図9で示される開閉プラグ18で密封する。
【0039】
図3に戻って、カッタ72により流体管1が切断されると、流体管1から分断された管頂部の切片1dがホールソー72a内に保持された状態となる。そして、図示しないが、カッタ72を切片1dとともに取付フランジ筒71の内部に引き上げ、作業弁装置3の作業弁体31により筐体5内部を閉塞することで、流体管1の穿孔作業が完了する。
【0040】
次に、作業弁装置3の作業弁体31により筐体5内部を密封状に閉塞した状態で、穿孔機7の撤去作業を行い、
図4に示されるように、この穿孔機7に替えて首部5dの開放端部5cに、穿孔の際に生じた切り粉を排出するための排出機8を接続する。
【0041】
図4に示されるように、排出機8は、首部5dの開放端部5cに固定的に取付けられる中央が開口した取付フランジ板81と、この取付フランジ板81の中央の開口部に接続された弾性部材からなるフレキシブル筒83と、このフレキシブル筒83の上端に接続された操作筒84と、これら取付フランジ板81,フレキシブル筒83及び操作筒84に密封状に挿通された排出管85と、から主として構成されている。排出管85の後端側は、操作筒84の外方に突出されるとともに、この排出管85内を開閉する図示しない開閉弁が接続されている。
【0042】
なお、排出機8の取付フランジ板81と首部5dの開放端部5cとは、上記した穿孔機7の取付フランジ筒71と首部5dの開放端部5cと同様に、周方向に複数の図示しない締結部材によって締結する。
【0043】
次に、排出機8による切り粉の排出工程を説明すると、排出管85の後端側に接続された開閉弁(図示略)を開状態とすることで、流体管1や筐体5内の切り粉を流体とともに排出することができる。このとき、排出管85を同軸に外嵌する操作筒84を把持して、フレキシブル筒83の弾性変形を利用し、取付フランジ板81に対し自在に傾斜することで、排出管85の先端の吸引口85aを流体管1や筐体5内の所望の位置に移動させることができるため、流体管1や筐体5内の隅々に切り粉が散在しても略全量を排出することができる。
【0044】
次に、作業弁装置3の作業弁体31により筐体5内部を閉塞した状態で、排出機8の撤去作業を行い、
図5~
図8に示されるように、この排出機8に替えて首部5dの開放端部5cに、管内流体を制御するための制流弁10を接続する。
【0045】
この制流弁10の取付けに先立ち、
図5及び
図6に示されるように、首部5dの開放端部5cに、制流弁10を上下方向に移動可能に収容した収容筒16の下端に形成されたフランジ部16aを、周方向に複数の締結部材16dによって密封状に接続する。収容筒16は、その下端が開放されるとともに、その上部が中央に貫通孔を有する閉塞蓋16bにより閉塞された有底筒状に形成されている。また閉塞蓋16bには、収容筒16の内外を連通する連通開口部27が形成され、常時はこの連通開口部27にボールバルブが螺着されている。
【0046】
収容筒16の内部には、制流弁10を筐体5に挿入するための挿入手段として、制流弁10を収容筒16の外方から上下方向に移動操作可能で且つ着脱可能に組み付けた挿入機60が設けられている。挿入機60は、収容筒16の上部の中心を上下方向に貫くように延設されており、その中心側から順に、延設棒61、操作杆62、そして挿入筒63が主として構成されている。
【0047】
より詳しくは、
図5~
図8に示されるように、延設棒61は、その下端が制流弁10の弁筐体12の上端に取付けた取付治具26に螺合する(特に
図8(a)参照)とともに、その上端が収容筒16よりも上方に延びている。この延設棒61を外嵌する操作杆62は、収容筒16を構成し閉塞蓋16bの貫通孔を被覆する上筒部16cに対し、回転可能且つ軸方向に移動不能に枢支され、その上端に回転操作用の把持部62aを備えている。更にこの操作杆62を外嵌する挿入筒63は、上筒部16cに対し回転不能且つ軸方向に移動可能に枢支され、その下端部63aが取付治具26と延設棒61の鍔部61aとで上下方向に挟持され、操作杆62の雄ネジ部62cに螺合する雌ネジ部63bを備えている。
【0048】
また
図6(b)に示されるように、この挿入筒63の下端部63aには、平面断面視で略方形状の貫通孔63cが形成されており、この貫通孔63cを補完するように平面視で略方形状に突設された取付治具26の突端部26aが貫通孔63cに内嵌している。このようにすることで、取付治具26を取付けた制流弁10が、挿入筒63に対し周方向に移動を規制される。なお、挿入筒63の貫通孔63c及びこれを補完する取付治具26の突端部26aの平面視形状は、略方形状に限られず、長方形状や楕円形状、小判形状など、非円形状であればよい。
【0049】
図5~
図7に示されるように、制流弁10は、流体管1の穿孔された孔部1cを通過し管内を開閉可能に上下動する弁体11(
図9及び
図10参照)と、この弁体11を上下方向に移動可能に収容し、且つ下端が開放された周側部13を有する弁筐体12とから主として構成される。この弁筐体12は、周側部13の下端側の外周面に全周に亘る凹部13bが形成され、この凹部13bに密封部材21が設けられている。尚、制流弁10の具体的な構造については後に詳述する。
【0050】
次に、制流弁10の設置工程について説明すると、先ず
図5に示されるように、上記したように内部に制流弁10を収容した収容筒16を筐体5の開放端部5cに密封状に接続した状態で、作業弁体31を開放するよりも前に、この作業弁体31よりも下方の筐体5の首部5dに設けられた連通開口部17と、作業弁体31よりも上方の収容筒16の閉塞蓋に設けられた連通開口部27とを接続ホース25によって連通させる。このようにすることで、流体管1内の流体がその流体圧力により、連通開口部17、接続ホース25そして連通開口部27を介し、収容筒16内に漸次導入される。
【0051】
このように、収容筒16内に流体管1内の流体を導入することで、作業弁体31を開放する前に、収容筒16内と流体管1内とを同じ圧力に調整することができる。また、収容筒16を筐体5の開放端部5cに密封状に接続し、閉塞蓋16bを開放して充水するか、収容筒16を密封状に接続した状態で連通開口部27を用いて充水してから接続ホース25で連通し、同じ圧力に調整してもよい。
【0052】
またこのとき、収容筒16の閉塞蓋16bに開閉可能に設けられた空気抜き孔28を開放することで、収容筒16内に残留する空気を外部に放出する。このようにすることで、作業弁体31により仕切られた筐体5内部を連通させる際に、筐体5内の空気を排出することができるため、筐体5内部を管内流体で満たすことができる。
【0053】
次に、
図6に示されるように、作業弁体31を開放し収容筒16内の制流弁10を下方の筐体5に向け設置する。より詳しくは、上記した挿入機60の操作杆62の把持部62aを正転方向に回転操作することで、この操作杆62に螺合された挿入筒63が下方に向け移動する。この挿入筒63の下方への移動に伴い、取付治具26を介し制流弁10に下方に押圧力を付与し、この制流弁10を首部5d内にて漸次下方に移動させる。なお、取付治具26に螺合した延設棒61も制流弁10に追従して下方に移動する。
【0054】
このとき、上記したように、収容筒16内は流体管1内と同じ圧力に調整され、圧力差が存在しないため、制流弁10を小さな押圧力で押圧することができる。また例えば、連通開口部27に水圧ポンプを接続し、収容筒16内側(開放端部5cの外部側)を高圧にすることで、押圧を補助してもよい。
【0055】
図7に示されるように、制流弁10は、密封部材21が開口部5bよりも下方に超えて首部5dの内周面に密接する設置位置まで押圧される。この設置位置にて、首部5dのフランジ部5eに設けられた仮固定用の押しボルト5f(
図9参照)を内径方向に螺挿することで、その先端が弁筐体12の周側部13の外径側に張り出す張出部13d(
図9参照)に形成された凹部に嵌合されるため、筐体5の首部5dに挿入された制流弁10は筐体5に対し上方向の抜け出し及び回動が規制される。
【0056】
上記したように制流弁10を設置した後、上記した挿入機60を操作してこの制流弁10に組付けていた収容筒16を取外す。より詳しくは、
図8(a)~(c)に示されるように、先ず取付治具26に螺合した延設棒61を、その上端に図示しない回動工具等を嵌合して回動することにより、取付治具26から取外す。次に操作杆62の把持部62aを逆転方向に回転操作し、この操作杆62に螺合された挿入筒63が上方に向け移動させることで、その下端部63aを平面視略方形状に嵌合していた取付治具26の突端部26aから取外す。
【0057】
上記したように挿入機60を操作し、制流弁10から切離した後、収容筒16内に導入した管内流体を図示しないドレン部により排出して、収容筒16を挿入機60とともに筐体5から取外す。
【0058】
また、制流弁10の設置位置にて、弁筐体12の内外を貫通し、且つ通常は開閉プラグ等で閉塞された図示しない貫通孔を開状態とすることで、密封状態の制流弁10の弁筐体12内に残留する空気を外部に放出してもよい。ここで前記貫通孔は、弁筐体12の上端近傍に形成されていると好ましく、このようにすることで、弁筐体12内の空気を残さず略全量を外部に放出することができる。
【0059】
さらに筐体5の開口部5bに取付けていた作業弁装置3を順次取外す。このとき、首部5dの開口部5bよりも下方の内周面を密封部材21が密封しているため、開口部5bを開放しても内部流体の漏洩は防止されている。そのため弁体11による密封を行うことなく作業弁装置3を取外すことができ、作業弁装置3の老朽化の虞もない。また、首部5dの開放端部5cのフランジ部5eに、環状に形成された閉塞リング40を周方向に複数の締結部材41によって取付け、弁筐体12の張出部13dが閉塞リング40に係止されることで弁筐体12が確実に抜け止めされる。
【0060】
次に、制流弁10の具体的な構造について説明する。
図9及び
図10に示されるように、弁筐体12には、回転可能で且つ進退不能に枢支された状態で上下方向に延設された軸部材14が取付けられており、この軸部材14に弁体11が螺合されており、この弁筐体12の外方(上方)に突出した軸部材14の上端の操作部14aを回転操作することで、弁体11が弁筐体12に対し上下動可能に構成されている。
【0061】
より詳しくは弁体11は、軸部材14に螺合した雌ネジを備え軸部材14に沿って移動可能な移動部としての雌ネジ片11aと、この雌ネジ片11aに係合して吊支され追従動作する金属片やプラスチックなどの剛体からなる弁本体部11cと、弁本体部11cの外面に固定される弾性材からなるシール部11bと、シール部11bに加硫などにより一体成型されたボルト・ナットから成りシール部11bを弁本体部11cの底部に連結する固着部材15とから主として構成されている。
【0062】
雌ネジ片11aは、軸部材14に螺合する筒状軸部11dと、筒状軸部11dの下端部の両側から流体管1の管軸方向と直交する方向に張り出す張出部11e,11eと、弁本体部11cを支持する支持部11fと、筒状軸部11dの下端に管軸方向に離間して設けられる切換手段若しくは栓部としての第1栓部11g及び第2栓部11hと、を備えている。第1栓部11g及び第2栓部11hは、下端に弾性体からなるシール部材11u、11vを備えている。
【0063】
弁本体部11cは、上方に開口する平面視円形状かつ側断面視U字状の側壁部11jと、側壁部11jの開口を閉塞する円板状の蓋部11kと、を備えている。この側壁部11jは、流体管1の管軸方向と直交する側の両側方に開口部11m,11mが形成されている。また、蓋部11kは、その中央部に筒状軸部11dの上端部を挿通する貫通孔11nが形成されているとともに、その周縁部が側壁部11jの上方の開口の縁部にボルトにより固定されている。
【0064】
弁本体部11cは、弁体11が弁筐体12内に収容された開弁状態において、蓋部11kが雌ネジ片11aの支持部11fに載置されることで雌ネジ片11aに吊支された状態となっている。詳しくは、雌ネジ片11aには、弁本体部11cが上下方向への相対移動が許容された状態で支持されている。
【0065】
また、弁本体部11cの底部には、管軸方向に離間して設けられる第1連通孔11p及び第2連通孔11qが形成されている。第1連通孔11pは、流体管1における弁体11の上流側と弁本体部11cにおける中空の内部空間S1とを連通している。また、第2連通孔11qは、流体管1における弁体11の下流側(所定区間S側)と弁本体部11cの内部空間S1とを連通している。
【0066】
シール部11bは、孔部1cの内周面に沿って延びる上部の周状部11rと、流体管1の内周面1eに沿って延びる下部のU字部11sと、を備えている。これら周状部11rとU字部11sは、硬度が互いに異なるゴムから成り、固着部材15と接着あるいは加硫などで一体成型され、取付けられることが望ましく、このようにすることで、流速によりU字部11sが流される虞を防止しつつ、弁体11の挿入が容易となる。特に、周状部が軟らかく、U字部が硬く設計され、且つこれらが一体に形成されることが望ましい。
【0067】
また、U字部11sは、弁本体部11cの開口部11m,11mを密封状に覆うように配置されており、U字部11sにおける開口部11m,11mの近傍部分は、弁本体部11cの内部空間S1側に膨出する膨出部11t,11tとなっている。
【0068】
弁体11は、弁筐体12内に収容された開弁状態から、上記した軸部材14の回転により下方の流体管1の孔部1cを通じて管内に移動して、シール部11bが流体管1の孔部1cと内周面1eに全周に亘って密接することで、管内の流路を完全に遮断した閉弁状態とすることができ、流体の流れを制御可能に構成されている。ここで、完全に遮断せずとも、下流側の工事が可能な程度の流路を残した閉弁状態(位置)としてもよく、この場合も密封状に遮断若しくは遮断状態に含まれ、このようにすることで、下流側の調圧ステップの促進とすることもできる。
【0069】
また、雌ネジ片11aは、開弁状態から閉弁状態に移行する当初は弁本体部11cを吊支した状態で同時に下降するが、シール部11bが管内周底部に接触すると、雌ネジ片11aがシール部11b及び弁本体部11cに対して大きく下降移動して、その両側部の張出部11e,11eでシール部11bの膨出部11t,11tを外径方向に押し拡げ、流体管1内の流体の流れを確実に遮断する。すなわち、雌ネジ片11aの張出部11e,11eとシール部11bの膨出部11t,11tは、シール部11bを幅方向に押し広げて拡張可能とする拡幅手段を構成している。特に大口径の流体管では、管内面の内径は管種、防錆処理、管の製造許容差により大きく異なり、この拡幅手段によるシール部11bの拡張により、シール部11bの密封性を高めることができる。また、拡幅手段のシール部11bの押し広げによる内周面1eへの押圧力で、弁体11の閉弁位置の安定にもつながる。
【0070】
更に、固着部材15により、弾性体であるシール部11bの中に芯部を構成し、流速によりU字部11sが流される虞を防止するようになっている。なおシール部11bは、弁本体部11cに加硫したり、加硫被覆して全体あるいは一部を覆うように構成されていてもよい。
【0071】
次いで、弁体11を閉弁状態から開弁状態とする工程について説明する。
【0072】
図11に示されるように、弁体11の閉弁状態においては、雌ネジ片11aがシール部11b及び弁本体部11cに対して下降移動し、第1栓部11g及び第2栓部11hが弁本体部11cの底部に押し付けられ、該弁本体部11cの第1連通孔11p及び第2連通孔11qを密封状に閉塞した状態となっている。すなわち、第1連通孔11p及び第2連通孔11qが非連通状態となっている。前述のように、弁体11の閉弁状態においては、所定区間S内の流体の流れを遮断した状態で流体管1における所定区間Sの一部を切断することができるようになっている(
図1(b)参照)。なお、第1連通孔11p及び第2連通孔11qは、弁本体部11cの側部に設けてもよく、その場合、第1栓部11g及び第2栓部11hは、それに対応した位置に設ければよい。
【0073】
また本実施例では、第1連通孔11p及び第2連通孔11qは、小径の略円形に開口した貫通孔として形成されているが、これに限らず、第1連通孔11p及び第2連通孔11qは、特に図示しないが例えば、管径方向に幅広の略三日月形やスリット状などの非円形に開口形成されてもよい。このようにすることで、管内流体の安定した流通を確保するとともに連通孔の設計自由度を高めることができる。
【0074】
更に本実施例では、第1栓部11g及び第2栓部11hの下端に設けられたシール部材11u、11vは、第1連通孔11p及び第2連通孔11qを密封するに足る必要最小限の大きさで、下端が曲面の略円柱状に形成されているが、これに限らない。特に図示しないが例えば、シール部材11u、11vは、その中心部分が第1連通孔11p及び第2連通孔11qを閉塞し、且つ、その周囲部分が第1連通孔11p及び第2連通孔11q周縁の側壁部11j下端の内面に当接する形状であってもよい。このようにすることで、シール部材11u、11vが第1連通孔11p及び第2連通孔11qに対し移動しても、密封性を確保することができる。
【0075】
更に本実施例では、第1栓部11g及び第2栓部11hの下端に設けられたシール部材11u、11vは、第1連通孔11p及び第2連通孔11qを個別に密封するように、別体で且つ必要最小限の大きさに設けられているが、これに限らない。特に図示しないが例えば、第1栓部11g及び第2栓部11hの下端に、一体で且つ大型の弾性体からなるシール部材(以下、大型シール部材と称する)が設けられてもよく、この大型シール部材によって、第1連通孔11p及び第2連通孔11qをまとめて密封するように構成してもよい。またこの場合、大型シール部材の下端は、弁本体部11cの側壁部11j下端の凹状の内曲面に沿うように、凸状の外曲面を有していると好ましい。このようにすることで、弁本体部11cが流体の影響で傾くことがあっても、大型シール部材が弁本体部11cの傾きに追従し、側壁部11j下端の内面に亘って密接し、第1連通孔11p及び第2連通孔11qを確実に密封することができ、また筒状軸部11dに螺合した軸部材14への負荷も抑制することができる。
【0076】
また特に、このように大型シール部材を用いる場合、当該大型シール部材を筒状軸部11dの下端部に対しボルト等で結合すればよく、このようにすることで、大型シール部材の取付け強度を高めることができる。
【0077】
所定区間Sの流体管1を切断あるいは解体後には、流体管1における弁体11の分岐筐体2側に所定の流体圧(一次圧)の管内流体が存在し、弁体11の所定区間S側には管内流体よりも低圧(二次圧)の大気が存在する。したがって、弁体11は、流体管1における弁体11の流体圧(一次圧)により所定区間S側に向けて押圧された状態となっている。同様に、流体管1における弁体11’の分岐筐体2’側に所定の流体圧(一次圧)の管内流体が存在し、弁体11’の所定区間S側には管内流体よりも低圧(二次圧)の大気が存在する。したがって、弁体11’は、流体管1における弁体11’の流体圧(一次圧)により所定区間S側に向けて押圧された状態となっている。
【0078】
次いで、
図12に示されるように、弁体11を開弁状態とする際には、軸部材14の操作部14aを開弁方向に回転操作する。弁体11が閉弁状態から開弁状態に移行する当初は、シール部11b及び弁本体部11cが閉弁位置に配置された状態のまま、雌ネジ片11aのみが相対的に上昇移動するようになっている(開弁ステップの第1ステップ)。
【0079】
これにより、第1栓部11g及び第2栓部11hが第1連通孔11p及び第2連通孔11qから上方に離間し開放され、第1連通孔11p及び第2連通孔11qが連通状態となる。すなわち、第1栓部11g及び第2栓部11hは、第1連通孔11p及び第2連通孔11qの連通状態または非連通状態を切り換える切換手段を構成している。
【0080】
第1連通孔11p及び第2連通孔11qが連通状態となると、流体管1における弁体11の上流側の流体が第1連通孔11p、弁本体部11cの内部空間S1、第2連通孔11qを通って所定区間S内に導入される。言い換えれば、開弁ステップの第1ステップをトリガーとして、流体管1における弁体11の管軸方向両側の差圧を小さくする調圧ステップが開始される。尚、開弁ステップの第1ステップ後、調圧ステップが完了するまで弁体11の開弁操作を停止する。
【0081】
所定区間Sの切断あるいは解体箇所に接続配置された新たな流体管1Aには空気抜き孔29が設けられており、この空気抜き孔29を開放することで、新たな流体管1A内の空気を外部に放出する。このようにすることで、所定区間Sの内部を管内流体で満たすことができ、流体管1における弁体11を挟んだ管軸方向両側を同圧とすることができる。
【0082】
尚、弁体11を挟んだ管軸方向両側を同圧とするために、新たな流体管1Aに空気抜き孔29が設けられていることが好ましいが、新たな流体管1Aには空気抜き孔29が設けられていなくてもよい。また、空気抜き孔29には圧力計が設置可能となっていることがさらに好ましく、これにより水圧試験に利用することもできる。
【0083】
弁体11を挟んだ管軸方向両側が同圧となると、調圧ステップが完了する。その後、軸部材14の操作部14aを開弁方向に回転操作を再開する。軸部材14の操作部14aを開弁方向に回転操作すると、先ず、雌ネジ片11aが上昇してその支持部11fが弁本体部11cの蓋部11kの下面に接触する。更に操作部14aを回転操作すると、支持部11fが弁本体部11cを支持した状態で、雌ネジ片11aとともに弁本体部11cが上昇移動する(開弁ステップの第2ステップ)。これにより、弁体11が流体管1の流体の流れを阻害しない退避位置に配置され、流体管1と流体管1Aとが連通する(弁体11の開放状態(
図9,
図10参照))。
【0084】
上記のように、調圧ステップにより、流体管1における弁体11を挟んだ管軸方向両側を同圧とすることができるため、流体圧により弁体11が管軸方向片側に押圧されることが防止される。これによれば、弁体11のシール部11bにおける周状部11rが孔部1cの内周面に対して過剰に圧接され、それらの摩擦力により弁体の開弁操作が困難になったり、破損する虞が回避される。すなわち、弁体11をスムーズに開弁操作することができる。
【0085】
また、調圧ステップは、弁体11を挟む流体管1内の上流側(管軸方向一方側)を流れる流体を所定区間S側(管軸方向他方側)に充填するため、弁体11の管軸方向両側を同圧に調整しやすい。
【0086】
また、開弁ステップは、閉弁状態の弁本体部11cに対し雌ネジ片11aを開弁方向に移動させる第1ステップと、雌ネジ片11aとともに弁本体部11c及びシール部11bを開弁方向に移動させる第2ステップと、を有し、第1ステップをトリガーとして調圧ステップが開始され、調圧ステップは第2ステップを行う前に完了する。これによれば、雌ネジ片11aとともに弁本体部11cを開弁方向に移動させる第2ステップが行われる前に調圧ステップが完了するので、第2ステップが行われる際には弁体11の管軸方向両側を確実に同圧にできる。また、第1ステップをトリガーとして調圧ステップが開始されるので、調圧ステップを短時間で完了させることができる。
【0087】
尚、本実施例では、開弁ステップにおける第2ステップを行う前に調圧ステップが完了する形態を例示したが、第1ステップをトリガーとして調圧ステップが開始されればよく、調圧ステップが完了する前に第2ステップを行うようにしてもよい。この場合であっても、弁体11の管軸方向両側の差圧を確実に小さくすることができる。
【0088】
また、制流弁10の弁本体部11cは、内部空間S1を有する中空形状を成し、管内流体で満たされた既設の流体管1側(管軸方向一方側)に連通する第1連通孔11pと、所定区間S側(管軸方向他方側)に連通する第2連通孔11qと、が設けられている。そして、弁体11は、第1連通孔11p及び第2連通孔11qの連通状態または非連通状態を切り換える第1栓部11g及び第2栓部11hを有している。
【0089】
これによれば、弁体11の閉弁時には、第1栓部11g及び第2栓部11hにより第1連通孔11pと第2連通孔11qとを閉塞して非連通状態とすることで流体管1内の流体の流れを遮断することができるとともに、弁体11の開弁時には、第1栓部11g及び第2栓部11hにより第1連通孔と第2連通孔とを開放して連通状態とすることで弁体11の管軸方向両側の差圧を小さくすることができるため、弁体11を簡便に開弁操作することができる。
【0090】
また、弁体11の雌ネジ片11aには、弁体11の動作方向に相対移動が許容された状態で弁本体部11cが支持されている。これによれば、弁体11の閉弁時には、雌ネジ片11a及び弁本体部11cを流体管1内に向けて進行させ、シール部11bにおけるU字部11sが流体管1の内周面1eに当接した後、さらに雌ネジ片11aを進行させることで、シール部11bのU字部11sを拡張させて流体管1内の流体の流れを確実に遮断することができる。
【0091】
加えて、雌ネジ片11aに第1栓部11g及び第2栓部11hが設けられており、上記のように、U字部11sを拡張させるために雌ネジ片11aを閉弁位置に配置された弁本体部11cに対し閉弁方向に相対移動させた動作を行った際に、第1栓部11g及び第2栓部11hにより第1連通孔11p及び第2連通孔11qを閉塞することができるようになっている。言い換えれば、雌ネジ片11aによりシール部11bを拡張させ、流体管1内の流体の流れを確実に遮断する動作を利用して第1連通孔11p及び第2連通孔11qを簡便に閉塞することができる。
【0092】
また、弁体11を開弁させる時には、弁本体部11c及びシール部11bが閉弁状態を保ちながら雌ネジ片11aのみを退避させ、第1連通孔11p及び第2連通孔11qを第1栓部11g及び第2栓部11hにより開放することができるので、弁体11の管軸方向両側の差圧を小さくすることができる。
【0093】
また、弁筐体12の外部から軸部材14の操作部14aを操作して雌ネジ片11aを動かすので、第1栓部11g及び第2栓部11hによる第1連通孔11p及び第2連通孔11qの開閉作業を簡便に行うことができる。
【0094】
また、第1栓部11g及び第2栓部11hは、雌ネジ片11aの進行方向である下端に設けられているため、雌ネジ片11aの進行方向への移動力を第1栓部11g及び第2栓部11hの閉塞方向に伝えやすく、第1連通孔11p及び第2連通孔11qを確実に閉塞することができる。
【0095】
また、雌ネジ片11aには、第1栓部11g及び第2栓部11hが設けられており、第1栓部11g及び第2栓部11hにより第1連通孔11p及び第2連通孔11qを閉塞できるので、2重シールとなり、第1連通孔11p及び第2連通孔11qを確実に非連通状態とすることができる。
【0096】
尚、本実施例では、雌ネジ片11aに第1栓部11g及び第2栓部11hが設けられる形態を例示したが、少なくとも第1栓部11g及び第2栓部11hのいずれか一方が設けられていればよい。この場合でも、弁体11の閉弁状態において、第1栓部11g及び第2栓部11hのいずれか一方を上下に動作させることで、弁体11を挟んだ流体管1における管軸方向両側の連通状態または非連通状態を切り換えることができる。
【0097】
次に、変形例1における制流弁を
図13に基づいて説明する。
図13に示されるように、変形例1の制流弁100は、弁体111の弁本体部111cの底部に幅方向に離間して鉤状片104,104が形成されており、鉤状片104,104の内側には、互いに対向して開口する溝101,101が形成されている。この鉤状片104,104の先端面は、凸状曲面(以下、弁本体部111c側の凸状曲面という。)となっており、溝101,101の内側面は凹状曲面(以下、弁本体部111c側の凹状曲面という。)となっている。
【0098】
各溝101には、拡幅手段の一部を構成する可動片102がそれぞれ揺動可能に取付けられている。具体的には、可動片102は、その下端部102aが鉤状をなしており、下端部102aの先端面は凸状曲面(以下、可動片102側の凸状曲面という。)となっており、下端部102aと可動片102の基部102bとで成す内角側の側面は凹状曲面(以下、可動片102側の凹状曲面という。)となっている。
【0099】
各可動片102の下端部102aは、各溝101内に遊嵌されており、弁本体部111c側の凹状曲面と可動片102側の凸状曲面が摺動可能となっているとともに、弁本体部111c側の凸状曲面と可動片102側の凹状曲面が摺動可能となっている。
【0100】
また、雌ネジ片111aの下端には、中央側下方に向かって先細りする傾斜面103,103が形成されている。
【0101】
弁体111の開弁状態にあっては、可動片102の基部102bは、シール部111bの膨出部111tの弾性力により、雌ネジ片111a側に押し付けられ起立した状態となっている。
【0102】
また、弁体111の閉弁状態にあっては、雌ネジ片111aの下降に伴って該雌ネジ片111aの傾斜面103と可動片102が摺動し、可動片102が幅方向に拡開した状態となる。これにより、可動片102がシール部111bの膨出部111tを流体管1の内周面1eに押し付けるため、管内の流路を完全に遮断することができるようになっている。
【0103】
次に、変形例2における制流弁の調圧ステップを
図14に基づいて説明する。
図14に示されるように、本変形例2の制流弁200の弁体211は、第1栓部11g、第2栓部11h、第1連通孔11p、及び第2連通孔11qが設けられていない以外、実施例1の制流弁10と同一の構成を成している。
【0104】
制流弁200における調圧ステップは、流体管1の所定区間Sの切断あるいは解体後(
図1(b)参照)、該流体管1の切断口にバルブVを接続する。このバルブVは、流体管1の切断口を閉塞可能であり、かつ流体注入口91と空気抜き口92とが設けられている。
【0105】
流体管1における弁体211よりも所定区間S側からバルブVの空気抜き口92を介して空気を抜きながら、流体注入口91から流体管1内を流れる流体と同じ流体を注入し、加圧する。これにより、流体管1における弁体211を挟んだ管軸方向両側を同圧とする若しくはこれらの差圧を小さく調整することができるため、弁体211を簡便に開弁操作することができる。尚、流体管1における弁体211よりも所定区間S側に、流体注入口91から流体管1内を流れる流体と同じ流体を注入する形態を例示したが、これに限られず、流体管1内を流れる流体と異なる流体を注入してもよい。またバルブVは必ずしも必要ではなく、例えば下流側の配管の敷設時には管帽や管栓であってもよく、継輪、継手、異形管、排泥管などを設け、これらの部材に流体注入口91や空気抜き口92を設けることで、調圧に利用してもよい。
【0106】
次に、変形例3における制流弁を
図15に基づいて説明する。
図15に示されるように、本変形例3の制流弁300の弁体311は、弁本体部311cの側部に第1連通孔311p及び第2連通孔311qが形成されている。
【0107】
第2連通孔311qには、栓部としての止水プラグ93が螺合している。止水プラグ93の軸部93aは筒状を成し、その軸方向略中心及び側方に開口93bが連通して形成されている。また、軸部93aの所定区間S側の端部には外径方向に張り出す蓋部93cが形成されており、弁本体部311cの外側部に接触することで、第2連通孔311qを密封状に閉塞している。
【0108】
流体管1における弁体311よりも所定区間S側を切断あるいは解体する前は、止水プラグ93により第2連通孔311qを閉塞した状態としておく。これにより、流体管1における弁体311よりも上流側の流体は、第1連通孔311pを介して弁本体部311cの内部空間に流入するが、第2連通孔311qを介して流体管1における弁体311よりも所定区間S側に流入することが防止される。
【0109】
また、流体管1における弁体311よりも所定区間S側を切断あるいは解体後(
図1(b)参照)は、所定区間Sの切断箇所に新たな流体管1Aを接続(
図1(c)参照)する前に止水プラグ93を緩める。これにより、止水プラグ93の開口93bが流体管1の所定区間S側に開放され、流体管1における弁体311よりも上流側の流体が所定区間S内に流入する。その後、所定区間Sの切断箇所に新たな流体管1Aを接続し、流体管1Aを含む所定区間S内に流体が充填されることで、流体管1における弁体311を挟んだ管軸方向両側を調圧あるいは同圧とすることができる。
【0110】
尚、本変形例3では、第2連通孔311qに止水プラグ93が螺合している形態を例示したが、第1連通孔311pに止水プラグ93が螺合していてもよい。この場合、流体管1における弁体311よりも上流側に開口部を形成し、該開口部から所定の工具を用いて止水プラグ93を緩めるようにしてもよい。また第2連通孔311qを大きめにして、所定の工具を用いて止水プラグ93を緩めるようにしてもよい。また、栓部は、第1連通孔311pまたは第2連通孔311qを開閉可能であれば止水プラグ93に限られず、自由に変更してもよい。
【0111】
次に、変形例4における制流弁の調圧ステップを
図16に基づいて説明する。
図16に示されるように、本変形例4の制流弁400の弁体411は、第1栓部11g、第2栓部11h、第1連通孔11p、及び第2連通孔11qが設けられていない以外、実施例1の制流弁10と同一の構成を成している。
【0112】
制流弁400における調圧ステップは、流体管1における制流弁400と上流側の分岐筐体2との間に分岐筐体94を密封状に外嵌設置するとともに、流体管1における制流弁400と所定区間S側における切断箇所との間に分岐筐体95を密封状に外嵌設置する。そして、これら分岐筐体94,95内で流体管1にそれぞれ図示しない開口部を形成する。
【0113】
分岐筐体94の分岐部94a及び分岐筐体95の分岐部95aは、上述したバイパス管19とは別のバイパス管96により連通されている。また、分岐部94a,95aには、それぞれ開閉弁94b,95bが設けられており、分岐筐体94,95とバイパス管96との連通状態を切り換え可能となっている。
【0114】
流体管1における弁体411よりも所定区間S側を切断あるいは解体する前は、開閉弁94b,95bを閉塞しておく。また、流体管1における弁体411よりも所定区間S側を切断あるいは解体後(
図1(b)参照)は、所定区間Sの切断箇所に新たな流体管1A(
図1(c)参照)を接続するとともに、開閉弁94b,95bを開放し、流体管1における弁体411よりも上流側の流体を所定区間S内に流入させる。このとき、分岐筐体95の空気抜き口95cから所定区間S内の空気を外部に排出する。
【0115】
これにより、所定区間S内に管内流体が満たされ、流体管1における弁体411の両側を調圧あるいは同圧とすることができるので、弁体411の開弁操作を簡便に行うことができる。
【0116】
次に、変形例5における制流弁の調圧ステップを
図17に基づいて説明する。
図17に示されるように、本変形例5の制流弁500の弁体511は、第1栓部11g、第2栓部11h、第1連通孔11p、及び第2連通孔11qが設けられていない以外、実施例1の制流弁10と同一の構成を成している。
【0117】
制流弁500における調圧ステップは、流体管1における弁体511よりも所定区間S側を切断あるいは解体した後、該切断あるいは解体箇所に新たな流体管1Aを接続する。その後、分岐筐体2の分岐部に開閉弁2aを介して接続されたチューブ97を流体管1Aの流体注入口1fに接続する。このとき、開閉弁2aは閉状態とされている。
【0118】
その後、流体管1Aの空気抜き口1gから所定区間S内の空気を抜きながら開閉弁2aを開放し、分岐筐体2、チューブ97、流体注入口1fを介して所定区間S内に流体管1における弁体511よりも上流側の流体を注入する。これにより、所定区間S内に管内流体が満たされ、流体管1における弁体511の両側を調圧あるいは同圧とすることができるので、弁体511の開弁操作を簡便に行うことができる。
雌ネジ片611aは、軸部材614に螺合する筒状軸部611dと、筒状軸部611dの下端部の両側から流体管1の管軸方向と直交する方向に張り出す張出部611e,611eと、を備えている。一方側の張出部611eには、流体管1における弁体611よりも上流側と弁筐体612内の空間とに連通する連通路613a(第1連通孔に相当)が形成されている。また、他方側の張出部611eには、流体管1における弁体611よりも下流側(所定区間S側)と弁筐体612内の空間とに連通する連通路613b(第2連通孔に相当)が形成されている。
連通路613aの弁筐体612側の端部には第1開閉弁615が接続されている。第1開閉弁615の弁体は、通常時において、流体管1の上流側から弁筐体612側への流体の流れを許容し、弁筐体612側から流体管1の上流側への流体の連通を遮断する逆止弁構造を有している。また、第1開閉弁615は、上方に延びる操作杆615aを有しており、筐体53の首部54に設けられた上流側の操作ネジ617を外部から操作することで操作杆615aを動作させることができるようになっている。操作杆615aを動作させることで、第1開閉弁615の弁体が弁筐体612側から流体管1の上流側への流体の連通を許容するようになっている。なお第1開閉弁615は、上記した逆止弁構造を有さずに、通常時において両方向の流体の流れをいずれも遮断する構造であってもよい。
また、連通路613bの弁筐体612側の端部には第2開閉弁616が接続されている。第2開閉弁616の弁体は、通常時において、所定区間S側から弁筐体612側への流体の流れを許容し、弁筐体612側から所定区間S側への流体の連通を遮断するようになっている。また、第2開閉弁616は、上方に延びる操作杆616aを有しており、筐体53の首部54に設けられた下流側の操作ネジ617を外部から操作することで操作杆616aを動作させることができるようになっている。操作杆616aを動作させることで、第2開閉弁616の弁体が弁筐体612側から所定区間S側への流体の連通を許容するようになっている。なお第2開閉弁616は、上記した逆止弁構造を有さずに、通常時において両方向の流体の流れをいずれも遮断する構造であってもよい。
シール部611bは、孔部1cの内周面に沿って当接可能な第1シール部611rと、流体管1の内周面1eに沿って当接可能な第2シール部611sと、を備えている。
球体98は、シール部611bとは機械的性質の異なる部材で構成されており、雌ネジ片611a及びシール部611bで挟まれた空間内に多数収容されている。各球体98は、雌ネジ片611a及びシール部611bで挟まれた空間内で若干移動可能となっている。
弁体611の開弁状態にあっては、弁体611が弁筐体612内に収容される。このとき、弁体611における第1シール部611r以外の部位の横幅は、流体管1の孔部1c’の横幅よりも小さくなっている。そのため、弁体611を流体管1の孔部1c’を通して流体管1内に簡便に挿入可能となっている。
弁体611の閉弁状態においては、雌ネジ片611a及びシール部611bが下降移動しシール部611bが流体管1の内周面1eの底部に接触した後、シール部611bに対して雌ネジ片611aがさらに下降移動することで、シール部611bを圧縮して拡張させ、雌ネジ片611aにより各球体98が下方及び側方に押圧される。このとき、第1シール部611rも流体管1の孔部1c’の内周面に圧接される。各球体98は、雌ネジ片611aと流体管1の内周面1eの底部とで上下に挟圧されることで側方に逃げるように移動し、シール部611bを幅方向に押し広げ、これにより、第2シール部611sが流体管1の内周面1eに圧接され、流体管1の流体の流れを確実に遮断する。すなわち、雌ネジ片611aおよび球体98はシール部611bを幅方向に押し広げる拡幅手段を構成している。
また、弁体611の閉弁状態においては、上流側の操作ネジ617を操作することにより、流体管1の弁体611よりも上流側を流れる流体は、連通路613a及び第1開閉弁615を通じて弁筐体612側へ流入する一方、弁筐体612内に流入した流体は第2開閉弁616により遮断され、所定区間S側に流入しないようにもできる。
所定区間Sの切断箇所に新しい流体管1Aを接続した後は、閉弁状態の弁体611を開放する開弁ステップを行う。弁体611の開弁ステップを行う際には、先ず、筐体53の首部54に設けられた上流側及び下流側の操作ネジ617を外部から操作して第1開閉弁615、第2開閉弁616の操作杆615a、操作杆616aをそれぞれ動作させ、該第1開閉弁615、第2開閉弁616の弁体を開放する。これにより、弁筐体612を通じて流体が所定区間S側に流入する。尚、このときには、新しい流体管1Aの空気抜き孔29を開放することで所定区間S内の空気を外部に放出する。このようにすることで、所定区間Sの内部を管内流体で満たすことができ、流体管1における弁体611を挟んだ管軸方向両側を調圧あるいは同圧とすることができる。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。また各実施例と各変形例とは、利用可能な構成を併用してもよいし、相互に適用させるようにしてもよい。例えば、実施例2の連通路613a、第1開閉弁615、操作杆615a、操作ネジ617、連通路613b、第2開閉弁616、操作杆616a、操作ネジ617を無くして、変形例2~5のような構成を用いてもよいし、若しくはそれらの構成を残して変形例2~5と併用してもよい、等の適用が可能である。
例えば、前記実施例1、2及び変形例1~5では、筐体内の流体管に穿孔手段により孔部を穿孔し、この孔部に弁体を挿入するように構成されているが、本発明の孔部とはこれに限られず、例えば、流体管としてのT字管に予め形成された分岐孔等の孔部であってもよいし、流体管にフランジや受挿態様で接合される仕切弁などでもよい。
また、例えば、前記実施例1ではホールソーで穿孔し、前記実施例2ではエンドミルで穿孔する形態を例示したが、これに限られず、バイト装置やワイヤーソー装置等の穿孔機で穿孔してもよい。
また、前記実施例1、2及び変形例1~5では、調圧ステップにおいて、流体管における弁体を挟んだ管軸方向両側を同圧とする形態を例示したが、これに限られず、流体管における弁体を挟んだ管軸方向両側の差圧を小さくすれば同圧でなくともよく、略同圧としてもよい。なお、差圧は1.5MPa以下とするのが好ましいが、これに限られない。また、シール部11bの周状部11rは、必ずしも孔部1c全周とする必要はなく、上流側の孔部には開放された周知の構造としてもよい。この際や第1実施例、変形例3のような場合には、例えば連通開口部17を用いて下流の流体注入口とチューブなどを連結して、調圧や同圧を行ってもよいし、弁筐体12に連通開口部17に用いた機構を設けて、下流の流体注入口とチューブなどを連結して、調圧や同圧を行うようにしてもよい。