(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178414
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】長尺状医療用デバイスの位置検出システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20231207BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182565
(22)【出願日】2023-10-24
(62)【分割の表示】P 2022500185の分割
【原出願日】2020-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 誠吾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武
(72)【発明者】
【氏名】五十棲 丈二
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】西内 誠
(72)【発明者】
【氏名】下神 学
(72)【発明者】
【氏名】大島 史義
(57)【要約】
【課題】使い勝手の良い長尺状医療用デバイスの位置検出システムおよび方法を提供すること。
【解決手段】長尺状医療用デバイスの位置検出システムは、血管モデル4を取得するモデル取得部7と、血管内に挿入される長尺状医療用デバイス3の位置を検出し、血管モデルと長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出する対応関係検出部1と、対応関係検出部の検出結果に基づいて、血管モデルに長尺状医療用デバイスの位置を対応付けて表示する表示部2とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管モデルを取得するモデル取得部と、
血管内に挿入される長尺状医療用デバイスの位置を検出し、前記血管モデルと前記長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出する対応関係検出部と、
前記対応関係検出部の検出結果に基づいて、前記血管モデルに前記長尺状医療用デバイスの位置を対応付けて表示する表示部と
を備える長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項2】
前記対応関係検出部は、前記長尺状医療用デバイスの位置を電波により検出する、
請求項1に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項3】
前記対応関係検出部は、被検体の周囲に複数配置される電波受信部と、前記長尺状医療用デバイスに設けられる電波発信部とを含む、
請求項2に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項4】
前記対応関係検出部は、被検体の周囲に複数配置される電波発信部と、前記長尺状医療用デバイスの先端に設けられる電波受信部とを含む、
請求項2に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項5】
前記対応関係検出部は、超音波プローブを有する超音波撮像装置と、前記超音波プローブを被検体の表面に押し当てて操作する操作部とを含み、
前記モデル取得部は、前記超音波プローブにより得られる超音波エコー画像に基づいて生成された前記血管モデルを取得し、
前記対応関係検出部は、前記超音波プローブにより得られる超音波エコー画像から長尺状医療用デバイスおよび血管を認識し、前記超音波プローブを前記認識された長尺状医療用デバイスの移動に追従させることにより、前記血管モデルと前記長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出する、
請求項1に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項6】
前記超音波プローブを前記長尺状医療用デバイス先端の移動に追従させることにより、前記血管モデルを再構築させる、
請求項5に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項7】
前記対応関係検出部は、血管の特徴点を検出する血管特徴点検出部と、前記血管特徴点検出部により検出された特徴点と前記血管モデルに含まれる特徴点とを比較することにより、前記長尺状医療用デバイスの位置を算出する比較部とを含む、
請求項1に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項8】
前記対応関係検出部は、血管内への長尺状医療用デバイスの送り量から、前記血管モデルと前記長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出する、
請求項1に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項9】
前記対応関係検出部は、血管内への長尺状医療用デバイスの送り量と方向とから、前記血管モデルと前記長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出する、
請求項8に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項10】
前記対応関係検出部は、前記血管モデルにおける前記長尺状医療用デバイスの位置が含まれる所定範囲を検出する第1検出部と、前記第1検出部により検出された前記所定範囲内において前記血管モデルと前記長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出する第2検出部とを含む、
請求項1に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項11】
前記第1検出部は、血管内への長尺状医療用デバイスの送り量に基づいて前記所定範囲を検出するものであり、
前記第2検出部は、血管の特徴点を検出する血管特徴点検出部と、前記血管特徴点検出部により検出された特徴点と前記血管モデルに含まれる特徴点とを比較することにより、前記長尺状医療用デバイスの位置を算出する比較部とを含む、
請求項10に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項12】
前記対応関係検出部は、前記血管モデルと前記長尺状医療用デバイスの位置との対応関係から所定の値を算出し、
前記表示部は、前記算出された所定の値を前記血管モデルに前記長尺状医療用デバイスの位置と対応付けて表示する、
請求項1~11のいずれか一項に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項13】
前記所定の値は、前記血管モデルにおける前記長尺状医療用デバイスの位置と血管壁との距離である、
請求項12に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項14】
あらかじめ設定された閾値に前記所定の値が達したときには警報を出力する、
請求項13に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出システム。
【請求項15】
長尺状医療用デバイスの位置を検出する方法であって、
血管モデルを取得する血管モデル取得ステップと、
血管内に挿入される長尺状医療用デバイスの位置を検出し、前記血管モデルと前記長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出する対応関係検出ステップと、
前記対応関係検出ステップの検出結果に基づいて、前記血管モデルに前記長尺状医療用デバイスの位置を対応付けて表示させる表示ステップと
を実行する長尺状医療用デバイスの位置検出方法。
【請求項16】
前記対応関係検出ステップは、前記長尺状医療用デバイスの位置を電波により検出する、
請求項15に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出方法。
【請求項17】
前記血管モデル取得ステップは、ロボットにより操作される超音波プローブから得られる超音波エコー画像に基づいて生成される血管モデルを取得し、
前記対応関係検出ステップは、前記超音波プローブにより得られる超音波エコー画像から長尺状医療用デバイスおよび血管を認識し、前記超音波プローブを前記認識された長尺状医療用デバイスの移動に追従させることにより、前記血管モデルと前記長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出する、
請求項15に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出方法。
【請求項18】
前記対応関係検出ステップは、血管の特徴点を検出する血管特徴点検出ステップと、前記血管特徴点検出ステップにより検出された特徴点と血管モデルに含まれる特徴点とを比較することにより、前記長尺状医療用デバイスの位置を算出する比較ステップとを含む、
請求項15に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出方法。
【請求項19】
前記対応関係検出ステップは、血管内への長尺状医療用デバイスの送り量から、前記血管モデルと前記長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出する、
請求項15に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出方法。
【請求項20】
前記対応関係検出ステップは、前記血管モデルにおける前記長尺状医療用デバイスの位置が含まれる所定範囲を検出する第1検出ステップと、前記第1検出ステップにより検出された前記所定範囲内において前記血管モデルと前記長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出する第2検出ステップとを含む、
請求項15に記載の長尺状医療用デバイスの位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状医療用デバイスの位置検出システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医師は、カテーテルを用いて治療する場合に、血管に造影剤を投入して得られたX線画像から血管形状を認識し、この認識結果に基づいてガイドワイヤなどの長尺状医療用デバイスを血管内へ挿入する。しかし、現在ガイドワイヤが血管内のどこに位置しているのか、血管の外へ出てしまったのかを医師がリアルタイムで把握するのは難しい。
【0003】
そこで、ガイドワイヤの先端に永久磁石を固定し、被験者の頭部の周囲に設けた複数の磁気センサで磁気を検知することにより、ガイドワイヤの位置を測定する技術が提案されている(特許文献1)。測定されたガイドワイヤの位置は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)で取得された血管画像に重ね合わせて表示させることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、各磁気センサの検出する磁気とカテーテル先端の永久磁石の位置および方向との関係を事前に測定したマップを得ておく必要があり、手間がかかる。さらに、従来技術は、X線画像を得るのが難しい頭部においてカテーテルの位置を測定するものであり、頭部以外でのカテーテルの位置を検出する技術ではない。
【0006】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、使い勝手の良い長尺状医療用デバイスの位置検出システムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明の一つの観点に従う長尺状医療用デバイスの位置検出システムは、血管モデルを取得するモデル取得部と、血管内に挿入される長尺状医療用デバイスの位置を検出し、血管モデルと長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出する対応関係検出部と、対応関係検出部の検出結果に基づいて、血管モデルに長尺状医療用デバイスの位置を対応付けて表示する表示部とを備える。
【0008】
対応関係検出部は、長尺状医療用デバイスの位置を電波により検出してもよい。
【0009】
対応関係検出部は、被検体の周囲に複数配置される電波受信部と、長尺状医療用デバイスに設けられる電波発信部とを含んでもよい。
【0010】
対応関係検出部は、被検体の周囲に複数配置される電波発信部と、長尺状医療用デバイスの先端に設けられる電波受信部とを含んでもよい。
【0011】
対応関係検出部は、超音波プローブを有する超音波撮像装置と、超音波プローブを被検体の表面に押し当てて操作する操作部とを含み、モデル取得部は、超音波プローブにより得られる超音波エコー画像に基づいて生成された血管モデルを取得し、対応関係検出部は、超音波プローブにより得られる超音波エコー画像から長尺状医療用デバイスおよび血管を認識し、超音波プローブを認識された長尺状医療用デバイスの移動に追従させることにより、血管モデルと長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出してもよい。
【0012】
超音波プローブを長尺状医療用デバイス先端の移動に追従させることにより、血管モデルを再構築させてもよい。
【0013】
対応関係検出部は、血管の特徴点を検出する血管特徴点検出部と、血管特徴点検出部により検出された特徴点と血管モデルに含まれる特徴点とを比較することにより、長尺状医療用デバイスの位置を算出する比較部とを含んでもよい。
【0014】
対応関係検出部は、血管内への長尺状医療用デバイスの送り量から、血管モデルと長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出してもよい。
【0015】
対応関係検出部は、血管内への長尺状医療用デバイスの送り量と方向とから、血管モデルと長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出してもよい。
【0016】
対応関係検出部は、血管モデルにおける長尺状医療用デバイスの位置が含まれる所定範囲を検出する第1検出部と、第1検出部により検出された所定範囲内において血管モデルと長尺状医療用デバイスの位置との対応関係を検出する第2検出部とを含んでもよい。
【0017】
第1検出部は、血管内への長尺状医療用デバイスの送り量に基づいて所定範囲を検出するものであり、第2検出部は、血管の特徴点を検出する血管特徴点検出部と、血管特徴点検出部により検出された特徴点と血管モデルに含まれる特徴点とを比較することにより、長尺状医療用デバイスの位置を算出する比較部とを含んでもよい。
【0018】
対応関係検出部は、血管モデルと長尺状医療用デバイスの位置との対応関係から所定の値を算出し、表示部は、算出された所定の値を血管モデルに長尺状医療用デバイスの位置と対応付けて表示してもよい。
【0019】
所定の値は、血管モデルにおける長尺状医療用デバイスの位置と血管壁との距離でもよい。
【0020】
あらかじめ設定された閾値に所定の値が達したときには警報を出力してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、血管モデルに長尺状医療用デバイスの位置を対応付けて表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】ガイドワイヤ先端と被検体の周囲とのアンテナの配置関係を示す説明図。
【
図4】血管モデル生成処理およびガイドワイヤ位置表示処理のフローチャート。
【
図7】ガイドワイヤ位置表示処理等のフローチャート。
【
図8】ガイドワイヤ位置表示処理等の他のフローチャート。
【
図10】血管内視鏡で得た血管の特徴点と血管3Dモデルの特徴点とを照合する様子を示す説明図。
【
図11】ガイドワイヤ位置表示処理等のフローチャート。
【
図13】ガイドワイヤ位置表示処理等のフローチャート。
【
図14】第5実施例に係り、血管とガイドワイヤの位置関係を表示する画面例。
【
図15】第6実施例に係り、ガイドワイヤ位置表示処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態において、血管内に挿入される長尺状医療デバイスの例としては、ガイドワイヤ、ガイディングカテーテル、マイクロカテーテル、バルーンカテーテル、カッティングバルーン、およびステントデリバリーデバイスが挙げられる。
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を、長尺状医療用デバイスがガイドワイヤである場合を一例として説明する。本実施形態では、ガイドワイヤの位置と血管モデルとの関係を表示することにより、医師または技師(以下、医師等)にとっての利便性を向上させる。
【0025】
図1を用いて、本実施形態の概要を説明する。本実施形態に含まれる複数の実施例については、図を改めて後述する。
図1は、本実施形態の概要を示しており、本発明の範囲を規定するものではない。
図1に開示された構成の一部から本発明が構成されてもよいし、
図1に開示されていない構成を含んで本発明が構成されてもよい。
【0026】
本実施形態に係るガイドワイヤの位置検出システムは、例えば、対応関係検出部1と、表示部2と、センサ5,6と、血管モデル取得部7とを含むことができる。センサ5を第1検出部11で使用される第1センサ5と呼ぶことができ、センサ6を第2検出部12で使用される第2センサ6と呼ぶことができる。
【0027】
血管モデル取得部7は、手術前または手術中に作成される被検体SUの血管モデル4を取得し、対応関係検出部1へ供給する。血管モデル4は、例えば、超音波撮像装置またはX線CT(Computed Tomography)装置などにより、生成されることができる。血管モデル4は、三次元モデルであってもよいし、二次元モデルであってもよい。対応関係検出部1は、三次元モデルと二次元モデルとを適宜使い分けてもよい。
【0028】
対応関係検出部1は、被検体SUの血管内へ挿入されるガイドワイヤ3の位置を検出し、血管モデル4とガイドワイヤ3との対応関係を検出する。対応関係とは、例えば、血管モデル4におけるガイドワイヤ3の位置である。被検体SUは、通常は人間であるが、人間以外の物体、例えば動物であってもよい。
【0029】
対応関係検出部1は、第1検出部11と第2検出部12とを含むことができる。第1検出部11は、送り量方式13の機能に従って、ガイドワイヤ3が存在しうると推測される所定範囲(ガイドワイヤのうち、例えば、先端部が含まれる所定範囲)を検出する。すなわち、第1検出部11は、被検体SUの血管へのガイドワイヤ3の送り量を検出する送り量検出センサ5からの信号に基づいて、血管モデル4においてガイドワイヤ3の位置が存在すると推測される所定範囲を検出する。第2検出部12は、電波方式14、超音波方式15、血管内視鏡方式16の少なくともいずれか一つの機能にしたがい、他のセンサ6からの信号を利用することにより、第1検出部11により検出された所定範囲内における血管モデル4とガイドワイヤ3の位置関係を検出する。他のセンサ6としては、後述のように、電波を送信または受信するアンテナ、超音波プローブ、血管内視鏡などがある。
【0030】
表示部2は、対応関係検出部1の検出結果を画面に表示することにより、医師等へ情報を提供する。表示部2は、血管とガイドワイヤ3との関係を複数の視点から医師等へ提供することができる。例えば、表示部2は、血管の縦断面を示す第1表示部21と、血管の横断面を示す第2表示部22とを含んでもよい。
【0031】
第1表示部21では、例えば、血管40の縦断面において、治療対象の患部(病変部)41とガイドワイヤ3との位置関係が示される。第2表示部22では、血管40の横断面において、血管40の内壁とガイドワイヤ3との位置関係が示される。血管40とガイドワイヤ3との位置関係を示す視点は、縦断面または横断面に限定されない。表示部2は、医師等の希望する任意の視点で、血管40とガイドワイヤ3との位置関係を表示させてもよい。
【0032】
図1の説明図には、以下の方法が開示されている。すなわち、ガイドワイヤ3の血管への送り量と血管モデルとからガイドワイヤ3の位置を検出する方法(機能13)、ガイドワイヤ3に設けたアンテナと被検体SUの周囲に設けたアンテナとの間の送受信状態と血管モデルとに基づいてガイドワイヤ3の位置を検出する方法(機能14)、超音波撮像装置を用いてガイドワイヤ3の位置を検出する方法(機能15)、血管内に挿入される内視鏡から得られる画像と血管モデルとに基づいてガイドワイヤ3の位置を検出する方法(機能16)、機能13と機能14の結合、機能13と機能15の結合、機能13と機能16の結合、機能13と機能14および機能15の結合、機能13と機能14および機能16の結合、機能13と機能15および機能16の結合、機能13,14,15,16の結合である。異なる複数の方法(機能)を適宜使い分けることにより、ガイドワイヤ3の位置を検出して血管モデル4上に表示させることができる。
【0033】
このように構成される本実施形態によれば、従来技術のように永久磁石の位置および姿勢に応じた各磁気センサの信号を事前に取得してマップを生成する必要がなく、従来技術よりも簡単にガイドワイヤ3の位置を検出し、ガイドワイヤ3の位置を血管モデル4に対応付けて表示することができる。
【0034】
本実施形態において機能14を用いる場合、測定距離を長くすることができ、使い勝手が向上する。また、後述のようにマーカを用いて幾つかの基準点を測定するだけで、血管とガイドワイヤ3との対応関係を特定できる。
【0035】
本実施形態において機能15を用いる場合、後述のように、超音波プローブを体表面に押しつけて操作することにより血管モデル4を生成し、手術中は超音波プローブにより血管とガイドワイヤ3とを同時に検出可能なため、血管とガイドワイヤ3の関係を検出して表示できる。
【0036】
本実施形態において機能16を用いる場合、血管内部の形状を示す画像から特徴点を取得し、その特徴点と血管モデルの特徴点とを比較照合することにより、ガイドワイヤ3と血管モデル4との位置関係を特定することができる。したがって、患者の外部にセンサを配置したりマーカを設置したりする必要がなく、より簡易にガイドワイヤ3と血管との関係を検出して表示できる。
【0037】
本実施形態において機能13を用いる場合、ガイドワイヤの存在する所定範囲を短時間で特定することができる。したがって、機能13と機能16の結合のように、送り量方式により特定された所定範囲内を他の方式により精密に計測することもできる。これにより、ガイドワイヤの位置を速やかにかつ短時間で検出することができる。
【実施例0038】
図2~
図4を用いて第1実施例を説明する。
図2は、電波を用いてガイドワイヤ3の位置を検出する方法(機能)14の構成例を示す。
【0039】
本実施例では、例えば、少なくとも一つの位置検出システム10と、電波を用いたセンシングシステム61とを備える。電波を用いたセンシングシステム61は、機能14を実現する一つの例であり、例えば、「電波発信部」の一例である電波発信アンテナ611と、「電波発信部」の一例である電波発信装置612と、「電波受信部」の一例である複数の電波受信アンテナ613と、「電波受信部」の一例である電波受信装置614と、通信制御装置615を含む。
【0040】
先に位置検出システム10について説明する。位置検出システム10は、
図1で述べた対応関係検出部1を実現する一つの例である。位置検出システム10は、例えば、マイクロプロセッサ(図中CPU:Central Processing Unit)101と、メモリ102と、記憶装置103と、媒体インターフェース104と、ユーザインターフェース105と、通信部106とを含む。位置検出システム10は、専用回路を備える専用装置であってもよいし、所定のコンピュータプログラムを実行させる汎用計算機であってもよい。さらに、位置検出システム10は、複数の装置を連携させてもよい。例えば、複数の計算機を協調させることにより一つまたは複数の位置検出システム10を生成してもよい。
【0041】
位置検出システム10は、複数設けることもできる。すなわち、一つの電波式センシングシステム61と複数の位置検出システム10とを通信ネットワークCNを介して双方向通信可能に接続することもできる。これにより、例えば、一つの位置検出システム10は手術室内に設置し、他の一つの位置検出システム10は手術室から離れた場所に設置することができ、複数の位置検出システム10によってガイドワイヤ3の位置を同時に共有することができる。
【0042】
マイクロプロセッサ101は、記憶装置103に格納された所定のコンピュータプログラム110~140をメモリ102に読み込んで実行することにより、位置検出システム10としての各機能を実現させる。
【0043】
記憶装置103は、例えば、血管3Dモデル取得部110と、電波送受信制御部120と、信号解析部130と、表示制御部140と、図示せぬオペレーティングシステムなどを格納する。血管3Dモデル取得部110は、血管モデル4の一例としての血管3Dモデル(立体的な血管モデル)を取得する機能である。電波送受信制御部120は、ガイドワイヤ3のアンテナ611からの電波の送信(発信)と各アンテナ613からの電波の受信とを制御する機能である。信号解析部130は、各アンテナ613により受信された電波信号を解析することにより、ガイドワイヤ3の位置を算出する機能である。表示制御部140は、ガイドワイヤ3の位置と血管3Dモデル4との対応関係をユーザインターフェース装置20に表示させる機能である。
【0044】
媒体インターフェース104は、例えば、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体MMとの間でデータを通信する回路である。所定のコンピュータプログラム110~140の少なくとも一部を記憶媒体MMに格納しておき、その記憶されたコンピュータプログラムを記憶媒体MMから記憶装置103へインストールさせることができる。あるいは、記憶装置103に格納された所定のコンピュータプログラム110~140の少なくとも一部を記憶媒体MMに転送して格納させることもできる。なお、記憶媒体MMに代えて、通信ネットワークCNを所定のコンピュータプログラムの伝送媒体として用いることもできる。さらに、一つの位置検出システム10で算出されたデータを、通信ネットワークCNを介して他の位置検出システム10に送信することもできる。
【0045】
ユーザインターフェース装置20は、ユーザインターフェース105を介して、位置検出システム10との間で情報を交換する。ユーザインターフェース装置20は、情報入力装置と情報出力装置とを含む。情報入力装置と情報出力装置とが一つの装置に設けられてもよい。情報入力装置としては、例えば、キーボード、押釦、音声入力装置、タッチパネル、マウスなどのポインティングデバイスなどがある。情報出力装置としては、例えば、モニタディスプレイ、プリンタ、音声合成装置、ライトなどがある。
【0046】
通信部106は、通信ネットワークCNと双方向通信する。位置検出システム10は、通信部106および通信ネットワークCNにより、電波式センシングシステム61および他の位置検出システム10と通信することができる。
【0047】
電波式センシングシステム61の構成例を説明する。電波発信アンテナ611は、ガイドワイヤ3の所定位置に設けられるアンテナであり、電波発信装置612からの電波を周囲に向けて送信する。電波発信アンテナ611は、例えば、ガイドワイヤ3の先端部またはその周辺に取り付けることができる。電波発信アンテナ611は、ガイドワイヤ3の先端部分以外の領域に取り付けることもできる。
【0048】
電波受信アンテナ613は、被検体SUの周囲に複数設置される。
図3に示すように、各電波受信アンテナ613は、被検体SUの載るベッド60の周囲に位置する所定位置に取り付けられる。ガイドワイヤ3の電波発信アンテナ611から発信された電波は、各電波受信アンテナ613によって受信され、それら受信信号は電波受信装置614から通信制御装置615を介して通信ネットワークCNに送出され、位置検出システム10に受領される。
【0049】
ガイドワイヤ3の電波発信アンテナ611と各電波受信アンテナ613との距離および方向に応じて、各電波受信アンテナ613の受信する電波信号の到達時刻および強度はそれぞれ異なる。したがって、例えば三点測位などの方法を用いることにより、信号解析部130は、電波発信アンテナ611の位置を特定することができる。例えば、BLE(Bluetooth Low Energy:Bluetoothは登録商標)などのビーコン測位方法を用いてもよい。本実施例では、電波発信装置および受信装置の種類、波長などは問わない。
【0050】
各電波受信アンテナ613の設置位置で定義される所定空間において、電波発信アンテナ611の位置は検出される。被検体SUの血管3Dモデル4を生成する際に、被検体SUの特定の位置に電波発信型マーカ616を取り付けて電波を発信させれば、血管3Dモデル4とマーカ616との位置関係を特定することができる。これにより、血管3Dモデル4を、各電波受信アンテナ613の設置位置で定義される所定空間に割り付けることができる。したがって、信号解析部130は、電波発信アンテナ611の位置と血管3Dモデル4との対応関係(位置関係)を解析することができる。
【0051】
図4を用いて、血管3Dモデルを生成する処理とガイドワイヤの位置を血管3Dモデル上に表示させる処理とを説明する。
【0052】
図4中の左側に示す血管3Dモデル生成処理では、被検体SUの所定位置に電波発信型マーカ616を取り付ける(S11)。この取付作業は、医師または技師などの人間が手作業で行ってもよいし、あるいは、ロボットハンドによって自動的に行ってもよい。
【0053】
ステップS12では、医師などの施術者がX線CT装置(図示せず)を用いて、被検体SUの血管を撮影する。ステップS11で述べたと同様に、ロボットにより被検体SUの血管を自動的に撮影してもよい。
【0054】
ステップS12で撮影された画像データから被検体SUの血管3Dモデル4が生成され(S13)、図示せぬ記憶装置に保存される(S14)。ステップS13で生成される血管3Dモデル4には、電波発信型マーカ616の情報も含まれる。
【0055】
位置検出システム10の血管3Dモデル取得部110は、ステップS14で保存された血管3Dモデル4のデータを取得する(S21)。位置検出システム10の電波送受信制御部120は、各電波受信アンテナ613からの信号を電波受信装置614と通信制御装置615と通信ネットワークCNと通信部106とを介して取得する(S22)。
【0056】
位置検出システム10の信号解析部130は、各電波受信アンテナ613からの信号に基づいて、ガイドワイヤ3の位置(例えば、ガイドワイヤ3の先端位置)を算出する(S23)。詳しくは、信号解析部130は、ガイドワイヤ3に取り付けられた電波発信アンテナ611の位置を算出するのであるが、アンテナ611の取付位置とガイドワイヤ3の先端位置との関係は信号解析部130にとって既知であるため、アンテナ611の位置からガイドワイヤ3の先端位置を求めることができる。
【0057】
位置検出システム10の表示制御部140は、血管3Dモデル4にガイドワイヤ3の位置を対応付けて表示する画面を生成し、ユーザインターフェース装置20へ出力する(S24)。
【0058】
さらに、位置検出システム10の表示制御部140は、「所定の値」の一例としての操作支援情報を算出し、血管3Dモデル4とガイドワイヤ3との対応関係を示す画像に表示させる(S25)。操作支援情報とは、医師等によるガイドワイヤ3の操作を支援するために利用可能な情報である。操作支援情報としては、
図1で述べたように、ガイドワイヤ3と血管内壁までの距離または角度などがある。さらに、操作支援情報には、血管3Dモデル4に設定された閾値との関係を含めることもできる。すなわち、位置検出システム10は、ガイドワイヤ3の先端が血管内壁から所定の閾値の位置へ達した場合に、警報を出力することができる。
【0059】
このように構成される本実施例によれば、電波を用いてガイドワイヤ3の位置を検出するため、磁気を用いる技術に比べて測定可能距離を長くすることができ、医師等にとっての使い勝手が向上する。また、電波発信型マーカ616を用いて血管3Dモデル4を生成するため、比較的簡単に血管3Dモデル4とガイドワイヤ3との対応関係を特定することができる。
【0060】
なお、本実施例において、電波発信部と電波受信部とを入れ替えてもよい。すなわち、ガイドワイヤ3には電波を受信する電波受信アンテナを設け、被検体SUの周囲には電波を発信する電波発信アンテナを複数設けてもよい。この場合、符号612で示す装置は電波受信装置となり、符号614で示す装置は電波発信装置となる。
超音波撮像装置621は、超音波プローブ6211から超音波を被検体SUへ向けて送信し、被検体SUからの反射波に基づいて画像(超音波エコー画像)を生成する。ロボット制御装置622は、ロボット6220の動作を制御する。ロボット6220は、6軸ロボットのように形成されており、アーム6221の先端には超音波プローブ6211が回動自在に取り付けられている。
位置検出システム10Aは、例えば、超音波画像取得部121と、画像解析部131と、表示制御部140を含む。位置検出システム10Aは、血管3Dモデル取得部110を備えてもよいし、備えなくてもよい。本実施例では、超音波画像取得部121により、超音波プローブ6211を自動的に操作しながら、血管3Dモデル4を生成することができるためである。
位置検出システム10Aの超音波画像取得部121は、ロボット制御装置622を制御しながら、超音波撮像装置621から超音波エコー画像を取得する。画像解析部131は、取得された超音波エコー画像を解析することにより、ガイドワイヤ3の位置および方向を認識する。そして、超音波画像取得部121は、画像解析部131による解析結果に基づいて、ロボット6220の動作を制御せしめ、超音波プローブ6211にガイドワイヤ3の先端を追尾させる。
位置検出システム10Aの超音波画像取得部121は、ロボット6220を制御しながら超音波撮像装置621から超音波エコー画像を取得する(S31)。位置検出システム10Aの画像解析部131は、取得された超音波エコー画像を解析することにより、ガイドワイヤ3の先端位置を検出し(S32)、さらにガイドワイヤ3の先端の方向を検出する(S32)。
超音波画像取得部121は、画像解析部131の解析結果に従い、超音波プローブ6211がガイドワイヤ3の先端を追尾するように、ロボット6220を介して超音波プローブ6211の位置を制御する(S34)
画像解析部131は、超音波プローブ6211により取得した超音波エコー画像から、被検体SUの血管3Dモデル4をほぼリアルタイムで生成できる(S35)。手術前に、超音波撮像装置621またはX線CT装置などで血管3Dモデル4が作成されている場合、その作成済みの血管3DモデルをステップS35によって自動的に更新し、最新状態の血管3Dモデルを得ることもできる。
位置検出システム10Aの表示制御部140は、血管3Dモデル4にガイドワイヤ3の位置を対応付けて画面に表示し(S36)、さらに操作支援情報を算出して画面に表示させる(S37)。
このように構成される本実施例は、超音波プローブ6211の位置、姿勢および押し付け力をロボット6220によって自動制御し、さらに、超音波エコー画像を解析してガイドワイヤ3の位置および方向を検出し、超音波プローブ6211をガイドワイヤ3に自動追尾させる。したがって、本実施例によれば、血管3Dモデル4を生成または更新しながら、ガイドワイヤ3の位置等を検出して血管3Dモデル4に対応付けて表示させることができる。
位置検出システム10Aは、超音波プローブ6211の位置を制御しながら(S41)、超音波撮像装置621から超音波エコー画像を取得し(S42)、血管3Dモデルを生成して記憶装置103に保存する(S43,S44)。
手術が始まると、位置検出システム10Aの血管3Dモデル取得部110は、ステップS44で保存された血管3Dモデル4を取得する(S51)。超音波画像取得部121は、超音波撮像装置621から通信制御装置623および通信ネットワークCN等を介して、超音波エコー画像を取得する(S52)。画像解析部131は、取得された超音波エコー画像からガイドワイヤ3の位置を検出する(S53)。
表示制御部140は、血管3Dモデル4にガイドワイヤ3の位置を表示させると共に(S54)、操作支援情報を算出して画面に表示させる(S55)。そして、超音波画像取得部121は、ガイドワイヤ3の先端を追尾するように、超音波プローブ6211の位置を算出し、ロボット制御装置622に送信する(S76)。ロボット制御装置622は、超音波画像取得部121からの指示に基づいてロボット6220を制御し、超音波プローブ6211をガイドワイヤ3の先端に追尾させる。