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特開2023-178456スマート放出のための非注射用ヒドロゲル製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178456
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】スマート放出のための非注射用ヒドロゲル製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20231207BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 9/32 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 9/22 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231207BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20231207BHJP
   A61K 9/52 20060101ALI20231207BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K45/00
A61K9/10
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/02
A61K47/22
A61K9/51
A61K9/70
A61K9/32
A61K9/22
A61P31/00
A61P29/00
A61P37/02
A61K31/706
A61K9/52
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023183852
(22)【出願日】2023-10-26
(62)【分割の表示】P 2023088412の分割
【原出願日】2019-09-10
(31)【優先権主張番号】62/744,489
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519396429
【氏名又は名称】アリヴィオ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デレク ジー. ヴァン デル ポル
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ジェイ. ブラシオリ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ティー. ズゲイツ
(57)【要約】
【課題】スマート放出のための非注射用ヒドロゲル製剤の提供。
【解決手段】ゲル化剤、例えばパルミチン酸アスコルビルのような食品医薬品局の一般に安全と認められる(GRAS)化合物から形成された自己集合性ヒドロゲルを含む、カプセル、錠剤、経口懸濁液、浣腸および直腸または膣の坐剤または挿入物の形態の非注射用製剤または滴下注入用製剤が開発された。好ましい実施形態において、製剤は、特に薬剤の組織レベルと比較してより低い血中レベルが好ましい場合に、経口投与することができる抗炎症薬、抗感染薬、またはその他の治療薬、予防薬もしくは診断薬を含有する。最も好ましい製剤において、組成物は、ナノ構造を含有するタクロリムス充填パルミチン酸アスコルビルゲルマイクロファイバー(「ヒドロゲル」)を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2018年10月11日に出願された米国仮出願第62/744,489号に基づく利益および優先権を主張し、その全体は、参考として本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本願は、一般には、経口懸濁液、錠剤およびカプセルを含む自己集合性(self-assembling)ナノ構造から形成された自己集合性ヒドロゲルに基づく製剤からの、タクロリムスな
どの薬剤の経口制御送達の分野である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
薬物送達のためのインビボにおいて安定である自己集合性ゲルが、米国特許出願公開第2017/0000888号に記載されている。分子が規定された高次構造を形成するための自己集合は、主に共有結合によらない相互作用に依存する。自己集合から形成される構造体は、集合過程の間に溶液中の分子を捕捉することができる。これらの構造体は、ゲルの形態で投与すること、乾燥および再水和させてゲルを形成することが可能であり、または機械的にゲル粒子へと分割され、分割されたゲル粒子を疎水性および親水性剤の送達のために注射することができる。ほとんどの自己集合性ゲルは、理論的には、親水性-疎水性相互作用のために自発的に集合し得る両親媒性化合物から形成される。
【0004】
これらの両親媒性物質を媒体中に均質に分散させるために、37~40℃を超える加熱および/または有機溶媒の添加が一般に必要であり、その結果、冷却すると、両親媒性物質は、整列したナノ構造およびマイクロ構造に集合し、次いで、自立性ゲルを形成することができる。ゲルは、薬剤の制御放出のための貯蔵場所として薬物送達のために有用であり、組織修復のための足場として望ましい生化学的および機械的特性を有し得る。
【0005】
これらのゲルは、注射によって投与される場合、制御された薬物送達のための貯蔵所(depos)として有用であるが、経口製剤を提供することができれば有利であろう。経口製剤は投与が容易であるが、注射用製剤とは完全に異なる薬物動態学的および製剤上の問題を有する。
【0006】
したがって、本発明の目的は、自己集合性ゲル組成物および経口製剤を製造するためにその中に薬剤を充填する方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、胃腸での吸収を制御することおよび毒性またはその他の副作用を引き起こす上昇した血中レベルをもたらし得るバースト放出を回避することが極めて重要であるタクロリムスなどの薬剤を送達するための自己集合性ゲル経口組成物を提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、捕捉されたおよび/または封入された不安定な薬剤の活性を維持し、長期の制御放出を与える自己集合性ゲル経口組成物を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、カプセル、錠剤またはゲル懸濁液として投与するための経口製剤を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、浣腸を介して直腸内に、膣内に、または膀胱内への滴下注入としてゲル懸濁液を投与する方法を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0000888号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
パルミチン酸アスコルビルのような食品医薬品局の一般に安全と認められる(GRAS)化合物などのゲル化剤から構成され、治療薬、予防薬および/または診断薬を送達するために、カプセル、錠剤、経口懸濁液、浣腸および直腸もしくは膣坐剤もしくはインサート、または滴下注入用の懸濁液へとさらに加工された自己集合性ヒドロゲルの粒子を含有する製剤が開発された。好ましい実施形態において、特に薬剤の組織レベルと比較してより低い血中レベルが好ましい場合、製剤は、経口投与することができる抗炎症薬、抗感染薬またはその他の治療薬および予防薬を含有する。最も好ましい製剤において、組成物は、ナノ構造を含有するタクロリムス充填パルミチン酸アスコルビルゲルマイクロファイバー(「ヒドロゲル」)を含有する。タクロリムスは、水への溶解度が低いため、ヒドロゲル中に封入することが特に困難であり、まずゲル化剤を含有するメタノールなどの有機溶媒に溶解し、次いで溶液に水を添加し、次いで、冷却して薬物充填ヒドロゲルを形成する前に、確実に完全に溶解させるために適切な温度で加熱する必要がある。
【0013】
タクロリムスなどの治療薬または予防薬は、まずパルミチン酸アスコルビルなどのゲル化剤で薬物の均質な溶液を形成することによってヒドロゲル中に組み込まれる。典型的には、この有機溶液は水相と混合され、次いで、薬物およびゲル化剤の両方を確実に完全に溶解させるために加熱される。この溶液は、冷却するとゲルを形成する。次いで、別々の薬物充填ヒドロゲル粒子を形成するために、機械的撹拌を使用してゲルを溶液中に懸濁させ、残留薬物または溶媒を除去するために、水または水性緩衝液でさらに洗浄することができる。次いで、粒子は、経口、直腸、膣または膀胱滴下注入製剤として使用するために、賦形剤を含有する水性ビヒクル中に再懸濁することができる。あるいは、薬物充填マイクロファイバーは、経口もしくは直腸投与のために、凍結乾燥し、賦形剤と混和し、次いでカプセル中に充填しもしくは錠剤へと圧縮し、または坐剤へと製剤化することができる。最も好ましい実施形態では、充填されたカプセルまたは錠剤は、腸溶性ポリマー、または放出を制御もしくは持続するために使用されるポリマーでコーティングされる。製造助剤、充填剤、結合剤、崩壊剤または安定化剤として作用するために、様々な賦形剤を含めることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、ゲルまたはゲル粒子中の薬剤およびゲル化剤の総重量と比較した薬剤の重量パーセントは、約0.1%~約30%、好ましくは約0.5%~約15%、最も好ましくは約2%~約12%である。いくつかの実施形態において、薬剤はタクロリムスであり、必要に応じてゲル化剤はパルミチン酸アスコルビルである。
【0015】
いくつかの実施形態では、錠剤またはカプセル製剤(賦形剤を含む)中のゲル粒子の重量パーセントは、約2%~約80%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約60%である。いくつかの実施形態では、賦形剤は、デンプングリコール酸ナトリウムおよびマンニトールを含む。
【0016】
本発明のタクロリムス充填ゲル粒子を充填された腸溶性カプセルは、GI部位特異的なカプセル溶解を可能にし、炎症組織におけるより高い局所タクロリムスレベルの制御放出のための手段を提供するが、従来のタクロリムス製剤とは対照的にタクロリムスの全身レベルを低下させる。
【0017】
製剤は、ゲルの形態で提供され、投与部位で再水和されもしくは投与のために水和される乾燥された形態で投与するために凍結乾燥され、粒子もしくは分散液へと破壊され、または1もしくはそれを超える追加の治療薬もしくは予防薬と同時投与されることができる。
【0018】
好ましい実施形態では、製剤は、ゲル粒子の懸濁液として経口投与され、または乾燥して腸溶性カプセルもしくは錠剤中に、または坐剤もしくはインサートの形態のナノ構造化ヒドロゲルとして充填される。頻繁に投与することが困難であり、身体および胃腸(GI)管の特定の部分に対してのみ使用することができる浣腸製剤または注射の限局された範囲とは対照的に、製剤がGI管のより多くの部分に到達することができるので、経口送達用カプセル中のナノ構造ゲルの利点は、患者の服薬順守を改善し、対処可能な患者集団の幅を広げる。実施例は、薬物充填ゲル粒子の懸濁液として局所的に投与された場合、または乾燥され、部位特異的GI送達のために腸溶性カプセルに充填された場合に、製剤が同じように機能することを実証する。
【0019】
自己集合性ゲル、その懸濁製剤または粒子製剤は、疾患または障害の1またはそれを超える症候を緩和し、予防し、または処置するための有効投与量の治療薬または予防薬を送達するために投与される。投与は、経口、膣に、直腸(浣腸)に、またはインサートとして、または膀胱などの体管腔内への滴下注入によるものであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A図1A~1Dは、薬物(タクロリムス)がゲルの疎水性領域中に分配された自己集合性ゲルである、高分子を形成するために使用された化学構造を示す概略図(1A)である。ゲルは、SEMによって示されるように、ナノファイバーまたはマイクロファイバーの形態を示す(1B)。ゲルは凍結乾燥し、微粒子化し(1C)、ゲルカプセル中に封入するか、または経口送達のために液体懸濁液中に再懸濁することができる(1D)。
図1B図1A~1Dは、薬物(タクロリムス)がゲルの疎水性領域中に分配された自己集合性ゲルである、高分子を形成するために使用された化学構造を示す概略図(1A)である。ゲルは、SEMによって示されるように、ナノファイバーまたはマイクロファイバーの形態を示す(1B)。ゲルは凍結乾燥し、微粒子化し(1C)、ゲルカプセル中に封入するか、または経口送達のために液体懸濁液中に再懸濁することができる(1D)。
図1C図1A~1Dは、薬物(タクロリムス)がゲルの疎水性領域中に分配された自己集合性ゲルである、高分子を形成するために使用された化学構造を示す概略図(1A)である。ゲルは、SEMによって示されるように、ナノファイバーまたはマイクロファイバーの形態を示す(1B)。ゲルは凍結乾燥し、微粒子化し(1C)、ゲルカプセル中に封入するか、または経口送達のために液体懸濁液中に再懸濁することができる(1D)。
図1D図1A~1Dは、薬物(タクロリムス)がゲルの疎水性領域中に分配された自己集合性ゲルである、高分子を形成するために使用された化学構造を示す概略図(1A)である。ゲルは、SEMによって示されるように、ナノファイバーまたはマイクロファイバーの形態を示す(1B)。ゲルは凍結乾燥し、微粒子化し(1C)、ゲルカプセル中に封入するか、または経口送達のために液体懸濁液中に再懸濁することができる(1D)。
【0021】
図2図2は、挿入図内に特徴的なナノ構造が示されている、腸溶性カプセル中に封入され、ヒトに経口投与されている薬物充填ゲルの概略図である。
【0022】
図3図3は、100μg/mLのリパーゼに曝露されたゲルの経時的な(時間)%APまたは%ASとして測定された、ステアリン酸アスコルビル(「AS」)およびパルミチン酸アスコルビル(「AP」)のゲル分解のグラフである。
【0023】
図4図4は、0、10、30および100μg/mLのリパーゼに曝露されたゲルについての、経時的(時間)に残存する%タクロリムス(AP)として測定されたゲル分解のグラフである。
【0024】
図5図5は、リパーゼありおよびなしでのタクロリムス放出のグラフである。
【0025】
図6A図6Aは、空腸病変スコア対製剤のグラフである。
【0026】
図6B図6Bは、空腸タクロリムス濃度対製剤のグラフである。
【0027】
図6C図6Cは、ジェネリックのプログラフ(タクロリムス)およびヒドロゲル封入されたタクロリムスについての血中タクロリムス濃度対時間のグラフである。
【0028】
図7図7は、ヒドロゲル封入されたタクロリムスカプセル製剤に対する空腸病変スコアのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
I.定義
「ゲル化剤」という用語は、1またはそれを超える溶媒中で、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、イオン性相互作用、π-πスタッキングまたはこれらの組み合わせなどの共有結合によらない相互作用を通じて自己集合することができる分子を指す。ゲル化剤には、ヒドロゲル化剤(例えば、ヒドロゲルを形成するゲル化剤)および有機ゲル化剤(例えば、有機ゲルを形成するゲル化剤)が含まれ得る。いくつかの実施形態では、ゲル化剤はヒドロゲルと有機ゲルの両方を形成することができる。
【0030】
「自己集合性」(self-assembling)という用語は、自発的に集合または組織化して、適
切な環境中でヒドロゲルなどのより高度に秩序化した構造を形成する分子の能力を指す。本明細書で使用される場合、ゲル化剤は、ゲル化剤分子間の非共有結合によって組織化されたナノ構造が形成される条件下で溶液中に沈殿し、ヒドロゲルを形成するために水和される。
【0031】
「ヒドロゲル」という用語は、水が主要成分である、共有結合的に(例えば、ポリマー性ヒドロゲル)または共有結合によらずに(例えば、自己集合性ヒドロゲル)結び付いた分子の三次元(3-D)ネットワークを指す。ゲルは、ゲル化剤の自己集合によって、またはゲル化剤の化学的架橋によって形成され得る。ヒドロゲルを形成するために、水系ゲル化剤を使用することができる。
【0032】
「共集合」(co-assembly)という用語は、適切な環境中でヒドロゲルなどのより高度に
秩序化された構造を形成するための少なくとも2つの異なる種類の分子の自発的な集合または組織化の過程を指し、この構造中の分子は一般に秩序化された様式で組織化されている。
【0033】
「有機溶媒」という用語は、その液相で固体物質を溶解することができる任意の炭素含有物質を指す。有機化学において一般的に使用される例示的な有機溶媒には、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、ジクロロメタンおよびヘキサンが含まれる。
【0034】
「水混和性」という用語は、あらゆる割合で水と混合して単一の均質な液相を形成する溶媒を指す。これには、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、メタノールおよびジオキサンなどの溶媒が含まれるが、一般に、ヘキサン、油およびエーテルなどの溶媒は除外される。また、酢酸エチルおよびジクロロメタンなどの水へのいくらかの極めて限定された混和性または溶解性を有する溶媒も除外され、これらは実質的に非混和性であると考えられる。
【0035】
「封入されたパーセント(%)」または「封入百分率」という用語は、一般に、封入された%=封入された薬剤の重量÷当初の薬剤の合計(封入+非封入)の重量×100%として計算される。
【0036】
「封入効率(EE)」という用語は、一般に、EE(%)=実験的な/測定された薬物充填量÷理論的薬物充填量×100%として計算される。
【0037】
ゲル重量パーセント(w/v):総溶媒体積(すなわち、ヒドロゲルのための有機溶媒+水)の百分率としてのゲル化剤の総質量。
【0038】
薬物充填効率(w/w):ゲル化剤(両親媒性物質)および共ゲル化剤(存在する場合)の総質量に対する百分率としての薬剤の質量。
【0039】
「薬学的に許容され得る」という用語は、本明細書において使用される場合、米国食品医薬品局などの機関の指針に従って、合理的な便益/リスク比に相応して過剰な毒性、刺激、アレルギー性応答またはその他の問題もしくは併発症なしに、健全な医学的判断の範疇内で、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適している、化合物、物質、組成物および/または剤形を表す。
【0040】
本明細書で使用される「生体適合性」および「生物学的に適合性」という用語は、一般に、任意のその代謝産物または分解産物と共に、一般にレシピエントに対して非毒性であり、レシピエントに著しい有害作用を引き起こさない物質を指す。一般的に言えば、生体適合性材料は、患者に投与された場合に著しい炎症または免疫応答を誘発しない材料である。
【0041】
本明細書で使用される「親水性」という用語は、水に対して親和性を有するという特性を指す。例えば、親水性ポリマー(または親水性ポリマーセグメント)は、水溶液中に主に可溶性であり、および/または水を吸収する傾向を有するポリマー(またはポリマーセグメント)である。一般に、ポリマーの親水性が高いほど、ポリマーは水の中に溶解し、水と混合し、または水によって濡れる傾向が高くなる。
【0042】
本明細書で使用される「疎水性」という用語は、水に対する親和性を欠如するまたは水をはじくという特性を指す。例えば、ポリマー(またはポリマーセグメント)の疎水性が高いほど、そのポリマー(またはポリマーセグメント)は水の中に溶解しない、水と混合しない、または水によって濡れない傾向が高くなる。
【0043】
本明細書で使用される「界面活性剤」という用語は、液体の表面張力を低下させる因子を指す。
【0044】
本明細書で使用される「小分子」という用語は、一般に、分子量が約2000g/mol未満、約1500g/mol未満、約1000g/mol未満、約800g/mol未満、または約500g/mol未満である有機分子を指す。小分子は、非ポリマー性および/または非オリゴマー性である。
【0045】
本明細書で使用される「コポリマー」という用語は、一般に、2またはそれを超える異なるモノマーで構成される単一のポリマー性材料を指す。コポリマーは、ランダム、ブロック、グラフトなどの任意の形態であり得る。コポリマーは、キャップされた末端基または酸末端基を含む任意の末端基を有することができる。
【0046】
本明細書で使用される「胃耐性天然ポリマー」は、胃の酸性pHに不溶性である天然ポリマーまたは天然ポリマーの混合物を指す。
【0047】
本明細書で使用される「皮膜形成天然ポリマー」は、噴霧、ブラッシングまたは様々な工業過程によって塗布され、皮膜形成を生じる表面コーティングに有用なポリマーを指す。ほとんどの皮膜形成過程では、比較的低粘度の液体コーティングが固体基材に塗布され、硬化されて、使用者が所望する特性を有する固体の高分子量ポリマーベースの接着性皮膜になる。最も一般的な用途では、この皮膜は、0.5~500マイクロメートル(0.0005~0.5ミリメートル、または0.00002~0.02インチ)の範囲の厚さを有する。
【0048】
「治療薬」という用語は、疾患または障害の1またはそれを超える症候を予防または処置するために投与することができる薬剤を指す。治療薬は、核酸もしくはその類似体、小分子(2000ダルトン未満、より典型的には1000ダルトン未満の分子量)、ペプチド模倣体、タンパク質もしくはペプチド、炭水化物もしくは糖、脂質、またはこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、細胞または細胞材料が治療薬として使用され得る。
【0049】
疾患、障害または症状を「処置する」または「予防する」という用語は、疾患、障害および/または症状の素因を有する可能性があるが、当該疾患、障害および/または症状を有するとまだ診断されていない動物において、疾患、障害または状態が起きないようにすること;疾患、障害または症状を阻害すること、例えば、その進行を妨げること;ならびに疾患、障害または症状を軽減すること、例えば、疾患、障害および/または症状の退行を引き起こすこと。疾患、障害または症状を処置することには、たとえ鎮痛剤が疼痛の原因を処置しなくても、鎮痛剤の投与によって対象の疼痛を処置するなど、たとえ基礎となる病態生理が影響を受けなくても、特定の疾患、障害または症状の少なくとも1つの症候を改善することが含まれる。
【0050】
「治療有効量」という用語は、自己集合性ゲル組成物中におよび/または自己集合性ゲル組成物上に組み込まれたときに、任意の処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で何らかの所望の効果を生じる、生物学的薬剤などの治療薬または予防薬の量を指す。有効量は、処置されている疾患、障害もしくは症状、投与されている特定の製剤、対象のサイズ、または疾患、障害もしくは症状の重症度などの要因に応じて変動し得る。
【0051】
「組み込まれた」、「封入された」および「捕捉された」という用語は、治療薬または予防薬が組み込まれ、封入され、および/または捕捉される様式にかかわらず、ゲル組成物またはその中に形成されたナノ構造中に治療薬または予防薬を組み込むことおよび/または封入することおよび/または捕捉することを指す。
【0052】
「GRAS」は、Generally Recognized as Safe(一般に安全と認められる)という語句の頭字語である。連邦食品医薬品化粧品法(法)の第201条(s)および第409条に基づき、意図的に食品に添加される物質はいずれも食品添加物であって、当該物質がその意図される使用の条件下で安全であることが十分に証明されていると、資格を有する専門家の間で一般に認識されていなければ、または当該物質の使用が食品添加物の定義からその他除外されていなければ、FDAによる市販前審査および承認の対象となる。法の第201条(s)および第409条ならびに連邦規則集第21巻170.3および連邦規則集第21巻170.30のFDA施行規則に基づき、食品物質の使用は、科学的手順を通じて、または1958年より前に食品中に使用されていた物質については、連邦規則集第21巻170.30(b)に基づき食品での一般的な使用に基づく経験を通じてGRASとなり得、科学的手順を通じて安全性が一般的に認められるには、当該物質が食品添加物として承認を得るために必要とされるのと同一の量および質の科学的証拠が必要とされる。科学的手順を通じた安全性の一般的な認識は、通常は公開されている一般的に入手可能で一般に受け入れられた科学的データ、情報または方法の適用ならびに科学的原理の適用を基礎としており、公開されていない科学的データ、情報または方法の適用によって補強され得る。連邦規則集第21巻によって定義された要件を満たす化合物のデータベースは、第21巻:食品および薬品、第184章に見出される。
【0053】
数値範囲には、温度の範囲、重量濃度の範囲、分子量の範囲、整数の範囲および時間の範囲などが含まれるが、これらに限定されない。範囲は、その中に包含される部分範囲および部分範囲の組み合わせを含む。「約」という用語の使用は、「約」という用語が修飾する表記値をおよそ+/-10%の範囲で上回るまたは下回る値を記載することを意図しており、他の例では、値は、およそ+/-5%の範囲で表記値を上回るまたは下回る値にわたり得る。「約」という用語が数字の範囲(すなわち、約1~5)の前または一連の数字の前(すなわち、約1、2、3、4など)に使用される場合、別段の指定がない限り、数字の範囲の両端または一連の数字のそれぞれを修飾することが意図される。
【0054】
II.製剤
自己集合性ゲル
図1は、薬物(タクロリムス)がゲルの疎水性領域中に分配された自己集合性ゲルを形成するために使用された化学構造を示す概略図である。ゲルは、SEMによって示されるナノファイバーまたはマイクロファイバー形態からなる。過剰な溶媒および/または薬物を除去するためにさらに処理することができる薬物充填ゲル粒子を形成するために、ゲルは機械的に撹拌することができる。次いで、経口、直腸、膣または膀胱送達用のゲル懸濁液を形成するために、精製されたゲル粒子は、賦形剤を含有する適切なビヒクル中に再懸濁することができる。あるいは、ゲル粒子は、凍結乾燥してカプセル中に充填すること、圧縮して錠剤にすること、または経口送達もしくは以下に記載される他の投与様式のために液体ビヒクル中に再懸濁することができる。
【0055】
1.ゲル化剤
ゲルを形成するための自己集合に適している両親媒性ゲル化剤、好ましくは米国食品医薬品局のGenerally Required as Safe(「GRAS」)のリストの要件を満たすもの(本明細書では「GRASゲル化剤」と総称する)は、一般に2,500Da未満であり、酵素切断可能であり得る。両親媒性ゲル化剤は、マイクロ/ナノ構造(例えば、層状、ミセル、小胞および/または繊維状構造)から形成され、マイクロ/ナノを含むゲルへと自己集合する。
【0056】
いくつかの実施形態では、両親媒性ゲル化剤は、アルカン酸アスコルビル、アルカン酸ソルビタン、モノアルカン酸トリグリセロール、アルカン酸スクロース、グリココール酸またはこれらの任意の組み合わせである。好ましい実施形態では、ゲル化剤はパルミチン酸アスコルビルおよびステアリン酸アスコルビルである。分子の「アスコルビル」部分は、マイクロファイバーの炎症標的化特性を付与するものである。実施例3は、ステアリン酸アスコルビルマイクロファイバー懸濁液の調製、ならびにパルミチン酸アスコルビル(AP)およびステアリン酸アスコルビル(AS)ゲルのリパーゼに対する感受性の比較を記載する。さらなる好ましいゲル化剤としては、モノステアリン酸トリグリセロール、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタンおよびステアロイル乳酸ナトリウムを挙げることができる。
【0057】
アルカノアートは、不安定な結合(例えば、エステル、カルバマート、チオエステルおよびアミド結合)を介してアスコルビル、ソルビタン、トリグリセロールまたはスクロース分子に結合された疎水性C~C22アルキル(例えば、アセチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、カプリリル、カプリル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、アラキジルまたはベヘニル)を含むことができる。例えば、アルカン酸アスコルビルは、パルミチン酸アスコルビル、デカン酸アスコルビル、ラウリン酸アスコルビル、カプリル酸アスコルビル、ミリスチン酸アスコルビル、オレイン酸アスコルビルまたはこれらの任意の組み合わせであり得る。アルカン酸ソルビタンは、モノステアリン酸ソルビタン、デカン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、カプリル酸ソルビタン、ミリスチン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンまたはこれらの任意の組み合わせであり得る。モノアルカン酸トリグリセロールは、モノパルミチン酸トリグリセロール、モノデカン酸トリグリセロール、モノラウリン酸トリグリセロール、モノカプリル酸トリグリセロール、モノミリスチン酸トリグリセロール、モノステアリン酸トリグリセロール、モノオレイン酸トリグリセロールまたはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。アルカン酸スクロースは、パルミチン酸スクロース、デカン酸スクロース、ラウリン酸スクロース、カプリル酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、オレイン酸スクロースまたはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。代表的な低分子量GRAS両親媒性ゲル化剤としては、ビタミン前駆体、例えばパルミチン酸アスコルビル(ビタミンC前駆体)、酢酸レチニル(ビタミンA前駆体)および酢酸α-トコフェロール(ビタミンE前駆体)が挙げられる。
【0058】
いくつかの形態では、両親媒性ゲル化剤は、エステル化またはカルバマート、無水物および/またはアミド結合を通じて、C~C30基を有する1またはそれを超える飽和または不飽和炭化水素鎖を、低分子量の、一般的には親水性の化合物と合成的に結合することによって形成される。範囲C~C30は、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19などをC30まで、ならびにC~C30の中に入る範囲、例えばC~C29、C~C30、C~C28などを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、酢酸アルファトコフェロール、酢酸レチニル、パルミチン酸レチニルまたはこれらの組み合わせは、ゲル化剤と共集合することができる。
【0060】
典型的には、反転に対して安定な(例えば、室温、およそ25℃で反転させたときに流れに抵抗する)粘性ゲルを形成するために、3%超、4%超、5%超(wt/vol)またはそれを超えるゲル化剤が液体媒体中に完全に溶解される。ゲルは、独立して、重量/体積で約4、約5、約10または約15~約40%(~約40、~約30、~約20、~約15、~約10、~5)の両親媒性ゲル化剤を含むことができる。
【0061】
いくつかの形態では、自己集合性ゲル組成物は、2500またはそれ未満の分子量を有する酵素切断可能な第1のゲル化剤および非独立の第2のゲル化剤を含む。非独立のゲル化剤は、酵素切断可能なゲル化剤と組み合わされると、典型的には自立性ゲルを形成する濃度では自立性ゲルを形成しない。例示的な非独立の第2のゲル化剤としては、酢酸アルファトコフェロール、酢酸レチニルおよびパルミチン酸レチニルが挙げられる。非独立のゲル化剤は、第1のゲル化剤と共集合して、自己集合性ゲルを形成する。
【0062】
ゲルは、独立して、ゲルの体積当たり約3から最大30~40重量%の、より好ましくは約4%~10%のゲル化剤を含むことができる。30~40%を超えると、ゲルが溶液から析出し始めるか、または注射可能性が低くなる。
【0063】
2.ゲル化媒体
ゲル化剤が自己集合性ゲルを形成するための液体媒体には、一般に、水溶液または有機溶媒と水(または水性緩衝液もしくは塩溶液)の二溶媒系または水性-有機性混合溶媒系が含まれる。ゲル化後、有機溶媒は完全に除去される、または実質的に除去される(すなわち、得られたゲル中に約5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%未満またはそれ未満の重量の有機溶媒)。
【0064】
一実施形態では、ゲル化剤は、好ましくは強い機械的混合および/または加熱を用いて、水溶液中で均一になるまで混合および/または溶解される。別の実施形態では、ゲル化溶液を形成するために、水(または水性緩衝液もしくは塩溶液)と水混和性有機溶媒の両方を含む共溶媒媒体が使用される。
【0065】
あるいは、ゲル化剤を溶質として有する溶液(「ゲル化剤溶液」と呼ばれる)を形成するために、まず有機溶媒の中にゲル化剤を溶解させることができ、続いて、ゲル化媒体を形成するために、水(または水性緩衝液もしくは塩溶液)を添加することができる。
【0066】
ゲル化媒体中で使用される有機溶媒は、その中でのゲル化剤の溶解度、その極性、疎水性、水混和性、および一部の事例では酸性度に基づいて選択することができる。適切な有機溶媒には、水混和性溶媒またはかなりの水溶性(例えば、5g超/100gの水)を有する溶媒、例えば、DMSO、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、酪酸ヘキシル、グリセロール、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、アルコール、例えばエタノール、メタノールまたはイソプロピルアルコール、ならびに低分子量ポリエチレングリコール(例えば、37℃で融解する1kDaのPEG)が含まれる。他の形態では、自己集合性ゲル組成物は、水、ベンゼン、トルエン、四塩化炭素、アセトニトリル、グリセロール、1,4-ジオキサン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、メタノール、クロロホルム、ヘキサン、アセトン、N,N’-ジメチルホルムアミド、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、テトラヒドロフラン、キシレン、メシチレン、および/またはこれらの任意の組み合わせなどの極性または非極性溶媒を含むことができる。ゲル化のための有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、酪酸ヘキシル、グリセロール、アセトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、エタノールおよびメタノールが挙げられる。脂肪アルコールまたは長鎖アルコールも使用され得る。脂肪アルコールまたは長鎖アルコールは、通常、高分子量の直鎖第一級アルコールであるが、天然の脂肪および油に由来するわずか4~6個の炭素から22~26個の炭素までの範囲であってもよい。いくつかの商業的に重要な脂肪アルコールは、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールおよびオレイルアルコールである。不飽和であるものもあり、分岐しているものもある。
【0067】
水性溶媒は、典型的には、滅菌され得、蒸留水、脱イオン水、純水または超純水から選択され得る水である。いくつかの例では、水性溶媒は、生理食塩水などの水溶液、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リンゲル液および等張塩化ナトリウムなどの塩および/または緩衝液を含有するその他の生理学的に許容され得る水溶液、または動物もしくはヒトなどの対象への投与に関して許容され得る任意のその他の水溶液である。水などの水性溶媒の量は、典型的には、使用される有機溶媒の量に基づき、有機溶媒の選択された総体積または重量パーセントが、水または水溶液の体積または重量パーセントを決定した(例えば、30v/v%の有機溶媒であれば、70v/v%の水)。
【0068】
いくつかの例では、有機溶媒の量は、水溶液(例えば、必要に応じて1またはそれを超えるさらなる薬剤を含有する、水、水性緩衝液、塩水溶液)の体積と比較して、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10以下またはそれ未満の体積である。すなわち、均質なゲルを形成するのに使用される液体の総量中の有機溶媒の体積量は、一般に、粒子については、約50%、33%、25%、20%、17%、14%、12.5%、11%、10%または9%未満、およびさらに著しく少ない、典型的には1%未満である。
【0069】
ゲル化は、約30~100℃、約40~100℃、約50~100℃、約60~100℃、約70~100℃、約90~100℃、約30~90℃、約40~90℃、約50~90℃、約60~90℃、約70~90℃、約80~90℃、約40~80℃、約50~80℃、約60~80℃、約70~80℃、約30~70℃、約40~70℃、約50~70℃、約60~70℃、約30~60℃、約40~60℃、約50~60℃、約30~50℃または約40~50℃の範囲の温度にゲル化媒体を加熱することを必要とし得る。一部の例では、加熱を必要としないか、または必要であれば、概ね体温(37℃)まで加熱すると、反転に対して安定な均質な自立性ゲルが生成される。他の実施形態では、ゲル化媒体は完全に溶解するまで加熱され、その後、約37℃または約20~25℃の室温まで冷却する。
【0070】
ゲル化は、加熱ありまたは加熱なしで行うことができる。加熱された場合、加熱されたゲル化溶液が冷却されるにつれてゲル化が起こり得る。室温で約1~2時間安定な表面上にゲルを放置すると、一貫した自立性ゲルが得られる。自立性ゲルは、最小限の沈殿物を有する規則正しく組み立てられたマイクロまたはナノ構造を含む。これは、光学顕微鏡または電子顕微鏡を使用して確認することができる。
【0071】
ゲル化剤および溶媒は、自立性ゲルを形成するために、適切なゲル化剤濃度ならびに水性-有機性混合物溶媒系の適切な体積および比、またはその両方で選択される。好ましくは、ゲル化剤溶液は、水溶液の添加前に固化または沈殿すべきではない。有機溶媒の量を増加させることまたは有機溶媒中のゲル化剤の濃度を低下させることによって、ゲル化剤溶液の固化を抑制し得る。(有機溶媒中の)ゲル化剤溶液が水溶液と混合されると、流動性の塊/凝集物ではなく、(必要であれば加熱後に)反転に対して安定な自立性ゲルが形成される。
【0072】
自立性ゲルの形成後、ゲル中の有機溶媒は医薬用途に適した残留レベルまで除去され得る。有機溶媒を除去するために、透析、遠心分離、濾過、乾燥、溶媒交換または凍結乾燥などの1またはそれを超える精製技術を使用することができる。残留有機溶媒は、米国食品医薬品局(FDA)による医薬品の規定された限度内であり、または米国薬局方協会および/もしくは医薬品規制調和国際会議のガイダンスによる承認基準より下である。例えば、ジクロロメタンは600ppm未満、メタノールは3,000ppm未満、クロロホルムは60ppm未満であり、GMPまたはその他の品質に基づく要件による限度内である。
【0073】
マイクロおよび/またはナノ構造
薬剤は、ナノ構造内および/もしくはナノ構造間に封入することができ、ナノ構造に共有結合によらずに結合することができ、またはその両方が可能である。
【0074】
ゲル化剤分子の疎水性部分および親水性部分は相互作用して、ゲル化剤分子のナノ構造(層状、シート、繊維、粒子)を形成することができる。薬剤は、ナノ構造中に挿入されてナノ構造体の一部を形成することができ、ゲルのナノ構造中に封入および/もしくは捕捉することができ、またはその両方が可能である。ヒドロゲルでは、ゲル化剤の疎水性部分は所定のナノ構造の内側領域に位置し、親水性部分はナノ構造の外側表面に位置している。ナノ構造は、約3(例えば、約4から)~約5(例えば、約4まで)ナノメートルの幅および数ミクロンまたはそれを超える(例えば、1ミクロン、2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、20ミクロンまたは25ミクロン)の長さを有することができる。数十または数百の薄層が一緒に束ねられて、繊維およびシート状構造などのナノ構造を形成することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、ナノ構造は、ナノ粒子、ミセル、リポソーム小胞、繊維および/またはシートを含む。いくつかの実施形態では、ナノ構造体は、2nmもしくはそれを超える(例えば、50nmまたはそれを超える、100nmまたはそれを超える、150nmまたはそれを超える、200nmまたはそれを超える、250nmまたはそれを超える、300nmまたはそれを超える、350nmまたはそれを超える)および/または400nmもしくはそれ未満(例えば、350nmまたはそれ未満、300nmまたはそれ未満、250nmまたはそれ未満、200nmまたはそれ未満、150nmまたはそれ未満、100nmまたはそれ未満、500nmまたはそれ未満)の最小寸法を有することができる。いくつかの実施形態では、ナノ構造(例えば、繊維、シート)は、数ミクロン(例えば、1ミクロン、2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、20ミクロンまたは25ミクロン)またはそれを超える長さおよび/または幅を有する。ナノ構造は、網目構造へと凝集することができ、および/または液晶、エマルジョン、フィブリル構造またはテープ状形態の形態であり得る。ナノ構造が繊維の形態である場合、繊維は約2nmまたはそれを超える直径を有することができ、数百ナノメートルまたはそれを超える長さを有することができる。いくつかの実施形態では、繊維は、数ミクロンまたはそれを超える長さ(例えば、1ミクロン、2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、20ミクロンまたは25ミクロン)を有することができる。
【0076】
分解(切断可能な結合)
放出を誘発する刺激は、投与部位または放出が望まれる場所、例えば腫瘍または感染領域における特徴に起因して存在し得る。放出を誘発する刺激は、血液もしくは血清中に存在する状態、または細胞、組織もしくは器官の内部もしくは外部に存在する状態であり得る。放出を誘発する刺激は、低いpHおよび分解酵素の存在を特徴とする。ゲル組成物は、細胞、組織または器官の疾患状態、例えば炎症中に存在する状態下でのみ分解するように設計されてもよく、これにより標的組織および/または器官での薬剤の放出を可能にする。これは、ゲル侵食媒介性および受動拡散媒介性の薬剤放出の代替であり、またはこれらと組み合わせて使用され得る。
【0077】
この応答性放出は、分解可能な化学結合(または官能基)および/または調整可能な共有結合によらない会合力(例えば、静電力、ファンデルワールス力または水素結合力)から形成される結合に基づく。いくつかの実施形態では、これらの結合は、(1)両親媒性ゲル化剤の親水性セグメントと疎水性セグメントの間の分解可能な共有結合、(2)切断時に活性薬物を放出するプロドラッグ型ゲル化剤中に配置される、および/または(3)ゲル化剤と治療薬の間の共有結合によるか、または共有結合によらない会合力である。これらの結合の切断または解離は、(1)薬剤の受動的拡散媒介性の放出と比較して、封入または捕捉された薬剤のより迅速なまたはより大きな放出をもたらし、および/または(2)プロドラッグゲル化剤を放出のために活性薬物へと変換する。
【0078】
放出を誘発する刺激には、インビボでの内因性の環境および使用者が加えた刺激、例えば酵素、pH、酸化、温度、照射、超音波、金属イオン、電気刺激または電磁刺激が含まれる。典型的な応答性結合は、エステル、アミド、無水物、チオエステルおよび/またはカルバマートを含む化学結合に基づいて、酵素および/または加水分解を通じて切断可能である。いくつかの実施形態において、ホスファートをベースとする結合は、ホスファターゼまたはエステラーゼによって切断され得る。いくつかの実施形態において、不安定な結合は、酸化還元切断可能であり、還元または酸化時に切断される(例えば、-S-S-)。いくつかの実施形態において、分解可能な結合は、生理学的温度(例えば、36~40℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、約40℃)で切断され得る。例えば、結合は、温度の上昇によって切断され得る。これは、必要とされる部位においてのみ薬剤が放出されるので、より低い投与量の使用を可能にすることができる。別の利点は、他の器官および組織に対する毒性の低下である。特定の実施形態では、刺激は、超音波、温度、pH、金属イオン、光、電気刺激、電磁刺激およびこれらの組み合わせであり得る。
【0079】
ゲル組成物は、投与部位の状態に基づいて、送達部位においてまたは一定の期間後に制御された分解をするように設計することができる。溶液中の遊離の薬剤と比較して、封入および/または捕捉された薬剤は、自己集合性ゲルはるかに遅く放出され、例えば、封入および/または捕捉された薬剤の30%未満が最初の3日間に放出され、7日間で70%未満が放出される。酵素などの刺激の存在下では、酵素分解可能な結合を有するゲル化剤から形成された自己集合性ゲルは、酵素を欠く媒体中のゲルと比較して、薬剤をより迅速に放出する。
【0080】
3.治療薬、予防薬および/または診断薬
治療薬、予防薬および/または診断薬は、ナノ構造と物理的に捕捉され、封入され、および/または共有結合によらずに会合され得る。薬剤は、1またはそれを超えるゲル化剤、1またはそれを超える安定化剤で共有結合的に修飾されてもよく、またはゲル化剤として使用されてもよい。あるいは、薬剤は、ゲル組成物の集合した規則正しい層状、小胞状および/またはナノ繊維状構造中に組み込まれ、または集合性構造の表面上に配置される。
【0081】
好ましい実施形態では、薬剤は、まずゲルを形成することによって、自己集合性ゲルのナノ構造と物理的に捕捉され、封入され、および/または共有結合によらずに会合される。緩衝液などの水性媒体中にゲルを懸濁すること、この場合、粒子(すなわち、ナノおよび/またはマイクロ粒子)を形成するために、ゲルは、必要に応じてまず破壊され、次いで、ゲル粒子およびその中のナノ構造中に薬剤を封入および/または捕捉するために、得られたゲル粒子懸濁液を、1またはそれを超える治療薬、予防薬および/または診断薬を含有する第2の懸濁液と混合する。薬剤を充填せずにまずゲルを形成し、次いで、その後、(バルクのまたはその粒子へと分解された)自己集合性ゲル中に薬剤を充填する(すなわち、封入および/または捕捉する)ことにより、単一の工程で薬剤と組み合わせてゲルを形成するのではなく、ゲルの特性を維持することが可能であると考えられる。
【0082】
治療薬、予防薬および/または診断薬は、小分子、タンパク質(抗体を含む)、ペプチド、糖および多糖、脂質およびリポタンパク質もしくはリポ多糖、または核酸、例えば低分子干渉RNA、マイクロRNA、PiRNA、リボザイムおよびタンパク質もしくはペプチドをコードするヌクレオチドであり得る。
【0083】
治療薬、予防薬および/または診断薬は、抗炎症剤、非抗炎症剤、ステロイド、リドカインまたはベンゾカインなどの麻酔剤、鎮痛剤、解熱剤、抗菌剤、抗原虫剤、抗真菌剤および抗ウイルス剤などの抗感染剤、免疫抑制剤、化学療法剤、成長因子、サイトカインまたは免疫調節分子としての活性を有し得る。これらの製剤と共に送達され得る多数の薬物が利用可能である。さらなる薬剤としては、駆虫薬、抗不整脈薬、抗高血圧剤、抗凝固剤、抗うつ剤、血糖調節剤、抗てんかん薬、抗痛風剤、抗マラリア剤、抗片頭痛剤、抗ムスカリン剤、抗新生物剤、勃起不全改善剤、抗不安剤、鎮静剤、催眠薬、神経遮断薬、遮断薬、強心薬、利尿薬、ヒスタミンHおよびH受容体拮抗薬、角質溶解薬、脂質調節剤、抗狭心症剤、栄養剤、オピオイド鎮痛剤、性ホルモン、刺激剤、筋弛緩剤、抗骨粗鬆症剤、抗肥満剤、認知強化剤、抗尿失禁剤、栄養油、抗良性前立腺肥大剤、必須脂肪酸、非必須脂肪酸、ビタミン、ミネラルおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0084】
送達に好ましい化合物には、免疫調節剤、例えばタクロリムス、シクロスポリンおよび他のカルシニューリン阻害剤などの免疫抑制剤、生物学的免疫調節剤、例えばGM-CSF、IL-22などのサイトカイン、ならびに抗TNF、抗p19、抗MADCAM、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤などの免疫調節剤のアゴニストおよびアンタゴニスト、再生剤、例えばEP4、エリスロポエチン、関節炎を処置するための抗体、例えばトファシチニブ、ならびに抗感染症および化学療法剤が含まれる。
【0085】
いくつかの実施形態では、上記の2またはそれを超える薬剤を、自己集合性ゲル中のナノ構造に物理的に捕捉、封入、および/または共有結合によらずに会合させ得る。1つの薬剤は、別の封入された薬剤の有効性を増強し得る。
【0086】
治療薬、予防薬および/または診断薬は、一般に、自己集合性ゲル中に、約0.1mg/mL~約100mg/mLの濃度で、ある事例では、約0.1mg/mL~約10mg/mLの濃度で、他の事例では約0.1mg/mL~約5mg/mLの濃度で、またはこれらの中に開示されている範囲で封入され得る。
【0087】
ゲルは、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、元素粒子(例えば、金粒子)または造影剤などの検出可能な標識を含有することもできる。これらは、自己集合性ゲル中のナノ構造内に封入され、分散され、または自己集合性ゲル中のナノ構造に結合され得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、ゲルまたはゲル粒子中の薬剤およびゲル化剤の総重量と比較した薬剤の重量パーセントは、約0.1%~約30%、好ましくは約0.5%~約15%、最も好ましくは約2%~約12%である。いくつかの実施形態において、薬剤はタクロリムスであり、必要に応じてゲル化剤はパルミチン酸アスコルビルである。
【0089】
4.ゲル粒子
自己集合性ゲル組成物では、典型的には、室温で少なくとも10秒間、一部の事例では、約1時間、3時間、1日、2日、3日、1週間またはそれより長い間、容器を反転させたときに重力流は観察されない。自己集合性ゲルは、ゲル化された領域(非流動性)とゲル化されていない液体領域(流動性)との混合物である不均質材料とは異なり、均質であり、室温での反転に対して安定している。自己集合性ゲルは、リポソームまたはミセル懸濁液とも異なる。リポソームまたはミセル懸濁液は自立性ではなく、容器を反転させると流動することができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、自己集合性ゲル組成物は、回復可能なレオロジー特性を有する、すなわち、自己集合性ゲルは、ずり減粘であり、注射に適しており、剪断力の停止後に自立性状態に回復する。自立性状態は、一般に、10パスカル~10,000パスカルの、粘性係数より大きい弾性係数を特徴とする。ゲル化剤の集合のための共有結合によらない相互作用のために、バルクゲルは、剪断力下で(例えば、注射の間に)変形し、押し出され得、剪断力が停止されると、ゲル化剤は自立性の、反転に対して安定な状態(例えば、弾性係数G’が粘性係数G’’より大きい)に再集合する。
【0091】
さらなる製剤化のために、ゲルは、懸濁媒体中での均質化、超音波処理、またはその他分散によって粒子へと形成され、さらに収集される。いくつかの実施形態では、粒子は、100nm~990nm、好ましくは500nm~900nmの流体力学的直径を有するナノ粒子であり、ナノ粒子は、少なくとも2時間にわたって血清中でのサイズの少なくとも50、60、70または80%を維持する。他の実施形態では、粒子は、1μm~数百ミリメートルの範囲の直径を有するマイクロ粒子である。粒子は、約0.1~3000ミクロン、より好ましくは約0.5~1000ミクロンの範囲内のサイズを有することができ、より大きな粒子および/またはその凝集体は、サイズを約0.5~200ミクロンの範囲に縮小するために必要に応じて破壊することができる。いくつかの実施形態において、ナノ粒子および/またはマイクロ粒子は、2nmもしくはそれを超える、50nmもしくはそれを超える、100nmもしくはそれを超える、150nmもしくはそれを超える、200nmもしくはそれを超える、250nmもしくはそれを超える、300nmもしくはそれを超える、350nmもしくはそれを超える、500nmもしくはそれを超える、1,000nmもしくはそれを超える、5,000nmもしくはそれを超える、もしくは10,000nmもしくはそれを超える、および/または10,000nmもしくはそれ未満、5,000nmもしくはそれ未満、1,000nmもしくはそれ未満、500nmもしくはそれ未満、400nmもしくはそれ未満、350nmもしくはそれ未満、300nmもしくはそれ未満、250nmもしくはそれ未満、200nmもしくはそれ未満、150nmもしくはそれ未満、100nmもしくはそれ未満、もしくは50nmもしくはそれ未満の最小寸法を有する。粒子は、ネットワークへと凝集してもよく、および/または液晶、エマルジョンもしくはその他の種類の形態の形態であってもよい。
【0092】
ゲル組成物は、一定期間にわたる制御放出および/または分解のために調製することができる。いくつかの実施形態では、ゲルのナノ構造、例えば繊維内に封入および/または捕捉された薬剤の放出速度を増加または減少させるために使用することができる、上記GRAS両親媒性物質などの1またはそれを超える追加の共ゲル化剤を含めることによって、の放出動態を調整することができる。より典型的には、放出は、粒子、ゲルカプセルまたは錠剤上の腸溶性または粘膜付着性コーティングなどの薬学的賦形剤の改変を通じて制御される。
【0093】
5.ゲル製剤
自己集合性ゲル製剤は、乾燥粉末製剤または液体製剤で調製され得る。ゲルは、典型的には、滅菌されており、または無菌である。例えば、滅菌製剤は、まずゲル化剤および封入されるべき薬剤の滅菌ろ過を行い、続いて無菌環境中でゲルを調製する過程を行うことによって調製することができる。あるいは、すべての処理工程を非滅菌条件下で行うことができ、次いで、得られたヒドロゲルまたはその生成物に対して最終的な滅菌(例えば、ガンマまたはEビーム照射)を適用することができる。
【0094】
乾燥製剤は、溶媒が除去されてキセロゲルが得られる凍結乾燥された自己集合性ゲル組成物を含有する。キセロゲルは粉末形態であり得、これは、貯蔵中に薬剤の無菌性および活性を維持するのに、および所望の形態に加工するのに有用であり得る。キセロゲルは無溶媒であるため、向上した貯蔵寿命を有することができ、比較的容易に輸送および貯蔵することができる。自己集合性ゲルを凍結乾燥するために、ゲルを(例えば、-80℃で)凍結し、一定期間真空乾燥してキセロゲルを得ることができる。
【0095】
あるいは、乾燥製剤は、ゲル化剤の乾燥粉末成分と1またはそれを超える治療薬とを含有し、これらは別個の容器中に保存されるか、または特定の比で混合されて保存される。いくつかの実施形態では、適切な水性および有機溶媒が追加の容器中に含まれる。いくつかの実施形態では、乾燥粉末成分と、1またはそれを超える溶媒と、集合したナノ構造を混合および調製するための手順に関する説明書とがキットに含まれる。
【0096】
液体ゲル製剤は、液体薬学的担体中に懸濁された自己集合性ゲル組成物を含有する。いくつかの形態では、自己集合性ゲルは、投与を容易にするために、および/または毒性を最小限に抑えるための所望の濃度に達するために、水性媒体中に懸濁または再懸濁される。
【0097】
粒子特性は、以下で論じるように、製剤化の前または後に改変され得る。
【0098】
例示的な製剤は、薬剤としてタクロリムスを含有する。いくつかの実施形態では、製剤はゲル化剤としてパルミチン酸アスコルビルを含有する。
【0099】
ゲルまたはゲル粒子中の薬剤およびゲル化剤の総重量と比較した薬剤(すなわち、タクロリムス)の重量パーセントは、約0.1%~約30%、好ましくは約0.5%~約15%、最も好ましくは約2%~約12%、例えば約11%または約2%であり得る。いくつかの実施形態では、製剤は、崩壊剤としてデンプングリコール酸ナトリウムおよび充填剤としてマンニトールを含有する。製剤中のゲル粒子の重量パーセントは、約2%~約80%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約60%、例えば約10%または約60%であり得る。いくつかの実施形態では、製剤は錠剤へ圧縮され、またはEUDRAGIT(登録商標)L 100-55などの腸溶性ポリマーでコーティングされたカプセルに入れられる。
【0100】
III.製造方法
1.自己集合性ゲルの作製
一般に、水混和性有機溶媒は、ゲル化剤を溶解してゲル化剤溶液を形成する。水性媒体(例えば、水、低張溶液、等張溶液または高張溶液)が加えられ、ゲル化剤溶液と混合される。適切な体積比の有機溶媒と水溶液では、水性媒体がゲル化剤溶液と混合されるとすぐにゲル化が始まる。時間が経つにつれて、ゲルは一定になる。室温で少なくとも10秒間、一部の事例では約10分間、30分間、1日間、3日間、1週間、2週間、3週間またはそれより長い間、ゲルが自立性であり、反転に対して安定性である、すなわち「流れやすく」なくまたは重力による流れがなく、好ましくは沈殿物をほとんどまたは全く有さず、その中に凝集物をほとんどまたは全く有さない場合に、ゲル化は完了したとみなされる。自己集合性ゲルは、ゲル化された領域(非流動性)およびゲル化されていない液体領域(流動性)の混合物である不均質材料とは異なり、均質であり、反転に対して安定である。
【0101】
ゲル化媒体中で使用される有機溶媒は、その中でのゲル化剤の溶解度、その極性、疎水性、水混和性、および一部の事例では酸性度に基づいて選択することができる。適切な有機溶媒には、水混和性溶媒またはかなりの水溶性(例えば、5g超/100gの水)を有する溶媒、例えば、DMSO、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、酪酸ヘキシル、グリセロール、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、アルコール、例えばエタノール、メタノールまたはイソプロピルアルコール、ならびに低分子量ポリエチレングリコール(例えば、37℃で融解する1kDaのPEG)が含まれる。他の形態では、自己集合性ゲル組成物は、水、ベンゼン、トルエン、四塩化炭素、アセトニトリル、グリセロール、1,4-ジオキサン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、メタノール、クロロホルム、ヘキサン、アセトン、N,N’-ジメチルホルムアミド、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、テトラヒドロフラン、キシレン、メシチレン、および/またはこれらの任意の組み合わせなどの極性または非極性溶媒を含むことができる。ゲル化のための有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、酪酸ヘキシル、グリセロール、アセトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、エタノールおよびメタノールが挙げられる。別のクラスの有機溶媒、脂肪アルコールまたは長鎖アルコールは、通常、高分子量の直鎖第一級アルコールであるが、天然の脂肪および油に由来するわずか4~6個の炭素から22~26個の炭素までの範囲であってもよい。いくつかの商業的に重要な脂肪アルコールは、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールおよびオレイルアルコールである。不飽和であるものもあり、分岐しているものもある。
【0102】
水性溶媒は、典型的には、滅菌され得、蒸留水、脱イオン水、純水または超純水から選択され得る水である。いくつかの例では、水性溶媒は、生理食塩水などの水溶液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リンゲル液および等張塩化ナトリウムなどの塩および/または緩衝液を含有するその他の生理学的に許容され得る水溶液、または動物もしくはヒトなどの対象への投与に関して許容され得る任意のその他の水溶液である。水などの水性溶媒の量は、典型的には、使用される有機溶媒の量に基づき、有機溶媒の選択された総体積または重量パーセントが、水または水溶液の体積または重量パーセントを決定した(例えば、30v/v%の有機溶媒であれば、70v/v%の水)。
【0103】
いくつかの例では、有機溶媒の量は、水溶液(例えば、必要に応じて1またはそれを超えるさらなる薬剤を含有する、水、水性緩衝液、塩水溶液)の体積と比較して、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10以下またはそれ未満の体積である。すなわち、均質なゲルを形成する際に使用される液体の総量中の有機溶媒の体積量は、一般に、約50%、33%、25%、20%、17%、14%、12.5%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満またはそれ未満である。
【0104】
ゲル化は、約30~100℃、約40~100℃、約50~100℃、約60~100℃、約70~100℃、約90~100℃、約30~90℃、約40~90℃、約50~90℃、約60~90℃、約70~90℃、約80~90℃、約40~80℃、約50~80℃、約60~80℃、約70~80℃、約30~70℃、約40~70℃、約50~70℃、約60~70℃、約30~60℃、約40~60℃、約50~60℃、約30~50℃または約40~50℃の範囲の温度にゲル化媒体を加熱することを必要とし得る。いくつかの実施形態において、加熱は、約60~80℃の温度範囲で行われる。いくつかの実施形態において、加熱は、約80℃で行われる。
【0105】
一部の例では、加熱を必要としないか、または必要であれば、概ね体温(37℃)まで加熱すると、反転に対して安定な均質な自立性ゲルが生成される。他の実施形態では、ゲル化媒体は完全に溶解するまで加熱され、その後、約37℃または約20~25℃の室温まで冷却する。
【0106】
ゲル化は、加熱ありまたは加熱なしで行うことができる。加熱された場合、加熱されたゲル化溶液が冷却されるにつれてゲル化が起こり得る。室温で約1~2時間安定な表面上にゲルを放置すると、一貫した自立性ゲルが得られる。自立性ゲルは、最小限の沈殿物を有する規則正しく組み立てられたマイクロまたはナノ構造を含む。これは、一般に、光学顕微鏡または電子顕微鏡を使用して確認される。
【0107】
好ましい粒径および粒度分布を達成するためには、まずゲル化剤の均一な溶液を作製する必要がある。均一な溶液が達成されない場合、ゲル化剤は適切に自己集合せず、製剤は大きな非晶質の塊を有する。実施例によって実証されるように、タクロリムスおよびゲル化剤を固体として合わせ、次いで、水性-有機溶媒混合物などの溶媒が添加される。典型的な有機溶媒には、メタノールなどのアルコールおよびジメチルスルホキシド(DMSO)が含まれる。実施例における溶媒(メタノール、MeOH)中のタクロリムスの最高濃度は、129mg/mL、すなわち160mMである。実施例における最も低いタクロリムスレベルは、2.14mg/mL、すなわち2.7mMである。実施例における溶媒中のゲル化剤濃度は、286mg/mL、すなわち690mMに固定される。実施例における水性/有機ゲル化剤媒体中のタクロリムスの最高濃度は、43mg/mL、すなわち53.3mMである。実施例における水性/有機ゲル化剤媒体中のゲル化剤濃度は、95mg/mL、すなわち230mMに固定される。ゲル化剤および薬物の溶液は、確実に完全に溶解させるために加熱され、次いでゲルを形成するために冷却される。これを分解して、注射に十分小さな粒子を形成する。ゲルおよび/または粒子を洗浄して、残留有機溶媒を除去する。次いで、注射または凍結もしくは噴霧乾燥のために、ゲルおよび/または粒子を懸濁する。乾燥された粒子またはゲルは、個別使用バイアルまたは経口投与瓶の中に保存し、またはカプセルもしくは錠剤中に封入することができる。
【0108】
2.自己集合性ゲルに薬剤を充填する
好ましい実施形態では、薬剤は、まずゲルを形成し、次いで緩衝液などの水性媒体中にゲルを懸濁させることによって、自己集合性ゲルのナノ構造と物理的に捕捉され、封入され、および/または共有結合によらずに会合され得、粒子(すなわち、ナノ粒子および/またはマイクロ粒子)を形成するために、ゲルは、必要に応じてまず破壊される。好ましくは、形成された自己集合性ゲルは、有機溶媒を含まず、または実質的に含まない。続いて、ゲル粒子懸濁液であってもよい得られたゲル懸濁液は、本明細書に記載の1またはそれを超える薬剤を含有する第2の溶液または懸濁液と混合される。典型的には、第2の溶液または懸濁液は、薬剤を含有する緩衝液である。混合は、任意の適切な手段によって行われ得る。非限定的な混合手段としては、ピペット操作および/または渦巻き撹拌を含む。混合は室温で実施され得る。いくつかの例では、混合する際に加熱は必要ない。
【0109】
いくつかの形態では、薬剤が充填される前のバルク自己集合性ゲルをまず水、リン酸緩衝生理食塩水またはその他の生理食塩水中に懸濁し、これを均質化または超音波処理して、バルクゲル内に形成された繊維状ナノ構造を保持する粒子へとバルクゲルを分割する。これらの粒子は、薬剤を充填する前に収集、保存、精製、および再構成され得る。異なる種類のゲル粒子に、異なる量または種類の薬剤を充填してもよい。
【0110】
水、リン酸緩衝生理食塩水もしくはその他の何らかの生理食塩水中での自己集合性ゲルの懸濁または水、リン酸緩衝生理食塩水もしくは他の何らかの生理食塩水中での薬剤の懸濁は、撹拌、かき混ぜ、渦巻き撹拌またはその他の任意の適切な方法によって行われ得る。
【0111】
自己集合性ゲルは、最大約90重量/重量%、約80重量/重量%、約70重量/重量%、約60重量/重量%、約50重量/重量%、約45重量/重量%、約40重量/重量%、約35重量/重量%、約30重量/重量%、約25重量/重量%、約20重量/重量%、約15重量/重量%、約10重量/重量%または約5重量/重量%の1またはそれを超える薬剤の充填効率を示す。いくつかの実施形態では、自己集合性ゲル中の薬剤の充填は、ヒドロゲル1mL当たり約1mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mgまたは約1000mgである。特定の実施形態では、自己集合性ゲル中の薬剤の充填は、充填量が50%を超えるまたは50%に等しい場合、ヒドロゲル1mL当たり約100~1000mgの範囲である。
【0112】
3.ゲル精製
有機溶媒ならびに/または封入されていないおよび/もしくは捕捉されていない過剰な薬剤またはゲル由来の存在する任意の他の封入されていないおよび/もしくは捕捉されていない薬剤を医薬品要件の規定された限度を下回るまで除去するために、蒸留、ろ過、透析、遠心分離、タンジェンシャルフローろ過、蒸発、その他の溶媒交換技術、真空乾燥または凍結乾燥が、1またはそれを超える反復過程において使用され得る。溶媒除去ならびに/または封入されていないおよび/もしくは捕捉されていない薬剤の除去は、形成直後に、ゲル懸濁液の形成後に、または薬剤がゲル懸濁液中に充填された後に、ゲルに対して行うことができる。一般に、精製媒体は、ゲルの溶媒が少なくとも部分的に精製媒体で置き換えられるように、投与に適したものである。
【0113】
4.経口投与または滴下注入のための懸濁液の製剤
いくつかの例では、製剤は、経口投与のため、浣腸としての投与のため、または体腔もしくは管腔中への滴下注入による投与のために、液体形態(例えば、懸濁液)で分配または包装される。あるいは、非注射用投与用の製剤は、例えば適切な液体製剤の凍結乾燥によって得られる固体として包装することができる。固体は、投与前に適切な担体または希釈剤で再構成することができる。
【0114】
ナノ粒子および/またはマイクロ粒子の溶液および分散液は、界面活性剤、分散剤、乳化剤、pH調整剤およびこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない1またはそれを超える薬学的に許容され得る賦形剤と適切に混合された水または別の溶媒または分散媒体中で調製することができる。
【0115】
製剤は、典型的には、再構成時に投与のために3~8のpHに緩衝される。適切な緩衝液は当業者に周知であり、有用な緩衝液のいくつかの例は、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩緩衝液である。
【0116】
投与のための溶液、懸濁液またはエマルジョンは、製剤の等張範囲を調整するための1またはそれを超える等張化剤も含有し得る。適切な等張化剤は当技術分野において周知である。例としては、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムおよびその他の電解質が挙げられる。
【0117】
適切な界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性の界面活性剤であり得る。適切なアニオン性界面活性剤としては、カルボキシラートイオン、スルホナートイオンおよびサルファートイオンを含有するものが挙げられるが、これらに限定されない。アニオン性界面活性剤の例としては、長鎖アルキルスルホナートのナトリウム、カリウム、アンモニウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホナート;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、;ビス-(2-エチルチオキシル)-スルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸ナトリウム;およびラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキルサルファートが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ポリオキシエチレンおよびココナッツアミンなどの第4級アンモニウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。非イオン性界面活性剤の例としては、エチレングリコールモノステアラート、プロピレングリコールミリスタート、グリセリルモノステアラート、グリセリルステアラート、ポリグリセリル-4-オレアート、ソルビタンアシラート、スクロースアシラート、PEG-150ラウラート、PEG-400モノラウラート、ポリオキシエチレンモノラウラート、ポリソルベート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG-1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、ポロキサマー401、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、およびポリオキシエチレン硬化獣脂アミドが挙げられる。両性界面活性剤の例としては、N-ドデシル-β-アラニンナトリウム、N-ラウリル-β-イミノジプロピオン酸ナトリウム、ミリストアンホアセタート、ラウリルベタインおよびラウリルスルホベタインが挙げられる。
【0118】
製剤は、微生物の増殖を防ぐために保存剤を含有することができる。適切な防腐剤には、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸およびチメロサールが含まれるが、これらに限定されない。製剤は、活性剤またはナノ粒子および/またはマイクロ粒子の分解を防ぐための酸化防止剤も含有し得る。
【0119】
5.ゼラチンカプセルおよび錠剤
錠剤およびインサート/坐剤は、当技術分野で周知の圧縮または成形技術を使用して作製することができる。ゼラチンまたは非ゼラチンカプセルは、当技術分野で周知の技術を使用して、液体、固体および半固体充填材料を封入することができる硬質または軟質カプセルシェルとして調製することができる。
【0120】
製剤は、希釈剤、防腐剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、膨潤剤、充填剤、安定化剤およびこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない薬学的に許容され得る担体を使用して調製される。剤形中で使用されるポリマーには、疎水性または親水性ポリマーおよびpH依存性または非依存性ポリマーが含まれる。好ましい疎水性および親水性ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルおよびイオン交換樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
必要に応じて存在する薬学的に許容され得る賦形剤には、希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、安定化剤および界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
「充填剤」とも呼ばれる希釈剤は、錠剤の圧縮またはビーズおよび顆粒の形成のために実用的なサイズが提供されるように、固体剤形の体積を増加させるために典型的に必要である。適切な希釈剤には、リン酸二カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、加水分解デンプン、アルファ化デンプン、二酸化ケイ素(silicone dioxide)、酸化チタン、ケイ酸マグネシウムアルミニウムおよび粉末糖が含まれるが、これらに限定されない。通常の希釈剤には、デンプン、粉末セルロース、特に結晶性および微結晶性セルロースなどの不活性粉末状物質、フルクトース、マンニトールおよびスクロースなどの糖、穀物粉ならびに同様の食用粉末が含まれる。典型的な希釈剤としては、例えば、様々な種類のデンプン、ラクトース、マンニトール、カオリン、リン酸カルシウムまたは硫酸カルシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩および粉末状糖が挙げられる。粉末状セルロース誘導体も有用である。
【0123】
結合剤は、固体剤形に凝集性を付与し、これにより、錠剤またはビーズまたは顆粒が剤形の形成後に変化しないようにするために使用される。適切な結合剤材料としては、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロース、ラクトースおよびソルビトールを含む)、ポリエチレングリコール、蝋、天然および合成ゴム、例えばアカシアゴム、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースを含むセルロース、およびビーガム、および合成ポリマー、例えばアクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸およびポリビニルピロリドンが挙げられるが、これらに限定されない。典型的な錠剤結合剤には、デンプン、ゼラチンなどの物質、ならびにラクトース、フルクトースおよびグルコースなどの糖が含まれる。アカシアゴム、アルジネート、メチルセルロースおよびポリビニルピロリドンを含む天然および合成ゴムも使用することができる。ポリエチレングリコール、親水性ポリマー、エチルセルロースおよび蝋も結合剤として役立ち得る。
【0124】
錠剤およびパンチがダイの中で固着するのを防ぎ、錠剤製造を容易にするために、錠剤製剤中で潤滑剤を使用することができる。適切な潤滑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、タルクおよび鉱油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
崩壊剤は、投与後に剤形の崩壊または「分解」を促進するために使用され、一般に、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、アルファ化デンプン、粘土、セルロース、アルギニン(alginine)、ガム、または架橋PVP(GAF Chemical Corp.のPOLYPLASDONE(登録商標)XL)などの架橋ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
安定化剤は、例として酸化反応を含む薬物分解反応を阻害または遅延させるために使用される。適切な安定化剤には、酸化防止剤、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);アスコルビン酸、その塩およびエステル;ビタミンE、トコフェロールおよびその塩;メタ重亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩;システインおよびその誘導体;クエン酸;没食子酸プロピルおよびブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0127】
好ましい実施形態では、製剤、例えばゲルのマイクロファイバーを封入するために、サイズ9のカプセル(約2.7mm×8.40mm、表面積71.25mm)が使用される。このカプセルを腸溶コーティング溶液で浸漬コーティングし、カプセル質量を約3mg増加させる。これにより、42μg/mmのコーティング面積密度が得られる。サイズ9のカプセルには、約20mgの固体材料を充填することができる。添加されるマイクロファイバーの量は、薬物充填および目標用量に依存する。通常、約2~10mg(総カプセル充填の10~50%)のマイクロファイバーが各カプセルに添加され、残りは0.8~1.6mg(総カプセル充填の4~8%)で崩壊剤として添加されるデンプングリコール酸ナトリウムであり、残りは再水和にも役立つ増量剤として作用するマンニトール(8~17mg、総カプセル充填の40~85%)である。
【0128】
いくつかの実施形態では、錠剤またはカプセル製剤(賦形剤を含む)中のゲル粒子の重量パーセントは、約2%~約80%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約60%である。いくつかの実施形態では、賦形剤は、デンプングリコール酸ナトリウム(崩壊剤として)およびマンニトール(充填剤として)を含む。
【0129】
6.膣または直腸インサートまたは坐剤への形成
膣または直腸インサートまたは坐剤は、挿入された後の快適さ、例えばインサートの量の増加のために追加の賦形剤とともに、典型的には、錠剤と同じ技術によって形成される。サイズおよび形状は、投与経路に基づいて選択される。これらの形状、サイズおよび賦形剤は、医薬配合分野の当業者に周知である。
【0130】
7.腸溶性、遅延またはパルス状放出製剤および混合製剤
様々な薬物放出プロファイルを与える薬物含有錠剤、ビーズ、顆粒または粒子を調製するための多くの方法が利用可能である。そのような方法には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:通例は必ずしもポリマー材料を組み込むとは限らないが、薬物または薬物含有組成物を適切なコーティング材料でコーティングすること、薬物粒径を増大させること、薬物をマトリックス内に配置すること、および適切な錯化剤との薬物の錯体を形成すること。
【0131】
放出を改変するために、および送達部位での滞留時間を増加させるために、粒子、錠剤、カプセルまたはインサートにコーティングを適用することができる。
【0132】
特定のコーティング材料に対する好ましいコーティング重量は、異なる量の様々なコーティング材料を用いて調製された錠剤、ビーズおよび顆粒の個々の放出プロファイルを評価することによって当業者によって容易に決定され得る。所望の放出特性をもたらすのは、材料、方法および適用形態の組み合わせであり、これは臨床研究から決定することができる。
【0133】
コーティングは、所望の放出プロファイルを生成するために、水不溶性/水溶性非ポリマー性賦形剤を加えてまたは加えずに、異なる比率の水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーおよび/またはpH依存性ポリマーを用いて形成され得る。コーティングは、錠剤(コーティングされたビーズありまたはなしで圧縮された)、カプセル(コーティングされたビーズありまたはなし)、ビーズ、粒子組成物を含むがこれらに限定されない剤形(マトリックスまたは単一)、および懸濁液形態としてまたはスプリンクル剤形として(ただし、これらに限定されない)製剤化された「そのままの成分」に対して行われる。
【0134】
さらに、コーティング材料は、可塑剤、顔料、着色剤、流動促進剤、安定剤、細孔形成剤および界面活性剤などの従来の担体を含有してもよい。
【0135】
好ましい実施形態では、乾式層形成または懸濁層形成過程を使用して、微結晶性セルロースビーズ(60~250μmメッシュ、または1,000μmの大きさのメッシュ)上に、凍結乾燥されたタクロリムス充填マイクロファイバーを吸着させる。次いで、流動床コーティング過程によって、マイクロビーズをコーティングする。好ましいコーティングとしては、pH応答性腸溶コーティング、持続放出コーティングおよび制御放出コーティングが挙げられる。いくつかの実施形態では、多層コーティングを適用することができる。コーティングされたマイクロビーズは、カプセルまたは錠剤(table)中に充填することによって固体経口剤形として投与することができる。あるいは、コーティングされたマイクロビーズは水、緩衝液またはその他の媒体中に懸濁し、液体剤形として送達することができる。他の緩衝剤および賦形剤を液体剤形に添加してもよい。
【0136】
腸溶コーティング
粒子が胃の酸性環境を通過した後まで放出を遅延させるために、粒子、錠剤、カプセルまたはインサートは、コーティングされ得る。これらの材料は、通常、腸溶コーティングと呼ばれる。例えば、腸溶性ポリマーは、下部胃腸管のより高いpH環境中で可溶性になり、または剤形が胃腸管を通過するにつれてゆっくりと侵食されるが、酵素分解性ポリマーは、下部胃腸管、特に結腸中に存在する細菌酵素によって分解される。
【0137】
例示的な腸溶性ポリマーとしては、ポリメタクリラートおよびその誘導体、例えばメタクリル酸エチル-メタクリル酸コポリマーおよび商品名EUDRAGIT(登録商標)で販売されているもの、天然セルロース系ポリマー(例えば、酢酸コハク酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)およびその他の多糖類(例えば、アルギン酸ナトリウム(alignate sodium)、ペクチン、キトサン)またはその半合成もしくは合成誘導体、ポリ(2-ビニルピリジン-コ-スチレン)、ポリ酢酸フタル酸ビニル、シェラック、脂肪酸(例えば、ステアリン酸)、蝋、プラスチックおよび植物繊維が挙げられる。
【0138】
例示的な胃耐性天然ポリマーとしては、ペクチンおよびペクチン様ポリマーが挙げられるが、これらに限定されず、これらは典型的には、主にガラクツロン酸およびガラクツロン酸メチルエステル単位からなり、直鎖多糖鎖を形成する。典型的には、これらの多糖類は、ガラクツロン酸、ラムノース、アラビノースおよびガラクトースに富み、例えばポリガラクツロナン、ラムノガラクツロナンならびにいくつかのアラビナン、ガラクタンおよびアラビノガラクタンである。これらは、通常、エステル化度に応じて分類される。
【0139】
高(メチル)エステル(「HM」)ペクチンでは、カルボキシル基の比較的高い部分(portion)がメチルエステルとして存在し、残りのカルボン酸基は遊離酸の形態またはそのアンモニウム、カリウム、カルシウムもしくはナトリウム塩である。有用な特性は、エステル化度および重合度によって変化し得る。
【0140】
カルボキシル酸単位の50%未満がメチルエステルとして存在するペクチンは、通常、低(メチル)エステルまたはLM-ペクチンと呼ばれる。一般に、低エステルペクチンは、高エステルペクチンから、穏やかな酸性またはアルカリ性条件での処理によって得られる。アミド化ペクチンは、アルカリ脱エステル化過程においてアンモニアが使用される場合に、高エステルペクチンから得られる。この種のペクチンでは、残りのカルボン酸基の一部が酸アミドへと変換されている。アミド化ペクチンの有用な特性は、エステル単位およびアミド単位の割合ならびに重合度によって変化し得る。
【0141】
合成腸溶性ポリマーには、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチルから形成されるアクリル酸ポリマーおよびコポリマー、ならびにEUDRAGIT(登録商標)L30
D-55およびL100-55(pH5.5およびそれより上で可溶性)、EUDRAGIT(登録商標)L-100(pH6.0およびそれより上で可溶性)、EUDRAGIT(登録商標)S(より高いエステル化度の結果として、pH7.0およびそれより上で可溶性)、およびEUDRAGIT(登録商標)NE、RLおよびRS(異なる程度の透過性および膨張性を有する水不溶性ポリマー)などの商品名EUDRAGIT(登録商標)(Rohm Pharma;Westerstadt、Germany)で市販されているメタクリル樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0142】
腸溶コーティングは、一般に、組成物(例えば、ゲル粒子、錠剤またはカプセル)の約10重量%未満、好ましくは組成物の約2~約8重量%の量で存在する。
【0143】
投与単位は、従来の技術を使用して、例えば、従来のコーティングパン、エアレススプレー技術または流動床コーティング装置(Wursterインサートありまたはなし)を使用して、遅延放出ポリマーコーティングでコーティングされ得る。錠剤および遅延放出剤形を調製するための材料、機器および過程に関する詳細な情報については、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Eds.Liebermanら(New York:Marcel Dekker,Inc.,1989)、および、Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,6th Ed.(Media,PA:Williams&Wilkins,1995)を参照。
【0144】
即時放出/持続放出薬物/粒子ブレンド
持続放出錠剤を調製するための好ましい方法は、直接ブレンド、湿式造粒または乾式造粒過程を用いて調製された薬物含有ブレンド、例えば顆粒のブレンドを圧縮することによるものである。持続放出錠剤は、適切な水溶性潤滑剤を含有する湿った材料から出発して、圧縮されるのではなく、成形されてもよい。しかしながら、錠剤は、成形よりも圧縮を使用して製造されることが好ましい。持続放出薬物含有ブレンドを形成するための好ましい方法は、薬物粒子を1またはそれを超える賦形剤、例えば希釈剤(または充填剤)、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤および着色剤と直接混合することである。直接ブレンドの代替として、薬物含有ブレンドは、湿式造粒または乾式造粒過程を使用することによって調製され得る。活性剤を含有するビーズは、典型的には分散液から出発して、多数の従来技術の任意の1つによっても調製され得る。例えば、薬物含有ビーズを調製するための典型的な方法は、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、タルク、ステアリン酸金属塩、二酸化ケイ素(silicone dioxide)、可塑剤などの薬学的賦形剤を含有するコーティング懸濁液または溶液中に活性剤を分散または溶解することを含む。この混合物は、約60~20メッシュのサイズを有する糖球体(またはいわゆる「ノンパレイユ」)などのビーズコアをコーティングするために使用される。
【0145】
薬物ビーズを調製するための代替手順は、薬物を、微結晶性セルロース、ラクトース、セルロース、ポリビニルピロリドン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、崩壊剤などの1またはそれを超える薬学的に許容され得る賦形剤とブレンドし、ブレンドを押し出し、押出物を球形化し、乾燥し、必要に応じてコーティングして即時放出ビーズを形成することによるものである。
【0146】
持続放出剤形
持続放出製剤は、一般に、例えば、「Remington-The Science and Practice of Pharmacy」(20th Ed.,Lippincott Williams&Wilkins,Baltimore,MD,2000)に記載されているように、拡散系または浸透圧系として調製される。拡散系は、典型的には、リザーバおよびマトリックスという2種類の装置からなり、当技術分野において周知であり、記載されている。マトリックス装置は、一般に、ゆっくり溶解するポリマー担体を有する薬物を錠剤形態へと圧縮することによって調製される。マトリックス装置の調製において使用される3つの主要な種類の材料は、不溶性プラスチック、親水性ポリマーおよび脂肪化合物である。プラスチックマトリックスには、アクリル酸メチル-メタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニルおよびポリエチレンが含まれるが、これらに限定されない。親水性ポリマーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、CARBOPOL(登録商標)934およびポリエチレンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪化合物としては、カルナウバ蝋およびトリステアリン酸グリセリルなどの様々な蝋が挙げられるが、これらに限定されない。
【0147】
あるいは、持続放出製剤は、浸透圧系を使用して、または半透性コーティングを剤形に適用することによって調製することができる。後者の場合、所望の薬物放出プロファイルは、低透過性および高透過性コーティング材料を適切な割合で組み合わせることによって達成することができる。
【0148】
異なる薬物放出機構を有する装置は、単一または複数の単位を含む最終の剤形中で組み合わせることができる。複数の単位の例としては、多層錠剤、錠剤、ビーズ、顆粒を含有するカプセルなどが挙げられる。
【0149】
即時放出部分は、コーティングまたは圧縮過程を用いて持続放出コアの上に即時放出層を塗布することによって、または持続放出および即時放出ビーズを含有するカプセルなどの複数単位系において、持続放出系に付加することができる。
【0150】
親水性ポリマーを含有する持続放出錠剤は、直接圧縮、湿式造粒または乾式造粒過程などの当技術分野で一般的に公知の技術によって調製される。親水性ポリマーを含有する持続放出錠剤の製剤は、通常、ポリマー、希釈剤、結合剤および潤滑剤ならびに活性薬学的成分を組み込む。通常の希釈剤には、多くの異なる種類のデンプンのいずれか、粉末状セルロース、特に結晶性および微結晶性セルロース、フルクトース、マンニトールおよびスクロースなどの糖、穀粉ならびに類似の食用粉末などの不活性な粉末状物質が含まれる。典型的な希釈剤としては、例えば、様々な種類のデンプン、ラクトース、マンニトール、カオリン、リン酸カルシウムまたは硫酸カルシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩および粉末状糖が挙げられる。粉末状セルロース誘導体も有用である。典型的な錠剤結合剤には、デンプン、ゼラチンなどの物質、ならびにラクトース、フルクトースおよびグルコースなどの糖が含まれる。アカシアゴム、アルジネート、メチルセルロースおよびポリビニルピロリジンを含む天然および合成ゴムも使用することができる。ポリエチレングリコール、親水性ポリマー、エチルセルロースおよび蝋も結合剤として機能することができる。錠剤およびパンチがダイ中で固着するのを防ぐために、錠剤製剤中に潤滑剤を使用することができる。潤滑剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウム、ステアリン酸および硬化植物油などの滑りやすい固体から選択される。
【0151】
蝋材料を含有する持続放出錠剤またはインサートは、一般に、直接ブレンド法、凝固法および水性分散法などの当技術分野で公知の方法を用いて調製される。凝固法では、薬物を蝋材料と混合して、噴霧凝固させるかまたは凝固させ、ふるいにかけ、処理される。
【0152】
遅延放出剤形
遅延放出投与単位は、例えば、薬物または薬物含有組成物を選択されたコーティング材料でコーティングすることによって調製することができる。薬物含有組成物は、例えば、カプセル中に組み込むための錠剤、「コーティングされたコア」剤形の内側コアとして使用するための錠剤、または錠剤もしくはカプセルのいずれかの中に組み込むための複数の薬物含有ビーズ、粒子もしくは顆粒であり得る。好ましいコーティング材料には、生体侵食性の、徐々に加水分解可能な、徐々に水に溶解可能な、および/または酵素的に分解可能なポリマーが含まれる。遅延放出をもたらすための適切なコーティング材料としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系ポリマー;好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチルから形成されたアクリル酸ポリマーおよびコポリマー、ならびにEUDRAGIT(登録商標)L30D-55およびL100-55(pH 5.5およびそれより上で可溶)、EUDRAGIT(登録商標)L-100(pH 6.0およびそれより上で可溶)、EUDRAGIT(登録商標)S(より高いエステル化度の結果として、pH 7.0およびそれより上で可溶)、およびEUDRAGIT(登録商標)NE、RLおよびRS(異なる程度の浸透性および膨張性を有する水に不溶性のポリマー)などの商品名EUDRAGIT(登録商標)(Rohm Pharma;Westerstadt、Germany)で市販されているその他のメタクリル樹脂;ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、酢酸フタル酸ビニル、酢酸ビニルクロトン酸コポリマーおよびエチレン-酢酸ビニルコポリマーなどのビニルポリマーおよびコポリマー;アゾポリマー、ペクチン、キトサン、アミロースおよびグアーガムなどの酵素分解性ポリマー;ゼインおよびシェラックが挙げられるが、これらに限定されない。異なるコーティング材料の組み合わせも使用することができる。異なるポリマーを使用する多層コーティングも適用することができる。
【0153】
特定のコーティング材料に対する好ましいコーティング重量は、異なる量の様々なコーティング材料を用いて調製された錠剤、ビーズおよび顆粒の個々の放出プロファイルを評価することによって当業者によって容易に決定され得る。所望の放出特性をもたらすのは、材料、方法および適用形態の組み合わせである。
【0154】
コーティング組成物は、可塑剤、顔料、着色剤、安定化剤、流動促進剤などの従来の添加剤を含んでもよい。可塑剤は、通常、コーティングの脆弱性を低減するために存在し、一般に、ポリマーの乾燥重量に対して約10重量%~約50重量%に相当する。典型的な可塑剤の例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、ヒマシ油、アセチル化モノグリセリドが挙げられる。分散液中の粒子を安定化させるために、安定化剤を使用することが好ましい。典型的な安定化剤は、ソルビタンエステル、ポリソルベートおよびポリビニルピロリドンなどの非イオン性乳化剤である。流動促進剤は、皮膜形成および乾燥中の粘着効果を低減するために推奨され、一般に、コーティング溶液中のポリマー重量の約25重量%~100重量%に相当する。1つの有効な流動促進剤はタルクである。ステアリン酸マグネシウムおよびモノステアリン酸グリセロールなどのその他の流動促進剤も使用され得る。二酸化チタンなどの顔料も使用され得る。シリコーン(例えば、シメチコン)などの少量の消泡剤をコーティング組成物に添加することもできる。
【0155】
パルス状放出製剤
「パルス状」とは、複数の薬物用量が離間した時間間隔で放出されることを意味する。一般に、剤形を摂取すると、初期用量の放出は実質的に即時である、すなわち、最初の薬物放出「パルス」は摂取の約1時間以内に起こる。この初期パルスの後に、第1の時間間隔(遅延時間)が続き、その間、薬物は剤形からほとんどまたは全く放出されず、その後、第2の用量が放出される。同様に、第2の薬物放出パルスと第3の薬物放出パルスとの間に、第2のほぼ薬物放出がない間隔が設計され得る。ほぼ薬物放出がない時間間隔の持続時間は、剤形の設計、例えば1日2回の投与プロファイル、1日3回の投与プロファイルなどに応じて変化する。1日2回の投与プロファイルを与える剤形の場合、ほぼ薬物放出がない間隔は、1回目の投与と2回目の投与の間に約3時間~14時間の持続時間を有する。1日3回のプロファイルを与える剤形の場合、ほぼ薬物放出がない間隔は、3回の投与のそれぞれの間に約2時間~8時間の持続時間を有する。
【0156】
一実施形態では、パルス状放出プロファイルは、少なくとも2つの薬物含有「投与単位」を収容し、カプセル内の各投与単位が異なる薬物放出プロファイルを与える閉鎖された、好ましくは密封されたカプセルである剤形を用いて達成される。遅延放出投与単位の制御は、投与単位上の制御放出ポリマーコーティングによって、または制御放出ポリマーマトリックス中への活性剤の組み込みによって達成される。各投与単位は、圧縮または成形された錠剤を含み得、カプセル内の各錠剤は、異なる薬物放出プロファイルを与える。1日2回の投与プロファイルを模倣する剤形の場合、第一の錠剤は、実質的に剤形の摂取直後に薬物を放出し、第二の錠剤は、剤形の摂取後約3時間~14時間未満に薬物を放出する。1日3回の投与プロファイルを模倣する剤形の場合、第一の錠剤は、実質的に剤形の摂取直後に薬物を放出し、第二の錠剤は、剤形の摂取後約3時間~10時間未満に薬物を放出し、第三の錠剤は、剤形の摂取後少なくとも5時間~約18時間に薬物を放出する。剤形は3つより多くの錠剤を含むことが可能である。剤形は一般に3つより多くの錠剤を含まないが、3つより多くの錠剤を収容する剤形を利用することができる。
【0157】
あるいは、カプセル中の各投与単位は、複数の薬物含有ビーズ、顆粒または粒子を含み得る。薬物含有「ビーズ」は、薬物および1またはそれを超える賦形剤またはポリマーで作製されたビーズを指す。薬物含有ビーズは、不活性支持体、例えば薬物でコーティングされた不活性糖ビーズに薬物を塗布することによって、または薬物と1またはそれを超える賦形剤の両方を含む「コア」を作製することによって製造することができる。薬物含有「顆粒」および「粒子」は、1またはそれを超える追加の賦形剤またはポリマーを含んでもよくまたは含まなくてもよい薬物粒子を含む。薬物含有ビーズとは対照的に、顆粒および粒子は不活性支持体を含有しない。顆粒は一般に薬物粒子を含み、さらなる加工を必要とする。一般に、粒子は顆粒よりも小さく、それ以上加工されない。ビーズ、顆粒および粒子は即時放出を与えるために製剤化され得るが、ビーズおよび顆粒は一般に遅延放出を与えるために使用される。
【0158】
別の実施形態では、個々の投与単位は、単一の錠剤中に詰められ、その一体であるが別々のセグメント(例えば、層)に相当し得、または単純な混合物として存在し得る。例えば、異なる薬物放出プロファイル(例えば、即時放出プロファイルおよび遅延放出プロファイル)を有する薬物含有ビーズ、顆粒または粒子を、従来の錠剤化手段を使用して一緒に圧縮して単一の錠剤にすることができる。
【0159】
さらなる代替実施形態では、内側薬物含有コアと、内側コアを取り囲む少なくとも1つの薬物含有層とを含む剤形が提供される。この剤形の外層は、薬物の初期の即時放出用量を含有する。1日2回の投与を模倣する剤形の場合、剤形は、経口投与の実質的に直後に薬物を放出する外側層と、好ましくは投与単位の摂取後約3時間~14時間未満に活性剤を放出するポリマーコーティングを有する内側コアとを有する。1日3回投与を模倣する剤形の場合、剤形は、経口投与の実質的に直後に薬物を放出する外側層と、好ましくは経口投与の少なくとも5時間~18時間後に薬物を放出する内側コアと、内側コアと外側層との間に介在し、好ましくは剤形の摂取の約3時間~10時間後に薬物を放出する層とを有する。1日3回の投与を模倣する剤形の内側コアは、圧縮された遅延放出ビーズまたは顆粒として製剤化され得る。
【0160】
あるいは、1日3回の投与を模倣する剤形の場合、剤形は、薬物を含まない外層および内層を有する。外層は、経口投与の実質的に直後に薬物を放出し、内層を完全に取り囲む。内層は、2回目および3回目の用量の両方を取り囲み、好ましくは、経口投与後約3時間~10時間、これらの用量の放出を防止する。放出されると、第2の用量は直ちに利用可能であるが、第3の用量は、第3の用量の放出がその後約2時間~8時間有効に行われ、剤形の摂取後少なくとも5時間~約18時間に第3の用量の放出がもたらされるように、遅延放出ビーズまたは顆粒として製剤化されている。第2および第3の用量は、即時放出および遅延放出ビーズ、顆粒または粒子を混合し、混合物を圧縮して第2および第3の用量含有コアを形成し、続いてコアをポリマーコーティングでコーティングして所望の1日3回の投与プロファイルを達成することによって製剤化され得る。
【0161】
さらに別の実施形態では、その中の活性剤が経口投与後に直ちに放出されるように、外層が活性剤を含有する即時放出型投与単位から構成されており;その下にある中間層がコアを取り囲み;第2の用量が即時放出ビーズまたは顆粒によって提供され、第3の用量が遅延放出ビーズまたは顆粒によって提供されるように、コアが即時放出ビーズまたは顆粒および遅延放出ビーズまたは顆粒から構成されているコーティングされたコア型送達系を含む剤形が提供される。
【0162】
コーティングカプセル用の皮膜形成ポリマー
皮膜形成組成物は、活性剤と1またはそれを超える薬学的に許容され得る賦形剤とを含有する液体もしくは半固体充填材料または固体錠剤(例えば、SOFTLET(登録商標))を封入することができる軟質または硬質シェルゼラチンカプセルを調製するために使用することができる。あるいは、組成物は、活性剤が組成物中に溶解または分散された液体として投与することができる。例示的な皮膜形成天然ポリマーとしては、ゼラチンおよびゼラチン様ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、皮膜形成天然ポリマーはゼラチンである。多数の他のゼラチン様ポリマーが市販されている。皮膜形成天然ポリマーは、組成物の約20~約40重量%、好ましくは組成物の約25~約40重量%の量で存在する。
【0163】
皮膜形成組成物は、当技術分野で周知の技術を使用して軟質または硬質カプセルを調製するために使用することができる。例えば、軟質カプセルは、典型的には、回転式ダイカプセル封入法を使用して製造される。充填調合物は、重力によってカプセル封入機の中に供給される。
【0164】
カプセルシェルは、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、マルチトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、3~6個の炭素原子を有するポリアルコール、クエン酸、クエン酸エステル、クエン酸トリエチルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される1またはそれを超える可塑剤を含有することができる。可塑剤に加えて、カプセルシェルは、乳白剤、着色剤、保湿剤、防腐剤、香味料ならびに緩衝塩および酸などのその他の適切なシェル添加剤を含むことができる。
【0165】
封入された活性剤が感光性である場合、カプセルシェルを不透明化するために乳白剤が使用される。適切な乳白剤としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウムおよびこれらの組み合わせが挙げられる。着色剤は、販売上の目的および製品の識別/区別の目的のために使用することができる。適切な着色剤としては、合成染料および天然染料ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0166】
保湿剤は、軟質ゲルの水分活性を抑制するために使用することができる。適切な保湿剤には、グリセリンおよびソルビトールが含まれ、これらはしばしば可塑剤組成物の成分である。乾燥して適切に保存された軟質ゲルの水分活性は低いため、微生物からの最大のリスクはカビおよび酵母に起因する。このため、防腐剤をカプセルシェル中に組み込むことができる。適切な防腐剤としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびヘプチルなどのp-ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル(「パラベン」と総称される)またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0167】
粘膜付着性粒子および製造方法
一般的に、組織へのポリマーの接着は、(i)物理的もしくは機械的結合、(ii)一次もしくは共有化学結合、および/または(iii)二次化学結合(すなわち、イオン性)によって達成され得る。物理的または機械的結合は、粘液の隙間または粘膜のひだにおける接着性材料の堆積および封入から生じ得る。生体接着特性に寄与する二次化学結合は、分散相互作用(すなわち、ファンデルワールス相互作用)および水素結合を含むより強い特異的相互作用からなる。水素結合の形成に関与する親水性官能基は、ヒドロキシル(-OH)およびカルボキシル基(-COOH)である。
【0168】
生体接着性コーティングを形成するために使用することができる適切なポリマーには、可溶性および不溶性、生分解性および非生分解性ポリマーが含まれる。これらは、ヒドロゲルまたは熱可塑性物質、ホモポリマー、コポリマーまたはブレンド、天然または合成であり得る。2つのクラスのポリマー:親水性ポリマーおよびヒドロゲルが有用な生体接着特性を示すように見受けられた。親水性ポリマーの大きなクラスでは、カルボキシル基を含有するもの(例えば、ポリ(アクリル酸))が最も優れた生体接着特性を示す。他の研究では、最も有望なポリマーは、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースおよびメチルセルロースであった。これらの材料のいくつかは水溶性であり、その他はヒドロゲルである。
【0169】
その滑らかな表面が侵食されるにつれてカルボキシル基が外側表面に露出される、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ無水物およびポリオルトエステルなどの迅速に生体侵食性のポリマーは、生体接着性薬物送達系の優れた候補である。さらに、ポリ無水物およびポリエステルなどの、不安定な結合を含有するポリマーは、それらの加水分解反応性に関して周知である。それらの加水分解速度は、一般に、ポリマー骨格の単純な変化によって変えることができる。
【0170】
代表的な天然ポリマーとしては、ゼイン、修飾されたゼイン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミンまたはコラーゲンなどのタンパク質、セルロース、デキストラン、ポリ(ヒアルロン酸)などの多糖類、ならびにアクリル酸およびメタクリル酸エステルのポリマーおよびアルギン酸が挙げられる。代表的な合成ポリマーとしては、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリカーボナート、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタラート、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびこれらのコポリマーが挙げられる。合成的に修飾された天然ポリマーとしては、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステルおよびニトロセルロースが挙げられる。ポリエチレンイミンまたはポリリジンなどの任意の正に帯電したリガンドの付着は、ビーズを被覆するカチオン性基の、粘液の正味負電荷への静電引力によって生体接着を向上させ得る。ムチン層のムコ多糖およびムコタンパク質、特にシアル酸残基が負電荷の原因である。ムチンに対して高い結合親和性を有する任意のリガンドを共有結合することもでき、腸への小球体の結合に影響を及ぼすことが予想され得る。追加のペンダントカルボン酸側鎖を含有するポリアミノ酸、例えばポリアスパラギン酸およびポリグルタミン酸の付着も、生体接着性を高める有用な手段を提供するはずである。15,000~50,000kDaの分子量範囲のポリアミノ酸を使用すると、小球体の表面に付着された120~425アミノ酸残基の鎖が得られるであろう。ポリアミノ鎖は、ムチン鎖中の鎖の絡み合いおよび増加したカルボン酸電荷によって生体接着を増加させるであろう。
【0171】
8.滅菌
滅菌製剤は、まずプロセス溶液(例えば、薬剤およびゲル化剤溶液)の滅菌濾過を行い、続いて無菌処理条件下でゲル調製、懸濁、精製および凍結乾燥を行うことによって調製される。あるいは、すべての処理工程を非滅菌条件下で行い、次いで、最終滅菌(例えば、ガンマまたはEビーム照射)を凍結乾燥されたヒドロゲル生成物に適用することができる。再懸濁用の滅菌溶液も同様の方法を用いて調製することができる。
【0172】
IV.使用の方法
自己集合性ゲル、その懸濁製剤、粒子製剤、または粒子から作製された、カプセル、錠剤、インサートもしくは坐剤は、疾患または障害の1またはそれを超える症候を診断、緩和、予防または処置するために、有効投与量の治療薬、予防薬および/または診断薬を送達するために投与される。投与は、経口、膣に、直腸(浣腸)に、またはインサートとして、または膀胱などの体管腔内への滴下注入によるものであり得る。
【0173】
図2は、挿入図内に特徴的なナノ構造が示されている、腸溶性カプセル中に封入され、ヒトに経口投与されている薬物充填ゲルの概略図である。
【0174】
送達された薬剤は、標的化された放出のための刺激に応答してゲル組成物から制御可能に放出され得る。刺激の不存在下では、薬剤はバースト放出をほとんどまたは全く伴わずに持続的に放出される。例えば、封入された薬剤は、ある期間(例えば、数時間、1日、2日、3日、1週間、1ヶ月、またはそれより長く)にわたって徐々に放出され得る。パラメータに応じて、ゲル組成物を生理学的条件下(約7.4のpHおよび約37℃の温度)で投与する場合、放出を数分から数日に遅延または延長することができる。放出の速度は、腫瘍、感染部位および炎症領域など、pHが低下した領域または酵素活性が上昇した領域で増加し得る。
【0175】
好ましい実施形態では、タクロリムスなどの薬物が、懸濁液、錠剤またはカプセルとして経口投与されるパルミチン酸アスコルビルゲル中に充填される。最も好ましい実施形態では、粒子および/または錠剤またはカプセルは、GI部位特異的な溶解および放出を可能にするために腸溶コーティングされる。これらの製剤は、活動性(症候性)自己免疫疾患または炎症性疾患を処置するために、および/またはそれらの再発を予防するために使用することができる。
【0176】
投与の経路
製剤は、坐剤またはインサートとしての滴下注入または挿入を使用して、経口、直腸もしくは膣に、または任意の体腔中に投与される。製剤は、懸濁液、錠剤またはカプセルの形態で投与される場合、嚥下され得る。製剤は、注射器、カテーテル、または滴下注入によって投与される場合には滴下注入注射器によって投与される。
【0177】
ほとんどの場合には、投与は非侵襲的であるが、製剤は、手術中または腹腔鏡検査などの低侵襲性処置中に投与され得る。
【0178】
処置されるべき疾患または障害
投与されるべき薬物は、処置されるべき疾患または障害によって決定される。薬物動態は、ヒドロゲルを含まない従来の錠剤またはカプセルと比較して、特許請求の範囲に記載の製剤中で投与される薬物について異なることが予想される。薬物動態は、投与経路、ならびに腸溶コーティング、制御または持続放出皮膜形成ポリマーコーティングおよび/または粘膜付着性コーティングを含むコーティングが適用されているか否かによっても影響を受ける。
【0179】
製剤は、局所的、局部的または全身的に薬物を投与するために使用することができる。
【0180】
処置されるべき代表的な障害および疾患には、癌、炎症および感染、ならびに代謝性疾患および自己免疫疾患が含まれる。好ましい実施形態では、薬物は、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、過活動性の腸および痔などの胃腸障害、ならびに/または潰瘍、性病および酵母異常増殖を引き起こすものなどの感染症を処置するための抗炎症薬である。
【0181】
投与量
有効投与量は、治療薬、予防薬または診断薬の既知の薬物動態から容易に決定され、当業者によって日常的に行われるように、インビトロならびに動物およびヒトの臨床試験で測定された動態を考慮して改変される。本明細書で互換的に使用される「十分な」および「有効な」という用語は、疾患または障害の1またはそれを超える症候の1またはそれを超える所望の結果または緩和を達成するために必要とされる量(例えば、質量、体積、投与量、濃度および/または期間)を指す。
【0182】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに理解されるであろう。
【実施例0183】
[実施例1]調整可能な薬物充填を有するタクロリムス充填パルミチン酸アスコルビルヒドロゲル懸濁液の調製
材料および方法
タクロリムス充填パルミチン酸アスコルビルヒドロゲル懸濁液の代表的な製剤化過程:
パルミチン酸アスコルビル(AP)(400mg)およびタクロリムス(Tac)(120mg)を20mLのシンチレーションバイアル中に秤量した。固体をメタノール(1.4mL)中に溶解した。Millipore水(2.8mL)を添加し、撹拌しながら、80℃の湯浴中で6分間、懸濁液を加熱した。湯浴からバイアルを取り出し、室温の水浴中で30分間冷却した。水浴からバイアルを取り出し、室温でさらに18時間静置した。得られたヒドロゲルを水(35mL)に懸濁し、遠心分離した(5,000RPM、4℃、10分)。過剰な薬物およびメタノールなどの不純物を含む上清を廃棄した。水(35mL)中にゲルペレットを再び再懸濁した。ゲル精製のために、遠心分離および再懸濁過程を3回繰り返した。精製されたゲルペレットを、所望の最終タクロリムス濃度に応じて、典型的には5~50mLの水に再懸濁した。再懸濁後に、パルミチン酸アスコルビル濃度は0.1~80mg/mLであり得、タクロリムス濃度は0.1~25mg/mLであり得る。
【0184】
充填および封入効率の評価:
懸濁されたヒドロゲルの分割量(1mL)を遠心管に移し、遠心分離した(20,000RCF、4℃、10分)。ピペットによって上清を除去し、メタノール中1%クエン酸で希釈した。残留ペレットをDMSO(1mL)中に溶解し、メタノール中1%クエン酸で希釈した。上清および残留ペレット中のタクロリムスおよびパルミチン酸アスコルビル含有量をHPLCによって分析して、製剤の封入されたタクロリムスおよび遊離の(すなわち、封入されていない)タクロリムス含有量を評価した。製剤化過程の間に添加されるタクロリムスの量を調整することによって、タクロリムス充填(重量/重量%)を調整することができる(表1)。
【0185】
結果
製剤化過程の間に添加されるタクロリムスの量を調整することによって、タクロリムス充填(重量/重量%)を調整することができる(表1)。
【表1】
【0186】
これらの研究は、タクロリムスとゲル化剤を固体として組み合わせること、次いで溶媒を添加することに基づいている。試験された溶媒(メタノール、MeOH)中のタクロリムスの最高濃度は129mg/mLすなわち160mMであったが、これは上限ではない。製剤化された最も低いタクロリムスレベルは、2.14mg/mL、すなわち2.7mMであったが、これは可能な最も低いレベルではない。溶媒中のゲル化剤濃度は286mg/mL、すなわち690mMに固定した。
【0187】
水性/有機性ゲル化剤媒体中のタクロリムスの最高濃度は、43mg/mL、すなわち53.3mMであった。水性/有機性ゲル化剤媒体中のゲル化剤濃度は、95mg/mL、すなわち230mMに固定される。
【0188】
好ましい粒径および粒度分布を達成するためには、まずゲル化剤中で均一な溶液を作製する必要がある。均一な溶液が達成されない場合、ゲル化剤は適切に自己集合せず、製剤は大きな非晶質の塊を有する。
【0189】
[実施例2]タクロリムス充填パルミチン酸アスコルビルマイクロファイバーを含有する腸溶コーティングされたサイズ9のカプセルの調製
材料および方法
凍結されたタクロリムス充填パルミチン酸アスコルビルヒドロゲル懸濁液(Tac(60mg):AP(400mg))を凍結乾燥させて、ふわふわした白色粉末を得た。ゲル濃度、または逆に水の体積は、最終的な乾燥粉末の流動性および質感に影響を及ぼす重要な因子であり、より希薄な条件が最適であることが明らかとなった。粉末のタクロリムスおよびパルミチン酸アスコルビル含有量をHPLC分析によって確認した。次いで、粉末を崩壊剤としてのデンプングリコール酸ナトリウムおよびカプセル充填剤としてのマンニトールとブレンドして、カプセル充填調合物を作製した。典型的には、崩壊剤は0~8%の重量比で組み込まれ、カプセル充填剤は0~90%の重量比で組み込まれる。例えば、Tac(60mg):AP(400mg)粉末(1.5793g)をデンプングリコール酸ナトリウム(1.2318g)およびマンニトール(12.6255g)と合わせ、それぞれ10.2%、8.0%および81.8%の最終重量比を得た。固体粉末成分を振とうによって完全に混合して、均一なカプセル充填調合物を作製した。6つの別個の試料(RSD Tac=6.29%、RSD AP=5.73%)のHPLC分析によって、充填調合物の均一性を確認した。
【0190】
タクロリムス充填パルミチン酸アスコルビル充填調合物に対するカプセル充填
サイズ9のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセル(40カプセル)をMulti Capsule Filler(TORPAC(登録商標))中に装填した。サイズ9のカプセルは概念実証のために使用したが、この過程はサイズ5~サイズ000などのヒトサイズのカプセルに適している。タクロリムス充填パルミチン酸アスコルビル充填調合物(850mg)をMulti Capsule Filler上に装填し、約20mgの充填調合物を充填された40個のカプセルを得た。空のカプセルは、8.5±0.7mgの平均重量を有していた。充填されたカプセルは、28.3±1.2mgの平均重量を有していた。充填された粉末の量は、19.8±1.4mgの平均重量を有していた。
【0191】
サイズ9 HPMCカプセルに対するカプセル浸漬コーティング過程
EUDRAGIT(登録商標)L 100-55ポリマー(11.49g)をアセトン(74.2mL)、イソプロパノール(113.5mL)、水(7.8mL)およびクエン酸トリエチル(1.15g)の溶液中に溶解することによってコーティング溶液を調製した。Size 9 Coating Holder(Braintree Scientific,Inc.)中に、カプセルを6個の群で装填した。コーティング溶液中に30秒間、カプセルを部分的に浸し(≧50%)、次いで20分間風乾させた。各カプセルを逆さまにし、再度浸漬して両端を確実に被覆した。この工程を合計3回行った。20個のランダムに選択したカプセルをpH1.6の空腹状態を模倣した胃液(FaSSGF)に2時間浸漬し、次いでpH6.5の空腹状態を模倣した腸液(FaSSIF)中に1時間浸漬することによって、完全で均一なコーティングを確認した。20個すべてが溶解するまで、カプセル崩壊を経時的にモニターした(表2)。80%を超えるカプセルが、2時間のFaSSGFインキュベーションの間無傷のままであり、FaSSIFインキュベーションの10分以内に破裂する場合、バッチは成功とみなされる。コーティングされたカプセルは、30.4±1.4の平均重量を有し、2.1±1.8mgの平均コーティング重量をもたらした。
【0192】
結果
模倣された胃液および模倣された腸液中の崩壊データを表2に示す。
【0193】
タクロリムス充填マイクロファイバー懸濁液ならびに凍結乾燥され、カプセル充填のためのマンニトールおよびデンプングリコール酸ナトリウムとブレンドされたタクロリムス充填マイクロファイバー懸濁液の顕微鏡検査は、タクロリムス充填マイクロファイバーのサイズおよび形状が凍結乾燥およびカプセル充填過程によって影響を受けないことを示す。
【表2】
【0194】
[実施例3]タクロリムス充填ステアリン酸アスコルビルヒドロゲル懸濁液の調製
ステアリン酸アスコルビルはパルミチン酸アスコルビルよりも疎水性であり、したがってより密に充填されたマイクロファイバー構造を形成する。結果として、このマイクロファイバーは、水の排除により優れており、水性加水分解および酵素分解をより受けにくい。ステアリン酸アスコルビルは、マイクロファイバー構造の分解プロファイルを遅くするために使用することができ、これは薬物放出速度を調整するために使用することができる。
【0195】
材料および方法
タクロリムス充填ステアリン酸アスコルビルヒドロゲル懸濁液に対する代表的な製剤化過程
ステアリン酸アスコルビル(AS)(400mg)およびタクロリムス(Tac)(120mg)を20mLのシンチレーションバイアル中に秤量した。固体をメタノール(1.4mL)中に溶解した。Millipore水(2.8mL)を添加し、撹拌しながら、80℃の湯浴中で6分間、懸濁液を加熱した。湯浴からバイアルを取り出し、室温の水浴中で30分間冷却した。水浴からバイアルを取り出し、室温でさらに18時間静置した。得られたヒドロゲルを水(35mL)に懸濁し、遠心分離した(5,000RPM、4℃、10分)。過剰な薬物およびメタノールなどの不純物を含む上清を廃棄した。水(35mL)中にゲルペレットを再び再懸濁した。ゲル精製のために、遠心分離および再懸濁過程を3回繰り返した。精製されたゲルペレットを、所望の最終タクロリムス濃度に応じて、典型的には5~50mLの水に再懸濁した。
【0196】
ステアリン酸アスコルビル(「AS」)およびパルミチン酸アスコルビル(「AP」)ヒドロゲル懸濁液に対する分解実験は、100μg/mLのThermomyces lanuginosus由来のリパーゼ(Sigma-Aldrich)の存在下で、振とうしながら37℃でPBS中でのインキュベーションによって行った。ヒドロゲルからのAPおよびASの時間依存性放出をHPLCによって定量して、分解動態を決定した。
【0197】
結果
実施例1に記載されているように、薬物充填および封入百分率について試料を評価し、それぞれ22.5%および97.2%であることが明らかとなった。再懸濁後に、ステアリン酸アスコルビル濃度は0.1~80mg/mLであり得、タクロリムス濃度は0.1~25mg/mLであり得る。図3は、パルミチン酸アスコルビルマイクロファイバーと比較して、ステアリン酸アスコルビルマイクロファイバーのより遅い酵素分解プロファイルを示す。
【0198】
[実施例4]有機溶媒によるマイクロファイバーサイズおよび形態の制御
実施例1および3で概説したゲル化過程は、有機溶媒としてメタノールを使用するが、メタノールの代わりにいくつかの他の水混和性有機溶媒を使用することができる。例えば、ジメチルスルホキシド、エタノールおよびイソプロパノールを使用して、薬物封入および制御放出に適した自己集合性微細構造を調製することに成功した。溶媒系の選択基準は、粒子のサイズおよび均一性、封入効率、ならびに製造および精製の容易さである。メタノールは、高い封入効率、均一なマイクロファイバー分布、および単純な製造プロトコルを提供する。マイクロ粒子調製の間に使用される有機溶媒を変更することにより、粒子形態を改変することができる。
【0199】
材料および方法
パルミチン酸アスコルビルヒドロゲル懸濁液に対する代表的な製剤化過程:
パルミチン酸アスコルビル(100mg)を4つの別々の7mLガラスバイアル中に秤量した。350μLのDMSO、メタノール、エタノールまたはイソプロパノール中に、パルミチン酸アスコルビルを溶解した。異なる溶媒中に溶解されたパルミチン酸アスコルビルをそれぞれ含有するMillipore水(700μL)を4つのバイアルに添加した。バイアルを80℃に6分間加熱し、次いで、室温の水浴中で18時間冷却した。水(12mL)中にマイクロ粒子を再懸濁し、レーザー回折および光学顕微鏡によって分析した。
【0200】
結果
表3は、DMSO、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールを用いて調製された微細構造について観察された粒径を列記している。Mastersizer 3000レーザー回折装置(Malvern Panalytical,Ltd.)を使用して、粒径を測定した。
【表3】
【0201】
[実施例5] タクロリムス充填マイクロファイバー懸濁液の酵素応答性および薬物放出特性
材料および方法
タクロリムスの放出に対するリパーゼの効果について、カプセルを試験した。ゲル分解実験は、振とうしながら、thermomyces lanuginosus由来の100μg/mL、30μg/mL、10μg/mLおよび0μg/mLのリパーゼ(Sigma-Aldrich)の存在下において、37℃でPBS中でタクロリムスヒドロゲル懸濁液(10mg/mL AP)をインキュベートすることによって行った。HPLCによってAP濃度を測定して、分解動態を決定した。
【0202】
タクロリムス放出は、ゲル分解と同じように行ったが、8~10kDa透析袋および2mg/mLリパーゼを使用し、タクロリムス放出は、HPLCを使用して2週間後に測定した。
【0203】
結果
図4は、リパーゼ:0、10、30および100μg/mlに曝露されたゲルについて、経時的(時間)に残存する%タクロリムス(AP)として測定されたゲル分解のグラフである。図5は、リパーゼありおよびリパーゼなしでのタクロリムス放出のグラフである。
【0204】
これらの結果は、タクロリムス充填製剤がリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で安定であるが、炎症に関連する酵素であるリパーゼの存在下で分解することを実証している。分解速度は、存在する酵素のレベルに比例する。最大85%のタクロリムス放出がリパーゼ分解されたゲルから起こるが、非分解ゲルからは放出が起こらない。
【0205】
[実施例6] 炎症性腸疾患のラットインドメタシン誘発モデルにおける製剤、ヒドロゲル封入されたタクロリムスカプセルおよびヒドロゲル封入されたタクロリムス懸濁液のインビボ試験
材料および方法
炎症性腸疾患のインドメタシン誘発モデルを用いて、上記のように調製されたタクロリムスの製剤を試験した。手短に言えば、雌Lewisラット(体重約175~200g)を群に無作為化し、「健康」ラット群(群1)を除いて、研究0日目および1日目にインドメタシンの単回皮下注射を受けた(滅菌水中の、9mg/kgインドメタシンおよび1ml/kgの5%重炭酸ナトリウム)。研究0~4日目に、インドメタシン誘発ラットに、以下の処置の1つの単回1日用量を投与した:群2-「ビヒクル」(0.5mLの水の経口胃管栄養法)、群3-「タクロリムス懸濁液」(1mg/kgタクロリムスを水ビヒクル中に懸濁し、十二指腸に埋め込まれたカテーテルを通じて投与)、群4-「ヒドロゲル封入されたタクロリムス懸濁液」(Tac(60mg):AP(400mg)、実施例1で調製され、十二指腸に埋め込まれたカテーテルを通じて投与された1mg/kgタクロリムス)、群5-ヒドロゲル封入されたタクロリムスカプセル(Tac(60mg):AP(400mg)、実施例2で調製され、経口胃管栄養法によって投与された1mg/kgタクロリムス投与量、群6-ジェネリックのPrograf懸濁液(1mg/kgタクロリムスを水の中に懸濁し、経口胃管栄養法によって投与)。
【0206】
研究の5日目に、血液薬物動態(PK)試料を、最終用量を投与してから0、0.5、2および8時間後に採取した。次いで、動物を屠殺し、空腸10cmを切除し、秤量し、以下のようにスコアを与えた:
● 0=正常。
● 0.5=極めて最小の肥厚、リスクのある領域において多巣性。
● 1=最小の肥厚、リスクのある領域においてかなり散在性。
● 2=リスクのある領域全体を通じて軽度から中等度の小腸/腸間膜の肥厚。
● 3=分離しやすい1またはそれを超える限定的な接着を伴う中程度の肥厚。
● 4=多数の分離しにくい接着を伴う著しい肥厚。
● 5=死をもたらす重度の腸病変。
【0207】
次いで、腸組織をホモジナイズし、抽出してタクロリムスを定量した。
【0208】
テューキー事後検定を用いた一元配置ANOVAを用いて、データの統計解析を行った。ビヒクル対照と比較した統計的有意性はアスタリスク(*)で示され、タクロリムス懸濁液と比較した統計的有意性はナンバー記号(#)で示される。統計学的有意性は以下のように示される:*/#p<0.05;**/##p<0.01;***/###p<0.001;****/####p<0.0001。
【0209】
結果
各群の空腸病変スコアを図6Aに示す。ヒドロゲル封入されたタクロリムス懸濁液およびヒドロゲル封入されたタクロリムスカプセルはいずれも、ビヒクルのみの処置と比較して病変スコアの統計的減少をもたらし、これらの製剤がラットの小腸炎症を処置する能力を実証している。逆に、炎症標的化ゲル化剤を欠くタクロリムス懸濁液は、ビヒクル処置と比較して病変スコアを改善しない。さらに、ヒドロゲル封入されたタクロリムス懸濁液およびヒドロゲル封入されたタクロリムスカプセル群はいずれも、タクロリムス懸濁液と比較して統計的により低い病変スコアを有し、これにより炎症標的化ゲル化剤の利点を実証する。
【0210】
各群に対するタクロリムスの組織濃度を図6Bに示す。タクロリムス懸濁液と比較して、ヒドロゲル封入されたタクロリムス懸濁液およびヒドロゲル封入されたタクロリムスカプセルはいずれも、炎症標的化ゲル化剤のために、統計的により高いタクロリムス組織レベルをもたらす。
【0211】
ヒドロゲル封入されたタクロリムスカプセルおよびジェネリックのPrografについてのタクロリムスの血中濃度対時間を図6Cに示す。ヒドロゲル封入されたタクロリムスカプセルは、経口投与されたジェネリックのPrografと比較して、時間に対するタクロリムスの血中濃度の曲線下面積(AUC)がより小さなグラフおよびより低い最大タクロリムス血中濃度(Cmax)をもたらす。
[実施例7]タクロリムス充填パルミチン酸アスコルビルマイクロファイバーを含有するヒドロゲル封入されたタクロリムスカプセルの調製、炎症性腸疾患のラットインドメタシン誘発モデルにおけるインビトロ崩壊試験およびインビボ試験
材料および方法
タクロリムス充填パルミチン酸アスコルビルヒドロゲル懸濁液(Tac(18mg):AP(400mg))を実施例1に概説されているように調製し、凍結乾燥させた。粉末のタクロリムスおよびパルミチン酸アスコルビル含有量をHPLC分析によって確認した。次いで、Tac(18mg):AP(400mg)粉末(2.1356g)をデンプングリコール酸ナトリウム(0.2840g)およびマンニトール(1.1383g)と合わせ、最終重量比をそれぞれ60%、8.0%および32%とした。固体粉末成分を完全に混合して、均一なカプセル充填調合物を作製した。充填調合物の均一性を、4つの別個の試料(RSD Tac=4.03%、RSD AP=3.82%)のHPLC分析によって確認した。
カプセル充填およびコーティング
サイズ9のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセル(40カプセル)をMulti Capsule Filler(TORPAC(登録商標))中に装填した。タクロリムス充填パルミチン酸アスコルビル充填調合物(720mg)をMulti Capsule Filler上に装填し、約16mgの充填調合物を充填された40個のカプセルを得た。空のカプセルは、8.5±0.7mgの平均重量を有していた。充填されたカプセルは、24.4±1.5mgの平均重量を有していた。充填された粉末の量は、15.9±1.6mgの平均重量を有していた。次いで、実施例2に記載されているようにEUDRAGIT(登録商標)L 100-55ポリマーで、カプセルをコーティングした。コーティングされたカプセルは、28.0±1.0の平均重量を有し、3.6±1.8mgの平均コーティング重量をもたらした。実施例2に概説されているように崩壊試験を行った。
ラットのインドメタシンモデルにおけるタクロリムスヒドロゲルカプセルのインビボ試験
実施例6に記載されているように、ラット-インドメタシン誘発IBDモデルにおいてタクロリムスヒドロゲルカプセルを試験した。
結果
模倣された胃液および模倣された腸液中の崩壊データを表4に示す。FaSSGF中での15分間のインキュベーション後に3つのカプセルが破裂したが、残りは2時間のインキュベーションを通じて無傷のままであった。2時間後、カプセルをFaSSIFに浸し、5分以内に破裂させた。タクロリムス充填マイクロファイバー懸濁液ならびに凍結乾燥され、カプセル充填のためのマンニトールおよびデンプングリコール酸ナトリウムとブレンドされたタクロリムス充填マイクロファイバー懸濁液の顕微鏡検査は、タクロリムス充填マイクロファイバーのサイズおよび形状が凍結乾燥およびカプセル充填過程によって影響を受けないことを示す。
【表4-1】
ラットインドメタシンモデルにおけるタクロリムスヒドロゲル試験の結果を図7に示す。タクロリムスヒドロゲルカプセルでの処置は、ビヒクル対照と比較して空腸病変スコアの統計学的に有意な減少をもたらした。ヒドロゲル封入されたタクロリムスカプセルと比較して、このデータは、賦形剤含有量がより少ないより低充填のタクロリムス製剤(タクロリムスヒドロゲル)も同じ1mg/kg投与で有効であることを実証している。
別段の定義がなければ、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で引用される刊行物および刊行物がそのために引用されている資料は、参照により具体的に組み込まれる。当業者は、定型的な実験作業のみを用いて、本明細書に記載された発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識し、または確かめることができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0212】
[実施例7]タクロリムス充填パルミチン酸アスコルビルマイクロファイバーを含有するヒドロゲル封入されたタクロリムスカプセルの調製、炎症性腸疾患のラットインドメタシン誘発モデルにおけるインビトロ崩壊試験およびインビボ試験
【0213】
材料および方法
タクロリムス充填パルミチン酸アスコルビルヒドロゲル懸濁液(Tac(18mg):AP(400mg))を実施例1に概説されているように調製し、凍結乾燥させた。粉末のタクロリムスおよびパルミチン酸アスコルビル含有量をHPLC分析によって確認した。次いで、Tac(18mg):AP(400mg)粉末(2.1356g)をデンプングリコール酸ナトリウム(0.2840g)およびマンニトール(1.1383g)と合わせ、最終重量比をそれぞれ60%、8.0%および32%とした。固体粉末成分を完全に混合して、均一なカプセル充填調合物を作製した。充填調合物の均一性を、4つの別個の試料(RSD Tac=4.03%、RSD AP=3.82%)のHPLC分析によって確認した。
【0214】
カプセル充填およびコーティング
サイズ9のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセル(40カプセル)をMulti Capsule Filler(TORPAC(登録商標))中に装填した。タクロリムス充填パルミチン酸アスコルビル充填調合物(720mg)をMulti Capsule Filler上に装填し、約16mgの充填調合物を充填された40個のカプセルを得た。空のカプセルは、8.5±0.7mgの平均重量を有していた。充填されたカプセルは、24.4±1.5mgの平均重量を有していた。充填された粉末の量は、15.9±1.6mgの平均重量を有していた。次いで、実施例2に記載されているようにEUDRAGIT(登録商標)L 100-55ポリマーで、カプセルをコーティングした。コーティングされたカプセルは、28.0±1.0の平均重量を有し、3.6±1.8mgの平均コーティング重量をもたらした。実施例2に概説されているように崩壊試験を行った。
【0215】
ラットのインドメタシンモデルにおけるALV-306タクロリムスヒドロゲルカプセルのインビボ試験
実施例6に記載されているように、ラット-インドメタシン誘発IBDモデルにおいてALV-306タクロリムスヒドロゲルカプセルを試験した。
【0216】
結果
模倣された胃液および模倣された腸液中の崩壊データを表4に示す。FaSSGF中での15分間のインキュベーション後に3つのカプセルが破裂したが、残りは2時間のインキュベーションを通じて無傷のままであった。2時間後、カプセルをFaSSIFに浸し、5分以内に破裂させた。タクロリムス充填マイクロファイバー懸濁液ならびに凍結乾燥され、カプセル充填のためのマンニトールおよびデンプングリコール酸ナトリウムとブレンドされたタクロリムス充填マイクロファイバー懸濁液の顕微鏡検査は、タクロリムス充填マイクロファイバーのサイズおよび形状が凍結乾燥およびカプセル充填過程によって影響を受けないことを示す。
【表4-2】
【0217】
ラットインドメタシンモデルにおけるALV-306タクロリムスヒドロゲル試験の結果を図7に示す。ALV-306タクロリムスヒドロゲルカプセルでの処置は、ビヒクル対照と比較して空腸病変スコアの統計学的に有意な減少をもたらした。ヒドロゲル封入されたタクロリムスカプセルと比較して、このデータは、賦形剤含有量がより少ないより低充填のタクロリムス製剤(ALV-306タクロリムスヒドロゲル)も同じ1mg/kg投与で有効であることを実証している。
【0218】
別段の定義がなければ、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で引用される刊行物および刊行物がそのために引用されている資料は、参照により具体的に組み込まれる。当業者は、定型的な実験作業のみを用いて、本明細書に記載された発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識し、または確かめることができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
製剤であって、
2,500またはそれ未満の分子量を有する1またはそれを超えるゲル化剤であって、自己集合して前記ゲル化剤の分子間の共有結合によらない相互作用を通じてナノ構造ゲルを形成するゲル化剤と、
前記ゲル中に封入されたおよび/または前記ゲル内に捕捉された1またはそれを超える治療薬、予防薬または診断薬と、
必要に応じて、薬学的に許容され得る賦形剤と、
を含む粒子であって、
液体懸濁液を形成し、または乾燥され、カプセル、錠剤、インサートもしくは坐剤内に含有される粒子を含む、製剤。
(項目2)
ゲル化剤ならびに治療薬、予防薬および/または診断薬の均質な溶液を37℃またはそれより高くまで加熱し、次いで冷却することによって形成される、項目1に記載の製剤。(項目3)
1またはそれを超えるゲル化剤が、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、デカン酸アスコルビル、ラウリン酸アスコルビル、カプリル酸アスコルビル、ミリスチン酸アスコルビル、オレイン酸アスコルビルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択されるアルカン酸アスコルビルを含む、項目1に記載の製剤。
(項目4)
1またはそれを超えるゲル化剤が、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、デカン酸スクロース、ラウリン酸スクロース、カプリル酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、オレイン酸スクロースまたはこれらの組み合わせからなる群から選択されるアルカン酸スクロースを含む、項目1に記載の製剤。
(項目5)
1またはそれを超えるゲル化剤が、モノステアリン酸ソルビタン、デカン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、カプリル酸ソルビタン、ミリスチン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンまたはこれらの組み合わせからなる群から選択されるアルカン酸ソルビタンを含む、項目1に記載の製剤。
(項目6)
均質な溶液を形成するために、治療薬、予防薬または診断薬が最初に有機溶媒中に溶解され、次いで有機溶媒の大部分が凍結乾燥、乾燥、洗浄またはろ過によって除去される、項目1に記載の製剤。
(項目7)
粒子がマイクロ粒子および/またはナノ粒子である、項目1に記載の製剤。
(項目8)
懸濁液が、ゲルを機械的に破壊または分散させることによって形成された、分散された粒子、球体、シート、繊維またはテープの形態である、項目1に記載の製剤。
(項目9)
錠剤、カプセル、坐剤またはインサートの形態の、項目1に記載の製剤。
(項目10)
粒子、錠剤、カプセル、坐剤またはインサートからの薬剤の放出を制御するために、前記粒子、錠剤、カプセル、坐剤またはインサートがポリマーでコーティングされている、項目1に記載の製剤。
(項目11)
ポリマーが腸溶性ポリマーである、項目10に記載の製剤。
(項目12)
ポリマーが皮膜形成ポリマーである、項目10に記載の製剤。
(項目13)
粘膜付着性ポリマーコーティングを含む、項目10に記載の製剤。
(項目14)
前記薬剤が、抗感染剤、抗炎症剤もしくは免疫調節剤または化学療法剤である、項目1に記載の製剤。
(項目15)
薬剤がタクロリムスである、項目14に記載の製剤。
(項目16)
前記ゲル化剤がパルミチン酸アスコルビルである、項目3に記載の製剤。
(項目17)
製剤を製造する方法であって、
(a)2,500またはそれ未満の分子量を有するゲル化剤と、治療薬、予防薬または診断薬とを含む溶液を、有機溶媒を必要に応じて含む水溶液中に形成する工程と;
(b)均質な溶液を形成するために、混合しながら、工程(a)からの前記水溶液を加熱する工程と;
(c)前記ゲル化剤の分子間の共有結合によらない相互作用によって形成されたナノ構造から構成される自己集合性ゲルを生成するために、工程(b)からの均質な溶液を冷却する工程と;
(d)ゲル粒子を形成するために、ゲルを機械的に破壊する工程と;
(e)ゲル粒子を形成するために、前記ゲルを機械的に破壊する前、破壊する時点または破壊した後に、前記有機溶媒を除去するために、前記ゲルを洗浄、ろ過、乾燥または凍結乾燥する工程と;
(f)前記ゲル粒子を経口懸濁液、浣腸、カプセル、錠剤、または直腸もしくは膣の坐剤もしくはインサート、または滴下注入用の懸濁液へと製剤化する工程と;
を含む、方法。
(項目18)
制御放出または持続放出のために、懸濁の前にポリマーでゲル粒子をコーティングすることを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
制御放出または持続放出のために、カプセルまたは錠剤をポリマーでコーティングすることを含む、項目17に記載の方法。
(項目20)
ポリマーが腸溶性ポリマーである、項目19に記載の方法。
(項目21)
処置を必要とする個体を処置する方法であって、有効量の項目1に記載の製剤を前記個体に投与することを含む、方法。
(項目22)
前記製剤が経口投与される、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記製剤が浣腸として投与される、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記製剤が、カプセルまたは錠剤の嚥下によって経口投与される、項目21に記載の方法。
(項目25)
前記製剤が、坐剤またはインサートとして膣または直腸に投与される、項目21に記載の方法。
(項目26)
前記製剤が管腔内への滴下注入によって投与される、項目21に記載の方法。
(項目27)
前記管腔が膀胱である、項目26に記載の方法
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
【外国語明細書】