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特開2023-17847バイオフィルム形成を阻害するためのリポソーム
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  • 特開-バイオフィルム形成を阻害するためのリポソーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023017847
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】バイオフィルム形成を阻害するためのリポソーム
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/04 20060101AFI20230131BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230131BHJP
   A01N 31/06 20060101ALI20230131BHJP
   A01N 57/12 20060101ALI20230131BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230131BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230131BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230131BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230131BHJP
   A61L 15/20 20060101ALI20230131BHJP
   A61L 15/46 20060101ALI20230131BHJP
   A61L 29/16 20060101ALI20230131BHJP
   A61L 29/08 20060101ALI20230131BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
A01N25/04 102
A01P3/00
A01N31/06
A01N57/12 F
A61K9/127
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/28
A61L15/20
A61L15/46
A61L29/16
A61L29/08
A61P31/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022172840
(22)【出願日】2022-10-28
(62)【分割の表示】P 2019547617の分割
【原出願日】2018-03-01
(31)【優先権主張番号】17158913.8
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519312670
【氏名又は名称】コンビオシン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アゼレード ダ シルヴェイラ ラジョニアス, サマレ
(72)【発明者】
【氏名】ラジョニアス, フレデリク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バイオフィルム形成を阻害するための組成物を提供する。
【解決手段】組成物は、(i)単一の空リポソームであり、前記単一の空リポソームは、(a)コレステロールを含む空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)であり、好ましくは前記空リポソームは、コレステロール及びスフィンゴミエリンを含む空リポソーム、若しくは、(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソームから選択される単一の空リポソーム、又は、(ii)空リポソーム混合物であり、前記空リポソーム混合物は、(a)コレステロールを含む空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)であり、(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソームと、(c)ホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンを含む空リポソームとから選択される、少なくとも1つの空リポソームを含む、前記空リポソーム混合物を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、前記組成物は、
(i)単一の空リポソームであり、前記単一の空リポソームは、
(a)コレステロールを含む空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)であり、好ましくは前記空リポソームはコレステロール及びスフィンゴミエリンを含む(更に好ましくは、から成る)、空リポソーム、若しくは、
(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソーム、
から選択される、前記単一の空リポソーム、
又は、
(ii)空リポソーム混合物であり、前記空リポソーム混合物は、
(a)コレステロールを含む空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)であり、好ましくは前記空リポソームはコレステロール及びスフィンゴミエリンを含む(更に好ましくは、から成る)、前記空リポソームと、
(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソームと、
(c)ホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンを含む(好ましくは、から成る)空リポソームと、
から選択される、少なくとも1つの空リポソームを含む(好ましくは、から成る)、前記空リポソーム混合物、
を含み(好ましくは、から成り)、
少なくとも1つの空リポソームは、互いに独立して、コレステロールと、スフィンゴミエリンと、セラミドと、ホスファチジルコリンと、ホスファチジルエタノールアミンと、ホスファチジルセリンと、ジアシルグリセロールと、4炭素原子よりも長く最大で28炭素原子の飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸を1又は2又はそれ以上含むホスファチジン酸とから選択される脂質又はリン脂質を含む(好ましくは、から成る)空リポソームから選択され、
バイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法において使用される、
組成物。
【請求項2】
前記(i)単一の空リポソームは、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である空リポソーム、又は、(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソームから選択され、前記空リポソーム混合物は、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む、
請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記組成物は単一の空リポソームを含み(好ましくは、から成り)、前記単一の空リポソームは、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である空リポソーム、又は、(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソームである、
請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記組成物は空リポソーム混合物を含み(好ましくは、から成り)、前記空リポソーム混合物は、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む(好ましくは、から成る)、
請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記空リポソーム(a)のコレステロールの量は30%~70%(重量/重量)であり、好ましくは前記空リポソーム(a)のコレステロールの量は35%~60%(重量/重量)である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記空リポソーム(a)のコレステロールの量は45%~55%(重量/重量)であり、好ましくは前記空リポソーム(a)のコレステロールの量は約50%(重量/重量)である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記空リポソーム混合物は少なくとも20%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームを含み、好ましくは前記空リポソーム混合物は少なくとも30%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームを含む、
請求項2、4~6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記空リポソーム混合物は少なくとも40%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームを含む、
請求項2、4~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記使用は、表面上でのバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための方法における使用、又は、表面上の既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記使用は、状態若しくは疾患の予防又は処置のためであり、好ましくは前記状態又は疾患は、前記バイオフィルムに存在する細菌に起因する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記状態又は疾患は感染症から選択され、好ましくは前記感染症は、気道感染症、性感染症、髄膜炎、尿路感染症、胃腸疾患、自己弁心内膜炎、大腸炎、膣炎、尿道炎、結膜炎、耳炎(好ましくは中耳炎)、嚢胞性線維症、人工呼吸器関連肺炎、菌血症又は創傷感染症である、
請求項10に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記状態又は疾患、好ましくは前記感染症は、少なくとも1つのESKAPE病原体に起因する、
請求項10又は請求項11に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記状態又は疾患は、肺炎球菌、バシラス属菌、リステリア・モノサイトゲネス、ブドウ球菌属菌、乳酸菌(好ましくはラクトバチルス・プランタルム及びラクトコッカス・ラクティス)、ストレプトコッカス・ソブリナス、ストレプトコッカス・ミュータンス、大腸菌、緑膿菌、腸内細菌科、サルモネラ属菌(好ましくはサルモネラ菌、サルモネラ・エンテリティディス又はチフス菌)、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、プロテウス・ミラビリス、シゲラ属菌、モラクセラ(好ましくはカタラリス菌)、ヘリコバクター(好ましくはヘリコバクター・ピロリ)、ステノトロホモナス、デロビブリオ、酢酸菌、レジオネラ(好ましくはレジオネラ・ニューモフィラ)、シアノバクテリア、スピロヘータ、緑色硫黄細菌及び緑色非硫黄細菌、ナイセリア(好ましくは淋菌又は髄膜炎菌)、インフルエンザ菌、エンテロコッカス・フェカリス、黄色ブドウ球菌、クレブシエラ・ニューモニエ、アシネトバクター・バウマンニ、セラチア・マルセセンス、エンテロバクター・クロアカ、並びにエンテロバクター属菌から選択される、グラム陰性菌又はグラム陽性菌に起因する、
請求項10~11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記使用は抗菌剤と組み合わされ、好ましくは前記抗菌剤は、抗生物質、抗真菌剤、抗毒素剤、抗病原性剤、防腐薬又はそれらの組合わせであり、更に好ましくは、前記抗菌剤は抗生物質である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記方法はエクスビボの方法であり、好ましくは前記方法は、表面、好ましくは医療機器の表面を、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含む、
請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための、定められた脂質組成の空リポソーム又は空リポソーム混合物に関する。本発明は更に、本発明の空リポソーム又は空リポソーム混合物を単独で、又は標準的な抗菌処置と組み合わせて用いることによる、係るバイオフィルム形成の処置又は予防に関する。
【背景技術】
【0002】
参考文献:Davies、Nat.Rev.Drug Discov.(2003)2:114-122;Bjarnsholt他、Nat.Rev.Drug Discov.(2013)12:791-808;Wu他、International Journal of Oral Science 7(2015);Rasamiravaka他、BioMed Research International Volume(2015);Bhattacharya他、Expert Rev Anti Infect Ther.(2015)13(12);Peneysan他、Molecules(2015)20;Rabin他、Future Med.Chem.(2015)7(4)。
【0003】
微生物は、プランクトン様生物(特に浮遊性の細菌又は真菌)として、又はバイオフィルム(特にバイオフィルム細菌又は真菌)として発生する可能性がある。通常、このようなバイオフィルムは、タンパク質、細胞外DNA、アミロイド繊維及び多糖類から構成される分泌ポリマーマトリックスに包み込まれた、密集し高度に組織化された微生物の群集から成り、それらは、バイオフィルムの全体的な構造骨格及びアーキテクチャに寄与する高度に水和された極性混合物を形成する。
【0004】
プランクトン様微生物と比較すると、バイオフィルム微生物は、十分な栄養状態下ではほぼ全ての生態系において優勢である。バイオフィルムは、よって、非生物表面、例えばインプラント表面(カテーテル、人工血管、人工心臓弁、心臓ペースメーカー、髄液シャント、導尿カテーテル、腹膜透析カテーテル、人工関節と整形外科固定具、子宮内避妊具、胆管ステント、乳房インプラント、コンタクトレンズ、義歯、また歯の領域では虫歯と歯周炎など)に付着し、また、肺、皮膚、骨、歯などの生物表面にも付着するので、様々な宿主環境において確立され、例えば、嚢胞性線維症患者における慢性の気道感染症、慢性の閉塞性肺疾患、自己弁心内膜炎、慢性の中耳炎、慢性の副鼻腔炎、又は慢性の創傷感染症につながる。また、細菌と真菌の両方が歯に付着し、唾液ポリマーと微生物細胞外生成物に埋め込まれる結果として、バイオフィルムは歯垢を形成するので、歯科疾患の発症を促進する。バイオフィルムは食品工場内や工業プロセス中に食品機器の表面に生じることができるので、バイオフィルムは食品産業でも問題である。
【0005】
バイオフィルム微生物が単に表面に付着したプランクトン様細胞であれば、この暴露は重要ではないが、バイオフィルム微生物はプランクトン様微生物とは大いに異なる。バイオフィルムポリマーマトリックスは、宿主の免疫防御に対するシールドを形成し、深在性の細菌と真菌をそれぞれ抗細菌剤と抗真菌剤から保護する。また、バイオフィルムは感染の微小環境として機能し、慢性の感染症と再発を促進する。バイオフィルム関連の感染症は慢性であり、持続的で、治癒が困難である。心臓弁などのインプラント上に形成されたバイオフィルムの場合でも、分離したバイオフィルム細胞が血流と共に移動し、他の臓器で感染症を引き起こすおそれがある。
【0006】
バイオフィルムは様々な感染症に関与し、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方、並びにマイコプラズマ、スピロプラズマ及び真菌によって形成される。バイオフィルムはまた、ESKAPE病原体に起因する感染症にも関与する。バイオフィルムに関連する疾患の数は非常に多いと考えられており、大腸炎、膣炎、尿道炎、結膜炎及び耳炎は一般例のほんの一部である。バイオフィルムは、示されているように、導尿カテーテル、静脈カテーテル、動脈カテーテル、シャントなどを含む医療機器の生着菌としても重要である。バイオフィルムに存在する細菌及び真菌は抗菌剤と免疫防御メカニズムに抵抗するので、バイオフィルム関連の感染症は、嚢胞性線維症(CF)患者における気管支肺緑膿菌(P.aeruginosa)感染症など、慢性になる傾向がある。
【0007】
実際、バイオフィルム細菌は、プランクトン様細菌よりも抗生物質に対して最大1000倍の耐性をもつ。伝統的に、抗生物質は、浮遊性の細菌すなわちプランクトン様生態の細菌の成長と生存に関与する細胞メカニズムを標的とするように開発されてきた。しかし、バイオフィルム細菌は、それらのプランクトン様カウンターパートとは大きく異なる。特に、バイオフィルム細菌が発現する細胞外タンパク質、毒性因子及びサーファクタントは、浮遊性細菌によって発現されるものとは異なる。また、保護的なバイオフィルムマトリックスにより、宿主の免疫反応の回避と、生存の促進と、細菌の播種とが可能となる。更に、抗菌耐性はバイオフィルムの固有特性である。よって細菌は、インタクトな宿主免疫防御と頻繁な抗生物質処置にも関わらず生存することができる。更に、プランクトン様細菌のみを用いた感染症を標的とした抗生物質処置は、バイオフィルム表現型に対してほとんどの場合無効である。バイオフィルム根絶のための有効な抗生物質投与量は、高用量の抗生物質の毒性及び副作用を理由に、また腎機能と肝機能の制限を理由に、従来の抗生物質投与ではなかなか到達されない。また、バイオフィルム内の細菌を抗生物質に暴露すると、抗生物質耐性の発生に関連する選択圧力が更に高まる。同様に、真菌バイオフィルム関連の感染症は、抗菌剤に対する耐性が原因で、一部には薬物排出ポンプの表面誘導アップレギュレーションのせいで、従来の治療ではしばしば効果がない。
【0008】
現在の方法は、感染症源(カテーテル又は整形外科用ハードウェアの外科的除去、非吸着性縫合糸、壊死組織)の物理的除去又は抗菌薬による処置から構成されることがある。しかしながら、抗生物質と抗真菌剤はバイオフィルムを形成する生物を直接標的とするが、バイオフィルム関連状態の処置にはなかなか成功しない。現在の方法は、実際、感染症を根絶するのに常に成功するとは限らず、バイオフィルムに存在する細菌又は真菌に関与する感染症はしばしば処置不能になり、最終的には慢性状態に発展してしまう。バイオフィルムを形成する能力は細菌の普遍的な属性であり、医学的に重要な多くの真菌がバイオフィルムを産生するという事実にも関わらず、バイオフィルム形成の根底にある詳細なメカニズムは未だ十分に理解されていないため、バイオフィルム関連感染症の処置と根絶は特に困難になっている。開発中の非殺菌性抗バイオフィルム薬物は、主に(i)表面への微生物の付着を回避すること、(ii)バイオフィルムの成熟に影響を与え、且つ/又はその分散と劣化を誘導すること(例えば、バイオフィルム形成の調節において重要な役割を果たす細菌システム及びメッセンジャー、とりわけ細菌クオラムセンシング(QS)、ヌクレオチド(特にc-di-GMP)又はスモールノンコーディングRNA(sRNA)を標的にすることにより)、又は(iii)例えばバイオフィルム形成に関与するアミロイド構造体の損傷による、表面への微生物の付着を回避することを目的としている。バイオフィルム関連状態の処置は、かなり満たされていない臨床的ニーズを証明している。
【0009】
コレステロール(CHOL)及び/又はスフィンゴミエリン(SM)で構成される空リポソームなどのテーラーメイドの空リポソームと、細菌感染症の処置のためのそれらの使用は、細菌毒素のトラップとして機能することが最近報告されている(国際公開第2013/186286号;Henry BD他、Nat Biotechnol 2015;33(1):81-88;Azeredo da Silveira、S and Perez、A、Expert Rev.Anti Infect.Ther.2015;13(5):531-533)。
【0010】
したがって、本発明のひとつの目的は、抗バイオフィルム活性を有する組成物と、バイオフィルム関連の状態及び疾患の処置のための組成物とを提供することである。
【発明の概要】
【0011】
我々は、驚くべきことに、本発明に係る定められた脂質組成の空リポソーム及び定められた脂質組成の空リポソーム混合物が、バイオフィルムの形成を防止又は低減し、また、既存のバイオフィルムを根絶又は低減できることを見出した。特に、驚くべきことに、本発明の空リポソーム及びそれらの混合物は、緑膿菌によるバイオフィルム形成を低減すると立証されたことが見出された。よって、本発明に係る定められた脂質組成の空リポソーム及び空リポソーム混合物は、バイオフィルムの形成を防止若しくは低減し、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減することができ、よって、急性及び慢性の細菌感染症又は嚢胞性線維症などの状態及び疾患を防止及び処置することができる。
【0012】
また、本発明の単一の空リポソーム又は空リポソーム混合物によるバイオフィルムの破壊若しくは弱体化、又はバイオフィルム形成の回避若しくは低減は、同時又はその後に適用される抗菌剤、特に殺生物剤(抗細菌剤)、特に抗生物質、又は抗真菌剤の有効性の向上につながるであろう。遊離したプランクトン様細菌又は真菌は抗菌剤及び抗生物質に対する感受性がはるかに(最大1000倍)高いので、これは高い相乗効果である。同時又は後続の抗生物質又は抗真菌処置により、プランクトン様生物を排除することができ、感染が体の他の部分に広がるのを回避することができる。また、遊離した生物は、宿主の免疫防御メカニズムに対する感受性がはるかに高く、したがって、宿主自身の免疫系によってより効果的に除去することができる。
【0013】
更に、本発明に係る発明的組成物及び空リポソームが非毒性であると考えられることは、本発明の更なる有益且つ有利な特徴を表す。
【0014】
よって、第1の態様において、本発明は、バイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のための組成物を提供する。前記組成物は、(i)単一の空リポソームであり、前記単一の空リポソームは、(a)コレステロールを含む空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)であり、好ましくは前記空リポソームは、コレステロール及びスフィンゴミエリンを含む(更に好ましくは、から成る)空リポソーム、若しくは、(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソーム、から選択される単一の空リポソーム、又は、(ii)空リポソーム混合物であり、前記空リポソーム混合物は、(a)コレステロールを含む空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)であり、好ましくは前記空リポソームは、コレステロール及びスフィンゴミエリンを含む(更に好ましくは、から成る)空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソームと、(c)ホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンを含む(好ましくは、から成る)空リポソームと、から選択される少なくとも1つの空リポソームを含む(好ましくは、から成る)、空リポソーム混合物を含む(好ましくは、から成る)。少なくとも1つの空リポソームは、互いに独立して、コレステロールと、スフィンゴミエリンと、セラミドと、ホスファチジルコリンと、ホスファチジルエタノールアミンと、ホスファチジルセリンと、ジアシルグリセロールと、4炭素原子よりも長く最大で28炭素原子の飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸を1又は2又はそれ以上含むホスファチジン酸とから選択される脂質又はリン脂質を含む(好ましくは、から成る)空リポソームから選択される。
【0015】
更なる態様では、本発明は、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のための、スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である空リポソームを提供する。
【0016】
更なる態様では、本発明は、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のための、スフィンゴミエリンから成る空リポソームを提供する。
【0017】
更に別の態様では、本発明は、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のための、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む空リポソーム混合物を提供する。
【0018】
更に別の態様では、本発明は、バイオフィルム形成を低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法であって、治療上有効な量の本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物を、それを必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに投与することを含む方法を提供する。更に別の態様では、本発明は、リスクのある対象においてバイオフィルム形成を防止する方法であって、有効量の本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物を、リスクのある哺乳動物、好ましくはヒトに投与することを含む方法を提供する。更に別の態様では、本発明は、バイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法であって、標準的な抗菌治療薬を同時投与することなく、治療上有効な量の本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物を、それを必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに投与することを含む方法を提供する。更に、本発明は、バイオフィルム形成を防止若しくは低減すること、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減することに関し、感染症の標準的な抗菌治療の前に、感染症の標準的な抗菌治療の後に、感染症の標準的な抗菌治療と共に、又は感染症の標準的な抗菌治療薬と同時に、治療上有効な量の本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物を、それを必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに投与することを含む。
【0019】
本明細書が続くにつれて、本発明の更なる態様及び実施形態が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】1×10細胞/ウェルの細菌密度を用いた、本発明の空リポソーム混合物による緑膿菌多剤耐性株6077バイオフィルムの阻害。グラフは、空リポソームの非存在下で形成されたバイオフィルムと比較した、バイオフィルム阻害の割合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
別段の定めがない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0022】
本明細書で用いられる「約」という用語は、+/-10%の意味を有するものとする。例えば、約50%は45%~55%を意味するものとする。好ましくは、本明細書で用いられる「約」という用語は、+/-5%の意味を有するものとする。例えば、約50%は47.5%~52.5%を意味するものとする。
【0023】
本明細書において“a”又は“an”という用語が用いられるとき、別段の指示がない限り、それらは「少なくとも1つ」を意味する。特に、本発明に係る空リポソーム及び空リポソーム混合物を説明するための、前記単一の空リポソーム、前記第1の空リポソーム及び前記第2の空リポソームに関連付けられた用語“a”又は“an”の使用は、典型的且つ好ましくは、単一の空リポソームと、前記第1の空リポソーム及び前記第2の空リポソームを含む空リポソーム混合物とを指すものである。
【0024】
よって、第1の態様において、本発明は、バイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のための組成物を提供する。前記組成物は、(i)単一の空リポソームであり、前記単一の空リポソームは、(a)コレステロールを含む空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)であり、好ましくは前記空リポソームは、コレステロール及びスフィンゴミエリンを含む(更に好ましくは、から成る)空リポソーム、若しくは、(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソームから選択される、単一の空リポソーム、又は、(ii)空リポソーム混合物であり、前記空リポソーム混合物は、(a)コレステロールを含む空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)であり、好ましくは前記空リポソームはコレステロール及びスフィンゴミエリンを含む(更に好ましくは、から成る)空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソームと、(c)ホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンを含む(好ましくは、から成る)空リポソームとから選択される、少なくとも1つの空リポソームを含む(好ましくは、から成る)空リポソーム混合物、を含む(好ましくは、から成る)。少なくとも1つの空リポソームは、互いに独立して、コレステロールと、スフィンゴミエリンと、セラミドと、ホスファチジルコリンと、ホスファチジルエタノールアミンと、ホスファチジルセリンと、ジアシルグリセロールと、4炭素原子よりも長く最大で28炭素原子の飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸を1又は2又はそれ以上含むホスファチジン酸とから選択される脂質又はリン脂質を含む(好ましくは、から成る)空リポソームから選択される。
【0025】
本明細書で用いられる「空リポソーム」という用語は、20nm~10μm、好ましくは20~500nmの平均径を有し、更に好ましくは20nm~400nm、重ねて更に好ましくは40nm~400nm又は20nm~200nmの平均径を有し、1つ又は複数のリン脂質二重層から成り、典型的且つ好ましくは、単層小胞及び多層小胞、より好ましくは小型単層小胞(SUV)であるリポソーム、好ましくは人工リポソームを指す。好適な実施形態では、本明細書で用いられる「空リポソーム」という用語は、典型的且つ好ましくは、いかなる薬物も組み込まないリポソームを指し、典型的且つ好ましくは、いかなる医薬品も組み込まないリポソームを指す。「組み込まれる/組み込む」は、本明細書で用いられるとき、また本発明の空リポソームに言及するとき、典型的且つ好ましくは、リポソームの空洞内に、又はリポソームの潜在的な二重層内に、又はリポソームの膜層の一部として、カプセル化される/カプセル化することを意味する。別の好適な実施形態では、本明細書で用いられる「空リポソーム」という用語は、典型的且つ好ましくは、本発明に従って、スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る、又はスフィンゴミエリンから成るリポソームを指し、もっぱら更に、水溶性の無機化合物及び/又は水溶性の有機分子を含む。典型的且つ好ましくは、前記水溶性の無機化合物及び/又は水溶性の有機分子は、前記本発明の空リポソームの合成から由来し、典型的且つ好ましくは、前記水溶性の無機化合物は、好ましくはNaCl、KCl、MgClから選択される無機塩類であり、前記水溶性の有機分子は緩衝剤であり、好ましくは前記水溶性の有機分子はグルコース及びHEPESから選択される。典型的且つ好ましくは、前記水溶性の無機化合物及び/又は水溶性の有機分子は、本発明の空リポソームの生産中におけるそれらの存在を理由に、本発明の発明的空リポソームに組み込まれる。別の好適な実施形態では、本明細書で用いられる「空リポソーム」という用語は、典型的且つ好ましくは、本発明に従って、スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る、又はスフィンゴミエリンから成るリポソームを指し、前記空リポソームは抗酸化物質を含まない。更に好適な実施形態では、本明細書で用いられる「空リポソーム」という用語は、典型的且つ好ましくは、本発明に従って、スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る、又はスフィンゴミエリンから成るリポソームを指し、もっぱら更に、水溶性の無機化合物及び/又は水溶性の有機分子を含む。典型的且つ好ましくは前記水溶性の無機化合物及び/又は水溶性の有機分子は、前記本発明の空リポソームの合成から由来し、典型的且つ好ましくは、前記水溶性の無機化合物は、好ましくはNaCl、KCl、MgClから選択される無機塩類であり、前記水溶性の有機分子は緩衝剤であり、好ましくは前記水溶性の有機分子はグルコース及びHEPESから選択される。本発明に係る、スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る、又はスフィンゴミエリンから成る前記空リポソームは、抗酸化物質を含まない。
【0026】
本明細書で用いられる「バイオフィルム」という用語は、互いに付着しているか、表面、生物及び非生物の表面並びに界面を含む界面に付着しているか、又は組織又は粘液に関連付けられた細菌細胞及び/又は真菌細胞の集団を指すものである。この定義は、小さい微生物及び大きい微生物の凝集体並びにフロキュール、更に多孔質媒体の細孔空間内の付着性集団も含む。「抗バイオフィルム活性」又は単に「抗バイオフィルム」という用語は、本明細書で用いられる場合、バイオフィルム形成の防止若しくは低減、又は既存のバイオフィルムの根絶若しくは減少、微生物、好ましくは細菌の少なくとも部分的な遊離、又はバイオフィルムの少なくとも部分的な溶解を指す。「バイオフィルム細菌」という用語は、本明細書で用いられる場合、バイオフィルムに存在する非プランクトン様細菌を指す。
【0027】
本明細書で用いられる「ESKAPE病原体」という用語は、エンテロコッカス・フェカリス、黄色ブドウ球菌、クレブシエラ・ニューモニエ、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及びエンテロバクター属菌から選択される病原体を指すものである。
【0028】
本明細書においてバイオフィルム又はバイオフィルム形成に関して用いられる「阻害する」、「破壊する」、「低減する」及び「根絶する」という用語は、典型的且つ好ましくは残りの細胞の数の観点から、バイオフィルム形成及び/又は進行の完全又は部分的な阻害(好ましくは20%超、更に好ましくは30%超、更に好ましくは50%超、更に好ましくは90%超、更により好ましくは95%超、又は更には99%超)を意味し、またその範囲内に、バイオフィルム進行又はバイオフィルム形成及び/若しくは進行に関連するプロセスの逆転を含む。後者に関しては、未処置のバイオフィルム、又はバイオフィルムの安定性に影響を与えないことが知られている化合物で処置されたバイオフィルムよりも速い速度での、既存のバイオフィルムの消失を意味する。更に、阻害は永続的であっても一時的であってもよい。一時的な阻害の観点から、バイオフィルム形成及び/又は進行は、望ましい効果を生み出すのに十分な時間(例えば少なくとも5日間、好ましくは少なくとも10日間)阻害されてよい。好ましくは、バイオフィルムの阻害は完全且つ/又は永続的である(好ましくは生存菌が存在しない)(「根絶」)。
【0029】
本明細書で用いられる「対象の体内への挿入を目的とした医療機器」という用語は、例えば限定ではないが、欧州委員会健康消費者保護総局、部局B、ユニットB2、医療機器に関する欧州連合指令93/42/EECの適用に関する「化粧品及び医療機器」ガイドラインに定められるような、外科的に侵襲的な機器又は埋め込み可能な機器を指す。
【0030】
本明細書で用いられる「処置する」、「処置」又は「治療」という用語は、所望の生理学的効果を得るという意味を指す。効果は、疾患若しくは状態、及び/又は疾患若しくは状態に起因する症状を部分的又は完全に治癒するという観点から、治療的であってよい。該用語は、疾患又は状態を阻害すること、すなわちその進行を抑止すること、又は、疾患又は状態を寛解させること、すなわち疾患又は状態の退行を引き起こすことを指す。「処置する」又は「処理」という用語は、本明細書において、本発明に係るエクスビボの方法の文脈で、又は表面(哺乳動物の細胞、組織若しくは構造体の表面、又は植物の細胞、組織若しくは構造体の表面、又は食用植物の表面、又は医療機器から選択される表面、又は水若しくは水溶液との接触を目的とした表面など)を本発明の組成物で処置する文脈で用いられるとき、本発明に係る前記エクスビボの方法において又は前記表面に前述の発明の組成物を接触、コーティング及び適用することを含むが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で用いられる「予防」という用語は、疾患若しくは状態、及び/又は疾患若しくは状態に起因する症状の発生を防止又は遅延させる手段を指す。
【0032】
本明細書で用いられる「有効量」という用語は、予防又は治療の文脈において、対象若しくは患者、又は(典型的且つ好ましくは、対象の体内への挿入を目的とした)医療機器の表面などの表面に投与又は適用されたときに、有益な又は望ましい結果をもたらすのに十分な、有効成分の、典型的且つ好ましくは本発明に係る組成物の量を指す。より具体的には、本明細書で用いられる「治療上有効な量」という用語は、対象又は患者に投与されたときに有益な又は望ましい結果をもたらすのに十分な、有効成分の、例えば本発明に係る組成物の量を指す。治療上有効な量は、1回又は複数の投与、適用又は投薬で投与することができる。本発明に係る組成物の治療上有効な量は、当業者によって容易に決定され得る。本発明の文脈において、「治療上有効な量」とは、バイオフィルム形成を防止若しくは低減すること、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減すること、又は前記バイオフィルム形成若しくは前記既存のバイオフィルムに関連する状態又は疾患の処置に関連する1つ又は複数のパラメーターにおいて、客観的に測定された変化をもたらすものである。好ましくは前記状態又は疾患は、前記バイオフィルムに存在する細菌に起因し、好ましくは前記状態又は疾患は感染症から選択される。更に好ましくは、前記感染症は、気道感染症、性感染症、髄膜炎、尿路感染症、胃腸疾患、自己弁心内膜炎、大腸炎、膣炎、尿道炎、結膜炎、耳炎(好ましくは中耳炎)、嚢胞性線維症、人工呼吸器関連肺炎、菌血症又は創傷感染症である。もちろん、治療上有効な量は、処置されている特定の対象及び状態、対象の体重及び年齢、疾患状態の重症度、選択された特定の組成物、従うべき投与計画、投与のタイミング、投与の方式などによって異なり、これらは全て、当業者によって容易に決定され得る。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「対象」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」という用語は、診断、予後診断、予防又は治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物の対象、例えばヒト、又はイヌやネコ、ウマなどの家畜哺乳動物、又はウシやヒツジ、ブタなどの食用動物を指し、好ましくはヒトを指す。
【0034】
好適な実施形態では、互いに独立して、コレステロールと、スフィンゴミエリンと、セラミドと、ホスファチジルコリンと、ホスファチジルエタノールアミンと、ホスファチジルセリンと、ジアシルグリセロールと、4炭素原子よりも長く最大で28炭素原子の飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸を1又は2又はそれ以上含むホスファチジン酸とから選択される脂質又はリン脂質を含む(好ましくは、から成る)空リポソームから選択される前記少なくとも1つの空リポソームは、(a)コレステロールを含む空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)であり、好ましくは前記空リポソームは、コレステロール及びスフィンゴミエリンを含む(更に好ましくは、から成る)空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソームと、(c)ホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンを含む(好ましくは、から構成される)空リポソームとから選択される。
【0035】
好適な実施形態では、前記(i)単一の空リポソームは、(a)コレステロール及びスフィンゴミエリンを含む空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である空リポソーム、又は、(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソームから選択される。前記空リポソーム混合物は、(a)コレステロール及びスフィンゴミエリンを含む第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む。
【0036】
好適な実施形態では、前記(i)単一の空リポソームは、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である空リポソーム、又は、(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソームから選択される。前記空リポソーム混合物は、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む。
【0037】
好適な実施形態では、前記組成物は、(a)コレステロール及びスフィンゴミエリンを含む空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である空リポソーム、から選択される単一の空リポソームを含む(好ましくは、から成る)。
【0038】
好適な実施形態では、本発明に係る方法における使用のための前記組成物は単一の空リポソームを含む(好ましくは、から成る)。前記単一の空リポソームは、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である空リポソーム、又は、(b)スフィンゴミエリンから成る空リポソームから選択される。
【0039】
別の好適な実施形態では、本発明に係る方法における使用のための前記組成物は単一の空リポソームを含む(好ましくは、から成る)。前記単一の空リポソームは、スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である。好ましくは、前記空リポソームのコレステロールの量は30%~70%(重量/重量)であり、更に好ましくは、前記空リポソームのコレステロールの量は35%~60%(重量/重量)である。別の好適な実施形態では、前記空リポソームのコレステロールの量は45%~55%(重量/重量)であり、重ねて更に好ましくは、前記空リポソームのコレステロールの量は約50%(重量/重量)である。よって、本発明の非常に好適な実施形態では、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のために、前記単一の空リポソームは、50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと、50%(重量/重量)のコレステロールとを含む(好ましくは、から成る)。
【0040】
別の好適な実施形態では、本発明に係る前記方法における使用のための前記組成物は、単一の空リポソームを含む(好ましくは、から成る)。前記単一の空リポソームは、スフィンゴミエリンから成る空リポソームである。
【0041】
一実施形態において、前記組成物は空リポソーム混合物を含む(好ましくは、から成る)。前記空リポソーム混合物は、(a)コレステロールを含む第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームと、(c)ホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンを含む(好ましくは、から成る)第3の空リポソームと、を含む(好ましくは、から成る)。
【0042】
別の実施形態では、使用のための前記組成物は空リポソーム混合物を含む(好ましくは、から成る)。前記空リポソーム混合物は、(a)コレステロールを含む第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームと、任意に(c)ホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンを含む(好ましくは、から成る)空リポソームと、更に任意に(d)少なくとも1つの空リポソームであり、互いに独立して、コレステロールと、スフィンゴミエリンと、セラミドと、ホスファチジルコリンと、ホスファチジルエタノールアミンと、ホスファチジルセリンと、ジアシルグリセロールと、4炭素原子よりも長く最大で28炭素原子の飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸を1又は2又はそれ以上含むホスファチジン酸とから選択される脂質又はリン脂質を含む(好ましくは、から成る)空リポソームから選択される、少なくとも1つの空リポソームと、を含む(好ましくは、から成る)。
【0043】
一実施形態において、前記組成物は空リポソーム混合物を含む(好ましくは、から成る)。前記空リポソーム混合物は、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームと、(c)ホスファチジルコリン及びスフィンゴミエリンを含む(好ましくは、から成る)第3の空リポソームと、を含む(好ましくは、から成る)。
【0044】
一実施形態において、前記組成物は空リポソーム混合物を含む(好ましくは、から成る)。前記空リポソーム混合物は、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームと、(c)コレステロールと、スフィンゴミエリンと、セラミドと、ホスファチジルコリンと、ホスファチジルエタノールアミンと、ホスファチジルセリンと、ジアシルグリセロールと、4炭素原子よりも長く最大で28炭素原子の飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸を1又は2又はそれ以上含むホスファチジン酸とから選択される脂質又はリン脂質を含む(好ましくは、から成る)第3の空リポソームと、を含む(好ましくは、から成る)。
【0045】
好適な実施形態では、前記組成物は空リポソーム混合物を含む(好ましくは、から成る)。前記空リポソーム混合物は、(a)コレステロール及びスフィンゴミエリンを含む第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む(好ましくは、から成る)。
【0046】
別の好適な実施形態では、本発明に係る方法における使用のための前記組成物は空リポソーム混合物を含む(好ましくは、から成る)。前記空リポソーム混合物は、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む。好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は30%~70%(重量/重量)であり、更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は35%~60%(重量/重量)である。別の好適な実施形態では、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は45%~55%(重量/重量)であり、重ねて更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は約50%(重量/重量)である。よって、本発明の非常に好適な実施形態では、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のために、前記第1の空リポソームは、50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと、50%(重量/重量)のコレステロールとを含む(好ましくは、から成る)。
【0047】
別の好適な実施形態では、本発明に係る方法における使用のための前記組成物は空リポソーム混合物を含む。前記空リポソーム混合物は、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)、好ましくは30%~70%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとから成る。好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は35%~60%(重量/重量)であり、更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は45%~55%(重量/重量)であり、重ねて更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は約50%(重量/重量)である。よって、本発明の非常に好適な実施形態では、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のために、前記空リポソーム混合物の前記第1の空リポソームは、50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと、50%(重量/重量)のコレステロールとから成る。
【0048】
別の好適な実施形態では、本発明に係る方法における使用のための前記組成物は空リポソーム混合物から成る。前記空リポソーム混合物は、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)、好ましくは30%~70%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとから成る。好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は35%~60%(重量/重量)であり、更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は45%~55%(重量/重量)であり、重ねて更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は約50%(重量/重量)である。よって、本発明の非常に好適な実施形態では、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のために、前記空リポソーム混合物の前記第1の空リポソームは、50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと、50%(重量/重量)のコレステロールとから成る。
【0049】
別の好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、更に好ましくは少なくとも10%、重ねて更に好ましくは少なくとも20%、重ねて更に好ましくは少なくとも30%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、最大で99%、好ましくは最大で95%、更に好ましくは最大で90%、重ねて更に好ましくは最大で80%、重ねて更に好ましくは最大で70%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含む。重ねて更に好ましくは、前記空リポソーム混合物は、少なくとも40%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、最大で60%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含む。
【0050】
別の好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、更に好ましくは少なくとも10%、重ねて更に好ましくは少なくとも20%、重ねて更に好ましくは少なくとも30%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、最大で99%、好ましくは最大で95%、更に好ましくは最大で90%、重ねて更に好ましくは最大で80%、重ねて更に好ましくは最大で70%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとを含む。重ねて更に好ましくは前記空リポソーム混合物は、少なくとも40%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、最大で60%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとを含む。
【0051】
別の好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、1~99%、好ましくは5%~95%、更に好ましくは10~90%、重ねて更に好ましくは20~80%、重ねて更に好ましくは30~70%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームを含む。重ねて更に好ましくは、前記空リポソーム混合物は、40%~60%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームを含む。
【0052】
別の好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、少なくとも30%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、最大で70%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含み、好ましくは前記空リポソーム混合物は、少なくとも40%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、最大で60%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含む。更に好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、少なくとも45%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、最大で55%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含み、好ましくは前記空リポソーム混合物は、約50%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、約50%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含む。
【0053】
別の好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、少なくとも30%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、最大で70%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとを含み、好ましくは前記空リポソーム混合物は、少なくとも40%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、最大で60%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとを含む。更に好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、少なくとも45%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、最大で55%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとを含み、好ましくは前記空リポソーム混合物は、約50%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、約50%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとを含む。
【0054】
別の好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は少なくとも20%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームを含み、好ましくは前記空リポソーム混合物は少なくとも30%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームを含む。更に好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、少なくとも40%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームを含む。
【0055】
別の好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、前記第1及び前記第2の空リポソームをそれぞれ少なくとも20%(重量/重量)含み、好ましくは前記空リポソーム混合物は、前記第1及び前記第2の空リポソームをそれぞれ少なくとも30%(重量/重量)含む。更に好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、前記第1及び前記第2の空リポソームをそれぞれ少なくとも40%(重量/重量)含む。
【0056】
別の好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、前記第1の空リポソーム及び前記第2の空リポソームから成る。
【0057】
更に好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、前記第1の空リポソーム及び前記第2の空リポソームから成る。前記空リポソーム混合物は、少なくとも40%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、最大で60%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとから成り、好ましくは前記空リポソーム混合物は、約50%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、約50%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとから成る。
【0058】
更に好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、前記第1の空リポソーム及び前記第2の空リポソームから成る。前記空リポソーム混合物は、少なくとも40%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、最大で60%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとから成り、好ましくは前記空リポソーム混合物は、約50%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、約50%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとから成る。
【0059】
別の好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、1~99%、好ましくは5%~95%、更に好ましくは10~90%、重ねて更に好ましくは20~80%、重ねて更に好ましくは30~70%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームから成る。重ねて更に好ましくは、前記空リポソーム混合物は、40%~60%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームから成る。
【0060】
更に好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、前記第1の空リポソーム及び前記第2の空リポソームから成る。前記空リポソーム混合物は、少なくとも40%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、最大で60%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとから成り、好ましくは前記空リポソーム混合物は、約50%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、約50%(重量/重量)の前記第2の空リポソームから成る。前記第1の空リポソームのコレステロールの量は45%~55%(重量/重量)であり、好ましくは前記前記第1の空リポソームのコレステロールの量は約50%(重量/重量)である。
【0061】
更に好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、前記第1の空リポソーム及び前記第2の空リポソームから成る。前記空リポソーム混合物は、少なくとも40%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、最大で60%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとから成り、好ましくは前記空リポソーム混合物は、約50%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、約50%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとから成る。前記第1の空リポソームのコレステロールの量は45%~55%(重量/重量)であり、好ましくは前記前記第1の空リポソームのコレステロールの量は約50%(重量/重量)である。
【0062】
更に好適な実施形態では、本発明において使用されるか又は本発明における使用のための空リポソームは、20nm~10μm、好ましくは20~500nmの平均径を有し、更に好ましくは20nm~200nmの平均径を有するリポソーム、好ましくは人工リポソームである。本発明において使用されるか又は本発明における使用のための空リポソームは、いかなる薬物もカプセル化していないリポソームである。本発明において使用されるか又は本発明における使用のための空リポソームは、いかなる薬物も含まない。本発明において使用されるか又は本発明における使用のための空リポソームは、他の薬物を組み込まない。本明細書で用いられる「組み込まれる」は、典型的且つ好ましくは、リポソームの空洞内に、又はリポソームの潜在的な二重層内に、又はリポソームの膜層の一部として、カプセル化されることを意味する。本発明において使用されるか又は本発明における使用のためのリポソームは、1つ又は複数のリン脂質二重層から成り、典型的且つ好ましくは単層小胞及び多層小胞である。小型単層小胞(SUV)が最も好適である。
【0063】
更なる態様では、本発明は、好ましくは哺乳動物において、更に好ましくはヒトにおいてバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法において使用するための、スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る空リポソームを提供し、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である。別の好適な実施形態では、本発明に係る方法における使用のための前記空リポソームは、スフィンゴミエリン及びコレステロールを含み(好ましくは、から成り)、コレステロールの量は30%~70%(重量/重量)であり、更に好ましくは、前記空リポソームのコレステロールの量は35%~60%(重量/重量)である。別の好適な実施形態では、前記空リポソームのコレステロールの量は45%~55%(重量/重量)であり、重ねて更に好ましくは前記空リポソームのコレステロールの量は約50%(重量/重量)である。よって、本発明の非常に好適な実施形態では、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のために、前記空リポソームは、50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと、50%(重量/重量)のコレステロールとを含む(好ましくは、から成る)。
【0064】
更なる態様では、本発明は、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のための、スフィンゴミエリンから成る空リポソームを提供する。
【0065】
更に別の態様では、本発明は、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のための空リポソーム混合物を提供し、空リポソーム混合物は、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む。好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は30%~70%(重量/重量)であり、更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は35%~60%(重量/重量)である。別の好適な実施形態では、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は45%~55%(重量/重量)であり、重ねて更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は約50%(重量/重量)である。よって、本発明の非常に好適な実施形態では、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のために、前記第1の空リポソームは、50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと、50%(重量/重量)のコレステロールとを含む(好ましくはから、成る)。別の好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、少なくとも30%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、最大で70%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含み、好ましくは前記空リポソーム混合物は、少なくとも40%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、最大で60%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含む。更に好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、少なくとも45%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、最大で55%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含み、好ましくは前記空リポソーム混合物は、約50%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、約50%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含む。
【0066】
更に別の態様では、本発明は、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のための空リポソーム混合物を提供し、空リポソーム混合物は、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む。好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は30%~70%(重量/重量)であり、更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は35%~60%(重量/重量)である。別の好適な実施形態では、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は45%~55%(重量/重量)であり、重ねて更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は約50%(重量/重量)である。よって、本発明の非常に好適な実施形態では、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のために、前記第1の空リポソームは、50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと、50%(重量/重量)のコレステロールとを含む(好ましくは、から成る)。別の好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、少なくとも30%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、最大で70%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとを含み、好ましくは前記空リポソーム混合物は、少なくとも40%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、最大で60%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとを含む。更に好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、少なくとも45%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、最大で55%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとを含み、好ましくは前記空リポソーム混合物は、約50%(重量/重量)の前記第2の空リポソームと、約50%(重量/重量)の前記第1の空リポソームとを含む。
【0067】
更に別の態様では、本発明は、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のための空リポソーム混合物を提供し、空リポソーム混合物は、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む。好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は30%~70%(重量/重量)であり、更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は35%~60%(重量/重量)である。別の好適な実施形態では、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は45%~55%(重量/重量)であり、重ねて更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は約50%(重量/重量)である。よって、本発明の非常に好適な実施形態では、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のために、前記第1の空リポソームは、50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと、50%(重量/重量)のコレステロールとを含む(好ましくは、から成る)。別の好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、1~99%、好ましくは5%~95%、更に好ましくは10~90%、重ねて更に好ましくは20~80%、重ねて更に好ましくは30~70%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームを含み、重ねて更に好ましくは、前記空リポソーム混合物は、40%~60%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームを含む。
【0068】
よって、別の態様では、本発明は、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のための組成物を提供し、組成物は空リポソーム混合物を含む(好ましくは、から成る)。前記空リポソーム混合物は、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は少なくとも30%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む(好ましくは、から成る)。好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は30%~70%(重量/重量)であり、更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は35%~60%(重量/重量)である。別の好適な実施形態では、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は45%~55%(重量/重量)であり、重ねて更に好ましくは、前記第1の空リポソームのコレステロールの量は約50%(重量/重量)である。よって、本発明の非常に好適な実施形態では、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のために、前記第1の空リポソームは、50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと、50%(重量/重量)のコレステロールとを含む(好ましくは、から成る)。別の好適な実施形態では、前記空リポソーム混合物は、1~99%、好ましくは5%~95%、更に好ましくは10~90%、重ねて更に好ましくは20~80%、重ねて更に好ましくは30~70%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームを含み、重ねて更に好ましくは、前記空リポソーム混合物は、40%~60%(重量/重量)の前記第1及び前記第2の空リポソームを含む。
【0069】
よって、本発明の非常に好適な実施形態では、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のために、前記空リポソーム混合物は、(i)約50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと約50%(重量/重量)のコレステロールとから成る第1の空リポソームと、(ii)(100%)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む(好ましくは、から成る)。前記空リポソーム混合物は、少なくとも45%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、最大で55%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含み、好ましくは前記空リポソーム混合物は、約50%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、約50%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含む。
【0070】
よって、別の態様において、本発明は、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のための組成物を提供し、組成物は空リポソーム混合物を含む(好ましくは、から成る)。前記空リポソーム混合物は、(i)約50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと約50%(重量/重量)のコレステロールとから成る第1の空リポソームと、(ii)(100%)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む(好ましくは、から成る)。前記空リポソーム混合物は、少なくとも45%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、最大で55%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含み、好ましくは前記空リポソーム混合物は、約50%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、約50%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含む。
【0071】
更に好適な実施形態では、約50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと約50%(重量/重量)のコレステロールとから成る前記第1の空リポソームと、(100%)スフィンゴミエリンから成る前記第2の空リポソームは、20~500nm、好ましくは20nm~400nm、重ねて更に好ましくは40nm~400nmの平均径を有する。更に好適な実施形態では、約50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと約50%(重量/重量)のコレステロールとから成る前記第1の空リポソームと、(100%)スフィンゴミエリンから成る前記第2の空リポソームは、6.6~8.0のpHを有する。更に好適な実施形態では、約50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと約50%(重量/重量)のコレステロールとから成る前記第1の空リポソームと、(100%)スフィンゴミエリンから成る前記第2の空リポソームは、<0.45の多分散性指数を有する。更に好適な実施形態では、約50%(重量/重量)のスフィンゴミエリンと約50%(重量/重量)のコレステロールとから成る前記第1の空リポソームと、(100%)スフィンゴミエリンから成る前記第2の空リポソームは、-25~+2mVのゼータ電位を有する。
【0072】
リポソームは、当技術分野で知られている押出又は超音波処理又はマイクロフルイダイゼーション(例えば高圧ホモジナイゼーション)の方法に従って製造される。例えば、脂質をクロロホルムなどの有機溶媒に混合する。クロロホルムを蒸発させ、乾燥した脂質膜を生理食塩水(0.9%NaCl)やクレブス液、タイロード液などの水溶液で水和し、更に超音波処理してリポソームを生成する。必要であれば、リポソームのサイズは、固定された孔径の膜フィルターを通じて押し出すことよって制御することができる。個別に生成された異なる脂質組成物のリポソームは、典型的且つ好ましくは適用の直前に、必要な割合で混合される。別の例として、リポソームは、標準的なリポソーム水和、押出、ダイアフィルトレーションのプロセスを用いて作製される。脂質をエタノールなどの溶媒に混合しながら溶解し、次に脂質溶液をPBS緩衝液に混合しながら加えて、不均一なサイズのリポソームを自然に形成し、完全に水和させる。得られた小胞は、動的光散乱によって測定されるときに、所望の粒子サイズが達成されるまで、一連のポリカーボネートトラックエッチング膜を通して繰り返し押し出される。押出後プロセス流体をPBSに対してダイアフィルトレーションして、プロセス流体から溶媒を除去し、最終的に濃縮し、且つ/又はPBS緩衝液で総脂質の目標濃度まで希釈する。
【0073】
リポソームの脂質表面(二重層)は、水性溶媒中で自発的に形成され、したがって、水並びに他の水溶性の無機分子及び有機分子(リポソーム生成中に存在し得る)をリポソーム内部にトラップする。本研究で使用される空リポソームは、水及び単純な有機分子又は無機分子(例えばNaCl、KCl、MgCl、グルコース、HEPES及び/又はCaCl)を含むバッファー内で生成されるリポソームである。
【0074】
本発明の非常に好適な実施形態では、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法における使用のための、重ねて更に好ましくは、ヒトにおけるバイオフィルム形成を防止又は低減するための方法における使用のための組成物は、(a)スフィンゴミエリン及びコレステロールから成る第1の空リポソームであり、コレステロールの量は約50%(重量/重量)である第1の空リポソームと、(b)スフィンゴミエリンから成る第2の空リポソームとを含む空リポソーム混合物を含む(好ましくは、から成る)。好ましくは、前記空リポソーム混合物は、少なくとも40%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、最大で60%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含む。より好ましくは、前記空リポソーム混合物は、約50%(重量/重量)の前記第1の空リポソームと、約50%(重量/重量)の前記第2の空リポソームとを含む。
【0075】
別の好適な実施形態では、前記使用は、バイオフィルム形成を防止又は低減するための方法における使用である。好ましくは前記使用は、表面上でのバイオフィルム形成を防止又は低減するための方法における使用であり、好ましくは、前記表面は、哺乳動物、好ましくはヒトの細胞、組織又は構造体の表面であり、更に好ましくは、前記細胞又は組織は肺、筋肉、骨若しくは皮膚の細胞又は組織であり、前記構造体は歯である。
【0076】
別の好適な実施形態では、前記使用は、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるバイオフィルム形成を防止又は低減するための方法における使用であり、更に好ましくは、前記使用は、哺乳動物、好ましくはヒトの表面上でのバイオフィルム形成を防止又は低減するための方法における使用である。
【0077】
別の好適な実施形態では、前記使用は、既存のバイオフィルムを根絶又は低減するための方法における使用であり、好ましくは前記使用は、表面上でのバイオフィルム形成を防止又は低減するための方法における使用である。好ましくは、前記表面は、哺乳動物、好ましくはヒトの細胞、組織又は構造体の表面であり、更に好ましくは、前記細胞又は組織は肺、筋肉、骨若しくは皮膚の細胞又は組織であり、前記構造体は歯である。
【0078】
別の好適な実施形態では、前記使用は、表面上でのバイオフィルム形成を防止又は低減するための方法における使用、又は、表面上の既存のバイオフィルムを根絶又は低減するための方法における使用である。
【0079】
別の好適な実施形態では、前記使用は、表面上でのバイオフィルム形成を防止又は低減するための方法における使用であり、好ましくは前記表面は、哺乳動物の細胞、組織又は構造体の表面である。
【0080】
別の好適な実施形態では、前記使用は、表面上でのバイオフィルム形成を防止又は低減するための方法における使用であり、好ましくは前記表面は、植物の細胞、組織又は構造体の表面である。別の好適な実施形態では、植物は、ニンジン、ジャガイモ、キュウリ、タマネギ、トマト、レタス、リンゴ、柑橘類又はプラムを生産する植物であってよいが、これらに限定されない。特定の実施形態では、植物細胞は植物の葉、根、花、果実又は他の食用構造体に由来し、組織又は構造体は、植物の葉、根、花、果実又は他の食用構造体から選択される。別の好適な実施形態では、前記表面は食用植物の表面である。
【0081】
別の好適な実施形態では、前記使用は、表面上の既存のバイオフィルムを根絶又は低減するための方法における使用である。好ましくは、前記表面は、哺乳動物、好ましくはヒトの細胞、組織又は構造体の表面であり、更に好ましくは、前記細胞又は組織は肺、筋肉、骨若しくは皮膚の細胞又は組織であり、前記構造体は歯である。
【0082】
別の好適な実施形態では、前記表面は創傷被覆材の表面である。
【0083】
別の好適な実施形態では、前記表面は、医療機器から選択される典型的且つ好ましくは非生物の表面、又は、水若しくは水溶液との接触を目的とした表面である。
【0084】
別の好適な実施形態では、前記表面は、典型的且つ好ましくは対象の体内への挿入を目的とした医療機器の、典型的且つ好ましくは非生物の表面であり、前記医療機器は、ペースメーカー、ペースメーカーリード、カテーテル、ステント、人工血管、人工心臓弁、心臓ペースメーカー、髄液シャント、導尿カテーテル、腹膜透析カテーテル、人工関節と整形外科用固定器具、子宮内避妊具、胆管ステント、乳房インプラント、コンタクトレンズ、義歯から選択される。
【0085】
別の好適な実施形態では、前記表面は、水又は水溶液との接触を目的とした表面である。水又は水溶液との接触を目的とした前記表面は、船体、管、フィルター、ストレイン又はポンプの表面であり、好ましくは前記表面は、ステンレス鋼製又はポリプロピレン製である。
【0086】
特定の好適な実施形態では、対象の体内への挿入を目的とした医療機器は、短期使用(>60分、<30日)を目的とした外科的に侵襲的な機器であり、クランプ、注入カニューレ、皮膚縫合装置、一時的な充填材、心臓手術で用いられる組織安定器、心臓カテーテル、心拍出量プローブ、一時的ペースメーカーリード、心嚢などの心臓ドレナージを目的とした胸部カテーテル、頸動脈シャント、アブレーションカテーテル、神経系カテーテル、皮質電極、又は小線源療法装置などがあるが、これらに限定されない。
【0087】
特定の好適な実施形態では、対象の体内への挿入を意図した医療機器は、埋め込み可能な装置又は長期の外科的侵襲的装置(>30日)であり、例えば人工関節置換、靱帯、シャント、ステント及び弁(例えば肺動脈弁)、爪及びプレート、眼内レンズ、内部閉塞装置(血管閉塞装置など)、組織増大インプラント、末梢血管カテーテル、末梢血管グラフト及びステント、陰茎インプラント、非吸収性縫合糸、骨セメント及び顎顔面インプラント、前眼部手術専用の粘弾性手術器具、ブリッジ及びクラウン、歯科用充填材及びピン、歯科用合金、セラミックス及びポリマー、人工心臓弁、動脈瘤クリップ、人工血管及びステント、中心血管カテーテル、脊髄ステント、CNS電極、心血管縫合糸、永久的及び回収可能な大静脈フィルター、中隔閉鎖装置、大動脈内バルーンポンプ、外部左室補助装置などである。
【0088】
食品加工業の場合、バイオフィルムは、低温殺菌パイプやチューブなどの食品加工機器における慢性的な細菌汚染を引き起こす。
【0089】
海洋産業の場合、海洋汚損は通常、いくつかの段階を含むと説明されており、細菌付着の初期段階でバイオフィルムの形成を開始し、その後に、自身に付着する大型藻類(例えばボウアオノリ、ヒビミドロ)及び原生動物(例えばツリガネムシ、ゾータムニウム種)の胞子の2次生着菌が続く。最後に、3次生着菌、すなわち被嚢類、軟体動物、無柄の刺胞動物などのマクロファウラー(macrofouler)が付着する。よって、バイオフィルム形成は、船体、ボートのプロペラ、ケージ、水中ドック構造体、海洋石油プラットフォームの水中構造体、海底鉱山、ブイ、海底ケーブル、発電所の冷却システム、脱塩プラントなどのパイプ及びフィルターといった水面下の表面の生物汚損の底質を提供する。
【0090】
別の好適な実施形態では、前記使用は、表面上での細菌バイオフィルム形成を防止又は低減するための方法における使用である。
【0091】
バイオフィルムに住む細菌は、任意の細菌、すなわちグラム陰性菌若しくはグラム陽性菌又はマイコプラズマ及びスピロプラズマであってよい。これらのグループ内には、動物細胞、植物細胞又は人工表面に関連する細菌が存在する。特定の実施形態では、ここで議論されるバイオフィルムを生成する細菌及び/又はバイオフィルムに住む細菌は、グラム陰性菌又はグラム陽性菌である。
【0092】
別の好適な実施形態では、前記使用は状態若しくは疾患の予防又は処置のためであり、好ましくは前記状態又は疾患は、前記バイオフィルムに存在する細菌に起因する。
【0093】
別の好適な実施形態では、前記使用は、典型的且つ好ましくは状態又は疾患の予防のためであり、更に好ましくは、前記状態又は疾患は、前記バイオフィルムに存在する細菌に起因する。別の好適な実施形態では、前記使用は状態又は疾患の治療のためであり、好ましくは前記状態又は疾患は、前記バイオフィルムに存在する細菌に起因する。
【0094】
別の好適な実施形態では、前記使用は状態若しくは疾患の予防又は治療のためであり、前記状態又は疾患は感染性疾患である。別の好適な実施形態では、前記使用は、典型的且つ好ましくは状態又は疾患の予防のためであり、前記状態又は疾患は感染性疾患である。別の好適な実施形態では、前記使用は状態又は疾患の治療のためであり、前記状態又は疾患は感染性疾患である。
【0095】
別の好適な実施形態では、前記使用は、哺乳動物、好ましくはヒトの状態若しくは疾患の予防又は治療のためであり、好ましくは前記状態又は疾患は感染性疾患である。別の好適な実施形態では、前記使用は、哺乳動物、好ましくはヒトの状態又は疾患の治療のためであり、好ましくは前記状態又は疾患は感染性疾患である。
【0096】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は感染症から選択される。好ましくは前記感染症は、気道感染症、性感染症、髄膜炎、尿路感染症、胃腸疾患、自己弁心内膜炎、大腸炎、膣炎、尿道炎、結膜炎、耳炎(好ましくは中耳炎)、嚢胞性線維症、人工呼吸器関連肺炎、菌血症又は創傷感染症である。
【0097】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は、気道感染症、性感染症、髄膜炎、尿路感染症、胃腸疾患、自己弁心内膜炎、大腸炎、膣炎、尿道炎、結膜炎、耳炎(好ましくは中耳炎)、嚢胞性線維症、人工呼吸器関連肺炎、菌血症又は創傷感染症である。
【0098】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は感染症である。
【0099】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は、気道感染症、性感染症、髄膜炎、尿路感染症、胃腸疾患、自己弁心内膜炎、大腸炎、膣炎、尿道炎、結膜炎、耳炎、好ましくは中耳炎、嚢胞性線維症、人工呼吸器関連肺炎、菌血症又は創傷感染症から選択される。
【0100】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は気道感染症である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は性感染症である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は髄膜炎である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は尿路感染症である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は胃腸疾患である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は自己弁心内膜炎である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は大腸炎である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は膣炎である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は尿道炎である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は結膜炎である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は耳炎であり、好ましくは中耳炎である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は人工呼吸器関連肺炎である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は菌血症である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は(慢性の)創傷感染症であり、典型的且つ好ましくは、慢性の創傷感染症である。
【0101】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は慢性の気道感染症であり、好ましくは前記慢性の気道感染症は、嚢胞性線維症、慢性の閉塞性肺疾患又は慢性の副鼻腔炎である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は嚢胞性線維症である。
【0102】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は、細菌、マイコプラズマ、スピロプラズマ又は真菌に起因する。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は細菌に起因する。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患はマイコプラズマに起因する。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患はスピロプラズマに起因する。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は真菌に起因し、好ましくは前記真菌は、カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカス、トリコスポロン、コクシジオイデス又はニューモシスチスから選択される。
【0103】
バイオフィルムの関与する感染症及び状態は、グラム陽性菌(肺炎球菌、バシラス属菌、リステリア・モノサイトゲネス、ブドウ球菌属菌、乳酸菌(ラクトバチルス・プランタルムやラクトコッカス・ラクティスなど)、ストレプトコッカス・ソブリナス、ストレプトコッカス・ミュータンスなど)に起因する感染症と、グラム陰性菌(大腸菌、緑膿菌、腸内細菌科、サルモネラ属菌、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、プロテウス・ミラビリス、アシネトバクター・バウマンニ、シゲラ属菌、モラクセラ、ヘリコバクター、ステノトロホモナス、デロビブリオ、酢酸菌、レジオネラ、シアノバクテリア、スピロヘータ、緑色硫黄細菌及び緑色非硫黄細菌、ナイセリア、インフルエンザ菌、クレブシエラ・ニューモニエ、セラチア・マルセセンスなど)に起因する感染症と、マイコプラズマ、スピロプラズマ及び真菌(カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカス、トリコスポロン、コクシジオイデス、ニューモシスチスなど)に起因する感染症とを含む。バイオフィルムを形成する一部の病原体はESKAPE病原体である。バイオフィルムの関与する感染症及び状態は、例えば、性感染症の原因となるグラム陰性球菌(例えば淋菌)、髄膜炎の原因となるグラム陰性球菌(例えば髄膜炎菌)、又は、呼吸器症状の原因となるグラム陰性球菌(例えばカタラリス菌、インフルエンザ菌)に起因するものを含む。また、主に呼吸器障害の原因となるグラム陰性桿菌(例えばクレブシエラ・ニューモニエ、レジオネラ・ニューモフィラ、緑膿菌)、主に泌尿器障害の原因となるグラム陰性桿菌(例えば大腸菌、プロテウス・ミラビリス、エンテロバクター・クロアカ、セラチア・マルセセンス)、又は、主に胃腸障害の原因となるグラム陰性桿菌(例えばヘリコバクター・ピロリ、サルモネラ・エンテリティディス、チフス菌)に起因する感染症及び状態も含む。バイオフィルムの関与する感染症は、病院及び集中治療室での菌血症、二次髄膜炎及び人工呼吸器関連肺炎の原因となる院内感染症(例えばアシネトバクター・バウマンニ)も含む。
【0104】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患、好ましくは前記感染症は、少なくとも1つのESKAPE病原体に起因する。
【0105】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患、好ましくは前記感染症は、エンテロコッカス・フェカリスに起因する。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患、好ましくは前記感染症は、黄色ブドウ球菌に起因する。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患、好ましくは前記感染症は、クレブシエラ・ニューモニエに起因する。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患、好ましくは前記感染症は、アシネトバクター・バウマンニに起因する。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患、好ましくは前記感染症は、緑膿菌に起因する。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患、好ましくは前記感染症は、エンテロバクター属菌に起因する。
【0106】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は細菌に起因し、前記細菌はグラム陰性菌又はグラム陽性菌である。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患はグラム陰性菌に起因する。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患はグラム陽性菌に起因する。
【0107】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は、肺炎球菌、バシラス属菌、リステリア・モノサイトゲネス、ブドウ球菌属菌、乳酸菌(好ましくはラクトバチルス・プランタルム及びラクトコッカス・ラクティス)、ストレプトコッカス・ソブリナス、ストレプトコッカス・ミュータンス、大腸菌、緑膿菌、腸内細菌科、サルモネラ属菌(好ましくはサルモネラ菌、サルモネラ・エンテリティディス又はチフス菌)、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、プロテウス・ミラビリス、シゲラ属菌、モラクセラ(好ましくはカタラリス菌)、ヘリコバクター(好ましくはヘリコバクター・ピロリ)、ステノトロホモナス、デロビブリオ、酢酸菌、レジオネラ(好ましくはレジオネラ・ニューモフィラ)、シアノバクテリア、スピロヘータ、緑色硫黄細菌及び緑色非硫黄細菌、ナイセリア(好ましくは淋菌又は髄膜炎菌)、インフルエンザ菌、エンテロコッカス・フェカリス、黄色ブドウ球菌、クレブシエラ・ニューモニエ、アシネトバクター・バウマンニ、セラチア・マルセセンス、エンテロバクター・クロアカ及びエンテロバクター属菌から選択される、グラム陰性菌又はグラム陽性菌に起因する。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患、好ましくは前記感染症は、インフルエンザ菌又はセラチア・マルセセンスに起因する。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患、好ましくは前記感染症は、インフルエンザ菌に起因する。別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患、好ましくは前記感染症は、セラチア・マルセセンスに起因する。
【0108】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患、好ましくは前記感染症は、エンテロコッカス・フェカリス、黄色ブドウ球菌、クレブシエラ・ニューモニエ、アシネトバクター・バウマンニ、緑膿菌及びエンテロバクター属菌から選択される少なくとも1つのESKAPE病原体に起因し、又は、インフルエンザ菌又はセラチア・マルセセンスに起因する。
【0109】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は、肺炎球菌、バシラス属菌、リステリア・モノサイトゲネス、ブドウ球菌属菌、乳酸菌(好ましくはラクトバチルス・プランタルム及びラクトコッカス・ラクティス)、ストレプトコッカス・ソブリナス、ストレプトコッカス・ミュータンス、大腸菌、緑膿菌、腸内細菌科、サルモネラ菌、アクチノバシラス・プルロニューモニエ、プロテウス・ミラビリスから選択される、グラム陰性菌又はグラム陽性菌に起因する。
【0110】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は、緑膿菌、大腸菌、腸内細菌科、サルモネラ菌、アクチノバシラス・プルロニューモニエ及びプロテウス・ミラビリスから選択されるグラム陰性菌に起因する。
【0111】
別の非常に好適な実施形態では、前記状態又は疾患は緑膿菌に起因する。別の非常に好適な実施形態では、前記状態又は疾患はグラム陰性菌に起因し、前記グラム陰性菌は緑膿菌である。別の非常に好適な実施形態では、前記使用は、典型的且つ好ましくは表面上での、細菌バイオフィルム形成を防止又は低減するための方法における使用であり、前記細菌は緑膿菌である。
【0112】
緑膿菌バイオフィルムは、疾患再発のリザーバーとして機能し、完全治癒を妨げる。この日和見病原体のバイオフィルムは、嚢胞性線維症患者の肺感染症などの慢性感染症(CF患者の80%が緑膿菌に慢性的に感染している)と、人工呼吸器関連肺炎、術後創傷感染症、火傷患者の皮膚及び軟部組織の感染症などの、命に係わる困難な院内感染症との両方に関与する。また、医療用の機器、装置及びツールの汚染にも関与する(Rabin他、Future Med.Chem.7(4)2015;Tran他、PLOS Pathogens 10(11)2014)。
【0113】
別の好適な実施形態では、前記状態又は疾患は、肺炎球菌、バシラス属菌、リステリア・モノサイトゲネス、ブドウ球菌属菌、乳酸菌(好ましくはラクトバチルス・プランタルム及びラクトコッカス・ラクティス)、ストレプトコッカス・ソブリナス及びストレプトコッカス・ミュータンスから選択されるグラム陽性菌に起因する。
【0114】
別の非常に好適な実施形態では、前記状態又は疾患は黄色ブドウ球菌に起因する。別の非常に好適な実施形態では、前記使用は、典型的且つ好ましくは表面上での、細菌バイオフィルム形成を防止又は低減するための方法における使用であり、前記細菌は黄色ブドウ球菌である。
【0115】
黄色ブドウ球菌バイオフィルムは、複数の感染症の主な懸念の原因であり、従来の抗感染症アプローチ、特に抗生物質治療に挑戦するものである。黄色ブドウ球菌の多くの臨床分離株は、メチシリン耐性(MRSA)か多剤耐性のいずれかである。抗生物質治療薬に対する耐性は、MRSAが依然として影響を受けやすい少数の抗生物質に対して、バイオフィルムを形成する黄色ブドウ球菌細菌の耐性が増大することによって、更に増幅される。バンコマイシンは、黄色ブドウ球菌バイオフィルム関連の感染症に対して最も一般的に投与される薬物であるが、バンコマイシンに対するバイオフィルムの耐性の増大により、組み合わせ処置アプローチの使用が必要であることが示された。
【0116】
黄色ブドウ球菌バイオフィルムは、一般に、インプラント関連感染症(人工の整形外科用インプラント、心臓弁、ペースメーカー及び血管カテーテル)、慢性の傷、骨髄炎、肺嚢胞性線維症の感染症及び心内膜炎に関与する。例えば、肺嚢胞性線維症の感染症は、バイオフィルムの存在と、死亡率の増加を伴う慢性の、長期的な細菌の生存に関連する。黄色ブドウ球菌の場合、これらの感染症はMRSAに起因することが多い。黄色ブドウ球菌は、心内膜又は心臓の人工表面の感染症の主要な原因でもあり、感染性心内膜炎を引き起こす。黄色ブドウ球菌心内膜炎は、人工心臓弁、グラフト、血液透析カテーテル及びペースメーカーなどの人工心臓血管装置の移植を含む、外科的処置の使用の増加に伴って増加している(Bhattacharya他、Expert Rev Anti Infect Ther.13(12)2015)。
【0117】
更なる好適な実施形態では、本発明に係る、バイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法は、更に、それを必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに対する、治療上有効な量の本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物の投与を含む。
【0118】
バイオフィルム形成を防止若しくは低減するために、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するために、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物は、静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下注射の形式で適用することができる。注射液は、当技術分野で知られている標準的な方法、例えば滅菌生理食塩水のリポソームの懸濁液として調製される。本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物を、気道感染症の処置用のエアロゾルとして、又は舌下又は口腔内の適用、眼内又は硝子体内の適用、及び局所適用に有用な製剤として、適用することも考えられる(例えば目薬、歯磨き粉、皮膚又は口用の局所液体懸濁液など)。本発明の空リポソームなどのリポソームからこのような製剤を調製することは、当技術分野では既知である。本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物に基づく予防措置は、バイオフィルム関連の状態又は疾患の防止、例えばインプラント手術を受ける予定の、受ける又は受けた患者、又は慢性の感染症に苦しむ患者、又はバイオフィルム関連の状態又は疾患の進行を促進する他の環境におけるバイオフィルム進行の防止に役立であろう。
【0119】
更なる好適な実施形態では、本発明に係る、バイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法は、更に、それを必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに対する、治療上有効な量の本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物の投与を含む。本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物は、任意の他の薬物とは併用せずに、よって典型的には単独で投与される。更に、典型的且つ好ましくは、本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物は、同時に、又は最大で4週間前後(好ましくは最大で2週間)の任意の時間に、併用されない。
【0120】
本発明の更に好適な実施形態では、前記使用は抗菌剤と組み合わせられる。好ましくは前記抗菌剤は、抗生物質、抗真菌剤、抗毒素剤、抗病原性剤、防腐薬又はそれらの組合わせであり、更に好ましくは、前記抗菌剤は抗生物質である。
【0121】
本発明はまた、バイオフィルム形成を防止若しくは低減するための、又は既存のバイオフィルムを根絶若しくは低減するための方法に関し、好ましくは、状態又は疾患、好ましくは細菌感染症を処置するために、バイオフィルム形成を防止又は低減するための方法に関する。前記方法は、抗菌剤の前に、抗菌剤の後に、抗菌剤と共に、又は抗菌剤と同時に、好ましくは細菌感染症の標準的な抗生物質治療薬と共に、それを必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに、治療上有効な量の本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物を投与することを含む。
【0122】
本発明のこの好適な態様及び実施形態は、処置有効性を改善し、プランクトン様増殖を促進することで、バイオフィルムによってもたらされる群集レベルの更なる耐性を除去し、従来の抗生物質による細胞レベルの病原体の標的化を促進し、また、抗生物質投与量の削減を可能にすることを目的としている。また、本発明に係る単一の空リポソーム及び空リポソーム混合物が既に毒素中和剤として説明されているように、毒素に対するその作用は、同時に、細菌を武装解除するだけでなく、免疫防御システムが病原体に対する適切な反応を生み出すことを可能にする。
【0123】
本発明の更なる好適な実施形態では、本方法は更に、抗菌剤の前、抗菌剤の後、抗菌剤と併せた、又は抗菌剤と同時の、治療上有効な量の本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物の、それを必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに対する投与を含む。好ましくは前記抗菌剤は、抗生物質、抗真菌剤、抗毒素剤、抗病原性剤、防腐薬又はそれらの組合わせであり、更に好ましくは、前記抗菌剤は抗生物質である。更に好適な実施形態では、本方法は更に、標準的な抗生物質治療及び標準治療の前の、標準的な抗生物質治療及び標準治療の後の、標準的な抗生物質治療及び標準治療と併せた、又は標準的な抗生物質治療薬及び標準治療と同時の、治療上有効な量の本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物の、それを必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに対する投与を含む。
【0124】
本発明の更なる好適な実施形態では、本方法は更に、任意の他の薬物と併用しない、よって典型的には単独の、或いは、抗菌剤の前の、抗菌剤の後の、抗菌剤と併せた、又は抗菌剤と同時の、有効量の本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物の、それを必要とする動物、好ましくはウシやヒツジ、ブタなどの食用動物に対する投与を含む。好ましくは前記抗菌剤は、抗生物質、抗真菌剤、抗毒素剤、抗病原性剤、防腐薬又はそれらの組合わせであり、更に好ましくは、前記抗菌剤は抗生物質である。更に好適な実施形態では、本方法は更に、標準的な抗生物質治療法又は投与の前の、標準的な抗生物質治療法又は投与の後の、標準的な抗生物質治療法又は投与と併せた、又は標準的な抗生物質治療薬又は投与と同時の、有効量の本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物の、それを必要とする動物、好ましくはウシやヒツジなどの食用動物に対する投与を含む。
【0125】
本発明の更なる好適な実施形態では、本方法は更に、任意の他の薬物と併用しない、よって典型的には単独の、或いは、抗菌剤の前の、抗菌剤の後の、抗菌剤と併せた、又は抗菌剤と同時の、治療上有効な量の本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物の、それを必要とする動物、好ましくはウシやヒツジ、ブタなどの食用動物に対する投与を含む。好ましくは前記抗菌剤は、抗生物質、抗真菌剤、抗毒素剤、抗病原性剤、防腐薬又はそれらの組合わせであり、更に好ましくは、前記抗菌剤は抗生物質である。更に好適な実施形態では、本方法は更に、標準的な抗生物質治療薬の前の、標準的な抗生物質治療薬の後の、標準的な抗生物質治療薬と併せた、又は標準的な抗生物質治療薬と同時の、治療上有効な量の本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物の、それを必要とする動物、好ましくはウシやヒツジなどの食用動物に対する投与を含む。
【0126】
本発明の更なる好適な実施形態では、本方法は更に、任意の他の薬物と併用せず、よって典型的には単独で、或いは、抗菌剤の前に、抗菌剤の後に、抗菌剤と併せて、又は抗菌剤と同時に、治療上有効な量の本発明の組成物、本発明の単一の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物を、表面、好ましくは植物表面に接触させる又はコーティングすることを含む。好ましくは前記抗菌剤は、抗生物質、抗真菌剤、抗毒素剤、抗病原性剤、防腐薬又はそれらの組合わせであり、更に好ましくは、前記抗菌剤は抗生物質である。
【0127】
上記で定義された空リポソームと、上記で定義された空リポソーム混合物は、必要に応じて、更なる化合物、プロドラッグ又は薬物と共に、又は組み合わせて使用されてよいことが理解される。例えば、更なる化合物、プロドラッグ又は薬物を追加して、標準的な医薬品組成物を調製することができる。また、薬物又は薬物様化合物を追加することや、リポソーム内部に薬物又は薬物様化合物を組み込んだ更なる既知又は新規のリポソームを追加することも考えられる。
【0128】
考慮される薬物及びプロドラッグは、特に、当業者に知られている標準的な抗菌治療薬若しくは抗真菌治療薬、又は抗毒素剤若しくは抗病原性剤である。更に、抗生物質などの薬物が特に考えられる。そのような抗生物質は、例えば、カルバペネム(イミペネム/シラスタチン、メロペネム、エルタペネム、ドリペネムなど)、第1世代セファロスポリン(セファドロキシル及びセファレキシンなど)、第2世代セファロスポリン(セフロキシム、セファクロル及びセフプロジルなど)、第3世代セファロスポリン(セフタジジム、セフトリアキソン、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォタキシム、セフポドキシム、及びセフチブテンなど)、第4世代セファロスポリン(セフェピムなど)、第5世代セファロスポリン(セフタロリンフォサミル及びセフトビプロールなど)、グリコペプチド(バンコマイシン、テイコプラニン及びテラバンシンなど)、マクロライド(クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン及びスピラマイシンなど)、ペニシリン(アモキシシリン、フルクロキサシリン、オキサシリン、カルベニシリン及びピペラシリンなど)、ペニシリンの組合わせ(アモキシシリン/クラブラン酸、ピペラシリン/タゾバクタム、アンピシリン/スルバクタム及びチカルシリン/クラブラン酸など)、キノロン(シプロフロキサシン(例えばAradigm社のリポソームシプロフロキサシン)及びモキシフロキサシンなど)、マイコバクテリアに対する薬物(リファンピシン(米国ではリファンピン)、クロファジミン、ダプソン、カプレオマイシン、サイクロセリン、エタンブトール、エチオナミド、イソニアジド、ピラジナミド、リファブチン、リファペンチン及びストレプトマイシンなど)、他の抗生物質(メトロニダゾール、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、ホスホマイシン、フシジン酸、リネゾリド、ムピロシン、プラテンシマイシン、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファキシミン、チアンフェニコール、チゲサイクリン及びチニダゾールなど)、アミノグリコシド(アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン(例えばAxentis社のfluidosomes(商標)トブラマイシン)及びパロモマイシンなど)、スルホンアミド(マフェニド、スルホンアミドクリソイジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファジアジン銀、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファニルアミド、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム及びトリメトプリム-スルファメトキサゾール(コトリモキサゾール、TMP-SMX)など)、テトラサイクリン(デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン及びテトラサイクリンなど)、リンコサミド(クリンダマイシン及びリンコマイシンなど)、リポペプチド(ダプトマイシンなど)である。
【0129】
考えられる他の薬物は、例えば、副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド)を含む抗炎症薬(ヒドロコルチゾン(コルチゾール)、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾン酢酸エステル、酢酸デオキシコルチコステロン(DOCA)、アルドステロン、ブデソニド、デソニド及びフルオシノニドなど)、非ステロイド系抗炎症薬、例えばサリチル酸(アスピリン(アセチルサリチル酸)、ジフルニサル及びサルサラートなど)、プロピオン酸誘導体(イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン及びロキソプロフェンなど)、酢酸誘導体(インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク及びナブメトンなど)、エノール酸(オキシカム)誘導体(ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム及びイソキシカムなど)、フェナム酸誘導体(フェナム酸)(メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸及びトルフェナム酸など)、COX-2選択的阻害剤(coxibs)(セレコキシブなど)、及び他の薬物(リコフェロンなど)である。
【0130】
考えられる更なる薬物は、例えば、バソプレシン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、プロピルヘキセドリン、プソイドエフェドリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン及び抗ヒスタミン剤などの、昇圧剤及び血管収縮剤である。
【0131】
また、他のタイプの薬物、例えばパラセタモール(鎮痛剤)、ニスタチン、アムホテリシンB、ポリエン、アゾール及びトリアゾール、ヌクレオシド類似体、エキノカンディン、ニューモカンジン(対真菌感染症)、ブピバカイン(術後疼痛管理)、モルヒネ(鎮痛剤)、ベルテポルフィン(眼科疾患)、エストラジオール(更年期障害)、aganocide(登録商標)化合物も考えられる。
【0132】
この組合わせ処置では、本発明に係る空リポソーム及びリポソーム混合物はアジュバントと見なされてよく、対応する処置方法は補助的処置と見なされてよい。
【0133】
本発明の更に好適な実施形態では、前記方法はエクスビボの方法であり、好ましくは前記方法は、表面、好ましくは医療機器の表面を本発明の組成物のいずれか1つと接触させることを含む。
【0134】
更なる態様では、本発明は、表面上でのバイオフィルム形成、好ましくは細菌バイオフィルム形成を防止又は低減するための、又は、表面上の既存のバイオフィルムを根絶又は低減するための方法であって、前記表面又は既存のバイオフィルムを本発明の組成物のいずれか1つと接触させることを含む方法を提供する。
【0135】
更なる態様では、本発明は、表面上でのバイオフィルム形成、好ましくは細菌バイオフィルム形成を防止又は低減するための、又は、表面上の既存のバイオフィルムを根絶又は低減するための方法を提供する。前記方法は、前記表面又は既存のバイオフィルムを本発明の組成物のいずれか1つで覆うことを含む。
【0136】
更なる態様では、本発明は、表面上でのバイオフィルム形成、好ましくは細菌バイオフィルム形成を防止又は低減するための、又は、表面上の既存のバイオフィルムを根絶又は低減するための方法であって、前記表面又は既存のバイオフィルムを本発明の組成物のいずれか1つで処置することを含む方法を提供する。
【0137】
更なる態様では、本発明は、表面上でのバイオフィルム形成、好ましくは細菌バイオフィルム形成を防止又は低減するため、又は、表面上の既存のバイオフィルムを根絶又は低減するためのエクスビボの方法であって、前記表面又は既存のバイオフィルムを本発明の組成物のいずれか1つと接触させることを含む方法を提供する。よって、前記発明の方法は、ヒト又は動物の体を治療によって処置するための方法ではない。
【0138】
更なる態様では、本発明は、表面上でのバイオフィルム形成、好ましくは細菌バイオフィルム形成を防止又は低減するため、又は、表面上の既存のバイオフィルムを根絶又は低減するためのエクスビボの方法を提供する。前記方法は、前記表面又は既存のバイオフィルムを本発明に係る組成物のいずれか1つで覆うことを含む。
【0139】
更なる態様では、本発明は、表面上でのバイオフィルム形成、好ましくは細菌バイオフィルム形成を防止又は低減するための、又は表面上の既存のバイオフィルムを根絶又は低減するためのエクスビボの方法であって、前記表面又は既存のバイオフィルムを本発明の組成物のいずれか1つで処置することを含む方法を提供する。よって、前記本発明の方法は、ヒト又は動物の体を治療によって処置するための方法ではない。
【0140】
生物学的又は薬学的に活性な化合物又は組成物で表面をコーティングする方法は、当技術分野では周知である。例えば、上記の非生物表面、すなわち医療機器の表面は、本発明の組成物をフィルム形成成分にブレンドすることによってコーティングすることができ、医療機器の表面上でのバイオフィルム形成を阻害するのに使用できる抗バイオフィルムコーティングとなる。フィルム形成成分は1つ以上の樹脂を含んでよく、限定ではないが、1つ以上の加水分解性、可溶性又は不溶性の樹脂などを含んでよい。例えば、樹脂は、グリプタル樹脂、アクリル樹脂、塩素化ゴム樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フルオロポリマー樹脂、及び当業者に知られている他の樹脂の1つ以上とすることができる。
【0141】
実施例
【0142】
リポソーム:
【0143】
卵黄由来のスフィンゴミエリン(SM;CAS No.85187-10-6)を、Sigma社(S0756)、Avanti Polar Lipids社(860061)又はLipoid GmbH社から購入した。
【0144】
ヒツジ羊毛脂由来のコレステロール(CHOL;CAS No.57-88-5)を、Sigma社(C-8667)、Avanti Polar Lipids社(70000)又はDishman Netherlands B.V.社から購入した。
【0145】
本発明によれば、本発明の空リポソーム又は本発明の空リポソーム混合物に含まれるかそれらを構成するスフィンゴミエリン(SM)及びコレステロール(CHOL)は、上記の天然源から得られてもよいし、代替として化学合成によって得られてもよい。
【0146】
リポソームの作製
【0147】
単層スフィンゴミエリン:コレステロール(35:65モル比)とスフィンゴミエリンのみ(100%)のリポソームを、超音波処理又はマイクロフルイダイゼーション(例えば高圧ホモジナイゼーション)を用いて、又は水和、押出及びダイアフィルトレーションプロセスのプロトコルに従って、作製した。
【0148】
超音波処理:
【0149】
脂質を個別に1mg/mlの濃度でクロロホルムに溶解し、-20℃で保存した。リポソームの作製のために、個々の脂質のクロロホルム溶液を必要な割合で混合して、最終溶液50~500μlを規定どおりに生成した。60℃で20~50分間、クロロホルムを完全に蒸発させた。2.5mMのCaClを含む50μl又は100μlのタイロード緩衝液(140mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl、10mMグルコース、10mM HEPES;pH=7.4)を乾燥脂質のフィルムを含むチューブに加え、しっかりとボルテックスした。脂質懸濁液をエッペンドルフサーモミキサーで激しく振とうしながら、45℃で20~30分間インキュベートした。リポソームを生成するために、70%の出力のBandelin社のSonopulsソニケーターで、最終脂質懸濁液を6℃で3×5秒超音波処理した。リポソーム標本は、実験で使用する前に6℃で少なくとも1時間放置した。
【0150】
水和、押出及びダイアフィルトレーションプロセスのプロトコル:
【0151】
別の方法では、各リポソーム製剤をエタノール水和及び押出法によって作製した。脂質を昇温(約55℃)で混合しながら、エタノール及びt-ブタノール)に個別に溶解した。次に、脂質溶液を昇温(約65℃)で約30分間混合しながらPBS緩衝液(塩化ナトリウム、リン酸一ナトリウム、二水和物及びリン酸二ナトリウム、二水和物を混合しながら注射用蒸留水に溶解し、必要に応じて塩酸(HCl)又は水酸化ナトリウム(NaOH)のいずれかでpH7.0~7.4に調整し、0.2μmフィルターでろ過した)に加えた。次に、動的光散乱によって測定されたときに所望の粒子サイズが達成されるまで、得られたプロセス流体を、昇圧及び昇温(約65℃)で、一連のポリカーボネートトラックエッチング膜を通して繰り返し押し出した(押出機の例:LIPEX(登録商標)押出機)。次に、100,000分子量カットオフ中空繊維カートリッジを用いて、得られたプロセス流体を約2倍に濃縮し、PBS緩衝液の約10体積交換に対してダイアフィルトレーションして、エタノールとt-ブタノールを除去した。ダイアフィルトレーションの終了時に、プロセス流体は約30%濃縮されて、後続の目標脂質濃度への希釈が可能となった。希釈前に、滅菌ろ過中にフィルターを詰まらせるおそれのある大きめのリポソームを除去するために、プロセス流体を0.2μm滅菌グレードフィルターでろ過した。次に、プロセス流体をPBS緩衝液で40mg/mL総脂質の目標まで希釈した。最終製剤は、連続した2つの0.2μm滅菌グレードフィルターで無菌ろ過し、ガラスチューブバイアルに無菌充填した。
【0152】
リポソーム内の個々の脂質の濃度は、常に重量/重量比として与えられる。スフィンゴミエリン及びコレステロールを含有するリポソームにおいて、1:1(重量/重量)比は50%(重量/重量)又は35:65モル比に対応する。仕様を表1に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
実施例1
【0155】
緑膿菌多剤耐性株6077バイオフィルムの阻害
【0156】
好適な本発明の空リポソーム混合物は、クリスタルバイオレット法により明らかにされたように、緑膿菌株6077によるバイオフィルム形成を低減することが証明された。前記好適な本発明の空リポソーム混合物は、前記第1の空リポソーム及び前記第2のリポソームの1:1(重量/重量‐w/w)混合物から成る。前記第1の空リポソームは、1:1重量比(1:1w/w;35:65モル比)のスフィンゴミエリン(SM)及びコレステロール(CHOL)から構成され、前記第2の空リポソームはSMのみから構成される。
【0157】
方法
【0158】
簡単に説明すると、緑膿菌株6077をトリプチケースソイブロス(TSB)で増殖させ、2%グルコースを含むLBブロスで、1mLあたり1×10又は1×10コロニー形成単位(CFU)の濃度まで希釈した。希釈した種菌100マイクロリットル(100μl)を96ウェル平底マイクロタイタープレートのウェルに加えた。好適な本発明の空リポソーム混合物を濃度を上げながら100μLの体積で添加して、バイオフィルム形成の阻害を評価した。各状態は3回ずつ行われた。濃度は75μg/mL~2883μg/mLの範囲であった。シプロフロキサシン、ゲンタマイシン及びトブラマイシンをコントロールとして使用した。プレートを37℃で一晩インキュベートした。次に、細菌をウェルから除去し、バイオフィルム単層を洗浄した。プレートを60℃で1時間インキュベートすることにより、バイオフィルムを固定した。このインキュベーション後、バイオフィルムを0.4%クリスタルバイオレット溶液で5分間染色し、70%エタノールで溶出した。溶出物質の光学密度を600nmで分光光度法で測定した。ポジティブコントロールは、リポソーム又はコントロール薬物の非存在下におけるバイオフィルム形成であった。ネガティブコントロールは、細菌種が添加されなかったウェル(すなわちバックグラウンドノイズ)の光学密度であった。
【0159】
結果
【0160】
細菌密度が1×10細胞/ウェル(高い細菌密度設定)の場合、好適な本発明の空リポソーム混合物は単独で(すなわち抗生物質の非存在下で)、75μg/mLの濃度の時点でバイオフィルム形成を阻害し、最大阻害は72%であった(図1)。一貫性のないODに寄与している可能性のある潜在的な「異常増殖」を回避するために、1×10細胞/ウェルという低めの細菌密度もテストした。この低めの細菌密度では、好適な本発明の空リポソーム混合物によるバイオフィルム形成の阻害の全体レベルは低かったが(46%のバイオフィルム形成阻害)、依然として用量反応曲線の中間濃度(300~800μg/mL)に存在した。また、より低い細菌密度を用いて、好適な本発明の空リポソーム混合物を細菌接種の8時間後に適用した場合、いくらかのバイオフィルム破壊活性が観察された。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の一の発明。
【外国語明細書】