(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178476
(43)【公開日】2023-12-14
(54)【発明の名称】鉛またはトリウム放射性核種に連結されたPSMA標的化化合物を含む錯体
(51)【国際特許分類】
C07D 257/02 20060101AFI20231207BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20231207BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231207BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20231207BHJP
A61K 103/00 20060101ALN20231207BHJP
A61K 103/40 20060101ALN20231207BHJP
【FI】
C07D257/02
A61K51/04 100
A61P35/00
A61P35/04
A61K103:00
A61K103:40
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023184091
(22)【出願日】2023-10-26
(62)【分割の表示】P 2020532545の分割
【原出願日】2018-12-13
(31)【優先権主張番号】17206887.6
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517296949
【氏名又は名称】サイエンコンス アクスイェ セルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ロイ ハートビ ラーセン
(57)【要約】
【課題】比較的低い放射線生物効果(RBE)や準最適生体分布などの課題に対処する化合物を提供する。
【解決手段】本発明は、TCMCまたはDOTAキレート化部分を通じて
212Pbまたは
227Thなどの放射性核種に連結された前立腺特異的膜抗原(PSMA)標的化化合物を含む錯体に関する。これらの化合物、およびこれら含む医薬組成物は、医療応用に使用されることができる。これらの適用としては、前立腺癌の治療が挙げられ、そして、その錯体は癌の二重標的化を可能にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PSMAユニットとキレートユニットを含む化合物であって、ここで、前記PSMAユニットが前記キレートユニットに連結された炭素骨格であり、そして、前記化合物が、以下の式:
【化1】
{式中、Xは、-NH
2または-OHである}のとおりである、化合物。
【請求項2】
前記化合物が、以下の式:
【化2】
のp-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が、以下の式:
【化3】
のp-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
212Pb、212Bi、213Bi、225Acまたは227Thから成る群から選択される放射性核種と共に錯化される、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物を含む錯体。
【請求項5】
請求項2に記載の化合物(p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1)が、212Pbと共に錯化される、請求項2に記載の錯体。
【請求項6】
請求項2に記載の化合物(p-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド2)が、212Pb、212Bi、213Bi、225Acまたは227Thと共に錯化される、請求項3に記載の錯体。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物、または請求項4~6のいずれか一項に記載の錯体、ならびに希釈剤、担体、界面活性剤および/または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項8】
224Raをさらに含む、請求項7に記載の放射性医薬組成物。
【請求項9】
224Raと212Pbの量が、放射平衡の状態にある、請求項8に記載の放射性医薬組成物。
【請求項10】
前記212Pb対224Raの放射能比(MBq)が、0.5~2、例えば、0.8~1.5、または0.8~1.3、または好ましくは0.9~1.15である、請求項9~10のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物が、1用量あたり100kBq~100MBqの放射能で投与される、請求項7~10のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物。
【請求項12】
医薬としての使用のための、請求項7~11のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物。
【請求項13】
軟組織疾患及び骨疾患を含むPSMA発現疾患の治療における使用のための請求項7~11のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物。
【請求項14】
前記骨疾患が、癌から乳房、前立腺、腎臓、肺、骨への骨格転移、または多発性骨髄腫から成る群から選択される、請求項13に記載の使用のための放射性医薬組成物。
【請求項15】
前記溶液が、体重1kgあたり50~150kBqの範囲内の用量で投与される、請求項12~14のいずれか一項に記載の使用のための放射性医薬組成物。
【請求項16】
請求項7~11のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物のそれを必要としている個体への投与による悪性疾患または非悪性疾患の治療方法。
【請求項17】
請求項7~11のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物を含む第一のバイアル、および
患者への投与前にその放射性医薬組成物のpHおよび/または等張性を調整するための中和溶液を含む第二のバイアル、
を含むキット。
【請求項18】
224Ra、212Pbおよび/または227Thを含む溶液を含む第一のバイアル、および
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物を含む第二のバイアル、
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、212Pbまたは227Thなどの放射性核種に連結されたPSMA標的化化合物を含む錯体に関する。これらの化合物、およびこれら含む医薬組成物は、医学的応用のために用いることができる。これらの応用は、前立腺癌の治療を含み、そして、当該錯体は癌の二重標的化を可能にする。ペプチドおよびペプチド模倣PSMA標的化尿素誘導体は、放射線治療用途のために212Pbおよび227Thを錯化するためにキレーターに結合されている。これらは一重標的化および二重標的化に使用できる。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は、男性における癌関連死のうちで最も多い死因の一つである。特に、ホルモン不応性後期疾患において、新規かつ有効な治療を求める大きな需要が存在する。骨格転移は後期の疾患において頻度が高い問題であり、そのため、α粒子放射体223Ra(Xofigo)が、骨格転移を患っている後期前立腺癌患者向けの骨特異的療法として導入された。
【0003】
骨集積性として、223Raは患者に有意な臨床的利点を示すが、その作用は、骨転移に限定されており、軟組織転移を標的としていない。
【0004】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)の放射性リガンド標的化のためのいくつかの担体分子が存在する。ルテチウム-177標識PSMA-617(177Lu-PSMA-617)は、放射性核種療法における用途に関して最も進んだ臨床開発段階にある化合物である。
【0005】
当該分子は、好適な様式で動作し、177Luおよび225Acを含めたより長寿命の(すなわち、数日の半減期)放射性核種に関して関連性のある腫瘍対正常組織比をもたらすが、初期(典型的に注射の数時間後)においては、腎臓への高い取り込みを示す。212Pbのようなより短寿命の放射性核種(10.6時間の半減期)では、初期の腎臓取り込みは潜在的な毒性問題を意味する。
【0006】
したがって、より少ない腎臓取り込みを有するPSMAリガンドを使用することが有利であるが、これは腫瘍取り込みを低下させることはない。当該PSMAリガンド分子は、(1)PSMA結合領域、(2)リンカー領域、および(3)キレーターで構成され、これにしたがって、当該リンカー領域が(1)と(3)を接続する。当該リンカー領域はまた、in vivo分布特性に影響するように分子サイズや極性などを調整するためにも使用される。PSMA-11およびPSMA I&T、ならびに131Iおよび211At標識PSMA結合性リガンドなどのPSMA-617に使用されるPSMA結合領域(モチーフ)は、数人の異なる発明者や研究者によって開発された当該クラスのいくつかの分子において見られる構造である。
【0007】
試験において現在のすべてのリガンドが、比較的低い放射線生物効果(RBE)や準最適生体分布などの課題を有しているので、PSMA領域を含む新規化合物は認可される。骨転移と軟組織転移の両方を標的化できる改良されたα放射体についても必要性が存在する。
【0008】
本発明は、これらの課題に対処する化合物に関する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の態様は、本発明の錯体に関し、ここで、化合物Xは、キレート部分Zによって212Pbまたは227Thなどの放射性核種に連結される。
【0010】
本発明の一実施形態において、放射性核種は212Pbである。
【0011】
本発明の別の実施形態において、放射性核種は227Thである。
【0012】
キレート部分Zは、非環状キレーター、環状キレーター、クリプタンド、クラウンエーテル、ポルフィリンまたは環状もしくは非環状ポリホスホナート、DOTMP、EDTMP、ビスホスホナート、DOTA、DOTA誘導体、DOTAに結合したパミドロナート、TCMC、TCMC誘導体、TCMCに結合したパミドロナート、抗体結合型DOTA、抗体結合型TCMC、HBED-CC、NOTA、NODAGA、TRAP、NOPO、PCTA、DFO、DTPA、CHX-DTPA、AAZTA、DEDPA、およびoxo-Do3Aから成る群から選択され得る。
【0013】
本発明の一実施形態において、リンカーはDOTAまたはDOTA誘導体である。
【0014】
本発明の別の実施形態において、リンカーはTCMCまたはTCMC誘導体である。
【0015】
227Thに関しては、3,2-HOPOなどのオクタデンテートヒドロキシピリジノン含有リガンドが特に好適である。
【0016】
本発明の態様は、医薬としての使用のための本発明による放射性医薬組成物に関する。
【0017】
本発明の態様は、軟組織または骨疾患の治療における使用のための本発明による放射性医薬組成物に関する。
【0018】
本発明の一実施形態において、骨疾患は、癌から乳房、前立腺、腎臓、肺、骨への骨格転移、または多発性骨髄腫、あるいは、強直性脊椎炎を含めた望ましくない石灰化を引き起こす非癌性疾患から成る群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、
224Ra存在下、それぞれ
212Pb標識p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1とPSMA-617を注射した2時間後の
212Pbの生体分布を示す。
【
図2】
図2は、生理的食塩水、52MBqの
177Lu-OSMA-617、および0.32MBqの
212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1での治療後の、C4-2 PSMA陽性異種移植を受けたマウスの生存率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の詳細な説明
いくつかの略語が使用される。
ペプチド類似物質(peptide mimetic-)(peptidomimeticとも呼ばれる)とは、ペプチドを模擬するように設計された小さいタンパク質様の鎖である。これらは、既存のペプチドの修飾から、またはペプトイドやβ-ペプチドなどのペプチドを真似る類似のシステムを設計することにしたがって、一般的に生じる。アプローチの如何にかかわらず、変更された化学構造は、安定性または生物学的活性などの分子特性を有利に調整するように設計される。これは既存のペプチドからの薬様化合物の開発に役割を果たす。これらの修飾は、(変更された骨格や非天然型アミノ酸の取り込みなどの)天然に起こらないペプチドに対する変更を伴う。前駆体ペプチドとの類似性に基づいて、ペプチド類似物質は、Aが最大の類似性を特徴とし、Dが最小の類似性を特徴とする4つのクラス(A~D)に分類できる。クラスAとBはペプチド様足場を含み、それに対して、クラスCとDは小分子を含む。
【0021】
PSMA:前立腺特異的膜抗原。同義語PSMA、前立腺特異癌抗原、PSM、FGCP、FOLH、GCP2、mGCP、GCPII、NAALAD1、NAALAダーゼ、FOLH1、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ2、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII、膜グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ、N-アセチル化-α-連結酸性ジペプチターゼI、プテロイルポリ-γ-グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ、ホリルポリ-γ-グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ、葉酸ヒドロラーゼ1、前立腺-特異的膜抗原、細胞増殖阻害タンパク質-27
DOTMP:1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンホスホン酸)
EDTMP:エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
p-SCN-Bn-DOTA:2-(4-イソチオシアナートベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸
DOTA:1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸、さらに、ベンジル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(例えば、モノクローナル抗体に結合されたもの)についても使用される
p-SCN-Bn-TCMC:2-(4-イソチオシアナートベンジル(isothiocyanotobenzyl))-1,4,7,10-テトラアザ-1,4,7,10-テトラ-(2-カルバモイル(carbamonyl)メチル)-シクロドデカン
TCMC:1,4,7,10-テトラアザ-1,4,7,10-テトラ-(2-カルバモイル(carbamonyl)メチル)-シクロドデカン、さらに、ベンジル-1,4,7,10-テトラアザ-1,4,7,10-テトラ-(2-カルバモイル(carbamonyl)メチル)シクロドデカン(例えば、モノクローナル抗体に結合されたもの)についても使用される
mAb:モノクローナル抗体
HOPO:Me-3,2-HOPO、227Thの錯化のためのオクタデンテートヒドロキシピリジノン、4-((4-(3-(ビス(2-(3-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキサミド)エチル)アミノ)-2-((ビス(2-(3-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-4-カルボキサミド)エチル)アミノ)メチル)プロピル)フェニル)アミノ)-4-オキソブタン酸および誘導体
リガンド1:p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1、p-SCN-Bn-TCMC-PSMAなど
リガンド2:p-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド2、p-SCN-Bn-DOTA-PSMAなど
【0022】
以下では、酸、塩またはキレーターの一部または全部が分離したバージョンについて同じ略語が使用される。
【0023】
本発明は、212Pbを担持するための前立腺癌細胞標的化剤としての小分子尿素誘導体ベースの一重および二重標的化特性溶液に関する。これは、精製212Pbと共に使用されてもよく、あるいは、それにしたがって、主に転移性前立腺癌の進行に関連し、ある程度まで他のタイプの癌にも関連するPSMA抗原発現細胞に対して、224Raが骨格治療として機能し、かつ、212Pb尿素誘導体が全身療法として機能する、二重標的化溶液の状態で使用されてもよい。
【0024】
キレーター基に結合した尿素ベースの化合物は、PSMA発現細胞に対する放射性核種の標的化を容易にすることが当業界において知られている。PSMA標的化を用いた放射線治療のために評価された放射性核種としては、177Lu、211At、213Bi、および225Acが挙げられる。
【0025】
本発明は、放射性標識治療剤の分野にある。本発明によると、尿素ベースの前立腺特異的膜抗原(PSMA)阻害剤の放射性標識誘導体が開示される。
【0026】
したがって、本発明は、212Pbまたは227Thなどの放射性核種に連結された化合物Xを含む錯体に関し、前記化合物Xは、PSMA発現細胞および組織を標的化するのに好適なペプチドまたはペプチド模倣尿素誘導体である。
【0027】
リンカー
本発明の態様は、本発明の錯体に関し、ここで、該化合物Xは、キレート分子Zによって177Lu、213Bi、225Ac、212Pbまたは227Thなどの放射性核種に連結される。
【0028】
本発明の一実施形態において、放射性核種は212Pbである。
【0029】
本発明の別の実施形態において、放射性核種は227Thである。
【0030】
本発明の別の実施形態において、放射性核種は177Luである。
【0031】
本発明のさらなる実施形態において、放射性核種は213Biまたは212Biである。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態において、放射性核種は225Acである。
【0033】
本発明における錯化剤、リンカー、またはキレート分子Zは、上記化合物の誘導体(例えば、EDTMP、DOTA、例えば、p-SCN-Bn-DOTAおよびTCMC、例えば、p-SCN-Bn-TCMCの誘導体など)を網羅するものと理解される。このような誘導体は、当然に、224Raに対するのと比べてより高い安定度定数で212Pbを錯化できる能力を維持しなければならないことが理解される。
【0034】
キレート部分Zは、非環状キレーター、環状キレーター、クリプタンド、クラウンエーテル、ポルフィリンまたは環状もしくは非環状ポリホスホナート、DOTMP、EDTMPおよびビスホスホナート誘導体、DOTA、p-SCN-Bn-DOTAなどのDOTA誘導体、DOTAに結合したパミドロナート、TCMC、p-SCN-Bz-TCMCなどのTCMC誘導体、TCMCに結合したパミドロナート、抗体結合型DOTA、抗体結合型TCMC、HBED-CC、NOTA、NODAGA、TRAP、NOPO、PCTA、DFO、DTPA、CHX-DTPA、AAZTA、DEDPA、oxo-Do3Aから成る群から選択できる。
【0035】
本発明の一実施形態において、リンカーは、DOTAまたは、例えば、p-SCN-Bn-DOTAなどのDOTA誘導体である。
【0036】
本発明の別の実施形態において、リンカーは、TCMCまたは、例えば、p-SCN-Bn-TCMCなどのTCMC誘導体である。
【0037】
錯化剤は、金属と相互作用するキレーター分子のすべての「結合アーム」を可能にする炭素骨格を介して連結され得る。あるいは、そのアームのうちの1つがリンカーとして使用され得る。
【0038】
好適なキレーターとしては、例えば、p-イソチオシアナートベンジル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(p-SCN-Bz-DOTA)やDOTA-NHS-エステルなどのDOTA誘導体が挙げられる。
【0039】
したがって、p-SCN-Bn-DOTAまたはp-SCN-Bn-TCMCに関して、錯化剤は化合物のその他の部分に炭素骨格(C骨格)を介して連結され得る。
【0040】
一実施形態において、リンカーは、3,2-HOPOなどのオクタデンテートヒドロキシピリジノン含有リガンドである。斯かるリガンドは、典型的には、以下の置換ピリジン構造(I)の少なくとも1つのキレート基:
-17-R,I
{式中、Rは任意選択のN-置換基であり、したがって、不存在であっても、または炭化水素、OH、0-炭化水素、SHおよびS-炭化水素基であってもよく、ここで、いずれかもしくはそれぞれの炭化水素部分が独立に、C1-C8アルキル、アルケニルもしくはアルキニル基を含めたC1-C8炭化水素などの短いヒドロカルビル基から選択されることを特徴とし、あるいは、OHまたは0-炭化水素から選択されてもよい}を含む。Rはまた、以下で示すように、リンカー部分を含んでも、および/または同様に以下で示すようにカップリング部分を含んでもよい。式Iでは、基R2~R6は、それぞれ独立に、H、OH、=0、(本明細書中に記載の)短い炭化水素、(本明細書中に記載の)リンカー部分および/または(本明細書中に記載の)カップリング部分から選択され得る。通常、基R~R6のうちの少なくとも1つはOHであろう。通常、基R2~R6のうちの少なくとも1つは=0であろう。
【0041】
通常、基R~R6のうちの少なくとも1つはリンカー部分であろう。好ましくは、基R2~R6のうちのちょうどの1が=0であろう。好ましくは、基R~R6のうちのちょうど1つがOHであろう。好ましくは、基R~R6のうちのちょうど1つが(本明細書中に記載の)リンカー部分であろう。残りの基R~R6は本明細書中に示した部分のいずれであってもよいが、好ましくはHである。リンカー部分もしくは任意の追加リンカー、リンカー部分に取り付けられた鋳型またはキレート基がカップリング部分を含まない場合、そのとき、基R~R6のうちの1つが、好ましくは(本明細書中に記載の)カップリング部分である。
【0042】
好ましい実施形態において、基R~R6のうちの1つはOHであり、およびR2~のうちの1つは=0であり、かつ、OHと=0基は環の隣接原子上に存在するであろう。したがって、好ましい実施形態において、OHと=0は、それぞれ原子1,2;2,3;3,2;3,4;または4,3(想定される窒素からの付番)上に存在し得る。
【0043】
少なくとも1つのキレート部分を有するオクタデンテートリガンド{ここで、OHおよび=0基はそれぞれ3および2位に存在する}が非常に好まれる。そのオクタデンテートリガンドは、2、3または4個の斯かるキレート基を有してもよく、ここで、2または4個の斯かる基が特に好ましい。
【0044】
特別な実施形態において、尿素ベースのPSMA標的化錯体は、(1)PSMA細胞標的化および(2)ラジウム陽イオンによる骨合成に関連した骨格転移の標的化による二重標的化のために、それぞれ、骨集積性224Raまたは223Ra混合物において212Pbまたは227Thで標識される。
【0045】
WO2011098611、US20170319721、Ramdahl et al.(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters Volume 26, Issue 17, 1 September 2016, Pages 4318-4321)、およびHagemann et al.(Mol Cancer Ther. 2016 Oct;15(10):2422-2431. Epub 2016 Aug 17)に記載のものを含めた227Thのための錯化剤を、PSMA標的化のために尿素誘導体に結合した。本明細書中で言及された錯化剤を参照により本明細書に援用する。
【0046】
したがって、本発明の一実施形態は、212Pbをキレートするための、p-SCN-Bn-TCMCなどのTCMC基を含むPSMA標的化尿素誘導体に関する。
【0047】
本発明の別の実施形態は、227Thをキレートするための、HOPOを含むPSMA標的化尿素誘導体に関する。
【0048】
本発明の更なる実施形態は、212Pbまたは227Thのいずれかで標識した、p-SCN-Bn-TCMCなどのDOTAを含むPSMA標的化尿素誘導体に関する。
【0049】
更なる実施形態において、錯化剤は、薬剤溶液中で224Raを錯化しないかまたは実質的に224Raを錯化しない。
【0050】
より一層更なる実施形態において、錯化剤は、224Raに対するよりも212Pbに対して高い安定度定数で錯化する。
【0051】
ある実施形態において、212Pbの安定度定数は、224Raの親和性の少なくとも2倍、例えば少なくとも4倍高い、少なくとも8倍高い、または少なくとも10倍高い。
【0052】
ある実施形態において、前記錯化剤は、リガンド結合型p-SCN-Bn-DOTAなどのリガンド結合型DOTA、またはリガンド結合型p-SCN-Bn-TCMCなどのリガンド結合型TCMCから成る群から選択される。
【0053】
リガンド(ligang)は、抗体であっても、またはポリペプチドであってもよい。
【0054】
さらなる実施形態において、224Raと212Pbの量は、放射平衡にある。
【0055】
より一層さらなる実施形態において、212Pb対224Raの放射能比(MBq単位)は、0.5~2、0.8~1.5など、0.8~1.3など、または好ましくは0.9~1.15などである。
【0056】
本明細書の文脈中では、「放射平衡」という用語は、長い時間をかけて同じくなるか、または実質的に同じくなる2つの放射性核種の間のMBq単位の比に関する。例えば
212Pbと
224Raとの間の「放射能比」という用語は、
212Pb対
224RaのMBq単位の比に関する。
図5には、経時的なこの放射能比の推移を示す表(表2)がある。2日後に、
212Pb対
224Raの間の放射能比(7.3割る6.8)に関して1.1の放射平衡が確立されたのがわかった。したがって、
図5では、
212Pbと
224Raとの間の放射平衡に、約2日後に達していることもわかった。
【0057】
本明細書の文脈中では、「錯化剤」、「スカベンジャー」、「リンカー」、「キレート分子Z」、および「キレーター」という用語は互換的に使用される。これらの用語は、好ましくはキレート化にしたがって、且つ、試験システムで計測した場合に、有意な強度で、212Pbと錯体を形成することができ、一方で、その試験システムで計測した場合に、錯体の存在によってラジウムが有意な影響を受けない作用物質に関する。
【0058】
試験システムとしては、in vitroにおける生体分布および、試験管内における放射性核種のキレート-抗体結合に関する陽イオン交換体またはサイズ保持もしくは遠心濃縮カートリッジが挙げられる。あるいは、薄層クロマトグラフィーが試験システムとして使用されてもよい。
【0059】
本明細書の文脈中では、「捕捉」(または錯化)は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、遠心濃縮分離または生体分布プロファイルによる少なくとも50%の結合と規定される。
これは、一例として、小分子キレーターでの212Pbの少なくとも50%未満の血中取り込みを意味する。血中取り込みが信頼性のある指標でない場合、抗体結合型キレーターでは、TLC分析による少なくとも50%の結合である。
【0060】
本発明の一実施形態において、少なくとも60%の結合である。
【0061】
本発明の別の実施形態において、少なくとも70%の結合である。
【0062】
本発明の別の実施形態において、少なくとも80%の結合である。
【0063】
本発明の別の実施形態において、少なくとも85%の結合である。
【0064】
本発明の別の実施形態において、少なくとも90%の結合である。
【0065】
(単数もしくは複数の)化合物もまた、212Pbに比べてより多くの放射性核種を錯化でき得る。
【0066】
本発明の一実施形態において、化合物および/または錯体は、1ng/mL~1g/mLの濃度である。
【0067】
本発明の別の実施形態において、化合物および/または錯体は、100ng~10mg/mLの濃度である。
【0068】
錯体は、1、2、3、4、5つまたはそれ以上の化合物を含むことができる。
【0069】
一実施形態において、溶液は、100μL~1000mL、500μL~100mLなど、1mL~10mLなどの体積である。
【0070】
本発明の一実施形態において、1kBq~1GBq、10kBq~100MBqなど、100kBq~10MBqなどの溶液の放射能である。
【0071】
本発明の別の実施形態において、100kBq~100MBqの溶液の放射能である。
【0072】
本発明の別の実施形態において、錯化剤は、PSMAに親和性を有する(単数もしくは複数の)ペプチド類似尿素誘導体から成る群から選択される化合物に結合される。
【0073】
本発明の別の実施形態において、錯化剤は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント、合成タンパク質、ペプチド、ホルモン、ホルモン誘導体、ビタミンまたはビタミン誘導体から成る群から選択される化合物に結合したp-SCN-Bn-TCMCなどのキレーターTCMCまたはp-SCN-Bn-DOTAなどのDOTAである。
【0074】
投薬目的のために、純粋な212Pb溶液が使用されてもよい。あるいは、212Pbとの混合物において224Raは、二重標的化目的のために後者が使用されてもよい、すなわち、尿素誘導体担体にしたがって、224Raは骨転移を標的化し、および212Pbは全身癌を標的化する。
【0075】
224Raを含む溶液が投与される場合、これらは、224Raと212Pb/212Biとの間の平衡状態に達するまで、しばらくの間、例えば、1日以上、好ましくは少なくとも2日、1~2日または1~3日などの間保存され得る。これは、0.83~1.14の212Pbから224Raへの放射能比を確実にする。これは、例えば、出荷前の1日間またはそれ位、製品を単に保持することにしたがって、製造業者により達成できる。
【0076】
あるいは、212Pbは、特定の放射性核種比を得るために224Ra溶液に追加されてもよい。例えば、軟組織全身腫瘍組織量が骨格全身腫瘍組織量よりはるかに多い場合、純粋な212Pb調製または高い212Pb対224Ra比を有する溶液が使用されてもよい。
【0077】
PSMA結合尿素誘導体に結合した陽イオンラジウムおよびα放射体の重複することのない副作用特性が、二重標的化のための224Ra陽イオンおよび212Pb-PSMA標的化剤の混合物を特に魅力的なものにする。なぜなら、少なくとも骨格成分に関して、2つの異なった化合物が独立に病巣を標的化するので、抗腫瘍活性を生じさせるために、より少ない投薬でそれぞれの化合物が使用できるからである。
【0078】
主に錯化されていない、またはわずかに錯化された陽イオンとしてラジウムを維持することは、これが骨および骨格転移における最大取り込みを確実にし、かつ、主に腸を通して排出された生成物の都合のよい排泄も確実にするので、重要である。
【0079】
ラジウムの溶液に錯化剤を追加することにしたがって、放射活性娘核種は、骨または腫瘍集積性にすることができ、健康被害になる代わりにラジウム溶液の治療的有効性を増強する。しかしながら、ラジウムの骨集積性にマイナスの影響を及ぼさない錯化剤でなければならない。例えば、TCMC標識尿素誘導体は、製造場所と、製品が投与される病院との間の輸送および保管の間、ラジウム溶液中で生じる212Pbを排出できる。
【0080】
放射線分解阻害剤を加えることによって感受性を低減することが可能であるが、腫瘍標的化ペプチドおよびペプチド類似物質は、放射線分解に対してより感受性であることが多いので、恐らく、比較的長い有効期間を有する224Ra溶液の投与の数時間から数分前にこれらが加えられるキット形式で供給されなければならない。
【0081】
カリキサレンおよびEDTAは、ある程度、ラジウムを錯化でき、かつ、鉛およびビスマスも錯化できることが当業界において知られている。しかしながら、最近の研究で、我々は、生体内における生体分布測定値によって測定した場合に、ラジウムを主に錯化しないかまたはわずかしか錯化しないままにする一方で、最も寿命の長い娘核種212Pbを迅速、かつ、適切な安定性で錯化できるであろうキレーターを見出した。選択的な錯化は、少なくとも鉛に骨または腫瘍集積性をもたせる一方で、骨格転移のような骨疾患を治療することに関するラジウムの有利な特性を維持させるために使用できる。骨または腫瘍細胞を標的とする212Pb錯体は、212Pbの崩壊からα放射体212Biを生じる。したがって、β放射体212Pbは、標的細胞または組織を照射するために間接的なα線源として使用される。TCMCおよびDOTA以外に224Ra娘核種捕捉に好適であり得る他の潜在的なキレートとしては、これだけに限定されるものではないが、ポルフィリン(phorphyrins)、DTPA、およびDTPA誘導体が挙げられ、またDOTAに連結されたカルボキシルも挙げられる。
【0082】
鉛-212は、224Raからの子孫のうちで群を抜いて最も長寿命であり、そして、それが短命なα放射体212Biの生体内ジェネレーターなので、これは錯体にとって最も重要である。212Pb-キレートが骨または腫瘍細胞中に取り込まれる場合、212Biもまた、標的で保持される可能性がある。子孫と平衡状態にある224Ra溶液において、212Bi原子に対して212Pbが10倍超存在する。したがって、これらの溶液において212Bi原子から作り出される放射線量はあまり多くないので、224Raおよび212Bi崩壊系列と比較して、恐らく毒物学的に重要な量ではない。212Biの量は、223Ra系列においてα粒子を間接的に生じる211Pbの量に匹敵し、そして、これは、子孫と平衡状態にある223Raの登録および臨床用途に関して重大な問題となるものではなかった。
【0083】
しかしながら、注入液中の212Biについても高度なキレート化が必要とされるべき場合、水溶液中のビスマスが、キレート化に好適でない状態で存在する傾向があるので、少なくとも場合によっては、NaIまたはHIのような安定剤を加えることが必要となる可能性がある。
【0084】
骨格転移の処置のために現在の承認されたα医薬、すなわち、223Raと比較するとき、本明細書中に記載した新規溶液は、実施形態の1つにおいて、娘核種を循環癌細胞に対して、およびある程度、軟組織転移に対しても標的化可能にさせ得るので、骨格転移の処置のための改善された特性を有する製品を提供するはずである。これは、CTCのものに起因する骨の癌の転移再増殖からの再発を予防し得る。
【0085】
別の態様は、223Raに対する224Raのより短い半減期が、ラジウムが骨マトリックスに埋め込まれた場合に、実際に何らかの利益となり得るということである。骨塩の高密度のため、α粒子の範囲は、対軟組織に対して骨中で強く低減される。特に骨性癌転移のような急速に鉱化する領域では、ボリューム-シーカーα医薬を使用するとき、包埋プロセスは、有意なものであり得る。
【0086】
そのため、224Raは、それが崩壊時点で平均的にそれほど埋め込まれていないので、腫瘍線量を改善するはずである。
【0087】
224Raを含むおよびそれを含まない新規212Pb溶液が使用され得る疾患としては、これだけに限定されるものではないが、原発癌および転移癌、自己免疫疾患、ならびに動脈硬化症が挙げられる。製品は、静脈内にまたは腹腔内を含めて局所的に、あるいは四肢潅流環境で投与され得る。
【0088】
新規溶液で使用されるキレーターは、非環状ならびに環状キレーターやクリプタンド、クラウンエーテル、ポルフィリン、DOTMPとEDTMPを含めた環状または非環状ポリホスホナートであってもよい。また、DOTA、TCMC、または類似物に結合したビスホスホナート(例えば、パミドロナート)は、224Ra溶液でスカベンジャーとして使用されてもよい。
【0089】
治療学的な224Ra溶液中の212Pbの量が、中程度からあまり多くなくてもよいこと(すなわち、平衡状態にて、224Raのそれの1.1倍)を、当業者は主張し得る。半減期の相違を修正するが、223Raを用いて行われるのと類似した224Ra投薬量を当業者が仮定した場合、体重の1kgあたり約150kBqが投薬される投薬量となる。
【0090】
平衡状態では、これは、(212Pbが量的にキレートされる場合)70kgの患者の5リットルの血中の11.5MBqの212Pb-抗体結合体の投薬量に換算される。1mlあたりの循環腫瘍細胞数は、一般的に10細胞未満であるため、したがって、5lの血中に合計で50000腫瘍細胞未満が存在する。100000個の注射された212Pb-抗体結合分子のうちの1つだけが腫瘍細胞に結合した場合、これは、1細胞あたり約127個の212Pb原子と同等であり、少なくとも0.0023Bqを意味し、そしてそれは、1細胞あたり平均で25個の細胞結合212Pbが細胞集団の90%を殺滅すると報告されているので、非常に破壊的である。
【0091】
化合物
本発明の態様は、キレート分子Zに連結された化合物Xに関し、以下の式(I):
【化1】
【0092】
{式中、
Wは、PSMA標的化リガンドであり;
A4は、結合もしくは鎖内に1~10個の炭素原子を含む2価の連結部分、環、またはこれらの組み合わせであり、ここで、少なくとも1つの炭素原子が任意選択で、O、-NR3-、または-C(O)-で置換され;
Gは、C=O、C=S、C-NH2、またはC-NR3であり;
R1は、水素またはカルボン酸保護基であり;
R3は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、およびヘテロアリールから成る群から選択され;
R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルコキシルであるか、またはR17およびR18は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アリール、またはアルキルアリールであり;
R19は、アルキル、アルコキシル、ハロゲン化物、ハロアルキル、およびCNから成る群から選択され;
mは、1~6の整数であり;ならびに
oは、0~4の整数であり、ここで、oが1超であるとき、それぞれのR19は同じであるかまたは異なっている}によって規定されるか、または医薬として許容され得るその塩である。
【0093】
本発明の態様は、本発明による錯体、または医薬として許容され得るその塩に関し、式中、A4は、結合、(CH2)n、-HC(O)-、-(OCH2CH2)n-、-(HCH2CH2)n-、-H(CO)CH2-、-HC(0)CH2(OCH2CH2)n-、または-HC(0)CH2(HCH2CH2)n-であり;およびLは、結合、(CH2)n、-(OCH2CH2)n-、(HCH2CH2)n-、または-C(0)(CH2)n-{式中、nは独立に、1、2、または3である}である。
本発明の態様は、本発明による錯体、または医薬として許容され得るその塩に関し、式中、A4は、結合、-(OCH2CH2)n-、または-HC(0)CH2(OCH2CH2)n-であり;およびLは、結合、または-(OCH2CH2)n-{式中、nは独立に、1または2である}である。
【0094】
本発明の態様は、本発明による錯体、または医薬として許容され得るその塩に関し、式中、Wは、以下の構造:
【化2】
{式中、
R
20およびR
21はそれぞれ独立に、そのアミノ基を介して、隣接-C(O)-基に連結されたアミノ酸残基である}を有する。
【0095】
本発明の態様は、本発明による錯体、または医薬として許容され得るその塩に関し、式中、Wは、以下の構造:
【化3】
{式中、Rは水素またはカルボン酸保護基である}を有する。
【0096】
本発明の態様は、本発明による錯体、または医薬として許容され得るその塩に関し、そして、以下の構造:
【化4】
{式中、R
17はアリールである}を有するか、または、医薬として許容され得るその塩である。
【0097】
本発明の態様は、本発明による錯体、または医薬として許容され得るその塩に関し、式中、該錯体は、4つのNに連結/キレートされた、
212Pbなどの放射性核種を有する、以下のPSMA-617:
【化5】
である。
【0098】
本発明の態様は、本発明による錯体に関し、ここでDOTAユニット、p-SCN-Bz-DOTAなどは、p-SCN-Bz-TCMCなどのTCMCユニットで置換される。
【0099】
PSMA-617のリンカーはまた、上図で見られるNとの連結の代わりに、骨格のC原子に共有結合により連結されてもよい。
【0100】
したがって、尿素誘導体は、骨格C連結またはN連結DOTAまたはTCMC結合を有してもよい。
【0101】
骨格-C連結p-SCN-Bn-DOTAまたはp-SCN-Bn-TCMC結合に関して、該化合物は、以下の:
【化6】
{式中、Zは、以下の:
【化7】
(式中、Xは-OHまたはNH
2である)である}である。
Xは、p-SCN-Bn-DOTAに関しては-OHであり、かつ、Xは、p-SCN-Bn-TCMCに関してはNH
2である。
【0102】
これは、骨格-C連結p-SCN-Bn-DOTAまたはp-SCN-Bn-TCMCが、以下の:
【化8】
{式中、Xは-OHまたはNH
2である}であろうことを意味している。
【0103】
骨格-C連結p-SCN-Bn-DOTAは、以下の:
【化9】
である。
【0104】
したがって、本発明の態様は、p-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド2である化合物に関する。
【0105】
骨格-C連結p-SCN-Bn-TCMCは、以下の:
【化10】
である。
【0106】
したがって、本発明の態様は、上記および実施例に開示したp-SCN-Bn-TCMA-PSMAリガンド1またはp-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド2である化合物に関する。
【0107】
(実施例に示されている)p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド(リガンド1)およびp-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド(リガンド2)は、炭素骨格(C骨格)を介して化合物の残りの部分に連結され、かつ、イソチオシアナートベンジルリンカーを含む伸長されたリンカー領域を有し、そしてまた、より短いリンカー領域を有するPSMA-617とは対照的に、4本のキレーターアームをすべて含まない炭素置換されたキレーターも使用し、かつ、リンカー取り付け部としてキレーターアームのうちの1つを使用する。これらの相違が放射性標識生成物の有意に異なる生体分布を引き起こし、そして、それがPSMA-617と比較して腎臓曝露を低減するので、PSMA発現腫瘍に対する212Pbの標的化にそれをより好適にしていることを、本明細書中の以降の実施例に示す。
【0108】
本発明の一実施形態において、p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1やp-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド2などの本発明の化合物は、トリフルオロ酢酸塩の形態で存在する可能性がある。
【0109】
TCMCまたはDOTA変異体を伴ったCTT1401およびCTT1403、ならびに誘導体(Choy et al, 2017)もまた、本発明の錯体において212Pbと共に使用され得る。
【0110】
容易に利用可能なアミノ基または結合に好適な別の基を用いて、本発明によるPSMA結合尿素誘導体を調製することにしたがって、p-SCN-Bn-TCMCはPSMA結合化合物に結合される可能性がある。その後の精製が、溶液中の224Raを含むおよびそれを含まない212Pbを用いた放射性標識前に必要とされ得る。
【0111】
したがって、本発明の一実施形態において、リンカーは、p-SCN-Bn-TCMCである。本発明の一実施形態は、本発明による錯体に関し、ここで、そのリンカー-キレーターはp-SCN-Bn-TCMCである。本発明の一実施形態は、本発明による錯体に関し、ここで、そのリンカーはp-SCN-Bn-DOTAである。言い換えれば、-p-SCN-Bnは、炭素骨格を介してTCMCまたはDOTAキレーター基に取り付けられるリンカー領域の末端部である。
【0112】
ヒト血清アルブミンは、薬物の半減期を延長するために使用できる。したがって、ある実施形態において、本発明による212Pb-標識PSMA結合尿素誘導体はさらに、放射性標識生成物の循環半減期を延ばすためにアルブミンと結合できる基を含む。
【0113】
本発明の更なる実施形態は、本発明による錯体に関し、ここで、本発明による212Pb-標識PSMA結合尿素誘導体はさらに、その錯体に直接結合したか、または、例えば、リポソームを通してその錯体に結合されるヒト血清アルブミンを含む。
【0114】
医薬組成物
通常、薬学的組成物の重要な要素は、放射免疫結合体の化学的完全性を実質的な程度まで維持し、かつ患者への注入のために生理学的に許容されている緩衝溶液である。
【0115】
本発明の一態様において、薬学的組成物は、1もしくは複数の薬学的に許容される担体および/またはアジュバントを含む。
【0116】
許容される薬学的担体は、非毒性バッファー、充填剤、等張溶液などを含むが、これらに限定されない。より具体的には、薬学的担体は、標準的な生理的食塩水(0.9%)、2分の1生理的食塩水、乳酸リンゲル液、5%デキストロース、3.3%デキストロース/0.3%生理的食塩水であることができるが、これらに限定されない。生理学的に許容される担体は、保存および輸送中に放射性薬剤の完全性を保護する放射線分解安定剤、例えば、アスコルビン酸を含有することができる。
【0117】
本発明の態様は、本発明による錯体、希釈剤、担体、界面活性剤、および/または賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0118】
本発明の態様は、単剤の212Pb-標識リガンドに関する。これは、212Pbを用い、かつ、224Raなどの任意の更なる放射性核種を用いずに錯化される本発明の化合物であろう。
【0119】
本発明の態様は、212Pb-標識リガンドおよび陽イオンまたは弱い錯化224Raを含有する二重標的化溶液に関する。これは、陽イオンまたは弱い錯化224Raとして存在する224Raと共に212Pbを用いて錯化される本発明の化合物であろう。
【0120】
本発明の態様は、本発明による化合物および/または錯体を含み、さらに224Raを含む医薬組成物に関する。224Raは、陽イオンである可能性がある。224Raの添加は、例えば、212Pbと一緒に存在するとき、二重標的化を可能にする。
【0121】
本発明の態様は、本発明による錯体を含む医薬組成物に関し、ここで、放射能は1用量あたり100kBq~100MBqである。
【0122】
本発明の態様は、本発明による錯体を含む医薬組成物に関し、ここで、224Raと212Pbの量は、放射平衡の状態にある。
【0123】
本発明の態様は、本発明による錯体を含む医薬組成物に関し、ここで、212Pb対224Raの間の放射能比(MBq)は、0.5~2、0.8~1.5など、もしくは0.8~1.3など、または好ましくは0.9~1.15などである。
【0124】
キット
溶液は、集約型製造現場においてか、または一般的に2~4本のバイアルから成るキットシステムにより、キットバイアルの組み合わせ後にそれによって注射向けに生理学的に好適になるかのいずれかである、注射のために生理学的に好適に準備されなければならない。
本発明の態様は、本発明による放射性医薬組成物を含む第一のバイアル、および患者への投与前に放射性医薬組成物のpHおよび/または等張性を調整するための中和溶液を含む第二のバイアルを含むキットに関する。
【0125】
例えば、モノクローナル抗体に関しては、放射線分解のため低減する結合特性を避けるために、0.5kGy未満の放射性医薬溶液を生じるα粒子の自己線量を保つことは、通常、望ましい。したがって、注射の数時間~10分前に、それによってキレーターが結合したリガンドが224Ra(娘核種を含む)溶液に追加されるキットシステムが、遠隔出荷を意図した濃縮溶液について推奨されており、そして、作り出される放射性リガンドの放射線分解抵抗性に依存する。
【0126】
本発明の態様は:224Ra溶液を含む第一のバイアル;p-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド、p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド、非環状キレーター、環状キレーター、クリプタンド、クラウンエーテル、ポルフィリンまたは環状もしくは非環状ポリホスホナート、DOTMP、EDTMP、ビスホスホナート誘導体、DOTA、DOTA誘導体、DOTAに結合したパミドロナート、TCMC、TCMC誘導体、TCMCに結合したパミドロナート、抗体結合型DOTA、抗体結合型TCMC、HBED-CC、NOTA、NODAGA、TRAP、NOPO、PCTA、DFO、DTPA、CHX-DTPA、AAZTA、DEDPA、およびoxo-Do3Aから成る群から選択される錯化剤を含む第二のバイアルを含み、ここで、該錯化剤は、212Pbなどの224Raの娘核種を錯化することができ、およびここで、該錯化剤は、薬剤溶液中の224Raを錯化しない;および任意選択で、第一のバイアルと第二のバイアルを混合し、それにしたがって、混合の1分~12時間後に患者にすぐに投与できる医薬組成物を形成するための取扱説明書、を含むキットに関する。
【0127】
本発明の一実施形態において、キットは、薬剤として使用するためのものである。具体的な実施形態において、「224Ra溶液」という用語は、224Raが溶液中で有利であり、かつ、例えば、樹脂などの表面に連結していないと理解されるべきである。
ある実施形態において、キットは、患者への投与前に放射性医薬溶液のpHおよび/または等張性を調整するための中和溶液を含む第三のバイアルを含む。
【0128】
さらに好ましい実施形態において、224Raと212Pbの量は、第一のバイアル中で放射平衡の状態にある。
【0129】
さらに別の好ましい実施形態において、第一のバイアル中の212Pb対224Raの間の放射能比(MBq)は、0.5~2、0.8~1.5など、0.8~1.3など、または0.9~1.15である。
【0130】
さらに別の実施形態において、第一のバイアルは、100kBq~100MBqの範囲内の放射能を有する。
【0131】
本発明の一実施形態において、キレーター結合リガンドは、注射の1~3時間前などの注射の30分~5時間前に224Ra(娘核種を含む)溶液に追加される。
【0132】
本発明の一実施形態において、キレーター結合リガンドは、注射の1分~20分前に224Ra(娘核種を含む)溶液に追加される。
【0133】
本発明の一実施形態において、キレーター結合リガンドは、注射の1分~10分前に224Ra(娘核種を含む)溶液に追加される。
【0134】
一方のバイアル中にキレート標識タンパク質またはペプチドおよび別のバイアル中の224Ra溶液を伴い、それにしたがって、2つの内容物が投与の1分~12時間前に混合されるキットもまた、本発明の一部を形成する。ある実施形態において、混合が、キレートに212Pbおよび/または212Biが結合するように、患者への投与の数時間(5時間など)~30分前に行われる。
【0135】
本発明の一実施形態において、2つの内容物は、注射の30分~1時間前に混合される。
【0136】
本発明の一実施形態において、2つの内容物は、注射の1分~20分前に混合される。
【0137】
本発明の実施形態において、2つの内容物は、注射の1分~10分前に混合される。
【0138】
任意選択で、放射性医薬溶液の投与前に希釈および等張調節のために使用される液体が入った第三のバイアルが使用される場合がある。この第三のバイアルは、必要であるなら、212Biをキレートし得る、EDTMPを含んでもよい。
【0139】
医療応用
本発明の態様は、薬剤としての使用のための本発明による放射性医薬組成物に関する。
【0140】
本発明の一実施形態において、疾患は癌である。
【0141】
本発明の態様は、軟組織疾患および/または骨疾患の治療における使用のための本発明による放射性医薬組成物に関する。該治療は、軟組織疾患および骨疾患を含めたPSMA発現性疾患に特化している。
【0142】
本発明の一実施形態において、骨疾患は、癌から乳房、前立腺、腎臓、肺、骨への軟組織転移および/または骨格転移、あるいは、多発性骨髄腫から成る群から選択される。
【0143】
本発明の一実施形態において、癌は前立腺癌である。その癌はまた、乳癌である可能性もある。その癌は腎癌である可能性もある。その癌はまた、肺癌である可能性もある。その癌はまた、骨癌である可能性もある。その癌はまた、多発性骨髄腫である可能性もある。その癌は、これらのタイプの癌からの転移である可能性がある。
【0144】
本発明の一実施形態において、溶液は、体重の1kgあたり50~150kBq、例えば、体重の1kgあたり50~100kBqなどの範囲内の線量で投与される。
【0145】
本発明の態様は、それを必要としている個体への、本発明による放射性医薬組成物の投与による悪性または非悪性疾患の治療法に関する。
【0146】
これは、精製された212Pb-標識リガンドと共に使用されてもよいか、あるいは、転移性前立腺癌の進行に関係するPSMA抗原を発現する細胞に対して、それにしたがって、224Raが骨格治療として機能し、かつ、212Pb尿素誘導体が全身療法として機能する、二重標的化溶液の状態で使用されてもよい。
【0147】
したがって、本発明の錯体および溶液は、転移性前立腺癌の治療に使用されることができる。
【0148】
本発明関連の別の実施形態は、それにしたがって、212Pbが本明細書中に開示した尿素ベースのPSMA標的化剤によって錯化され、および陽イオン224Raは、カルシウム様骨取り込みによって骨転移を標的化している、二重標的化特性を有する医薬溶液に関する。
【0149】
調製のための方法
本発明の態様は、本発明による放射性医薬組成物を提供するための方法に関し、該方法が:第一の溶液であって、ここで、224Raと212Pbの量が放射平衡の状態にある第一の溶液を準備し;p-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド、p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド、非環状キレーター、環状キレーター、クリプタンド、クラウンエーテル、ポルフィリンまたは環状もしくは非環状ポリホスホナート、DOTMP、EDTMP、ビスホスホナート、DOTA、DOTA誘導体、DOTAに結合したパミドロナート、TCMC、TCMC誘導体、TCMCに結合したパミドロナート、抗体結合型DOTA、抗体結合型TCMC、HBED-CC、NOTA、NODAGA、TRAP、NOPO、PCTA、DFO、DTPA、CHX-DTPA、AAZTA、DEDPA、およびoxo-Do3Aから成る群から選択される錯化剤を含む第二の溶液であって、ここで、該錯化剤は、212Pbなどの224Raの娘核種を錯化することができ、およびここで、該錯化剤は、224Raを錯化しない第二の溶液を準備し;そして、第一の組成物と第二の組成物を混合し、それにしたがって、本発明による医薬組成物を提供すること、を含む方法を提供する。
【0150】
PSMA誘導体
PSMA(前立腺特異的癌抗原、PSM、FGCP、FOLH、GCP2、mGCP、GCPII、NAALAD1、NAALAダーゼ、FOLH1、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ2、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII、膜グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ、N-アセチル化-α-連結酸性ジペプチターゼI、プテロイルポリ-γ-グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ、ホリルポリ-γ-グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ、葉酸ヒドロラーゼ1、前立腺-特異的膜抗原、細胞増殖阻害タンパク質27とも呼ばれる)は、II型膜貫通タンパク質の前立腺上皮細胞膜抗原であり、そして、短いNH2-末端細胞質ドメイン、疎水性膜貫通領域、および大きい細胞外ドメインから成る。PSMAは、ヒトでは、FOLH1(葉酸ヒドロラーゼ1)遺伝子によってコードされる酵素である。ヒトGCPIIは、750個のアミノ酸を含有し、約84kDaの重量がある。
【0151】
PSMAの発現は、流涙や唾液腺、近位尿細管、副睾丸、卵巣、回腸の腔側および中枢神経系(CNS)内の星状細胞などのいくつかの健常組織に限定され;健常な前立腺は比較的少ないPSMAを発現し、そしてそれは、分泌管の先端上皮内に閉じ込められている。これらの非悪性組織では、PSMA標的化プローブの取り込みは、完全な血液脳関門、健常な小腸近位管腔、および正常な前立腺内のPSMAの不完全な細胞質発現によって制限され得る。PSMAは、高度なアンドロゲン非依存性、転移疾患、アンドロゲン状態にかかわらず、PSMAはほとんどの一次前立腺腫瘍において発現されること、に最も関連している。
【0152】
小分子PSMA阻害剤は、亜鉛結合性化合物であり、かつ、3つのタイプ、1)ホスホナート化合物、ホスファート化合物、およびホスホルアミダート化合物;2)チオール;ならびに3)尿素、に分類できる。尿素誘導体は、診断および治療のための放射性核種向けの担体として特に興味深い特性を有するように思える。
【0153】
最新の発明は、212Pb-尿素誘導体の使用に関する。それは、放射性リガンド(Bakhtら、2017)のより良好な取り込みのためにPSMA発現を高めるように、アンドロゲン枯渇療法と組み合わせられてもよい。
【0154】
放射能レベル
212Pb-標識尿素誘導体が単独で使用される場合、放射能レベルは、典型的には、患者1人あたり1MBq~500MBq、より典型的には、患者1人あたり10~100MBqであろう。
【0155】
212Pbと平衡状態にある224RaをPSMA結合尿素誘導体で錯化した場合、投薬は、典型的には、患者1人あたり0.1MBq~100MBq、より典型的には、患者1人あたり1~20MBqであろう。
特別な実施形態において、227Thで標識された、本発明によるPSMA標的化錯体ベースの尿素誘導体は、二重標的化のための向骨性223Raを生じる。
【0156】
227Thは、純粋であっても、または様々な量の223Ra、例えば、227Thと比較して10%、50%、100%、もしくは250%の223Raを含んでもよい。
【0157】
通則
本発明による化合物に関連する先に考察したあらゆる特徴および/または態様を、本明細書中に記載した方法に対して類推によって適用することは、理解されなければならない。
【0158】
以下の図面および実施例は、本発明を例示するために以下に提供される。これらは、説明に役立てることが意図されているので、どのような形であっても制限と解釈されるべきではない。
【実施例0159】
以下の実施例では、使用した異種移植モデルは、一般的にマウス異種移植片の30~40%ID/gの取り込みを示す他の研究者によって使用されたPC3 PIPモデルにとは対照的に、典型的には、177Lu-PSMA-617を伴ったマウス異種移植片において1グラム(%ID/g)あたり注射された用量の10~15%のPSMA-リガンド取り込みの中間段階レベルを有する腫瘍モデルである。
【0160】
実施例1.PSMA-617と比較した新規PSMA結合性キレーターリガンド
背景:前立腺特異的膜抗原(PSMA)の放射性リガンド標的化のためのいくつかの担体分子が存在している。ルテチウム-177標識PSMA-617(177Lu-PSMA-617)は、放射性核種療法における使用に関して最も進んだ臨床開発段階にある化合物である。この分子は、好適な様式で動作し、177Luおよび225Acを含めたより長寿命の(すなわち、数日の半減期)放射性核種に関して関連性のある腫瘍対正常組織比をもたらすが、初期時点(典型的に注射の数時間後)では、腎臓への高い取り込みを示す。212Pbのようなより短寿命の放射性核種(10.6時間の半減期)では、初期腎臓取り込みは潜在的な毒性問題を意味する。そのため、より少ない腎臓取り込みを有するPSMAリガンドを使用することは有利であるが、これは腫瘍取り込みを低下させることはない。そのPSMAリガンド分子は、(1)PSMA結合領域、(2)リンカー領域、および(3)キレーターで構成され、そしてそれにしたがって、そのリンカー領域が(1)と(3)を接続する。そのリンカー領域はまた、in vivo分布特性に影響するように分子サイズや極性などを調整するのにも使用される。PSMA-11およびPSMA I&T、ならびに131Iおよび211At標識PSMA結合性リガンドを含め、PSMA-617に使用されるPSMA結合領域(モチーフ)は、数人かの異なった発明者や研究者によって開発されたこのクラスの数分子で見られる構造である。
【0161】
以上のように、p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンドは、イソチオシアナートベンジルリンカーを含む伸長されたリンカー領域を有し、そしてまた、より短いリンカー領域を有するPSMA-617とは対照的に、4本のキレーターアームをすべて含まない炭素置換されたキレーターも使用し、かつ、リンカー取り付け部としてキレーターアームのうちの1つを使用する。これらの相違が放射性標識生成物の有意に異なる生体分布を引き起こし、そして、それがPSMA-617と比較して腎臓曝露を低減するので、PSMA発現腫瘍に対する212Pbの標的化に関して、p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1をより好適にしていることを、本明細書中の以降の実施例に示す。
【0162】
材料と方法:放射性標識法のためのPSMAリガンド前駆体を、下請契約者である商業的合成製造所によって合成した。
【0163】
PSMA-617を、文献に記載の手順に従って合成した。p-SCN-Bn-TCMC前駆体を、文献に記載の手順に従って合成した。最終的な合成ステップでは、TCMC-PSMAリガンドを、PSMA結合性リガンド中間体のアミノ基にp-SCN-Bn-TCMCを結合することによって合成した。PSMA-617とTCMC-Bn-PSMAリガンド1を共に、>98%の純度までHPLCによって精製し、乾燥させ、そして、トリフルオロ酢酸塩として保存した。構造および分子量を、1H-NMRおよびMS分析法によって決定した。
【0164】
p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1のトリフルオロ酢酸塩は、化学式C65H86F12N14O21Sを有し、1659.52g/molの分子量がある。
【0165】
化学名(IUPAC):(((1S)-1-カルボキシ-5-((2S)-3-(ナフタレン-2-イル)-2-((1r,4S)-4-((3-(4-((1,4,7,10-テトラキス(2-アミノ-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-2-イル)メチル)フェニル)チオウレイド)メチル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド)プロパンアミド)ペンチル)カルバモイル)-L-グルタミン酸;トリフルオロ酢酸(1:4)
【0166】
PSMA-617トリフルオロ酢酸塩は、化学式C
57H
75F
12N
9O
24を有し、1498.25g/molの分子量がある。
【化11】
p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1のトリフルオロ酢酸塩
【0167】
【0168】
以上のように、p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンドは、ベンジルリンカーを含む伸長されたリンカー領域を有し、そしてまた、より短いリンカー領域を有するPSMA-617とは対照的に、4本のキレーターアームをすべて含まない炭素置換されたキレーターも使用し、かつ、リンカー取り付け部としてキレーターアームのうちの1つを使用する。これらの化学的な相違が放射性標識生成物の有意に異なる生体分布を引き起こし、そして、それがPSMA-617と比較して腎臓曝露を低減するので、PSMA発現腫瘍に対する212Pbの標的化に関して、それをより好適にしていることを、以下の実施例に示す。
【0169】
結論として、PSMA-617と比較して、同じPSMA結合領域を有するが、異なったリンカー領域および異なったキレート化特性を有する新規分子を記載する。
【0170】
実施例2.212Pb、212Bi、213Bi、225Ac、227Th、177Luなどを用いた放射性標識法のための炭素置換pSCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド2
PSMA-617と比較して、そのリガンドは、より大きいサイズを有し、かつ、p-SCN-Bn-DOTA基、すなわち、異なったリンカー領域と、PSMA-617と比較して、放射性核種のキレート化を引き起こすのに4本のキレーターアームすべてを含まない異なったDOTA-キレーターバージョンの両方、を有する。
【0171】
p-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド2は、実施例1に記載のp-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1のDOTA類似体であり、放射性標識と相互作用するための残りのキレーター基を含まないキレーター骨格に対する炭素リンカーを有し、そのため、放射性核種標識PSMA-617と比較して、放射性標識後にキレートの安定性を改善すると予想される。
【0172】
リンカー領域内の親油性ベンジルユニットの追加および分子の大きいサイズに起因して、PSMA-617と比べて、より低い腎臓取り込みが予想される。この分子は、合成の最終段階においてTCMCベースの前駆体の代わりにDOTAベースの前駆体を使用することにしたがって、p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1と同じ様式で合成できる。
【0173】
【化13】
p-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド2のトリフルオロ酢酸塩
【0174】
p-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド2のトリフルオロ酢酸塩は、化学式C65H82F12N10O25Sを有し、1663.46g/molの分子量がある。
【0175】
DOTAに対する取り付け部を置換した炭素により、この分子は、212Pb、212Bi、213Bi、225Ac、227Th、その上、68Gaのような陽電子放射断層撮影(PET)に適合する放射性核種を用いた放射性標識に非常に好適な特性を有する。
【0176】
したがって、放射性リガンド造影および治療法に好適な、新規PSMA結合性分子、p-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド2を記載する。
【0177】
結論として、PSMA-617と比較して、サイズおよびキレート化特性に関して異なった特性を有する、炭素置換pSCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド2を記載する。
【0178】
実施例3.試験した放射性核種
ルテチウム-177を、希釈したHCl中に溶解した、すぐに使える177LuCl3として購入した。鉛-212を224Raベースの溶液から得た。ラジウム-224を、固定した228Thを伴ったアクチニド樹脂を含有するカラムを1MのHClで溶出することにしたがって、アクチニド樹脂(Eichrom Technologies, LLC)に結合した228Thから作製した。溶出液を、第二のAc-樹脂カラムにより精製し、そして、その溶出液を、約110℃の加熱ブロックに配置されたガス出入口のあるキャップを備えた蒸留バイアルと、溶媒を留去するための窒素ガスのゆるやかな流れを使用して蒸発乾固した。蒸留バイアルから溶媒がなくなったとき、残渣を溶解するために、通常200~400μlの0.1M HClを加えた。
【0179】
実施例4.PSMA結合性リガンドの放射性標識
通常、177Luおよび224Ra/212Pb溶液を、10%の5M酢酸アンモニウムを伴ったHClで所望の体積およびpH5~6に調整した。PSMA結合性リガンドを、1mg/mlの濃度まで、0.5M酢酸アンモニウムを伴った0.1MのHCl中に溶解した。通常、1mlの放射性溶液あたり20マイクログラムの濃度を使用した。反応混合物を、振盪機上で15~30分間インキュベートし、通常、標識化を薄層クロマトグラフィーによって評価した。鉛-212標識を、p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1を用いて室温または37℃にて実施し、その一方で、PSMA-617の177Lu-標識および212Pb-標識を90℃にて実施した。典型的な放射性標識法収率は、試験した化合物および放射性核種で90~100%の範囲内にあり、そして、20μlあたり1μg超の濃度を提供するものを使用した。結論として、両リガンドの放射性標識はうまくいった。新規p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1は、高温で標識されなければならなかった177Lu-PSMA-617とは対照的に、212Pbを用いて室温にて放射性標識することができた。
【0180】
実施例5:薄層クロマトグラフィー分析
薄層クロマトグラフィー(TLC)を、クロマトグラフィー片(モデル#150-772、Biodex Medical Systems Inc, Shirley, NY, USA)を使用して実施した。DPBS中の7.5%のヒト血清アルブミンおよび5mMのEDTAから成り、NaOHで約pH7に調整した製剤バッファー(FB)を、遊離放射性核種を測定するためのストリップへの適用の少なくとも5分前に、2:1の比で抗体コンジュゲートと混合した。約0.5mlの0.9% NaClの入った小さいビーカーを、サンプルスポットした細片を置くのに使用した。一般的に、細片には、細片底部の上方約10%に1~4μlのサンプルを加えた。溶媒の先端が細片の上部から約20%まで移動した後に、細片を半分に切り、そして、それぞれ半分をカウントのために5mlの試験管に入れた。この系では、放射性標識リガンドが下半分に留まるのに対して、EDTAで錯化した放射性核種は上部に移動する。212Pbおよび177Luの両方の陽イオンがEDTAで錯化され、そして、上部に移動することがないことを確認した。
【0181】
結論として、放射性リガンドと遊離放射性核種とを効果的に見分ける放射性標識収率の迅速な測定を可能にするTLC系を使用する。
【0182】
実施例6.224Ra溶液からの212Pbの分離
放射性標識リガンドを、それにしたがって、224Raが骨疾患を標的化し、およびリガンドが全身的転移性疾患を標的化する224Ra二重標的化溶液の成分として使用できる。あるいは、224Ra発生溶液を、in situにおける標識化によって212Pb-標識リガンドを製造するのに使用できる、すなわち、212Pbは、224Raの存在下でリガンドによって錯化される。0.5M酢酸アンモニウム、pH5~6中の40μlのラジウム-224/212Pb溶液に、2μl(1μg/μl)のp-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1またはPSMA-617を加え、そして、記載のとおり反応させて、212Pb-標識リガンドを作り出した。212Pb-PSMAリガンドを精製するために、その生成物を、7%のウシ血清アルブミン、10mMのEDTA、および10mg/mlのアスコルビン酸から成る約10μlの製剤バッファーに加えた。その後、反応混合物を、Sephadex G-10カラムPD MiniTrap G-10(GE Healthcare Life Sciences)に加え、そして、0.9%のNaClで溶出した。212Pbを含む溶出液、典型的には、0.7~1.5mlの適用後に溶出された画分を回収し、ガンマカウンタおよびTLCにより分析し、そして、放射性リガンド結合アッセイを実施した。生成物精製手順が、高い放射化学的収率(通常>80%)を有し、かつ、典型的には、212Pb-標識リガンドと比較して0.4%未満に達する224Raの高い放射化学純度を有した。
【0183】
結論として、p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1およびPSMA-617は、224Raの存在下で212Pbを用いて放射性標識することができ、そして、一体化された、224Raでの骨転移の標的化および212Pb-標識PSMAリガンドでの全身的腫瘍細胞の標的化のための二重標的化溶液を産生した。
【0184】
Sephadex G-10ゲル濾過カラムを使用して、試験した両方の212Pb-標識PSMAリガンドが、80%超の回収および0.4%未満の224Raの漏出で溶液中の224Raから分離され、独立型PSMA標的化のための高度に精製された212Pb-標識PSMA放射性リガンドを産生した。
【0185】
実施例7.212Pb-標識リガンドのin vitroにおける安定性試験
224Ra/212Pb溶液中の放射性標識リガンドを、1:1でPBSまたはウシ血清アルブミンと混合し、最長48時間37℃にてインキュベートした。TLC分析を、1時間、4時間、24時間、および48時間のインキュベーションにて実施した。
【0186】
データは、表1中に示され、そして、212Pbは、224Raからそれが作り出された後、継続的にリガンドと反応し、48時間後でさえ、高いパーセンテージの放射化学純度を維持することを示している。したがって、PSMAリガンドは、集約型の製造とエンドユーザーへの出荷に好適な放射性リガンドのin situ製造のための224Ra溶液の使用に対応する。
【0187】
表1.PBSとFBS中の
212Pb-TCMC-PSMAリガンド1および
212Pb-PSMA-617の放射化学純度
【表1】
【0188】
結論:データは、212Pbで標識したp-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1とPSMA-617が長期間にわたり224Ra溶液中で安定していることを示し、そして、すぐに使用できる製品の集約型の製造およびエンドユーザーへの出荷に対応することを示した。斯かる溶液は、癌に対する治療に使用される場合がある。
【0189】
実施例8.212Pbで標識したp-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1とPSMA-617の前立腺癌細胞結合
細胞結合率を、5ml容の試験管内で0.2mlのC4-2細胞(1mlあたり5×107細胞)に約1ngの放射性リガンドを加え、適用された放射能を計測する前に1時間インキュベートし、DPBS中の0.5mlの0.5%のウシ血清アルブミンで細胞を3回洗浄し、その後、洗浄した細胞ペレットを再カウントすることによって計測した。複数回の実験から、%結合は、非特異的結合を差し引いた後40~53%の範囲内にあることがわかった。非特異的結合を、放射性リガンドを加える前に、過剰な10μg/mlの未標識リガンドで細胞をブロッキングすることによって計測した。放射性標識p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1とPSMA-617との間で、細胞結合における有意差は見られなかった。結論として、放射性標識p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1およびPSMA-617の放射性リガンドは、in vitroにおいて類似した細胞結合特性を有し、そして、p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1が関連抗原結合能を有することを示した。
【0190】
実施例9.前立腺癌細胞を用いた放射性リガンド結合能とTLC分析によって評価したp-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1の放射線分解安定性
表2は、5ml容の試験管内で0.2mlのC4-2細胞(1mlあたり5×107細胞)に約1ngの放射性リガンドを加え、適用された放射能を計測する前に1時間インキュベートし、DPBS中の0.5mlの0.5%のウシ血清アルブミンで細胞を3回洗浄し、その後、洗浄した細胞ペレットを再カウントすることによって計測した細胞結合率を示す。その溶液の初期放射能は約5MBq/mlであり、そして、24時間後に約1.8Gy、そして48時間後に3.3Gyの該溶液に対する吸収放射線量をもたらす。データ(表2)は、最長の露出時間にてわずかな低下を示すが、一般的に、リガンドの比較的強力な放射線分解抵抗性を観察し、そしてそれは、生成物の投与前の224Ra除去の有無にかかわらず、224Raベースの発生溶液の集約型の製造およびエンドユーザーへの出荷に対応する。
【0191】
表2.
224Ra溶液中に保持したときの
212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1の結合能
【表2】
【0192】
結論:データは、212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1が長期間にわたり224Ra溶液中で安定していること、および、それが保存中に224Raから作り出されるので、PSMAリガンドが212Pbを錯化できることを示したので、吸収放射線量が約2kGyより低く維持されることを条件に、斯かる溶液が癌に対する治療に使用される場合がある。
【0193】
実施例10.C4-2 PSMA陽性異種移植を受けたヌードマウスにおける放射性標識リガンドの生体分布
212Pbと177Luで標識したp-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1とPSMA-617伴った224Ra/212Pb溶液の生体分布を、注射後の様々な時点にて、C4-2異種移植を受けたヌードマウスにおける静脈内注射後に比較した。各群は、通常、3匹のマウスで構成された。212Pb標識化は、生成物に関して92%を上回った。
【0194】
177Lu対212Pbに関して非常に高レベルの放射性核種を使用したので、リガンドのモル濃度は、177Lu-PSMA-617に関して有意に低かった。約16kBqの224Ra/212Pb、すなわち、マウス1匹あたり約0.2nmolのリガンドを各動物に注射した。動物を、頸椎脱臼によって麻痺させ、そして、屠殺し、その後、解剖し、組織サンプル、血液サンプル、および尿サンプルを採取した。そのサンプルの重量を計り、ガンマカウンタによりカウントした。
【0195】
実施例11.マウスにおける、
212Pbで標識したp-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1とPSMA-617に関する腫瘍結合および腎臓取り込みの比較
212Pbで標識したp-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1とPSMA-617伴った
224Ra/
212Pb溶液の生体分布を、注射後にC4-2異種移植を受けたヌードマウスにおける静脈内注射後に比較した。各群に3匹のマウス。
212Pb標識化は、両生成物に関して92%を上回った。リガンドのモル濃度は、両生成物に関して同じ、すなわち、1MBqあたりの12.5nmolであった。約16kBqの
224Ra/
212Pb、すなわち、マウス1匹あたり約0.2nmolのリガンドを各動物に注射した。動物を、頸椎脱臼によって麻痺させ、そして、屠殺し、その後、解剖し、組織サンプル、血液サンプル、および尿サンプルを採取した。そのサンプルの重量を計り、ガンマカウンタによりカウントした。結果:注射の4時間後、
212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1対PSMA-617の比は、以下のとおりであった:腫瘍1.35;腎臓0.20;血液1.21;肝臓2.67;脾臓0.71。いずれのPSMA指向性リガンドによっても
224Ra生体分布が有意に変更されなかったことを、保管3日後のサンプルをカウントすることによって確認した。考察:
212Pb p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1は、
212Pb-PSMA-617と比較して、有意に異なった生体分布を示し、その上、特に注目すべきは、それが非常に低いことであり、そして、腎臓のような腎臓における(in the kidneys as kidneys)取り込みの好ましい比が、比較的短命なα放射体を用いたPSMA放射性リガンド治療法に関係する正常組織の主な用量制限となることが予想される(
図1)。結論として、
212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1は、PSMA-617と比較して、
212Pbのようなより短命の放射性核種を使用するときに重要である初期時点の非常に有望な生体分布を示す。
【0196】
実施例12.マウスにおける、212Pb-標識p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1と177Lu-標識PSMA-617の腫瘍結合および腎臓取り込みの比較
方法:212Pb-標識p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1および177Lu-標識PSMA-617の腫瘍および腎臓取り込みを、実施例9に記載のC4-2異種移植を受けたヌードマウスへの静脈内注射による生成物の投与後1時間および4時間において比較した。結果:腫瘍および腎臓が、最も多量の放射能を取り込む組織であった。例として、212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAの腫瘍および腎臓取り込みは、注射後4時間にてそれぞれ1グラムあたり注射用量の平均13.9および8.1パーセント(%ID/g)であった。177Lu-PSMA-617の腫瘍および腎臓取り込みは、注射の4時間後、それぞれ平均13.6および17.4%ID/gであった。注射したリガンドのモル量がPSMA-617では非常に少なかったことは、注目に値すし、そしてそれは、腎臓の取り込みを低減することが知られているが、それにしても、新規212Pb-標識化合物はより少ない腎臓取り込みを示した。4時間の時点での、腫瘍対腎臓の比は以下のとおりであった:212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1、1.7;177Lu-PSMA-617、0.8。
【0197】
投与後1時間の時点で決定される平均腫瘍対腎臓比は、212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1では0.40、および177Lu-PSMA-617では0.17であった。結論として、212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1に関する高モルのリガンド濃度にもかかわらず、それは、177Lu-PSMA-617に比べ、より良好な腫瘍対腎臓比を示し、そして、それが、212Pbベースのα放射体放射性リガンド治療法に非常に適していることを示した。
【0198】
実施例13.PSMA陽性異種移植を受けたマウスにおける212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1含有一重標的化溶液の生体分布
記載したようなp-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1との反応のための212Pb/224Ra溶液を使用して、精製した212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1を、Sephadex G-10ゲル濾過カラムを使用して精製し、そして、約30kBqおよび300ngの精製した放射性リガンド生成物を動物単位で注射した。データを表3に示す。以上のように、腎臓放射能は比較的急速に低減されるが、それに対して、腫瘍取り込みは良好な残留を示す。腫瘍対組織比(表4)は、212Pbで標的化する放射性リガンドへの好適性を示す。
【0199】
結論として、212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1は、PSMA発現前立腺癌に対する放射性リガンド治療法に使用するための関連標的化特性を示す。
【0200】
表3.注射後の様々な時点における
212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1の生体分布
【表3】
【0201】
表4.様々な時点における
212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1の腫瘍対組織比
【表4】
【0202】
実施例14.投薬量
2つの核種に関して産生される放射線エネルギーは、主にα粒子からなので、そのため、以下の見積りではα粒子だけを考慮した。
【0203】
212Pbと短命な娘は、212Pbの原子当たり平均7.8MeVのα線放射を生じる。212Pbの半減期は10.6時間である。213Biと短命な娘は、213Biの原子当たり平均8.4MeVのαエネルギーを生じる。213Biの半減期は46分である。
それは5Sv/Gyのα粒子と等価線量であると見なされた。
したがって、1Bqの212Pbは、完全に崩壊すると1×(10.6×60/46)×7.8/8.4=12.6Bqの213Biの等価α線量を生じる。
【0204】
唾液腺、腎臓および赤色骨髄が、PSMA-617に対して錯化された213Biおよび225Acについての用量制限組織であることが報告された(Kratochwil, et al, 2018)。
陽電子断層撮影検出に好適な放射性核種で標識したPSMA-617の造影に基づいて、腫瘍では90%の212Pbに対して70%の213Bi原子に達し、そして減衰すること(すなわち、相対崩壊率)を、30分の時点に存在するはずの最大パーセンテージ取り込みであると考えられる。
【0205】
用量制限組織の相対崩壊率を、213Bi-PSMA-617を伴ったすべての組織の70%であると考えられる。212Pb-PSMA-617取り込みに関して、50%が唾液腺において、30%が腎臓において、および20%が骨髄において崩壊すると考えられる。
【0206】
1Bqあたりのエネルギーおよび212Pb-および213Bi-標識PSMA-617の相対崩壊率の補正にしたがって、212Pb-PSMA-617の線量評価は、213Bi-および225Ac-標識PSMA-617に関する以前の公表データと一緒に表5に提示されるものである。同様に、212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1と212Pb-PSMA-617のマウスデータ比較を使用し、そして、ヒトの類似した組織取り込み率を前提とすることにしたがって、212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1の線量見積りを表5に提示する。
【0207】
表5.放射性核種にかかわらず類似した生成物の安定性および親和性を前提とする線量評価
【表5】
【0208】
225Ac-と213Bi-標識PSMA-617の両方が臨床的に使用され、強力な抗腫瘍放射能を示したことが報告された。この実施例の見積りに基づいて、212Pb-標識した尿素ベースのPSMA阻害剤がPSMA発現癌に対して非常に有望な治療ツールことを示す。
【0209】
実施例15.二重標的化224Ra陽イオンと212Pb-標識PSMA標的化尿素誘導体の線量見積り
212Pb-標識PSMA結合尿素誘導体と平衡状態にある224Raを使用する。150kBqの224Raの投薬量のために、投与される全放射能は、70kgのヒトでは10.5MBqである。前立腺癌患者の陽イオン223Raに関する公開された線量測定を使用し、かつ、224Raと223Raの間の半減期差を補正し、同じ生体分布と仮定し、および様々な組織における異なった滞留時間を考慮して、224Raが、投与された1MBqあたり、腎臓に0.006Gy、唾液腺に0.029Gy、赤色骨髄に0.26Gyをもたらすであろうし、そして、腫瘍に対しては、赤色骨髄取り込みの5倍、すなわち、1.3Gyと見積もられることがわかった。
【0210】
α粒子用量に関して5Sv/Gyの等価線量が仮定されるので、表6では、データを、注射した投薬量あたりのSv(10.5MBq/患者)に置き換える。
【0211】
表6.
224Ra陽イオン+
212Pb標識PSMA結合尿素誘導体
*の線量評価
【表6】
【0212】
実施例15.227Th-標識PSMA結合尿素誘導体の線量見積り
この実施例では、177Luが、p-SCN-Bn-DOTA-PSMAリガンド2またはこの分子のHOPO誘導バージョンに対して標識されると考えられる。この見積りでは、患者における223Raの試験および前立腺癌に罹患している患者の225Ac-PSMA-617の試験(Chittenden et al., 2015, Kratochwil et al, 2017, 2018)からのデータの適応に基づく。
【0213】
α粒子放射に関して1Gyあたり5Svの等価線量と考えられる。
【0214】
組織において作り出される223Raは局在して崩壊すると考えられる。227Thの全身循環から作り出される223Raの40%が骨格内に保持されると考えられる。α粒子用量だけは、産生された全放射エネルギーの95%以上をこの構成要素とみなす。
【0215】
放射性標識PSMA尿素誘導体に関してより長い滞留時間を有する組織(唾液腺、腎臓および腫瘍)では、227Thから生じた223Raの累積放射能を、227Thの20%であり、赤色骨髄では5%であると考えられる。様々な組織において227Thから生じる20%および5%のラジウムは、α放射性子孫放射性核種と平衡状態にあると仮定し、したがって、実質的にそれぞれのラジウム崩壊は26.4MeVのα線放射を生じ、それに対して、227Thは5.9MeVの同じαを生じる。
【0216】
225Acおよび227Thの半減期に比べて滞留時間が短いので、227Thの累積放射能は、すべての臓器において225Ac(225Ac子孫を考慮しない)と比べて、10%だけ高いと考えられる。母核種およびα放射性子孫の崩壊からの225Ac原子当たり合計27.7MeVのα線量であると考えられる。
【0217】
また、赤色骨髄線量および骨格腫瘍線量は、227Th-生成物の体循環などの間に作り出される223Raの骨格取り込みに起因して、赤色骨髄用量に対して2倍増強されると考えられる。
【0218】
データを表7に提示する。データは、227Th-標識PSMA結合尿素誘導体に関する好ましい腫瘍対組織比を示す。
【0219】
表7.
227Th-標識PSMA結合尿素誘導体に関する問題とすべき臓器および腫瘍のための等価線量の線量見積り(MBq/患者)
【表7】
【0220】
本明細書中に記載した生成物は、単回治療または反復治療様式で使用できると考えられる。
【0221】
結論として、212Pbまたは227Thで標識されたPSMA標的化尿素誘導体に関する線量見積りは、使用による臨床上の恩恵が見込まれ得ることを示す有望な腫瘍対組織比を示す。
【0222】
実施例16.C4-2異種移植を受けたヌードマウスにおける177Lu-PSMA-617と212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1を用いた比較治療実験
雄ヌードマウスには、C4-2-PSMA陽性ヒト前立腺細胞を側腹に接種し、そして、2週間後、腫瘍は直径が5~7mmになっていた。それぞれ8匹の動物から成る群には、生理的食塩水、52MBqの177Lu-PSMA-617または320kBqの212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1が与えられた。腫瘍の大きさが20mmに達したとき、動物愛護要件のため、動物を屠殺した。腫瘍線量を以下の仮定に基づいて計算した:3日間の腫瘍における177Lu-PSMA-617有効半減期に関して、腫瘍における崩壊1グラムあたり注射用量の10%、および腫瘍における崩壊からの放射線の80%は、腫瘍において吸収され、そして、崩壊あたり0.15MeVの放射線エネルギーになる。212Pbに関しては、有効半減期は10.6時間であると考えられるので、腫瘍における崩壊1グラムあたり注射用量の10%、および腫瘍における100%の放射線が、腫瘍において吸収され、腫瘍における212Pbおよび娘の100%の滞留および1崩壊あたり8MeVの放射線エネルギーになる。注射された放射能に関する腫瘍線量測定は、それぞれ177Lu-PSMA-617では腫瘍に対して平均35.9Gyおよび212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1グループでは腫瘍に対して2.06Gyをもたらす。
【0223】
結果:治療後30日目、データは、生理的食塩水群、
177Lu-PSMA-617群および
212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1群において、それぞれ0%、12.5%および75%の生存率を示した(
図2)。生存期間の中央値は、生理的食塩水群、
177Lu-PSMA-617群および
212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1群において、それぞれ15日間、20日間および>30日間(未到達)であった。
【0224】
結論として、データは、、放射線線量評価が、177Lu-PSMA-617と共に送達され、Gy単位として17倍高い放射線用量を示したにもかかわらず、212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1対177Lu-PSMA-617で強力な腫瘍増遅延を示す。したがって、212Pb-p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1対177Lu-PSMA-617の放射線生物効果比(RBE)は少なくとも17であった。通常、2~5のRBEがα放射体対β放射体について予想されるので、α放射体の治療レベルに関するこの高い放射線生物効果はほとんど予測していなかった。
および
【0225】
参照文献
トリウム-227の錯化に対して効果的なキレーター。
【化14】
【0226】
事項
1.
PSMA発現細胞および組織を標的化するのに好適な尿素誘導体である化合物X。
【0227】
2.
212Pb、177Lu、213Bi、225Acまたは227Thに連結された化合物Xを含む錯体であって、ここで、該化合物Xが、PSMA発現細胞および組織を標的化するのに好適な尿素誘導体である錯体。
【0228】
3.
前記化合物Xが、キレート分子Zによって212Pbまたは227Thに連結される、事項1に記載の化合物または事項2に記載の錯体。
【0229】
4.
前記キレート部分Zが、非環状キレーター、環状キレーター、クリプタンド、クラウンエーテル、ポルフィリンまたは環状もしくは非環状ポリホスホナート、DOTMP、EDTMP、ビスホスホナート、DOTA、p-SCN-Bn-DOTAなどのDOTA誘導体、DOTAに結合したパミドロナート、TCMC、p-SCN-Bn-TCMCなどのTCMC誘導体、TCMCに結合したパミドロナート、抗体結合型DOTA、抗体結合型TCMC、HBED-CC、NOTA、NODAGA、TRAP、NOPO、PCTA、DFO、DTPA、CHX-DTPA、AAZTA、DEDPA、およびoxo-Do3Aから成る群から選択される、事項1~3のいずれか一項に記載の化合物または錯体。
【0230】
4.
前記リンカーが、DOTAまたはDOTA誘導体である、事項1~4のいずれか一項に記載の化合物または錯体。
【0231】
5.
前記リンカーが、p-SCN-Bn-DOTAなどのDOTA誘導体である、事項1~4のいずれか一項に記載の化合物または錯体。
【0232】
6.
前記リンカーが、TCMCまたはTCMC誘導体である、事項1~4のいずれか一項に記載の化合物または錯体。
【0233】
7.
前記リンカーが、p-SCN-Bn-TCMCなどのTCMC誘導体である、事項1~4または6のいずれか一項に記載の化合物または錯体。
【0234】
8.
前記リンカーが、3,2-HOPOなどのオクタデンテートヒドロキシピリジノン含有リガンドである、事項1~7のいずれか一項に記載の化合物または錯体。
【0235】
9.
前記のキレート分子Zに連結された化合物Xが、以下の式(I):
【化15】
{式中、
Wは、PSMA標的化リガンドであり;
A
4は、結合もしくは鎖内に1~10個の炭素原子を含む2価の連結部分、環、またはこれらの組み合わせであり、ここで、少なくとも1つの炭素原子が任意選択で、O、-NR
3-、または-C(O)-で置換され;
Gは、C=O、C=S、C-NH
2、またはC-NR
3であり;
R
1は、水素またはカルボン酸保護基であり;
R
3は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルキルアリール、およびヘテロアリールから成る群から選択され;
R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、およびR
16は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アルコキシルであるか、またはR
17およびR
18は、それぞれ独立に、水素、アルキル、アリール、またはアルキルアリールであり;
R
19は、アルキル、アルコキシル、ハロゲン化物、ハロアルキル、およびCNから成る群から選択され;
mは、1~6の整数であり;ならびに
oは、0~4の整数であり、ここで、oが1超であるとき、それぞれのR
19は同じであるかまたは異なっている}によって規定される、事項1~8のいずれか一項に記載の化合物または錯体、あるいは、医薬として許容され得るその塩。
【0236】
10.
前記A4が、結合、(CH2)n、-HC(O)-、-(OCH2CH2)n-、-(HCH2CH2)n-、-H(CO)CH2-、-HC(0)CH2(OCH2CH2)n-、または-HC(0)CH2(HCH2CH2)n-であり;およびLは、結合、(CH2)n、-(OCH2CH2)n-、(HCH2CH2)n-、または-C(0)(CH2)n-{式中、nは独立に、1、2、または3である}である、事項1~9のいずれか一項に記載の化合物または錯体、あるいは、医薬として許容され得るその塩。
【0237】
11.
前記A4が、結合、-(OCH2CH2)n-、または-HC(0)CH2(OCH2CH2)n-であり;およびLは、結合、または-(OCH2CH2)n-{式中、nは独立に、1または2である}である、事項1~10のいずれか一項に記載の化合物または錯体、あるいは、医薬として許容され得るその塩。
【0238】
12.
前記Wが、以下の構造:
【化16】
{式中、
R
20およびR
21はそれぞれ独立に、そのアミノ基を介して、隣接-C(O)-基に連結されたアミノ酸残基である}を有する、事項1~11のいずれか一項に記載の化合物または
【0239】
13.
前記Wが、以下の構造:
【化17】
{式中、Rは水素またはカルボン酸保護基である}を有する、事項1~12のいずれか一項に記載の化合物または錯体、あるいは、医薬として許容され得るその塩。
【0240】
14.
以下の構造:
【化18】
{式中、R
17はアリールである}を有するか、または、医薬として許容され得るその塩である、事項1~13のいずれか一項に記載の化合物または錯体、あるいは、医薬として許容され得るその塩。
【0241】
15.
前記錯体が、
212Pbなどの放射性核種が4つのNに連結/キレートされ得る、以下のPSMA-617:
【化19】
である、事項1~14のいずれか一項に記載の化合物または錯体、あるいは、医薬として許容され得るその塩。
【0242】
16.
前記DOTAユニットがTCMCユニットで置換される、事項15に記載の化合物または錯体。
【0243】
17.
前記DOTAがp-SCN-Bn-DOTAであり、かつ、TCMCがp-SCN-Bn-TCMCである、事項15~16のいずれか一項に記載の化合物または錯体。
【0244】
18.
前記p-SCN-Bn-DOTAまたはp-SCN-Bn-TCMCが、尿素誘導体(PSMA)にC-連結した骨格である、事項15~17のいずれか一項に記載の化合物または錯体。
【0245】
19.
前記化合物が、以下の骨格-C連結p-SCN-Bn-DOTAまたはp-SCN-Bn-TCMC:
【化20】
{式中、Zは、以下の:
【化21】
(式中、Xは-OHまたはNH
2である)である}である、事項15~18のいずれか一項に記載の化合物または錯体。
【0246】
20.
前記化合物が、以下の骨格-C連結p-SCN-Bn-DOTAまたはp-SCN-Bn-TCMC:
【化22】
{式中、Xは-OHまたはNH
2である}である、事項15~19のいずれか一項に記載の化合物または錯体。
【0247】
21.
前記化合物が、以下の骨格-C連結p-SCN-Bn-DOTA、すなわち、p-SCN-Bn-DOTA-PSMA-リガンド2:
【化23】
である、事項15~20のいずれか一項に記載の化合物または錯体。
【0248】
22.
前記化合物が、以下の骨格-C連結p-SCN-Bn-TCMC、すなわち、p-SCN-Bn-TCMC-PSMAリガンド1:
【化24】
である、事項15~20のいずれか一項に記載の化合物または錯体。
【0249】
23.
212PbをキレートするためのTCMC基を含有するPSMA標的化尿素誘導体。
【0250】
24.
227ThをキレートするためのHOPOを含有するPSMA標的化尿素誘導体。
【0251】
25.
212Pbまたは227Thのいずれかを用いて標識されたDOTAを含有するPSMA標的化尿素誘導体。
【0252】
26.
事項1~21のいずれか一項に記載の化合物または錯体、および/または事項(claims)15~17のいずれか一項に記載のPSMA標的化尿素誘導体、ならびに希釈剤、担体、界面活性剤、および/または賦形剤、を含む医薬組成物。
【0253】
27.
224Raをさらに含む、事項26に記載の放射性医薬組成物。
【0254】
28.
前記放射能が、1用量あたり100kBq~100MBqである、事項26~27のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物。
【0255】
29.
前記224Raと212Pbの量が、放射平衡の状態にある、事項26~28のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物。
【0256】
30.
前記212Pb対224Raの間の放射能比(MBq)が、0.5~2、0.8~1.5など、もしくは0.8~1.3など、または好ましくは0.9~1.15などである、事項26~29のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物。
【0257】
31.
以下の:
- 事項26~30のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物を含む第一のバイアル、および
- 患者への投与前に放射性医薬組成物のpHおよび/または等張性を調整するための中和溶液を含む第二のバイアル、
を含むキット。
【0258】
32.
以下の:
- 224Ra、212Pb、および/または227Thを含む第一のバイアル;
- 非環状キレーター、環状キレーター、クリプタンド、クラウンエーテル、ポルフィリンまたは環状もしくは非環状ポリホスホナート、DOTMP、EDTMP、ビスホスホナート誘導体、DOTA、DOTA誘導体、DOTAに結合したパミドロナート、TCMC、TCMC誘導体、TCMCに結合したパミドロナート、抗体結合型DOTA、抗体結合型TCMC、HBED-CC、NOTA、NODAGA、TRAP、NOPO、PCTA、DFO、DTPA、CHX-DTPA、AAZTA、DEDPA、およびoxo-Do3A、または事項1~21のいずれか一項に記載の化合物から成る群から選択される錯化剤を含む第二のバイアルを含み、ここで、該錯化剤は、212Pbなどの224Raの娘核種を錯化することができ、およびここで、該錯化剤は、薬剤溶液中の224Raを錯化しない;および
- 任意選択で、第一のバイアルと第二のバイアルを混合し、それにしたがって、混合の1分~12時間後に患者にすぐに投与できる医薬組成物を形成するための取扱説明書、
を含むキット。
【0259】
33.
前記キットが、薬剤としての使用のためのものである、請求項31~32のいずれか一項に記載のキット。
【0260】
34.
薬剤としての使用のための、事項18~22のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物。
【0261】
35.
骨疾患の治療における使用のための、事項18~22のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物。
【0262】
36.
前記骨疾患が、癌から乳房、前立腺、腎臓、肺、骨への骨格転移、または多発性骨髄腫、あるいは、強直性脊椎炎を含めた望ましくない石灰化を引き起こす非癌性疾患から成る群から選択される、事項35に記載の使用のための放射性医薬組成物。
【0263】
37.
前記溶液が、体重の1kgあたり50~150kBq、例えば、体重の1kgあたり50~100kBqなどの範囲内の線量で投与される、事項34~36のいずれか一項に記載の使用のための放射性医薬組成物。
【0264】
38.
それを必要としている個体への、事項26~30のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物の投与による悪性または非悪性疾患の治療方法。
【0265】
39.
事項26~30のいずれか一項に記載の放射性医薬組成物を提供する方法であって、該方法が、以下の:
a)第一の溶液であって、ここで、224Raと212Pbの量が放射平衡の状態にある第一の溶液を準備し;
b)非環状キレーター、環状キレーター、クリプタンド、クラウンエーテル、ポルフィリンまたは環状もしくは非環状ポリホスホナート、DOTMP、EDTMP、ビスホスホナート、DOTA、DOTA誘導体、DOTAに結合したパミドロナート、TCMC、TCMC誘導体、TCMCに結合したパミドロナート、抗体結合型DOTA、抗体結合型TCMC、HBED-CC、NOTA、NODAGA、TRAP、NOPO、PCTA、DFO、DTPA、CHX-DTPA、AAZTA、DEDPA、およびoxo-Do3Aから成る群から選択される錯化剤を含む第二の溶液であって、ここで、該錯化剤は、212Pbなどの224Raの娘核種を錯化することができ、およびここで、該錯化剤は、224Raを錯化しない第二の溶液を準備し;そして、
c)第一の組成物と第二の組成物を混合し、それにしたがって、事項26~30のいずれか一項に記載の医薬組成物を提供すること、
を含む方法。