(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178528
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】蓄電装置を備えた変電所、それと連系する蓄電システム及び充放電制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20231211BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20231211BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231211BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20231211BHJP
B60M 3/06 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J7/02 B
H02J7/00 P
H02J3/46
B60M3/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091262
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基也
(72)【発明者】
【氏名】宮内 努
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘隆
(72)【発明者】
【氏名】安河内 大
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503DA08
5G503FA06
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】 出力特性に電圧変動の少ない整流器を適用する変電所のき電区間において、回生電力と力行電力の発生に応じて蓄電装置が充放電することにより、回生失効を防止するとともに省電力に寄与できる変電所を提供する。
【解決手段】 交流電力を直流電力に変換する整流器と蓄電装置を備え、整流器と蓄電装置と少なくとも何れか一方の電力を車両に供給する変電所において、変電所が供給する負荷の大きさを検出する第1検出部と、き電電圧を検出する第2検出部と、を備え、第1検出部により検出された負荷の大きさが第1所定値を上回った場合に蓄電装置が放電し、第2検出部により検出された電圧が第2所定値を上回った場合に蓄電装置に充電する。整流器の無負荷電圧より高い電圧で蓄電装置が放電する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換する整流器と、蓄電装置を備え、前記整流器と前記蓄電装置と少なくとも何れか一方の電力を車両に供給する蓄電装置を備えた変電所において、
前記変電所が前記供給する負荷の大きさを検出する第1検出部と、き電電圧を検出する第2検出部と、を備え、
前記第1検出部により検出された負荷の大きさが第1所定値を上回った場合に前記蓄電装置が放電し、
前記第2検出部により検出された電圧が第2所定値を上回った場合に前記蓄電装置に充電する、
蓄電装置を備えた変電所。
【請求項2】
前記整流器の無負荷電圧より高い電圧で前記蓄電装置が放電する、
請求項1に記載の蓄電装置を備えた変電所。
【請求項3】
回生蓄電変電所負荷から第3所定値を差し引いた負荷分を前記蓄電装置から放電し、
前記第3所定値は前記整流器が定電圧で安定した電流を出力可能な安定出力電流の上限である、
請求項1に記載の蓄電装置を備えた変電所。
【請求項4】
前記第1検出部は、前記変電所のき電電流を負荷の大きさとして検出する、
請求項1に記載の蓄電装置を備えた変電所。
【請求項5】
前記第1検出部は、前記交流電力の力率と前記蓄電装置の放電電力に基づいて負荷の大きさを検出する、
請求項1に記載の蓄電装置を備えた変電所。
【請求項6】
前記第1検出部は、前記交流電力の高調波と前記蓄電装置の放電電力に基づいて負荷の大きさを検出する、
請求項1に記載の蓄電装置を備えた変電所。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の蓄電装置を備えた変電所と連系する蓄電システム。
【請求項8】
車両電力を授受する蓄電装置の出力と、交流電力を直流電力に変換する整流器の出力と、少なくとも何れか一方を前記車両電力に供給する変電所と連系する蓄電システムの充放電制御方法において、
第1検出部が、前記変電所のき電電圧を検出し、
第2検出部が、前記変電所より供給される負荷の大きさを検出し、
前記第1検出部により検出された負荷の大きさが第1所定値を上回った場合に前記蓄電装置が放電し、
前記第2検出部により検出されたき電電圧が第2所定値を上回った場合に前記蓄電装置に充電する、
蓄電システムの充放電制御方法。
【請求項9】
前記整流器の無負荷電圧より高い電圧で前記蓄電装置が放電する、
請求項8に記載の蓄電システムの充放電制御方法。
【請求項10】
変電所負荷から第3所定値を差し引いた負荷分を前記蓄電装置から放電し、
前記第3所定値は前記整流器が定電圧で安定した電流を出力可能な安定出力電流の上限である、
請求項8に記載の蓄電システムの充放電制御方法。
【請求項11】
前記第1検出部は、変電所のき電電流を負荷の大きさとして検出する、
請求項8に記載の蓄電システムの充放電制御方法。
【請求項12】
前記第1検出部は、前記交流電力の力率と前記蓄電装置の放電電力に基づいて負荷の大きさを検出する、
請求項8に記載の蓄電システムの充放電制御方法。
【請求項13】
前記第1検出部は、前記交流電力の高調波と前記蓄電装置の放電電力に基づいて負荷の大きさを検出する、
請求項8に記載の蓄電システムの充放電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置を備えた変電所、それと連系する蓄電システム及び充放電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の省エネルギー化(以下、「省エネ」と略す)を実現するため、回生ブレーキの有効活用が注目されている。回生ブレーキとは、車両(「電車」と読み替えても良い)に搭載されたモータの起電力により制動力を確保する減速手段であり、従来の摩擦ブレーキでは熱として捨てていた車両の運動エネルギーを電力に変換して再利用することが可能となる。この回生ブレーキにより発生した回生電力は、き電線を介して、他の列車の力行電力として供給されてきた。
【0003】
ただし、き電線は所定の間隔でき電区間として電気的に分離されているため、同一き電区間に回生電力を消費する車両が不在となる場合には回生電力を活用できないばかりか、回生ブレーキが作動しない回生失効の状態に陥る危険もある。このため、力行車両が同一き電区間内に不在となる状況でも回生電力を有効活用する技術が必要とされている。
【0004】
これに対応し、電力貯蔵装置(以下、「蓄電装置」という)を有効活用する技術が知られている(例えば、特許文献1)。この技術は、回生電力を蓄電装置に充電する一方で、力行車両が現れた際に放電することで、力行車両が同一き電区間内に不在となる状況でも回生電力の有効活用を実現するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の蓄電装置は、回生電力/力行電力の発生に伴い、変電所の備える整流器の特性に応じて上昇/下降する電圧を観測し、電圧が上昇したら充電し、電圧が下降したら放電する充放電制御である。このため、電圧変動の少ない出力特性の整流器(例えば、サイリスタ整流器)を適用し、一定電圧で電力供給する変電所のき電区間内では、力行電力発生時の電圧下降が小さく、蓄電装置からの放電機会を十分確保することが困難になる。
【0007】
また、放電機会を十分確保できない影響として、回生電力の有効利用もできない。本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電圧変動の少ない出力特性を有する整流器と、蓄電装置を備えた変電所において、回生電力と力行電力の発生に応じて蓄電装置が充放電することにより、回生失効を防止するとともに省電力に寄与できる蓄電装置を備えた変電所を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、交流電力を直流電力に変換する整流器と蓄電装置を備え、整流器と蓄電装置と少なくとも何れか一方の電力を、き電線を経由して車両に供給する変電所において、変電所が供給する負荷の大きさを検出する第1検出部と、き電線のき電電圧を検出する第2検出部と、を備え、第1検出部により検出された負荷の大きさが第1所定値を上回った場合に蓄電装置が放電し、第2検出部により検出された電圧が第2所定値を上回った場合に蓄電装置に充電する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蓄電装置と、電圧変動の少ない出力特性を有する整流器を適用する変電所において、回生電力と力行電力の発生に応じて蓄電装置が充放電することにより、回生失効を防止するとともに省電力に寄与できる変電所を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1に係る蓄電システムの概略を例示する機能ブロック図である。
【
図2】
図1におけるサイリスタ整流器10の出力特性を例示するグラフである。
【
図3】
図1における制御装置30を例示する機能ブロック図である。
【
図4】
図1における蓄電装置20の出力特性を例示するグラフである。
【
図5】
図1の蓄電システムの動作波形を例示するグラフである。
【
図6】本発明の実施例2に係る制御装置31を例示する機能ブロック図、及び動作説明グラフである。
【
図7】
図6の制御装置31の動作波形を例示するグラフである。
【
図8】
図6の制御装置31の変形例に係る制御装置32を例示する機能ブロック図である。
【
図9】本発明の実施例3に係る蓄電システムの概略を例示する機能ブロック図である。
【
図10】本発明の実施例4に係る蓄電システムの概略を例示する機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施例1を
図1~
図5により説明し、実施例2を
図6及び
図7により説明し、実施例2の変形例を
図8により説明し、実施例3を
図9により説明し、実施例4を
図10により説明する。以下、同効の部位には同一符号を付して説明の重複を避ける。
【実施例0012】
本発明の実施例1を説明する。
図1は、蓄電システムの概略を例示する機能ブロック図である。
図1の蓄電システムは、車両1と、き電線2と、蓄電装置を備えた変電所(以下、「本変電所」ともいう)3Aと、より構成される。なお、
図1に示す実施例1,2の本変電所3Aのほか、
図9に示す実施例3の本変電所3Bと、
図10に示す実施例4の本変電所3Cと、を例示するが、これらを区別する必要が無い場合は、まとめて本変電所3と表記する。
【0013】
本変電所3Aは、整流器10と、蓄電装置20と、制御装置30と、を備える。本変電所3Aは、き電線2を介して、車両1へ力行電力を供給する一方で、回生電力を吸収する役目もある。その役目を果たせない場合が課題となり、それを本発明で解決する。なお、蓄電装置20は、どこか任意の位置に配設されて、通信により充放電制御できれば、必ずしも本変電所3Aの敷地内である必要はない。ただし、本変電所3Aに蓄電装置20が属する標準的な形態を例示している。
【0014】
整流器10は、電力系統4から受電した電力を直流に変換する。本変電所3Aと車両1との間で、き電電流50が授受される。蓄電装置20は、検出されたき電電流50の方向及び値に応じ、制御条件に基づいて充放電する。き電電流50の方向は、力行電力の供給方向を正とし、回生電力の吸収方向を負とする。なお、電力系統4は、電力事業者のみが提供するとは限らず、鉄道事業者が自前で所有する発電所もある。その場合、力率改善義務等の公共的な制約条件が緩和される可能性もある。
【0015】
制御装置30は、回生失効を防止するとともに、省エネに寄与する制御条件に基づいて、蓄電装置20を充放電制御する。
【0016】
蓄電システムは、電車1の制動力で発生する回生電力をき電線2経由で地上の蓄電装置20に貯蔵し、その貯蔵電力を電車1の力行時に供給する、という動作を繰り返して電力を有効利用する。
【0017】
実際の蓄電システムは、き電側の電力授受用として一対をなす接続端のうち、一方のP側が、不図示の直流高速度遮断器盤を介してき電線2に接続され、他方のN側が、不図示の断路器盤を介して不図示のレールに接続されている。このような蓄電システムは、省エネ機能、及び回生失効防止機能のみならず、電力系統4の停電時等の緊急時に、本変電所3Aの出力を補完する機能もある。
【0018】
しかしながら、出力特性に電圧変動の小さいサイリスタ整流器10を適用した本変電所3Aによるき電区間では、従来の充放電制御が適切に動作しないという課題があった。そこで、本発明により、この課題を解決した。
【0019】
制御装置30は、蓄電装置20の充放電指令値60を決定することにより、充放電制御する。充放電指令値60は、変電所電流(以下、「き電電流」又は「負荷の大きさ」)50と、き電電圧40と、に基づいて決定される。き電電流50は、き電線2と、本変電所3Aと、の接続点で観測される。
【0020】
図2は、
図1におけるサイリスタ整流器10の出力特性を例示するグラフであり、横軸に出力電流Iを示し、縦軸に出力電圧Vを示している。整流器10は、力行電力が発生した場合、定格電流Irまでは無負荷電圧V0で電流を供給し、定格電流Irを超えると電流の供給量に応じて電圧が低下する。また、回生電力が発生した場合、それを電力系統4側へ吸収するような逆方向には電流を流さないため、整流器10の出力側の電圧Vが上昇する。
【0021】
図3は、
図1における制御装置30を例示する機能ブロック図である。制御装置30は、目標電圧切替器301と、電圧調整器303,306と、切替器308と、を備える。目標電圧切替器301は、き電電流50を閾値電流(第1所定値)Itと比較して放電電圧指令値302を適切に出力する。
【0022】
電圧調整器303は、放電電力指令値304を決定する。電圧調整器306は、充電電力指令値307を決定する。切替器308は、下表1に示す判定方法により、判定された適切な動作モードを充放電指令値60として出力する。
【0023】
制御装置30は、以下の条件により、充放電指令値60を決定する。き電電流50が閾値電流It以上の場合、制御装置30は、無負荷電圧V0よりも大きい電圧VD1を、目標電圧切替器301から放電電圧指令値302として出力する。
【0024】
き電電流50が閾値電流It未満の場合、制御装置30は、無負荷電圧V0よりも小さい電圧VD0を、目標電圧切替器301から放電電圧指令値302として出力する。
【0025】
また、電圧調整器303は、放電電圧指令302と、き電電圧40と、の差が0になるように、放電電力指令値304を決定する。電圧調整器306は、充電電圧指令値305と、き電電圧40と、の差が0になるように充電電力指令値307を決定する。切替器308は、放電と、充電と、待機と、のうち何れかを三者択一して判定し、判定された適切な動作モードを充放電指令値60として出力する。
【0026】
切替器308は、動作モードが放電の場合、放電電力指令値304を、充放電指令値60として出力する。切替器308は、動作モードが充電の場合、充電電力指令値307を、充放電指令値60として出力する。切替器308は、動作モードが待機の場合、ゼロを充放電指令値60として出力する。切替器308の動作モードの判定方法の一例は、下表1に示すとおりである。
【0027】
図3の制御装置30において、放電電力指令値304と充電電力指令値307は、それぞれ正の場合に蓄電装置20を放電、負の場合に蓄電装置20を充電させるような指標であることから、両者の符号により動作モードを判定する。
【0028】
具体的には、放電電力指令値304が正、かつ、充電電力指令値が正の場合には放電、充電電力指令値307が負、かつ充電電力指令値が負の場合には充電、それ以外の場合は待機とする。
【0029】
【0030】
図4は、
図1における蓄電装置20の出力特性を例示するグラフであり、横軸に充放電電流Dを示し、縦軸に蓄電装置電圧Bを示している。充電時には蓄電装置電圧Bが蓄電装置20の充電上限電圧(第2所定値)VCで一定となるように充電し、蓄電装置20の充放電電流Dが最大充電電流ICに達したならば、蓄電装置電圧Bが充電上限電圧VCよりも上昇する。
【0031】
放電時の蓄電装置20は、き電電流50に応じた2種類の特性を示す。き電電流50が閾値電流It未満の低負荷時に、蓄電装置20は、第1出力特性401のように、蓄電装置電圧Bが低めの電圧VD0以下の場合に放電する。
【0032】
さらに、蓄電装置20の充放電電流Dが最大放電電流IDの重負荷に達したならば、蓄電装置電圧Bは、電圧VD0よりも下降する。
【0033】
また、き電電流50が閾値電流It以上の重負荷時、蓄電装置20は、第2出力特性402のように、蓄電装置電圧Bが高めの電圧VD1以下の場合に放電する。蓄電装置20の充放電電流Dが最大放電電流IDに達したならば、き電電圧40が高めの電圧VD1よりも下降する。
【0034】
図5は、
図1の蓄電システムの動作波形を例示するグラフであり、横軸に時間tを示し、縦軸に力行/回生電流(車両電流)A、き電電圧40、整流器出力電流I、蓄電装置電流D、及び、き電電流50を示している。なお、回生電流Aと、力行電流Aと、不図示の補機電流Aと、これら全部をまとめた車両電流Aと、何れも共通の符号Aで
図5に示している。
【0035】
また、補機電流Aについては、回生電力をいくらかでも消費して回生失効防止させる利用も考えられるが、そのためのオプション機能が煩雑になるので、ここでは便宜上、補機電流Aは同一タイミングで力行電流Aに含まれるか、又は無いものとみなして、説明を簡略化する。同様の理由で、本変電所3Aのき電区間に在線する車両1は、1編成のみとする。
【0036】
補機電流A及び力行電流Aは、本変電所3A→き電線2→車両1へと供給される。回生電流Aは、車両1→き電線2→本変電所3Aへと戻入される。き電電圧40は、本変電所3Aと、き電線2と、をつなぐ接続点における電圧である。
【0037】
き電電圧40は、説明の便宜上の基準として、力行/回生電流Aの無い無負荷電圧V0を想定し、これに対して、回生時は正に傾くが、力行時であっても負には傾かない。
【0038】
整流器出力電流Iは、整流器10→き電線2へと供給される電流であり、逆方向に戻入されることはない。整流器出力電流Iは、電力系統4から受電した電力の消費につながるので、少ないほど省エネに寄与したことになる。
【0039】
極論すれば、回生電力の全てを貯蔵し、その電力で力行分を賄えるなら、整流器出力電流Iは不要となり、電力系統4から受電して消費する電力も無くせる。無くせないまでも、不図示の補機消費分及び各部のロス分を補うだけに極小化して省エネに寄与できる。
【0040】
蓄電装置電流Dは、蓄電装置20と、き電線2との間を何れかの方向に流れる電流であり、負方向で充電し、正方向で放電する。負方向で充電中の蓄電装置電流Dの波形と、回生電流Aの波形と、は同一形状であるが、回生電力の全てが蓄電装置20に貯蔵されるわけではなく、所定の条件を満たす必要がある。
【0041】
図1及び
図5において、き電区間には車両1のみ在線する状況を想定しているため、き電電流50は、車両1の車両電流Aと同一である。き電区間に複数の車両1が在線する場合、同一時間における複数の車両1それぞれ不図示の補機電流A、及び力行電流Aの合計を、回生電流Aの合計で相殺した総量値が、き電電流50となる。
【0042】
図5は、上述した各電圧及び電流それぞれの時系列波形を示しており、以下、時刻t0~t6の順に説明する。時刻t0において、車両1が回生を開始し、き電線2へ回生電流Aが流れると、き電電圧40が上昇する。き電電圧40が蓄電装置20の充電上限電圧(第2所定値)VC(
図4)に達すると、蓄電装置20が力行電流Aを充電する。
【0043】
時刻t1において、車両1が回生電流の供給を停止すると、き電電圧40が無負荷電圧V0に安定し、蓄電装置20は充電を停止する。時刻t2において、車両1が力行を開始し、力行電流が流れると、整流器10が電線2を経由して車両1へ力行電流を供給する。時刻t3において、き電電流50が閾値電流Itを上回ると、蓄電装置20が電圧VD1(
図6も参照)で放電を開始し、き電電圧40がVD1となり、整流器10は電流の供給を停止する。
【0044】
時刻t4において、蓄電装置20の蓄電装置電流Dが出力の上限に達すると、き電電圧40が無負荷電圧V0に下降し、蓄電装置20の電流だけでは不足する分を整流器10が供給する。時刻t5において、減少した力行電流の全てを蓄電装置20の放電電流だけで賄えるようになると、整流器10は出力を停止し、き電電圧40は、蓄電装置20の放電電圧であるVD1となる。
【0045】
時刻t6において、力行電流Aが閾値電流Itを下回ると蓄電装置20は放電を停止し、き電電圧40が無負荷電圧V0に下降、蓄電装置20に代わって、整流器10が力行電流Aを供給する。以上のように、
図1~
図5の本変電所3Aは、出力時の電圧変動の小さい整流器10を採用する。
【0046】
本変電所3Aから電力供給するき電区間に車両1を走行させる蓄電システムによれば、車両1の回生と力行に適応した蓄電装置20の充放電を実現し、回生電力を有効活用するとともに、回生失効を防止できる。