(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178530
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】無線通信装置、重心制御方法及び重心制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/38 20150101AFI20231211BHJP
H04B 17/318 20150101ALI20231211BHJP
【FI】
H04B1/38
H04B17/318
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091268
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】宮原 康介
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011AA06
5K011EA03
5K011KA13
(57)【要約】
【課題】無線通信装置の無線通信の品質を改善することが可能な汎用性の高い無線通信装置、重心制御方法及び重心制御プログラムを提供すること。
【解決手段】無線通信装置1は、無線通信装置1の重心位置を変更する重心変更機構20と、重心変更機構20を制御する機構制御部105と、無線通信装置1が他の無線通信装置から受信した第1の電波の強度と、第1の電波よりも後に無線通信装置1が他の無線通信装置から受信した第2の電波の強度とを算出する電波強度算出部101と、第2の電波の強度が第1の電波の強度よりも小さいか判定する電波強度判定部102とを備える。機構制御部105は、第2の電波の強度が第1の電波の強度よりも小さいと判定された場合、重心変更機構20を制御して、無線通信装置1の現在の重心位置を、既定の他の重心位置に変更する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置であって、
前記無線通信装置の重心位置を変更する重心変更機構と、
前記重心変更機構を制御する機構制御部と、
前記無線通信装置が他の無線通信装置から受信した第1の電波の強度と、前記第1の電波よりも後に前記無線通信装置が前記他の無線通信装置から受信した第2の電波の強度とを算出する電波強度算出部と、
前記第2の電波の強度が前記第1の電波の強度よりも小さいか判定する電波強度判定部とを備え、
前記機構制御部は、前記第2の電波の強度が前記第1の電波の強度よりも小さいと判定された場合、前記重心変更機構を制御して、前記無線通信装置の現在の重心位置を、既定の他の重心位置に変更する、
無線通信装置。
【請求項2】
前記機構制御部は、前記無線通信装置の重心位置が既定の重心位置の全てに変更された後、前記第2の電波の強度が前記第1の電波の強度よりも小さくなったとき、前記重心変更機構を制御して、前記無線通信装置の現在の重心位置を、初期の重心位置に戻す、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記重心変更機構は、少なくとも1つの重りを備えており、
前記機構制御部は、前記重りを、既定の重心位置に対応する既定の重り位置に移動させることにより、前記無線通信装置の重心位置を前記既定の重心位置に変更する、請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記重心変更機構は、前記重りが配置されるプレートを備えており、
前記機構制御部は、前記プレートを傾斜させることにより、前記重りを、前記既定の重心位置に対応する既定の重り位置に移動させて、前記無線通信装置の重心位置を前記既定の重心位置に変更する、請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記無線通信装置の重心位置の選択の有無を示す管理情報に基づいて、既定の重心位置の中から未選択の重心位置を選択する重心位置選択部を備え、
前記機構制御部は、前記第2の電波の強度が前記第1の電波の強度よりも小さいと判定された場合、前記重心変更機構を制御して、前記無線通信装置の現在の重心位置を、前記重心位置選択部によって選択された重心位置に変更する、請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記無線通信装置の形状は球形であり、
前記重心変更機構は、
前記重りが収容された収容部と、
前記既定の重り位置に移動した前記重りを初期の重り位置に向かって搬送する搬送路と
を備えており、
前記機構制御部は、前記収容部を傾斜させることにより、前記重りを、前記既定の重心位置に対応する既定の重り位置に移動させて、前記無線通信装置の重心位置を前記既定の重心位置に変更する、請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項7】
コンピュータが、
無線通信装置が他の無線通信装置から受信した第1の電波の強度と、前記第1の電波よりも後に前記無線通信装置が前記他の無線通信装置から受信した第2の電波の強度とを算出するステップと、
前記第2の電波の強度が前記第1の電波の強度よりも小さいか判定するステップと、
前記第2の電波の強度が前記第1の電波の強度よりも小さいと判定された場合、前記無線通信装置の重心位置を変更する重心変更機構を制御して、前記無線通信装置の現在の重心位置を、既定の他の重心位置に変更するステップと
を実行する、重心制御方法。
【請求項8】
コンピュータに対し、
無線通信装置が他の無線通信装置から受信した第1の電波の強度と、前記第1の電波よりも後に前記無線通信装置が前記他の無線通信装置から受信した第2の電波の強度とを算出するステップと、
前記第2の電波の強度が前記第1の電波の強度よりも小さいか判定するステップと、
前記第2の電波の強度が前記第1の電波の強度よりも小さいと判定された場合、前記無線通信装置の重心位置を変更する重心変更機構を制御して、前記無線通信装置の現在の重心位置を、既定の他の重心位置に変更するステップと
を実行させる、重心制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置、重心制御方法及び重心制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信装置の無線通信の品質を改善する種々の技術が提案されている。このような技術の一例として、特許文献1が開示する無線LAN(Local Area Network)アクセスポイントシステムを開示する。このアクセスポイントシステムでは、アクセスポイントが測定した無線端末の電波強度が規定値未満になると、無線端末及び無線LANアクセスポイントそれぞれが、位置情報を検出する。サーバは、無線端末の電波強度が電波強度の許容範囲に収まる位置をアクセスポイントの移動位置情報として算出する。アクセスポイントは、レールに沿ってアクセスポイントを移動させる移動部を備えており、サーバが算出した移動位置情報の示す位置に移動することにより、無線LAN環境が悪化した場所の無線LAN環境を改善すること意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1が開示するアクセスポイントシステムは、アクセスポイントが移動可能な場所がレールに沿った位置に制限されるため、汎用性が低いという問題があった。
【0005】
本開示の目的の1つは、上述した課題を鑑み、無線通信装置の無線通信の品質を改善することが可能な汎用性の高い無線通信装置、重心制御方法及び重心制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る無線通信装置は、
無線通信装置の重心位置を変更する重心変更機構と、
重心変更機構を制御する機構制御部と、
無線通信装置が他の無線通信装置から受信した第1の電波の強度と、第1の電波よりも後に無線通信装置が他の無線通信装置から受信した第2の電波の強度とを算出する電波強度算出部と、
第2の電波の強度が第1の電波の強度よりも小さいか判定する電波強度判定部とを備え、
機構制御部は、第2の電波の強度が第1の電波の強度よりも小さいと判定された場合、重心変更機構を制御して、無線通信装置の現在の重心位置を、既定の他の重心位置に変更する。
【0007】
一実施形態に係る重心制御方法は、コンピュータが、
無線通信装置が他の無線通信装置から受信した第1の電波の強度と、第1の電波よりも後に無線通信装置が他の無線通信装置から受信した第2の電波の強度とを算出するステップと、
第2の電波の強度が第1の電波の強度よりも小さいか判定するステップと、
第2の電波の強度が第1の電波の強度よりも小さいと判定された場合、無線通信装置の重心位置を変更する重心変更機構を制御して、無線通信装置の現在の重心位置を、既定の他の重心位置に変更するステップとを実行する。
【0008】
一実施形態に係る重心制御プログラムは、コンピュータに対し、
無線通信装置が他の無線通信装置から受信した第1の電波の強度と、第1の電波よりも後に無線通信装置が他の無線通信装置から受信した第2の電波の強度とを算出するステップと、
第2の電波の強度が第1の電波の強度よりも小さいか判定するステップと、
第2の電波の強度が第1の電波の強度よりも小さいと判定された場合、無線通信装置の重心位置を変更する重心変更機構を制御して、無線通信装置の現在の重心位置を、既定の他の重心位置に変更するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、無線通信装置の無線通信の品質を改善することが可能な汎用性の高い無線通信装置、重心制御方法及び重心制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る重心変更機構を示す斜視図である。
【
図4】無線通信装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図5】無線通信装置の重心位置の制御方法を示す図である。
【
図6】無線通信装置が有する主要な構成要素を示すブロック図である。
【
図7】第2の実施形態に係る重心変更機構を示す正面図である。
【
図8】第2の実施形態に係る重心変更機構の垂直断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、第1の実施形態について説明する。
図1は、無線通信装置1の構成を示すブロック図である。無線通信装置1の具体例として、アクセスポイントやモバイルルータ、スマートフォン、タブレット端末、ノートPC、ウェアラブル端末等の無線通信装置が挙げられる。無線通信装置1は、無線LAN等の無線通信を介して、無線LANの子機等の他の無線通信装置と相互にデータ通信を行うことができる。例えば、無線通信装置1がアクセスポイントである場合、他の無線通信装置は、無線LANの子機やルータとし得る。また、無線通信装置1がモバイルルータである場合、他の無線通信装置は、基地局や無線LANの子機とし得る。また、無線通信装置1がスマートフォン、タブレット端末、ノートPC、ウェアラブル端末である場合、他の無線通信装置は、基地局やルータ、アクセスポイントとし得る。
【0012】
無線通信装置1は、制御装置10と、重心変更機構20と、無線通信インタフェース30と、記憶装置40とを備える。制御装置10は、無線通信装置1が備える装置や電子回路を制御する装置である。制御装置10の具体例としては、プロセッサ、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の半導体集積装置が挙げられる。プロセッサには、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)等が含まれる。無線通信装置1及び制御装置10は、コンピュータに相当する。
【0013】
制御装置10は、一実施形態に係る重心制御プログラムを実行することにより、一実施形態に係る重心制御方法を実行する。重心制御プログラムには、電波強度算出部101、電波強度判定部102、重心位置選択部103、管理情報更新部104及び機構制御部105が含まれる。
【0014】
電波強度算出部101は、無線通信装置1が受信した第1の電波の強度と、第1の電波よりも後に無線通信装置1が受信した第2の電波の強度とを算出するプログラムである。
【0015】
電波強度判定部102は、第2の電波の強度が第1の電波の強度よりも小さいか否か判定するプログラムである。
【0016】
重心位置選択部103は、無線通信装置1の初期の重心位置以外の既定の他の重心位置の1つを選択するプログラムである。無線通信装置1の重心位置は、重心変更機構20が備えた重りの位置(以下、「重り位置」とする。)に対応する。無線通信装置1の初期の重心位置は、重心変更機構20の初期の重り位置に対応する。無線通信装置1の既定の他の重心位置は、初期の重り位置以外の既定の重り位置に対応する。重心位置選択部103は、無線通信装置1の重心位置の選択の有無を示す管理情報に基づいて、既定の重心位置の中から未選択の重心位置を選択する。既定の重心位置が複数ある場合、重心位置選択部103は、既定の順序に従って未選択の重心位置を選択することができる。また、重心位置選択部103は、ランダムに未選択の重心位置を選択することもできる。
【0017】
管理情報更新部104は、重心位置の管理情報を更新するプログラムである。
図2は、管理情報の一例を示す図である。管理情報には、無線通信装置1の既定の重心位置毎の管理情報が含まれる。
図2に示す通り、管理情報は、既定の重心位置毎の選択の有無を示す。
【0018】
機構制御部105は、重心変更機構20を制御して、無線通信装置1の重心位置を変更するプログラムである。無線通信装置1の重心位置には、初期の重心位置と、初期の重心位置以外の1以上の既定の重心位置が含まれる。機構制御部105は、重心変更機構20を制御して、無線通信装置1の現在の重心位置を、初期の重心位置又は既定の重心位置に変更する。
【0019】
重心変更機構20は、無線通信装置1の重心位置を変更する機構である。
図3は、第1の実施形態に係る重心変更機構20を示す斜視図である。重心変更機構20は、重り21と、プレート22と、支持部材23と、伸縮部材24とを備える。
【0020】
重心変更機構20は、重り21を移動させることより、無線通信装置1の重心位置を変更する。重心変更機構20は、重り21を、初期の重り位置から、既定の重心位置に対応する既定の重り位置WP1~WP4のいずれかに移動させることにより、無線通信装置1の重心位置を初期の重心位置から既定の重心位置に変更することができる。初期の重り位置は、重り21がプレート22上の全方向に移動可能な位置、例えば、プレート22の中心位置等であることが好ましい。既定の重り位置WP1~WP4は、無線通信装置1を携帯する利用者が、重り21が或る重り位置から別の重り位置に移動したことを感知できる位置とすることが好ましい。また、重心変更機構20は、重り21を、現在の重り位置から初期の重り位置又は既定の重り位置WP1~WP4のいずれかに移動させることにより、無線通信装置1の重心位置を、初期の重心位置又は既定の他の重心位置に変更することができる。
【0021】
重り21は、無線通信装置1の重心を変更可能な重りである。重り21は、プレート22上に配置され、プレート22上を動くことができる。なお、
図3に示す重心変更機構20は、1つの重りを有するが、重心変更機構20は、複数の重りを有してもよい。
【0022】
プレート22は、重り21が配置される部材である。プレート22は、支持部材23によって支持される。プレート22は、支持部材23を支点に傾斜し得る。支持部材23は、プレート22の重心、例えば、プレート22の下面の中心に取り付けられることが好ましい。
【0023】
また、プレート22の端部には、伸縮部材24が取り付けられる。各伸縮部材24は、機構制御部105の制御に従って個別に伸縮することができる。各伸縮部材24が伸縮することにより、プレート22が傾斜し、重り21が、無線通信装置1の重心位置に対応するプレート22上の重り位置WP1~WP4のいずれかに移動する。その結果、無線通信装置1の重心位置が変更される。換言すると、重心変更機構20は、プレート22を傾斜させることにより、無線通信装置1の重心位置を変更する。
【0024】
なお、
図3に示すプレート22の平面形状は四角形であるが、他の実施形態では、プレート22の平面形状を、他の多角形又は円形としてもよい。また、
図3に示すプレート22には、4つの伸縮部材24が取り付けられるが、任意の数の伸縮部材24をプレート22に取り付けてもよい。さらに、
図3に示す例では、プレート22の角部に伸縮部材24が取り付けられるが、プレート22の各角部の間に伸縮部材24を取り付けてもよい。
【0025】
無線通信インタフェース30は、アンテナ(図示せず)を介した無線通信を行う装置である。無線通信には、無線LAN通信やBluetooth(登録商標)通信等の通信が含まれる。無線通信インタフェース30は、受信回路及び送信回路を備える。受信回路は、他の無線通信装置からアンテナを介して種々のデータを受信すると、これらのデータを制御装置10に提供する。送信回路は、制御装置10の制御下で、アンテナを介して種々のデータを送信する。
【0026】
記憶装置40は、本発明の重心制御プログラム及び無線通信装置1の重心位置の管理情報等の種々のデータが保存される記憶装置である。
【0027】
図4は、無線通信装置1が実行する処理を示すフローチャートである。ステップS1では、無線通信装置1が、他の無線通信装置が発した電波を受信する。ステップS2では、電波強度算出部101が、ステップS1で受信した電波の強度を算出する。ステップS3では、重心位置選択部103が、初期の重心位置以外の既定の他の重心位置の1つを選択する。ステップS4では、機構制御部105が、重心変更機構20を制御して、無線通信装置1の重心位置を、ステップS3で選択した重心位置に変更する。
【0028】
ステップS5では、無線通信装置1が、他の無線通信装置が発した電波を受信する。ステップS6では、電波強度算出部101が、ステップS5で受信した電波の強度を算出する。ステップS7では、電波強度判定部102が、算出された後続の電波の強度が、算出された先行の電波の強度よりも小さいか否か判定する。先行の電波の強度は、第1の電波の強度に相当する。また、後続の電波の強度は、第2の電波の強度に相当する。
【0029】
具体的は、ステップS7が初めて実行される場合、すなわち、1回目のステップS7では、電波強度判定部102は、ステップS6で算出された後続の電波の強度が、ステップS2で算出された先行の電波の強度よりも小さいか否か判定する。ステップS7が再び実行される場合、すなわち、N(N=2以上の整数)回目以降のステップS7では、電波強度判定部102は、N回目のステップS6で算出された後続の電波の強度が、N-1回目のステップS6で算出された先行の電波の強度よりも小さいか否か判定する。
【0030】
後続の電波の強度が先行の電波の強度以上である場合(NO)、ステップS5に処理が戻る。一方、後続の電波の強度が先行の電波の強度よりも小さいと判定された場合(YES)、ステップS8に処理が分岐する。
【0031】
ステップS8では、管理情報更新部104が、選択されている重心位置の管理情報を更新する。ステップS9では、重心位置選択部103が、重心位置の管理情報を参照し、未だ選択されていない重心位置があるか否か判定する。未だ選択されていない重心位置がある場合(YES)、ステップS10で重心位置選択部103は、重心位置の管理情報を参照し、未だ選択されていない重心位置の中から1つを選択する。ステップS11では、機構制御部105が、重心変更機構20を制御して、無線通信装置1の重心位置を、ステップS10で選択した重心位置に変更し、ステップS5に処理が戻る。
【0032】
一方、ステップS9において未だ選択されていない重心位置がない場合(NO)、ステップS12で機構制御部105が、重心変更機構20を制御して、無線通信装置1の重心位置を、初期の重心位置に変更し、
図4の処理が終了する。換言すると、無線通信装置1の重心位置が既定の重心位置の全てに変更された後、後続の電波の強度が先行の電波の強度よりも小さくなったとき、機構制御部105は、重心変更機構20を制御して、無線通信装置1の現在の重心位置を、初期の重心位置に戻す。
【0033】
図5は、無線通信装置1の重心位置の制御方法を示す図である。
図5は、重り21及びプレート22の平面を示す。本実施形態では、
図5の左上に示すように、無線通信装置1の重心位置が変更される前では、重り21は、初期の重り位置であるプレート22の中心位置に配置される。このときの無線通信装置1の重心位置が、初期の重心位置に相当する。
【0034】
次に、機構制御部105は、重心変更機構20を制御して、第4の重心位置に対応する重り位置WP4に重り21を移動させる。このとき、無線通信装置1を携帯する利用者は、重り21が初期の重り位置から重り位置WP4に移動したこと、すなわち、無線通信装置1の重心が初期の重心位置から第4の重心位置に変更されたことを把握できる。利用者は、変更された重心位置に従って移動することができる。
【0035】
利用者が、移動を続けることにより、無線通信装置1が他の無線通信装置から受信した電波の強度RSSIが-80dBmから-85dBmに減少した場合、機構制御部105は、重心変更機構20を制御して、第1の重心位置に対応する重り位置WP1に重り21を移動させる。このとき、無線通信装置1を携帯する利用者は、重り21が重り位置WP4から重り位置WP1に移動したこと、すなわち、無線通信装置1の重心が第4の重心位置から第1の重心位置に変更されたことを把握できる。利用者は、変更された重心位置に従って移動することができる。
【0036】
利用者が、移動を続けることにより、電波の強度RSSIが-85dBmから-70dBmに増加した場合、機構制御部105は、無線通信装置1の重心位置を変更しない。この後、利用者の更なる移動によって電波の強度RSSIが-70dBmから-75dBmに減少した場合、機構制御部105は、重心変更機構20を制御して、第3の重心位置に対応する重り位置WP3に重り21を移動させる。このとき、無線通信装置1を携帯する利用者は、重り21が重り位置WP1から重り位置WP3に移動したこと、すなわち、無線通信装置1の重心が第1の重心位置から第3の重心位置に変更されたことを把握できる。利用者は、変更された重心位置に従って移動することができる。
【0037】
利用者が、移動を続けることにより、電波の強度RSSIが-75dBmから-80dBmに減少した場合、機構制御部105は、重心変更機構20を制御して、第2の重心位置に対応する重り位置WP2に重り21を移動させる。このとき、無線通信装置1を携帯する利用者は、重り21が重り位置WP3から重り位置WP2に移動したこと、すなわち、無線通信装置1の重心が第3の重心位置から第2の重心位置に変更されたことを把握できる。利用者は、変更された重心位置に従って移動することができる。
【0038】
利用者が、移動を続けることにより、電波の強度RSSIが-80dBmから-40dBmに増加した場合、機構制御部105は、無線通信装置1の重心位置を変更しない。この後、利用者の更なる移動によって電波の強度RSSIが-40dBmから-45dBmに減少した場合、機構制御部105は、重心変更機構20を制御して、初期の重心位置に対応する初期の重り位置に重り21を移動させる。このとき、無線通信装置1を携帯する利用者は、重り21が重り位置WP2から初期の重り位置に移動したこと、すなわち、無線通信装置1の重心が第2の重心位置から初期の重心位置に変更されたことを把握でき、移動を止めることができる。
【0039】
図6は、無線通信装置1が有する主要な構成要素を示すブロック図である。無線通信装置1は、電波強度算出部101と、電波強度判定部102と、機構制御部105と、重心変更機構20とを備える。電波強度算出部101は、無線通信装置1が他の無線通信装置から受信した第1の電波の強度と、第1の電波よりも後に無線通信装置1が当該他の無線通信装置から受信した第2の電波の強度とを算出する。電波強度判定部102は、第2の電波の強度が第1の電波の強度よりも小さいか判定する。機構制御部105は、第2の電波の強度が第1の電波の強度よりも小さいと判定された場合、重心変更機構20を制御して、無線通信装置1の現在の重心位置を、既定の他の重心位置に変更する。
【0040】
無線通信装置1を携帯した利用者が、変更された無線通信装置1の重心位置に従って移動すると、電波発信源である他の無線通信装置と無線通信装置1の距離の変化に伴い、無線通信装置1が他の無線通信装置から受信した電波の強度が変化する。利用者の移動に伴い無線通信装置1が受信した電波の強度は大きくなった場合、無線通信装置1の重心位置は変更されないため、利用者は、同じ方向に移動を続ける。
【0041】
一方、無線通信装置1が他の無線通信装置から受信した電波の強度が小さくなった場合、無線通信装置1の重心位置が他の重心位置に変更される。そして、利用者は、変更された無線通信装置1の重心位置に従って移動する。このように無線通信装置1の重心位置の変更と利用者の移動を繰り返すことにより、無線通信装置1が他の無線通信装置から受信した電波の強度が、初期の状態よりも大きい位置に利用者を誘導することができる。その結果、無線通信装置1と当該他の無線通信装置との間の無線通信の品質を改善することができる。
【0042】
特に、無線LAN通信におけるアクセスポイントを無線通信装置1として採用した場合、アクセスポイントが、子機やルータ等の他の無線通信装置から受信した電波強度が、初期の状態よりも大きい位置に、利用者を誘導することができる。そのため、アクセスポイントと他の無線通信装置との間の無線通信の品質を改善することができる。
【0043】
また、上述した実施形態では、機構制御部105は、無線通信装置1の重心位置が既定の重心位置の全てに変更された後、第2の電波の強度が第1の電波の強度よりも小さくなったとき、重心変更機構20を制御して、無線通信装置1の現在の重心位置を、初期の重心位置に戻す。これにより、無線通信装置1を携帯した利用者は、無線通信装置1の重心位置が初期の重心位置に戻ったことを認識でき、無線通信装置1が他の無線通信装置から受信した電波の強度が初期状態よりも大きい位置に到着したことを把握することができる。
【0044】
重心制御プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。重心制御プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0045】
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、無線通信装置1は球形状をしており、無線通信装置1の重心位置が変わることによって転がることができる。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0046】
図7は、第2の実施形態に係る球形状の無線通信装置1が備える重心変更機構200を示す正面図である。
図7に示すように、重心変更機構200は、支持部材23と、伸縮部材24と、収容部25と、搬送路26とを備える。なお、重心変更機構200を背面方向及び側面方向から見た様子は、
図7と同じである。
【0047】
収容部25は、内部に重りが収容される部材である。収容部25には、支持部材23及び伸縮部材24が接続される。収容部25は、機構制御部105の制御によって伸縮部材24が伸縮することにより、収容部25と支持部材23の接続部を支点として傾斜し得る。
【0048】
搬送路26は、ローラモータ等の搬送手段を内部に備えており、既定の重り位置に移動した重りを初期の重り位置に向かって搬送する。
図7には、3つの搬送路26が示されているが、重心変更機構200は、初期の重り位置以外の既定の重り位置の数に応じた数の搬送路26を備える。本実施形態では、初期の重り位置は、収容部25と支持部材23の接続部の位置とすることが好ましい。
【0049】
図8は、第2の実施形態に係る重心変更機構200の垂直断面を示す図である。機構制御部105が収容部25を傾斜させることにより、収容部25内の重りが、重心位置選択部103によって選択された重心位置に対応する既定の重り位置に移動する。これにより、無線通信装置1の重心位置が、選択された重心位置に対応する既定の重り位置に変わり、無線通信装置1が、選択された重心位置に対応する方向に転がり始める。具体的には、無線通信装置1は、初期の重りの位置と、重り21が移動した先の既定の重り位置とを結ぶ直線の方向に移動する。
【0050】
次いで、重り21が搬送路26内に入ると、搬送路26が重り21を初期の重り位置WP0に向かって搬送する。重り21が搬送路26から搬出されると、重り21は再び、重心位置選択部103によって選択された重心位置に対応する既定の重り位置に移動する。
【0051】
重り21が搬送路26の内部に入ってから搬送路26の外部へ搬出されるまでの搬送時間は、無線通信装置1の回転の周期に基づいて定めることができる。例えば、重り21の搬送時間として、無線通信装置1が一回転するのに要する時間を採用することができる。無線通信装置1の回転に伴い、重心変更機構200も回転する。そのため、重り21の搬送時間として、無線通信装置1が一回転するのに要する時間を採用することにより、無線通信装置1の外部から見た重心変更機構200の傾斜状態が、搬送路26による重り21の搬送の前後で同じになる。その結果、球形状の無線通信装置1が、重心位置選択部103によって選択された重心位置に対応する方向にスムーズに回転することができる。
【0052】
本発明は上述した実施形態に限られたものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 無線通信装置
10 制御装置
101 電波強度算出部
102 電波強度判定部
103 重心位置選択部
104 管理情報更新部
105 機構制御部
20,200 重心変更機構
21 重り
22 プレート
23 支持部材
24 伸縮部材
25 収容部
26 搬送路
30 無線通信インタフェース
40 記憶装置
WP0~WP4 重り位置