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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178547
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091291
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 征児
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA21
2H033AA31
2H033BA25
2H033BA27
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】 ヒータの電極と接触する給電端子や給電ケーブルをフィルムの内部空間に効率よく配置した定着装置を提供する。
【解決手段】 第1の給電端子の結合部は、長手方向においてヒータの一方の端部に向かう方向に向いており、第2の給電端子の結合部は、長手方向において前記ヒータの他方の端部に向かう方向に向いており、第1の給電端子の結合部に結合する給電ケーブルは、ヒータの一方の端部に向かって延びており、第2の給電端子の結合部に結合する給電ケーブルは、ヒータの他方の端部に向かう途中で曲げられてヒータの一方の端部に向かって延びている。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフィルムと、
前記フィルムの内部空間に配置されているヒータであって、基板と、前記基板に設けられており前記ヒータの長手方向に並んでいる複数の発熱ブロックと、を有するヒータと、
前記複数の発熱ブロックの各々の電極に接触する複数の給電端子と、
前記複数の給電端子の各々に接続されている複数の給電ケーブルと、
を有し、前記フィルムを介した前記ヒータの熱で記録材に形成されたトナー画像を記録材に加熱定着する定着装置において、
前記複数の給電端子の各々は、前記電極に接触する接点部と、前記給電ケーブルと結合する結合部と、を有し、
前記複数の給電端子は前記長手方向において互いに隣り合う第1の給電端子と第2の給電端子を有し、
前記第1の給電端子の前記結合部は、前記長手方向において前記ヒータの一方の端部に向かう方向に向いており、前記第2の給電端子の前記結合部は、前記長手方向において前記ヒータの他方の端部に向かう方向に向いており、
前記第1の給電端子の前記結合部に結合する前記給電ケーブルは、前記ヒータの前記一方の端部に向かって延びており、
前記第2の給電端子の前記結合部に結合する前記給電ケーブルは、前記ヒータの前記他方の端部に向かう途中で曲げられて前記ヒータの前記一方の端部に向かって延びていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記複数の給電端子は、前記長手方向において互いに隣り合う第3の給電端子と第4の給電端子を有し、
前記第3の給電端子の前記結合部は、前記長手方向において前記ヒータの前記一方の端部に向かう方向に向いており、前記第4の前記給電端子の前記結合部は、前記長手方向において前記ヒータの前記他方の端部に向かう方向に向いており、
前記第3の給電端子の前記結合部に結合する前記給電ケーブルは、前記ヒータの前記一方の端部に向かう途中で曲げられて前記ヒータの前記他方の端部に向かって延びており、
前記第4の給電端子の前記結合部に結合する前記給電ケーブルは、前記ヒータの前記他方の端部に向かって延びていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ヒータは、前記第1乃至第4の給電端子が各々接触する第1乃至第4の前記発熱ブロックよりも前記長手方向におけるサイズが大きな第5の発熱ブロックを有することを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記定着装置は更に前記フィルムの外周面に接触するローラを有し、前記フィルムは前記ヒータと前記ローラに挟まれており、記録材を挟持搬送する定着ニップ部が前記フィルムと前記ローラの間に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真記録方式や静電記録方式を利用したプリンタや複写機等の画像形成装置に搭載される定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、小サイズ紙を連続プリントすると、定着装置の非通紙部は記録材に熱を奪われないので過昇温する。筒状のフィルム(ベルト)を用いた定着装置は、熱容量が小さいので定着装置の長手方向への熱伝導が生じにくく、非通紙部昇温の度合が大きくなる傾向がある。過昇温は定着装置の部品にダメージを与えてしまう。
【0003】
そこで、ヒータ基板に配置する発熱体をヒータの長手方向において複数の発熱ブロックに分割し、記録材のサイズに応じた発熱分布を形成できる定着装置が考えられている(特許文献1)。特許文献1に記載されているヒータは、ヒータ基板のサイズアップを抑えるため、発熱体に電力供給するための給電端子が接触するヒータ基板上の電極(ヒータの端子)がヒータ長手方向において発熱体が配置されたエリア内に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-095157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録材のサイズに応じた発熱分布を形成できるヒータの場合、ヒータ長手方向の端部に近い位置に配置される発熱ブロックは、中央に配置される発熱ブロックよりも、ヒータ長手方向におけるサイズが小さくなる。そして、この小さな発熱ブロックのエリアに電極を配置する必要があるが、電極に接触する給電端子も、小さなエリアに、隣の給電端子と電気的にショートしないように配置する必要が生じる。しかしながら、給電端子には給電ケーブルが繋がっているので、1つの発熱ブロックのサイズが小さくなるほど、給電端子や給電ケーブルの配置が難しくなる。
【0006】
本発明は、ヒータの電極と接触する給電端子や給電ケーブルをフィルムの内部空間に効率よく配置した定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するための本発明は、筒状のフィルムと、前記フィルムの内部空間に配置されているヒータであって、基板と、前記基板に設けられており前記ヒータの長手方向に並んでいる複数の発熱ブロックと、を有するヒータと、前記複数の発熱ブロックの各々の電極に接触する複数の給電端子と、前記複数の給電端子の各々に接続されている複数の給電ケーブルと、を有し、前記フィルムを介した前記ヒータの熱で記録材に形成されたトナー画像を記録材に加熱定着する定着装置において、前記複数の給電端子の各々は、前記電極に接触する接点部と、前記給電ケーブルと結合する結合部と、を有し、前記複数の給電端子は前記長手方向において互いに隣り合う第1の給電端子と第2の給電端子を有し、前記第1の給電端子の前記結合部は、前記長手方向において前記ヒータの一方の端部に向かう方向に向いており、前記第2の給電端子の前記結合部は、前記長手方向において前記ヒータの他方の端部に向かう方向に向いており、前記第1の給電端子の前記結合部に結合する前記給電ケーブルは、前記ヒータの前記一方の端部に向かって延びており、前記第2の給電端子の前記結合部に結合する前記給電ケーブルは、前記ヒータの前記他方の端部に向かう途中で曲げられて前記ヒータの前記一方の端部に向かって延びていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、ヒータの電極と接触する給電端子や給電ケーブルをフィルムの内部空間に効率よく配置した定着装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像形成装置の断面図
図2】加熱ユニットと加圧ローラの断面図
図3】定着装置を正面から見た斜視図
図4】定着装置を背面から見た斜視図
図5】ヒータの短手方向の断面図
図6】ヒータの平面図
図7】ヒータへの給電部の部分斜視図
図8】ヒータへの給電部の全体図
図9】ヒータへの給電部の全体斜視図
図10】ヒータと保持部材の関係を示した斜視図
図11】加熱ユニットを構成する部品と加圧ローラの定着装置の長手方向における位置関係を示す分解平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例)
(画像形成装置の概要)
まず、本発明を適用可能な画像形成装置について説明する。図1は本実施例に係るプリンタ(画像形成装置)1の全体構成を示す断面図である。プリンタ1の下部には、給紙カセット2が引き出し可能に収納されている。そして、プリンタ1の右側には手差し給送部3が配設されている。給紙カセット2、手差し給送部3にそれぞれ記録材Pを積載収容し、記録材Pを1枚毎に分離し、レジストローラ4に給送するようになっている。プリンタ1はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応する画像形成ステーション5Y、5M、5C、5Kを、横1列に並設している画像形成部5を備えている。画像形成部5は、記録材P上に転写するトナー画像を形成する。画像形成部5には、像担持体である感光体ドラム6Y、6M、6C、6K、感光体ドラム6の表面を均一に帯電する帯電装置7Y、7M、7C、7Kが配設されている。以下では、感光体ドラム6Y、6M、6C、6Kを総称する場合、これらを感光体ドラム6と表記する。また、画像形成部5には、画像情報に基づいてレーザービームを照射して感光体ドラム6上に静電潜像を形成するスキャナユニット8、静電潜像にトナーを付着させてトナー画像として現像する現像装置9Y、9M、9C、9Kが配設されている。更に、画像形成部5には、感光体ドラム6上のトナー画像を転写ベルト10に転写する1次転写部11Y、11M、11C、11Kが配設されている。以下では、1次転写部11Y、11M、11C、11Kを総称する場合、これらを1次転写部11と表記する。
【0011】
1次転写部11でトナー画像が転写された転写ベルト10上のトナー画像は、2次転写部12で記録材Pに転写される。そのトナー画像は、定着装置100を通過する際に、加熱ユニット101と、加熱ユニット101に圧接する加圧ローラ(ローラ)102とによる熱及び圧力により記録材Pに定着される。その後、記録材Pは両面フラッパ13によって搬送方向が切り替えられ、排出ローラ対14又はスイッチバックローラ対15に搬送される。片面印刷の場合の記録材Pは、定着装置100通過後、排出ローラ対14に搬送される。両面印刷の場合の記録材Pは、スイッチバックローラ対15側に搬送され、スイッチバックローラ対15で反転搬送され、再度レジストローラ4、2次転写部12、定着装置100を通過した後、排出ローラ対14側に搬送される。最後に記録材Pが排出ローラ対14を通過後、記録材Pが積載部16に排出される。なお、画像形成装置として感光体ドラム6を複数備えたフルカラーレーザービームプリンタについて説明しているが、感光体ドラム6を1つ備えたモノクロの複写機やプリンタに搭載する定着装置にも本発明を適用することができる。
【0012】
(定着装置)
次に、本実施例に係る定着装置100について図2図3図4を用いて説明する。定着装置100は、記録材P上のトナー画像を記録材Pに加熱定着する定着部である。定着装置100は、支持フレーム111と、加熱ユニット101及び加圧ローラ102を有する。図2は定着装置100の内部に設けられた加熱ユニット101と加圧ローラ102の断面図である。図3は定着装置100を正面から見た斜視図であり、図4は定着装置100を背面から見た斜視図である。
【0013】
加熱ユニット101は、SUS等の金属、又はポリイミド等の耐熱樹脂を基層とした円筒状のフィルム103を有する。また、フィルム103の内部空間にはヒータ200と、耐熱樹脂、例えば液晶ポリマーなどの耐熱性と摺動性を備えた材料からなるヒータ200を保持する保持部材105が配置されている。フィルム103の内部空間には更に、保持部材105を補強する金属製のステイ部材104も配置されている。フィルム103のフィルム長手方向の両端部には、ステイ部材104に支持され、フィルム103の両端部の内面を支持し、フィルム103のフィルム長手方向の位置を規制するフィルムフランジ110が配置されている。
【0014】
ヒータ200は、ヒータ基板201と、フィルム103に接触する摺動層(ガラス層)207と、発熱体202A、202Bを有する。発熱体202A、202Bはヒータ基板201の裏面(摺動層207が設けられた表面とは反対側の面)に設けられている。発熱体202A、202Bの熱は、基板201と摺動層207とを介してフィルム103に伝えられる。なお、ヒータ200の長手方向(フィルム103の長手方向)は、記録材Pの幅方向(搬送方向に対して直交する方向)と同じ方向である。
【0015】
加圧ローラ(ローラ)102は金属性の芯金部とシリコーンゴム等からなる弾性層を有し、支持フレーム111a、111bに不図示の軸受を介して回転可能に支持されている。加圧ローラ102はフィルム103の外周面に接触している。また、加熱ユニット101は支持フレーム111a、111bにフィルムフランジ110を介して圧接する方向に移動可能に支持されている。そして、後述する加圧バネ112によって、加熱ユニット101はフィルムフランジ110、ステイ部材104を介して加圧ローラ102側に付勢されている。すなわち、加熱ユニット101が加圧ローラ102側に付勢されており、加熱ユニット101と加圧ローラ102によって定着ニップNが形成されている。詳述すると、フィルム103はヒータ200と加圧ローラ102に挟まれており、記録材Pを挟持搬送する定着ニップ部Nがフィルム103と加圧ローラ102の間に形成されている。なお、フィルム103とヒータ200の間に熱伝導に優れた金属板等を介在させてもよい。
【0016】
アイドラギア114には、プリンタ1に設けた不図示のモータからの駆動力が伝達されている。加圧ローラ102の芯金部には駆動ギア115が取り付けられており、駆動ギア115はアイドラギア114と噛み合っている。駆動ギア115に駆動力が伝わることによって、回転方向R1に加圧ローラ102が回転駆動される。そして、加圧ローラ102とフィルム103の接触摩擦力によりフィルム103が回転方向R2に従動回転する。
【0017】
符号112は加熱ユニット101を加圧ローラ102に圧接するために付勢力を付与する加圧バネ(本例では圧縮バネ)である。加圧バネ112は、レバー部材113、フィルムフランジ110、ステイ部材104を介して加熱ユニット101の両端部を加圧ローラ102に向けて付勢している。
【0018】
カム116(116a、116b)は所定の回転位相時にレバー部材113を加圧バネ112の付勢方向とは反対方向に押圧して定着ニップ部Nのニップ圧を減圧(又は無圧に)する。減圧(又は無圧)状態は、記録材Pがジャムした時や、プリンタ1の電源オフの時等に設定される。2つのカム116a、116bは端部にカムギア118とフラグ119が取り付けられたカム軸117で連結されており、プリンタ1に設けた不図示の駆動手段によってカムギア118に駆動が伝達されることによって回転する。カム116の回転位相はフラグ119とセンサ120によって検知され、検知信号に応じてカム116の回転が制御される。
【0019】
(ヒータ)
本実施例に係るヒータ200について図4図6を用いて詳しく説明する。図5はヒータ200の短手方向(記録材Pの搬送方向)の断面図である。ヒータ200はセラミック製の基板201上の通電層210に設けられた発熱体202A、202Bに電力が供給されて発熱する。通電層210には第1導電体203と第2導電体204がヒータ200の長手方向に沿って設けられている。第1導電体203は、第1導電体203から分岐した第1導電体203A、203Bを有している。第1導電体203A、203Bは、記録材Pの搬送方向の上流側と下流側にそれぞれ配置されている。第2導電体204は発熱体202Aと202Bとの間に配置されている。ヒータ200の短手方向において、第1導電体203A、203Bが、発熱体202A、202B及び第2導電体204を挟むようにして配置されている。図5の配置例では、記録材Pの搬送方向の上流側から下流側に向かって、第1導電体203A、発熱体202A、第2導電体204、発熱体202B及び第1導電体203Bの順に配置されている。またヒータ200の裏面には発熱体202A、202Bや第1導電体203A、203B、第2導電体204を覆う絶縁性の保護層(ガラス層)206が設けられている。ヒータ200のフィルム103と摺動する摺動面側には、摺動性の良好なガラスやポリイミド等を用いたコーティングによる摺動層207が設けられている。また、ヒータ200は、発熱体202A及び202Bを有する発熱ブロック202を有する。
【0020】
図6(A)~(C)はヒータ200の平面図である。図6(A)はヒータ200の裏面を示しており、図6(B)はヒータ200の裏面から保護層206を取り除いた図を示している。図6(C)は、摺動層207を取り除いた状態のヒータ200の表面を示している。
【0021】
ヒータ200は、ヒータ200の長手方向に並んでいる複数の発熱ブロックBL1~BL7を有する。発熱ブロックBL1は発熱体202A-1と202B-1を有する。発熱ブロックBL2は発熱体202A-2と202B-2を有する。発熱ブロックBL3は発熱体202A-3と202B-3を有する。発熱ブロックBL4は発熱体202A-4と202B-4を有する。発熱ブロックBL5は発熱体202A-5と202B-5を有する。発熱ブロックBL6は発熱体202A-6と202B-6を有する。発熱ブロックBL7は発熱体202A-7と202B-7を有する。本実施例のヒータ200は7つの発熱ブロックBL1~BL7を有する。
【0022】
第1導電体203は、ヒータ200の長手方向に沿って設けられている。第1導電体203は、発熱体202A-1~202A-7に接続された第1導電体203Aと、発熱体202B-1~202B-7に接続された第1導電体203Bとで構成されている。第2導電体204は、発熱体202A-1と発熱体202B-1に接続された第2導電体204-1、発熱体202A-2と発熱体202B-2に接続された第2導電体204-2を有する。更に、発熱体202A-3と発熱体202B-3に接続された第2導電体204-3、発熱体202A-4と発熱体202B-4に接続された第2導電体204-4、発熱体202A-5と発熱体202B-5に接続された第2導電体204-5を有する。更に、発熱体202A-6と発熱体202B-6に接続された第2導電体204-6、発熱体202A-7と発熱体202B-7に接続された第2導電体204-7を有する。第2導電体204-1~204-7は互いに離間して配置されている。したがって、第2導電体204は7つに分割されている。
【0023】
共通電極205C1、205C2、電極205-1~205-7は、保護層206に設けられた複数の開口部208から夫々露出している。共通電極205C1、205C2は、第1導電体203の1部である。電極205-1~205-7は、夫々、第2導電体204-1~204-7の1部である。電極205-1は発熱ブロックBL1に電力を供給するための電極である。電極205-2は発熱ブロックBL2に電力を供給するための電極であり、電極205-3は発熱ブロックBL3に電力を供給するための電極である。同様に、電極205-4~電極205-7も、夫々、発熱ブロックBL4~BL7に電力を供給するための電極である。共通電極205C1及び205C2は、第1導電体203A及び203Bを介して発熱ブロックBL1~BL7に電力を供給するための共通の電極である。
【0024】
ヒータ200は、電極205-1~205-7を介して、発熱ブロックBL1~BL7に対して夫々独立に電力を供給することができる。発熱ブロックBL1~BL7へ供給する電力の比率を変えることにより、記録材Pが通過しない非通紙領域の昇温を抑制することができる。例えば、発熱ブロックBL3~BL5に対応する幅を有する記録材Pに形成されたトナー画像を記録材Pに加熱定着する時、発熱ブロックBL1、BL2、BL6、BL7に供給する電力を、発熱ブロックBL3~BL5に供給する電力よりも小さくする。これにより、非通紙部領域の昇温を抑制できる。記録材Pに形成される画像の幅に応じて発熱ブロックBL1~BL7へ供給する電力の比率を変えてもよい。
【0025】
ところで、ヒータ200の長手方向において、記録材Pの中央が発熱ブロックBL4の中央を通過するように、プリンタ1は構成されている。複数の発熱ブロックの中央に位置する発熱ブロックBL4は、記録材Pのサイズに拘わらず、記録材Pが必ず通過する発熱ブロックである。ヒータ200の長手方向において、発熱ブロックBL2(第1の発熱ブロック)、BL3(第2の発熱ブロック)、BL5(第3の発熱ブロック)、BL6(第4の発熱ブロック)のサイズは発熱ブロックBL4(第5の発熱ブロック)のサイズよりも小さい。このため、電極205-2と電極205-3の間の距離、及び電極205-5と電極205-6の間の距離は短くなっている。
【0026】
ヒータ基板201のフィルム103と対向する側の面には、温度検知素子であるサーミスタ211-A1~211-A3、211-A5~211-A7、211-B1~211-B5、B1~211-B7が印刷されている。これら12個を総称する場合、サーミスタ211と表記する。サーミスタ211-A1と211-B1は発熱ブロックBL1に相当する領域の温度を検知する。サーミスタ211-A2と211-B2は発熱ブロックBL2に相当する領域の温度を検知する。サーミスタ211-A3と211-B3は発熱ブロックBL3に相当する領域の温度を検知する。サーミスタ211-B4は発熱ブロックBL4に相当する領域の温度を検知する。サーミスタ211-A5と211-B5は発熱ブロックBL5に相当する領域の温度を検知する。サーミスタ211-A6は発熱ブロックBL6に相当する領域の温度を検知する。サーミスタ211-A7と211-B7は発熱ブロックBL7に相当する領域の温度を検知する。複数の発熱ブロックBL1~BL7夫々は、定着処理中、所定の目標温度を維持するように温度制御される。サーミスタ211は、複数の発熱ブロックBL1~BL7夫々の温度制御の用途、又は複数の発熱ブロックBL1~BL7夫々の異常昇温防止の用途で使用される。
【0027】
複数のサーミスタ211の夫々には二本の導電体が繋がっている。図6(C)に示す導電体212aはFPC(フレキシブルプリント配線板)213aに接続されている導電体を示しており、導電体212bはFPC213bに接続されている導電体を示している。導電体212aとFPC213a、導電体212bとFPC213b、は夫々半田で結合されている。図4に示すように、FPC213aとFPC213bは定着装置100の背面に回り込んでいる。そして、FPC213aとFPC213bのヒータ200に結合した端部とは反対側の端部は、定着装置100の背面に設けた電装基板214にコネクタ333a、333bで接続されている。FPC213はポリイミドなどの絶縁性を有する薄いベースフィルムに導電性金属を貼り合わせたフラットケーブルである。
【0028】
(ヒータへの給電構成)
ヒータ200の電極205に電力を供給するための給電部について図7図11を用いて説明する。図7はヒータ200への給電部の部分斜視図であり、図8はヒータ200への給電部の全体図である。図9は、ヒータ200への給電部の全体斜視図、図10は、ヒータ200と保持部材105の関係を示した斜視図である。図11は、加熱ユニット101を構成する部品と加圧ローラ102の定着装置100の長手方向における位置関係を示す分解平面図である。なお、発熱ブロックBL2~BL6への給電構造は給電端子300の向き及びケーブル306-5の配線方向以外は略同じである。図7は発熱ブロックBL2~BL6を代表して発熱ブロックBL6への給電構造を示しており、他の発熱ブロックBL2~BL5への給電構造に関する詳細な説明は割愛する。
【0029】
給電端子300-5は金属プレス加工部品であり、接点部302a、302bと取り付け部307と結合部301を有する。接点部302a、302bは電極205に接触する部分である。接点部302a、302bはバネ性を有しており、夫々の弾性力の大きさは異なっている。このため、電極205-6に対して接点部302aを押圧する時の荷重の大きさと、電極205-6に対して接点部302bを押圧する時の荷重の大きさは異なっている。これは、プリンタ1内のモータ等で生じる振動や、記録材Pが定着ニップ部Nを通過する時の振動に対して、2つの接点部302a、302bが同じ周波数で振動するのを防止するためである。このような接点部302a、302bの構成により、二つの接点部302a、302bが同じタイミングで電極205-6から離れる可能性を極力小さくすることができる。
【0030】
給電端子300-5は、結合部301でケーブル(給電ケーブル)306-5を加締めている(結合している)。図4に示すように、ケーブル306-5は定着装置100の背面に回り込んでおり、背面に設けた電装基板214のコネクタ311-1に接続されている。
【0031】
給電端子300-5は、取り付け部307を保持部材105のボス105b5に差し込むことで保持部材105に取り付けられている。なお、図9には、発熱ブロックBL2用の電極205-2に接触する給電端子300-1、発熱ブロックBL3用の電極205-3に接触する給電端子300-2が示されている。図9には更に、発熱ブロックBL4用の電極205-4に接触する給電端子300-3、発熱ブロックBL5用の電極205-5に接触する給電端子300-4、発熱ブロックBL6用の電極205-6に接触する給電端子300-5が示されている。また、図8には、給電端子300-1を差し込むボス105b1、給電端子300-2を差し込むボス105b2が示されている。更に、給電端子300-3を差し込むボス105b3、給電端子300-4を差し込むボス105b4、給電端子300-5を差し込むボス105b5が示されている。
【0032】
図8に示すように、給電端子300-1と300-2の上には、給電端子300-1に加締められているケーブル306-1と給電端子300-2に加締められているケーブル306-2と給電端子3003に加締められているケーブル306-3をガイドする接点ホルダ312が設けられている。接点ホルダ312はボス105b1とボス105b2に取り付けられている。給電端子300-3の上には、給電端子300-3に加締められているケーブル306-3と、安全素子(サーモスイッチ)337に加締められているケーブル308をガイドする接点ホルダ313が設けられている。安全素子337は、電源(不図示)から発熱ブロックBL1~BL7への給電回路に設けられた素子であり、ヒータ200が異常な温度に昇温すると作動して給電回路を遮断する。接点ホルダ313はボス105b3に取り付けられている。給電端子300-4と300-5の上には、給電端子300-4に加締められているケーブル306-4と給電端子300-5に加締められているケーブル306-5をガイドする接点ホルダ314が設けられている。接点ホルダ314はボス105b4とボス105b5に取り付けられている。なお、図7は接点ホルダ314を取り除いた状態の図である。
【0033】
接点ホルダ312、313、314を樹脂製の保持部材のボス105b1~105b5に取り付けた後にボス105b1~105b5を熱で潰して加締め、接点ホルダ312、313、314が外れないようにしている。従って、給電端子300-1~300-5の外れ防止構造が接点ホルダ312、313、314の外れ防止構造も兼ねている。給電端子300-1~300-5と金属製のステイ部材104との距離が近い構造の時、接点ホルダ312、313、314の外れ防止構造として樹脂製のボス105b1~105b5を利用すれば、両者の絶縁距離を確保しやすい。これにより。給電端子300-1~300-5とステイ部材104との間の電気的ショートを防止できる。また、複数の給電端子300-1~300-5を一つの保持部材105に取り付けることにより、近接する給電端子同士の位置精度が向上し、給電端子間の電気的ショートも防止できる。
【0034】
また、複数の給電端子300-1~300-5はヒータ200を常時接点圧で付勢している。このため、ヒータ200と保持部材105の相対位置が変化しないように、図10に示すように、ヒータ200を接着部106-1~106-12で保持部材105に接着固定している。ヒータ200は発熱時に高温になり、それに伴いヒータ基板201の熱膨張と熱収縮が生じる。このため、接着強度を維持するために耐熱性と伸縮性があるシリコン接着剤を使用してヒータ200と保持部材105を接着している。また、接着剤が塗布される表面積を増やして接着強度を高めるために、保持部材105の接着部106-1~106-12はローレット形状にしている。これにより、給電端子300-1~300-5の接点部の接点圧が安定する。また、ヒータ200を保持部材105に固定しているため、電極と接点部の位置ずれによる接点部の摩耗も防止しており、電気接点の信頼性が向上する。
【0035】
図9及び図10に示すように、ヒータの一方の端部に設けた共通電極205C1と発熱ブロックBL1用の電極205-1に夫々接触する二つの給電端子(不図示)は、ヒータ200の短手方向にヒータ200に差し込むコネクタ305a内に配置されている。また、ヒータの他方の端部に設けた共通電極205C2と発熱ブロックBL7用の電極205-7に夫々接触する二つの給電端子(不図示)は、ヒータ200の短手方向にヒータ200に差し込むコネクタ305b内に配置されている。
【0036】
図11に示すように、電極205-2~205-6はヒータ200の長手方向においてフィルム103の領域内に配置されている。一方、共通電極205C1、205C2、電極205-1、205-7は、ヒータ200の長手方向においてフィルム103の領域内(フィルム103の両端部より外側)に配置されている。このように、フィルム103の内部空間に配置した給電端子を減らすことによってフィルム103が内蔵する部品が減り、フィルム103の外径を小さくでき、加熱ユニット101を小型化することができる。なお、符号315はフィルム103の内面に接触する除電部材であり、フィルム103の帯電でトナーがフィルム103にオフセットするのを抑えている。
【0037】
ヒータ200の長手方向において互いに隣り合う電極205-2(第1の電極)と電極205-3(第2の電極)の距離は短い。よって、ヒータ200の長手方向において互いに隣り合う給電端子300-1(第1の給電端子)と給電端子300-2(第2の給電端子)の距離も短い。同様に、ヒータ200の長手方向において互いに隣り合う電極205-5(第3の電極)と電極205-6(第4の電極)の距離は短い。よって、ヒータ200の長手方向において互いに隣り合う給電端子300-4(第3の給電端子)と給電端子300-5(第4の給電端子)の距離も短い。このため、給電端子300-1(第1の給電端子)と給電端子300-2(第2の給電端子)を同じ向きに配置した場合、給電端子同士が干渉する可能性がある。同様に、給電端子300-4(第3の給電端子)と給電端子300-5(第4の給電端子)を同じ向きに配置した場合、給電端子同士が干渉する可能性がある。なお、本実施例のヒータ200は、第1乃至第4の給電端子が各々接触する第1乃至第4の発熱ブロックBL2、BL3、BL5、BL6よりもヒータ200の長手方向におけるサイズが大きな発熱ブロックBL4(第5の発熱ブロック)を有する。
【0038】
そこで、図8、9、11に示すように、給電端子300-1と給電端子300-2の向き(接点部と結合部のヒータ長手方向における位置関係)が互いに逆になるように、給電端子300-1と給電端子300-2を配置している。具体的には、給電端子300-1の結合部は、ヒータ200の長手方向においてヒータ200の一方の端部(共通電極205C1の側の端部)に向かう方向に向いている。給電端子300-2結合部は、ヒータ200の他方の端部(共通電極205C2の側の端部)に向かう方向に向いている。これにより給電端子同士が干渉しないようにしている。
【0039】
更に、給電端子300-1の結合部に結合するケーブル306-1は、ヒータ200の一方の端部(共通電極205C1の側の端部)に向かって延びている。また、給電端子300-2の結合部に結合するケーブル306-2は、ヒータ200の他方の端部に向かう途中で曲げられてヒータ200の一方の端部に向かって延びている。これにより、二本のケーブル306-1、306-2をヒータ200の長手方向においてフィルム103の同一の端部から引き出すことができ、加熱ユニット101を小型化できる。
【0040】
同様に、給電端子300-4と給電端子300-5の向きが互いに逆になるように、給電端子300-4と給電端子300-5を配置している。具体的には、給電端子300-4の結合部は、ヒータ200の長手方向においてヒータ200の一方の端部(共通電極205C1の側の端部)に向かう方向に向いている。給電端子300-5の結合部は、ヒータ200の他方の端部(共通電極205C2の側の端部)に向かう方向に向いている。これにより給電端子同士が干渉しないようにしている。更に、給電端子300-4の結合部に結合するケーブル306-4は、ヒータ200の一方の端部に向かう途中で曲げられてヒータ200の他方の端部に向かって延びている。給電端子300-5の結合部に結合するケーブル306-5は、ヒータ200の他方の端部に向かって延びている。これにより、二本のケーブル306-4、306-5をヒータ200の長手方向においてフィルム103の同一の端部から引き出すことができ、装置を小型化できる。
【0041】
また、ケーブル306-1、306-2がヒータ200の一方の端部に向かって延びており、ケーブル306-4、306-5がヒータ200の他方の端部に向かって延びている。このため、ヒータ200の長手方向における任意の位置において、4本のケーブル306-1、306-2、ケーブル306-4、306-5が全て重なる領域がないので、フィルム103の径を小さくできる。また、使用するケーブルの長さも短くできる。
【0042】
また、ヒータ200の長手方向において、4本のケーブル306-1、306-2、ケーブル306-4、306-5が一つも存在しない領域に安全素子337を配置している。これによって、更に加熱ユニット101を小型化できる。
【0043】
次に加熱ユニット101から延びるケーブル306、308やFPC213の引き回しについて説明する。
【0044】
加熱ユニット101から引き回されたケーブル306、308やFPC213は加熱ユニット両端部から支持フレーム111a、111bの外側を通り、定着装置の背面に設けた電装基板214にケーブルコネクタ309、311に接続される。加熱ユニット101から電装基板214までは、FPC213の折れや破れなどを防止するため、支持フレーム111a、111bに近い経路にケーブル306、308を引き回している。また、支持フレーム111a、111bからケーブル306、308よりも離れたところにFPC213を引き回している。また、アイドラギア114や駆動ギア115を配置した側のFPC213aはヒータ200の長手方向に対して直角方向に伸びたFPC形状になっており、ギアに巻き込まれることを防止している。尚、ケーブル306、308とFPC213の引き回しは、分けて行うのではなく、ケーブル306、308を先に這い回してその後にFPC213を引き回してもよい。
【0045】
定着装置の背面に配置した電装基板214は、支持フレーム111Cに取り付けた基板保持部材215に取り付けられるとともに、基板保持部材215に取り付けられる不図示のカバー部材で覆われる。これにより、電装基板上に実装された電気部品と支持フレーム115Cとの電気的絶縁と、記録材Pが定着ニップ部Nを狭持搬送される時に発生する水蒸気による電気部品の水滴付着を防止している。電装基板214にはヒータ200や複数のセンサや安全素子337などに電力を供給するケーブルや、プリンタ1の装置本体と電気的に接続するドロアコネクタ310に接続するケーブルが接続されている。図3に示すように基板保持部材215は定着ニップ部Nから生じる水蒸気起因の結露による水滴の落下を防止するために、支持フレーム111c側の面に加圧ローラ軸方向に伸びた細かいピッチの溝が多数設けている。これにより、溝に水滴が溜まることで定着装置の下方に水滴が落下することを防止している。本実施例では溝幅1.0mm、深さ0.5mm、溝ピッチ2.0mmであるが、これに限定されず、任意に設定してよい。
【0046】
図4において、コネクタ309-a1は、発熱ブロックBL1の電極205-1に接触する給電端子から延びるケーブルと、共通電極205C1に接触する給電端子から延びるケーブルが接続されるコネクタである。コネクタ309-b1は、発熱ブロックBL7の電極205-7に接触する給電端子から延びるケーブルと、共通電極205C2に接触する給電端子から延びるケーブルが接続されるコネクタである。コネクタ309-a2は、発熱ブロックBL4の電極205-4に接触する給電端子300-3から延びるケーブル306-3が接続されるコネクタである。コネクタ311-1は、発熱ブロックBL5の電極205-5に接触する給電端子300-4から延びるケーブル306-4と、発熱ブロックBL6の電極205-6に接触する給電端子300-5から延びるケーブル306-5とが接続されるコネクタである。コネクタ311-2は、安全素子(サーモスイッチ)337から延びるケーブル308が接続されるコネクタである。コネクタ311-3は、CPU等を駆動する二次電源のケーブルが接続されるコネクタである。コネクタ311-4は、カム116の回転位相を検知するセンサ120のケーブルが接続されるコネクタである。コネクタ311-5は、サーミスタ211-A1~211-A3、211-A5~211-A7、211-B1~211-B5、B1~211-B7を駆動する電源のケーブルが接続されるコネクタである。コネクタ311-6は、発熱ブロックBL2の電極205-2に接触する給電端子300-1から延びるケーブル306-1と、発熱ブロックBL3の電極205-3に接触する給電端子300-2から延びるケーブル306-2とが接続されるコネクタである。
【符号の説明】
【0047】
100 定着装置
101 加熱ユニット
102 加圧ローラ
103 フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11