(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178556
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】理美容鋏
(51)【国際特許分類】
B26B 13/06 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
B26B13/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091305
(22)【出願日】2022-06-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】390038209
【氏名又は名称】足立工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 榮美
【テーマコード(参考)】
3C065
【Fターム(参考)】
3C065BA03
3C065BA08
3C065FA02
(57)【要約】
【課題】滑らかに開閉を行うことができる理美容鋏を提供する。
【解決手段】理美容鋏10Aは、一対の鋏部材1を備える。鋏部材1の刃部11は、刃裏111を有する。刃裏111は、底部を有する複数の凹部117を有する。凹部117には、潤滑剤を貯留することができる。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の鋏部材を備える理美容鋏であって、
前記一対の鋏部材はそれぞれ、刃部、柄部、および前記刃部と前記柄部との間の中間部を備え、
前記一対の鋏部材のそれぞれの刃部は、刃裏、前記刃裏とは反対側の刃表、刃先および前記刃先とは反対側の刃峰を有しており、
少なくとも一方の前記鋏部材の前記刃部の前記刃裏には、潤滑剤が貯留される、底部を有する複数の凹部が設けられている、
理美容鋏。
【請求項2】
前記複数の凹部のうちの少なくともいくつかの凹部は、前記刃先と交差している、
請求項1に記載の理美容鋏。
【請求項3】
前記刃先と交差する前記少なくともいくつかの凹部は、全長にわたって底部を有する、
請求項2に記載の理美容鋏。
【請求項4】
前記複数の凹部のうちの少なくともいくつかの凹部は、前記刃先と交差すると共に前記刃先において前記刃部を貫通している第一部分と、前記第一部分よりも前記刃峰側に位置しかつ底部を有する第二部分と、から構成されており、
前記少なくともいくつかの凹部は、刃線方向に互いに間隔をあけて設けられており、
前記少なくともいくつかの凹部により、前記刃先には、複数の凹凸が形成されている、
請求項1または2に記載の理美容鋏。
【請求項5】
両方の前記鋏部材の前記刃部の前記刃裏に、前記複数の凹部が設けられている、
請求項1または2に記載の理美容鋏。
【請求項6】
前記一対の鋏部材のそれぞれの中間部の裏面には、相手側の前記鋏部材の前記中間部の裏面と接触する触点が設けられており、
少なくとも一方の前記鋏部材の前記触点には、潤滑剤が貯留される、底部を有する複数の凹部が設けられている、
請求項1または2に記載の理美容鋏。
【請求項7】
両方の前記鋏部材の前記中間部の前記触点に、前記複数の凹部が設けられている、
請求項6に記載の理美容鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理美容鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の鋏部材と、一対の鋏部材を回転可能に接続する接続機構と、を備えた理美容鋏が知られている。各鋏部材は、刃部および柄部を備えている。刃部は、相手側の刃部と対向する側の面である刃裏、刃裏とは反対側の刃表、および刃先を有している。
【0003】
特許文献1は、刃先の刃表側に断面V字状、或いはU字状の凹部を連設し、これにより刃先にV字状、U字状等の波形を繰り返し設けてギザ刃状にしたカット鋏を開示している(特許文献1の
図36から
図39)。
【0004】
さらに、特許文献1は、髪の太さより細いか、或いは髪の太さに等しい幅の切込み溝を刃先に有する理美容鋏も開示している(特許文献1の
図1から
図3)。特許文献1の切り込み溝は、刃表から刃裏にかけて貫通した、底部を有さない溝である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
理美容鋏の使用時に、使用者は、何回も理美容鋏を開閉する。したがって、使用者の手に掛かる負担を減らすために、滑らかに開閉できる理美容鋏が望まれている。
【0007】
本発明は、滑らかに開閉を行うことができる理美容鋏を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
(項目1)
一対の鋏部材を備える理美容鋏であって、
前記一対の鋏部材はそれぞれ、刃部、柄部、および前記刃部と前記柄部との間の中間部を備え、
前記一対の鋏部材のそれぞれの刃部は、刃裏、前記刃裏とは反対側の刃表、刃先および前記刃先とは反対側の刃峰を有しており、
少なくとも一方の前記鋏部材の前記刃部の前記刃裏には、潤滑剤が貯留される、底部を有する複数の凹部が設けられている、
理美容鋏。
【0009】
(項目2)
前記複数の凹部のうちの少なくともいくつかの凹部は、前記刃先と交差している、
項目1に記載の理美容鋏。
【0010】
(項目3)
前記刃先と交差する前記少なくともいくつかの凹部は、全長にわたって底部を有する、
項目2に記載の理美容鋏。
【0011】
(項目4)
前記複数の凹部のうちの少なくともいくつかの凹部は、前記刃先と交差すると共に前記刃先において前記刃部を貫通している第一部分と、前記第一部分よりも前記刃峰側に位置しかつ底部を有する第二部分と、から構成されており、
前記少なくともいくつかの凹部は、刃線方向に互いに間隔をあけて設けられており、
前記少なくともいくつかの凹部により、前記刃先には、複数の凹凸が形成されている、
項目1または2に記載の理美容鋏。
【0012】
(項目5)
両方の前記鋏部材の前記刃部の前記刃裏に、前記複数の凹部が設けられている、
項目1または2に記載の理美容鋏。
【0013】
(項目6)
前記一対の鋏部材のそれぞれの中間部の裏面には、相手側の前記鋏部材の前記中間部の裏面と接触する触点が設けられており、
少なくとも一方の前記鋏部材の前記触点には、潤滑剤が貯留される、底部を有する複数の凹部が設けられている、
項目1または2に記載の理美容鋏。
【0014】
(項目7)
両方の前記鋏部材の前記中間部の前記触点に、前記複数の凹部が設けられている、
項目6に記載の理美容鋏。
【発明の効果】
【0015】
本発明の理美容鋏の刃部は、刃裏に、潤滑剤を貯留できる凹部を有している。この潤滑剤により、理美容鋏を開閉する際の摩擦抵抗を減らすことができるため、滑らかに理美容鋏の開閉を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1から
図10は、第一実施形態に係る理美容鋏に関する図である。
図11から
図14は、第二実施形態に係る理美容鋏に関する図である。
【0017】
【
図8A】刃裏の凹部の変形例を示す切断端面図である。
【
図8B】刃裏の凹部の変形例を示す切断端面図である。
【
図13A】刃裏の凹部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の理美容鋏10A,10Bについて、図面を参照しつつ説明する。理美容鋏10A,10Bは、カット鋏やスキ鋏など、理美容鋏として使用可能な全てのタイプの鋏を含む。
【0019】
<A.第一実施形態>
まず、
図1から
図10を参照して、第一実施形態に係る理美容鋏10Aについて説明する。
【0020】
<A-1.理美容鋏の構造>
図1に示すように、理美容鋏10Aは、一対の鋏部材1と、一対の鋏部材1を回転可能に接続する接続機構2と、を備える。接続機構2は、例えば、ボルト、ベアリングおよびナットから構成される。
【0021】
各鋏部材1は、刃部11、柄部12、および刃部11と柄部12との間の中間部13を備える。一実施形態において、刃部11、柄部12および中間部13は、一体形成されている。各鋏部材1の材質は、例えば、鋼等の金属やセラミックスである。
【0022】
柄部12は、使用者の指を挿入するための指環部121を有する。中間部13には、接続機構2が取り付けられている。
【0023】
刃部11は、刃裏111、刃裏111とは反対側の刃表112、刃先113、刃先113とは反対側の刃峰114、先端115、および先端115とは反対側の刃元116を有する。刃裏111とは、相手側の刃部11と対向する側の面のことである。
【0024】
図2に示すように、一般的な理美容鋏10Aの刃裏111は、刃先113近傍に位置する略平面状の摺動面111aと、摺動面111aよりも刃峰114側に設けられ、刃表112側に凹んだ凹曲面111bと、を有する。凹曲面111bは、裏スキとも呼ばれる。理美容鋏10Aを開閉する際に、一方の刃部11の摺動面111aは、他方の刃部11の摺動面111aと摺動するが、他方の刃部11の凹曲面111bとは摺動しない。
【0025】
図3Aから
図3Cに示すように、少なくとも一方の鋏部材1の刃部11の刃裏111には、底部を有する複数の凹部117が設けられている。好ましくは、両方の鋏部材1の刃部11の刃裏111に、底部を有する複数の凹部117が設けられている。なお、図面を見やすくするため、一部の凹部にのみ符号117を付している。各凹部117内には、潤滑剤を貯留することができる。
【0026】
潤滑剤は、液体であっても固体であってもよい。液体潤滑剤としては、例えば、液体の油が挙げられる。具体的には、理美容鋏10Aのメンテナンス時に注した油や、切断された毛髪に含まれる油が、液体潤滑剤として機能する。毛髪に含まれる油は、理美容鋏10Aの使用中に、自然と凹部117内に溜まっていく。固体潤滑剤としては、例えば、二硫化モリブデンが挙げられる。固体潤滑剤は、理美容鋏10Aの使用前に、あらかじめ凹部117内に貯留しておく必要がある。
【0027】
複数の凹部117は、先端115から刃元116にかけて刃線方向X全長にわたって、間隔をあけて設けられている。刃線方向Xとは、刃先113が延びる方向のことである。
【0028】
一部または全ての凹部117は、長手状(すなわち、一方向に細長い形状)である。
【0029】
一部または全ての凹部117の平面視での形状は、例えば、長方形(長手方向端部が丸くなった長方形を含む)、または楕円である。各凹部117の平面視での形状は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0030】
一部または全ての凹部117は、摺動面111aから凹曲面111bにかけて延びている。
【0031】
一部または全ての凹部117は、刃先113まで延びており、刃先113と交差している。
【0032】
一部または全ての凹部117の長手方向は、刃線方向Xに対して傾斜している。凹部117の長手方向と刃線方向Xとの間の角度α(
図3A参照)は、例えば、30°~150°とすることができ、好ましくは90°である。各凹部117の傾斜角度は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0033】
図3Bに示すように、一部または全ての凹部117の底部の形状は、断面視で四角形である。各凹部117の底部の形状は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0034】
図3Bおよび
図3Cに示すように、全ての凹部117は、その長手方向全長にわたって、刃部11を貫通しておらず、底部を有している。
図3Cに示すように、全ての凹部117は、刃先113付近においても、刃部11を貫通していない。すなわち、全ての凹部117は、摺動面111aにおいても、底部を有している。
【0035】
凹部117の長さL1(
図3A参照)は、例えば、0.5mm以上であり、刃部11の幅(すなわち、刃先113と刃峰114との間の長さ)よりも小さい。各凹部117の長さL1は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0036】
凹部117の幅W1(
図3A参照)は、例えば、0.001mm~3mmである。凹部117の幅W1は、凹部117の長手方向全長にわたって一定であってもよく、一定でなくてもよい。各凹部117の幅W1は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0037】
凹部117の深さD1(
図3B参照)は、例えば、0.1mm~0.2mmである。凹部117の深さD1は、凹部117の長手方向全長にわたって一定であってもよく、一定でなくてもよい。各凹部117の深さD1は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0038】
図1に示すように、両方の中間部13の裏面(すなわち、相手側の中間部13と対向する側の面)には、触点131が設けられている。理美容鋏10Aを開閉する際に、一方の中間部13の触点131は、他方の中間部13の触点131と接触する。
【0039】
図4および
図5に示すように、少なくとも一方の鋏部材1の中間部13の触点131には、底部を有する複数の凹部132が設けられている。好ましくは、両方の鋏部材1の中間部13の触点131に、底部を有する複数の凹部132が設けられている。各凹部132には、潤滑剤を貯留することができる。使用可能な潤滑剤は、既に述べた通りである。
【0040】
一部または全ての凹部132は、長手状である。
【0041】
一部または全ての凹部132の平面視での形状は、例えば、長方形(長手方向端部が丸くなった長方形を含む)、または楕円である。各凹部132の平面視での形状は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0042】
一部または全ての凹部132の底部の形状は、断面視で四角形である。各凹部132の底部の形状は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0043】
凹部132の長さL2(
図4参照)は、例えば、0.5mm以上であり、触点131の幅よりも小さい。各凹部132の長さL2は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0044】
凹部132の幅W2(
図4参照)は、例えば、0.001mm~3mmである。凹部132の幅W2は、凹部132の長手方向全長にわたって一定であってもよく、一定でなくてもよい。各凹部132の幅W2は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0045】
凹部132の深さD2(
図5参照)は、例えば、0.1mm~0.2mmである。凹部132の深さD2は、凹部132の長手方向全長にわたって一定であってもよく、一定でなくてもよい。各凹部132の深さD2は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0046】
凹部117および凹部132は、例えば、切削や研削などの機械加工、放電加工またはレーザ加工によって形成できる。
【0047】
<A-2.理美容鋏の特徴>
底部を有する複数の凹部117が刃裏111に設けられていることにより、凹部117内に、理美容鋏10Aのメンテナンス時に注した油や、毛髪を切断した際に毛髪から出た油などの、潤滑剤を貯留することができる。理美容鋏10Aの使用時に、理美容鋏10Aは、使用者によって様々な向きに配向される。また、理美容鋏10Aは、繰り返しの開閉により、振動する。理美容鋏10Aの向きや理美容鋏10Aに与えられた振動により、凹部117内に溜まった潤滑剤は、摺動面111a上に移動する。摺動面111a上に移動した潤滑剤により、一方の刃部11の摺動面111aが、他方の刃部11の摺動面111aと摺動する際の摩擦抵抗を減らすことができるため、理美容鋏10Aを滑らかに開閉することができる。
【0048】
刃部11の切れ味が悪くなると、切れ味を復活させるために、刃部11を研磨する必要がある。一般に、刃部11を研磨する際には、刃表112を中心に研磨し、刃裏111は、刃表112ほど研磨されない。したがって、刃裏111に凹部117を設けることにより、凹部117が長期にわたって維持されるため、理美容鋏10Aの滑らかな開閉を長期にわたって維持できる。
【0049】
両方の鋏部材1の刃部11の刃裏111に凹部117が設けられていることにより、理美容鋏10Aの開閉がより滑らかになる。
【0050】
凹部117が刃先113と交差しており、かつ、刃先113において刃部11を貫通していないことにより、摺動面111aに、底部を有する凹部117が形成される。摺動面111aが、底部を有する凹部117を備えていることにより、摺動面111aが潤滑剤で覆われやすくなるため、理美容鋏10Aの開閉がより滑らかになる。
【0051】
凹部117が摺動面111aから凹曲面111bにかけて延びていることにより、凹曲面111bの凹部117に溜まった潤滑剤が、凹部117内を通って、摺動面111aの凹部117まで移動する。これにより、摺動面111aが潤滑剤で覆われやすくなるため、理美容鋏10Aの開閉がより滑らかになる。
【0052】
理美容鋏10Aを開閉する際に、一方の中間部13の触点131は、他方の中間部13の触点131と摺動する。触点131に凹部132が設けられていることにより、凹部132内に、理美容鋏10Aのメンテナンス時に注した油や、毛髪を切断した際に毛髪から出た油などの、潤滑剤を貯留することができる。理美容鋏10Aの使用時に、理美容鋏10Aは、使用者によって様々な向きに配向される。また、理美容鋏10Aは、繰り返しの開閉により、振動する。理美容鋏10Aの向きや理美容鋏10Aに与えられた振動により、凹部132内に溜まった潤滑剤は、触点131の表面上に移動する。触点131の表面上に移動した潤滑剤により、一方の触点131が他方の触点131と摺動する際の摩擦抵抗を減らすことができるため、理美容鋏10Aの開閉が滑らかになる。
【0053】
両方の鋏部材1の中間部13の触点131に凹部132が設けられていることにより、理美容鋏10Aの開閉がより滑らかになる。
【0054】
<A-3.変形例>
第一実施形態に係る理美容鋏10Aは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明は、例えば、以下の変形例に示す構成に変更可能である。以下で説明する変形例は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【0055】
(1)凹部117は、必ずしも先端115から刃元116にかけて刃線方向X全長にわたって設けられている必要はなく、刃裏111の一部にだけ設けられていてもよい。
【0056】
(2)理美容鋏10Aは、全ての凹部117が、刃線方向Xに対して傾斜して延びている実施形態に限定されない。
図6Aに示すように、全ての凹部117は、刃線方向Xと平行に延びていてもよい。あるいは、
図6Bに示すように、刃線方向Xに対して傾斜した長手状の少なくとも一つの凹部117と、刃線方向Xと平行の長手状の少なくとも一つの凹部117とが、混在していてもよい。複数の凹部117は、互いに交差していてもよい。
【0057】
(3)理美容鋏10Aは、全ての凹部117が、刃先113と交差している実施形態に限定されない。一部の凹部117のみが刃先113と交差していてもよく、または、
図6Cに示すように、全ての凹部117が、刃先113と交差していなくてもよい。また、全ての凹部117は、凹曲面111bのみに設けられていてもよい。あるいは、全ての凹部117は、摺動面111aのみに設けられていてもよい。あるいは、一部または全ての凹部117は、摺動面111aのみに設けられ、かつ刃先113と交差していなくてもよい。あるいは、一部または全ての凹部117は、摺動面111aから凹曲面111bにかけて延びており、かつ刃先113と交差していなくてもよい。
【0058】
(4)平面視での凹部117の形状は、長手状に限定されない。平面視での凹部117の形状は、例えば、真円形(
図7A参照)、または正方形(
図7B参照)などの正多角形であってもよい。また、異なる形状の凹部117が混在していてもよい。
【0059】
(5)断面視での凹部117の底部の形状は、四角形に限定されない。断面視での凹部117の底部の形状は、例えば、円形(
図8A参照)、または三角形(
図8B参照)などの多角形であってもよい。また、異なる底部形状を有する凹部117が混在していてもよい。
【0060】
(6)凹部132は、必ずしも触点131全体に設けられている必要はなく、触点131の一部にだけ設けられていてもよい。
【0061】
(7)平面視での凹部132の形状は、鋏部材1の長さ方向に延びる長手状に限定されない。平面視での凹部132の形状は、例えば、真円形(
図9A)、または、鋏部材1の幅方向に延びる長手状(
図9B)であってもよい。断面視での凹部132の底部の形状は、四角形に限定されず、凹部117の底部の形状と同様に、円形または三角形などの多角形であってもよい。
【0062】
(8)なお、触点131は必要に応じて設けられるものである。理美容鋏1Aは、触点131を有していなくてもよい。触点131の代替技術(すなわち、触点131を有さない理美容鋏)は、例えば、特開2015-146854号公報、または特開2018-79186号公報に開示されている。
【0063】
(9)
図10に示すように、少なくとも一方の鋏部材1の刃部11と柄部12とは、別々の部材から構成されていてもよい。
図10に示す鋏部材1は、第一鋏部材1’、および第一鋏部材1’とは別部材である第二鋏部材1’’、を備える。第一鋏部材1’は、刃部11、および刃部11と一体形成された第一中間部13’を備える。第二鋏部材1’’は、柄部12、および柄部12と一体形成された第二中間部13’’を備える。第一中間部13’と第二中間部13’’とは、ネジや接着剤によって固定される。
【0064】
<B.第二実施形態>
図11から
図14を参照して、第二実施形態に係る理美容鋏10Bについて説明する。以下では、第一実施形態に係る理美容鋏10Aとの相違点を中心に説明し、第一実施形態に係る理美容鋏10Aと同一の構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0065】
<B-1.理美容鋏の構造>
第二実施形態に係る理美容鋏10Bの構造は、凹部117の構造および刃先113の形状を除いて、第一実施形態に係る理美容鋏10Aの構造と同じである。より詳細には、理美容鋏10Bは、
図12Aに示すように、少なくともいくつかの凹部117が、刃先113付近に、刃部11を貫通する第一部分117aを有しており、この第一部分117aにより、刃先113に、鋸刃のような複数の凹凸が形成されている点で、理美容鋏10Aと相違する。
【0066】
理美容鋏10Bでは、少なくとも一方の鋏部材1の刃部11の刃先113に凹凸が形成されている。好ましくは、両方の鋏部材1の刃部11の刃先113に凹凸が形成されている。
【0067】
刃先113の凹凸は、刃先113の刃線方向Xの全長にわたって形成されている。
【0068】
図12Aに示すように、一部または全ての凹部117は、刃先113からの長さL3を有する第一部分117aと、第一部分117aよりも刃峰114側に位置する第二部分117bと、を有する。長さL3は、例えば、0.1mm~1mmである。
【0069】
図12Bに示すように、第一部分117aは、底部を有していない。すなわち、第一部分117aは、刃部11を貫通する貫通溝である。
【0070】
図12Cに示すように、第二部分117bは、刃部11を貫通しておらず、底部を有している。
【0071】
図12Aに示すように、貫通溝である複数の第一部分117aが、刃線方向Xに間隔をあけて設けられていることにより、刃先113には、鋸刃のような複数の凹凸が形成される。
【0072】
理美容鋏10Bの凹部117も、既に説明したように、例えば、切削や研削などの機械加工、放電加工またはレーザ加工によって形成できる。
【0073】
ここで、理美容鋏10Bの凹部117の作製方法の一例について、より詳細に説明する。エンドミルが刃先113で刃部11を貫通するように、エンドミルを刃先113から刃峰114に向けて移動させると、刃先113付近には、刃部11を貫通する第一部分117aが形成される。一方、
図2に示すように、刃部11の厚みは、刃峰114側に向かうにしたがい大きくなるため、エンドミルは、刃峰114側に移動するにしたがい刃部11を貫通しなくなる。そのため、第一部分117aよりも刃峰114側には、底部を有する第二部分117bが形成される。
【0074】
<B-2.理美容鋏の特徴>
第二実施形態に係る理美容鋏10Bは、第一実施形態に係る理美容鋏10Aの特徴に加え、以下の特徴を有する。
【0075】
刃先113が複数の凹凸を有していることにより、刃先113が毛髪に引っ掛かりやすくなり、一対の刃部11によって毛髪をしっかりと挟むことができる。これにより、毛髪に対する刃先113の滑りを抑制できるため、理美容鋏10Bの切れ味を向上させることができる。
【0076】
既に述べたように、理美容鋏10Bの切れ味が悪くなると、切れ味を復活させるために、刃部11を研磨する必要がある。一般に、刃部11を研磨する際には、刃表112を中心に研磨し、刃裏111は、刃表112ほど研磨されない。したがって、従来技術のように、刃表112に凹部117が設けられている場合、研磨によって凹部117が短期間でなくなってしまう。刃表112の凹部117がなくなることにより、刃先113の凹凸もなくなってしまう。これに対し、本発明の理美容鋏10Bのように、刃裏111に凹部117が設けられていることにより、凹部117が長期にわたって維持されるため、長期にわたって刃先113の凹凸が維持される。
【0077】
<B-3.変形例>
第二実施形態に係る理美容鋏10Bは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明は、例えば、以下の変形例に示す構成に変更可能である。以下で説明する変形例は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせ可能である。また、既に説明した第一実施形態に係る理美容鋏10Aの変形例は、第二実施形態に係る理美容鋏10Bの趣旨を逸脱しない範囲で、適宜、第二実施形態に係る理美容鋏10Bにも適用できる。
【0078】
(1)刃先113の凹凸は、刃先113の刃線方向Xの一部にだけ設けられていてもよい。
【0079】
(2)理美容鋏10Bは、全ての凹部117が第一部分117aを有している実施形態に限定されない。
図13Aから
図13Cに示すように、少なくとも一部の凹部117が、第一部分117aを有していればよい。すなわち、一部の凹部117が、第一部分117aと第二部分117bとから構成されており、残りの凹部117が、第一部分117aを有しておらず第二部分117bのみから構成されていてもよい。
【0080】
(3)第一部分117aの形状(すなわち、刃先113の凹溝の形状)は、例えば、三角形(
図14参照)などの多角形であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
10A,10B 理美容鋏
1 鋏部材
11 刃部
111 刃裏
112 刃表
113 刃先
114 刃峰
117 凹部
117a 第一部分
117b 第二部分
12 柄部
13 中間部
131 触点
132 凹部
【手続補正書】
【提出日】2022-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の鋏部材を備える理美容鋏であって、
前記一対の鋏部材はそれぞれ、刃部、柄部、および前記刃部と前記柄部との間の中間部を備え、
前記一対の鋏部材のそれぞれの刃部は、刃裏、前記刃裏とは反対側の刃表、刃先および前記刃先とは反対側の刃峰を有しており、
少なくとも一方の前記鋏部材の前記刃部の前記刃裏には、潤滑剤が貯留される、底部を有する複数の凹部が設けられており、
前記複数の凹部のうちの少なくともいくつかの凹部は、前記刃先と交差している、
理美容鋏。
【請求項2】
前記刃先と交差する前記少なくともいくつかの凹部は、全長にわたって底部を有する、
請求項1に記載の理美容鋏。
【請求項3】
一対の鋏部材を備える理美容鋏であって、
前記一対の鋏部材はそれぞれ、刃部、柄部、および前記刃部と前記柄部との間の中間部を備え、
前記一対の鋏部材のそれぞれの刃部は、刃裏、前記刃裏とは反対側の刃表、刃先および前記刃先とは反対側の刃峰を有しており、
少なくとも一方の前記鋏部材の前記刃部の前記刃裏には、潤滑剤が貯留される、底部を有する複数の凹部が設けられており、
前記複数の凹部のうちの少なくともいくつかの凹部は、前記刃先と交差すると共に前記刃先において前記刃部を貫通している第一部分と、前記第一部分よりも前記刃峰側に位置しかつ底部を有する第二部分と、から構成されており、
前記少なくともいくつかの凹部は、刃線方向に互いに間隔をあけて設けられており、
前記少なくともいくつかの凹部により、前記刃先には、複数の凹凸が形成されている、
理美容鋏。
【請求項4】
一対の鋏部材を備える理美容鋏であって、
前記一対の鋏部材はそれぞれ、刃部、柄部、および前記刃部と前記柄部との間の中間部を備え、
前記一対の鋏部材のそれぞれの刃部は、刃裏、前記刃裏とは反対側の刃表、刃先および前記刃先とは反対側の刃峰を有しており、
両方の前記鋏部材の前記刃部の前記刃裏には、潤滑剤が貯留される、底部を有する複数の凹部が設けられている、
理美容鋏。
【請求項5】
一対の鋏部材を備える理美容鋏であって、
前記一対の鋏部材はそれぞれ、刃部、柄部、および前記刃部と前記柄部との間の中間部を備え、
前記一対の鋏部材のそれぞれの刃部は、刃裏、前記刃裏とは反対側の刃表、刃先および前記刃先とは反対側の刃峰を有しており、
少なくとも一方の前記鋏部材の前記刃部の前記刃裏には、潤滑剤が貯留される、底部を有する複数の凹部が設けられており、
前記一対の鋏部材のそれぞれの中間部の裏面には、相手側の前記鋏部材の前記中間部の裏面と接触する触点が設けられており、
少なくとも一方の前記鋏部材の前記触点には、潤滑剤が貯留される、底部を有する複数の凹部が設けられている、
理美容鋏。
【請求項6】
両方の前記鋏部材の前記中間部の前記触点に、前記複数の凹部が設けられている、
請求項5に記載の理美容鋏。
【請求項7】
前記刃裏に設けられた前記複数の凹部のうちの少なくともいくつかの凹部は、前記刃先と交差している、
請求項4から6のいずれか1項に記載の理美容鋏。