(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178563
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/16 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
B62D1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091315
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】野沢 康行
(72)【発明者】
【氏名】時岡 良一
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DC13
3D030DC16
3D030DC37
3D030DD63
(57)【要約】
【課題】カバー部材との係合を解除して移動部材を固定部材よりも前方に移動させる。
【解決手段】操舵部材200が取り付けられる操舵入力軸体110を回転可能に支持し、車両の前後方向において往復移動可能な可動部材120と、車両に固定され、可動部材120を往復移動可能に支持する固定部材130と、可動部材120と固定部材130との間隙を覆う伸縮可能なカバー部材140と、を備え、カバー部材140は、固定部材130に固定される固定部141と、固定部141と異なる位置に配置され、後方に移動する可動部材120と係合し、前方に移動する可動部材120と離隔可能な係合部材142と、を備えるステアリング装置100。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵部材が取り付けられる操舵入力軸体を回転可能に支持し、車両の前後方向において往復移動可能な可動部材と、
車両に固定され、前記可動部材を往復移動可能に支持する固定部材と、
前記可動部材と前記固定部材との間隙を覆う伸縮可能なカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、
前記固定部材に取り付けられる固定部と、
前記固定部と異なる位置に配置され、後方に移動する前記可動部材と係合し、前方に移動する前記可動部材と離隔可能な係合部材と、を備える
ステアリング装置。
【請求項2】
前記カバー部材の収縮状態を維持する維持手段を備える
請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記維持手段は、
前記固定部材の後端部に取り付けられる接続部材と、
前記カバー部材の後端部に取り付けられ、前記可動部材を前記固定部材よりも前進させた状態では前記接続部材と接続される被接続部材を備え、
前記係合部材は、
前記可動部材が前記固定部材より後方に移動した状態から前記被接続部材が前記接続部材と接続するまでは、前記カバー部材を収縮可能に前記可動部材と接続され、前記可動部材が前記固定部材より前方に移動した状態では、前記可動部材と離隔する、
請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、
前記可動部材の車両の前後方向に対して交差する面において、前記可動部材と対向する第一対向面と、
前記可動部材の車両の前後方向に対して交差する面において、前記固定部材と対向する第二対向面と、を備え、
前記係合部材は、
前記第一対向面に設けられ、
前記被接続部材は、
前記第二対向面に設けられ、
前記可動部材は、
前記第一対向面に対向する第一受け部を備え、
前記固定部材は、
前記第二対向面に対向する第二受け部を備える
請求項3に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などにおいて運転者が操舵する操舵部材を保持するステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者が操舵する操舵部材を車両の前側に移動させて自動運転時における運転者の居住性を向上させる格納式のステアリング装置が知られている。例えば、特許文献1には、固定部材に対して操舵部材を保持する可動部材が往復動する機構が記載されている。このような、操舵部材を往復動させる機構には、往復動機構への異物の混入防止、往復動機構と手指などとの接触防止、意匠性向上などのため、往復動機構を覆い隠すカバー部材が設けられる場合がある。例えば特許文献2には可撓性を有するカバー部材に関する技術が記載されている。特許文献3には、ステアリングの伸縮に応じてスライドするカバー部材に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/193956号
【特許文献2】特開2019-156166号公報
【特許文献3】実開平5-78665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、カバー部材は、一端部が固定部材に固定され、他端部が可動部材に固定された構造となっており、可動部材の往復動に対応してカバー部材が展開し収縮するため、カバー部材によって可動部材の移動範囲が制限される場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、カバー部材によらず可動部材の移動範囲を大きくすることができるカバー部材を備えたステアリング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の1つであるステアリング装置は、操舵部材が取り付けられる操舵入力軸体を回転可能に支持し、車両の前後方向において往復移動可能な可動部材と、車両に固定され、前記可動部材を往復移動可能に支持する固定部材と、前記可動部材と前記固定部材との間隙を覆う伸縮可能なカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、前記固定部材に取り付けられる固定部と、前記固定部と異なる位置に配置され、後方に移動する前記可動部材と係合し、前方に移動する前記可動部材と離隔可能な係合部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カバー部材との係合を解除して可動部材を固定部材よりも車両の前方に移動させ、固定部材よりも可動部材を車両の後方に移動させる際にカバー部材を可動部材に係合させることで、可動部材の移動範囲を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】操舵部材を保持した伸長状態のステアリング装置を示す斜視図である。
【
図2】操舵部材を保持した収縮状態のステアリング装置を示す斜視図である。
【
図3】カバー部材の近傍を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第一態様に係るステアリング装置は、操舵部材が取り付けられる操舵入力軸体を回転可能に支持し、車両の前後方向において往復移動可能な可動部材と、車両に固定され、前記可動部材を往復移動可能に支持する固定部材と、前記可動部材と前記固定部材との間隙を覆う伸縮可能なカバー部材と、を備え、前記カバー部材は、前記固定部材に取り付けられる固定部と、前記固定部と異なる位置に配置され、後方に移動する前記可動部材と係合し、前方に移動する前記可動部材と離隔可能な係合部材と、を備える。
【0010】
これによれば、可動部材を固定部材よりも車両前方に移動させる際に、可動部材とカバー部材とを離隔させることができ、カバー部材に影響されることなく可動部材を車両の前方に移動させることができる。
【0011】
本発明の第二態様に係るステアリング装置は、前記第一態様に加えて、前記カバー部材の収縮状態を維持する維持手段を備える。
【0012】
これによれば、可動部材とカバー部材とが離隔状態になった場合でも、カバー部材の収縮状態が維持され、不本意にカバー部材が展開する状態を抑制することができる。
【0013】
本発明の第三態様に係るステアリング装置は、前記第一態様、または前記第二態様に加えて、前記維持手段は、前記固定部材の後端部に取り付けられる接続部材と、前記カバー部材の後端部に取り付けられ、前記可動部材を前記固定部材よりも前進させた状態では前記接続部材と接続される被接続部材を備え、前記係合部材は、前記可動部材が前記固定部材より後方に移動した状態から前記被接続部材が前記接続部材と接続するまでは、前記カバー部材を収縮可能に前記可動部材と接続され、前記可動部材が前記固定部材より前方に移動した状態では、前記可動部材と離隔する。
【0014】
また、本発明の第四態様に係るステアリング装置は、前記第三態様に加えて、前記カバー部材は、前記可動部材の車両の前後方向に対して交差する面において、前記可動部材と対向する第一対向面と、前記可動部材の車両の前後方向に対して交差する面において、前記固定部材と対向する第二対向面と、を備え、前記係合部材は、前記第一対向面に設けられ、前記被接続部材は、前記第二対向面に設けられ、前記可動部材は、前記第一対向面に対向する第一受け部を備え、前記固定部材は、前記第二対向面に対向する第二受け部を備える。
【0015】
これによれば、係合部材と可動部材とが係合している状態においては、カバー部材は、可動部材の移動に伴って展開、または収縮する。係合部材と可動部材とが離隔している状態においては、被接続部材と固定部材とが接続されることによりカバー部材の収縮状態が維持される。また、可動部材はカバー部材に影響されることなく車両の前方に移動することができる。
【0016】
以下、本発明に係るステアリング装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するために一例を挙示するものであり、本発明を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0017】
また、図面は、本発明を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。
【0018】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本発明に関する任意の構成要素として説明している。
【0019】
図1は、操舵部材200を保持した伸長状態のステアリング装置100を示す斜視図である。
図2は、操舵部材200を保持した収縮状態のステアリング装置100を示す斜視図である。
図3は、カバー部材140の近傍を模式的に示す側面図である。ステアリング装置100は、操舵部材200が取り付けられる操舵入力軸体110を回転可能に支持し、車両の前後方向において、運転者が操舵可能な車両の後ろ側の位置である後方位置と車両の前側の位置である前方位置との間で移動可能に操舵部材200を保持する装置である。ステアリング装置100は、少なくとも直線的に操舵部材200を往復移動させることができる。ステアリング装置100は、可動部材120と、固定部材130と、カバー部材140と、を備えている。
【0020】
操舵入力軸体110は、可動部材120に取り付けられ、操舵部材200を回転可能に保持する車両の前後方向に延在する棒状の部材である。操舵入力軸体110の形状は、特に限定されるものではなく、円柱形状、六角柱形状などを例示することができる。また、操舵入力軸体110は、軸方向において断面形状や断面積が変化するものでもかまわない。本実施の形態の場合、操舵入力軸体110は、可動部材120に垂下状態で固定的に取り付けられる第一筐体111を介して軸回りに回転可能に可動部材120に取り付けられている。第一筐体111は、反力伝達装置(不図示)の一部を収容する筐体であり、操舵入力軸体110を回転可能に保持する軸受(不図示)を備えている。なお、操舵入力軸体110の軸と可動部材120の移動方向とは平行でなくてもよい。
【0021】
操舵入力軸体110の車両の前側には、可動部材120とともに移動する部材が存在しない領域が広がっている。これにより、可動部材120、および可動部材120とともに移動する部材と車両部材などとの干渉を回避することができ、可動部材120の後方側端部を固定部材130の後方側端部よりも車両の前方側に移動させることができる。
【0022】
可動部材120は、操舵部材200が取り付けられる操舵入力軸体110を操舵入力軸体110の軸周りに回転可能に支持し、車両の前後方向において固定部材130に対して直線的に往復移動可能な部材である。本実施の形態の場合、可動部材120は、固定部材130に対し案内機構121を介して往復移動可能に連結されている。また、可動部材120の往復移動は、移動装置122によって実現されている。
【0023】
案内機構121の種類は、特に限定されるものではない。本実施の形態の場合、案内機構121は、固定部材130側に取り付けられるレールと可動部材側に取り付けられるレールとが転動体を介して連結されるレール機構である。レール機構である案内機構121は、車両の前後方向に延在した状態で固定部材130、および可動部材120にそれぞれ固定されている。なお、レール機構は、転動体を介さず2つのレールが直接接触して滑り動くものでも構わない。また、案内機構121は、レール機構に限定されず、外側の筒と内側の筒とで構成されるテレスコピック機構などでもかまわない。
【0024】
可動部材120の形状は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、可動部材120の車両の前後方向に垂直な断面形状は、L字形状を右に90度回転させた形状であり、板状の可動天板部123と、幅方向(図中左右方向)における可動天板部123の一方側(図中左側)において垂下状に延在する可動壁部125とを備えている。
【0025】
可動天板部123は、操舵入力軸体110の前方領域に対応する部分に切り欠きが設けられている。可動天板部123に切り欠きを設けることにより、前方位置における可動部材120が車両部材と干渉することを回避でき、可動部材120を車両のより前方に配置することが可能となる。
【0026】
固定部材130は、車体が備える構造部材の一つであるリインフォースなどに固定的に取り付けられる部材である。固定部材130は、可動部材120を車両の前後方向に往復移動可能に支持する。固定部材130の車体への取り付け態様は限定されるものではないが、本実施の形態の場合、車体の幅方向に張り渡されるリインフォースに対し吊り下げられた状態で取り付けられている。
【0027】
固定部材130の形状は、特に限定されるものではないが、可動部材120の形状に対応した形状が設定される。本実施の形態の場合、固定部材130の形状は、可動部材120の形状に類似し、車両の前後方向に垂直な固定部材130の断面形状は、L字形状を右に90度回転させた形状である。固定部材130は、板状の固定天板部131と、幅方向(図中左右方向)における固定天板部131の一方側(図中左側)において垂下状に延在する固定壁部132とを備えている。
【0028】
本実施の形態の場合、固定天板部131と可動天板部123との間に、水平面内に配置され、車両の前後方向に延在するレール機構である第一の案内機構121が設けられている。また、固定壁部132と可動壁部125との間に、垂直面内に配置され、車両の前後方向に延在するレール機構である第二の案内機構(不図示)が設けられている。
【0029】
固定部材130の下方には、可動部材120を移動させるための移動装置122が取り付けられている。移動装置122の種類は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、車両の前後方向に延在するように固定ブラケット127を介して可動部材120に固定的に取り付けられる送りボルト128と、送りボルト128に噛み合い、送りボルト128の回転により可動部材120の車両の前後方向に往復動する可動ナット124と、送りボルト128を回転させるモータ(不図示)と、を備えている。
【0030】
カバー部材140は、可動部材120と固定部材130との間隙を覆う伸縮可能な部材である。カバー部材140は、カバー本体104と、固定部141と、係合部材142とを備えている。本実施の形態の場合、カバー部材140は、維持手段143を備えている。
【0031】
カバー本体104は、可動部材120と固定部材130との間隙を覆う部分である。カバー本体104の種類は、特に限定されるものではない。例えばカバー本体104としては、シャッターのように、比較的硬質の複数の板状部材を折り曲げ可能に連結し、巻きつけることにより収縮させ、巻き戻すことにより伸長させる部材を例示することができる。また、カバー本体104としては、ロールスクリーンのように、柔軟性を有する布帛などを巻きつけることにより収縮させ、巻き戻すことにより伸長させる部材も例示することができる。また、カバー本体104としては、ブラインドのように、複数の板状部材を積み重ねることにより収縮させ、複数の板状部材の一部を重ねた状態で広げることにより伸長させる部材などを例示することができる。本実施の形態の場合、カバー本体104としては、ジグザグに連結された板状部材を折りたたむことにより収縮させ、それぞれの折り目を広げることで伸長させる蛇腹状の部材が採用されている。
【0032】
カバー本体104がカバーする可動部材120と固定部材130との間隙は、特に限定されるものではない。本実施の形態の場合、カバー本体104は、案内機構121が設けられている固定天板部131と可動天板部123との間、および固定壁部132と可動壁部125との間の2箇所を覆っている。カバー本体104の車両の前後方向に直交する面の断面形状は、可動部材120、固定部材130と同様、L字形状を右に90度回転させた形状である。これにより、案内機構121への異物の侵入や、案内機構121への運転者の接触をカバー部材140により回避することができる。なお、カバー本体104の形状は、特に限定されるものではない、例えば固定部材130と可動部材120との間隙全体を覆う円筒、角筒などの筒形状であってもかまわない。また、カバー部材140は、分離された複数のカバー本体104を備えてもかまわない。
【0033】
固定部141は、車両の前後方向における前端部において固定部材130に取り付けられるカバー本体104の部分である。本実施の形態の場合、カバー本体104の固定部141は、固定部材130の後端部に接着剤などで接着固定されている。固定部141は、固定天板部131、および固定壁部132の端面全体にわたって固定されている。
【0034】
係合部材142は、車両の前後方向におけるカバー本体104の後端部に取り付けられる部材である。係合部材142は、後方に移動する可動部材120と係合することによりカバー本体104を伸長させる力が付与される。また、係合部材142は、所定の位置において前方に移動する可動部材120と離隔可能となっている。本実施の形態の場合、係合部材142は、カバー本体104の車両の前後方向に垂直な断面形状に対応したL字形状を右に90度回転させた形状である。なお、係合部材142は、カバー本体104の後端において上下左右に広がるL字形状の板部材の一部であり、具体的には、カバー本体104の水平に広がる部分(
図1、
図2に破線で示す部分)から下方に突出した部分であり、カバー本体104の垂直面に広がる部分(
図1、
図2に一点鎖線で示す部分)から右方に突出した部分である。なお、
図1、
図2に示す破線、一点鎖線は係合部材142、被接続部材(後述)を区別して示すための仮想的な線である。
【0035】
本実施の形態の場合、係合部材142は、
図3の(a)の段に示すように、可動部材120が固定部材130より後方に移動した状態から被接続部材145が接続部材144と接続するまでは、カバー本体104を収縮可能に可動部材120と接続される。具体的には、係合部材142は、鉄板など磁力により可動部材120の後端部に取り付けられた被係合部材126と接続される部材である。係合部材142は、可動部材120が固定部材130よりも後方に配置された状態から前方に移動する力を、カバー本体104を収縮させる力として利用する。このため、可動部材の後端部には、係合部材142と磁力により接続可能な被係合部材126が取り付けられている。また、
図3の(b)の段に示すように、係合部材142と被係合部材126は、可動部材120が固定部材130より前方に移動した状態では磁力による係合関係が解除され、可動部材120と係合部材142とは離隔状態となる。
【0036】
維持手段143は、カバー本体104の収縮状態を維持する装置である。維持手段143の種類は、特に限定されるものではない。本実施の形態の場合、維持手段143は、固定部材130の後端部に取り付けられる接続部材144と、カバー部材140の後端部に取り付けられ、可動部材120を固定部材130よりも前進させた状態では接続部材144と接続される被接続部材145を備えている。具体的には、接続部材144は磁石である。被接続部材145は、鉄板など接続部材144と磁力により接続される部材である。被接続部材145は、カバー本体104の後端において上下左右に広がるL字形状の板部材の一部であり、カバー本体104の水平に広がる部分(
図1、
図2に破線で示す部分)から上方に突出した部分であり、カバー本体104の垂直面に広がる部分(
図1、
図2に一点鎖線で示す部分)から左方に突出した部分である。なお、係合部材142と被接続部材145は、一体に成形された鉄板である。
【0037】
次に、可動部材120の移動に伴うカバー部材140の動作を説明する。
図3に示すように、カバー部材140は、可動部材120の車両の前後方向に対して交差する面において、可動部材120と対向する第一対向面151と、可動部材120の車両の前後方向に対して交差する面において、固定部材130と対向する第二対向面152と、を備えている。係合部材142は、第一対向面151に設けられ、被接続部材145は、第二対向面152に設けられている。換言すると、係合部材142は、第一対向面151を構成し、非接続部材145は、第二対向面152を構成する。可動部材120は、第一対向面151に対向する第一受け部153を備え、固定部材130は、第二対向面152に対向する第二受け部154を備えている。
【0038】
まず、前方位置に配置された可動部材120が後方位置に移動する際の動作について説明する。
図3の(b)の段に示すように、固定部材130の前方である前方位置に可動部材120が配置された状態においては、可動部材120の第一受け部153と係合部材142の第一対向面151とは離間している。被接続部材145と固定部材130とは接続部材144の磁力により接続されている。前方位置にある可動部材120を固定部材130の後方である後方位置へ移動させると、可動部材120の第一受け部153が、係合部材142の第一対向面151に当接する。これにより係合部材142が可動部材120に接続される。本実施の形態の場合、可動部材120に取り付けられた被係合部材126の磁力に基づき係合部材142と可動部材120とが被係合部材126を介して接続される。次に、
図3の(a)の段に示すように、さらに可動部材120が車両後方へ移動することで、係合部材142と一体の被接続部材145が後方に押し出され、接続部材144から被接続部材145とが離脱し被接続部材145と固定部材130とが離間する。被接続部材145と固定部材130との間に架橋状に接続され、折りたたまれた状態となっていたカバー本体104は、可動部材120の移動に伴い展開し、可動部材120と固定部材130との間隙を覆い隠す。
【0039】
次に、後方位置に配置された可動部材120が前方位置に移動する際の動作について説明する。
図3の(a)の段に示すように、後方位置に可動部材120が配置された状態においては、可動部材120と係合部材142とは被係合部材126の磁力により接続されている。被接続部材145と固定部材130とは離間している。可動部材120を前方に移動させると、被接続部材145の第二対向面152と接続部材144の第二受け部154とが当接し、接続部材144の磁力により被接続部材145と固定部材130とが接続される。この段階では、係合部材142と可動部材120も接続状態である。さらに、
図3の(b)の段に示すように、可動部材120の後端を固定部材130の後端より車両前方へ移動させると、可動部材120から係合部材142が離脱する。これにより、カバー部材144に影響されることなく可動部材120を車両前方へ移動させることができる。また、固定部材130の第二受け部154と被接続部材145の第二対向面152との接続が磁力により維持されることで、カバー本体104の収縮状態が維持される。
【0040】
本実施の形態に係るステアリング装置100によれば、固定部材130と可動部材120との間隙を覆うカバー部材140であって、可動部材120を固定部材130よりも後方に移動させることによりカバー部材140を展開し、可動部材120を固定部材130に向かって前方に移動させることによりカバー部材140を収縮させるステアリング装置100において、可動部材120とカバー部材140との接続関係を解除して固定部材130よりも前方に可動部材120を移動させることができる。これにより、ステアリング装置100が保持する操舵部材200を運転者から車両の前方に向けて遠くの位置に配置することができ、運転者の前方の空間を広く確保することができる。また、操舵部材200を運転者が操作できる位置に配置するように、可動部材120を車両後方に移動させた際に、露出する案内機構121の一部をカバー部材140が覆うことができ、案内機構121に異物が付着することを防止し、運転者が案内機構121に触れることを防止できる。また、固定部材130と可動部材120との間隙をカバー部材140が覆うことでステアリング装置100の意匠性を向上させることができる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0042】
例えば、維持手段143は、磁力により接続されるものに限定されない。例えば、メカニカルなフック構造などでよい。メカニカルなフック構造としては、
図4に示すような挟む方向の付勢力を備えたローラーキャッチ構造を例示することができる。またメカニカルなフック構造としては、
図5に示すような可動部材120が固定部材130よりも前方に移動すると、被接続部材145でレバー上の接続部材144を押し、
図5の(b)の段に示すようにレバーが回って接続状態となりカバー本体104の収縮状態を維持する構造を例示することもできる。また、メカニカルなフック構造として面ファスナーを採用してもかまわない。
【0043】
また、維持手段143は、
図6に示すようなカバー本体104の収縮状態を維持するバネでもかまわない。この場合、
図6の(a)の段に示すように、後方に移動する可動部材120と係合する係合部材142には、維持手段143の付勢力に抗してカバー本体104を伸長させる力が付与される。また、前方に移動する可動部材120と係合部材142とが係合している間は、維持手段143の付勢力により可動部材120の移動に従ってカバー本体104が収縮し、
図6の(b)の段に示すように、可動部材120と係合部材142とが離隔した後は、維持手段143の付勢力によりカバー本体104の収縮状態が維持される。バネである維持手段143は、骨組みなどとしてカバー本体104に内蔵されてもかまわない。また、
図7に示すように、係合部材142と可動部材120との間に維持手段143が接続されてもかまわない。
【0044】
また、係合部材142と被係合部材126とが磁力により接続されるものとして説明したが、係合部材142と被係合部材126との接続関係は、維持手段143と同様にメカニカルなフック構造などでもかまわない。
【0045】
また、可動部材120が前方位置に配置された状態で、係合部材142の位置が固定部141よりも前方に来る場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、自動車、バス、トラックなどの車両を操舵するステアバイワイヤ形式のステアリング装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
100…ステアリング装置、104…カバー本体、110…操舵入力軸体、111…第一筐体、120…可動部材、121…案内機構、122…移動装置、123…可動天板部、124…可動ナット、125…可動壁部、126…被係合部材、127…固定ブラケット、128…送りボルト、130…固定部材、131…固定天板部、132…固定壁部、140…カバー部材、141…固定部、142…係合部材、143…維持手段、144…接続部材、145…被接続部材、151…第一対向面、152…第二対向面、153…第一受け部、154…第二受け部、200…操舵部材