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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178564
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】スライドドア駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/643 20150101AFI20231211BHJP
   E05F 15/655 20150101ALI20231211BHJP
   E05F 11/54 20060101ALI20231211BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20231211BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
E05F15/643
E05F15/655
E05F11/54 A
B60J5/04 C
B60J5/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091321
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】礒野 大志
(72)【発明者】
【氏名】森 健太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭紀
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA04
2E052DB04
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC01
2E052KA15
(57)【要約】
【課題】車両の組立時までベルトブラケットを保持できるとともに、車両の組立後にベルトを保護できるスライドドア駆動装置を提供する。
【解決手段】スライドドア駆動装置40は、長尺のガイドフレーム50と、ガイドフレーム50の長手方向における両端部にそれぞれ回転可能に支持される第1従動プーリ74及び第2従動プーリと、第1従動プーリ74及び第2従動プーリに巻き掛けられるベルト81と、ベルト81に連結されるベルト連結部821及びスライドドア30に連結されるドア連結部822を有するベルトブラケット82と、ガイドフレーム50の上方に設置される保持機構90と、を備える。保持機構90は、ベルトブラケット82を保持可能な保持位置及びベルト81を被覆可能な被覆位置の間を変位する保持部91と、ガイドフレーム50に固定される固定部92と、保持部91及び固定部92を相対変位可能に接合する接合部と、を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディパネルに固定され、前記車両のスライドドアを開方向及び閉方向に作動させるスライドドア駆動装置であって、
長尺のガイドフレームと、
前記ガイドフレームの長手方向における両端部にそれぞれ回転可能に支持される第1従動プーリ及び第2従動プーリと、
前記第1従動プーリ及び前記第2従動プーリに巻き掛けられるベルトと、
前記ベルトに連結されるベルト連結部と、前記スライドドアに連結されるドア連結部と、を有するベルトブラケットと、
前記ガイドフレームの上方に設置される保持機構であって、前記ベルトブラケットを保持可能な保持位置及び前記ベルトを被覆可能な被覆位置の間を変位する保持部と、前記ガイドフレームに固定される固定部と、前記保持部及び前記固定部を相対変位可能に接合する接合部と、を有する前記保持機構と、を備える
スライドドア駆動装置。
【請求項2】
前記保持位置に位置する前記保持部に保持されるときに前記ベルトブラケットが取る姿勢を退避姿勢としたとき、
前記ベルトブラケットが前記退避姿勢を取る場合、前記ドア連結部は前記ベルト連結部よりも上方に位置する
請求項1に記載のスライドドア駆動装置。
【請求項3】
前記接合部は、ヒンジであり、
前記保持部は、前記保持位置及び前記被覆位置の間を回転しつつ変位する
請求項1又は請求項2に記載のスライドドア駆動装置。
【請求項4】
前記保持機構は、樹脂材料によって一体に構成されており、
前記ヒンジは、前記保持部及び前記固定部よりも薄肉のインテグラルヒンジである
請求項3に記載のスライドドア駆動装置。
【請求項5】
前記保持位置に位置する前記保持部に保持されるときに前記ベルトブラケットが取る姿勢を退避姿勢としたとき、
前記ガイドフレームは、前記退避姿勢を取る前記ベルトブラケットの前記ベルト連結部が係合する係合凹部を有する
請求項1又は請求項2に記載のスライドドア駆動装置。
【請求項6】
前記ベルトブラケットは、前記ベルト連結部及び前記ドア連結部を接続する板状をなす接続部を有し、
前記保持機構は、前記ガイドフレームの長手方向に延びるスリットを有し、
前記ベルトブラケットは、前記接続部が前記スリットに挿入されることにより、前記保持機構に保持される
請求項1又は請求項2に記載のスライドドア駆動装置。
【請求項7】
前記保持位置に位置する前記保持部に保持されるときに前記ベルトブラケットが取る姿勢を退避姿勢とし、前記保持部に保持されなくなるときに前記ベルトブラケットが取る姿勢を解除姿勢としたとき、
前記退避姿勢は、前記解除姿勢に対して、前記ベルトにおける前記ベルトブラケットが連結される部分を当該ベルトの周方向に通る軸線回りに回転させた姿勢である
請求項1又は請求項2に記載のスライドドア駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドア駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のボディパネルに固定されるガイドレールに沿って、スライドドアを開閉作動させるスライドドア駆動装置が知られている。こうしたスライドドア駆動装置は、ガイドレールに沿って延びるガイドフレームと、ガイドフレームの前端及び後端に設けられる2つのプーリと、2つのプーリに巻き掛けられるベルトと、ベルトを駆動するベルト駆動部と、ベルトに連結されるベルトブラケットと、を備える。ベルトブラケットは、車両の組立時に、スライドドアのドアヒンジに連結される。そして、ベルトブラケットは、ベルト駆動部の動力をスライドドアに伝達する。
【0003】
特許文献1には、上壁と上壁から下方に延びるガイド壁とを有するガイドフレームが記載されている。ベルト駆動部がベルトを駆動する場合には、ベルトは、上方から上壁に覆われた状態でガイド壁と摺動する。こうして、特許文献1に記載のスライドドア駆動装置は、上壁によってベルトを保護することを可能としている。
【0004】
特許文献2には、ベルトに連結されたベルトブラケットを保持する保持部を有するガイドフレームが記載されている。ベルトブラケットは、ドアヒンジに対する連結作業が行われるまで、ガイドフレームの保持部に保持される。こうして、特許文献2に記載のスライドドア駆動装置は、ドアヒンジに対するベルトブラケットの連結作業を行うまで、ベルトブラケットが車両の組立作業の妨げになることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-100081号公報
【特許文献2】特開2021-95761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、ガイドフレームに、ベルトを上方から覆う上壁とベルトブラケットを保持する保持部との双方を設けようとすると、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、ブラケットを保持部に保持させたときに、ブラケットが上壁に干渉したり、保持部を適切な位置に設けることができなくなったりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するスライドドア駆動装置は、車両のボディパネルに固定され、前記車両のスライドドアを開方向及び閉方向に作動させるスライドドア駆動装置であって、長尺のガイドフレームと、前記ガイドフレームの長手方向における両端部にそれぞれ回転可能に支持される第1従動プーリ及び第2従動プーリと、前記第1従動プーリ及び前記第2従動プーリに巻き掛けられるベルトと、前記ベルトに連結されるベルト連結部と、前記スライドドアに連結されるドア連結部と、を有するベルトブラケットと、前記ガイドフレームの上方に設置される保持機構であって、前記ベルトブラケットを保持可能な保持位置及び前記ベルトを被覆可能な被覆位置の間を変位する保持部と、前記ガイドフレームに固定される固定部と、前記保持部及び前記固定部を相対変位可能に接合する接合部と、を有する前記保持機構と、を備える。
【0008】
スライドドア駆動装置において、保持機構の保持部は、ベルトブラケットを保持する場合には保持位置に配置される。一方、保持機構の保持部は、ベルトを被覆する場合には被覆位置に配置される。こうして、スライドドア駆動装置は、保持部の位置を変化させることにより、車両の組み立て前までのベルトブラケットの保持と車両の組み立て後のベルトの保護とを両立できる。
【0009】
上記スライドドア駆動装置において前記保持位置に位置する前記保持部に保持されるときに前記ベルトブラケットが取る姿勢を退避姿勢としたとき、前記ベルトブラケットが前記退避姿勢を取る場合、前記ドア連結部は前記ベルト連結部よりも上方に位置することが好ましい。
【0010】
スライドドア駆動装置において、ベルトブラケットは、保持位置に位置する保持部に保持される場合、ドア連結部がベルト連結部よりも上方に位置する退避姿勢を取る。このため、スライドドア駆動装置は、スライドドアとベルトブラケットの連結作業を行うまで、ベルトブラケットが車両の組立作業の妨げになることを抑制できる。
【0011】
上記スライドドア駆動装置において、前記接合部は、ヒンジであり、前記保持部は、前記保持位置及び前記被覆位置の間を回転しつつ変位することが好ましい。
スライドドア駆動装置において、保持部は、保持位置及び被覆位置の間を回転しつつ変位する。このため、スライドドア駆動装置は、保持部を保持位置から被覆位置に容易に変位させることができる。
【0012】
上記スライドドア駆動装置において、前記保持機構は、樹脂材料によって一体に構成されており、前記ヒンジは、前記保持部及び前記固定部よりも薄肉のインテグラルヒンジであることが好ましい。
【0013】
スライドドア駆動装置は、ピンなどを含んで構成されるヒンジで保持部と固定部とを接合する場合と比較して、保持機構の構成を簡素化できる。
上記スライドドア駆動装置において、前記保持位置に位置する前記保持部に保持されるときに前記ベルトブラケットが取る姿勢を退避姿勢としたとき、前記ガイドフレームは、前記退避姿勢を取る前記ベルトブラケットの前記ベルト連結部が係合する係合凹部を有することが好ましい。
【0014】
スライドドア駆動装置において、ベルトブラケットが退避姿勢を取るとき、ベルトブラケットは、保持部に保持されるとともにガイドフレームの係合凹部に係合する。つまり、ベルトブラケットを支える点が少なくとも2つ存在する。このため、スライドドア駆動装置は、ベルトブラケットの退避姿勢を安定化できる。
【0015】
上記スライドドア駆動装置において、前記ベルトブラケットは、前記ベルト連結部及び前記ドア連結部を接続する板状をなす接続部を有し、前記保持機構は、前記ガイドフレームの長手方向に延びるスリットを有し、前記ベルトブラケットは、前記接続部が前記スリットに挿入されることにより、前記保持機構に保持されることが好ましい。
【0016】
スライドドア駆動装置において、ベルトブラケットを保持機構のスリットの形成方向に移動させるだけで、保持機構に対してベルトブラケットを着脱することが可能となる。つまり、保持機構に対するベルトブラケットの着脱が容易となる。
【0017】
上記スライドドア駆動装置において、前記保持位置に位置する前記保持部に保持されるときに前記ベルトブラケットが取る姿勢を退避姿勢とし、前記保持部に保持されなくなるときに前記ベルトブラケットが取る姿勢を解除姿勢としたとき、前記退避姿勢は、前記解除姿勢に対して、前記ベルトにおける前記ベルトブラケットが連結される部分を当該ベルトの周方向に通る軸線回りに回転させた姿勢であることが好ましい。
【0018】
退避姿勢は解除姿勢に対して、ベルトの周方向に延びる軸線回りに回転した姿勢である。このため、ベルトにねじれが発生するものの、ベルトに大きな負荷が作用しにくくなる。したがって、スライドドア駆動装置は、ベルトブラケットが退避姿勢を取るときに、ベルトに負荷が掛かることを抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
スライドドア駆動装置は、車両の組立時までベルトブラケットを保持できるとともに、車両の組立後にベルトを保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、車両の概略構成を示す側面図である。
図2図2は、車両におけるドア開口部よりも後方部分の斜視図である。
図3図3は、スライドドア駆動装置の斜視図である。
図4図4は、スライドドア駆動装置の斜視図である。
図5図5は、保持機構の斜視図である。
図6図6は、保持機構の斜視図である。
図7図7は、車体にスライドドアを組み付けるときの作用を説明する斜視図である。
図8図8は、車体にスライドドアを組み付けるときの作用を説明する斜視図である。
図9図9は、車体にスライドドアを組み付けるときの作用を説明する斜視図である。
図10図10は、車体にスライドドアを組み付けるときの作用を説明する斜視図である。
図11図11は、保持機構が保持位置に位置するときのスライドドア駆動装置の端面図である。
図12図12は、保持機構が被覆位置に位置するときのスライドドア駆動装置の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、スライドドア駆動装置(以下、「ドア駆動装置」ともいう。)を備える車両の一実施形態について説明する。
<本実施形態の構成>
図1に示すように、車両10は、車体20と、スライドドア30と、ドア駆動装置40と、を備える。以降の説明では、車両10の幅方向を「幅方向」ともいい、車両10の前後方向を「前後方向」ともいい、車両10の上下方向を「上下方向」ともいう。また、幅方向において、車両10の中央を向く方向を「内方」といい、「内方」の逆方向を「外方」という。前後方向に延びる軸をX軸として記載し、幅方向に延びる軸をY軸として記載し、上下方向に延びる軸をZ軸として記載している。
【0022】
<車体20>
図1及び図2に示すように、車体20は、ドア開口部21と、ボディパネル22と、アッパレール23と、センターレール24と、ロアレール25と、を有する。
【0023】
図1に示すように、ドア開口部21は、車体20の側面に開口している。ドア開口部21は、幅方向における側面視において矩形状をなしている。ドア開口部21は、車両10のユーザが車両10に乗降する際に通過する部位である。ボディパネル22は、車体20の側面を構成するサイドボディパネルである。図2に示すように、ボディパネル22において、センターレール24とドア駆動装置40とが組み付けられる部分は、幅方向における内方に凹んでいる。また、図2では、ドア駆動装置40に隠れているが、ボディパネル22には、ドア駆動装置40の一部の構成部品を幅方向に通すための貫通孔が貫通している。
【0024】
図1に示すように、アッパレール23、センターレール24及びロアレール25は、車体20の側面に固定されている。アッパレール23は、ドア開口部21よりも上方に位置している。センターレール24は、ドア開口部21よりも後方に位置している。ロアレール25は、ドア開口部21よりも下方に位置している。上下方向において、アッパレール23は、センターレール24及びロアレール25よりも上方に位置し、センターレール24は、アッパレール23及びロアレール25の間に位置している。アッパレール23、センターレール24及びロアレール25は、スライドドア30の開閉方向を規定するための部材である。
【0025】
図2に示すように、センターレール24は、前方に延びる直線部241と、直線部241の前端から前方に進むにつれて幅方向における内方に向かって円弧状に延びる湾曲部242と、を有する。直線部241は、全体にわたって直線状に延びている必要はなく、小さな曲率で僅かに湾曲していてもよい。同様に、湾曲部242は、全体にわたって湾曲している必要はなく、直線状に延びる部分を有していてもよい。図示を省略するが、アッパレール23及びロアレール25も、センターレール24の直線部241及び湾曲部242に相当する構成を含んでいる。したがって、アッパレール23、センターレール24及びロアレール25は、前端部が後端部よりも幅方向における内方に位置するように湾曲している。アッパレール23、センターレール24及びロアレール25が湾曲することにより、スライドドア30を全閉位置の付近で幅方向に移動させることが可能となる。
【0026】
<スライドドア30>
図1に示すように、スライドドア30は、ドア本体31と、アッパヒンジユニット32と、センターヒンジユニット33と、ロアヒンジユニット34と、を備える。
【0027】
ドア本体31は、ドア開口部21に応じた形状をなしている。アッパヒンジユニット32、センターヒンジユニット33及びロアヒンジユニット34は、ドア本体31に固定されている。アッパヒンジユニット32は、ドア本体31の前端かつ上部に位置している。センターヒンジユニット33は、ドア本体31の後端かつ上下方向における中央部に位置している。ロアヒンジユニット34は、ドア本体31の前端かつ下部に位置している。アッパヒンジユニット32、センターヒンジユニット33及びロアヒンジユニット34は、それぞれローラ321,331,341を有する。アッパヒンジユニット32のローラ321は、アッパレール23に沿って移動可能にアッパレール23に係合している。センターヒンジユニット33のローラ331は、センターレール24に沿って移動可能にセンターレール24に係合している。ロアヒンジユニット34のローラ341は、ロアレール25に沿って移動可能にロアレール25に係合している。
【0028】
そして、アッパヒンジユニット32、センターヒンジユニット33及びロアヒンジユニット34が、アッパレール23、センターレール24及びロアレール25に対してそれぞれ移動することにより、スライドドア30は、開閉方向にスライドする。つまり、スライドドア30は、ドア開口部21を全閉する全閉位置及びドア開口部21を全開する全開位置の間でスライドする。本実施形態では、スライドドア30が後方に移動することで開作動し、スライドドア30が前方に移動することで閉作動する。つまり、スライドドア30の開方向は後方であり、スライドドア30の閉方向は前方である。
【0029】
<ドア駆動装置40>
図2に示すように、ドア駆動装置40は、ボディパネル22に固定される。このとき、ドア駆動装置40は、センターレール24と上下に並んでいる。詳しくは、ドア駆動装置40は、センターレール24の直上に位置している。
【0030】
図3及び図4に示すように、ドア駆動装置40は、ガイドフレーム50と、ベルト駆動部60と、駆動プーリ71と、2つの押さえプーリ72,73と、3つの従動プーリ74~76と、プーリカバー77と、ベルト81と、ベルトブラケット82と、ベルトカバー83と、保持機構90と、を備える。なお、図3及び図4では、説明理解の容易のために、ガイドフレーム50の図示を一部省略したり、ベルト81の図示を一部省略したりしている。
【0031】
ガイドフレーム50は、センターレール24と同様に、長尺状をなしている。つまり、ガイドフレーム50は、車体20に対する固定時に前端部が後端部よりも幅方向における内方に位置するように湾曲している。スライドドア30の開閉方向との関係でいえば、ガイドフレーム50の前端部は、閉方向における端部であり、ガイドフレーム50の後端部は、開方向における端部である。
【0032】
ガイドフレーム50は、平面視において直線状をなす直線部51と、平面視において円弧状をなす湾曲部52と、ドア駆動装置40の一部の構成部品を収容する収容部53と、ボディパネル22に固定される複数の固定孔541~543と、を備える。本実施形態において、ガイドフレーム50は、樹脂材料からなる成形品である。ガイドフレーム50は、例えば、主に幅方向に離型する金型によって成形される。
【0033】
直線部51は、ガイドフレーム50の後側部分を構成している。直線部51は、前後方向に延びている。直線部51は、一切曲がることなく直線的に延びている必要はなく、緩やかに湾曲していてもよい。直線部51は、ガイド壁511と、外側上壁512と、内側上壁513を有する。
【0034】
ガイド壁511は、センターレール24の直線部241と同様に延びる長尺部材である。ガイド壁511は、幅方向を板厚方向とする板状をなしている。図3に示すように、ガイド壁511の後端付近において、ガイド壁511の外側面には、溝状をなす係合凹部514が設けられている。係合凹部514は、ガイド壁511の外側面から幅方向における内方に向かって凹んでいる。係合凹部514は、ガイド壁511の長手方向に沿って延びている。係合凹部514の長手方向と直交する断面形状は、後述するベルトブラケット82のベルト連結部821に応じた形状をなしている。
【0035】
図3及び図4に示すように、外側上壁512及び内側上壁513は、ガイド壁511の上端に接続している。外側上壁512は、ガイド壁511の上端から幅方向における外方に延びている。内側上壁513は、ガイド壁511の上端から幅方向における内方に延びている。外側上壁512及び内側上壁513は、上下方向を板厚方向とする板状をなしている。外側上壁512は、内側上壁513よりも上方に位置しているため、外側上壁512及び内側上壁513の間には段差が生じている。ガイド壁511において、係合凹部514が設けられる部分から上方に進んだ位置には外側上壁512が存在していない。この点で、外側上壁512の長手方向における長さは、ガイド壁511の長手方向における長さよりも短くなっている。言い換えれば、外側上壁512の後端は、ガイド壁511の後端よりも前方に位置している。内側上壁513の長手方向における長さは、ガイド壁511の長手方向における長さと同等となっている。また、内側上壁513の後端付近には、上下方向を軸方向とする係合孔515が貫通している。なお、内側上壁513において、係合孔515が設けられる部分は、当該部分と前後方向に隣り合う部分に対して上方に突出している。
【0036】
湾曲部52は、ガイドフレーム50の前側部分を構成している。湾曲部52は、直線部51の前端から前方に進むにつれて幅方向における内方に向かって円弧状に延びている。湾曲部52は、円弧状をなす部分だけで構成されている必要はなく、直線状に延びる部分を有していてもよい。湾曲部52は、ガイド壁521と、上壁522と、底壁523と、を有する。
【0037】
ガイド壁521は、センターレール24の湾曲部242と同様に延びる長尺部材である。ガイド壁521は、幅方向を板厚方向とする板状をなしている。上壁522は、ガイド壁521の上端に接続している。上壁522は、ガイド壁521の上端から幅方向における外方及び内方に延びている。上壁522は、上下方向を板厚方向とする板状をなしている。底壁523は、ガイド壁521の下端に接続している。底壁523は、ガイド壁521の下端から幅方向における外方及び内方に延びている。底壁523は、上壁522と同様に、上下方向を板厚方向とする板状をなしている。このため、底壁523は、上壁522と上下方向に対向している。
【0038】
以上説明したガイドフレーム50において、直線部51のガイド壁511及び湾曲部52のガイド壁521は、直線部51及び湾曲部52に沿って動作するベルト81をガイドする。直線部51の外側上壁512及び内側上壁513並びに湾曲部52の上壁522は、直線部51及び湾曲部52に沿って配索されるベルト81を上方から保護する。湾曲部52の底壁523は、湾曲部52に沿って配索されたベルト81が下方に脱落することを抑制する。
【0039】
収容部53は、直線部51の前端部及び湾曲部52の後端部と一体化している。収容部53は、ボディパネル22を向く面が開口している。図4に示すように、収容部53は、駆動プーリ71及び2つの押さえプーリ72,73を収容する収容空間531を有する。
【0040】
図3及び図4に示すように、複数の固定孔541~543は、ガイドフレーム50の長手方向に間隔をあけて設けられている。詳しくは、固定孔541は、ガイドフレーム50の長手方向における後端付近に設けられている。固定孔542は、ガイドフレーム50の長手方向における前端付近に設けられている。複数の固定孔543は、幅方向における側面視において、収容部53の周囲を囲うように設けられている。複数の固定孔541~543は、ドア駆動装置40を車体20に固定するとき、すなわち、ガイドフレーム50をボディパネル22に固定する際に、ねじ及びボルトなどの締結部材が通る部位である。
【0041】
<ベルト駆動部60>
図3に示すように、ベルト駆動部60は、モータ61と、モータ61から伝達される動力によって駆動される出力軸62と、ベルト駆動部60の構成部品を収容するケース63と、を有する。ベルト駆動部60は、ケース63内に、モータ61の動力を出力軸62に伝達する不図示の減速機を有する。出力軸62は、駆動プーリ71に連結されている。図2に示すように、ドア駆動装置40を車両10に固定したとき、ベルト駆動部60は、ボディパネル22の内側に配置される。
【0042】
<プーリ>
図4に示すように、駆動プーリ71、第1押さえプーリ72及び第2押さえプーリ73は、ガイドフレーム50の収容部53に収容されている。詳しくは、駆動プーリ71、第1押さえプーリ72及び第2押さえプーリ73は、収容部53に回転可能に支持されている。このとき、駆動プーリ71は、ガイドフレーム50の長手方向において、第1押さえプーリ72及び第2押さえプーリ73の間に位置している。また、ドア駆動装置40を車体20に固定したとき、駆動プーリ71、第1押さえプーリ72及び第2押さえプーリ73の回転軸線は、幅方向に延びている。なお、駆動プーリ71は、歯付きのプーリである。
【0043】
図3及び図4に示すように、第1従動プーリ74及び第2従動プーリ75は、ガイドフレーム50の長手方向における両端部にそれぞれ支持されている。詳しくは、第1従動プーリ74は、ガイドフレーム50の直線部51の後端部に回転可能に支持されている。第2従動プーリ75は、ガイドフレーム50の湾曲部52の前端部に回転可能に支持されている。また、第3従動プーリ76は、ガイドフレーム50の湾曲部52の長手方向における中間部に回転可能に支持されている。3つの従動プーリ74~76の回転軸線は、上下方向に延びている。つまり、3つの従動プーリ74~76の回転軸線は、駆動プーリ71、第1押さえプーリ72及び第2押さえプーリ73の回転軸線とねじれの位置関係にある。
【0044】
プーリカバー77は、収容部53の開口を覆う部材である。プーリカバー77は、ベルト駆動部60の出力軸62が挿通される挿通孔771を有する。プーリカバー77で収容部53の開口を覆うことにより、収容部53の収容空間531は、閉じた空間になる。
【0045】
<ベルト81及びベルトブラケット82>
ベルト81は、ゴム及び樹脂などのエラストマーからなる歯付ベルトである。ベルト81は、ガイドフレーム50の直線部51のガイド壁511及び湾曲部52のガイド壁521を囲った状態で、駆動プーリ71、2つの押さえプーリ72,73及び3つの従動プーリ74~76に巻き掛けられる。ここで、ベルト81は、駆動プーリ71に巻き掛ける部分が2つの押さえプーリ72,73によって押さえ付けられる。こうして、ベルト駆動部60の出力軸62の動力が駆動プーリ71を介して、ベルト81に効率よく伝達される。
【0046】
図4に示すように、駆動プーリ71及び2つの押さえプーリ72,73の回転軸線と3つの従動プーリ74~76の回転軸線とは、ねじれの位置関係にある。このため、ベルト81には、駆動プーリ71及び2つの押さえプーリ72,73に巻き掛けられる部分の前後にねじれが生じている。詳しくは、ベルト81には、第1押さえプーリ72と第1従動プーリ74との間でねじれが生じ、第2押さえプーリ73と第3従動プーリ76との間でねじれが生じている。
【0047】
ベルトブラケット82は、例えば、金属板をプレス加工することで成形される。ベルトブラケット82は、ベルト81に連結されるベルト連結部821と、スライドドア30のセンターヒンジユニット33に連結されるドア連結部822と、ベルト連結部821とドア連結部822とを接続する接続部823と、を有する。ベルトブラケット82は、金属板をプレス加工することにより成形されている。このため、ベルト連結部821とドア連結部822と接続部823との板厚は、略一定になっている。
【0048】
ベルト連結部821は、ベルト81を板厚方向に挟むことでベルト81に連結している。つまり、ベルト連結部821は、ベルト81と一体になっている。ベルト連結部821は、ドア駆動装置40の製造時にベルト81に連結される。図3及び図4に示す状態において、接続部823は、ベルト連結部821から下方に延びている。このとき、接続部823は、幅方向における外方に僅かに屈曲していることが好ましい。ドア連結部822は、接続部823の下端から延びている。ドア連結部822の形状は、センターヒンジユニット33に応じた形状であることが好ましい。ドア連結部822は、ねじ及びボルトなどの締結部材を通すための締結孔を有することが好ましい。ドア連結部822は、車両10の製造時、詳しくは、車体20にスライドドア30を組み付ける際に、センターヒンジユニット33に連結される。ドア連結部822は、センターヒンジユニット33に接する部分ということもできる。
【0049】
<ベルトカバー83>
ベルトカバー83は、ガイドフレーム50の湾曲部52に対応する形状をなしている。ベルトカバー83は、ガイドフレーム50の湾曲部52に上方から固定される。ガイドフレーム50にベルトカバー83を固定したとき、ベルト81は、ベルトカバー83に覆われる。ベルトカバー83は、ガイドフレーム50の湾曲部52に沿って作動されるベルト81に異物が接触することを抑制する。
【0050】
<保持機構90>
図5及び図6に示すように、保持機構90は、ベルトブラケット82を保持する保持部91と、ガイドフレーム50に固定される固定部92と、保持部91と固定部92とを接続するヒンジ93と、を有する。保持機構90は、樹脂材料によって成形されている。本実施形態において、保持部91と固定部92とヒンジ93とは一体に成形されている。
【0051】
保持部91は、第1上壁911と、第2上壁912と隣り合う第2上壁912と、第1上壁911及び第2上壁912の幅方向における外端から延びる側壁913と、側壁913の先端から延びる保持壁914と、を有する。
【0052】
第1上壁911、第2上壁912及び側壁913は、ともに矩形板状をなしている。第1上壁911及び第2上壁912は、板厚方向を同方向としている。第1上壁911は、第2上壁912の後方に位置している。つまり、本実施形態において、第1上壁911及び第2上壁912の間には段差が生じているが、他の実施形態において、第1上壁911及び第2上壁912の間の段差はなくてもよい。側壁913は、第1上壁911及び第2上壁912から第1上壁911及び第2上壁912の板厚方向に延びている。側壁913の前後方向における長さは、第1上壁911及び第2上壁912の前後方向における長さと等しくなっている。保持壁914は、側壁913の板厚方向に沿って延びている。保持壁914は、前後方向に延びるスリット915を有する。つまり、スリット915は、ガイドフレーム50の直線部51の長手方向に延びている。スリット915の幅は、ベルトブラケット82の接続部823の板厚よりも小さくなっている。
【0053】
固定部92は、第1固定壁921と、第1固定壁921よりも上方に位置する第2固定壁922と、第2固定壁922から下方に延びる突出部923と、を有する。第1固定壁921及び第2固定壁922は、ともに矩形板状をなしている。第2固定壁922は、第1固定壁921よりも前方に位置している。突出部923は、ガイドフレーム50の内側上壁513の係合孔515に対応する形状をなしている。
【0054】
ヒンジ93は、ガイドフレーム50の長手方向に延びる軸線回りに、保持部91を固定部92に対して回転可能とする構成である。ヒンジ93は、第2上壁912の幅方向における内端及び第1固定壁921の幅方向における内端を上下方向に接続している。ヒンジ93は、膜状をなしている。ヒンジ93の膜厚は、保持部91の第2上壁912の板厚よりも薄く、固定部92の第1固定壁921の板厚よりも薄くなっている。つまり、ヒンジ93は、保持部91及び固定部92よりも薄肉のインテグラルヒンジである。このため、保持部91が固定部92に対して回転する場合には、ヒンジ93が変形する。ヒンジ93は保持部91と固定部92とを相対変位可能に接合する「接合部」に相当している。
【0055】
図3及び図4に示すように、保持機構90は、ガイドフレーム50の直線部51の後端部に固定されている。つまり、保持機構90は、ガイドフレーム50の直線部51よりも上方に位置している。詳しくは、固定部92の第1固定壁921は、直線部51の内側上壁513の上方に位置している。また、固定部92の第2固定壁922は、直線部51の外側上壁512及び内側上壁513の後端部の上方に位置している。さらに、固定部92の突出部923は、直線部51の内側上壁513の係合孔515に係合している。本実施形態では、固定部92の突出部923がスナップフィットにより内側上壁513の係合孔515に嵌ることで、保持機構90がガイドフレーム50の直線部51に固定されている。他の実施形態において、保持機構90は、ねじ及びボルトなどの締結部材により、ガイドフレーム50の直線部51に固定されてもよい。
【0056】
<ドア駆動装置40の作用>
以上のように構成されたドア駆動装置40は、スライドドア30を開閉作動させる場合には、ベルト駆動部60のモータ61を駆動する。すると、ベルト駆動部60の出力軸62が回転することにより、ベルト81が回転する。スライドドア30を開作動する場合には、ベルトブラケット82が後方に移動するようにベルト81が回転される。その結果、スライドドア30には、センターヒンジユニット33を介して、後方に荷重が作用する。こうして、スライドドア30は、後方に移動することにより、開作動される。一方、スライドドア30を閉作動する場合には、ベルトブラケット82が前方に移動するようにベルト81が回転される。その結果、スライドドア30には、センターヒンジユニット33を介して、前方に荷重が作用する。こうして、スライドドア30は、前方に移動することにより、閉作動される。
【0057】
<本実施形態の作用>
図7図12を参照して、車体20にスライドドア30を組み付けるときの作用について説明する。スライドドア30の車体20に対する組付作業は、例えば、車両10の製造工場において、作業員又は作業ロボットによって実施される。なお、図7図10では、説明理解の容易のために、スライドドア30のドア本体31を省略している。
【0058】
図7及び図11に示すように、車体20には、既にセンターレール24とドア駆動装置40とが固定されているものとする。図示を省略しているが、車体20には、アッパレール23及びロアレール25も固定されているものとする。車体20にスライドドア30を組み付ける以前は、ベルトブラケット82は、ドア駆動装置40の保持部91に保持されている。つまり、保持部91は、ベルトブラケット82を保持可能な保持位置に位置している。また、以降の説明では、保持位置に位置する保持部91に保持されるベルトブラケット82が取る姿勢を退避姿勢という。
【0059】
図11に示すように、保持部91が保持位置に位置する場合、保持部91の第2上壁912は固定部92の第1固定壁921に対して傾いている。このため、側壁913に対する保持壁914の延びる方向は、幅方向における外方に向かうにつれて上方に進む方向となっている。
【0060】
図7に示すように、ベルトブラケット82が退避姿勢を取る場合には、ベルトブラケット82は保持部91に保持される必要がある。この点で、ベルトブラケット82が退避姿勢を取る場合には、ベルトブラケット82は、ガイドフレーム50の後端付近まで移動している。図7及び図11に示すように、ベルトブラケット82が退避姿勢を取る場合には、ベルトブラケット82の接続部823は、保持部91のスリット915に挿入されている。一方、ベルトブラケット82のベルト連結部821は、ガイドフレーム50の直線部51のガイド壁511の係合凹部514に係合している。このように、ベルトブラケット82は、ガイドフレーム50と保持部91とに支えられることにより退避姿勢を取った状態を維持している。言い換えれば、ベルトブラケット82は、ねじ及びボルトなどの締結部材で固定されることなく、退避姿勢を取っている。なお、本実施形態では、保持部91とベルトブラケット82とが相互に支え合うことで、保持部91は保持位置に留まり、ベルトブラケット82は、退避姿勢を維持している。
【0061】
ベルトブラケット82が退避姿勢を取る場合には、ベルト連結部821よりもドア連結部822が上方に位置している。つまり、ベルトブラケット82は、センターレール24の直線部241の幅方向における外方の空間から退避している。また、ベルト81において、ベルト連結部821と連結する部分の前後にねじれが発生している。
【0062】
車体20にスライドドア30を組み付ける場合には、図8に実線矢印で示すように、車体20に対してスライドドア30が相対的に移動される。詳しくは、スライドドア30のセンターヒンジユニット33のローラ331は、車体20のセンターレール24の後端部に挿入される。さらに、車体20に対してスライドドア30が閉方向に移動される。こうして、センターヒンジユニット33が、センターレール24に対して脱落しなくなる。
【0063】
ここで、ベルトブラケット82は退避姿勢を取っているため、センターレール24に対してセンターヒンジユニット33のローラ331が挿入される際に、センターヒンジユニット33がベルトブラケット82に接触することはない。同様に、スライドドア30が閉方向に移動される際に、センターヒンジユニット33がベルトブラケット82に接触することはない。
【0064】
図示を省略するが、車体20にスライドドア30を組み付ける場合、アッパレール23の後端部にはアッパヒンジユニット32のローラ321が挿入され、ロアレール25の後端部にはロアヒンジユニット34のローラ341が挿入される。また、スライドドア30が閉方向に移動されることにより、アッパヒンジユニット32及びロアヒンジユニット34も、アッパレール23及びロアレール25に対してそれぞれ脱落しなくなる。
【0065】
その後、図9及び図12に示すように、保持部91からベルトブラケット82が取り外される。詳しくは、保持部91からベルトブラケット82をスリット915の形成方向に移動させることで、ベルトブラケット82が取り外される。保持部91から取り外されたベルトブラケット82は、ベルト81におけるベルト連結部821が連結される部分を当該ベルト81の周方向に通る軸線回りに回転される。その結果、ベルトブラケット82は、退避姿勢を取るのを止め、解除姿勢を取るようになる。
【0066】
図11及び図12に示すように、ベルトブラケット82の姿勢が退避姿勢から解除姿勢に変化する場合、言い換えれば、ベルトブラケット82が回転する場合には、ベルト連結部821の位置が上下方向及び幅方向において略変化しない。図12には、図11におけるベルト81の位置を二点鎖線で記載している。図12に実線及び二点鎖線で示す2つのベルト81は一部が重複している。この点で、ベルトブラケット82の姿勢が退避姿勢から解除姿勢に変化しても、ベルト連結部821の上下方向及び幅方向における位置が略変化していないことがわかる。また、ベルト81におけるベルト連結部821に連結される部分が回転することにより、ベルト81において、ベルト連結部821と連結される部分に発生していたねじれが解消される。
【0067】
図9及び図12に示すように、ベルトブラケット82が解除姿勢を取る場合には、ベルトブラケット82のベルト連結部821から接続部823とドア連結部822とが下方に延びる。このため、ベルト連結部821よりもドア連結部822が下方に位置する。そして、ベルトブラケット82は、センターレール24の直線部241の幅方向における外方の空間に位置するようになる。
【0068】
保持部91からブラケットが取り外されると、保持部91は、ヒンジ93の軸線回りに回転される。その結果、保持部91は、ガイドフレーム50の直線部51の後端部に沿って配索されるベルト81を被覆可能な被覆位置に変位する。保持部91が被覆位置に位置すると、保持部91の第1上壁911及び第2上壁912は、固定部92の第1固定壁921と部分的に対向する。このとき、図12に示すように、第2上壁912は、第1固定壁921よりも幅方向における外方に延びる。そして、保持部91の第1上壁911及び第2上壁912は、ガイドフレーム50の直線部51の後端部に沿って配索されるベルト81の上方に位置する。また、保持部91の側壁913は、ベルトブラケット82のベルト連結部821の幅方向における外方に位置する。この点で、ベルトブラケット82が前後方向に移動すれば、保持部91の側壁913は、ガイドフレーム50の直線部51の後端部に沿って配索されるベルト81の幅方向における外方に位置するといえる。なお、保持部91は、被覆位置から動くことのないように、ねじ及びボルトなどの締結部材によって、ガイドフレーム50又は固定部92に対して固定されることが好ましい。
【0069】
最後に、図10に示すように、上下方向において、センターヒンジユニット33と重なるまで、ベルトブラケット82が閉方向に移動される。そして、センターヒンジユニット33とベルトブラケット82とがねじ及びボルトなどの締結部材によって連結される。こうして、ドア駆動装置40の動力がスライドドア30に伝達可能となる。つまり、ドア駆動装置40が駆動されることにより、スライドドア30が開閉作動される。なお、ローラ321,331,341の挿入口としてのアッパレール23、センターレール24及びロアレール25の後端部の開口は、塞がれることが好ましい。
【0070】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ガイドフレーム50の後端部では、内側上壁513が存在しているが外側上壁512が存在していない。このため、保持機構90の保持部91に保持されることにより退避姿勢を取るベルトブラケット82は、ガイドフレーム50に接触することを回避できる。また、ベルトブラケット82が退避姿勢を取らなくなった後、言い換えれば、ベルトブラケット82がスライドドア30に連結された後は、保持機構90の保持部91は、ベルト81を被覆するために被覆位置に配置される。つまり、ベルト81において、外側上壁512に上方から被覆されない部分は、保持機構90の保持部91によって覆われるようになる。詳しくは、ベルト81の外側上壁512に上方から被覆されない部分は、保持部91の第1上壁911及び第2上壁912によって覆われるようになる。こうして、ドア駆動装置40は、保持部91の位置を変化させることにより、車両10の組み立て前までのベルトブラケット82の保持と車両10の組み立て後におけるベルト81の保護とを両立できる。
【0071】
(2)図8に示すように、保持部91がベルトブラケット82を保持するとき、ベルトブラケット82は、ベルト連結部821よりもドア連結部822が上方に位置する退避姿勢を取っている。このため、車両10の組立作業、詳しくは、センターヒンジユニット33のローラ331をセンターレール24の後端部に挿入する作業がしやすくなる。
【0072】
(3)ドア駆動装置40において、保持部91は、保持位置及び被覆位置の間を変位する。詳しくは、保持部91は、保持位置及び被覆位置の間をヒンジ93の回転軸線回りに変位する。このため、ドア駆動装置40は、保持位置から被覆位置に保持部91を容易に変位させることができる。
【0073】
(4)ドア駆動装置40において、保持機構90は樹脂材料により一体に成形されている。また、保持機構90のヒンジ93は、インテグラルヒンジとなっている。このため、ドア駆動装置40は、ピンなどを含んで構成されるヒンジで保持部91と固定部92とを接合する場合と比較して、保持機構90の構成を簡素化できる。
【0074】
(5)ドア駆動装置40において、ベルトブラケット82が退避姿勢を取るとき、ベルトブラケット82は、保持部91に保持されるだけでなく、ガイドフレーム50の係合凹部514に係合する。つまり、ベルトブラケット82を支える点が少なくとも2つ存在する。このため、ドア駆動装置40は、ベルトブラケット82の退避姿勢を安定化できる。例えば、ドア駆動装置40は、装置のボディパネル22に対する固定時だけでなく、装置の運搬時などにも、ベルトブラケット82が保持部91から取り外れるおそれを低減できる。
【0075】
(6)ドア駆動装置40において、ベルトブラケット82を保持機構90のスリット915の形成方向に移動させるだけで、保持機構90に対してベルトブラケット82を着脱することが可能となる。
【0076】
(7)例えば、退避姿勢が解除姿勢に対して上下方向又は幅方向に移動した姿勢であると、ベルトブラケット82が退避姿勢を取るときに、ベルト81に大きな負荷が作用するおそれがある。この点、図11及び図12に示すように、退避姿勢は解除姿勢に対して、ベルト81の周方向に延びる軸線回りに回転した姿勢である。このため、ベルト81にねじれが発生するものの、ベルト81に大きな負荷が作用しにくくなる。したがって、ドア駆動装置40は、ベルトブラケット82が退避姿勢を取るときに、ベルト81に負荷が掛かることを抑制できる。
【0077】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・保持機構90において、ヒンジ93は、保持部91が保持位置及び被覆位置の間を直線的に変位できるように保持部91と固定部92とを接合する接合部としてもよい。この場合、ベルトブラケット82が退避姿勢を取るとき、ドア連結部822は、ベルト連結部821よりも下方に位置していてもよい。
【0078】
・保持機構90において、ヒンジ93は、ヒンジピンを有する一般的なヒンジであってもよい。この場合、保持機構90において、保持部91と固定部92とを一体に成形する必要はない。
【0079】
・保持機構90において、ヒンジ93の軸線の延びる方向は適宜に変更可能である。例えば、ヒンジ93の軸線は、幅方向に延びていてもよいし、上下方向に延びていてもよい。
【0080】
・保持機構90において、退避姿勢は、解除姿勢に対して、ベルト連結部821が上下方向に移動した姿勢であってもよいし、ベルト連結部821が幅方向に移動した姿勢であってもよい。ただし、ベルト81への負荷を低減すべく、両姿勢間におけるベルト連結部821の移動量は少ないことが好ましい。
【0081】
・保持機構90において、保持位置に位置する保持部91は、ガイドフレーム50に係止していてもよい。これによれば、保持部91は、ベルトブラケット82を保持しない場合であっても、保持位置に留まることが可能となる。
【0082】
・保持機構90によるベルトブラケット82の保持態様は適宜に変更可能である。例えば、保持機構90は、保持位置に位置する保持部91とベルトブラケット82とをねじ及びボルトなどの締結部材で固定することで、ベルトブラケット82を保持してもよい。また、保持機構90は、保持位置に位置する保持部91とベルトブラケット82とをスナップフィットで固定することで、ベルトブラケット82を保持してもよい。さらに、保持機構90は、ベルトブラケット82を保持する保持部91の一部を破断することで、保持部91によるベルトブラケット82の保持を解消させてもよい。
【0083】
・保持機構90のガイドフレーム50に対する固定箇所は任意に変更できる。詳しくは、保持機構90は、ガイドフレーム50の直線部51の任意の位置に固定してもよい。また、保持機構90は、ガイドフレーム50の湾曲部52の任意の位置に固定してもよい。
【0084】
・ガイドフレーム50において、係合凹部514は直線部51のガイド壁511から省略できる。言い換えれば、ガイドフレーム50において、直線部51のガイド壁511の外面は、平面状をなしていてもよい。この場合であっても、平面状をなすガイド壁511にベルトブラケット82のベルト連結部821を当てることで、ベルトブラケット82の退避姿勢を安定化できる。
【0085】
・ドア駆動装置40は、アッパレール23と上下に並ぶ位置に設置することもできる。この場合、ドア駆動装置40のベルトブラケット82は、アッパヒンジユニット32に連結される。また、ドア駆動装置40は、ロアレール25と上下方向に並ぶ位置に設置することもできる。この場合、ドア駆動装置40のベルトブラケット82は、ロアヒンジユニット34に連結される。
【0086】
・ベルト駆動部60の出力軸62の軸方向が3つの従動プーリ74~76の軸方向と同じ方向を向くように、ガイドフレーム50にベルト駆動部60を組み付けてもよい。この構成によれば、ベルト81にねじれが生じないようにできる。
【符号の説明】
【0087】
10…車両
20…車体
21…ドア開口部
22…ボディパネル
30…スライドドア
40…スライドドア駆動装置
50…ガイドフレーム
51…直線部
511…ガイド壁
512…外側上壁
513…内側上壁
514…係合凹部
515…係合孔
52…湾曲部
521…ガイド壁
522…上壁
523…底壁
53…収容部
60…ベルト駆動部
71…駆動プーリ
72,73…押さえプーリ
74~76…従動プーリ
77…プーリカバー
81…ベルト
82…ベルトブラケット
821…ベルト連結部
822…ドア連結部
823…接続部
83…ベルトカバー
90…保持機構
91…保持部
911…第1上壁
912…第2上壁
913…側壁
914…保持壁
915…スリット
92…固定部
921…第1固定壁
922…第2固定壁
923…突出部
93…ヒンジ(接合部の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12