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特開2023-178576蓄電池制御装置、蓄電システム、及び蓄電池制御方法
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  • 特開-蓄電池制御装置、蓄電システム、及び蓄電池制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178576
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】蓄電池制御装置、蓄電システム、及び蓄電池制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231211BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231211BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 302D
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091338
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】大野 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA03
5G503BB02
5G503DA13
5G503EA05
5H030AA01
5H030AS06
5H030AS08
5H030BB21
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】複数の蓄電池が直列に接続された蓄電システムにおいて、電力供給先のシステムが駆動する電力を継続的に供給する。
【解決手段】直列に接続された複数の蓄電池モジュールと、各蓄電池モジュールをバイパスさせるバイパス回路とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置であって、複数の蓄電池モジュールの放電完了までの残放電量の差が減少するように、バイパス回路によりバイパスさせる蓄電池モジュールを切り換えながら各蓄電池モジュールを放電させる第1処理と、第1処理の後に、複数の蓄電池モジュールの放電を完了させる第2処理とを実行し、第1処理を、各蓄電池モジュールのOCVが蓄電池モジュール毎に設定したOCVの閾値以下に低下するまで実行し、第1処理を、放電させる蓄電池モジュールの出力可能電力が、電力供給先の必要最小電力を下回らないように実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の蓄電池と、各蓄電池をバイパスさせるバイパス回路とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置であって、
複数の蓄電池の放電完了までの残放電量の差が減少するように、前記バイパス回路によりバイパスさせる蓄電池を切り換えながら各蓄電池を放電させる第1処理と、
前記第1処理の後に、複数の蓄電池の放電を完了させる第2処理と
を実行し、
前記第1処理を、各蓄電池のOCV又はSOCが蓄電池毎に設定したOCV又はSOCの閾値以下に低下するまで実行し、
前記第1処理を、放電させる蓄電池の出力可能電力が、電力供給先の必要最小電力を下回らないように実行する蓄電池制御装置。
【請求項2】
前記第1処理を、予め定めた放電バイパススケジュールに従って実行し、
前記放電バイパススケジュールは、複数の蓄電池の出力可能電力が電力供給先の必要最小電力以上に維持された状態で、複数の蓄電池の放電完了までの残放電量の差が減少するように、放電させる2以上の蓄電池とバイパスさせる蓄電池との組み合わせを期間毎に定めたものである請求項1に記載の蓄電池制御装置。
【請求項3】
前記第1処理の開始前に、各蓄電池の状態を推定し、推定結果に基づいて、前記閾値の更新の要否を判定する請求項1又は2に記載の蓄電池制御装置。
【請求項4】
前記第1処理の開始前に、各蓄電池の状態を推定し、推定結果に基づいて、前記放電バイパススケジュールの更新の要否を判定する請求項1又は2に記載の蓄電池制御装置。
【請求項5】
前記第1処理において、OCV又はSOCが前記閾値まで低下した蓄電池を順次バイパスさせる請求項1に記載の蓄電池制御装置。
【請求項6】
前記第2処理を、各蓄電池のOCV又はSOCが蓄電池毎に設定したOCV又はSOCの閾値に低下するまで実行する請求項1に記載の蓄電池制御装置。
【請求項7】
直列に接続された複数の蓄電池と、
各蓄電池をバイパスさせるバイパス回路と、
前記バイパス回路を制御する蓄電池制御装置と
を備え、
前記蓄電池制御装置は、
複数の蓄電池の放電完了までの残放電量の差が減少するように、前記バイパス回路によりバイパスさせる蓄電池を切り換えながら各蓄電池を放電させる第1処理と、
前記第1処理の後に、複数の蓄電池の放電を完了させる第2処理と
を実行し、
前記第1処理を、各蓄電池のOCV又はSOCが蓄電池毎に設定したOCV又はSOCの閾値以下に低下するまで実行し、
前記第1処理を、放電させる蓄電池の出力可能電力が、電力供給先の必要最小電力を下回らないように実行する蓄電システム。
【請求項8】
直列に接続された複数の蓄電池と、各蓄電池をバイパスさせるバイパス回路とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置を用いて実行する蓄電池制御方法であって、
複数の蓄電池の放電完了までの残放電量の差が減少するように、前記バイパス回路によりバイパスさせる蓄電池を切り換えながら各蓄電池を放電させる第1手順と、
前記第1手順の後に、複数の蓄電池の放電を完了させる第2手順と
を実行し、
前記第1手順を、各蓄電池のOCV又はSOCが蓄電池毎に設定したOCV又はSOCの閾値以下に低下するまで実行し、
前記第1手順を、放電させる蓄電池の出力可能電力が、電力供給先の必要最小電力を下回らないように実行する蓄電池制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池制御装置、蓄電システム、及び蓄電池制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の蓄電池が直列に接続された蓄電システムの放電を制御する電池制御ユニットとして、放電終止状態に達した蓄電池を選択し、その蓄電池をバイパスさせて他の蓄電池を放電させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の電池制御ユニットでは、放電可能容量が所定値に達した蓄電池から順にバイパス状態に切り換えられ、全ての蓄電池の放電可能容量が所定値に達した後、全ての蓄電池が放電状態に切り換えられ、その後、放電終止状態に達した蓄電池から順にバイパス状態に切り換えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-1006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムでは、全ての蓄電池の放電可能容量を所定値に揃える処理が実行されるが、当該処理の実行時においても、電力供給先のシステムが駆動する電力を継続的に供給する必要があり、対策を要する。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、複数の蓄電池が直列に接続された蓄電システムにおいて、電力供給先のシステムが駆動する電力を継続的に供給することができる蓄電池制御装置、蓄電システム、及び蓄電池制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓄電池制御装置は、直列に接続された複数の蓄電池と、各蓄電池をバイパスさせるバイパス回路とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置であって、複数の蓄電池の放電完了までの残放電量の差が減少するように、前記バイパス回路によりバイパスさせる蓄電池を切り換えながら各蓄電池を放電させる第1処理と、前記第1処理の後に、複数の蓄電池の放電を完了させる第2処理とを実行し、前記第1処理を、各蓄電池のOCV又はSOCが蓄電池毎に設定したOCV又はSOCの閾値以下に低下するまで実行し、前記第1処理を、放電させる蓄電池の出力可能電力が、電力供給先の必要最小電力を下回らないように実行する。
【0007】
本発明の蓄電システムは、直列に接続された複数の蓄電池と、各蓄電池をバイパスさせるバイパス回路と、前記バイパス回路を制御する蓄電池制御装置とを備え、前記蓄電池制御装置は、複数の蓄電池の放電完了までの残放電量の差が減少するように、前記バイパス回路によりバイパスさせる蓄電池を切り換えながら各蓄電池を放電させる第1処理と、前記第1処理の後に、複数の蓄電池の放電を完了させる第2処理とを実行し、前記第1処理を、各蓄電池のOCV又はSOCが蓄電池毎に設定したOCV又はSOCの閾値以下に低下するまで実行し、前記第1処理を、放電させる蓄電池の出力可能電力が、電力供給先の必要最小電力を下回らないように実行する。
【0008】
本発明の蓄電池制御方法は、直列に接続された複数の蓄電池と、各蓄電池をバイパスさせるバイパス回路とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置を用いて実行する蓄電池制御方法であって、複数の蓄電池の放電完了までの残放電量の差が減少するように、前記バイパス回路によりバイパスさせる蓄電池を切り換えながら各蓄電池を放電させる第1手順と、前記第1手順の後に、複数の蓄電池の放電を完了させる第2手順とを実行し、前記第1手順を、各蓄電池のOCV又はSOCが蓄電池毎に設定したOCV又はSOCの閾値以下に低下するまで実行し、前記第1手順を、放電させる蓄電池の出力可能電力が、電力供給先の必要最小電力を下回らないように実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の蓄電池が直列に接続された蓄電システムにおいて、電力供給先のシステムが駆動する電力を継続的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る蓄電池制御装置を備える蓄電システムの概略を示す図である。
図2図2は、図1に示す蓄電池制御装置による放電モード実行時の処理を示すフローチャートである。
図3図3は、図1に示す蓄電池制御装置による放電モード実行時の処理の他の実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において実施形態を適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用される。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る蓄電池制御装置100を備える蓄電システム1の概略を示す図である。この図に示すように、蓄電システム1は、蓄電池ストリング10と、バイパス回路20と、充放電回路30と、蓄電池制御装置100とを備える。
【0013】
蓄電池ストリング10は、直列に接続されたn個(nは2以上の整数)の蓄電池モジュールM1~Mnを備える定置用又は車載用の電源である。特に限定するわけではないが、本実施形態の蓄電池ストリング10は、中古の蓄電池を再生したものであり、各蓄電池モジュールM1~Mnの劣化度に差がある。蓄電池モジュールM1~Mnは、例えば、リチウムイオンバッテリ、リチウムイオンキャパシタ等の二次電池であり、充放電回路30を通じて外部系統ESから電力を供給されて充電され、充電された電力を充放電回路30を通じて放電して外部系統ESに電力を供給する。
【0014】
外部系統ESは、負荷や発電機等を含む。蓄電システム1が定置用の場合には、家庭内の家電、商用電源系統、液晶表示器、通信モジュール等が負荷となり、太陽光発電システム等が発電機となる。他方で、蓄電システム1が車載用の場合には、駆動用モータ、エアコン、各種車載電装品等が負荷となる。なお、駆動用モータは負荷になり発電機にもなる。
【0015】
なお、蓄電池ストリング10は、直列に接続されたn個の蓄電池モジュールM1~Mnに代えて、直列に接続されたn個の蓄電池セル又は蓄電池パックを備えてもよい。また、蓄電システム1は、各蓄電池セル又は各蓄電池パックをバイパスさせるバイパス回路を備えてもよい。
【0016】
蓄電池ストリング10は、複数の電圧測定部12と、電流測定部13と、電池温度測定部14とを備える。電圧測定部12は、各蓄電池モジュールM1~Mnの正負極端子間に接続されている。この電圧測定部12は、各蓄電池モジュールM1~Mnの端子間電圧を測定する。
【0017】
電流測定部13は、蓄電池ストリング10の電流経路に設けられている。この電流測定部13は、蓄電池ストリング10の充放電電流を測定する。また、蓄電池ストリング10には、電池温度測定部14が設けられている。この電池温度測定部14は、蓄電池ストリング10の電池温度を測定する。
【0018】
バイパス回路20は、各蓄電池モジュールM1~Mn毎に設けられたn個(nは2以上の整数)のバイパス回路B1~Bnを備える。バイパス回路B1~Bnは、それぞれ、バイパス線BLと、スイッチS1,S2とを備える。バイパス線BLは、各蓄電池モジュールM1~Mnをバイパスする電力線である。スイッチS1は、バイパス線BLに設けられている。このスイッチS1は、例えば機械式スイッチである。スイッチS2は、各蓄電池モジュールM1~Mnの正極とバイパス線BLの一端との間に設けられている。このスイッチS2は、例えば半導体スイッチやリレーである。
【0019】
始端の蓄電池モジュールM1及び終端の蓄電池モジュールMnは、充放電回路30を介して外部系統ESに接続されている。全てのバイパス回路B1~BnにおいてスイッチS1がオープンになりスイッチS2がクローズになった場合に、全ての蓄電池モジュールM1~Mnが充放電回路30及び外部系統ESに直列接続される。他方で、何れかのバイパス回路B1~BnにおいてスイッチS2がオープンになり、スイッチS1がクローズになった場合に、当該バイパス回路B1~Bnに対応する蓄電池モジュールM1~Mnがバイパスされる。
【0020】
蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10とバイパス回路20と充放電回路30とに接続され、各蓄電池モジュールM1~Mnの監視及び制御と各バイパス回路B1~Bnの切り換え制御と充放電回路30による充放電制御とを実行する。特に、本実施形態の蓄電池制御装置100は、放電モードの実行時に、全ての蓄電池モジュールM1~Mnの放電完了までの残放電量(以下、残放電容量という)を揃える第1処理と、第1処理後に全ての蓄電池モジュールM1~Mnを放電させる第2処理とを実行する。蓄電池制御装置100は、第1処理において、予め生成した放電バイパススケジュールに従って各バイパス回路B1~Bnを切り換えながら各蓄電池モジュールM1~Mnを放電させることにより、全ての蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量を揃える。
【0021】
放電バイパススケジュールは、スケジュール情報と電圧情報とを含む。スケジュール情報は、放電させる蓄電池モジュールM1~Mnとバイパスさせる蓄電池モジュールM1~Mnとの組み合わせを時系列で設定した情報である。このスケジュール情報は、例えば、第1の期間に、蓄電池モジュールM1~M6を放電させ、その他の蓄電池モジュールM7~Mnをバイパスさせ、第2の期間に、蓄電池モジュールM5~Mnを放電させ、その他の蓄電池モジュールM1~M4をバイパスさせるといった情報である。他方で、電圧情報は、第1処理を終了する際の閾値となる各蓄電池モジュールM1~MnのOCV(Open Circuit Voltage)の閾値の情報である。電圧情報としての各蓄電池モジュールM1~MnのOCVの閾値は、第1処理の終了時点で、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量を揃える目的で設定される。
【0022】
ここで、第1処理の実行時における蓄電池ストリング10の出力可能電力が、継続的に電力供給先のシステムの必要最小電力以上に維持されるように、放電バイパススケジュールが設定されている。即ち、第1処理の実行中の各期間で、蓄電池ストリング10の出力可能電力が、電力供給先のシステムの必要最小電力を下回らないように、放電させる蓄電池モジュールM1~Mnとバイパスさせる蓄電池モジュールM1~Mnとの組み合わせが設定される。
【0023】
蓄電池制御装置100は、放電モードの開始時、所定条件が成立する場合に、放電バイパススケジュールを更新する。当該所定条件としては、下記の(1)~(6)等を例示できる。かかる条件が成立する場合には、蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量のバラツキが大きくなることが想定される。また、蓄電池モジュールM1~Mn相互間での残放電容量の相対関係も都度変化する。そこで、蓄電池制御装置100は、放電モードの開始時、当該所定条件が成立する場合には改めて放電バイパススケジュールを生成する。
【0024】
蓄電池制御装置100は、蓄電池モジュールM1~MnのOCVとSOC(State of Charge)との関係を示すOCV-SOC曲線、蓄電池モジュールM1~Mnの初期容量、SOH(State of Health)を、蓄電池モジュールM1~Mnの情報として保有している。蓄電池モジュールM1~Mnの放電量は、劣化度や温度に応じて相違する。そこで、蓄電池制御装置100は、蓄電池モジュールM1~Mnの情報や温度情報、OCVの推定値等に基づいて、上記のOCVの閾値を算出して設定する。
【0025】
SOCは、電流積算法、OCVから求める方法(電圧法)、電流積算法と電圧法とを組み合わせた方法等の種々の公知の方法を用いて推定することができる。また、SOCは、SOCの経時変化あるいは/及び内部抵抗の経時的増加を用いて推定する種々の公知の方法を用いて推定することができる。SOHの推定方法としては、充放電試験による方法、電流積算法による方法、開回路電圧の測定による方法、端子電圧の測定による方法、モデルに基づく方法(以上はSOCの経時変化を用いる方法)、交流インピーダンス測定による方法、モデルに基づき、適応デジタルフィルタで求める方法、I-V特性(電流電圧特性)からの線型回帰(I-V特性の直線の傾き)による方法、ステップ応答による方法(以上、内部抵抗の経時的増加を用いて推定する方法)等を例示できる。
【0026】
残放電容量は、下記(1)式により算出することができる。
残放電容量[Ah]=CC×SOC/100 …(1)
但し、CCは、各蓄電池モジュールM1~Mnの現在の電池容量であり、下記(2)式により算出することができる。
CC[Ah]=C×SOH/100 …(2)
但し、Cは、各蓄電池モジュールM1~Mnの初期容量(Ah)である。
【0027】
図2は、図1に示す蓄電池制御装置100による放電モード実行時の処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示すように、図1に示す蓄電システム1が放電モードになると処理が開始される。
【0028】
まず、ステップS1において、蓄電池制御装置100は、図1に示す蓄電池ストリング10の全てのスイッチS1,S2をOFFにする。次に、ステップS2において、蓄電池制御装置100は、放電バイパススケジュールの更新が必要となる所定条件が成立したか否かを判定する。当該所定条件は、以下の(1)~(6)の少なくとも一つの条件が成立したことである。
(1)放電モードに切り換わったこと
(2)当該放電モードの前の充電時間が所定時間以上となったこと
(3)当該放電モードの前の充電電力容量が所定容量以上となったこと
(4)前回の放電バイパススケジュールの作成時からの温度変化が所定温度以上であること
(5)放電中の充電の割り込み回数が累積で所定回数以上となったこと
(6)その他、平均放電電力の変化や第2処理終了時の残放電容量の変更等、蓄電システムの運転状態が変化したこと
【0029】
ステップS2において肯定判定がされた場合にはステップS20に移行する。ステップS20において、蓄電池制御装置100は、蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量を、初期容量、OCV、SOC、SOHに基づいて算出する。次に、ステップS3において、蓄電池制御装置100は、ステップS20において算出した蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量に応じて、放電バイパススケジュールを生成する。この際、蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10の出力可能電力が継続的に電力供給先のシステムの必要最小電力以上に維持されるように、放電させる蓄電池モジュールM1~Mnとバイパスさせる蓄電池モジュールM1~Mnとの組み合わせを設定する。また、蓄電池制御装置100は、第1処理の終了の閾値となる蓄電池モジュールM1~MnのOCVの閾値を、蓄電池モジュールM1~MnのOCV-SOC曲線等の蓄電池モジュールM1~Mn毎に保有する電池情報に基づいて設定する。ステップS3からステップS4に移行する。
【0030】
他方で、ステップS2において否定判定がされた場合には、放電バイパススケジュールを更新することなく、ステップS4に移行する。この場合、前回の放電モードで使用された放電バイパススケジュールに従って、ステップS5~S8の処理が実行される。
【0031】
ステップS4において、蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10の全てのスイッチS2をONにし、全ての蓄電池モジュールM1~Mnを直列接続する。次に、ステップS5において、蓄電池制御装置100は、第1処理を開始する。蓄電池制御装置100は、第1処理において、放電バイパススケジュールに従って、各バイパス回路B1~Bnを切り換えながら各蓄電池モジュールM1~Mnを放電させる。
【0032】
次に、ステップS6において、蓄電池制御装置100は、ステップS3において又は前回以前の放電モード実行時に設定されたOCVの閾値と、蓄電池モジュールM1~MnのOCVとを比較し、OCVが閾値以下まで低下した蓄電池モジュールM1~Mnが有るか否かを判定する。ステップS6は、肯定判定がされるまで繰り返され、ステップS6において肯定判定がされた場合には、ステップS7に移行する。
【0033】
ステップS7において、蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10の全ての蓄電池モジュールM1~Mnがバイパス回路B1~Bnによりバイパスされた状態であるか否かを判定する。ステップS7において肯定判定がされた場合には、ステップS9に移行し、ステップS7において否定判定がされた場合には、ステップS8に移行する。
【0034】
ステップS8において、蓄電池制御装置100は、ステップS6においてOCVが閾値以下まで低下したと判定された蓄電池モジュールM1~Mnを、対応するバイパス回路B1~Bnによりバイパスさせる。ステップS8からステップS6に戻る。
【0035】
他方で、ステップS9において、蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10の全てのスイッチS2をONにし、全ての蓄電池モジュールM1~Mnを直列接続する。即ち、蓄電池制御装置100は、第1処理後に全ての蓄電池モジュールM1~Mnを放電させる第2処理を実行する。
【0036】
次に、ステップS10において、蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10の出力可能電力が、電力供給先のシステムの必要最小電力以下まで低下したか否かを判定する。ステップS10は、肯定判定がされるまで繰り返され、ステップS10において肯定判定がされた場合に、ステップS11に移行する。
【0037】
ステップS11において、蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10の全てのスイッチS1,S2をOFFにする。以上で放電モードの処理を終了する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の蓄電池制御装置100は、放電モードの実行時に、まず、第1処理を実行し、第1処理の実行後に、第2処理を実行する。蓄電池制御装置100は、第1処理において、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量の差が減少するように、バイパス回路B1~Bnによりバイパスさせる蓄電池モジュールM1~Mnを切り換えながら各蓄電池モジュールM1~Mnを放電させる。その後、蓄電池制御装置100は、第2処理において、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの放電を完了させる。これによって、第2処理の開始から第2処理の後期まで、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量を均一的に維持することが可能になる。従って、各蓄電池モジュールM1~Mnの電圧が低下する放電モードの後期まで、より多くの蓄電池モジュールM1~Mnをバイパスさせることなく放電させることが可能になる。
【0039】
ここで、蓄電池制御装置100は、第1処理を、各蓄電池モジュールM1~MnのOCVが蓄電池モジュールM1~Mn毎に設定したOCVの閾値以下に低下するまで実行する。各蓄電池モジュールM1~MnのOCVの閾値を、各蓄電池モジュールM1~Mnの劣化状態や温度等に応じて、各蓄電池モジュールM1~Mn毎に設定することにより、第1処理の終了時点における複数の蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量の差を抑制することができる。
【0040】
また、蓄電池制御装置100は、第1処理を、放電させる蓄電池モジュールM1~Mnの出力可能電力が、電力供給先の必要最小電力を下回らないように実行する。これによって、第1処理の開始から各蓄電池モジュールM1~Mnの電圧が低下する放電モードの後期まで、電力供給先のシステムが駆動する電力を継続的に供給することができる。
【0041】
また、蓄電池制御装置100は、第1処理を、放電させる2以上の蓄電池モジュールM1~Mnとバイパスさせる蓄電池モジュールM1~Mnとの組み合わせを期間毎に定めた放電バイパススケジュールに従って実行する。この放電バイパススケジュールは、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの出力可能電力が電力供給先のシステムの必要最小電力以上に維持された状態で、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量の差が減少するように設定されている。ここで、OCVが閾値まで低下した蓄電池モジュールM1~Mnを順次バイパスさせることが考えられるが、この場合には、第1処理の後期に近づくほど放電させる蓄電池モジュールM1~Mnの数が減少し、蓄電池ストリング10の出力可能電力が減少する。それに対して、本実施形態では、第1処理の後期まで、より多くの蓄電池モジュールM1~Mnをバイパスさせることなく放電させることができ、蓄電池ストリング10の出力可能電力を電力供給先のシステムの必要最小電力以上に維持することが可能になる。
【0042】
また、蓄電池制御装置100は、第1処理の開始前に、各蓄電池モジュールM1~Mnの状態を推定し、推定結果に基づいて、各蓄電池モジュールM1~MnのOCVの閾値の更新の要否を判定する。これによって、各蓄電池モジュールM1~MnのOCVの閾値を、各蓄電池モジュールM1~Mnの劣化状態や温度等に応じて、各蓄電池モジュールM1~Mn毎に設定することができる。従って、第1処理の終了時点における複数の蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量の差を抑制することができる。
【0043】
図3は、図1に示す蓄電池制御装置100による放電モード実行時の処理の他の実施例を示すフローチャートである。このフローチャートに示すように、図1に示す蓄電システム1が放電モードになると処理が開始される。
【0044】
まず、ステップS101において、蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10の全てのスイッチS1,S2をOFFにする。次に、ステップS102において、蓄電池制御装置100は、蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量を、初期容量、OCV、SOC、SOHに基づいて算出する。
【0045】
次に、ステップS103において、蓄電池制御装置100は、ステップS102において算出した蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量に応じて、放電バイパススケジュールを生成する。この際、蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10の出力可能電力が継続的に電力供給先のシステムの必要最小電力以上となるように、放電させる蓄電池モジュールM1~Mnとバイパスさせる蓄電池モジュールM1~Mnとの組み合わせを設定する。
【0046】
また、蓄電池制御装置100は、第1処理の終了の閾値となる蓄電池モジュールM1~MnのSOCの閾値を、蓄電池モジュールM1~MnのOCV-SOC曲線等の蓄電池モジュールM1~Mn毎に保有する電池情報に基づいて設定する。ステップS103からステップS104に移行する。
【0047】
ステップS104において、蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10の全てのスイッチS2をONにし、全ての蓄電池モジュールM1~Mnを直列接続する。次に、ステップS105において、蓄電池制御装置100は、第1処理を開始する。蓄電池制御装置100は、第1処理において、放電バイパススケジュールに従って、各バイパス回路B1~Bnを切り換えながら各蓄電池モジュールM1~Mnを放電させる。
【0048】
次に、ステップS106において、蓄電池制御装置100は、ステップS103において設定されたSOCの閾値と、蓄電池モジュールM1~MnのSOCとを比較し、SOCが閾値以下まで低下した蓄電池モジュールM1~Mnが有るか否かを判定する。ステップS106は、肯定判定がされるまで繰り返され、ステップS106において肯定判定がされた場合には、ステップS107に移行する。
【0049】
ステップS107において、蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10の全ての蓄電池モジュールM1~Mnがバイパス回路B1~Bnによりバイパスされた状態であるか否かを判定する。ステップS107において肯定判定がされた場合には、ステップS109に移行し、ステップS107において否定判定がされた場合には、ステップS108に移行する。
【0050】
ステップS108において、蓄電池制御装置100は、ステップS106においてSOCが閾値以下まで低下したと判定された蓄電池モジュールM1~Mnを対応するバイパス回路B1~Bnによりバイパスさせる。ステップS108からステップS106に戻る。
【0051】
他方で、ステップS109において、蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10の全てのスイッチS2をONにし、全ての蓄電池モジュールM1~Mnを直列接続する。即ち、蓄電池制御装置100は、第1処理後に全ての蓄電池モジュールM1~Mnを放電させる第2処理を実行する。
【0052】
次に、ステップS110において、蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10の出力可能電力が、電力供給先のシステムの必要最小電力以下まで低下したか否かを判定する。ステップS110は、肯定判定がされるまで繰り返され、ステップS110において肯定判定がされた場合に、ステップS111に移行する。
【0053】
ステップS111において、蓄電池制御装置100は、蓄電池ストリング10の全てのスイッチS1,S2をOFFにする。以上で放電モードの処理を終了する。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の蓄電池制御装置100は、第1処理を、各蓄電池モジュールM1~MnのSOCが蓄電池モジュールM1~Mn毎に設定したSOCの閾値以下に低下するまで実行する。各蓄電池モジュールM1~MnのSOCの閾値を、各蓄電池モジュールM1~Mnの劣化状態や温度等に応じて、各蓄電池モジュールM1~Mn毎に設定することにより、第1処理の終了時点における複数の蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量の差を抑制することができる。
【0055】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0056】
例えば、上記実施形態では、蓄電池制御装置100が、放電させる蓄電池モジュールM1~Mnとバイパスさせる蓄電池モジュールM1~Mnとの組み合わせを期間毎に設定した放電バイパススケジュールに従って、第1処理を実行する。しかしながら、蓄電池制御装置100は、第1処理において、例えば、OCV又はSOCが閾値まで低下した蓄電池モジュールM1~Mnを順次バイパスさせることにより、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量の差を減少させてもよい。
【0057】
また、最終的に全ての蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量を使い切る、全ての蓄電池モジュールM1~Mnの放電完了のタイミングを揃えるという観点から、第1処理において、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの残充電容量を揃えることが好ましい。しかしながら、第1処理において、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量を揃えることは必須ではなく、第1処理において、複数の蓄電池モジュールM1~Mnの残放電容量の差が減少していればよい。
【0058】
また、上記実施形態では、放電完了の閾値を一律とし、第2処理終了時に複数の蓄電池モジュールM1~Mnの放電完了までの残放電容量の差が全ての蓄電池モジュールM1~Mnにおいて減少するように第1処理を実行した。しかしながら、各蓄電池モジュールM1~Mn毎に放電完了の閾値を設け、第2処理終了時に複数の蓄電池モジュールM1~Mnの放電完了までの残放電容量の差が全ての蓄電池モジュールM1~Mnにおいて減少するように第1処理を実行してもよい。即ち、蓄電池モジュールM1~Mnの劣化状態や蓄電池モジュールM1~Mnの種類に応じて、蓄電池モジュールM1~Mn毎に放電完了の閾値を設定してもよい。これにより、劣化の進んだ蓄電池モジュールM1~Mnの放電完了の閾値を高めに設定し、劣化した蓄電池モジュールM1~Mnがより劣化することを防ぐことができる。また、種類の異なる蓄電池を混在させて使用することができる。
【0059】
また、第1処理の終了時点まで、放電させる蓄電池モジュールM1~Mnの出力可能電力が、電力供給先のシステムの必要最小電力以上に維持されることは必須ではない。第1処理の開始から可能な限り長い期間、放電させる蓄電池モジュールM1~Mnの出力可能電力が、電力供給先のシステムの必要最小電力以上に維持されればよい。
【0060】
さらに、第2処理において、全ての蓄電池モジュールM1~Mnを放電させることは必須ではなく、放電させる蓄電池モジュールM1~Mnの数は適宜設定すればよい。
【符号の説明】
【0061】
1 :蓄電システム
20 :バイパス回路
100 :蓄電池制御装置
M1~Mn :蓄電池モジュール(蓄電池)
図1
図2
図3