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特開2023-178578処理装置、処理方法および繊維製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178578
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法および繊維製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06B 5/12 20060101AFI20231211BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20231211BHJP
   D06P 5/20 20060101ALI20231211BHJP
   D06B 9/02 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
D06B5/12
B08B3/04 Z
D06P5/20 Z
D06B9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091340
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】堀 照夫
(72)【発明者】
【氏名】廣垣 和正
(72)【発明者】
【氏名】田畑 功
【テーマコード(参考)】
3B154
3B201
4H157
【Fターム(参考)】
3B154AA05
3B154AB01
3B154AB18
3B154BA08
3B154BA17
3B154BB02
3B154BB05
3B154BB37
3B154BB43
3B154BB72
3B154BC01
3B154BC12
3B201AA46
3B201AB03
3B201BB02
3B201BB94
3B201CD43
4H157AA02
4H157AA03
4H157CA29
4H157CB31
4H157CB46
4H157DA01
4H157GA07
4H157JA10
4H157JA14
4H157JB02
(57)【要約】
【課題】効率の高い洗浄が可能であり、被処理材に対して清浄下で良好な超臨界処理を行うことができる処理装置、処理方法および繊維製品の製造方法を提供すること。
【解決手段】処理装置1は、超臨界流体を用いて被処理材9に処理を行う装置であって、超臨界流体と被処理材9とを接触させる超臨界処理を行う超臨界処理槽10と、超臨界処理槽10に収容されている超臨界流体を循環させる循環回路20と、循環回路20上に設けられた循環ポンプ22と、循環回路20から分岐する第1分岐回路32、33と、循環回路20と第1分岐回路32、33とを切り替える第1回路切替部34と、第1分岐回路32、33に接続され、超臨界流体中またはそれに由来する流体の不純物を除去する吸着材31を有する洗浄槽30と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体を用いて被処理材に処理を行う処理装置であって、
前記超臨界流体と前記被処理材とを接触させる超臨界処理を行う超臨界処理槽と、
前記超臨界処理槽に収容されている前記超臨界流体を循環させる循環回路と、
前記循環回路上に設けられた循環ポンプと、
前記循環回路から分岐する第1分岐回路と、
前記循環回路と前記第1分岐回路とを切り替える第1回路切替部と、
前記第1分岐回路に接続され、前記超臨界流体中またはそれに由来する流体の不純物を除去する除去材を有する洗浄槽と、
を備えることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記循環回路から分岐する第2分岐回路と、
前記循環回路と前記第2分岐回路とを切り替える第2回路切替部と、
前記第2分岐回路に接続され、前記超臨界流体に注入剤を供給する注入剤供給槽と、
を備える請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記注入剤は、染料および機能加工剤の少なくとも一方である請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記循環回路から分岐する第3分岐回路と、
前記循環回路と前記第3分岐回路とを切り替える第3回路切替部と、
前記第3分岐回路に接続され、前記超臨界流体に抽出剤を供給する抽出剤供給槽と、
を備える請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項5】
前記除去材は、前記不純物を捕捉する織布または不織布である請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項6】
前記超臨界処理槽から排出された前記超臨界流体を気化させ、前記超臨界流体に含まれる物質と前記超臨界流体の気化物とを分離する分離槽を備える請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項7】
前記超臨界処理槽に流体を導入する流体導入部と、
前記超臨界処理槽を加熱する加熱部と、
前記流体導入部の動作を制御して、前記超臨界流体の圧力を制御する圧力制御部と、
前記加熱部の動作を制御して、前記超臨界流体の温度を制御する温度制御部と、
前記圧力制御部の動作および前記温度制御部の動作を制御する超臨界条件制御部と、
前記圧力の目標値および前記温度の目標値を組み合わせた処理条件を複数格納する記憶部と、
を備え、
前記超臨界条件制御部は、複数の前記処理条件の中から1つを読み出し、読み出した前記処理条件に基づいて動作する請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項8】
前記循環回路に接続され、前記超臨界処理槽をバイパスするバイパス回路と、
前記超臨界処理槽と前記バイパス回路との間で、前記超臨界流体の経路を切り替えるバイパス回路切替部と、
前記循環ポンプの動作を制御する循環制御部と、
を備える請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項9】
前記超臨界流体は、超臨界二酸化炭素である請求項1または2に記載の処理装置。
【請求項10】
超臨界流体と被処理材とを接触させる超臨界処理を行う超臨界処理槽と、前記超臨界処理槽に収容されている前記超臨界流体を循環させる循環回路と、前記循環回路上に設けられ、前記超臨界流体中の不純物を除去する除去材を有する洗浄槽と、を備える処理装置を用いて前記超臨界処理を行う工程と、
前記超臨界処理の後に設けられ、前記洗浄槽を経由するように前記循環回路を介して前記超臨界流体またはそれに由来する流体を循環させ、洗浄を行う工程と、
を有することを特徴とする処理方法。
【請求項11】
前記超臨界処理は、前記被処理材から抽出物を抽出する抽出処理であり、
前記抽出処理の後、前記洗浄槽を経由するように前記循環回路を介して前記超臨界流体またはそれに由来する流体を循環させ、洗浄を行う請求項10に記載の処理方法。
【請求項12】
前記超臨界処理は、前記被処理材に注入剤を注入する注入処理であり、
前記注入処理の後、前記洗浄槽を経由するように前記循環回路を介して前記超臨界流体またはそれに由来する流体を循環させ、洗浄を行う請求項10に記載の処理方法。
【請求項13】
前記処理装置は、前記循環回路に接続され、前記超臨界処理槽をバイパスするバイパス回路を備え、
前記洗浄を行う工程は、前記洗浄槽および前記バイパス回路を経由するように前記循環回路を介して前記超臨界流体またはそれに由来する流体を循環させ、洗浄を行う操作を含む請求項10ないし12のいずれか1項に記載の処理方法。
【請求項14】
請求項10ないし12のいずれか1項に記載の処理方法により、繊維を含む前記被処理材に対して、前記超臨界処理としての染色または機能加工を施す工程を有することを特徴とする繊維製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置、処理方法および繊維製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維製品に対して染色加工による着色を行ったり、機能加工による機能付加を行ったりする方法として、従来、染料や機能剤を含む水溶液や溶剤に繊維製品を浸す方法が用いられている。しかし、大量の水を消費することや処理後の汚染された排水や有機溶剤の排出が生じることは、環境負荷が高いという課題がある。
【0003】
そこで、大量の水や溶剤を使用しない超臨界流体を用いた染色加工や機能加工が注目されている。超臨界流体は、拡散性および溶解性に優れるため、繊維製品に対する染色加工や機能加工において優れた溶媒となり得る。
【0004】
ところで、超臨界流体を用いた染色加工や機能加工では、染色の色替えや加工種別を切り替える際に、超臨界処理槽内や回路内に残る染料、処理剤、副産物等の不純物を除去する必要がある。これらの不純物は、次の処理において製品に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。そこで、洗浄機能を備えた処理装置が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、オートクレーブと、超臨界流体を循環させる循環経路と、循環経路上に配された循環ポンプと、染料を含まない超臨界流体を循環経路に供給する供給ポンプと、を有する洗浄装置が開示されている。この洗浄装置では、染色の終了後、染料を含まない超臨界流体をオートクレーブ内に引き続き導入することにより、超臨界流体の染料濃度を漸減させ、洗浄を連続的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2012/105011号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、染料を含まない超臨界流体を供給して洗浄する場合、十分な清浄度になるまで多量の超臨界流体を消費する。このため、洗浄コストが高くなることが課題である。また、洗浄の進行に伴って超臨界流体に不純物が混入することになる。これにより、洗浄の進行とともに洗浄効率が低下し、清浄度を十分に高めることができない。清浄度が十分でない場合、次の超臨界処理において不良が生じるおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、効率の高い洗浄が可能であり、被処理材に対して清浄下で良好な超臨界処理を行うことができる処理装置および処理方法、ならびに高品質な繊維製品を製造可能な繊維製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の適用例に係る処理装置は、
超臨界流体を用いて被処理材に処理を行う処理装置であって、
前記超臨界流体と前記被処理材とを接触させる超臨界処理を行う超臨界処理槽と、
前記超臨界処理槽に収容されている前記超臨界流体を循環させる循環回路と、
前記循環回路上に設けられた循環ポンプと、
前記循環回路から分岐する第1分岐回路と、
前記循環回路と前記第1分岐回路とを切り替える第1回路切替部と、
前記第1分岐回路に接続され、前記超臨界流体中またはそれに由来する流体の不純物を除去する除去材を有する洗浄槽と、
を備える。
【0010】
本発明の適用例に係る処理方法は、
超臨界流体と被処理材とを接触させる超臨界処理を行う超臨界処理槽と、前記超臨界処理槽に収容されている前記超臨界流体を循環させる循環回路と、前記循環回路上に設けられ、前記超臨界流体中の不純物を除去する除去材を有する洗浄槽と、を備える処理装置を用いて前記超臨界処理を行う工程と、
前記超臨界処理の後に設けられ、前記洗浄槽を経由するように前記循環回路を介して前記超臨界流体またはそれに由来する流体を循環させ、洗浄を行う工程と、
を有する。
【0011】
本発明の適用例に係る繊維製品の製造方法は、
本発明の適用例に係る処理方法により、繊維を含む前記被処理材に対して、前記超臨界処理としての染色または機能加工を施す工程を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る処理装置および処理方法によれば、効率の高い洗浄が可能であり、被処理材に対して清浄下で良好な超臨界処理を行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る繊維製品の製造方法によれば、高品質な繊維製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る処理装置を示す概略図である。
図2図1の記憶部に格納されている処理条件の例を示す一覧表である。
図3】実施形態に係る処理方法を説明するための工程図である。
図4図3に示す精練後洗浄工程、染色後洗浄工程および機能加工後洗浄工程をさらに詳細に説明するための工程図である。
図5】第1変形例に係る処理装置を示す概略図である。
図6】第2変形例に係る処理装置を示す概略図である。
図7】第3変形例に係る処理装置の一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の処理装置、処理方法および繊維製品の製造方法について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
1.処理装置
まず、実施形態に係る処理装置について説明する。
【0017】
図1は、実施形態に係る処理装置1を示す概略図である。なお、図1では、流体の経路を実線矢印で、電気信号の経路を破線矢印で示している。
【0018】
図1に示す処理装置1は、超臨界流体を用いて被処理材9に超臨界処理を行う装置である。超臨界処理としては、例えば、超臨界流体を用いた、精練、脱糊剤、染色、脱染料、機能加工等の各種処理およびこれらのうちの2つ以上を組み合わせた処理が挙げられる。このような超臨界処理では、溶媒として超臨界流体を用いるため、水や有機溶剤の使用量を少なく抑えることができる。これにより、水資源の節約、廃液量の削減を図ることができ、環境負荷の低減を図ることができる。また、超臨界流体は、溶解性および拡散性に優れるため、被処理材9に例えば繊維が含まれる場合、その繊維を膨潤させ、繊維の材料中に処理剤を注入する。このようにして注入された処理剤は、洗濯等を経ても脱離しにくいため、被処理材9の染色や機能加工の耐久性を高めることができる。さらに、超臨界流体は、繊維同士の隙間に拡散し、抽出物を効率よく抽出することができる。
【0019】
以下の説明では、いずれも超臨界処理である、精練、染色および機能加工を行う処理装置1を例に説明する。
【0020】
図1に示す処理装置1は、被処理材9を収容する超臨界処理槽10と、循環回路20と、洗浄槽30と、注入剤供給槽40と、抽出剤供給槽50と、流体導入部60と、分離槽70と、制御部80と、を備える。
【0021】
1.1.超臨界処理槽
超臨界処理槽10は、超臨界処理の対象物である被処理材9を収容する容器である。被処理材9としては、例えば、繊維、布帛、樹脂成形品等が挙げられる。繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維、綿繊維、麻繊維、絹繊維、羊毛繊維等の天然繊維が挙げられる。布帛としては、例えば、これらの繊維を含む織物、編物、織布、不織布が挙げられる。樹脂成形品としては、例えば、前述した合成繊維の構成材料を成形してなる成形品等が挙げられる。また、被処理材9は、図1に示すように、ボビン90に巻き付けられた状態で、ボビン90ごと超臨界処理槽10に収容されていてもよい。
【0022】
超臨界処理槽10は、図示しないが、超臨界流体を内部に流入させる流入口と、超臨界流体を内部から流出させる流出口と、を有する。流入口から流入した超臨界流体は、円筒状をなすボビン90の中心軸部から径方向に向かって流れるようになっている。これにより、超臨界流体と繊維との被処理材9との接触効率を高めることができる。
【0023】
超臨界流体は、超臨界状態にある流体である。流体は、例えば液化した状態で超臨界処理槽10に導入される。流体としては、液化した、例えば、二酸化炭素、一酸化二窒素、アンモニア、エタンやプロパンのようなアルカン等が挙げられる。これらの流体の圧力および温度を臨界点以上に高めることで、超臨界状態が得られる。このうち、流体には液化した二酸化炭素が好ましく用いられる。二酸化炭素は、圧力の臨界点が約7.38MPa、温度の臨界点が約31.1℃であることから、比較的容易に超臨界状態に至ること、調達コストが低いこと、安全性が高いこと等の理由で有用である。
【0024】
超臨界流体には、必要に応じて、超臨界処理に用いられる処理剤が溶解している。つまり、超臨界流体は、処理剤を溶解させる溶媒として機能する。本明細書において処理剤とは、被処理材9に注入される注入剤、被処理材9から抽出物を抽出させる抽出剤等を指す。超臨界処理槽10では、処理剤を含む超臨界流体を被処理材9と接触させることにより、超臨界処理を行う。処理剤の溶解は、必須ではなく、超臨界流体のみを用いて超臨界処理を行ってもよい。
【0025】
超臨界処理槽10には、ヒーター12(加熱部)、温度計14および圧力計16が設けられている。ヒーター12は、超臨界処理槽10内を加熱することにより、超臨界処理槽10内に存在する超臨界流体の温度を調整する。温度計14は、超臨界処理槽10内の温度を検出する。圧力計16は、超臨界処理槽10内の圧力を検出する。
【0026】
1.2.循環回路
循環回路20は、その両端が超臨界処理槽10の流出口および流入口に接続されている流路である。超臨界処理槽10の流出口から流出した超臨界流体は、循環回路20を経て、流入口から再び超臨界処理槽10に戻される。これを繰り返すことにより、超臨界流体は循環回路20および超臨界処理槽10で構成される回路を循環する。
【0027】
循環回路20上には、循環ポンプ22およびヒーター24(加熱部)が設けられている。
【0028】
循環ポンプ22は、超臨界処理槽10および循環回路20に存在する超臨界流体を循環させる。ヒーター24は、循環回路20内を加熱することにより、循環回路20内に存在する超臨界流体の温度を調整する。
【0029】
また、図1に示す処理装置1は、バイパス回路27と、バイパス回路切替部28と、を備える。
【0030】
バイパス回路27は、循環回路20に接続され、超臨界処理槽10をバイパスする(迂回する)回路である。超臨界処理槽10をバイパスすることにより、超臨界流体の循環経路から超臨界処理槽10を切り離すことができる。これにより、後述するように、超臨界流体を用いて洗浄を行う場合、循環回路20およびバイパス回路27を効率よく洗浄することができる。
【0031】
バイパス回路切替部28は、超臨界処理槽10と循環回路20との間で、超臨界流体の経路を切り替える。図1に示すバイパス回路切替部28は、循環回路20上の超臨界処理槽10の流入口付近に設けられたバルブ282と、循環回路20上の超臨界処理槽10の流出口付近に設けられたバルブ284と、バイパス回路27上に設けられたバルブ286と、を備える。
【0032】
1.3.洗浄槽
循環回路20からは、第1分岐回路32、33が分岐している。また、循環回路20上には、第1回路切替部34が設けられている。第1回路切替部34は、循環回路20と第1分岐回路32、33とを切り替える。
【0033】
第1分岐回路32、33には、洗浄槽30が接続されている。具体的には、第1分岐回路32は、洗浄槽30の流入口に接続され、第1分岐回路33は、洗浄槽30の流出口に接続されている。循環回路20を循環する超臨界流体は、第1回路切替部34によって経路が変更されると、第1分岐回路32、洗浄槽30および第1分岐回路33の順に流れ、再び循環回路20に戻る。
【0034】
洗浄槽30は、超臨界流体中の不純物を除去する除去材を有する。
除去材としては、例えば、不純物を吸着する機能を有し、その機能が作用して不純物を除去するもの、不純物をろ過する機能(不純物をフィルタリングする機能)を有し、その機能が作用して不純物を除去するもの、これらを兼ね備えた機能を有し、その機能が作用して不純物を除去するもの等が挙げられる。
【0035】
除去材の形態は、洗浄槽30内で超臨界流体と接触する面積が大きい形態であることが好ましい。具体的には、例えば、多孔質体、網目体、布状体、パンチング体、粒の充填体等、またはこれらの2種以上を組み合わせたもの等が挙げられる。
【0036】
除去材の材質としては、例えば、各種繊維材料、セラミック材料、金属材料、樹脂材料等、またはこれらの2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。このうち、繊維材料を用いた除去材としては、例えば合成繊維またはその布帛等が挙げられる。除去材に用いられる合成繊維としては、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、アラミド等)、ポリアクリル系樹脂、フッ素ポリマー等の合成樹脂で構成された繊維が挙げられる。また、布帛としては、例えば織布や不織布が挙げられる。これらは、表面積が広く均一性が高いため、不純物を効率よく除去することができる。さらに、除去材には、ポリエステル繊維の織布または不織布が好ましく用いられ、不織布がより好ましく用いられる。ポリエステル繊維の不織布は、通気性、通液性に優れるため、超臨界流体の流通抵抗を低減することができる。これにより、除去材における不純物の除去効率を高めることができる。
【0037】
また、除去材は、高分子吸着剤を有していてもよい。高分子吸着剤としては、例えば、フェニル基またはナフチル基、および、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドまたは炭素数8から20の炭素水素鎖、を単位ユニットとする高分子化合物が挙げられる。高分子吸着剤の分子量は、20,000以上であることが好ましい。これらの高分子吸着剤は、不純物を吸着させることで、超臨界流体から除去する。なお、高分子吸着剤は、必要に応じて、前述した布帛やガラスビーズ等の球体に塗布した状態で保持されていてもよい。
【0038】
また、除去材は、例えば、前述した不純物を吸着する機能やろ過する機能に加えて、さらに、不純物を分解処理する機能や、不純物を凝集処理する機能等を備えていてもよい。これにより、不純物の除去効率をより高めることができる。
【0039】
また、不純物を分解処理する機能や、不純物を凝集処理する機能等は、例えば、洗浄槽30に設けられていてもよいし、洗浄槽30の上流側に位置する別の槽に設けられていてもよく、このような場合であっても、除去材が上記のような機能を有する場合と同様の効果が得られる。特に、洗浄槽30や、洗浄槽30の上流側に位置する別の槽に上記のような機能が設けられていることにより、除去材による不純物の除去効率をさらに高めたり、除去材の長寿命化を図ったりすることができる。
【0040】
なお、以下の説明では、除去材として、不純物を吸着する機能を有し、その機能が作用して不純物を除去する吸着材31を用いた場合を例に説明する。
【0041】
本明細書において不純物とは、超臨界処理を阻害する物質のことをいう。具体的には、注入剤や抽出剤の余剰分、被処理材9から抽出された抽出物、ポリエステルオリゴマー等の副産物等が挙げられる。これらの不純物を洗浄槽30において吸着除去することにより、超臨界流体の清浄度を高めることができる。そして、清浄度の高い超臨界流体が循環することにより、被処理材9の他、超臨界処理槽10や循環回路20等の処理装置1を効率よく洗浄することができる。その結果、洗浄後に行われる超臨界処理を、清浄下で良好に行うことができる。
【0042】
なお、洗浄槽30には、必要に応じて、図示しない洗浄剤供給部が設けられていてもよい。洗浄剤供給部は、超臨界流体やそれに由来する流体に洗浄剤を供給する。超臨界流体に由来する流体とは、超臨界流体よりも圧力および温度の少なくとも一方が低い状態で存在する流体であり、例えば亜臨界流体等を指す。洗浄時には、超臨界流体だけでなく、それに由来する流体を用いるようにしてもよい。洗浄剤は、超臨界流体等に添加される助剤である。洗浄剤としては、例えば界面活性剤等が挙げられる。
【0043】
界面活性剤は、基本骨格として親水部と疎水部とを有する化合物である。親水部としては、例えば、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)を単位ユニットとする分子量1,000~20,000の重合体に由来する構造、分子量1,000~20,000の糖鎖化合物に由来する構造等が挙げられる。また、疎水部としては、例えば、炭素数が8から20までの炭化水素鎖、またはこの一部にフェニル基もしくはナフチル基を有する化合物に由来する構造等が挙げられる。
【0044】
また、染色後の洗浄では、洗浄剤として、例えば界面活性剤、還元剤、高沸点溶剤等が用いられる。なお、洗浄剤は、洗浄槽30で供給されてもよいし、後述する抽出剤供給槽50で供給されてもよい。
【0045】
第1回路切替部34は、第1分岐回路32上に設けられたバルブ342と、第1分岐回路33上に設けられたバルブ344と、循環回路20上に設けられたバルブ346と、を有する。なお、本実施形態では、第1回路切替部34が3つのバルブ342、344、346を有しているが、第1回路切替部34の構成はこれに限定されず、例えば、3つのバルブ342、344、346のうち、少なくとも2つの機能を担う多ポートバルブが使用されていてもよい。また、本明細書で記載する「バルブ」は、手動弁であってもよいが、電磁弁や電動弁のような自動弁であってもよい。後者の場合、開閉を自動化できるため、省力化に寄与できる。
【0046】
また、洗浄槽30と分離槽70との間は、バルブ35を介して接続されている。バルブ35を開けると、洗浄槽30に残った超臨界流体が分離槽70に排出される。
【0047】
なお、図1に示す処理装置1では、洗浄槽30から流出した直後、超臨界処理槽10に流入するように構成されている。これにより、最も不純物濃度が低い状態の超臨界流体を、超臨界処理槽10に供給して洗浄を行うことができる。これにより、超臨界処理槽10や被処理材9の洗浄効率を高めることができる。
【0048】
1.4.注入剤供給槽
循環回路20からは、第2分岐回路42、43が分岐している。また、循環回路20上には、第2回路切替部44が設けられている。第2回路切替部44は、循環回路20と第2分岐回路42、43とを切り替える。
【0049】
第2分岐回路42、43には、注入剤供給槽40が接続されている。具体的には、第2分岐回路42は、注入剤供給槽40の流入口に接続され、第2分岐回路43は、注入剤供給槽40の流出口に接続されている。循環回路20を循環する超臨界流体は、第2回路切替部44によって経路が変更されると、第2分岐回路42、注入剤供給槽40および第2分岐回路43の順に流れ、再び循環回路20に戻る。
【0050】
注入剤供給槽40は、超臨界流体に注入剤を供給するため、注入剤が担持された注入剤担持体41を有する。注入剤担持体41に超臨界流体が接触することにより、超臨界流体に注入剤が供給される。注入剤担持体41としては、例えば粉末状の注入剤が付着した合成繊維の布帛やガラスビーズ等が挙げられる。注入剤担持体41に用いられる合成繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、綿繊維等が挙げられる。なお、布帛の表面には、起毛処理が施されているのが好ましい。これにより、布帛の表面積を増大させることができ、注入剤の担持量を高めることができる。その結果、注入剤の供給効率を高めることができる。また、注入剤担持体41は、必要に応じて、ボビン等に巻き付けられた状態で注入剤供給槽40内に収容される。
【0051】
注入剤としては、例えば、染料、機能加工剤、分散剤、界面活性剤、還元剤等が挙げられる。本明細書では、被処理材9に注入剤を注入する処理を「注入処理」という。特に、注入剤として染料を用いた注入処理を「染色」、機能加工剤を用いた注入処理を「機能加工」ともいう。このうち、染料としては、分散染料、油溶性染料等が挙げられる。また、染料の種類としては、例えば、アントラキノン系染料、アゾベンゼン系染料、チアゾールアゾ系染料等が挙げられる。なお、染色では、染料とともに、分散剤、界面活性剤、共溶媒、塩基等が用いられてもよい。また、機能加工剤としては、例えば、撥水性、親水性、防炎性、難燃性、抗菌性、抗ウイルス性、接触冷感性、吸湿発熱性、防汚性等の機能性を付与する加工剤が挙げられる。なお、機能加工では、機能加工剤とともに、共溶媒、塩基等が用いられてもよい。
【0052】
以下、機能加工剤の具体例について説明する。
機能加工剤としては、例えば、アンカー部位と、アンカー部位と直接的または間接的に結合する機能性部位と、を有する化合物が挙げられる。アンカー部位とは、超臨界処理によって繊維内部に導入される部位である。一方、機能性部位は、繊維から外側に突出または露出する部位である。
【0053】
アンカー部位は、例えば、重量平均分子量Mw(以下、単に「分子量Mw」とも称する。)が1,000~20,000の高分子鎖である。高分子鎖は、分子量Mwが十分に大きいため、高分子鎖をアンカー部位とすることで機能加工剤が強固に繊維に固定化される。これにより、機能加工剤が繊維から脱離しにくくなる。
【0054】
機能性部位は、繊維の表面から外側に突出または露出するように、繊維に対して低い親和性を有するように設計されることが好ましい。例えば、繊維が疎水性繊維である場合、機能性部位は親水性部位であることが好ましい。
【0055】
これらのアンカー部位および機能性部位は、被処理材9が含む繊維の種類に応じて適宜選択される。
【0056】
例えば、被処理材9が合成樹脂繊維を含む場合、アンカー部位は、疎水性基を含むことが好ましい。合成樹脂繊維は疎水性であることが多いためである。疎水性基としては、例えば、炭素数3以上(例えば炭素数3~30)の直鎖および分岐した炭化水素基が挙げられる。そのような炭化水素基として、例えば直鎖または分岐状のアルキル基、直鎖または分岐状のアルケニル基、直鎖または分岐状の脂環式炭化水素基、ビフェニル基等が挙げられる。脂環式炭化水素基の環構造としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ノルボルネン基、ジシクロベンタジエン基等が挙げられる。
【0057】
また、合成樹脂繊維が特にポリプロピレン繊維である場合、アンカー部位は、炭素数3以上(例えば炭素数3~30)の直鎖または分岐状の炭化水素基、シクロヘキシル基またはシクロペンチル基を有する脂環式炭化水素基等を含むことが好ましい。
【0058】
さらに、合成樹脂繊維が特にポリエステル繊維である場合、アンカー部位は、1以上の芳香環(フェニル基等)もしくは複素環を有し、かつ炭素数3以上(例えば炭素数3~30)の直鎖もしくは分岐状の炭化水素部分を有する基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等を有する脂環式炭化水素基等を含むことが好ましい。
【0059】
また、被処理材9がセルロースまたは蛋白質を主成分とする天然由来の繊維(綿、絹等)を含む場合、アンカー部位は、繊維に対して共有結合可能な官能基を含む構造を有することが好ましい。天然由来の繊維は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の官能基を有する。繊維が有する官能基と、アンカー部位の前駆体が有する官能基と、が反応し、共有結合を形成することで、機能加工剤を繊維に対してより強固に固定化できる。アンカー部位の前駆体が有する官能基としては、例えば、トリアジン環を有する基、ビニルスルホン酸基等が好ましく用いられる。トリアジン環を有する基としては、例えば、ジクロロトリアジン環を有する基、モノクロロトリアジン環を有する基等が挙げられる。
【0060】
機能性部位としては、例えば、親水性基、撥水性基、防炎作用を有する官能基、抗菌作用を有する官能基および抗ウイルス作用からなる群より選択される少なくとも1つの官能基等が挙げられる。なお、機能性部位の骨格には、従来の水系繊維加工剤の分子骨格をそのまま利用してもよい。
【0061】
親水性基としては、例えば、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基等のポリエーテル鎖、グルコース、ガラクトース等の単糖類残基、スクロース、マンノース等の二糖類残基、でんぷん、デキストリン等の多糖類残基、もしくはこれらを任意の組み合わせで連結した化合物基等が挙げられる。
【0062】
撥水性基としては、例えば、炭素数3以上の直鎖および分岐した炭化水素基、炭素数4以上有する直鎖および分岐したパーフルオロ炭化水素基、水素原子の一部をフッ素で置換した炭素数3以上の直鎖および分岐した炭化水素基等が挙げられる。
【0063】
防炎作用を有する官能基としては、例えば、リン酸基およびその誘導体を含む官能基、ホウ素化合物基等が挙げられる。
【0064】
抗菌作用または抗ウイルス作用を有する基としては、例えば、第4級アンモニウム基を含む化合物基、銀イオン等の金属イオンを含む金属錯体を含む化合物基等が挙げられる。
【0065】
なお、図1に示す処理装置1では、超臨界処理槽10の外部に設けられた注入剤供給槽40に注入剤担持体41が収容されているが、注入剤担持体41の配置は、これに限定されず、例えば超臨界処理槽10内に設けられていてもよい。その場合、例えば注入剤を布帛等に包んだ状態で被処理材9に隣接した位置に配置してもよいし、前述した注入剤担持体41をボビン90と被処理材9との間に巻き付けておいてもよい。また、このような方法で超臨界処理槽10内に注入剤を配置する場合には、図1に示す注入剤供給槽40およびそれに付随する回路等が省略されていてもよい。
【0066】
第2回路切替部44は、第2分岐回路42上に設けられたバルブ442と、第2分岐回路43上に設けられたバルブ444と、循環回路20上に設けられたバルブ446と、を有する。なお、本実施形態では、第2回路切替部44が3つのバルブ442、444、446を有しているが、第2回路切替部44の構成はこれに限定されず、例えば、3つのバルブ442、444、446のうち、少なくとも2つの機能を担う多ポートバルブが使用されていてもよい。
【0067】
また、注入剤供給槽40と分離槽70との間は、バルブ45を介して接続されている。バルブ45を開けると、注入剤供給槽40に残った超臨界流体が分離槽70に排出される。
【0068】
1.5.抽出剤供給槽
循環回路20からは、第3分岐回路52、53が分岐している。また、循環回路20上には、第3回路切替部54が設けられている。第3回路切替部54は、循環回路20と第3分岐回路52、53とを切り替える。
【0069】
第3分岐回路52、53には、抽出剤供給槽50が接続されている。具体的には、第3分岐回路52は、抽出剤供給槽50の流入口に接続され、第3分岐回路53は、抽出剤供給槽50の流出口に接続されている。循環回路20を循環する超臨界流体は、第3回路切替部54によって経路が変更されると、第3分岐回路52、抽出剤供給槽50および第3分岐回路53の順に流れ、再び循環回路20に戻る。
【0070】
抽出剤供給槽50は、被処理材9から抽出物を抽出するため、超臨界流体に抽出剤を供給する抽出剤供給体51を有する。抽出剤供給体51は、超臨界流体と接触することにより、超臨界流体に抽出剤を供給する。抽出剤供給体51としては、抽出剤を供給可能な部材であれば、特に限定されない。
【0071】
抽出剤は、抽出物に応じて適宜選択される。本明細書では、被処理材9に抽出剤を接触させ、抽出物を抽出させる処理を「抽出処理」という。特に、抽出剤として精練用の処理剤を用いた抽出処理を「精練」、脱糊剤用の処理剤を用いた抽出処理を「脱糊剤」、脱染料用の処理剤を用いた抽出処理を「脱染料」、洗浄剤を用いた抽出処理を「洗浄」ともいう。
【0072】
精練とは、染色の前処理として、繊維等に付着する汚れや付着物等の不純物を抽出させる処理のことをいう。精練用の処理剤としては、例えば塩基や界面活性剤等が挙げられる。脱糊剤とは、染色の前処理として、繊維等に付着する糊剤を抽出させる処理のことをいう。なお、水系で使われる糊剤は、超臨界二酸化炭素には溶解せず、除去されない場合もあるため、超臨界二酸化炭素専用の糊剤を準備することもある。水系の脱糊剤用の処理剤としては、例えば糊剤をエステル化またはアシル化して疎水化する処理剤が用いられる。脱染料用の処理剤としては、例えば界面活性剤を含む超臨界二酸化炭素等が挙げられる。なお、本実施形態では、洗浄剤の供給を「洗浄槽30」で行うように構成されているが、抽出剤供給槽50で洗浄剤が供給されてもよい。
【0073】
第3回路切替部54は、第3分岐回路52上に設けられたバルブ542と、第3分岐回路53上に設けられたバルブ544と、循環回路20上に設けられたバルブ546と、を有する。なお、本実施形態では、第3回路切替部54が3つのバルブ542、544、546を有しているが、第3回路切替部54の構成はこれに限定されず、例えば、3つのバルブ542、544、546のうち、少なくとも2つの機能を担う多ポートバルブが使用されていてもよい。
【0074】
また、抽出剤供給槽50と分離槽70との間は、バルブ55を介して接続されている。バルブ55を開けると、抽出剤供給槽50に残った超臨界流体が分離槽70に排出される。
【0075】
なお、抽出剤供給槽50およびそれに付随する回路等は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0076】
また、図1に示す処理装置1では、循環回路20の最も上流側に抽出剤供給槽50が配置され、最も下流側に洗浄槽30が配置されている。これらの配置は、特に限定されず、図1とは異なっていてもよい。
【0077】
1.6.流体導入部
流体導入部60は、流体タンク61と、タンク側バルブ62と、フローメーター63と、供給ポンプ64と、予熱ヒーター65と、処理槽側バルブ66と、を有する。
【0078】
流体タンク61は、二酸化炭素のような流体を例えば液体状態で貯蔵する。タンク側バルブ62は、流体タンク61から供給される流体の流量を調整する。フローメーター63は、流体の流量を検出する。供給ポンプ64は、流体タンク61から超臨界処理槽10に向けて流体を供給する。予熱ヒーター65は、超臨界処理槽10に供給される流体に予備加熱を行う。予備加熱により、超臨界処理槽10に流体が供給されたとき、超臨界処理槽10内の温度が急激に低下するのを防止し、超臨界状態を維持しやすくなる。処理槽側バルブ66は、例えば超臨界処理槽10から流体タンク61側に向かって流体等が逆流するのを防止する。
【0079】
なお、本実施形態では、流体導入部60が超臨界処理槽10内に流体を導入するように構成されているが、循環回路20内に流体を導入するように構成されていてもよい。
【0080】
1.7.分離槽
分離槽70は、排出バルブ72を介して超臨界処理槽10と接続されている。分離槽70は、排出バルブ72を介して排出された超臨界流体を気化させ、気化した流体と、不純物と、に分離する。気化した流体は、流体タンク61に搬送される。これにより、流体を再利用することができる。その結果、流体の調達コストの削減、環境負荷の低減を図ることができる。一方、不純物は、一部の流体とともに、バルブ73を介して分離物回収ユニット74へ搬送される。分離物回収ユニット74は、不純物を回収する。この回収には、公知の抽出技術が用いられる。これにより、不純物中の処理剤を再利用することができる。
【0081】
また、図1に示す処理装置1は、放圧槽75と、放圧バルブ76と、を備える。放圧槽75は、放圧バルブ76を介して、超臨界処理槽10内の超臨界流体を外部に放出する。これにより、超臨界処理槽10内の圧力を低下させる。
【0082】
1.8.制御部
制御部80は、圧力制御部82と、温度制御部84と、循環制御部85と、超臨界条件制御部86と、記憶部88と、を有する。
【0083】
圧力制御部82は、圧力計16の検出値に基づいて、超臨界処理槽10内の圧力を測定する。そして、測定した圧力に基づいて、流体導入部60のタンク側バルブ62の動作および供給ポンプ64の動作を制御する。これにより、超臨界処理槽10内の圧力を上昇させることができる。なお、図示しないが、圧力制御部82は、超臨界処理槽10と分離槽70との間に設けられたバルブ73の動作、および、放圧バルブ76の動作を制御するように構成されていてもよい。これらの動作を制御することにより、超臨界処理槽10内の圧力を低下させることができる。
【0084】
温度制御部84は、温度計14の検出値に基づいて、超臨界処理槽10内の温度を測定する。そして、測定した温度に基づいて、超臨界処理槽10に設けられたヒーター12の動作および循環回路20上に設けられたヒーター24の動作を制御する。これにより、超臨界処理槽10内の温度および循環回路20内の温度をそれぞれ調整することができる。なお、図示しないが、温度制御部84は、予熱ヒーター65の動作を制御するように構成されていてもよい。
【0085】
循環制御部85は、循環ポンプ22の動作、第1回路切替部34の動作、第2回路切替部44の動作、第3回路切替部54の動作、および、バイパス回路切替部28の動作を制御する。これにより、循環回路20において超臨界流体を循環させたり、超臨界流体の循環経路を切り替えたりすることができる。なお、本願の各図では、これらの各部と循環制御部85とが電気的に接続され、循環制御部85から各部の動作を制御可能であるように図示しているが、各部の動作は、手動で行われるようになっていてもよい。
【0086】
超臨界条件制御部86は、圧力制御部82の動作および温度制御部84の動作を制御する。これにより、超臨界処理槽10内や循環回路20内の圧力および温度の双方を協調して制御することができる。その結果、超臨界状態を良好に維持することができる。
【0087】
記憶部88は、圧力の目標値および温度の目標値を組み合わせた処理条件を複数格納する。超臨界条件制御部86は、記憶部88に格納されている処理条件の中から1つを読み出す。そして、超臨界条件制御部86は、読み出した処理条件に基づいて、圧力制御部82の動作、温度制御部84の動作および循環制御部85の動作を制御する。処理条件を選択する基準としては、例えば、後述する処理条件が有する各工程の目的、内容の他、使用する処理剤の超臨界流体に対する溶解性、超臨界流体の臨界点、吸着材31の特性、被処理材9の特性等が挙げられる。
【0088】
つまり、記憶部88には、様々な処理モードに応じた処理条件が用意されている。処理モードとしては、例えば、精練、脱糊剤、被処理材洗浄、配管洗浄のような抽出処理を行う抽出モード、染色、機能加工のような注入処理を行う注入モード等が挙げられる。なお、本明細書において「配管」とは、循環回路20やそれに接続された回路等を指す。
【0089】
超臨界条件制御部86は、あらかじめ入力されている情報に基づいて、または、その都度ユーザーから入力された情報に基づいて、複数の処理条件の中から1つを選択するように構成されている。したがって、処理装置1は、ユーザーからの情報の入力を受け付けるため、図示しない入力部を備えていてもよい。入力部としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等が挙げられる。また、処理装置1は、各種情報をユーザーに視認させるため、図示しない表示部を備えていてもよい。表示部としては、例えば、液晶表示装置等が挙げられる。なお、表示部には、手動操作が必要なバルブや機器等の操作内容をユーザーに知らせるため、手順等が表示されるようになっていてもよい。
【0090】
図2は、図1の記憶部88に格納されている処理条件の例を示す一覧表である。図2中の「A1-1」、「A1-2」等は、それぞれ目標値を表す。これらの目標値は、あらかじめユーザーが入力しておけばよい。なお、循環回路20の圧力や温度および超臨界処理槽10の圧力や温度は、通常、互いに同じ目標値に設定される。例えば、染色の場合、A4-1とA4-2とを同じ値に設定し、B4-1とB4-2とを同じ値に設定する。なお、これらは異なっていてもよい。また、図2に示す表のうち、異なる処理同士における目標値の間に制限はないが、後に説明するように、被処理材洗浄における温度(B2-1、B2-2)は、染色における温度(B4-1、B4-2)よりも低い値に設定されることが好ましい。
【0091】
また、制御部80は、上述した機能以外の機能を有していてもよい。例えば、制御部80は、複数の処理モードを切り替えながら連続して実行する機能を有していてもよい。これにより、処理装置1は、被処理材9を超臨界処理槽10内に収容した後、取り出すまで、後述する処理方法を自動で行うことができる。
【0092】
制御部80の機能は、例えば、プロセッサー、メモリーおよび外部インターフェースを備えるハードウェアにおいて、プロセッサーがプログラムを実行することによって実現される。プロセッサーとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)等が挙げられる。メモリーとしては、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等が挙げられる。外部インターフェースは、プロセッサーやメモリーを処理装置1内の各部や外部機器と接続する機器である。以上のようなハードウェアとして、例えばパーソナルコンピューター、タブレット端末が挙げられる。
【0093】
2.処理方法
次に、実施形態に係る処理方法について説明する。以下の説明では、いずれも超臨界処理である精練、染色および機能加工を順次行う場合を例に説明するが、いずれか1つのみを行う場合も本発明に含まれる。
【0094】
図3は、実施形態に係る処理方法を説明するための工程図である。
図3に示す処理方法は、収容工程S102と、精練工程S104と、精練後洗浄工程S106と、染色工程S108と、染色後洗浄工程S110と、機能加工工程S112と、機能加工後洗浄工程S114と、取出工程S116と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
【0095】
2.1.収容工程
収容工程S102では、まず、ボビン90に巻き付けられた被処理材9を超臨界処理槽10内に収容する。また、注入剤としての染料を注入剤担持体41に担持させ、注入剤供給槽40に収容する。さらに、抽出剤を抽出剤供給体51に入れ、抽出剤供給槽50に収容する。
【0096】
次に、ヒーター12および予熱ヒーター65により、各部を昇温させる。また、流体導入部60により、液化した二酸化炭素を超臨界処理槽10内に導入する。このとき、二酸化炭素は、供給ポンプ64で昇圧されるとともに、予熱ヒーター65で加熱され、超臨界状態で導入される。
【0097】
次に、循環回路20上の循環ポンプ22により、超臨界流体を循環させるとともに、ヒーター24で温度を調整する。また、バイパス回路切替部28により、超臨界処理槽10を径種するように超臨界流体の経路を設定する。これにより、循環する超臨界流体は、流入口から超臨界処理槽10に流入し、ボビン90の内側から外側に向かって流れた後、流出口から流出する。
【0098】
2.2.精練工程
精練工程S104では、制御部80により、超臨界処理槽10内および循環回路20内について、それぞれ精練に対応した圧力および温度に保持する。
【0099】
次に、第3回路切替部54により、抽出剤供給槽50を経由するように超臨界流体の経路を切り替える。具体的には、バルブ546を閉じ、バルブ542、544を開ける。これにより、超臨界流体が抽出剤供給槽50を経由し、その過程で超臨界流体に抽出剤が溶解する。そして、抽出剤を含む超臨界流体は、循環回路20および超臨界処理槽10を経由する経路を循環する。その結果、抽出剤を含む超臨界流体が被処理材9に作用し、精練を行うことができる。超臨界流体は、溶解性および拡散性に優れるため、被処理材9の繊維を膨潤させ、抽出物を効率よく抽出させる。これにより、高い効率で精練を行うことができる。
【0100】
精練の終了後、第3回路切替部54により、抽出剤供給槽50を経由しないように超臨界流体の経路を切り替える。
【0101】
2.3.精練後洗浄工程
精練後洗浄工程S106では、制御部80により、被処理材9の洗浄および配管の洗浄に対応した圧力および温度に保持する。これらの洗浄を行う場合、超臨界流体を用いることが好ましいが、これに由来する流体、つまり、圧力や温度を変更して超臨界状態が緩和した状態(亜臨界流体のような非超臨界流体等)を用いるようにしてもよい。これは、後述する他の洗浄においても同様である。なお、以下の説明では、超臨界流体を用いる場合を例に説明する。
【0102】
図4は、図3に示す精練後洗浄工程S106、染色後洗浄工程S110および機能加工後洗浄工程S114をさらに詳細に説明するための工程図である。
【0103】
精練後洗浄工程S106では、まず、ステップS202として、第1回路切替部34により、洗浄槽30を経由するように超臨界流体の経路を切り替える。具体的には、バルブ346を閉じ、バルブ342、344を開ける。これにより、精練によって抽出された抽出物(不純物)を含む超臨界流体が、洗浄槽30を経由するように循環する。その結果、不純物が吸着材31によって除去され、循環する超臨界流体に含まれる不純物濃度が徐々に低下する。このようにして被処理材9や超臨界処理槽10の洗浄を行うことにより、被処理材9や超臨界処理槽10に残留した不純物が、次の工程における不具合の原因になるのを抑制することができる。なお、必要に応じて、洗浄槽30において超臨界流体に洗浄剤を供給するようにしてもよい。
【0104】
次に、ステップS204として、バイパス回路切替部28により、バイパス回路27を経由するように超臨界流体の経路を切り替える。具体的には、バルブ282、284を閉じ、バルブ286を開ける。
【0105】
次に、ステップS206として、超臨界処理槽10を経由させることなく超臨界流体を循環させる。つまり、循環回路20、バイパス回路27および洗浄槽30を経由するように、超臨界流体を循環させる。これにより、配管洗浄を行うことができる。その結果、配管に残留した不純物が、次の工程において不具合の原因になるのを抑制することができる。このようにして、被処理材9だけでなく、配管の洗浄も行うことで、不純物の濃度を確実に低下させることができる。
【0106】
洗浄の終了後、第1回路切替部34により、洗浄槽30を経由しないように超臨界流体の経路を切り替える。また、バイパス回路切替部28により、超臨界処理槽10を経由するように超臨界流体の経路を切り替える。
【0107】
なお、精練工程S104および精練後洗浄工程S106は、必要に応じて行えばよく、省略されていてもよい。
【0108】
2.4.染色工程
染色工程S108では、制御部80により、超臨界処理槽10内および循環回路20内について、それぞれ染色に対応した圧力および温度に保持する。例えば、圧力25MPa、温度120℃等を例示できる。
【0109】
次に、第2回路切替部44により、注入剤供給槽40を経由するように超臨界流体の経路を切り替える。具体的には、バルブ446を閉じ、バルブ442、444を開ける。これにより、超臨界流体が注入剤供給槽40を経由し、その過程で超臨界流体に染料が溶解する。そして、染料を含む超臨界流体は、循環回路20および超臨界処理槽10を経由する経路を循環する。その結果、染料を含む超臨界流体が被処理材9に作用し、染色を行うことができる。超臨界流体は、溶解性および拡散性に優れるため、染料を良好に溶解させるとともに、被処理材9の繊維を膨潤させ、繊維中に効率よく入り込む。これにより、被処理材9の繊維中に染料が注入または拡散・吸着され、染色される。
【0110】
染色の終了後、第2回路切替部44により、注入剤供給槽40を経由しないように超臨界流体の経路を切り替える。
【0111】
2.5.染色後洗浄工程
染色後洗浄工程S110では、制御部80により、被処理材9の洗浄および配管の洗浄に対応した圧力および温度に保持する。
【0112】
染色後洗浄工程S110では、まず、ステップS202として、第1回路切替部34により、洗浄槽30を経由するように超臨界流体の経路を切り替える。これにより、染色に寄与しなかった未固着染料等の不純物を含む超臨界流体が、洗浄槽30を経由するように循環する。その結果、不純物が吸着材31によって除去され、循環する超臨界流体に含まれる不純物濃度が徐々に低下する。このようにして被処理材9や超臨界処理槽10の洗浄を行うことにより、被処理材9や超臨界処理槽10に残留した不純物が、次の工程において不具合の原因になるのを抑制することができる。なお、必要に応じて、洗浄槽30において超臨界流体に洗浄剤を供給するようにしてもよい。
【0113】
なお、前述した精練後洗浄工程S106で使用した吸着材31は、本工程の前に新たなものに交換してもよい。新たな吸着材31は、精練後洗浄工程S106で使用したものと同じ種類のものであってもよいが、未固着染料の除去に適した種類のものであることが好ましい。これにより、不純物の除去効率を高めることができる。
【0114】
次に、ステップS204として、バイパス回路切替部28により、バイパス回路27を経由するように超臨界流体の経路を切り替える。
【0115】
次に、ステップS206として、超臨界処理槽10を経由させることなく超臨界流体を循環させる。これにより、配管洗浄を行うことができる。その結果、配管に残留した不純物が、次の工程における不具合の原因になるのを抑制することができる。このようにして、被処理材9だけでなく、配管の洗浄も行うことで、不純物の濃度を確実に低下させることができる。なお、洗浄槽30を経由する経路への切り替えは、第1回路切替部34により簡単に行えるため、配管洗浄に要する手間が少ない点も利点といえる。
【0116】
また、超臨界流体またはそれに由来する流体は、染料の溶解度が高いため、水や有機溶剤等に比べて、未固着染料等の不純物を効果的に溶解させる。このため、染色後洗浄工程S110では、水や有機溶剤を全く使用しないか、または使用量を削減しつつ、高い洗浄効果を得ることができる。これにより、環境負荷の低減を図ることができる。
【0117】
さらに、染色後洗浄工程S110では、洗浄槽30を経由するように超臨界流体を循環させ、洗浄を行う。このため、超臨界流体を循環させるだけでも、不純物の濃度を徐々に低下させることができ、効率の高い洗浄が可能になる。これにより、洗浄において新たな流体の導入が不要になるため、それに要するコストやエネルギーを削減することができる。また、処理装置1では、超臨界状態またはそれに準じた状態を維持しながら、洗浄を行うことができる。これにより、昇圧に要するエネルギーが不要になり、その点でも環境負荷の低減に寄与できる。
【0118】
なお、これらの効果は、前述した精練後洗浄工程S106および後述する機能加工後洗浄工程S114においても同様に得られる。
【0119】
また、染色後洗浄工程S110では、染色工程S108に比べて、超臨界処理槽10内および循環回路20内の圧力や温度を下げることが好ましい。これにより、膨潤した繊維を収縮させることができるので、被処理材9に注入された染料が超臨界流体に再び抽出されてしまうのを抑制しつつ、洗浄を行うことができる。また、このような処理条件に設定することで、超臨界流体に溶解した未固着染料等の不純物が、洗浄槽30の吸着材31に析出しやすくなる。これにより、不純物の除去効率を高めることができる。
【0120】
本工程における超臨界処理槽10内および循環回路20内の圧力や温度は、流体の種類や被処理材9の種類等に応じて、適宜設定されるが、一例として、圧力が、超臨界圧力以上30MPa以下であることが好ましく、10MPa以上30MPa以下であることがより好ましい。これにより、超臨界状態が維持され、洗浄効率を確保することができる。また、温度は、超臨界温度以上であることが好ましく、50℃以上130℃以下であることがより好ましい。これにより、超臨界状態が維持されるとともに、洗浄時に染料等の注入剤が抽出されてしまう(脱落してしまう)のを抑制することができる。
【0121】
なお、以上の圧力および温度についての説明は、前述した精練後洗浄工程S106および後述する機能加工後洗浄工程S114においても同様である。
【0122】
また、本実施形態では、本工程において、被処理材9や超臨界処理槽10の洗浄、および、配管の洗浄を順次行っているが、これらの双方を行うことは必須ではなく、いずれか一方のみであってもよい。これは、他の洗浄においても同様である。
【0123】
洗浄の終了後、第1回路切替部34により、洗浄槽30を経由しないように超臨界流体の経路を切り替える。また、バイパス回路切替部28により、超臨界処理槽10を経由するように超臨界流体の経路を切り替える。
【0124】
2.6.機能加工工程
機能加工工程S112では、まず、注入剤としての機能加工剤を注入剤担持体41に担持させ、注入剤供給槽40に収容する。
【0125】
次に、制御部80により、超臨界処理槽10内および循環回路20内について、それぞれ機能加工に対応した圧力および温度に保持する。
【0126】
次に、第2回路切替部44により、注入剤供給槽40を経由するように超臨界流体の経路を切り替える。これにより、超臨界流体が注入剤供給槽40を経由し、その過程で超臨界流体に機能加工剤が溶解する。そして、機能加工剤が溶解した超臨界流体は、循環回路20および超臨界処理槽10を経由する経路を循環する。その結果、機能加工剤を含む超臨界流体が被処理材9に作用し、機能加工を行うことができる。機能加工とは、被処理材9に様々な機能性、例えば撥水性、親水性、防炎性、難燃性、抗菌性、抗ウイルス性、接触冷感性、吸湿発熱性、防汚性等を付与する加工のことをいう。
【0127】
超臨界流体は、溶解性および拡散性に優れるため、機能加工剤を良好に溶解させるとともに、被処理材9の繊維を膨潤させ、繊維中に効率よく入り込む。これにより、被処理材9の繊維中に機能加工剤が注入または拡散・吸着される。
【0128】
機能加工の終了後、第2回路切替部44により、注入剤供給槽40を経由しないように超臨界流体の経路を切り替える。
【0129】
2.7.機能加工後洗浄工程
機能加工後洗浄工程S114では、制御部80により、被処理材9の洗浄および配管の洗浄に対応した圧力および温度に保持する。
【0130】
精練後洗浄工程S106では、まず、ステップS202として、第1回路切替部34により、洗浄槽30を経由するように超臨界流体の経路を切り替える。これにより、機能加工に寄与しなかった未固着加工剤等の不純物を含む超臨界流体が、洗浄槽30を経由するように循環する。その結果、不純物が吸着材31によって除去され、循環する超臨界流体に含まれる不純物濃度が徐々に低下する。このようにして被処理材9や超臨界処理槽10の洗浄を行うことにより、被処理材9や超臨界処理槽10に残留した不純物が、次の工程において不具合の原因になるのを抑制することができる。なお、必要に応じて、洗浄槽30において超臨界流体に洗浄剤を供給するようにしてもよい。
【0131】
なお、前述した染色後洗浄工程S110で使用した吸着材31は、本工程の前に新たなものに交換してもよい。新たな吸着材31は、染色後洗浄工程S110で使用したものと同じ種類のものであってもよいが、未固着加工剤の除去に適した種類のものであることが好ましい。これにより、不純物の除去効率を高めることができる。
【0132】
また、本実施形態では、機能加工の後、被処理材9を取り出すため、ステップS202では、分離槽70を用いて超臨界処理槽10内の圧力を下げる操作で代替してもよい。つまり、被処理材9や超臨界処理槽10の洗浄を行った後、分離槽70での気化分離操作を行うようにしてもよいし、前者のみまたは後者のみを行うようにしてもよい。
【0133】
分離槽70での気化分離操作では、まず、排出バルブ72を開け、超臨界処理槽10内の圧力を下げる。そして、所定の圧力まで低下させた後、バイパス回路切替部28により、超臨界処理槽10を超臨界流体の循環経路から切り離す。
【0134】
次に、排出バルブ72を介して超臨界処理槽10内の超臨界流体を排出させ、分離槽70で気化分離させる。これにより、流体である二酸化炭素を回収する。
【0135】
次に、ステップS204として、バイパス回路切替部28により、バイパス回路27を経由するように超臨界流体の経路を切り替える。
【0136】
次に、ステップS206として、超臨界処理槽10を経由させることなく超臨界流体を循環させる。これにより、配管洗浄を行うことができる。その結果、配管に残留した不純物が、次の工程における不具合の原因になるのを抑制することができる。このようにして、被処理材9だけでなく、配管の洗浄も行うことで、不純物の濃度を確実に低下させることができる。
【0137】
なお、機能加工工程S112および機能加工後洗浄工程S114は、必要に応じて行えばよく、省略されていてもよい。また、本実施形態では、精練、染色および機能加工の後、それぞれ洗浄を行っているが、これも必須ではなく、いずれかのタイミングで、少なくとも1回の洗浄を行うようにしてもよい。
【0138】
2.8.取出工程
取出工程S116では、排出バルブ72を開けて超臨界処理槽10内の圧力を低下させ、大気圧まで低下したら排出バルブ72を閉じる。次に、超臨界処理槽10を開け、被処理材9をボビン90ごと取り出す。その後、必要に応じて、超臨界処理槽10内を拭き取り洗浄する。
【0139】
3.変形例
次に、前記実施形態の変形例に係る処理装置について説明する。
【0140】
図5は、第1変形例に係る処理装置1Aを示す概略図である。図6は、第2変形例に係る処理装置1Bを示す概略図である。図7は、第3変形例に係る処理装置1Cの一部を示す概略図である。
【0141】
以下、変形例に係る処理装置について説明するが、以下の説明では、前記実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0142】
図5に示す処理装置1Aは、注入剤供給槽40とは別の注入剤供給槽40Aを備えるとともに、付随する回路等を備えること以外、図1に示す処理装置1と同様である。
【0143】
図5に示す循環回路20からは、第4分岐回路42A、43Aが分岐している。また、循環回路20上には、第4回路切替部44Aが設けられている。第4回路切替部44Aは、循環回路20と第4分岐回路42A、43Aとを切り替える。
【0144】
注入剤供給槽40Aは、第4分岐回路42A、43Aに接続されている。具体的には、第4分岐回路42Aは、注入剤供給槽40Aの流入口に接続され、第4分岐回路43Aは、注入剤供給槽40Aの流出口に接続されている。循環回路20を循環する超臨界流体は、第4回路切替部44Aを介して、第4分岐回路42A、注入剤供給槽40Aおよび第4分岐回路43Aの順に流れ、再び循環回路20に戻る。
【0145】
注入剤供給槽40Aは、前述した注入剤供給槽40と同様、注入剤が担持された注入剤担持体41Aを有する。注入剤供給槽40と並列するように注入剤供給槽40Aを設けることにより、注入剤担持体41を入れ替えることなく、2種類の注入剤を超臨界流体に注入することができる。これにより、処理装置1による処理効率をより高めることができる。例えば、注入剤担持体41には染料を担持させ、注入剤担持体41Aには機能加工剤を担持させることにより、前述した機能加工工程S112で必要であった注入剤担持体41の入れ替え作業を省略することができる。
【0146】
第4回路切替部44Aは、第4分岐回路42A上に設けられたバルブ442Aと、第4分岐回路43A上に設けられたバルブ444Aと、循環回路20上に設けられたバルブ446Aと、を有する。バルブ442A、444A、446Aは、それぞれ流れる超臨界流体の流量を調整する。なお、本変形例では、第4回路切替部44Aが3つのバルブ442A、444A、446Aを有しているが、第4回路切替部44Aの構成はこれに限定されず、例えば、3つのバルブ442A、444A、446Aのうち、少なくとも2つの機能を担う多ポートバルブが使用されていてもよい。
【0147】
また、注入剤供給槽40Aと分離槽70との間は、バルブ45Aを介して接続されている。バルブ45Aを開けると、注入剤供給槽40Aに残った超臨界流体が分離槽70に排出される。
【0148】
なお、処理装置1Aは、3つ以上の注入剤供給槽を備えていてもよい。また、処理装置1Aは、2つ以上の洗浄槽、2つ以上の抽出剤供給槽、それらに付随する回路等を備えていてもよい。これにより、処理装置1Aの稼働を止めることなく、各槽のメンテナンス等を行うことができる。
【0149】
図6に示す処理装置1Bは、循環回路20Bの構成が異なること以外、図5に示す処理装置1Aと同様である。
【0150】
図6に示す循環回路20Bは、上流側回路201Bと下流側回路202Bとに分かれている。上流側回路201Bは、超臨界処理槽10の流出口と、洗浄槽30、注入剤供給槽40、40A、および、抽出剤供給槽50の各流入口に接続されている分岐回路と、を接続している。下流側回路202Bは、超臨界処理槽10の流入口と、洗浄槽30、注入剤供給槽40、40A、および、抽出剤供給槽50の各流出口に接続されている分岐回路と、を接続している。
【0151】
具体的には、図6に示す上流側回路201Bからは、第1分岐回路32、第2分岐回路42、第3分岐回路52、および、第4分岐回路42Aがそれぞれ分岐している。一方、図6に示す下流側回路202Bからは、第1分岐回路33、第2分岐回路43、第3分岐回路53、および、第4分岐回路43Aがそれぞれ分岐している。
【0152】
また、上流側回路201B上には、バルブ446、546が設けられている。一方、下流側回路202B上には、バルブ448、448Aが設けられている。
【0153】
さらに、第1分岐回路33は、図5に示す処理装置1Aよりも長く、下流側回路202Bと第3分岐回路53との接続部まで延長されている。つまり、洗浄槽30で不純物が除去された後の超臨界流体は、下流側回路202Bの起点まで戻された上で循環回路20Bに合流するように、第1分岐回路33が延長されている。
【0154】
そして、バルブ342、344により、第1回路切替部34が構成されている。また、バルブ442、444、446、448により、第2回路切替部44が構成されている。さらに、バルブ542、544、546により、第3回路切替部54が構成されている。また、バルブ442A、444A、448Aにより、第4回路切替部44Aが構成されている。
【0155】
以上のような構成によれば、洗浄槽30で不純物が除去された超臨界流体を、下流側回路202Bの全長にわたって流すことができる。これにより、抽出剤供給槽50で供給された抽出剤、注入剤供給槽40、40Aで供給された注入剤等が、下流側回路202B内に析出して不純物となった場合でも、洗浄時に、それらを超臨界流体に溶解させることができる。その結果、配管洗浄が及ばない回路の範囲を短くすることができ、洗浄効果をより高めることができる。
【0156】
なお、例えば、処理装置1Bで洗浄を行う場合、上流側回路201B、第1分岐回路32、洗浄槽30、第1分岐回路33および下流側回路202Bをこの順で経由するように超臨界流体を循環させればよい。
【0157】
また、例えば、処理装置1Bで染色を行う場合、上流側回路201B、第2分岐回路42、染料を供給する注入剤供給槽40、第2分岐回路43および下流側回路202Bをこの順で経由するように超臨界流体を循環させればよい。
【0158】
さらに、例えば、処理装置1Bで精練を行う場合、上流側回路201B、第3分岐回路52、抽出剤供給槽50、第3分岐回路53および下流側回路202Bをこの順で経由するように超臨界流体を循環させればよい。
【0159】
また、例えば、処理装置1Bで機能加工を行う場合、上流側回路201B、第4分岐回路42A、機能加工剤を供給する注入剤供給槽40A、第4分岐回路43Aおよび下流側回路202Bをこの順で経由するように超臨界流体を循環させればよい。
【0160】
図7に示す処理装置1Cは、洗浄槽30Cの構成が異なること以外、図1に示す処理装置1と同様である。なお、図7では、一部の電気信号の経路を省略している。
【0161】
図7に示す洗浄槽30Cは、洗浄剤供給槽301Cと、吸着材収容槽302Cと、連結回路303Cと、短絡回路304Cと、加圧ポンプ305Cと、バルブ306C、307C、308C、309Cと、を備える。
【0162】
洗浄剤供給槽301Cは、超臨界流体に洗浄剤を供給する。洗浄剤供給槽301Cの流入口は、第1分岐回路32に接続され、流出口は、連結回路303Cに接続されている。
【0163】
吸着材収容槽302Cは、吸着材31を収容する。吸着材収容槽302Cの流入口は、連結回路303Cに接続され、流出口は、第1分岐回路33に接続されている。
【0164】
連結回路303Cは、洗浄剤供給槽301Cと吸着材収容槽302Cとを連結する。なお、連結回路303C上には、バルブ306C、307Cが設けられている。また、第1分岐回路33上には、加圧ポンプ305Cおよびバルブ308Cが設けられている。
【0165】
短絡回路304Cは、第1分岐回路33と連結回路303Cとを接続している。また、短絡回路304C上には、バルブ309Cが設けられている。バルブ306C、307C、308C、309Cの操作により、洗浄剤供給槽301Cから流出した超臨界流体は、連結回路303C、短絡回路304Cおよび第1分岐回路33を経由して循環回路20に戻る経路、連結回路303C、吸着材収容槽302Cおよび第1分岐回路33を経由して循環回路20に戻る経路、および、短絡回路304Cおよび吸着材収容槽302Cを経由して循環する経路、のいずれかを流れることができる。
【0166】
図7に示す処理装置1Cで被処理材9や配管の洗浄を行う場合、まず、第1回路切替部34により、洗浄槽30Cを経由するように超臨界流体の経路を切り替える。具体的には、バルブ346を閉じ、バルブ342、344を開ける。これにより、不純物を含む超臨界流体が、洗浄剤供給槽301Cに流入する。これにより、洗浄剤が超臨界流体に供給される。また、バルブ307C、308Cを閉じ、バルブ306C、309Cを開ける。これにより、洗浄剤を含む超臨界流体が、短絡回路304Cを経由する経路で、循環回路20に戻される。つまり、吸着材収容槽302Cを経由しない経路で、洗浄剤を含む超臨界流体を循環させることができる。これにより、吸着材31の劣化(消費)を避けつつ、洗浄剤を含む超臨界流体によって十分な洗浄を行うことができる。
【0167】
その後、被処理材9や配管に残留している不純物が超臨界流体に移行した段階で、バルブ309Cを閉じ、バルブ307C、308Cを開ける。これにより、不純物を含む超臨界流体が吸着材収容槽302Cに流入する。吸着材収容槽302Cでは、吸着材31によって不純物が除去される。その結果、不純物を高濃度に含んだ超臨界流体を、劣化が少ない状態の吸着材31に接触させることができるので、不純物を効率よく吸着除去することができる。
【0168】
また、このとき、バルブ344、306Cを閉じるとともに、加圧ポンプ305Cを動作させるようにしてもよい。これにより、短絡回路304Cおよび吸着材収容槽302Cを経由する短い経路で、不純物を含む超臨界流体を循環させることができる。これにより、不純物の除去効率を高めることができる。
【0169】
なお、図7では、洗浄槽30Cが1つの吸着材収容槽302Cを備えているが、複数の吸着材収容槽302Cを備えていてもよい。この場合、複数の吸着材収容槽302Cは、互いに直列に接続されていてもよいし、互いに並列に接続されていてもよい。前者の場合、不純物の除去効率を特に高めることができる。また、後者の場合、複数の吸着材収容槽302Cの中から1つを選択するように経路を切り替えることができる。これにより、超臨界流体の循環を停止することなく、吸着材31の交換作業を行うことができる。
【0170】
また、吸着材収容槽302Cは、前述した吸着材31を有する構成の他、気化分離によって不純物を分離する構成であってもよい。つまり、吸着材収容槽302Cは、前述した分離槽70と同様の構成であってもよい。
【0171】
さらに、吸着材31を有する槽、および、気化分離を行う槽を、互いに並列に接続し、洗浄槽30Cに適用してもよい。この場合、洗浄の初期段階では、気化分離を行う槽を経由するように超臨界流体を循環させ、その後、吸着材31を有する槽を経由するように超臨界流体を循環させる。これにより、双方の特徴を活かすことができ、不純物の除去効率を特に高めることができる。
【0172】
以上のような変形例に係る処理装置においても、前記実施形態に係る処理装置と同様の効果が得られる。
【0173】
4.実施形態が奏する効果
以上のように、実施形態に係る処理装置1は、超臨界流体を用いて処理を行う装置であって、超臨界処理槽10と、循環回路20と、循環ポンプ22と、第1分岐回路32と、第1回路切替部34と、洗浄槽30と、を備える。超臨界処理槽10は、超臨界流体と被処理材9とを接触させる超臨界処理を行う。循環回路20は、超臨界処理槽10に収容されている超臨界流体を循環させる。循環ポンプ22は、循環回路20上に設けられている。第1分岐回路32は、循環回路20から分岐する回路である。第1回路切替部34は、循環回路20と第1分岐回路32とを切り替える。洗浄槽30は、第1分岐回路32に接続され、超臨界流体中の不純物を吸着除去する吸着材31(除去材)を有する。
【0174】
このような処理装置1によれば、洗浄槽30を経由するように超臨界流体またはそれに由来する流体を循環させ、洗浄を行うことができるため、効率の高い洗浄が可能になる。これにより、洗浄後に被処理材9に対して新たに行う超臨界処理を、清浄下で良好に行うことができる。その結果、例えば超臨界処理として染色を行った場合、染色堅牢度等の品質に優れ、所望の色彩を均質に呈する繊維製品を安定して得ることができる。
【0175】
また、超臨界流体やそれに由来する流体は、物質の溶解度が高いため、水や有機溶剤等に比べて、不純物を効果的に溶解させる。このため、洗浄において、水や有機溶剤を全く使用しないか、または使用量を削減しつつ、高い洗浄効果を得ることができる。これにより、環境負荷の低減を図ることができる。
【0176】
さらに、洗浄において新たな流体の導入が不要になるため、それに要するコストやエネルギーを削減することができる。また、超臨界状態またはそれに準じた状態を維持しながら、洗浄を行うことにより、昇圧に要するエネルギーが不要になり、その点でも環境負荷の低減に寄与できる。
【0177】
また、実施形態に係る処理装置1は、第2分岐回路42、43と、第2回路切替部44と、注入剤供給槽40と、を備える。第2分岐回路42、43は、循環回路20から分岐する回路である。第2回路切替部44は、循環回路20と第2分岐回路42、43とを切り替える。注入剤供給槽40は、第2分岐回路42、43に接続され、超臨界流体に注入剤を供給する。
【0178】
このような構成によれば、超臨界処理槽10の外部に設けられた注入剤供給槽40において、注入剤の供給が可能になる。このため、例えば注入剤を補給したり、注入剤を変更したりする操作を容易に行うことができる。これにより、注入処理の効率を高めることができる。また、超臨界状態を維持したまま、これらの操作が可能になるため、昇圧に要するエネルギーが新たな流体の導入に要するコストを削減することができる。
【0179】
また、注入剤供給槽40は、前述した洗浄槽30とともに、循環回路20から分岐した回路に接続されている。つまり、注入剤供給槽40は、洗浄槽30と並列に、循環回路20にぶら下がっている。このため、注入処理の後、回路の切り替えのみで、被処理材9や配管の洗浄が可能になる。その結果、処理装置1では、異なる処理のたびに、多大な手間をかけることなく洗浄を行うことができる。
【0180】
また、注入剤供給槽40が供給する注入剤は、染料および機能加工剤の少なくとも一方であることが好ましい。これにより、染料や機能加工剤を注入した後、染料や機能加工剤の残留物(不純物)が発生したとしても、洗浄によって除去することができる。その結果、これらの不純物が次の処理に及ぼす影響を最小限に留めることができる。
【0181】
また、実施形態に係る処理装置1は、第3分岐回路52、53と、第3回路切替部54と、抽出剤供給槽50と、を備える。第3分岐回路52、53は、循環回路20から分岐する回路である。第3回路切替部54は、循環回路20と第3分岐回路52、53とを切り替える。抽出剤供給槽50は、第3分岐回路52、53に接続され、超臨界流体に抽出剤を供給する。
【0182】
このような構成によれば、超臨界処理槽10の外部に設けられた抽出剤供給槽50において、抽出剤の供給が可能になる。このため、例えば抽出剤を補給したり、抽出剤を変更したりする操作を容易に行うことができる。これにより、抽出処理の効率を高めることができる。また、超臨界状態を維持したまま、これらの操作が可能になるため、昇圧に要するエネルギーが新たな流体の導入に要するコストを削減することができる。
【0183】
また、抽出剤供給槽50は、前述した洗浄槽30とともに、循環回路20から分岐した回路に接続されている。つまり、抽出剤供給槽50は、洗浄槽30と並列に、循環回路20にぶら下がっている。このため、抽出処理の後、回路の切り替えのみで、被処理材9や配管の洗浄が可能になる。その結果、処理装置1では、異なる処理のたびに、多大な手間をかけることなく洗浄を行うことができる。
【0184】
また、吸着材31(除去材)は、不純物を捕捉する織布または不織布である。このような吸着材31は、表面積が広く均一性が高いため、不純物を効率よく吸着除去することができる。
【0185】
また、実施形態に係る処理装置1は、分離槽70を備える。分離槽70は、超臨界処理槽10から排出された超臨界流体を気化させ、超臨界流体に含まれる物質と超臨界流体の気化物とを分離する。
【0186】
このような分離槽70を備えることにより、処理装置1では、流体を再利用することができ、流体の調達コストの削減、環境負荷の低減を図ることができる。
【0187】
また、実施形態に係る処理装置1は、流体導入部60と、加熱部であるヒーター12と、圧力制御部82と、温度制御部84と、超臨界条件制御部86と、記憶部88と、を備える。流体導入部60は、超臨界処理槽10に流体を導入する。ヒーター12は、超臨界処理槽10を加熱する。圧力制御部82は、流体導入部60の動作を制御して、超臨界流体の圧力を制御する。温度制御部84は、ヒーター12の動作を制御して、超臨界流体の温度を制御する。超臨界条件制御部86は、圧力制御部82の動作および温度制御部84の動作を制御する。記憶部88は、圧力の目標値および温度の目標値を組み合わせた処理条件を複数格納する。そして、超臨界条件制御部86は、複数の処理条件の中から1つを読み出し、読み出した処理条件に基づいて動作する。
【0188】
このような構成によれば、あらかじめ設定しておいた処理条件から1つが選択されて、超臨界流体の圧力や温度を調整することができるので、例えば、超臨界処理槽10で行う処理モードに応じて、適切な圧力と温度の組み合わせを容易に再現することができる。これにより、ユーザーが熟練者でなくても、複雑な操作を伴うことなく、適切な処理条件で様々な処理を行わせることができる。
【0189】
また、実施形態に係る処理装置1は、バイパス回路27と、バイパス回路切替部28と、循環制御部85と、を備える。バイパス回路27は、循環回路20に接続され、超臨界処理槽10をバイパスする。バイパス回路切替部28は、超臨界処理槽10とバイパス回路27との間で、超臨界流体の経路を切り替える。循環制御部85は、循環ポンプ22の動作を制御する。
【0190】
このような処理装置1によれば、超臨界流体の循環経路から超臨界処理槽10を切り離すことができるので、循環回路20を効率よく洗浄することができる。これにより、循環回路20に不純物が残留しにくくなり、次に行われる処理を清浄下で良好に行うことができる。また、循環回路20内に残留していた不純物が、超臨界処理槽10に流入してしまい、被処理材9に付着するのを避けることができる。
【0191】
また、実施形態に係る処理装置1では、超臨界流体が、超臨界二酸化炭素であることが好ましい。超臨界二酸化炭素は、圧力や温度の臨界点が適当であり、比較的容易に超臨界状態に至ることから、取り扱いが容易である。また、二酸化炭素は、調達コストが低く、安全性が高い点でも有用である。
【0192】
また、実施形態に係る処理方法は、超臨界流体と被処理材9とを接触させる超臨界処理を行う超臨界処理槽10と、超臨界処理槽10に収容されている超臨界流体を循環させる循環回路20と、循環回路20上に設けられ、超臨界流体中の不純物を吸着除去する吸着材31(除去材)を有する洗浄槽30と、を備える処理装置1を用いて超臨界処理を行う方法である。このような処理方法は、図3に示す染色工程S108のような超臨界処理を行う工程と、染色後洗浄工程S110のような超臨界処理の後に洗浄を行う工程と、を有する。染色後洗浄工程S110では、洗浄槽30を経由するように循環回路20を介して超臨界流体またはそれに由来する流体を循環させる。
【0193】
このような処理方法によれば、洗浄槽30を経由するように超臨界流体またはそれに由来する流体を循環させ、洗浄を行うことができるため、効率の高い洗浄が可能になる。これにより、洗浄後に被処理材9に対して新たに行う超臨界処理を、清浄下で良好に行うことができる。
【0194】
また、超臨界流体やそれに由来する流体は、物質の溶解度が高いため、水や有機溶剤等に比べて、不純物を効果的に溶解させる。このため、洗浄において、水や有機溶剤を全く使用しないか、または使用量を削減しつつ、高い洗浄効果を得ることができる。これにより、環境負荷の低減を図ることができる。
【0195】
さらに、洗浄において新たな流体の導入が不要になるため、それに要するコストやエネルギーを削減することができる。また、超臨界状態またはそれに準じた状態を維持しながら、洗浄を行うことにより、昇圧に要するエネルギーが不要になり、その点でも環境負荷の低減に寄与できる。
【0196】
また、実施形態に係る処理方法では、図3に示す精練工程S104のように、超臨界処理が被処理材9から抽出物を抽出する抽出処理であるとき、抽出処理の後、精練後洗浄工程S106のように、洗浄槽30を経由するように超臨界流体またはそれに由来する流体を循環させ、洗浄を行う。
【0197】
これにより、抽出処理によって発生した抽出物が、被処理材9や配管に残留し、次の処理において不純物になるおそれがあるところ、洗浄によって不純物を除去することができる。その結果、次の処理を良好に行うことができる。
【0198】
また、実施形態に係る処理方法では、図3に示す機能加工工程S112のように、超臨界処理が被処理材9に注入剤を注入する注入処理であるとき、注入処理の後、機能加工後洗浄工程S114のように、洗浄槽30を経由するように超臨界流体またはそれに由来する流体を循環させ、洗浄を行う。
【0199】
これにより、注入処理によって生じた余剰の注入剤等が、被処理材9や配管に残留し、次の処理において不純物になるおそれがあるところ、洗浄によって不純物を除去することができる。その結果、次の処理を良好に行うことができる。
【0200】
また、実施形態に係る処理方法で用いる処理装置1は、循環回路20に接続され、超臨界処理槽10をバイパスするバイパス回路27を備えていてもよい。
【0201】
このとき、図3に示す精練後洗浄工程S106、染色後洗浄工程S110および機能加工後洗浄工程S114のような、洗浄を行う工程は、洗浄槽30およびバイパス回路27を経由するように循環回路20を介して超臨界流体またはそれに由来する流体を循環させ、洗浄を行う操作を含む。
【0202】
これにより、配管の洗浄を特に効率よく行うことができる。また、配管内に残留していた不純物が、意図せず超臨界処理槽10に流入してしまうのを避けることができる。
【0203】
また、実施形態に係る繊維製品の製造方法では、前述した処理方法により、繊維を含む被処理材9に対して、超臨界処理としての染色または機能加工を施す工程を有する。
【0204】
前述した処理方法では、染色や機能加工を行うたびに、被処理材9や配管の洗浄を行う。このため、染色における染料由来の不純物や機能加工における機能加工剤由来の不純物が、被処理材9や配管等に残留するのを抑制することができる。その結果、実施形態に係る繊維製品の製造方法によれば、高品質な繊維製品、例えば、染色堅牢度等に優れ、所望の色彩を均質に呈する繊維製品や、機能加工によって付与された機能性が長期にわたって維持される繊維製品等を製造することができる。
【0205】
以上、本発明の処理装置、処理方法および繊維製品の製造方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0206】
例えば、本発明の処理装置は、前記実施形態の各部が同様の機能を有する任意の構成のものに置換されたものであってもよく、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。また、本発明の処理方法および繊維製品の製造方法は、前記実施形態に任意の目的の工程を追加したものであってもよい。
【符号の説明】
【0207】
1 処理装置
1A 処理装置
1B 処理装置
1C 処理装置
9 被処理材
10 超臨界処理槽
12 ヒーター
14 温度計
16 圧力計
20 循環回路
20B 循環回路
22 循環ポンプ
24 ヒーター
27 バイパス回路
28 バイパス回路切替部
30 洗浄槽
30C 洗浄槽
31 吸着材
32 第1分岐回路
33 第1分岐回路
34 第1回路切替部
35 バルブ
40 注入剤供給槽
40A 注入剤供給槽
41 注入剤担持体
41A 注入剤担持体
42 第2分岐回路
42A 第4分岐回路
43 第2分岐回路
43A 第4分岐回路
44 第2回路切替部
44A 第4回路切替部
45 バルブ
45A バルブ
50 抽出剤供給槽
51 抽出剤供給体
52 第3分岐回路
53 第3分岐回路
54 第3回路切替部
55 バルブ
60 流体導入部
61 流体タンク
62 タンク側バルブ
63 フローメーター
64 供給ポンプ
65 予熱ヒーター
66 処理槽側バルブ
70 分離槽
72 排出バルブ
73 バルブ
74 分離物回収ユニット
75 放圧槽
76 放圧バルブ
80 制御部
82 圧力制御部
84 温度制御部
85 循環制御部
86 超臨界条件制御部
88 記憶部
90 ボビン
201B 上流側回路
202B 下流側回路
282 バルブ
284 バルブ
286 バルブ
301C 洗浄剤供給槽
302C 吸着材収容槽
303C 連結回路
304C 短絡回路
305C 加圧ポンプ
306C バルブ
307C バルブ
308C バルブ
309C バルブ
342 バルブ
344 バルブ
346 バルブ
442 バルブ
442A バルブ
444 バルブ
444A バルブ
446 バルブ
446A バルブ
448 バルブ
448A バルブ
542 バルブ
544 バルブ
546 バルブ
S102 収容工程
S104 精練工程
S106 精練後洗浄工程
S108 染色工程
S110 染色後洗浄工程
S112 機能加工工程
S114 機能加工後洗浄工程
S116 取出工程
S202 ステップ
S204 ステップ
S206 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7