(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178583
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】弾性表面波デバイス、および、弾性表面波デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20231211BHJP
H03H 3/08 20060101ALI20231211BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H03H9/25 Z
H03H3/08
H01F27/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091347
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 康平
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩
【テーマコード(参考)】
5E070
5J097
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AB01
5E070CB12
5E070DB08
5J097AA30
5J097BB11
5J097CC05
5J097DD21
5J097HA03
5J097HA04
5J097JJ06
5J097KK09
5J097KK10
5J097LL08
(57)【要約】
【課題】弾性表面波デバイスに所用の特性を付与するインダクタンス素子を、弾性表面波デバイスの小型化ないし極小化を阻害しない態様で、かつ、これを構成するIDT電極との接続をとりやすい態様で、備えさせる。
【解決手段】デバイスチップ2と、前記デバイスチップ2の一面2a上に複数形成されると共にそれぞれIDT電極3aと反射器3bとを備えてなる共振器3と、前記デバイスチップ2の前記一面2aにおける前記共振器3を構成する前記IDT電極3aにおける電極指3cの形成領域、及び、前記反射器3bにおける電極指3cの形成領域以外の領域に形成された素子支持体7と、前記共振器3との間に空所8を形成させるようにして前記素子支持体7上に形成されたインダクタンス素子9とを備えてなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスチップと、
前記デバイスチップの一面上に複数形成されると共にそれぞれIDT電極と反射器とを備えてなる共振器と、
前記デバイスチップの前記一面における前記共振器を構成する前記IDT電極における電極指の形成領域、及び、前記反射器における電極指の形成領域以外の領域に形成された素子支持体と、
前記共振器との間に空所を形成させるようにして前記素子支持体上に形成されたインダクタンス素子とを備えてなる、弾性表面波デバイス。
【請求項2】
前記素子支持体は二以上形成されており、前記インダクタンス素子は隣り合う前記素子支持体間に架け渡し状に形成されてなる、請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
前記インダクタンス素子は、複数の前記共振器の少なくとも一部の上を通過するように形成されてなる、請求項2に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
二以上の前記素子支持体の少なくとも一部は絶縁性を持つように構成されると共に、この絶縁性を持った前記素子支持体を前記共振器に接続された配線又は前記IDT電極におけるバスバー上に形成させてなる、請求項2又は請求項3に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項5】
複数の前記共振器の全部または一部はラダー型フィルタを構成しており、前記インダクタンス素子は、前記ラダー型フィルタを構成する少なくとも一つの並列共振器上を通過するように形成されてなる、請求項3に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項6】
前記共振器が形成された領域以外の領域に形成された支持層と、
前記支持層上に形成され、前記デバイスチップおよび前記支持層とともに前記共振器を気密封止するカバー層とを備え、
前記デバイスチップの前記一面を基準としたと前記支持層の高さが前記一面を基準とした前記インダクタンス素子の高さよりも高くなるように前記支持層を形成させてなる、請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項7】
デバイスチップの一面上に複数の共振器を形成するステップと、
前記共振器を構成するIDT電極における電極指の形成領域、及び、反射器における電極指の形成領域以外の領域に素子支持体を形成するステップと、
前記素子支持体の高さと同等の高さの犠牲層を形成するステップと、
前記素子支持体及び前記犠牲層上にインダクタンス素子を形成するステップとを含む、弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記共振器が形成された領域以外の領域に前記デバイスチップの前記一面を基準とした前記インダクタンス素子の高さよりも高い位置に至る支持層を形成するステップと、
前記犠牲層を除去するステップと、
前記支持層上に、前記デバイスチップ及び前記支持層と共に前記共振器を気密封止するようにカバー層を形成するステップとを含む、請求項7に記載の弾性表面波デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弾性表面波デバイスの改良、および、その製造に適した製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波デバイスは、モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用されている。この種の弾性表面波デバイスに所用の特性を付与するため、これに形成されるフィルタ回路にインダクタンス素子を備えさせたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のものでは、デバイスチップ(弾性波を伝搬させる基板)の一面上に形成されたIDT電極上にデバイスチップと枠部と蓋部とにより内部空間を形成させている。インダクタンス素子は、枠部と蓋部との間に備えられている。特許文献1のようにインダクタンス素子を配した場合、インダクタンス素子をIDT電極と電気的に接続させるための格別の構造が必要となり、これに起因する分、弾性表面波デバイスの製造工程も複雑となる。
【0004】
インダクタンス素子をデバイスチップ上に形成するようにすればインダクタンス素子をIDT電極と電気的に接続させるための格別の構造は不要となるが、デバイスチップ上の面積の一部がインダクタンス素子により占められてしまうため、弾性表面波デバイスの小型化を難くしてしまう。
【0005】
インダクタンス素子を弾性表面波デバイス外、つまり、実装基板側に設けることは通常行われているところであるが、WLP(Wafer Level Package)により生成される弾性表面波デバイス自体にインダクタンス素子を含んだ所用の特性のフィルタ回路を形成させることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、弾性表面波デバイスに所用の特性を付与するインダクタンス素子を、弾性表面波デバイスの小型化を阻害しない態様で、かつ、これを構成するIDT電極との接続をとりやすい態様で、弾性表面波デバイスに備えさせる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、この発明にあっては、第一の観点から、弾性表面波デバイスを、
デバイスチップと、
前記デバイスチップの一面上に複数形成されると共にそれぞれIDT電極と反射器とを備えてなる共振器と、
前記デバイスチップの前記一面における前記共振器を構成する前記IDT電極における電極指の形成領域、及び、前記反射器における電極指の形成領域以外の領域に形成された素子支持体と、
前記共振器との間に空所を形成させるようにして前記素子支持体上に形成されたインダクタンス素子とを備えてなる、ものとした。
【0009】
前記素子支持体は二以上形成されており、前記インダクタンス素子は隣り合う前記素子支持体間に架け渡し状に形成されるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0010】
また、前記インダクタンス素子を、複数の前記共振器の少なくとも一部の上を通過するように形成させることが、この発明の態様の一つとされる。
【0011】
また、二以上の前記素子支持体の少なくとも一部は絶縁性を持つように構成されると共に、この絶縁性を持った前記素子支持体を前記共振器に接続された配線又は前記IDT電極におけるバスバー上に形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0012】
また、複数の前記共振器の全部または一部はラダー型フィルタを構成しており、前記インダクタンス素子を、前記ラダー型フィルタを構成する少なくとも一つの並列共振器上を通過するように形成させることが、この発明の態様の一つとされる。
【0013】
また、前記共振器が形成された領域以外の領域に形成された支持層と、
前記支持層上に形成され、前記デバイスチップおよび前記支持層とともに前記共振器を気密封止するカバー層とを備え、
前記デバイスチップの前記一面を基準としたと前記支持層の高さが前記一面を基準とした前記インダクタンス素子の高さよりも高くなるように前記支持層を形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0014】
また、前記課題を解決するために、この発明にあっては、第二の観点から、弾性表面波デバイスの製造方法を、
デバイスチップの一面上に複数の共振器を形成するステップと、
前記共振器を構成するIDT電極における電極指の形成領域、及び、反射器における電極指の形成領域以外の領域に素子支持体を形成するステップと、
前記素子支持体の高さと同等の高さの犠牲層を形成するステップと、
前記素子支持体及び前記犠牲層上にインダクタンス素子を形成するステップとを含む、ものとした。
【0015】
また、弾性表面波デバイスの製造方法がさらに、前記共振器が形成された領域以外の領域に前記デバイスチップの前記一面を基準とした前記インダクタンス素子の高さよりも高い位置に至る支持層を形成するステップと、
前記犠牲層を除去するステップと、
前記支持層上に、前記デバイスチップ及び前記支持層と共に前記共振器を気密封止するようにカバー層を形成するステップとを含むものとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、弾性表面波デバイスに所用の特性を付与するインダクタンス素子を、弾性表面波デバイスの小型化を阻害しない態様で、かつ、これを構成するIDT電極との接続をとりやすい態様で、弾性表面波デバイスに備えさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、この発明の一実施の形態にかかる弾性表面波デバイス(第一例)の断面構成図であり、概ね
図2のA-A位置で第一例を断面にしている。
【
図2】
図2は、前記第一例の要部を
図1のB方向から見て示した平面構成図であり、支持層の記載を省略している。
【
図3】
図3は、前記第一例に形成される回路の一例を示した構成図である。
【
図4】
図4は、前記第一例の製造工程中のステップ1を示した断面構成図である。
【
図5】
図5は、前記第一例の製造工程中のステップ2を示した断面構成図である。
【
図6】
図6は、前記第一例の製造工程中のステップ3を示した断面構成図である。
【
図7】
図7は、前記第一例の製造工程中のステップ4を示した断面構成図である。
【
図8】
図8は、前記第一例の製造工程中のステップ5を示した断面構成図である。
【
図9】
図9は、前記第一例の製造工程中のステップ6を示した断面構成図である。
【
図10】
図10は、前記第一例の製造工程中のステップ7を示した断面構成図である。
【
図12】
図12は、前記第一例を構成する素子支持体を共振器のバスバー上に形成させる場合の構成例を示した要部斜視構成図である。
【
図13】
図13は、前記第一例の一部変更例を示した平面構成図であり、この変更例を
図2と同じ向きから見て示している。
【
図14】
図14は、この発明の一実施の形態にかかる弾性表面波デバイス(第二例)を示した平面構成図であり、この第二例を
図2と同じ向きから見て示している。
【
図15】
図15は、この発明の一実施の形態にかかる弾性表面波デバイス(第三例)を示した平面構成図であり、この第三例を
図2と同じ向きから見て示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1~
図15に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる弾性表面波デバイス1は、モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用するのに適したものである。特に、この実施の形態にかかる弾性表面波デバイス1は、弾性表面波デバイス1に所用の特性を付与するインダクタンス素子9を、弾性表面波デバイス1の小型化を阻害しない態様で(つまり、大型化を招くことなく)、かつ、これを構成するIDT電極3aとの接続をとりやすい態様で、備えたものとなっている。
【0019】
また、この実施の形態にかかる弾性表面波デバイス1の製造方法は、前記のようにインダクタンス素子9を備えた弾性表面波デバイス1を、適切且つ合理的に製造し得るものである。
【0020】
図示の例では、弾性表面波デバイス1は、WLP(Wafer Level Package)構造のものとなっている。
【0021】
その断面構造を
図1に示す。WLP構造の弾性表面波デバイス1では、デバイスチップ2における共振器3が形成された領域以外の領域に、前記共振器3を囲繞するように支持層4(ウォール)を形成すると共に、この支持層4上に前記デバイスチップ2及び前記支持層4と共に前記共振器3を気密封止するようにカバー層5(ルーフ)を形成させて、これら三者間に中空構造部6(内部空間ないしエアキャビティ)を形成させている。
【0022】
図示は省略するが、本発明は、CSP(Chip Size Package)構造の弾性表面波デバイス1にも適用可能である。
【0023】
この実施の形態にかかる弾性表面波デバイス1は、
デバイスチップ2と、
前記デバイスチップ2の一面2a上に複数形成されると共にそれぞれIDT電極3a(くし歯電極)と反射器3bとを備えてなる共振器3と、
前記デバイスチップ2の前記一面2aにおける前記共振器3を構成する前記IDT電極3a及び前記反射器3bの形成領域以外の領域に形成された素子支持体7と、
前記共振器3との間に空所8を形成させるようにして前記素子支持体7上に形成されたインダクタンス素子9とを備えてなる。
【0024】
デバイスチップ2は、弾性波を伝搬させる機能を持つ。デバイスチップ2には、典型的には、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムが用いられ、また、デバイスチップ2は、これらにサファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスなどを積層させて、構成される場合もある。
【0025】
図2に示されるように一つの前記共振器3は、IDT電極3aと、IDT電極3aを挟むようにして形成される反射器3bとを有する。IDT電極3aは、電極対からなり、各電極対は弾性波の伝搬方向xに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指3c同士をこれらの一端側においてバスバー3dで接続させてなる。反射器3bは、弾性波の伝搬方向xに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指3cの端部間をバスバー3dで接続させてなる。
【0026】
前記共振器3は、デバイスチップ2上に、複数形成されている。各共振器3は、典型的には、フォトリソグラフィ技術により形成された導電性金属膜によって構成される。
【0027】
図3に弾性表面波デバイス1に備えられるフィルタ回路の一例の概念を示す。符号3eは入出力ポート間に直列に接続された共振器3、符号3fは入出力ポート間に並列に接続された共振器3、符号9はインダクタンス素子を示す。すなわち、
図3のフィルタ回路によってラダー型フィルタが構成されるようになっている。前記デバイスチップ2に形成されたフィルタ回路は典型的には前記デバイスチップ2の他面2bに形成される図示しないバンプを通じて外部に接続される。
【0028】
素子支持体7は、デバイスチップ2の一面2a上に、この一面2aから突き出すように形成される。すなわち、素子支持体7はデバイスチップ2に接合された第一接合部7aと、インダクタンス素子9に接合された第二接合部7bとを有する。
【0029】
素子支持体7は、前記共振器3を構成する前記IDT電極3a及び前記反射器3bの形成領域以外の領域に形成される。素子支持体7が形成される領域が、前記バスバー3dの形成領域である場合、素子支持体7の全部を絶縁性材料で構成するか、
図12に示されるように素子支持体7の一部としての前記第一接合部7a側を絶縁性材料からなる部分7cで構成するなどして、素子支持体7を絶縁性を持ったものとし、これにより、バスバー3dとインダクタンス素子9とが電気的に接続されないようにする。素子支持体7が形成される領域が、共振器3の形成領域外である場合、圧電素子には導電性がないので、素子支持体7の全部又は一部を導電性材料で構成しても構わない。
【0030】
素子支持体7の形状は必要に応じて適宜選択して構わない。図示の例では、素子支持体7は、六面体として構成されている(
図11参照)。六面体の一面が前記第一接合部7aとなり、この一面に対向する位置にある他の一面が前記第二接合部7bとなっている。
【0031】
素子支持体7の厚み、すなわち、前記第一接合部7aと第二接合部7bとの間の距離によって、前記圧電素子の一面2aに直交する向きでの前記空所8の大きさが決せられる。素子支持体7の厚みは0.5μm~3μmとすることが好ましい。
【0032】
素子支持体7は二以上形成されている。典型的には、共振器3の形成領域の周囲に複数の素子支持体7を形成し、このように形成される素子支持体7によって共振器3上にインダクタンス素子9を支持するようにしている。
【0033】
図1~
図12に示される第一例では、弾性波デバイスに備えられる複数の共振器3のうち、並列に接続された二つの共振器3のうちの一つ(
図2における左側の共振器3)を囲うように、インダクタンス素子9を形成させている。
この第一例では、インダクタンス素子9は、共振器3における弾性波の伝搬方向xに沿う向きに続く第一帯状部9aと、前記伝搬方向xに直交する向きに続く第二帯状部9bとを備えている。
第一例では、二つの第一帯状部9aと二つの第二帯状部9bとからインダクタンス素子9を構成させている。以下の(1)~(8)では便宜的に
図2の上下と左右を基準に
図2に示されるインダクタンス素子9および素子支持体7を説明する。また、
図2においては、便宜的に、導電性を備えた素子支持体7に破線のハッチングを付し、導電性を備えない素子支持体7に破線の×印(エックス印)を付している。
(1)左側に位置される第一帯状部9aの上端と右側に位置される第一帯状部9aの上端とが上側に位置される第二帯状部9bによって接続されている。
(2)右側に位置される第一帯状部9aの下端には下側に位置される第二帯状部9bの右端が接続され、この下側に位置される第二帯状部9bは共振器3上を通過している。
(3)素子支持体7は、左側に位置される第一帯状部9aの下端、左側に位置される第一帯状部9aの上端と上側に位置される第二帯状部9bとが接し合う隅部9c、右側に位置される第一帯状部9aの上端と上側に位置される第二帯状部9bとが接し合う隅部9d、右側に位置される第一帯状部9aの下端と下側に位置される第二帯状部9bとが接し合う隅部9e、下側に位置される第二帯状部9bの左端をそれぞれ支持するように5個形成されている。
(4)左側に位置される第一帯状部9aの下方には共振器3に接続された配線パターン10の一部が形成されている。第一帯状部9aの下端を支持する素子支持体7は全体が導電性材料から構成されており、これによりインダクタンス素子9と共振器3とが電気的に接続されている。
(5)前記隅部9cは前記配線パターン10の一部上にあるが、この隅部9cを支持する素子支持体7は、その全体又は一部を絶縁性材料から構成されて絶縁性を備えており、この隅部ではインダクタンス素子9と共振器3とは接続されていない。
(6)前記隅部9d下はデバイスチップ2の一面2aが位置するのみであり、この隅部9dを支持する素子支持体7は導電性材料から構成されている。
(7)前記隅部9e下には共振器3に接続された配線パターン10の一部が形成されているが、この隅部9eを支持する素子支持体7は絶縁性を備えており、この隅部ではインダクタンス素子9と共振器3とは接続されていない。
(8)下側に位置される第二帯状部9bの左端下はデバイスチップ2の一面2aが位置するのみであり、この左端を支持する素子支持体7は導電性材料から構成されている。
すなわち、インダクタンス素子9は、隣り合う素子支持体7間に架け渡し状に形成・支持されている。
【0034】
図13は、前記第一例の下側の第二帯状部9bの右端を配線パターン10外に延び出させるようにして、この右端を素子支持体7で支持させた第一例の一部変更例を示している。下側の第二帯状部9bの右端下には配線パターン10がないので、この右端を支持する素子支持体7は導電性を備えたものとなっている。
【0035】
図14に示される第二例では、インダクタンス素子9は、デバイスチップ2を前記一面2aに直交する向きから見た状態において、スパイラル(渦)状の形状を持つように構成させている。インダクタンス素子9下には共振器3に接続された配線パターン10の一部、および、IDT電極3aにおけるバスバー3dが位置しているが、インダクタンス素子9を支持する素子支持体7のうち配線パターン10上に位置される素子支持体7は一つのみが導電性を備えている。なお、この
図14においても、便宜的に、導電性を備えた素子支持体7に破線のハッチングを付し、導電性を備えない素子支持体7に破線の×印を付している。
【0036】
図15に示される第三例では、インダクタンス素子9は、デバイスチップ2を前記一面2aに直交する向きから見た状態において、ミアンダ(蛇行)状の形状を持つように構成させている。インダクタンス素子9下には共振器3に接続された配線パターン10の一部、および、IDT電極3aにおけるバスバー3dが位置しているが、インダクタンス素子9を支持する素子支持体7のうち配線パターン10上に位置される素子支持体7は一つのみが導電性を備えている。なお、この
図15においても、便宜的に、導電性を備えた素子支持体7に破線のハッチングを付し、導電性を備えない素子支持体7に破線の×印を付している。
【0037】
インダクタンス素子9は、導電性金属から構成される。図示の例では、インダクタンス素子9は、帯面をデバイスチップ2の一面2aに実質的に平行に配した帯状をなすように構成されている。インダクタンス素子9は、前記のように矩形状をなす共振器3の形成領域上にあってこの形成領域をを囲繞するように形成されていても、複数の共振器3の少なくとも一部の上を通過するように形成されていても構わない。また、インダクタンス素子9は、前記ラダー型フィルタを構成する少なくとも一つの並列共振器3f上を通過するように形成されていても良い。
【0038】
また、この実施の形態にかかる弾性表面波デバイス1は、前記支持層4とカバー層5とを備えると共に、前記デバイスチップ2の前記一面2aを基準としたと前記支持層4の高さが前記一面2aを基準とした前記インダクタンス素子9の高さよりも高くなるように前記支持層4を形成させている。これにより、この実施の形態にあっては、前記中空構造部6内に前記インダクタンス素子9が位置されるようになっている。
【0039】
この実施の形態にかかる弾性表面波デバイス1にあっては、弾性表面波デバイス1に所用の特性を付与するインダクタンス素子9を、デバイスチップ2の一面2a上に形成される共振器3との間に空所8を形成させるようにして素子支持体7によって支持するようにすることから、インダクタンス素子9によってデバイスチップ2上の共振器3の形成面積が減少することがなく、また、インダクタンス素子9を共振器3を含んだフィルタ回路の配線(図示の例では配線パターン10)に容易に接続することができる。
【0040】
この実施の形態にかかる弾性表面波デバイス1の製造ステップの要部を
図4~
図10に示す。
図4~
図10は前記第一例の製造工程を示しており、
図2におけるA-A線相当位置での断面構成図となっている。
【0041】
先ず、デバイスチップ2の一面2a上にフォトリソグラフィ技術により複数の共振器3を形成する(ステップ1/
図4)。
【0042】
次いで、前記共振器3に接続される配線パターン10をフォトリソグラフィ技術により形成する(ステップ2/
図5)。
【0043】
次いで、前記共振器3を構成するIDT電極3aにおける電極指3cの形成領域、及び、反射器3bにおける電極指3cの形成領域以外の領域に素子支持体7を形成する(ステップ3/
図6)。図示の例では、
図6の右側の素子支持体7は配線パターン10上にあって第一接合部7aを絶縁性材料で構成しており、素子支持体7は絶縁性材料からなる部分7cとその上の導電性材料からなる部分との積層構造となっている。
【0044】
次いで、前記素子支持体7の高さと同等の高さの犠牲層11を形成する(ステップ4/
図7)。
【0045】
次いで、前記素子支持体7及び前記犠牲層11上にインダクタンス素子9を形成する(ステップ5/
図8)。インダクタンス素子9は典型的には電解めっきによって形成される。
【0046】
次いで、前記共振器3が形成された領域以外の領域に前記デバイスチップ2の前記一面2aを基準とした前記インダクタンス素子9の高さよりも高い位置に至る支持層4を形成する(ステップ6/
図9)。
【0047】
次いで、前記犠牲層11を除去する(ステップ7/
図10)。インダクタンス素子9は隣り合う素子支持体7間に支持されており、インダクタンス素子9とデバイスチップ2との間から有機溶剤などを用いて犠牲層を除去することができる。
【0048】
最後に、前記支持層4上に、前記デバイスチップ2及び前記支持層4と共に前記共振器3を気密封止するようにカバー層5を形成する(ステップ8/
図1)。
【0049】
典型的には、かかる弾性表面波デバイス11は、一辺を1ないし2mmとし、厚さ0.4ないし0.5mmとする四角形の板状をなすように構成される。また、図示は省略するが、かかる弾性表面波デバイス11は、典型的には、他のデバイスと一緒に、厚さ0.3mm程度のモジュール基板上に実装されて厚さ0.8mmないし1.0mm程度のフロントエンドモジュールなどのモジュールを構成する。
【0050】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0051】
1 弾性表面波デバイス
2 デバイスチップ
2a 一面
2b 他面
3 共振器
3a IDT電極
3b 反射器
3c 電極指
3d バスバー
4 支持層
5 カバー層
6 中空構造部
7 素子支持体
7a 第一接合部
7b 第二接合部
8 空所
9 インダクタンス素子
9a 第一帯状部
9b 第二帯状部
10 配線パターン
11 犠牲層
x 伝搬方向