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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178615
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】乗客コンベアの制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/08 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
B66B29/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091402
(22)【出願日】2022-06-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大輔
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA04
3F321DC01
3F321EA02
3F321EB07
3F321EC10
(57)【要約】
【課題】運行効率をより向上させることを目的とする。
【解決手段】乗客コンベア100の制御装置109は、利用者検出センサ103aからの利用者検出信号と、距離センサ104aからの距離検出信号とに基づいて、搬送体107を制御する制御装置本体110を備え、制御装置本体110は、利用者検出信号に基づいて、先行利用者が乗り口102aに停滞しているかを判定し、距離検出信号に基づいて、後行利用者の有無の判定及び移動速度の算出を行い、先行利用者が乗り口102aに停滞しており、且つ後行利用者がいない場合、搬送速度を定格速度から低下させ、先行利用者が乗り口102aに停滞しており、且つ後行利用者の移動速度が閾値以下である場合、搬送速度を定格速度から低下させ、先行利用者が乗り口102aに停滞しており、且つ後行利用者の移動速度が閾値を超える場合、搬送速度を定格速度のままとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り口にいる利用者を検出する利用者検出センサからの利用者検出信号と、前記乗り口から前記利用者までの距離を検出する距離センサからの距離検出信号とに基づいて、搬送体による前記利用者の搬送速度を制御する制御装置本体を備え、
前記乗り口にいる前記利用者を先行利用者とし、前記先行利用者の次に前記乗り口に向かって移動している前記利用者を後行利用者としたとき、
前記制御装置本体は、
前記利用者検出信号に基づいて、前記先行利用者が前記乗り口に停滞しているかどうかを判定し、
前記距離検出信号に基づいて、前記後行利用者の有無を判定するとともに、前記距離検出信号の時間変化に基づいて、前記後行利用者の移動速度を算出し、
前記先行利用者が前記乗り口に停滞しており、且つ前記後行利用者がいない場合、前記搬送速度を、定格速度から低下させ、
前記先行利用者が前記乗り口に停滞しており、且つ前記後行利用者の移動速度が閾値以下である場合、前記搬送速度を、前記定格速度から低下させ、
前記先行利用者が前記乗り口に停滞しており、且つ前記後行利用者の移動速度が前記閾値を超える場合、前記搬送速度を、前記定格速度のままとする、乗客コンベアの制御装置。
【請求項2】
前記制御装置本体は、前記搬送体を前記定格速度から低下させた後において、前記先行利用者が前記乗り口に停滞していないと判定した場合、前記先行利用者が前記搬送体に乗り込んだとして、前記搬送速度を上昇させる、請求項1記載の乗客コンベアの制御装置。
【請求項3】
前記制御装置本体は、前記先行利用者が降り口に到達するまでの間に、上昇させた後の前記搬送速度を、前記先行利用者が乗り込んだときの速度まで低下させる、請求項2記載の乗客コンベアの制御装置。
【請求項4】
前記制御装置本体は、前記搬送体を前記定格速度から低下させた後において、前記先行利用者が前記乗り口に停滞していないと判定し、且つ、前記距離センサからの前記距離検出信号の時間変化に基づいて、前記先行利用者が前記乗り口から立ち去る方向に移動したと判定した場合、前記搬送速度を前記定格速度に戻す、請求項1記載の乗客コンベアの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアでは、乗客検出部によって、乗降口の乗客が検出される。制御部は、乗客検出部によって乗客が第1の時間の間継続して検出されると、第2の時間の間、踏段の速度を通常速度よりも低速度にする。第2の時間が経過すると、制御部は、踏段の速度を通常速度に戻す(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-153539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の乗客コンベアにおいては、乗客コンベアに乗り込むのに躊躇している利用者以外の後行利用者について、考慮されていない。このため、後行利用者が、乗り込むのに躊躇している利用者の横を通って乗り込む場合においても、踏段が低速度になる。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、運行効率をより向上させることができる乗客コンベアの制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る乗客コンベアの制御装置は、乗り口にいる利用者を検出する利用者検出センサからの利用者検出信号と、乗り口から利用者までの距離を検出する距離センサからの距離検出信号とに基づいて、搬送体による利用者の搬送速度を制御する制御装置本体を備え、乗り口にいる利用者を先行利用者とし、先行利用者の次に乗り口に向かって移動している利用者を後行利用者としたとき、制御装置本体は、利用者検出信号に基づいて、先行利用者が乗り口に停滞しているかどうかを判定し、距離検出信号に基づいて、後行利用者の有無を判定するとともに、距離検出信号の時間変化に基づいて、後行利用者の移動速度を算出し、先行利用者が乗り口に停滞しており、且つ後行利用者がいない場合、搬送速度を、定格速度から低下させ、先行利用者が乗り口に停滞しており、且つ後行利用者の移動速度が閾値以下である場合、搬送速度を、定格速度から低下させ、先行利用者が乗り口に停滞しており、且つ後行利用者の移動速度が閾値を超える場合、搬送速度を、定格速度のままとする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の乗客コンベアによれば、運行効率をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における乗客コンベアの概略構成を示す側面図である。
図2図1に示す乗客コンベア100の下階側を示す平面図である。
図3図1に示す制御装置本体の制御による搬送体の運転パターンの一例を示す図である。
図4図1に示す制御装置本体の制御例を示すフローチャートである。
図5図1に示す距離センサによる利用者検出状態の第1例を示す平面図である。
図6図1に示す距離センサによる利用者検出状態の第2例を示す平面図である。
図7】死角の発生を低減させる対策例を示す平面図である。
図8】実施の形態1の制御装置本体の各機能を実現する処理回路の第1例を示す構成図である。
図9】実施の形態1の制御装置本体の各機能を実現する処理回路の第2例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における乗客コンベアの概略構成を示す側面図である。図1における乗客コンベア100は、下階から上階へ利用者を運ぶアップ運転を行っているエスカレータである。
【0011】
図1の乗客コンベア100において、トラス101は、下階と上階との間に架設されている。トラス101内には、搬送体107が支持されている。搬送体107は、複数の踏段が無端状に連結されて構成されている。搬送体107は、循環することにより乗客を搬送する。
【0012】
トラス101上には、一対のスカートガード111、一対の欄干105、及び一対の移動手摺106が設けられている。図1においては、一対のスカートガード111のうちの一方、一対の欄干105のうちの一方、及び一対の移動手摺106のうちの一方のみが示されている。また、各移動手摺106は、搬送体107に同期して循環する。
【0013】
トラス101内には、電動機108及び制御装置109が設けられている。
【0014】
電動機108は、図示しない駆動スプロケットを回転させる。駆動スプロケットの回転により、搬送体107及び各移動手摺106が循環する。
【0015】
制御装置109は、乗客コンベア100の運転、即ち、乗客コンベア100内の各種機器の動作を制御する。
【0016】
制御装置109は、制御装置本体110を備えている。制御装置本体110は、電動機108を制御する。
【0017】
下階側のスカートガード111には、利用者検出センサ103a及び距離センサ104aが設けられている。
【0018】
利用者検出センサ103aは、乗り口102aにいる利用者を検出する。利用者検出センサ103aは、利用者の有無を示す利用者検出信号を、制御装置本体110に出力する。
【0019】
距離センサ104aは、乗り口102aから利用者までの距離を検出する。距離センサ104aは、検出した距離を示す距離検出信号を、制御装置本体110に出力する。
【0020】
制御装置本体110は、利用者検出信号及び距離検出信号に基づいて、電動機108に制御指令を送る。電動機108は、制御装置本体110からの制御指令に応じて、搬送体107による利用者の搬送速度を制御する。
【0021】
上階側のスカートガード111には、下階側のスカートガード111と同様に、利用者検出センサ103b及び距離センサ104bが設けられている。
【0022】
利用者検出センサ103bは、下階側に設けられている利用者検出センサ103aと同じであり、降り口102bにいる利用者を検出する。利用者検出センサ103bは、利用者の有無を示す利用者検出信号を、制御装置本体110に出力する。
【0023】
距離センサ104bは、下階側に設けられている距離センサ104aと同じであり、降り口102bから利用者までの距離を検出する。距離センサ104bは、検出した距離を示す距離検出信号を、制御装置本体110に出力する。
【0024】
利用者検出センサ103b及び距離センサ104bは、主に、乗客コンベア100が上階から下階へ利用者を運ぶダウン運転を行うときに、用いられる。また、アップ運転の場合において、利用者検出センサ103bは、利用者が降り口102bに到達したかどうかを判定するときに、用いられる。
【0025】
図2は、図1に示す乗客コンベア100の下階側を示す平面図である。
【0026】
図2において、乗り口102aは、乗客コンベア100を真上から見た場合に、搬送体107と隣接する領域である。また、乗り口102aは、利用者が搬送体107に乗り込む直前に利用者が立ち入る領域である。
【0027】
乗り口102aには、くし120及び利用者検出センサ103aが設けられている。
【0028】
くし120は、搬送体107と乗り口102aとの境界に位置している。
【0029】
利用者検出センサ103aは、透過型センサであり、投光装置及び受光装置によって構成されている。
【0030】
投光装置は、一対のスカートガード111のうちの一方に設けられている。受光装置は、一対のスカートガード111のうちの他方に設けられている。投光装置は、搬送体107の搬送方向と交差する方向に、照射光を照射する。受光装置は、投光装置から照射された照射光を受ける。
【0031】
利用者検出センサ103aは、投光装置からの照射光が利用者によって遮断されている場合、利用者検出信号としてオンの信号を出力する。また、利用者検出センサ103aは、投光装置からの照射光が受光装置に到達している場合、利用者検出信号としてオフの信号を出力する。
【0032】
制御装置本体110は、利用者検出信号に基づいて、利用者が通過したかどうかを判定する。また、制御装置本体110は、利用者検出信号に基づいて、利用者が乗り口102aに停滞しているかどうかを判定する。
【0033】
距離センサ104aは、測域センサであり、レーザ光を二次元的に走査させながら、利用者までの距離を測定する。距離センサ104aの検出対象領域は、利用者検出センサ103aによる検出位置よりも、搬送体107から離れている。
【0034】
制御装置本体110は、距離センサ104aからの距離検出信号に基づいて、乗り口102aに向かって移動している利用者の有無を判定する。また、制御装置本体110は、距離検出信号の時間変化に基づいて、利用者の移動速度を算出する。また、制御装置本体110は、利用者の移動速度を逐次算出することにより、利用者の動きを把握する。
【0035】
図3は、図1に示す制御装置本体110の制御による搬送体107の運転パターンの一例を示す図である。また、図3は、利用者が搬送体107に乗り込むのに躊躇して、乗り口102aに停滞しているときの搬送速度の制御例を示している。
【0036】
時間t0の時点おいて、利用者は、乗り口102aに立ち入り、利用者検出センサ103aによって検出される。その後、利用者が時間t1の時点まで検出され続けると、制御装置本体110は、乗り込みやすくするため、搬送体107の搬送速度を定格速度から低下させる。
【0037】
図3の例において、制御装置本体110は、5秒間継続して利用者が検出された場合、搬送体107の搬送速度を定格速度から低下させる。制御装置本体110は、利用者が乗り込むまで、搬送体107の搬送速度を低下させ続ける。また、制御装置本体110は、搬送体107の搬送速度が下限速度に達したら、低下させるのを停止する。
【0038】
図3の例において、搬送体107の定格速度は30m/minであり、下限速度は10m/minである。また、図3は、搬送体107が搬送速度を低下させ続けた結果、下限速度の10m/minに達したことを示している。また、図3は、以降、利用者が乗り込むまでこの下限速度によって運転することを示している。
【0039】
時間t2の時点に、利用者が搬送体107に乗り込む。このとき、利用者検出センサ103aは、利用者検出信号を、オンからオフに切り替えて制御装置本体110に出力する。
【0040】
利用者検出信号がオンからオフに切り替わると、制御装置本体110は、利用者が搬送体107に乗り込んだとして、搬送体107の搬送速度を上昇させる。
【0041】
その後、搬送速度が上昇し続けると、搬送体107の搬送速度は、定格速度にまで達する。なお、階高によっては、定格速度にまで達しない場合がある。
【0042】
そして、制御装置本体110は、利用者が降り口102bに近づく前の段階から、搬送体107の搬送速度を低下させる。制御装置本体110は、利用者が乗り込んだときと同じ搬送速度になるまで、搬送体107の搬送速度を低下させる。図3は、時間t3の時点に、利用者が乗り込んだときの搬送速度になることを示している。
【0043】
その後、時間t4の時点において、降り口102bに設けられている利用者検出センサ103bが、利用者を検出する。このとき、利用者検出センサ103bからの利用者検出信号は、オフからオンに切り替わる。
【0044】
制御装置本体110は、利用者検出センサ103bからの利用者検出信号がオフからオンに切り替わると、利用者が搬送体107から降りたと判定する。その後、制御装置本体110は、搬送体107の搬送速度を定格速度に戻す。
【0045】
図3によって示されている運転パターンとは別のパターンとして、時間t2において、搬送体107の搬送速度を上昇させずに、利用者が搬送体107を降りるまで低速度を維持してもよい。
【0046】
また、制御装置本体110は、アップ運転の場合、時間t2から時間t3までに示す加減速を行い、ダウン運転の場合、利用者が搬送体107を降りるまで低速度を維持してもよい。このように、制御装置本体110は、乗客コンベア100の運転方向に応じて、加減速を行うか低速度を維持するかの切り替えを行ってもよい。
【0047】
図3の例は、乗り込むのに躊躇している利用者以外に利用者がいない場合の制御例である。これに対し、以下においては、乗り込むのに躊躇している利用者以外に、乗り口102aに向かって移動している他の利用者がいる場合の制御例について説明する。
【0048】
図4は、図1に示す制御装置本体110の制御例を示すフローチャートである。図4のフローチャートは、繰り返し実行される。
【0049】
また、以下の説明においては、乗り込むのに躊躇して乗り口102aに停滞している利用者を、先行利用者とする。これに対し、先行利用者の次に乗り口102aに向かって移動している利用者を、後行利用者とする。
【0050】
制御装置本体110は、ステップS101において、搬送体107の搬送速度が定格速度となるように制御する。
【0051】
制御装置本体110は、ステップS102において、先行利用者が乗り口102aに停滞しているかどうかを判定する。制御装置本体110は、利用者検出センサ103aによる連続検出時間と設定時間とを比較することにより、先行利用者が乗り口102aに停滞しているかどうかを判定する。
【0052】
制御装置本体110は、先行利用者が乗り口102aに停滞していないと判定した場合、処理をステップS101に戻し、搬送体107の搬送速度を定格速度のままとする。一方、制御装置本体110は、先行利用者が乗り口102aに停滞していると判定した場合、先行利用者が乗り込むのに躊躇しているとし、処理をステップS103に進める。
【0053】
制御装置本体110は、ステップS103において、距離センサ104aからの距離検出信号に基づいて、後行利用者の有無を判定する。後行利用者がいる場合といない場合とでは、距離センサ104aから取得される距離が異なる。制御装置本体110は、距離センサ104aから取得される距離の長短に基づいて、後行利用者の有無を判定する。
【0054】
制御装置本体110は、後行利用者がいる場合、処理をステップS104に進める。制御装置本体110は、後行利用者がいない場合、処理をステップS105に進める。
【0055】
制御装置本体110は、ステップS104において、後行利用者が停滞しているかどうかを判定する。
【0056】
このステップS104の判定に際し、制御装置本体110は、距離検出信号の時間変化に基づいて、後行利用者の移動速度を算出する。
【0057】
制御装置本体110は、後行利用者の移動速度が閾値以下である場合、後行利用者が停滞していると判定する。この場合、制御装置本体110は、乗り口102aにいる先行利用者が乗り込めないことにより、渋滞が発生しているとして、処理をステップS105に進める。
【0058】
一方、制御装置本体110は、後行利用者の移動速度が閾値を超える場合、後行利用者が先行利用者を追い越して先に搬送体107に乗り込むものと判定する。この場合、制御装置本体110は、処理をステップS101に戻して、搬送体107の搬送速度を定格速度のままとする。
【0059】
制御装置本体110は、ステップS105において、搬送体107の搬送速度を低下させる。
【0060】
制御装置本体110は、ステップS106において、乗り口102aにいる先行利用者が乗り込んだかどうかを判定する。制御装置本体110は、利用者検出センサ103aによる検出が解除されたかを判定条件とすることにより、先行利用者が乗り込んだかどうかを判定する。
【0061】
制御装置本体110は、先行利用者が乗り込んだと判定した場合、処理をステップS107に進める。
【0062】
一方、制御装置本体110は、先行利用者が乗り込んでいないと判定した場合、処理をステップS105に戻し、搬送体107の搬送速度を更に低下させる。このステップS106からステップS105へのループにより、制御装置本体110は、利用者の乗り込みが完了するまで、搬送体107の搬送速度を低下させ続ける。なお、図3の例のように、下限速度が設定されていてもよい。
【0063】
制御装置本体110は、ステップS107において、乗客コンベア100のその後の運転パターンを計算する。この運転パターンは、先行利用者が搬送体107に乗り込んでから、搬送体107から降りるまでのパターンである。この運転パターンは、例えば、図3の時間t2から時間t4までの速度変化のパターンである。
【0064】
制御装置本体110は、乗客コンベア100の階高、搬送体107の搬送速度を上昇させるときの加速度、搬送体107の搬送速度を低下させるときの負の加速度から、運転パターンを計算する。また、制御装置本体110は、先行利用者が乗り込んだ時点における搬送体107の搬送速度から、運転パターンを計算する。また、制御装置本体110は、運転パターンの計算に加えて、先行利用者の降り口102bに到達する予測到達時間を計算する。
【0065】
制御装置本体110は、ステップS108において、計算した運転パターンに基づいて、搬送体107の搬送速度を上昇させる。
【0066】
制御装置本体110は、ステップS109において、計算した運転パターンに基づいて、定格速度による運転を行う。
【0067】
制御装置本体110は、ステップS110において、計算した運転パターンに基づいて、搬送体107の搬送速度を低下させる。制御装置本体110は、先行利用者が乗り込んだときの搬送速度まで、搬送体107の搬送速度を低下させる。
【0068】
なお、乗客コンベア100の階高が低い場合、制御装置本体110は、搬送体107の搬送速度が定格速度に達する前に、搬送速度を低下させる。この場合、ステップS109の定格速度による運転の処理は無くなる。
【0069】
制御装置本体110は、ステップS111において、先行利用者が乗り込んだときの搬送速度を維持する。制御装置本体110は、ステップS112において、先行利用者が降り口102bに到達したかどうかを判定する。制御装置本体110は、利用者検出センサ103bからの利用者検出信号、及び計算した予測到達時間に基づいて、先行利用者が降り口102bに到達したかどうかを判定する。
【0070】
制御装置本体110は、先行利用者が降り口102bに到達していない場合、処理をステップS111に戻す。制御装置本体110は、先行利用者が降り口102bに到達した場合、処理をステップS113に進める。
【0071】
制御装置本体110は、ステップS113において、搬送体107の搬送速度を定格速度に戻す。制御装置本体110は、ステップS113の後、図4の処理を終了する。
【0072】
なお、ステップS112に替えて、制御装置本体110は、先行利用者が乗り込んだ踏段が降り口102bのクシに到達した場合、先行利用者が降りたと判定してもよい。
【0073】
また、図4のフローチャート以外の処理として、制御装置本体110は、先行利用者があきらめて立ち去った場合、搬送体107の搬送速度を定格速度に戻す処理を行ってもよい。制御装置本体110は、この処理を、上記のステップS106において行ってもよい。
【0074】
この場合、制御装置本体110は、上記のステップS106において、利用者検出センサ103aの検出が解除されたかの判定に加え、先行利用者が乗り口102aから立ち去る方向に移動したかどうかの立ち去り判定を行う。この立ち去り判定は、距離センサ104aからの距離検出信号に基づいて行われる。
【0075】
図5は、図1に示す距離センサ104aによる利用者検出状態の第1例を示す平面図である。
【0076】
距離センサ104aは、上記のとおり、レーザ光を二次元的に走査させながら、利用者までの距離を測定する。ここで、図5に示すように、距離センサ104aからのレーザ光が届く位置に利用者X及び利用者Yがいる場合、利用者X及びYは問題なく検出される。
【0077】
図6は、図1に示す距離センサ104aによる利用者検出状態の第2例を示す平面図である。図6において、レーザ光が利用者Xによって遮られる位置に利用者Yがいるため、利用者Yは、死角となって検出されない。
【0078】
図7は、死角の発生を低減させる対策例を示す平面図である。図6の問題に対する対策として、距離センサ104aの設置位置とは異なる位置に、新たに距離センサを設ける。例えば、図7に示すように、対面している他方のスカートガード111に、新たに距離センサ104cを設ける。このため、片方の距離センサ104aの死角に他の利用者がいる場合においても、距離センサ104cにより検出することが可能になる。
【0079】
このように、距離センサ104aとは別の位置に、少なくとも1つの距離センサを設けると、後行利用者を精度よく検出することができる。このため、後行利用者が停滞しているかどうかの判定の精度を向上させることができる。
【0080】
実施の形態1の乗客コンベア100の制御装置109において、制御装置本体110は、先行利用者が乗り口102aに停滞しており、且つ後行利用者がいない場合、搬送体107の搬送速度を、定格速度から低下させる。また、制御装置本体110は、先行利用者が乗り口102aに停滞しており、且つ後行利用者の移動速度が閾値以下である場合、搬送体107の搬送速度を、定格速度から低下させる。また、制御装置本体110は、先行利用者が乗り口102aに停滞しており、且つ後行利用者の移動速度が閾値を超える場合、搬送体107の搬送速度を、定格速度のままとする。
【0081】
このため、制御装置本体110は、搬送体107の乗り込むのに躊躇している利用者がいる場合、後行利用者の状況を確認した上で、搬送速度を低下させて乗り込むのを補助することができる。また、制御装置本体110は、後行利用者が、乗り込むのに躊躇している先行利用者の横を通って乗り込む場合、搬送速度を低下させずに定格速度のままとすることができる。従って、運行効率をより向上させることができる。
【0082】
また、制御装置本体110は、搬送体107の搬送速度を定格速度から低下させた後において、先行利用者が乗り口102aに停滞していないと判定した場合、先行利用者が搬送体107に乗り込んだとして、搬送体107の搬送速度を上昇させる。このため、搬送体107の搬送速度を低下させたままとする場合よりも、運行効率を向上させることができる。
【0083】
また、制御装置本体110は、先行利用者が降り口102bに到達するまでの間に、上昇させた後の搬送体107の搬送速度を、先行利用者が乗り込んだときの速度まで低下させる。このため、制御装置本体110は、速度を落として乗り込みを補助した先行利用者に対しては、降りるときも、速度を落として補助することができる。
【0084】
また、制御装置本体110は、搬送体107の搬送速度を定格速度から低下させた後において、先行利用者が停滞していないと判定し、且つ、先行利用者が乗り口102aから立ち去る方向に移動したと判定した場合、搬送体107の搬送速度を定格速度に戻す。このため、制御装置本体110は、先行利用者が立ち去った場合、搬送体107の搬送速度を定格速度に戻すことができ、運行効率の低下を低減させることができる。
【0085】
なお、乗客コンベア100は、図1に示すエスカレータに限らず、動く歩道であってもよい。この場合、動く歩道は、水平タイプであってもよく、傾斜タイプであってもよい。また、搬送体107は、ベルトコンベアタイプであってもよい。
【0086】
また、実施の形態1の制御装置本体110の各機能は、処理回路によって実現される。図8は、実施の形態1の制御装置本体110の各機能を実現する処理回路の第1例を示す構成図である。第1例の処理回路600は、専用のハードウェアである。
【0087】
処理回路600は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものに該当する。また、制御装置本体110の各機能それぞれを個別の処理回路600により実現してもよい。もしくは、制御装置本体110の各機能をまとめて処理回路600により実現してもよい。
【0088】
また、図9は、実施の形態1の制御装置本体110の各機能を実現する処理回路の第2例を示す図である。第2例の処理回路700は、プロセッサ710及びメモリ720を備えている。
【0089】
処理回路700において、制御装置本体110の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述される。そして、ソフトウェア及びファームウェアは、メモリ720に格納される。プロセッサ710は、メモリ720に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。
【0090】
メモリ720に格納されるプログラムは、上述した各部の手順あるいは方法を、コンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、メモリ720とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリが該当する。また、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等も、メモリ720に該当する。
【0091】
上述した各部の機能について、一部が専用のハードウェアにより実現され、一部がソフトウェアまたはファームウェアにより実現されてもよい。
【0092】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述した各部の機能を実現することができる。
【符号の説明】
【0093】
100 乗客コンベア、102a 乗り口、102b 降り口、103a、103b 利用者検出センサ、104a、104b、104c 距離センサ、107 搬送体、109 制御装置、110 制御装置本体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9