(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178616
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】乗客コンベアの制御装置
(51)【国際特許分類】
B66B 25/00 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
B66B25/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091403
(22)【出願日】2022-06-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】福谷 俊行
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA06
3F321DA03
3F321DC03
3F321EA03
3F321EB07
3F321EC07
(57)【要約】
【課題】乗り口における乗客の状態に応じて、搬送体の移動速度をより適切に制御することができる乗客コンベアの制御装置を得る。
【解決手段】制御装置本体7は、乗客センサ8からの情報に基づいて、搬送体2の移動速度を制御する。制御装置本体7は、非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、検出時間Tdtが第2基準時間Ts2以上となると、搬送体2の移動速度を低下させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り口の乗客を検出する乗客センサからの情報に基づいて、前記乗客を搬送する搬送体の移動速度を制御する制御装置本体
を備え、
前記乗客センサによる前記乗客の検出状態が継続した時間を検出時間、前記乗客センサによる前記乗客の非検出状態が継続した時間を非検出時間としたとき、
前記制御装置本体は、前記非検出時間が第1基準時間以上となったのに続けて、前記検出時間が第2基準時間となると、前記移動速度を低下させる
乗客コンベアの制御装置。
【請求項2】
前記制御装置本体は、前記非検出時間が前記第1基準時間未満となったのに続けて、前記検出時間が、前記第2基準時間よりも長い第3基準時間となると、前記移動速度を低下させる
請求項1に記載の乗客コンベアの制御装置。
【請求項3】
前記制御装置本体は、前記移動速度を低下させた後、前記検出時間の終了時点からの経過時間が第4基準時間となると、前記移動速度を増加させる
請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベアの制御装置。
【請求項4】
前記移動速度を低下させる対象となった前記乗客を減速対象乗客としたとき、
前記制御装置本体は、前記減速対象乗客が降り口の手前の設定位置に到達するのに要する時間の推定値である推定到達時間を算出し、前記推定到達時間に基づいて前記移動速度を再度低下させる
請求項3に記載の乗客コンベアの制御装置。
【請求項5】
前記乗客センサとしての透過式光電センサをさらに備えている
請求項1に記載の乗客コンベアの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアでは、乗り口において、第1時間の間、継続的に乗客が検出されると、その後、第2時間の間、踏段の循環速度が通常の循環速度よりも低くされる。従って、乗客が乗客コンベアに乗り込むことを躊躇していると、踏段の循環速度が低くされる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の乗客コンベアでは、乗客コンベアの混雑時において、乗り口の乗客が、先に乗客コンベアに乗り込んだ乗客との距離を空けるために乗り口に待機している場合にも、踏段の循環速度が低くされることがあるという問題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するために為されたものであり、乗り口における乗客の状態に応じて、搬送体の移動速度をより適切に制御することができる乗客コンベアの制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る乗客コンベアの制御装置は、乗り口の乗客を検出する乗客センサからの情報に基づいて、乗客を搬送する搬送体の移動速度を制御する制御装置本体を備え、乗客センサによる乗客の検出状態が継続した時間を検出時間、乗客センサによる乗客の非検出状態が継続した時間を非検出時間としたとき、制御装置本体は、非検出時間が第1基準時間以上となったのに続けて、検出時間が第2基準時間以上となると、移動速度を低下させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る乗客コンベアの制御装置によれば、乗り口における乗客の状態に応じて、搬送体の移動速度をより適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る乗客コンベアの制御装置を乗客コンベアの要部とともに示す構成図である。
【
図4】乗客センサの状態と、搬送体の移動速度との関係を示すタイムチャートの第1の例である。
【
図5】乗客センサの状態と、搬送体の移動速度との関係を示すタイムチャートの第2の例である。
【
図6】乗客センサの状態と、搬送体の移動速度との関係を示すタイムチャートの第3の例である。
【
図7】
図1の制御装置本体が実行する「減速対象乗客が乗客コンベアに乗り込むときの移動速度制御ルーチン」を示すフローチャートである。
【
図8】乗客センサの状態と、搬送体の移動速度との関係を示すタイムチャートの第4の例である。
【
図9】
図1の制御装置本体が実行する「減速対象乗客が乗客コンベアに乗っている間の移動速度制御ルーチン」を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態1の乗客コンベアの制御装置の機能を実現する処理回路の第1の例を示す構成図である。
【
図11】実施の形態1の乗客コンベアの制御装置の機能を実現する処理回路の第2の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る乗客コンベアの制御装置を乗客コンベアの要部とともに示す構成図である。乗客コンベアは、主枠1、搬送体2、及び一対の欄干3を有している。主枠1は、上下階の建築梁間に架設されている。
【0010】
搬送体2は、主枠1に支持されている。また、搬送体2は、循環移動することにより乗客を搬送する。また、搬送体2は、複数の踏段2aが無端状に連結されて構成されている。
図1では、3つの踏段2aのみが示されている。
図1において、矢印により示したように、乗客は下階から上階に搬送されるようになっている。このように、本実施の形態では、乗客コンベアは、上り方向に運転されるようになっている。
【0011】
一対の欄干3は、主枠1上に立てられている。また、一対の欄干3は、主枠1の幅方向に互いに間隔をおいて配置されている。主枠1の幅方向は、水平且つ乗客の搬送方向に直角な方向である。また、一対の欄干3は、それぞれ、スカートガード4を有している。各スカートガード4は、対応する欄干3の下部に設けられている。
図1では、一対の欄干3のうちの一方のみが示されている。
【0012】
主枠1の左右端部の上面は、乗客コンベアの乗降口となっている。2つの乗降口のうち、主枠1の下階部分における乗降口は乗り口5である。また、2つの乗降口のうち、主枠1の上階部分における乗降口は降り口6である。
【0013】
乗客コンベアの制御装置は、制御装置本体7及び乗客センサ8を備えている。制御装置本体7は、上階において、主枠1内部に設けられている。乗客センサ8は、下階において、スカートガード4に設けられている。制御装置本体7と乗客センサ8とは、互いに電気的に接続されている。
【0014】
制御装置本体7は、乗客センサ8からの情報に基づいて、搬送体2の移動速度を制御する。
【0015】
図2は、乗客のいない乗り口5を上から見た図である。
図3は、乗客のいる乗り口5を上から見た図である。乗り口5には、床板9が設けられている。
【0016】
乗客センサ8は、透過式光電センサである。乗客センサ8は、投光器8aと受光器8bとを有している。投光器8aは、一方のスカートガード4に設けられており、受光器8bは、他方のスカートガード4に設けられている。
【0017】
投光器8a及び受光器8bは、
図2に示すX軸と平行な方向において、搬送体2と乗り口5との境界位置から、200mm~300mm離れた位置に設けられている。また、投光器8a及び受光器8bは、高さ方向、即ち、Z軸と平行な方向において、床板9の表面から150mm~200mm上方に設けられている。また、投光器8a及び受光器8bは、受光器8bが投光器8aからの光を受光できるように、互いに対向している。なお、乗客センサ8が設けられる位置についての数値は、あくまで例示であり、これらの数値に限定されない。
【0018】
このように乗客センサ8が配置されることにより、乗客センサ8は、乗り口5の乗客を検出する。投光器8aから照射される光線の光軸10は、Y軸と平行である。
図2に示したように、乗り口5に乗客がいない場合、受光器8bは、投光器8aからの光を受光することができる。この場合、乗客は検出されないので、乗客センサ8の状態は、「非検出状態」となる。
【0019】
一方、
図3に示したように、乗り口5に乗客11がいる場合、投光器8aからの光は乗客11によって遮られる。そのため、受光器8bは、投光器8aからの光を受光できなくなる。この場合、乗客11が検出されるので、乗客センサ8の状態は、「検出状態」となる。
【0020】
乗客11が乗客コンベアに乗り込むと、受光器8bは、投光器8aからの光を受光できるようになるため、乗客センサ8の状態は、「検出状態」から「非検出状態」に変化する。なお、「検出状態」において、乗客11を別の乗客が追い越した場合であっても、乗客センサ8による検出結果は変わらない。
【0021】
図4は、乗客センサ8の状態と、搬送体2の移動速度との関係を示すタイムチャートの第1の例である。
図5は、乗客センサ8の状態と、搬送体2の移動速度との関係を示すタイムチャートの第2の例である。
図6は、乗客センサ8の状態と、搬送体2の移動速度との関係を示すタイムチャートの第3の例である。
図4~6に示されている期間は、2人の乗客が間をおいて乗客コンベアに乗り込む期間が含まれている。
【0022】
図4に示したように、第1の例では、時刻t1~時刻t2の間の時間は、乗客センサ8による最初の検出時間Tdtである。検出時間Tdtは、乗客センサ8による乗客の検出状態が継続した時間である。最初の検出時間Tdtは、第2基準時間Ts2未満である。
【0023】
最初の検出時間Tdtの後の時刻t2~時刻t5の間の時間は、非検出時間Tndである。非検出時間Tndは、乗客センサ8による乗客の非検出状態が継続した時間である。非検出時間Tndは、第1基準時間Ts1以上である。
【0024】
時刻t5~時刻t6の間の時間は、乗客センサ8による2番目の検出時間Tdtである。2番目の検出時間Tdtは、第2基準時間Ts2以下である。
【0025】
第1基準時間Ts1は、例えば、1秒に設定されている。搬送体2の移動速度は、通常時において、通常速度V1として、30m/分に設定されている。搬送体2が通常速度V1で移動している場合、搬送体2は、第1基準時間Ts1の間に1.25段分移動する。
【0026】
非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上である場合、非検出状態の前後の検出状態の間隔は、十分に確保されているため、乗客は、次々と乗客コンベアに乗り込むことが想像される。
【0027】
非検出時間Tndが第1基準時間Ts1未満である場合、非検出状態の前後の検出状態の間隔は、十分に確保されておらず、乗客が乗客コンベアに乗り込むとき、先行する乗客との間を空けるために、乗り口5において立ち止まる可能性がある。
【0028】
第2基準時間Ts2は、例えば、4秒に設定されている。搬送体2が通常速度V1で移動している場合、搬送体2は、第2基準時間Ts2の間に5段分移動する。制御装置本体7は、検出時間Tdtが第2基準時間Ts2未満である場合、
図4に示したように、搬送体2の移動速度を変化させない。即ち、制御装置本体7は、搬送体2の移動速度を通常速度V1に維持させる。
【0029】
図5に示したように、第2の例では、最初の検出時間Tdtは、第2基準時間Ts2未満である。最初の検出時間Tdtの後の非検出時間Tndは、第1基準時間Ts1以上である。また、2番目の検出時間Tdtは第2基準時間Ts2以上である。
【0030】
制御装置本体7は、非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、検出時間Tdtが第2基準時間Ts2となると、第2基準時間Ts2が経過した時刻t7において、移動速度を通常速度V1から低下させる。時刻t7から減速時間Tdecが経過した時刻t8において、移動速度は、補助速度V2に到達する。制御装置本体7は、時刻t8以降、移動速度を補助速度V2に維持させる。
【0031】
補助速度V2は、乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを補助するための速度である。補助速度V2は、通常速度V1よりも低い速度に設定されている。例えば、補助速度V2は、20m/分に設定されている。時刻t8以降、制御装置本体7は、移動速度を補助速度V2に維持させる。
【0032】
このように、非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上確保されており、且つ乗客11が第2基準時間Ts2以上乗り口5に留まっていると考えられる場合、乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していることが想定される。そのため、制御装置本体7は、移動速度を通常速度V1から補助速度V2へ低下させる。
【0033】
図6に示したように、第3の例では、最初の検出時間Tdtは第2基準時間Ts2未満である。最初の検出時間Tdtの後の非検出時間Tndは、第1基準時間Ts1未満である。また、2番目の検出時間Tdtは第3基準時間Ts3以上である。
【0034】
制御装置本体7は、非検出時間Tndが第1基準時間Ts1未満となったのに続けて、検出時間Tdtが第3基準時間Ts3となると、第3基準時間Ts3が経過した時刻t7において、移動速度を通常速度V1から低下させる。第3基準時間Ts3は、第2基準時間Ts2よりも長い時間である。時刻t7から減速時間Tdecが経過した時刻t8において、移動速度は、補助速度V2に到達する。制御装置本体7は、時刻t8以降、移動速度を補助速度V2に維持させる。
【0035】
このように、非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上確保されていない場合であっても、乗客11が第3基準時間Ts3以上乗り口5に留まっていると考えられる場合、乗客11が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していることが想定される。そのため、制御装置本体7は、移動速度を通常速度V1から補助速度V2へ低下させる。
【0036】
つまり、この場合、乗客11は、先行する乗客との間を空けるために立ち止まることが想定されるため、第3基準時間Ts3は、第2基準時間Ts2よりも長い時間に設定されている。また、この場合、制御装置本体7は、搬送体2の移動速度を通常速度V1である30m/分に維持させる。第3基準時間Ts3は、例えば、8秒に設定されている。搬送体2が通常速度V1で移動している場合、搬送体2は、第3基準時間Ts3の間に10段分移動する。
【0037】
図7は、
図1の制御装置本体7が実行する「減速対象乗客が乗客コンベアに乗り込むときの移動速度制御ルーチン」を示すフローチャートである。
図7のルーチンが開始されると、制御装置本体7は、ステップS101において、搬送体2の移動速度を通常速度V1に設定する。次いで、制御装置本体7は、ステップS102において、非検出時間Tndを計測する。
【0038】
次いで、制御装置本体7は、ステップS103において、乗客センサ8の状態が検出状態にあるか否かを判定する。乗客センサ8の状態が検出状態にない場合、即ち、非検出状態にある場合、制御装置本体7は、再度ステップS102において、非検出時間Tndを計測する。即ち、制御装置本体7は、非検出時間Tndの計測を継続する。
【0039】
非検出時間Tndの計測は、乗客センサ8の状態が検出状態となるまで繰り返される。一方、乗客センサ8の状態が検出状態にある場合、制御装置本体7は、ステップS104において、非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上であるか否かを判定する。
【0040】
非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上である場合、制御装置本体7は、ステップS105において、検出時間Tdtが第2基準時間Ts2以上であるか否かを判定する。
【0041】
検出時間Tdtが第2基準時間Ts2以上未満である場合、制御装置本体7は、再び、ステップS102において、非検出時間Tndを計測する。一方、検出時間Tdtが第2基準時間Ts2以上である場合、制御装置本体7は、ステップS106において、搬送体2の移動速度を低下させる。
【0042】
また、ステップS104において、非検出時間Tndが第1基準時間Ts1未満であると判定された場合、制御装置本体7は、ステップS107において、検出時間Tdtが第3基準時間Ts3以上であるか否かを判定する。
【0043】
検出時間Tdtが第3基準時間未満である場合、制御装置本体7は、再び、ステップS102において、非検出時間Tndを計測する。一方、検出時間Tdtが第3基準時間Ts3以上である場合、制御装置本体7は、ステップS106において、搬送体2の移動速度を低下させる。
【0044】
図8は、乗客センサ8の状態と、搬送体2の移動速度との関係を示すタイムチャートの第4の例である。
図8に示したように、第4の例では、最初の検出時間Tdtは、第2基準時間Ts2未満である。また、最初の検出時間Tdtの後の非検出時間Tndは、第1基準時間Ts1以上である。また、2番目の検出時間Tdtは第2基準時間Ts2以上である。
【0045】
図8に示したように、制御装置本体7は、時刻t7において、搬送体2の移動速度を補助速度V2に向けて低下させる。その後、制御装置本体7は、2番目の検出時間Tdtの終了時点である時刻t6からの経過時間が、第4基準時間Ts4となる時刻t9において、搬送体2の移動速度を通常速度V1に向けて増加させる。時刻t6は、乗客11が乗客コンベアに乗り込んだと考えられる時刻である。つまり、制御装置本体7は、乗客11が乗客コンベアに乗り込んだ後、搬送体2の移動速度を通常速度V1に回復させる。
【0046】
第4基準時間Ts4は、例えば、3秒に設定されている。搬送体2が補助速度V2で移動している場合、搬送体2は、第4基準時間Ts4の間に2.5段分移動する。
【0047】
また、制御装置本体7は、搬送体2の移動速度と設定位置とに基づいて、推定到達時間Taesを算出する。推定到達時間Taesは、減速対象乗客が設定位置に到達するのに要する時間の推定値である。設定位置は、降り口6の手前の位置である。減速対象乗客は、搬送体2の移動速度を低下させる対象となった乗客のことである。そして、制御装置本体7は、算出した推定到達時間Taesに基づいて、時刻t10において、搬送体2の移動速度を通常速度V1から補助速度V2に向けて再び低下させる。
【0048】
また、制御装置本体7は、搬送体2の移動速度と乗客コンベアの長さとに基づいて、推定搭乗時間Tresを算出する。推定搭乗時間Tresは、減速対象乗客が乗客コンベアに乗っている時間の推定値、即ち、減速対象乗客が乗客コンベアを降りるまでの時間の推定値である。そして、制御装置本体7は、算出した推定搭乗時間Tresに基づいて、時刻t11において、搬送体2の移動速度を補助速度V2から通常速度V1に向けて再び増加させる。
【0049】
図9は、
図1の制御装置本体7が実行する「減速対象乗客が乗客コンベアに乗っている間の移動速度制御ルーチン」を示すフローチャートである。
図9のルーチンが開始されると、制御装置本体7は、ステップS201において、検出時間Tdtの終了時点、即ち、乗客センサ8の状態が「非検出状態」となった時刻t6からの時間を計測する。制御装置本体7は、時刻t6から第4基準時間Ts4が経過した時刻t9において、搬送体2の移動速度を通常速度V1に向けて増加させる。制御装置本体7は、搬送体2の移動速度が通常速度V1になった後も継続して経過時間を計測する。
【0050】
次いで、制御装置本体7は、ステップS202において、搬送体2の移動速度と設定位置とに基づいて、推定到達時間Taesを算出し、推定到達時間Taesが経過したときに、搬送体2の移動速度を補助速度V2に向けて低下させる。
【0051】
次いで、制御装置本体7は、ステップS203において、搬送体2の移動速度と乗客コンベアの長さとに基づいて、推定搭乗時間Tresを算出し、推定搭乗時間Tresが経過したときに、搬送体2の移動速度を通常速度V1に向けて増加させる。
【0052】
なお、制御装置本体7は、減速対象乗客が乗客コンベアに乗り込んだ後、別の乗客に対して搬送体2の移動速度を低下させる必要が生じた場合、別の乗客に対する搬送体2の移動速度を同様に制御する。
【0053】
このように、実施の形態1に係る乗客コンベアの制御装置は、制御装置本体7を備えている。制御装置本体7は、乗客センサ8からの情報に基づいて、搬送体2の移動速度を制御する。乗客センサ8は、乗り口5の乗客11を検出する。搬送体2は、乗客11を搬送する。
【0054】
制御装置本体7は、非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、検出時間Tdtが第2基準時間Ts2となると、移動速度を低下させる。検出時間Tdtは、乗客センサ8による乗客11の検出状態が継続した時間である。非検出時間Tndは、乗客センサ8による乗客11の非検出状態が継続した時間である。
【0055】
これによれば、先に乗客コンベアに乗り込んだ乗客と、これから乗客コンベアに乗り込もうとする乗客との間隔が第1基準時間Ts1以上離れている。そのため、これから乗客コンベアに乗り込もうとする乗客が、先に乗客コンベアに乗り込んだ乗客との間を空けるために、乗り口5において待機することは考えにくい。従って、非検出時間Tndが第1基準時間Ts1以上となったのに続けて、検出時間Tdtが第2基準時間Ts2となる場合、乗客が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していることが想定される。
【0056】
つまり、乗客が乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇していると想定される場合に、搬送体2の移動速度を低下させ、乗客が乗客コンベアへ乗り込むことを補助することができる。従って、乗り口5における乗客の状態に応じて、搬送体2の移動速度をより適切に制御することができる。
【0057】
また、制御装置本体7は、非検出時間Tndが第1基準時間Ts1未満となったのに続けて、検出時間Tdtが第3基準時間Ts3となると、移動速度を低下させる。第3基準時間Ts3は、第2基準時間Ts2よりも長い時間である。
【0058】
これによれば、非検出時間Tndが第1基準時間Ts1未満であるため、これから乗客コンベアに乗り込もうとする乗客が、先に乗客コンベアに乗り込んだ乗客との間を空けるために、乗り口5において待機することも想定される。従って、この場合、先に乗客コンベアに乗り込んだ乗客との間を空けるために乗り口5において待機している乗客と、乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇している乗客とを区別するため、第3基準時間Ts3は、第2基準時間Ts2よりも長い時間に設定されている。
【0059】
つまり、これによれば、先に乗客コンベアに乗り込んだ乗客との間を空けるために乗り口5において待機している乗客と、乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇している乗客とを区別することができる。
【0060】
また、実施の形態1に係る乗客コンベアの制御装置において、制御装置本体7は、移動速度を低下させた後、検出時間Tdtの終了時点からの経過時間が第4基準時間Ts4となると、搬送体2の移動速度を増加させる。
【0061】
乗客が乗客コンベアへ乗り込むことを補助するために搬送体2の移動速度が低くされると、乗客コンベアの運搬効率が低下する。これによれば、搬送体2の移動速度が低くされる時間が限定的となるため、乗客コンベアの運搬効率の低下が抑制される。
【0062】
また、制御装置本体7は、推定到達時間Taesを算出し、推定到達時間Taesに基づいて、移動速度を再度低下させる。推定到達時間Taesは、減速対象乗客が降り口6の手前の設定位置に到達するのに要する時間の推定値である。減速対象乗客は、移動速度を低下させる対象となった乗客である。
【0063】
これによれば、減速対象乗客が乗客コンベアから降りるときに、搬送体2の移動速度が低くされるため、減速対象乗客が乗客コンベアから降りるのを補助することができる。
【0064】
また、乗客コンベアの制御装置は、乗客センサ8としての透過式光電センサをさらに備えている。
【0065】
透過式光電センサは、乗客により投光器8aからの光が遮られ、受光器8bが投光器8aからの光を受光できなくなったとき、乗客を検出する。そのため、透過式光電センサが乗客を検出している間に、他の乗客により追い越されても、透過式光電センサの検出結果は他の乗客の影響を受けにくい。従って、これによれば、乗客コンベアへ乗り込むことを躊躇している乗客をより確実に検出することができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、減速対象乗客が乗客コンベアに乗り込んだ後、制御装置本体7は、搬送体2の移動速度を補助速度V2から通常速度V1に回復させていた。しかし、制御装置本体7は、減速対象乗客が乗客コンベアに乗り込んでから乗客コンベアを降りるまで、搬送体2の移動速度を補助速度V2に維持させてもよい。
【0067】
乗客コンベアの長さ、搬送体2の移動速度、第4基準時間Ts4、及び設定位置によって、第4基準時間Ts4と推定到達時間Taesとの差は変化する。従って、例えば、第4基準時間Ts4と推定到達時間Taesとの差が、既定の判定時間よりも小さい場合、制御装置本体7は、減速対象乗客が乗客コンベアに乗り込んでから乗客コンベアを降りるまで、搬送体2の移動速度を補助速度V2に維持すればよい。
【0068】
また、本実施の形態では、減速対象乗客が乗客コンベアに乗り込んだ後、制御装置本体7は、搬送体2の移動速度を通常速度V1に回復させていたが、この回復時の移動速度は、必ずしも通常速度V1と等しい速度でなくてもよい。回復時の移動速度は、通常速度V1を超えない範囲において、補助速度V2よりも高い速度であればよい。
【0069】
また、本実施の形態では、減速対象乗客が乗客コンベアから降りる際に、制御装置本体7は、搬送体2の移動速度を補助速度V2まで低下させていたが、この場合の移動速度は、必ずしも補助速度V2と等しい速度でなくてもよい。また、制御装置本体7は、減速対象乗客が乗客コンベアから降りるときに、搬送体2の移動速度を低くしなくてもよい。
【0070】
また、本実施の形態において、第1基準時間Ts1についての数値、第2基準時間Ts2についての数値、第3基準時間Ts3についての数値、第4基準時間Ts4についての数値、及び踏段の段数の数値は、あくまで例示であり、これらの数値に限定されない。また、通常速度V1についての数値、及び補助速度V2についての数値は、あくまで例示であり、これらの数値に限定されない。
【0071】
また、制御装置本体7は、推定到達時間を算出したが、これに代えて、減速対象乗客が移動する距離を、計測された経過時間と搬送体2の移動速度とに基づいて算出し、減速対象乗客が設定距離に到達したときに、搬送体2の移動速度を補助速度V2に向けて低下させてもよい。
【0072】
また、制御装置本体7は、推定搭乗時間を算出したが、これに代えて、減速対象乗客が移動する距離を、計測された経過時間と搬送体2の移動速度とに基づいて算出し、減速対象乗客が降り口6に到達した後に、搬送体2の移動速度を通常速度V1に回復させてもよい。
【0073】
また、乗客センサとして透過式光電センサが用いられていたが、乗客センサは、これに限定されない。乗客センサには、透過式以外の光電センサ、例えば、反射式光電センサが用いられてもよい。また、乗客センサは、光電センサ以外のセンサであってもよい。例えば、乗客センサとして、レーダ、LiDAR(Light Detection And Ranging)スキャナ、超音波センサ、又はカメラが用いられてもよい。
【0074】
また、制御装置本体7と乗客センサ8との間は電気的に接続されていたが、制御装置本体7と乗客センサ8とは、無線通信により接続されていてもよい。
【0075】
また、制御装置本体7が設置される位置は、上階における主枠1内部に限定されない。
【0076】
また、本実施の形態では、エスカレーターは上り方向に運転されていたが、これに限らず、エスカレーターは下り方向に運転されてもよい。エスカレーターが下り方向に運転される場合、乗客センサ8は、上階において、スカートガード4に設けられる。
【0077】
また、搬送体の循環方向が切り替え可能なエスカレーターの場合、乗客センサ8は、上階及び下階において、それぞれスカートガード4に設けられる。
【0078】
また、乗客センサ8は必ずしもスカートガード4に設けられる必要はなく、乗客コンベアに乗り込もうとしている乗客を検出できる位置に設けられていればよい。
【0079】
また、乗客コンベアは、エスカレーターに限らず、例えば動く歩道であってもよい。また、動く歩道は、水平形であっても、傾斜形であってもよい。また、搬送体は、ベルトコンベアタイプであってもよい。
【0080】
また、実施の形態1の乗客コンベアの制御装置の機能は、処理回路によって実現される。
図10は、実施の形態1の乗客コンベアの制御装置の機能を実現する処理回路の第1の例を示す構成図である。第1の例の処理回路100は、専用のハードウェアである。
【0081】
また、処理回路100は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。
【0082】
また、
図11は、実施の形態1の乗客コンベアの制御装置の機能を実現する処理回路の第2の例を示す構成図である。第2の例の処理回路200は、プロセッサ201及びメモリ202を備えている。
【0083】
処理回路200では、乗客コンベアの制御装置の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ202に格納される。プロセッサ201は、メモリ202に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、機能を実現する。
【0084】
メモリ202に格納されたプログラムは、上述した各部の手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。ここで、メモリ202とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリである。また、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等も、メモリ202に該当する。
【0085】
なお、上述した乗客コンベアの制御装置の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0086】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、上述した乗客コンベアの制御装置の機能を実現することができる。
【0087】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0088】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0089】
(付記1)
乗り口の乗客を検出する乗客センサからの情報に基づいて、前記乗客を搬送する搬送体の移動速度を制御する制御装置本体
を備え、
前記乗客センサによる前記乗客の検出状態が継続した時間を検出時間、前記乗客センサによる前記乗客の非検出状態が継続した時間を非検出時間としたとき、
前記制御装置本体は、前記非検出時間が第1基準時間以上となったのに続けて、前記検出時間が第2基準時間となると、前記移動速度を低下させる
乗客コンベアの制御装置。
(付記2)
前記制御装置本体は、前記非検出時間が前記第1基準時間未満となったのに続けて、前記検出時間が、前記第2基準時間よりも長い第3基準時間となると、前記移動速度を低下させる
付記1に記載の乗客コンベアの制御装置。
(付記3)
前記制御装置本体は、前記移動速度を低下させた後、前記検出時間の終了時点からの経過時間が第4基準時間となると、前記移動速度を増加させる
付記1又は付記2に記載の乗客コンベアの制御装置。
(付記4)
前記移動速度を低下させる対象となった前記乗客を減速対象乗客としたとき、
前記制御装置本体は、前記減速対象乗客が降り口の手前の設定位置に到達するのに要する時間の推定値である推定到達時間を算出し、前記推定到達時間に基づいて前記移動速度を再度低下させる
付記3に記載の乗客コンベアの制御装置。
(付記5)
前記乗客センサとしての透過式光電センサをさらに備えている
付記1から付記4までのいずれか1項に記載の乗客コンベアの制御装置。
【符号の説明】
【0090】
2 搬送体、5 乗り口、6 降り口、7 制御装置本体、8 乗客センサ、11 乗客、Taes 推定到達時間、Tdt 検出時間、Tnd 非検出時間、Ts1 第1基準時間、Ts2 第2基準時間、Ts3 第3基準時間、Ts4 第4基準時間。