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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178630
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】磁石回転子、及び、発電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/10 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
H02K7/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091425
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】板橋 楽
(72)【発明者】
【氏名】堀内 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】土屋 勇一
(72)【発明者】
【氏名】狩野 啓介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和弥
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607DD02
5H607EE05
5H607JJ07
(57)【要約】
【課題】ヨークの小型、軽量化とクラッチ機構の確実な係止を両立させることができる磁石回転子、及び、発電機を提供する。
【解決手段】磁石回転子は、ヨークと、複数の永久磁石と、を備える。ヨークは、底壁の中心部に回転軸が連結されるとともに、底壁の回転軸との連結部よりも径方向外側領域に、クラッチ機構を位置決めするクラッチ係止部が設けられる。複数の永久磁石は、ヨークの周壁に固定される。クラッチ係止部は、ヨークの底壁から切り起こされた複数の切り起こし片によって構成される。発電機は、磁石回転子と、固定子とを備える。固定子は、ヨークの内側で永久磁石に対向して配置されるとともに、コイルが巻装される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁の中心部に回転軸が連結されるとともに、前記底壁の前記回転軸との連結部よりも径方向外側領域に、クラッチ機構を位置決めするクラッチ係止部が設けられた有底円筒状のヨークと、
前記ヨークの周壁に固定された複数の永久磁石と、を備え、
前記クラッチ係止部は、前記ヨークの前記底壁から切り起こされた複数の切り起こし片によって構成されていることを特徴とする磁石回転子。
【請求項2】
前記切り起こし片は、切り起こし基部が前記底壁の径方向外側領域に配置され、先端部側が前記切り起こし基部よりも前記底壁の径方向内側領域から切り起こされていることを特徴とする請求項1に記載の磁石回転子。
【請求項3】
前記底壁には、切り起こし前の前記切り起こし片の輪郭部よりも大きい切欠き部が設けられ、
前記切欠き部は、前記底壁の径方向内側に向かって径方向と直交する方向の幅が次第に狭まる形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の磁石回転子。
【請求項4】
前記切欠き部は、前記クラッチ機構の外周面よりも径方向外側となる位置まで拡がっていることを特徴とする請求項3に記載の磁石回転子。
【請求項5】
前記切り起こし片は、前記底壁の周方向に関して、前記切欠き部の中央領域に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の磁石回転子。
【請求項6】
前記切り起こし片は、前記底壁の周方向に関して、片側に偏った位置に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の磁石回転子。
【請求項7】
前記請求項1~6のいずれか1項に記載の磁石回転子と、前記ヨークの内側で前記永久磁石に対向して配置されるとともに、コイルが巻装された固定子と、を備えていることを特徴とする発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石回転子、及び、発電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用エンジンには回転軸に発電機が直結されたものがある。ここで用いられる発電機は、エンジンの回転軸に磁石回転子が連結され、磁石固定子の周壁に固定された永久磁石と対向するように固定子がエンジンカバー等に取り付けられている。発電機は、磁石回転子がエンジンの回転軸とともに回転すると、固定子に巻装されたコイルを通して発電電力を蓄電装置や車載の電気機器に出力する。
【0003】
また、この種の発電機として、磁石回転子にワンウェイクラッチが取り付けられ、磁石回転子がワンウェイクラッチを介してエンジン始動用のモータに接続可能とされたものがある。エンジン始動用のモータは、エンジンの始動時に、ワンウェイクラッチと磁石回転子を通してエンジンの回転軸に回転力を伝達し、その回転力によってエンジンを始動する。また、エンジンが始動して回転軸の回転速度が高まると、ワンウェイクラッチによってエンジン始動用のモータと回転軸の間の動力伝達が遮断される。
この発電機では、ワンウェイクラッチのクラッチ機構が磁石回転子に位置決めされ、その状態でクラッチ機構が磁石回転子にボルト締結等によって固定されている。
【0004】
この種の発電機の磁石回転子は、有底円筒状のヨークの底壁が回転軸の端部にボスを介して固定されている。そして、クラッチ機構は、ボスのフランジ部に形成されたクラッチ係止部(インロー部)によって嵌合係止され、その状態でボルト締結等によってヨークの底壁に固定されている。
【0005】
しかし、この従来の磁石回転子の場合、ヨークを回転軸に固定するためのボスにフランジ部やクラッチ係止部を一体に形成する構造とされているため、ボスが大型化し、磁石回転子全体が大型・重量化する原因となり易い。
【0006】
この対策として、有底円筒状のヨークの底壁に打ち出しによってクラッチ係止部を一体に形成した磁石回転子が案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に記載の磁石回転子は、有底円筒状のヨークの底壁にヨークの軸方向内側に段差状に窪む円環状のクラッチ係止部が打ち出しによって形成されている。ワンウェイクラッチのクラッチ機構は、アウタレースが円環状のクラッチ係止部に嵌合状態で係止され、その状態でアウタレースがヨークの底壁にボルト締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4705639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載の磁石回転子は、ヨークの底壁に打ち出しによってクラッチ係止部が形成されているため、クラッチ機構(アウタレース)の外周面に対するクラッチ係止部の係止代(係止深さ)を充分に確保しようとすると、ヨークの底壁の厚みをある程度以上に厚くせざるを得ない。このことは、磁石回転子の小型、軽量化の観点からは望ましくなく、さらなる改善が望まれている。
【0010】
そこで本発明は、ヨークの小型、軽量化とクラッチ機構の確実な係止を両立させることができる磁石回転子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る磁石回転子、及び、発電機は、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る磁石回転子は、底壁の中心部に回転軸が連結されるとともに、前記底壁の前記回転軸との連結部よりも径方向外側領域に、クラッチ機構を位置決めするクラッチ係止部が設けられた有底円筒状のヨークと、前記ヨークの周壁に固定された複数の永久磁石と、を備え、前記クラッチ係止部は、前記ヨークの前記底壁から切り起こされた複数の切り起こし片によって構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る発電機は、前記磁石回転子と、前記ヨークの内側で前記永久磁石に対向して配置されるとともに、コイルが巻装された固定子と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る磁石回転子は、ヨークの底壁から切り起こされた複数の切り起こし片によってクラッチ係止部が構成されている。このため、クラッチ係止部をヨークの底壁から打ち出しによって形成する場合に比較して、ヨークの底壁の肉厚を厚くすることなく複数の切り起こし片によってクラッチ機構部を確実に係止することができる。
したがって、本発明に係る磁石回転子を採用した場合には、ヨークの小型、軽量化とクラッチ機構の確実な係止を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の発電機の縦断面図。
図2】実施形態の磁石回転子の斜視図。
図3】実施形態の磁石回転子の縦断面図。
図4】実施形態の磁石回転子の図2のIV部の拡大斜視図。
図5】実施形態の磁石回転子の図2のIV部の拡大正面図。
図6】他の実施形態1の図5に対応する拡大正面図。
図7】他の実施形態2の図5に対応する拡大正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で説明する各実施形態では、同一構成部分に共通符号を付して重複する説明を省略するものとする。
【0016】
図1は、本実施形態の発電機1の縦断面図である。
発電機1は、アウタロータ型の交流発電機であって、エンジンの回転軸2に連結される磁石回転子3と、磁石回転子3の内側に配置され、エンジンケース(不図示)等に固定される固定子4と、を備えている。
【0017】
磁石回転子3は、回転軸2の先端部が嵌入されるボス10と、ボス10に固定された有底円筒状のヨーク11と、を備えている。ボス10は、ヨーク11の底壁15の中央部に固定されている。また、ヨーク11の周壁17の内周面には、複数の永久磁石12が固定されている。永久磁石12は周方向に磁極が交互に並ぶように着磁されている。ヨーク11の周壁17の外周面には、磁石回転子3及び回転軸2の回転位置を検出するための図示しない突起がプレス加工によって突設されている。
また、ヨーク11の底壁15の外側面(軸方向外側の面)には、ワンウェイクラッチのクラッチ機構30が取り付けられている。
【0018】
図2は、磁石回転子3をヨーク11の底壁15の外側から見た斜視図である。また、図3は、永久磁石12の図示を省略した磁石回転子3の縦断面図である。
ボス10は、軸心に沿って貫通孔13が形成されている。貫通孔13は、回転軸2の先端部の形状に沿って先端側に向かって内径が窄まるテーパ孔とされている。ボス10の基端部には、径方向外側に張り出す環状のフランジ部14が設けられている。ヨーク11の底壁15の中央部には、ボス10が嵌入される嵌合孔24が形成され、ヨーク11の底壁15の嵌合孔24の周縁部は、ヨーク11の軸方向内側に向かってフランジ部14の厚み分だけ円環状に窪んでいる。底壁15の嵌合孔24の周縁の窪み部23には、フランジ部14が軸方向外側から重ねられている。フランジ部14は、その状態において、ヨーク11の底壁15の内周縁部に固定されている。これにより、ボス10のフランジ部14とヨーク11の底壁15の軸方向外側の端面は略面一となっている。
なお、ボス10と回転軸2の先端部は、軸線回りに共回りするようにナット16によって固定されている。
【0019】
また、ヨーク11の底壁15のうちの、窪み部23よりも径方向外側領域には、複数のボルト挿通孔50とエンボス部51が底壁15の中心部を中心とした同心円状に形成されている。複数のボルト挿通孔50には、後述するワンウェイクラッチのクラッチ機構30を締結固定するためのボルト32が挿通される。また、エンボス部51は、突出側の先端がヨーク11の底壁15の内面からヨーク11内に向かって突出している。エンボス部51の突出部分には、ヨーク11内に配置される図示しないカバー部材が係止される。
【0020】
図1に示すように、ワンウェイクラッチのクラッチ機構30は、円環状のアウタレース31と、円筒部34aがアウタレース31の径方向内側に配置される円環状のインナレース34と、アウタレース31とインナレース34の円筒部34aの間に介装される転動体33と、を備えている。転動体33は、インナレース34とアウタレース31の間の一方向の回転のみを相手部材に伝達し、他方向の回転伝達を阻止するように機能する。
なお、インナレース34とアウタレース31の間の一方向の回転のみを相手部材に伝達するクラッチ機構30の詳細構造についてはここで説明を省略する。クラッチ機構30については、周知の各種の構造を採用することができる。
【0021】
インナレース34は、円筒部34aの軸方向の一端部(クラッチ機構30がヨーク11に取り付けられたときに、ヨーク11の底壁15から離間する側の端部)に、アウタレース31と非接触状態で径方向外側に円形状に張り出す回転板34bが延設されている。回転板34bの外周面には、回転伝達用の歯面34cが形成されている。回転板34bの歯面34cには、図示しないエンジン始動用のモータの出力歯車が噛み合い可能とされている。
なお、インナレース34は、円筒部34aの内周側が軸受35を介して回転軸2に支持さている。
【0022】
クラッチ機構30は、エンジンの始動時に、回転板34bを通してエンジン始動用のモータからインナレース34に一方向の回転トルクが伝達されると、そのトルクを、転動体33とアウタレース31を通してヨーク11に伝達する。これにより、エンジン始動用のモータのトルクがエンジンの回転軸2に伝達され、エンジンが始動されることになる。また、エンジンの始動後に、回転軸2の回転速度が高まると、エンジン始動用のモータと回転軸2の間のトルク伝達がクラッチ機構30によって遮断される。
【0023】
また、発電機1の固定子4は、環状のステータコア40を備えている。ステータコア40は、円環状の磁性材料の板材を軸線方向に積層して構成されている。ステータコア40の内径は、回転軸2の先端部に螺合されるナット16と干渉しない内径とされている。ステータコア40には、径方向外側に延びるティース40Aが周方向に等間隔に複数設けられている。各ティース40Aの外周には、インシュレータ41を介してコイル42が巻回されている。コイル42は、交流と直流を変換する電力変換回路を介して図示しない蓄電装置や車載の電気機器に電気的に接続されている。
【0024】
発電機1は、ヨーク11が回転軸2とともに回転すると、ヨーク11の周壁17に固定された複数の永久磁石12が固定子4側の複数のティース40Aの外周側を周方向に横切する。これにより、交流電力が発生し、その電力がコイル42と電力変換回路を通して蓄電装置や車載の電気機器に出力される。
【0025】
図4は、磁石回転子3の図2のIV部の拡大斜視図であり、図5は、磁石回転子3の図2のIV部の拡大正面図である。
ヨーク11の底壁15のうちの、ボス10(回転軸2との連結部)よりも径方向外側領域には、略三角形状の切欠き部60と、切欠き部60の一辺の一部が切り起こされた切り起こし片61と、が設けられている。切欠き部60と切り起こし片61は、ヨーク11の底壁15のうちの、底壁15の中心部を中心とした同心円上に夫々複数(本実施形態の場合6つ)配置されている。複数の切り起こし片61は、底壁15の中心部を中心とした円周方向に等間隔に離間して配置されている。
【0026】
各切欠き部60は、一辺60aが底壁15の中心を中心とした円の接線方向に延び、残余の二辺60b,60cが一辺60aの両端部から底壁15の中心に向かって延びる略三角形状に形成されている。切り起こし片61は、切欠き部60の一辺60aの略中央領域において、ヨーク11の軸方向外側に向かって略直角に切り起こされている。本実施形態では、切り起こし片61は、切り起こし前の形状が、一辺60aから径方向内側に向かって延びる略長方形状に形状とされている。
なお、切欠き部60は、切り起こし前の切り起こし片61の輪郭部よりも充分に大きく形成されている。また、切欠き部60は、底壁15の径方向内側に向かって径方向と直交する方向の幅が次第に狭まっている。
【0027】
各切り起こし片61は、図2に示すように、ヨーク11の底壁15のうちの、ボルト挿通孔50やエンボス部51の形成位置よりも径方向外側位置に配置されている。そして、各切り起こし片61に対応する切欠き部60の一部は、円周方向で隣接するエンボス部51の間に配置されている。つまり、各切欠き部60の一部(底壁15の径方向内側に延びる領域)は、ボルト挿通孔50やエンボス部51の形成位置と同一円周上位置まで延びている。
【0028】
切り起こし片61は、正確には、切欠き部60の一辺60aから径方向内側に僅かに離間した位置において軸方向に切り起こされている。つまり、切り起こし片61は、切欠き部60の一辺60aから径方向内側に延びる短尺な接続部領域61aと、接続部領域61aの先端部から軸方向外側に屈曲して延びる長尺な支持部領域61bと、を備えている。複数の切り起こし片61の支持部領域61bには、クラッチ機構30のアウタレース31が嵌合可能とされている。具体的には、クラッチ機構30のアウタレース31は、その外周面が複数の切り起こし片61の支持部領域61bの径方向内側面に嵌合される。
複数の切り起こし片61は、ヨーク11におけるクラッチ係止部を構成している。また、各切欠き部60は、クラッチ機構30(アウタレース31)の外周面よりも径方向外側となる位置まで拡がっている。
【0029】
クラッチ機構30のアウタレース31は、複数の切り起こし片61に嵌合された状態において、図1に示すように、ボルト32によってヨーク11の底壁15に締結固定される。こうして、クラッチ機構30のアウタレース31がヨーク11の底壁15に取り付けられると、各切欠き部60の一部がアウタレース31よりも径方向外側領域において、ヨーク11の内外を連通する連通口70a,70bとして残る。本実施形態の場合、連通口70a,70bは、図4図5に示すように、各切り起こし片61の周方向両側に形成されることになる。連通口70は、磁石回転子3の回転時には、ヨーク11の内側の熱をヨークの外側に逃がすことができる。
【0030】
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態の磁石回転子3は、ヨーク11の底壁15から切り起こされた複数の切り起こし片61によってクラッチ係止部が構成されている。このため、クラッチ係止部をヨーク11の底壁15から打ち出しによって形成する場合に比較して、ヨーク11の底壁15の肉厚を厚くすることなく複数の切り起こし片61によってクラッチ機構30(アウタレース31)を確実に係止することができる。
したがって、本実施形態の磁石回転子3を採用した場合には、ヨーク11の小型、軽量化とクラッチ機構30の確実な係止を両立させることができる。
【0031】
よって、本実施形態の磁石回転子3を採用することにより、動力エネルギーの損失低減を図ることができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」に貢献することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態の磁石回転子3は、各切り起こし片61の先端部側が、切り起こし基部よりもヨーク11の底壁15の径方向内側領域から切り起こされているため、ヨーク11の底壁15の外径を大型化することなく、クラッチ機構30を底壁15のより径方向外側位置で切り起こし片61によって係止することができる。したがって、本構成を採用した場合には、ヨーク11の底壁15の外径を拡大することなく、外径の大きいクラッチ機構30(アウタレース31)を確実に支持できることから、ヨーク11の小型、軽量化により寄与することができる。
【0033】
また、本実施形態の磁石回転子3は、ヨーク11の底壁15に形成される切欠き部60が径方向内側に向かって周方向幅が次第に狭まる形状とされている。このため、切り起こし片61よりも底壁15の径方向内側領域に配置されるボルト挿通孔50やエンボス部51の配置スペースを圧迫することが無いうえ、底壁15の径方向内側領域の剛性を高く維持することができる。
【0034】
さらに、本実施形態の磁石回転子3は、切欠き部60が、クラッチ機構30(アウタレース31)の外周面よりも径方向外側となる位置まで拡がっている。このため、クラッチ機構30(アウタレース31)が複数の切り起こし片61に係止された状態において、切欠き部60の一部がヨーク11の内部空間を外部に連通させる連通口70a,70bとして機能するようになる。したがって、本構成を採用した場合には、切欠き部60によって構成される底壁15の連通口70a,70bを通してヨーク11内の熱を外部に排出することができる。
【0035】
特に、本構成の場合、切り起こし片61が、底壁15の連通口70a,70bと周方向で隣接した位置でヨーク11とともに回転するため、ヨーク11の回転時に切り起こし片61がヨーク11内の空気を積極的に変動させ、その空気とともにヨーク11内の熱を外部に効率良く逃がすことができる。
【0036】
また、本実施形態の磁石回転子3は、各切り起こし片61が切欠き部60の周方向の中央領域に配置されている。このため、複数の切り起こし片61によってヨーク11の底壁15にクラッチ機構30が取り付けられた状態において、切り起こし片61の周方向両側に連通口70a,70bが形成されることになる。このため、回転軸2の増速回転時や減速回転時に、連通口70a,70bを通して効率良くヨーク11内の熱を外部に逃がすことができる。
【0037】
<他の実施形態1>
図6は、本実施形態の磁石回転子のヨーク111の図5に対応する拡大断面図である。
本実施形態のヨーク111は、基本的な構成は上記の実施形態とほぼ同様であるが、切欠き部60に対する切り起こし片61の相対位置が上記の実施形態と異なっている。上記の実施形態では、切り起こし片61が切欠き部60の径方向外側の辺60aの周方向の中央領域に配置されていたが、本実施形態では、切り起こし片61が切欠き部60の径方向外側の辺60aの周方向の片側に偏った位置に突設されている。切り起こし片61の切り起こし方向は、上記の実施形態と同様に、切欠き部60の径方向外側の辺60aに近接した位置を切り起こし基部とし、切り起こし片61の径方向内側に延びる先端部側を軸方向に屈曲させている。
【0038】
本実施形態の磁石回転子は、上記実施形態とほぼ同様の基本構成とされているため、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。ただし、ヨーク111の底壁15に形成する切り起こし片61が切欠き部60の周方向の片側に偏った位置に配置されているため、ヨーク111の底壁15にクラッチ機構を取り付けた状態において、切り起こし片61の周方向の片側に大きく開口する連通口170を確保することができる。
したがって、本構成を採用した場合には、ヨーク111の回転方向を考慮して切り起こし片61の周方向の片側に開口面積の大きい連通口170を確保することにより、ヨーク111の回転時に、ヨーク111内の熱を外部に効率良く逃がすことができる。
【0039】
<他の実施形態2>
図7は、本実施形態の磁石回転子のヨーク211の図5に対応する拡大断面図である。
本実施形態のヨーク211は、他の実施形態1と同様に、切り起こし片261が切欠き部60の周方向の片側に偏った位置に配置されている。ただし、本実施形態の切り起こし片261は、切欠き部60の径方向に延びる一方の辺60bにおいて切り起こされている。
【0040】
具体的には、切り起こし片261の接続部領域261aは、辺60bの径方向外側領域から周方向に延び、支持部領域261bは、接続部領域261aの先端部において、軸方向に切り起こされている。本実施形態では、切り起こされた支持部領域261bの径方向内側の側面がクラッチ機構30(アウタレース31)の外周面に当接する。本実施形態の場合も、複数の切り起こし片261にクラッチ機構30(アウタレース31)が取り付けられると、切り起こし片261の周方向の片側に大きく開口する連通口270が確保される。
【0041】
本実施形態の磁石回転子は、他の実施形態1とほぼ同様の効果を得ることができる。ただし、本実施形態の磁石回転子は、切り起こし片261が切欠き部60の径方向に延びる辺60bから切り起こされているため、切り起こし片261のうちのヨーク11の回転方向に対向する部分の面積を大きく確保することができる。このため、ヨーク111の回転時に、切り起こし片261によって周囲の空気をより効率良く撹拌することができる。
したがって、本構成を採用した場合には、ヨーク111の回転時に、ヨーク111内の熱をさらに効率良く外部に逃がすことができる。
さらに、本実施形態の磁石回転子は、切り起こし片261の接続部領域261aと支持部領域261bの間の屈曲稜線が底壁15の径方向に沿うように延びている。このため、クラッチ機構を切り起こし片261の充分に剛性の高い方向で受け止めることができる。
【0042】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の各実施形態では、ヨーク11(111,211)の底壁15に形成される切欠き部60が、底壁15の中心側に向かって窄まる略三角形状に形成されているが、切欠き部60の形状はこれに限定されない。切欠き部60の形状は、四角形状等の三角形状以外の形状であっても良い。
【符号の説明】
【0043】
1…発電機、2…回転軸、3…磁石回転子、4…固定子、10…ボス、11…ヨーク、12…永久磁石、13…貫通孔、14…フランジ部、15…底壁、16…ナット、17…周壁、23…窪み部、24…嵌合孔、30…クラッチ機構、31…アウタレース、32…ボルト、33…転動体、34…インナレース、34a…円筒部、34b…回転板、34c…歯面、40…ステータコア、40A…ティース、41…インシュレータ、42…コイル、50…ボルト挿通孔、51…エンボス部、60…切欠き部60、60a…一辺、60b,60c…残余の辺、61…切り起こし片(クラッチ係止部)、61a,261a…接続部領域、61b,261b…支持部領域、70a,70b,170,270…連通口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7