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特開2023-178632集電シート用樹脂フィルム、集電シート、集電シート付き太陽電池素子、および太陽電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178632
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】集電シート用樹脂フィルム、集電シート、集電シート付き太陽電池素子、および太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/05 20140101AFI20231211BHJP
   B32B 7/028 20190101ALI20231211BHJP
【FI】
H01L31/04 570
B32B7/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091429
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕司
(72)【発明者】
【氏名】在原 慶太
(72)【発明者】
【氏名】中原 敦
(72)【発明者】
【氏名】高山 泰樹
【テーマコード(参考)】
4F100
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
4F100AK04C
4F100AK42A
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB00B
4F100EJ64A
4F100GB41
4F100JA03
4F100JA04C
4F100JA06C
4F100YY00B
4F100YY00C
5F151AA02
5F151AA03
5F151AA05
5F151AA07
5F151AA11
5F151EA19
5F151JA03
5F151JA04
5F151JA05
5F251AA02
5F251AA03
5F251AA05
5F251AA07
5F251AA11
5F251EA19
5F251JA03
5F251JA04
5F251JA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ワイヤに対する密着性およびワイヤの埋め込み性に優れ、熱寸法安定性にも優れる集電シート用樹脂フィルム、ならびに、これを用いた集電シート、集電シート付き太陽電池素子および太陽電池を提供する。
【解決手段】太陽電池の集電シートに用いられる集電シート用樹脂フィルムであって、基材層と、接着層と、ポリエチレン樹脂層と、をこの順に有し、上記基材層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有し、上記ポリエチレン樹脂層の190℃におけるメルトマスフローレートが、4g/10分以上8g/10分以下であり、150℃で10分間保持したときの熱収縮率が、2.0%以下である、集電シート用樹脂フィルムを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池の集電シートに用いられる集電シート用樹脂フィルムであって、
基材層と、接着層と、ポリエチレン樹脂層と、をこの順に有し、
前記基材層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有し、
前記ポリエチレン樹脂層の190℃におけるメルトマスフローレートが、4g/10分以上8g/10分以下であり、
150℃で10分間保持したときの熱収縮率が、2.0%以下である、集電シート用樹脂フィルム。
【請求項2】
前記ポリエチレン樹脂層の融点が、100℃以上120℃以下である、請求項1に記載の集電シート用樹脂フィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレン樹脂層の厚さが、前記基材層の厚さよりも厚い、請求項1または請求項2に記載の集電シート用樹脂フィルム。
【請求項4】
前記ポリエチレン樹脂層の厚さが、40μm以上100μm以下である、請求項1または請求項2に記載の集電シート用樹脂フィルム。
【請求項5】
前記基材層の厚さが、12μm以上38μm以下である、請求項1または請求項2に記載の集電シート用樹脂フィルム。
【請求項6】
前記接着層の厚さが、0.1μm以上10μm以下である、請求項1または請求項2に記載の集電シート用樹脂フィルム。
【請求項7】
前記基材層が、前記接着層とは反対の面に、表面処理部を有する、請求項1または請求項2に記載の集電シート用樹脂フィルム。
【請求項8】
太陽電池に用いられる集電シートであって、
請求項1または請求項2に記載の集電シート用樹脂フィルムと、
前記集電シート用樹脂フィルムの前記ポリエチレン樹脂層の面側に配置されたワイヤと、
を有する、集電シート。
【請求項9】
請求項8に記載の集電シートと、
前記集電シートの前記ポリエチレン樹脂層の面側に配置され、前記ワイヤと電気的に接続された太陽電池素子と、
を有する、集電シート付き太陽電池素子。
【請求項10】
透明基板と、第1封止材と、請求項9に記載の集電シート付き太陽電池素子と、第2封止材と、対向基板と、をこの順に有する、太陽電池。
【請求項11】
前記太陽電池は、複数の前記集電シート付き太陽電池素子を有する太陽電池モジュールである、請求項10に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集電シート用フィルム、集電シート、集電シート付き太陽電池素子、および太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素が原因とされる地球温暖化が世界的に問題となっている。この問題に対し、環境にやさしく、クリーンなエネルギー源として、太陽光エネルギーを利用した太陽電池が注目され、積極的な研究開発が進められている。
【0003】
太陽電池は、例えば、複数の太陽電池素子を接続したモジュールの形態で用いられる。太陽電池素子同士を接続する方法としては、例えば、バスパーと称される幅2mm~5mm程度の帯状の導線を用いて、太陽電池素子同士を接続する方法が従来から用いられている。バスパーを用いた接続方法の場合、太陽電池モジュールにおいて、バスパーが配置された領域では太陽光が物理的に遮断されるため、太陽電子素子への太陽光の入射量が減少してしまうという課題がある。
【0004】
これに対し、近年、例えば、直径150μm以上300μm以下程度のワイヤ(細線状の導線)を用いて太陽電池素子同士を接続する、マルチワイヤ接続と称される方法が採用され始めている。マルチワイヤ接続において、ワイヤを太陽電池素子に固定する方法としては、例えば、熱溶着性を有する樹脂フィルムにワイヤを埋め込んで集電シートとし、上記集電シートを太陽電池素子に熱圧着することにより固定する方法が挙げられる(特許文献1および2)。集電シートに用いられる樹脂フィルムは、コネクティングフィルムとも称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2004/021455号
【特許文献2】国際公開第2017/076735号
【特許文献3】特開2020-174060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マルチワイヤ接続において、熱溶着性を有する樹脂フィルムにワイヤを埋め込んで集電シートとする際には、集電シートを太陽電池素子に熱圧着する前に、ワイヤが樹脂フィルムからはずれないように、ワイヤが樹脂フィルムに安定的に保持される必要がある。また、集電シートを太陽電池素子に熱圧着する際には、樹脂フィルムがワイヤの周囲に回り込み、太陽電池素子に対してワイヤを固定する必要がある。そのため、マルチワイヤ接続に用いられる集電シートの樹脂フィルムには、ワイヤに対する密着性およびワイヤの埋め込み性が求められる。
【0007】
例えば特許文献3には、基材層とワイヤ保持層とを有する太陽電池モジュール用の集電ワイヤ固定フィルムにおいて、ワイヤ保持層の複素粘度を特定範囲に最適化することによって、ワイヤ全体がワイヤ保持層に埋没してしまうことによる通電不良を回避しながら、尚且つ、適度にワイヤ保持力を発揮できる技術が開示されている。
【0008】
しかしながら、ワイヤの材料によっては、樹脂フィルムのワイヤに対する密着性が十分ではないことがあり、未だ改良の余地がある。
【0009】
また、マルチワイヤ接続においては、集電シート付き太陽電池素子と他の構成部材とを熱圧着により一体化して太陽電池モジュールとする際に、樹脂フィルムが熱収縮し、太陽電池素子に対してワイヤの位置がずれてしまうという問題がある。ワイヤの位置ずれが生じると、太陽電池素子とワイヤとの導通が不十分になり、信頼性が低下する。
【0010】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ワイヤに対する密着性およびワイヤの埋め込み性に優れ、熱寸法安定性にも優れる集電シート用樹脂フィルム、ならびに、これを用いた集電シート、集電シート付き太陽電池素子および太陽電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一実施形態は、太陽電池の集電シートに用いられる集電シート用樹脂フィルムであって、基材層と、接着層と、ポリエチレン樹脂層と、をこの順に有し、上記基材層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有し、上記ポリエチレン樹脂層の190℃におけるメルトマスフローレート(MFR)が、4g/10分以上8g/10分以下であり、150℃で10分間保持したときの熱収縮率が、2.0%以下である、集電シート用樹脂フィルムを提供する。
【0012】
本開示の他の実施形態は、太陽電池に用いられる集電シートであって、上述の集電シート用樹脂フィルムと、上記集電シート用樹脂フィルムの上記ポリエチレン樹脂層の面側に配置されたワイヤとを有する、集電シートを提供する。
【0013】
本開示の他の実施形態は、上述の集電シートと、上記集電シートの上記ポリエチレン樹脂層の面側に配置され、上記ワイヤと電気的に接続された太陽電池素子とを有する、集電シート付き太陽電池素子を提供する。
【0014】
本開示の他の実施形態は、透明基板と、第1封止材と、上述の集電シート付き太陽電池素子と、第2封止材と、対向基板と、をこの順に有する、太陽電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本開示における集電シート用樹脂フィルムは、ワイヤに対する密着性およびワイヤの埋め込み性に優れ、熱寸法安定性にも優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示における集電シート用樹脂フィルムを例示する概略断面図である。
図2】本開示における集電シートを例示する概略平面図および断面図である。
図3】本開示における集電シート付き太陽電池素子を例示する概略斜視図および断面図である。
図4】本開示における集電シートを例示する概略断面図である。
図5】本開示における集電シート付き太陽電池素子を例示する概略断面図である。
図6】本開示における太陽電池を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0018】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」あるいは「面側に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0019】
また、本明細書において、「フィルム」、「シート」、「基板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。
【0020】
以下、本開示における集電シート用樹脂フィルム、集電シート、集電シート付き太陽電池素子、および太陽電池について、詳細に説明する。
【0021】
A.集電シート用樹脂フィルム
本開示における集電シート用樹脂フィルムは、太陽電池の集電シートに用いられる集電シート用樹脂フィルムであって、基材層と、接着層と、ポリエチレン樹脂層と、をこの順に有し、上記基材層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有し、上記ポリエチレン樹脂層の190℃におけるメルトマスフローレート(MFR)が、4g/10分以上8g/10分以下であり、150℃で10分間保持したときの熱収縮率が、2.0%以下である。
【0022】
本開示における集電シート用樹脂フィルムについて図を用いて説明する。図1は、本開示における集電シート用樹脂フィルムを例示する概略断面図である。図1に示すように、集電シート用樹脂フィルム10は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有する基材層1と、接着層2と、ポリエチレン樹脂層3とをこの順に有する。ポリエチレン樹脂層3のメルトマスフローレート(MFR)は、所定の範囲内である。また、集電シート用樹脂フィルム10を150℃で10分間保持したときの熱収縮率は、所定の値以下である。
【0023】
図2(a)、(b)は、本開示における集電シート用樹脂フィルムを有する集電シートを例示する概略平面図および断面図である。図2(b)は、図2(a)のA-A線断面図である。図2(a)、(b)に示すように、集電シート20は、集電シート用樹脂フィルム10と、集電シート用樹脂フィルム10のポリエチレン樹脂層3の面側に配置されたワイヤ11とを有する。このように、集電シート用樹脂フィルム10は、ワイヤ11を支持するために用いられる。なお、図2(a)は、集電シート用樹脂フィルムのポリエチレン樹脂層側から集電シートを見た概略平面図を示している。
【0024】
図3(a)~(c)は、本開示における集電シート用樹脂フィルムを有する集電シートを備える集電シート付き太陽電池素子を例示する概略斜視図および断面図である。図3(b)は、図3(a)のA-A線断面図であり、図3(c)は、図3(a)のB-B線断面図である。図3(a)~(c)に示すように、集電シート付き太陽電池素子30は、集電シート10と、集電シート10のポリエチレン樹脂層3の面側に配置され、ワイヤ11と電気的に接続された太陽電池素子31とを有する。このように、集電シート用樹脂フィルム10は、太陽電池素子31に電気的に接続されたワイヤ11を固定するために用いられる。なお、図3(a)~(c)は、集電シート20が2枚の集電シート用樹脂フィルム10を有し、各集電シート用樹脂フィルム10に太陽電池素子31が配置されている例を示している。
【0025】
本開示において、基材層はポリエチレンテレフタレート樹脂を含有する。ここで、基材層に含有されるポリエチレンテレフタレート樹脂は、融点が260℃程度であり、耐熱性が高い。また、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、フィルム状に成形したときに、良好な剛性が得られる。そのため、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有する基材層により、集電シート用樹脂フィルムに剛性を付与できる。よって、集電シート用樹脂フィルムを有する集電シートを用いて集電シート付き太陽電池素子を製造する場合、熱圧着時に、集電シート用樹脂フィルムによって、ワイヤを太陽電池素子に十分に押し当てることができる。また、本開示においては、ポリエチレン樹脂層のMFRが所定の範囲内であることにより、ポリエチレン樹脂層の、ワイヤに対する密着性およびワイヤの埋め込み性を向上させることができる。したがって、集電シート用樹脂フィルムを有する集電シートにおいては、集電シート用樹脂フィルムによって、太陽電子素子に対してワイヤを良好に固定できる。
【0026】
また、集電シート付き太陽電池素子を太陽電池に用いた場合には、集電シート用樹脂フィルムによって、太陽電子素子に対してワイヤを良好に固定できるため、ワイヤの密着不良による発電効率の低下を抑制できる。
【0027】
さらに、太陽電池においては、ポリエチレン樹脂層のMFRが所定の範囲内であることにより、ポリエチレン樹脂層の、太陽電池素子に対する密着性も良好にできる。
【0028】
また、本開示においては、上述のように、基材層がポリエチレンテレフタレート樹脂を含有することにより、集電シート用樹脂フィルムは剛性を有することができる。そのため、集電シート用樹脂フィルムの熱収縮を抑えることができる。また、上述のように、ポリエチレン樹脂層のMFRが所定の範囲内であることにより、ポリエチレン樹脂層の、ワイヤに対する密着性、ワイヤの埋め込み性、および太陽電池素子に対する密着性を高めることができる。そのため、ポリエチレン樹脂層の厚さが比較的薄い場合であっても、ワイヤに対する密着性、ワイヤの埋め込み性、および太陽電池素子に対する密着性を確保できる。ポリエチレン樹脂層の厚さが薄いと、集電シート用樹脂フィルムの熱収縮は小さくなる。そのため、ポリエチレン樹脂層のMFRが所定の範囲内であることは、集電シート用樹脂フィルムの熱収縮の抑制にも寄与できる。さらに、本開示における集電シート用樹脂フィルムは、所定の熱収縮率を有するため、熱寸法安定性を向上させることができる。よって、集電シート用樹脂フィルムを有する集電シートを用いて集電シート付き太陽電池素子を製造する場合に、加熱工程時の、太陽電池素子に対するワイヤの位置ずれを抑制できる。また、集電シート付き太陽電池素子を用いて太陽電池を製造する場合に、加熱工程時の、太陽電池素子に対するワイヤの位置ずれを抑制できる。さらに、太陽電池の使用環境において、太陽電池が高温に達した場合であっても、太陽電池素子に対するワイヤの位置ずれを抑制できる。よって、太陽電池の信頼性を向上させることができる。
【0029】
また、本開示における集電シート用樹脂フィルムは、熱寸法安定性に優れるので、集電シート用樹脂フィルムを有する集電シートを用いて集電シート付き太陽電池素子を製造する場合、および、集電シート付き太陽電池素子を用いて太陽電池を製造する場合に、加熱工程時の集電シート用樹脂フィルムの熱収縮を抑え、カール変形を抑制できる。
【0030】
以下、本開示における集電シート用樹脂フィルムの各構成について説明する。
【0031】
I.集電シート用樹脂フィルムの構成
本開示における集電シート用樹脂フィルムは、基材層と、接着層と、ポリエチレン樹脂層とをこの順に有する。
【0032】
1.ポリエチレン樹脂層
本開示におけるポリエチレン樹脂層は、集電シート用樹脂フィルムを集電シートに用いた場合に、ワイヤを支持する部材である。
【0033】
(1)ポリエチレン樹脂層の特性
ポリエチレン樹脂層の190℃におけるメルトマスフローレート(MFR)は、4g/10分以上、8g/10分以下であることが好ましく、6g/10分以上、8g/10分以下であることがより好ましい。ポリエチレン樹脂層のMFRが上記範囲内であることにより、ワイヤに対する密着性およびワイヤの埋め込み性を向上させることができる。特に、ポリエチレン樹脂層のMFRが6g/10分以上であることにより、ワイヤの材料にかかわらず、ワイヤに対する密着性およびワイヤの埋め込み性に優れるポリエチレン樹脂層とすることができる。
【0034】
なお、ポリエチレン樹脂層のMFRとは、ポリエチレン樹脂層を構成するポリエチレン樹脂組成物のMFRをいう。ここで、ポリエチレン樹脂層のメルトマスフローレート(MFR)は、JIS K7210-1に準拠して測定できる。測定条件は、温度190℃、荷重2.16kgとする。
【0035】
ポリエチレン樹脂層のMFRは、例えば、ポリエチレン樹脂層に含有されるポリエチレン樹脂の分子量により調整できる。
【0036】
また、ポリエチレン樹脂層の融点は、所望の熱溶着性を示すことができれば特に限定されない。ポリエチレン樹脂層の融点は、例えば、100℃以上、120℃以下であることが好ましく、105℃以上、110℃以下であることがより好ましい。ポリエチレン樹脂層の融点が高すぎると、集電シートを太陽電池素子に圧着する際の加熱温度を高くする必要があることから、製造コストが増大したり、太陽電池素子が劣化したりする可能性がある。一方、ポリエチレン樹脂層の融点が低すぎると、太陽電池の使用環境において、ポリエチレン樹脂層が融解し、ワイヤを固定することが困難となる可能性がある。
【0037】
ここで、ポリエチレン樹脂層の融点は、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠し、示差走査熱量分析(DSC)により行うことができる。なお、その際、融点ピークが2つ以上存在する場合は、高い温度の方を融点とすることができる。
【0038】
(2)ポリエチレン樹脂層の材料
(a)ポリエチレン樹脂
ポリエチレン樹脂層は、ポリエチレン樹脂を含有する。ポリエチレン樹脂は、上述のMFRを満たすポリエチレン樹脂層を得ることが可能であれば特に限定されない。ポリエチレン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等が挙げられる。ポリエチレン樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、柔軟性や加工性が良いことから、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
【0039】
ポリエチレン樹脂の密度は、特に限定されず、例えば、0.890g/cm以上0.930g/cm以下であることが好ましく、0.900g/cm以上0.925g/cm以下であることがより好ましい。ポリエチレン樹脂の密度が上記範囲内であることにより、ポリエチレン樹脂層の柔軟性や加工性を高め、ワイヤに対する密着性やワイヤの埋め込み性を高めることができる。
【0040】
ここで、ポリエチレン樹脂の密度は、例えば、JIS K7112に準拠したピクノメーター法により測定できる。
【0041】
ポリエチレン樹脂層は、樹脂成分として、ポリエチレン樹脂のみを含有していてもよく、ポリエチレン樹脂に加えて、ポリエチレン樹脂以外の樹脂をさらに含有していてもよい。後者の場合、ポリエチレン樹脂層は、ポリエチレン樹脂を主成分として含有することが好ましい。なお、ポリエチレン樹脂層がポリエチレン樹脂を主成分として含有するとは、全樹脂成分の中でもポリエチレン樹脂の割合が最も多いことをいう。
【0042】
ポリエチレン樹脂層中の全樹脂成分に対するポリエチレン樹脂の割合は、例えば、50質量%以上であり、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよい。また、上記ポリエチレン樹脂の割合は、例えば、99質量%以下であり、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよい。なお、上記ポリエチレン樹脂の割合は、100質量%であってもよい。
【0043】
(b)接着性向上剤
本開示におけるポリエチレン樹脂層は、接着性向上剤を含有していてもよい。接着性向上剤は、ワイヤに対する密着性や太陽電池素子に対する密着性を向上させる成分である。
【0044】
接着性向上剤としては、例えば、シラン変性樹脂、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0045】
(i)シラン変性樹脂
シラン変性樹脂としては、例えば、シラン変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。シラン変性ポリオレフィン樹脂は、α-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体である。共重合体としては、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、およびグラフト共重合体のいずれであってもよい。中でも、共重合体は、グラフト共重合体であることが好ましく、ポリオレフィンを主鎖とし、エチレン性不飽和シラン化合物が側鎖として重合したグラフト共重合体であることが好ましい。このようなグラフト共重合体は、密着性に寄与するシラノール基の自由度が高くなるため、ワイヤに対する密着性および太陽電池素子に対する密着性を一層向上させることができる。
【0046】
シラン変性ポリオレフィン樹脂を構成するα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等が挙げられる。α-オレフィンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリエチレンが好ましい。すなわち、シラン変性ポリオレフィン樹脂は、シラン変性ポリエチレン樹脂であることが好ましい。シラン変性ポリエチレン樹脂は、ポリエチレン樹脂層に含まれるポリエチレン樹脂との相溶性が良いからである。
【0047】
また、シラン変性ポリエチレン樹脂は、主鎖として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にエチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合させた樹脂であることが好ましい。
【0048】
上記エチレン性不飽和シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリカルボキシシランを挙げることができる。エチレン性不飽和シラン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
シラン変性ポリオレフィン樹脂は、例えば、特開2003-46105号公報に記載されている製造方法により得ることができる。
【0050】
シラン変性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
ポリエチレン樹脂層中のシラン変性樹脂の含有量は、特に限定されず、例えば、25質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。
【0052】
(ii)シランカップリング剤
シランカップリング剤としては、一般的な太陽電池の封止材に使用されているシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ポリエチレン樹脂層中のシランカップリング剤の含有量は、特に限定されず、例えば、5質量%以下であってもよい。
【0054】
(c)他の成分
ポリエチレン樹脂層は、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等の添加剤を含有してもよい。
【0055】
ここで、集電シート用樹脂フィルムの各層に含有される各樹脂成分の割合は、例えば、示査走査熱量測定(DSC)、赤外分光法(IR)、核磁気共鳴(NMR)で検出されるピーク比等から分析できる。
【0056】
(3)その他
ポリエチレン樹脂層の厚さは、集電シート用樹脂フィルムを集電シートに用いた場合に、ワイヤを支持できれば特に限定されず、ワイヤの太さに応じて適宜選択できる。ポリエチレン樹脂層の厚さは、後述の基材層の厚さよりも厚いことが好ましい。これにより、ワイヤに対する密着性およびワイヤの埋め込み性を高めることができる。具体的には、ポリエチレン樹脂層の厚さは、40μm以上100μm以下であることが好ましく、45μm以上80μm以下であることがより好ましい。ポリエチレン樹脂層の厚さが上記範囲内であることにより、ワイヤに対する密着性およびワイヤの埋め込み性を高めることができる。
【0057】
ポリエチレン樹脂層の接着層とは反対の面は、表面処理が施されていてもよい。すなわち、ポリエチレン樹脂層は、接着層とは反対の面に表面処理部を有していてもよい。これにより、ワイヤに対する密着性および太陽電池素子に対する密着性を向上させることができる。
【0058】
表面処理は、ワイヤに対する密着性や太陽電池素子に対する密着性を高めることが可能な表面処理であれば特に限定されず、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、電子線処理、フレーム処理等が挙げられる。中でも、加工コストやポリエチレン樹脂層へのダメージ軽減の面から、コロナ処理が好ましい。
【0059】
2.基材層
本開示における基材層は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有する。基材層は、集電シート用樹脂フィルムに剛性を付与する部材である。
【0060】
基材層は、必要に応じて、各種添加剤を含有することができる。
【0061】
基材層の厚さは、特に限定されず、集電シート用樹脂フィルムが用いられる太陽電池の大きさ、用途に応じて適宜選択できる。上述したように、基材層の厚さは、ポリエチレン樹脂層の厚さより薄いことが好ましい。具体的には、基材層の厚さは、12μm以上38μm以下であることが好ましく、12μm以上25μm以下であることがより好ましい。基材層の厚さが薄すぎると、十分な剛性が得られない可能性がある。また、基材層の厚さが厚すぎると、剛性が高くなりすぎて、集電シート用樹脂フィルムのワイヤへの追従性が低下する可能性がある。
【0062】
基材層は、アニール処理が施されていることが好ましい。熱寸法安定性を向上させることができる。これにより、後述の集電シート用樹脂フィルムの熱収縮率を所定の範囲になるように調整しやすくなる。よって、集電シート用樹脂フィルムを有する集電シートを用いて集電シート付き太陽電池を製造する場合、太陽電池素子に対しワイヤを固定するための加熱工程時の、太陽電池素子に対するワイヤの位置ずれを抑制できる。また、集電シート付き太陽電池を用いて太陽電池を製造する場合、各部材を一体化するための加熱工程時の、太陽電池素子に対するワイヤの位置ずれを抑制できる。さらに、太陽電池の使用環境において、太陽電池が高温に達した場合であっても、太陽電池素子に対するワイヤの位置ずれを抑制できる。その結果、太陽電池の信頼性を向上させることができる。
【0063】
基材層のアニール処理の温度は、例えば、120℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0064】
3.接着層
本開示における接着層は、上記の基材層とポリエチレン樹脂層との間に配置され、基材層とポリエチレン樹脂層とを接着するための部材である。
【0065】
接着層に用いられる接着剤としては、透明性を有し、かつ、上記の基材層とポリエチレン樹脂層とを接着させることが可能な接着剤であれば特に限定されず、一般的なフィルムの貼り合わせに用いられる接着剤を挙げることができる。接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリカーボネート系接着剤、フェノール系接着剤等が挙げられる。また、接着剤は、例えば、ドライラミネート用接着剤であってもよく、押し出しラミネート用アンカーコート剤であってもよい。
【0066】
また、接着剤は、耐湿熱性を有することが好ましい。加水分解による接着強度の低下を抑制できる。例えば、接着剤を構成する樹脂成分は、エステル結合を有さないことが好ましい。具体的には、ウレタン系接着剤の場合、主剤がポリカーボネートポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0067】
接着層の厚さは、透明性を有し、基材層とポリエチレン樹脂層とを接着させることが可能であれば特に限定されず、例えば、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0068】
4.その他
本開示における集電シート用樹脂フィルムの厚さは、特に限定されず、集電シートに用いられるワイヤの太さ等に応じて適宜選択できる。集電シート用樹脂フィルムの厚さは、例えば、50μm以上300μm以下であってもよい。集電シート用樹脂フィルムの厚さが薄すぎると、太陽電池素子に対しワイヤを固定するのが困難になる可能性がある。一方、集電シート用樹脂フィルムの厚さが厚すぎると、透明性が低下する可能性がある。
【0069】
II.集電シート用樹脂フィルムの物性
1.熱収縮率
本開示における集電シート用樹脂フィルムにおいては、150℃で10分間保持したときの熱収縮率が、2.0%以下であり、好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1.0%以下である。集電シート用樹脂フィルムの熱収縮率が上記範囲であることにより、熱寸法安定性を向上させることができる。これにより、集電シート用樹脂フィルムを有する集電シートを用いて集電シート付き太陽電池を製造する場合、太陽電池素子に対しワイヤを固定するための加熱工程時の、太陽電池素子に対するワイヤの位置ずれを抑制できる。また、集電シート付き太陽電池を用いて太陽電池を製造する場合、各部材を一体化するための加熱工程時の、太陽電池素子に対するワイヤの位置ずれを抑制できる。さらに、太陽電池の使用環境において、太陽電池が高温に達した場合であっても、太陽電池素子に対するワイヤの位置ずれを抑制できる。その結果、太陽電池の信頼性を向上させることができる。
【0070】
特に、後述するように、例えば、ワイヤが、Bi-Sn系のはんだやSn-In-Ag-Bi系のはんだで被覆されている場合には、これらのはんだの融点が比較的高いため、上記の加熱工程での加熱温度が高くなる傾向にある。そのため、上記の場合には、上記の集電シート用樹脂フィルムの熱収縮率は、小さいことがより好ましく、具体的には、1.0%以下であることがより好ましい。
【0071】
一方、上記熱収縮率の下限は、0%以上であればよい。
【0072】
ここで、上記の集電シート用樹脂フィルムの熱収縮率は、MD方向の熱収縮率およびTD方向の熱収縮率のうち、大きい熱収縮率をいう。すなわち、集電シート用樹脂フィルムにおいて、MD方向の熱収縮率およびTD方向の熱収縮率のうち、大きい熱収縮率が、上記範囲となる。
【0073】
なお、集電シート用樹脂フィルムのMD方向は、通常、集電シート用樹脂フィルムの長手方向である。また、集電シート用樹脂フィルムのTD方向は、通常、集電シート用樹脂フィルムの短手方向である。
【0074】
また、上記の集電シート用樹脂フィルムの熱収縮率は、例えば、ASTM D1204に準拠する方法により測定できる。
【0075】
集電シート用樹脂フィルムの熱収縮率を制御する手法としては、例えば、基材層の熱収縮率を調整する方法が挙げられる。基材層の熱収縮率を調整する方法としては、上述したように、例えば、基材層にアニール処理を施す方法、基材層に含有されるポリエチレンテレフタレート樹脂の結晶性を調整する方法、ポリエチレンテレフタレート樹脂をフィルム状に成形する際の成形方法や成形条件を調整する方法等が挙げられる。成形方法を調整する方法としては、例えば、成形時の応力や歪みを緩和する緩和処理を施す方法が挙げられる。また、成形条件としては、例えば、延伸倍率等が挙げられる。
【0076】
2.波長400nm以上1200nm以下における光線透過率
本開示における集電シート用樹脂フィルムの波長400nm以上1200nm以下における光線透過率は、太陽電池素子が発電可能な程度に太陽光を透過させることができる程度であれば特に限定されない。集電シート用樹脂フィルムの波長400nm以上1200nm以下における光線透過率は、例えば、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。上記光線透過率が上記範囲内であることにより、太陽電池素子の光の利用効率を高くできる。
【0077】
ここで、上記の波長400nm以上1200nm以下における光線透過率は、波長400nm以上1200nm以下における光線透過率の平均値である。波長400nm以上1200nm以下における光線透過率は、JIS K7361 1に準拠して測定できる。具体的には、波長400nm以上1200nm以下における光線透過率は、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150を用いて、測定できる。
【0078】
3.ヘイズ
本開示における集電シート用樹脂フィルムの透明性は、太陽電池素子が発電可能な程度に太陽光を透過させることができる程度であれば特に限定されない。集電シート用樹脂フィルムの透明性は、例えば、ヘイズによって評価できる。集電シート用樹脂フィルムのヘイズは、例えば、1%以上40%以下であり、5%以上30%以下であってもよく、10%以上20%以下であってもよい。
【0079】
ここで、ヘイズは、JIS K7136に準拠して測定する。ヘイズは、例えば、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150を用いて、測定できる。
【0080】
なお、集電シート用樹脂フィルムのヘイズを測定するに際しては、測定用サンプルを作製し、測定に供する。測定用サンプルは、以下の方法により作製する。まず、集電シート用樹脂フィルムを50mm×50mmにカットし、試験片を作製する。次いで、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)フィルムと試験片とETFEフィルムとをこの順に積層し、設定温度165℃、真空引き2分、プレス2.5分、圧力100kPaの条件で真空ラミネートを行う。これは、製膜段階での集電シート用樹脂フィルムの表面の微細な凹凸を排除するためである。続いて、試験片の両面からそれぞれETFEフィルムを除去し、測定用サンプルを作製する。
【0081】
III.集電シート用樹脂フィルムの製造方法
本開示における集電シート用樹脂フィルムの製造方法は、基材層と接着層とポリエチレン樹脂層とをこの順に有する集電シート用樹脂フィルムを得ることができれば特に限定されない。例えば、フィルム状の基材層およびポリエチレン樹脂層を用い、ドライラミネート法により、基材層およびポリエチレン樹脂層をドライラミネート用接着剤を介して積層する方法、フィルム状の基材層を用い、押し出しラミネート法により、基材層およびポリエチレン樹脂層を押し出しラミネート用アンカーコート剤を介して積層する方法等が挙げられる。
【0082】
フィルム状の基材層およびポリエチレン樹脂層の形成方法としては、例えば、各層を形成するための樹脂組成物を準備し、上記樹脂組成物を溶融成形する方法を挙げることができる。溶融成形法としては、公知の成形法を用いることができ、例えば、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等を挙げることができる。成形時の温度は、例えば、樹脂組成物の融点以上である。成形時の温度の上限は、樹脂組成物の種類に応じて適宜調整される。
【0083】
B.集電シート
本開示における集電シートは、太陽電池に用いられる集電シートであって、上述の集電シート用樹脂フィルムと、集電シート用樹脂フィルムのポリエチレン樹脂層の面側に配置されたワイヤと、を有する。
【0084】
図2(a)、(b)は、本開示における集電シートを例示する概略平面図および断面図であり、図2(b)は図2(a)のA-A線断面図である。図2(a)、(b)に示すように、集電シート20は、集電シート用樹脂フィルム10と、集電シート用樹脂フィルム10のポリエチレン樹脂層3の面側に配置されたワイヤ11とを有する。なお、図2(a)は、集電シート用樹脂フィルムのポリエチレン樹脂層側から集電シートを見た概略平面図を示している。
【0085】
本開示における集電シートにおいては、上述の集電シート用樹脂フィルムを有することにより、集電シート用樹脂フィルムによって、太陽電池素子に対してワイヤを良好に固定できる。また、集電シート用樹脂フィルムによって、熱によるワイヤの位置ずれを抑制できる。よって、集電シートを太陽電池に用いた場合には、発電効率を良くし、信頼性を向上させることができる。
【0086】
I.集電シートの構成
本開示における集電シートは、集電シート用樹脂フィルムと、ワイヤと、を有する。
【0087】
1.集電シート用樹脂フィルム
集電シート用樹脂フィルムは、ワイヤを支持する部材である。また、集電シート用樹脂フィルムは、太陽電池素子に対しワイヤを固定する部材である。
【0088】
集電シート用樹脂フィルムについては、上述した「A.集電シート用樹脂フィルム」で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0089】
後述するように、集電シートが複数枚の集電シート用樹脂フィルムを有する場合は、少なくとも1枚の集電シート用樹脂フィルムが、上述の集電シート用樹脂フィルムであればよい。この場合、集電シートは、集電シート用樹脂フィルムとして、上述の集電シート用樹脂フィルム以外の他の集電シート用樹脂フィルムを有していてもよい。中でも、集電シートが有する複数枚の集電シート用樹脂フィルムの全てが、上述の集電シート用樹脂フィルムであることが好ましい。
【0090】
2.ワイヤ
ワイヤは、集電シート用樹脂フィルムのポリエチレン樹脂層の面側に配置される。ワイヤは、例えば、太陽電池モジュールにおいて、太陽電池素子同士を接続するために用いられる。また、ワイヤは、例えば、単セル型の太陽電池において、太陽電池素子で発生した電気を集電するために用いられる。ワイヤは、通常、太陽電池素子の電極と接続するように配置される。
【0091】
ワイヤの断面形状は、典型的には、真円形状、楕円形状等の円形状であるが、これに限定されない。
【0092】
ワイヤの太さ、すなわちワイヤの断面の大きさは、太陽電池素子への太陽光の入射を妨げない程度であれば、特に限定されず、例えば、100μm以上300μm以下である。ワイヤの断面の大きさは、例えば、断面形状が円形状である場合は直径をいい、楕円である場合は長径をいい、多角形である場合は最大の対角線の長さをいう。
【0093】
ワイヤの材料は、所望の導電性を示すことができれば特に限定されず、一般的な太陽電池素子の集電シートに用いられるワイヤの材料と同様とすることができる。ワイヤの材料としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属材料を用いることができる。また、ワイヤは、例えば、コア部と、コア部の外部側に配置された表皮部とを有していてもよい。この場合、コア部の材料としては、例えば、上記金属材料を用いることができる。また、表皮部の材料としては、はんだを用いることができる。
【0094】
はんだの融点は、例えば、70℃以上140℃以下であることが好ましく、80℃以上135℃以下であることがより好ましい。はんだの融点が高すぎると、太陽電池素子にワイヤを接続する際に、上記の基材層やポリエチレン樹脂層を劣化させる可能性がある。
【0095】
このようなはんだとしては、例えば、Sn-In系、Bi-Sn系等が挙げられる。
【0096】
例えば、Sn-In系のはんだやIn-Bi系のはんだと比較して、Bi-Sn系のはんだは、融点が高い。そのため、Bi-Sn系のはんだを用いる場合には、集電シートを用いて集電シート付き太陽電池素子を製造する場合の加熱工程での加熱温度や、集電シート付き太陽電池素子を用いて太陽電池を製造する場合の加熱工程での加熱温度が、高くなる傾向にある。よって、上記の場合には、ワイヤの密着不良やワイヤの位置ずれが生じやすい。したがって、上記の場合には、特に本開示が有効である。
【0097】
II.集電シートの構造
本開示における集電シートにおいては、1枚の集電シート用樹脂フィルムに対し、少なくとも1本以上のワイヤが配置されていればよい。集電シートの導電性を高める観点からは、1枚の集電シート用樹脂フィルムに対し、複数本のワイヤが配置されていることが好ましい。
【0098】
集電シートが複数本のワイヤを有する場合、平面視上のワイヤの配列は、特に限定されず、公知の集電シートにおけるワイヤの配列と同様とすることができる。例えば、図2(a)に示すように、ワイヤ11がライン状に配置されていてもよく、図示しないが、ワイヤが格子状に配置されていてもよい。
【0099】
また、集電シートにおいて、ワイヤは、集電シート用樹脂フィルムのポリエチレン樹脂層の面側に配置される。例えば図2(b)に示すように、ワイヤ11の一部が集電シート用樹脂フィルム10のポリエチレン樹脂層3に埋め込まれ、ワイヤ11の一部が露出するように、ワイヤ11が配置されていることが好ましい。ワイヤを良好に固定できる。
【0100】
また、例えば、図2(b)に示すように、ワイヤ11が基材層1に接触しないようにポリエチレン樹脂層3に埋め込まれていてもよく、図4に示すように、ワイヤ11が基材層1に接触するようにポリエチレン樹脂層3に埋め込まれていてもよい。ワイヤが基材層に接触するようにポリエチレン樹脂層に埋め込まれている場合には、集電シートの厚さを薄くできるので、集電シートを用いた太陽電池を薄型化することができる。
【0101】
ワイヤの埋め込みの程度、すなわち、ワイヤの露出の程度は、特に限定されず、ポリエチレン樹脂層の材料および厚さ、ワイヤの太さ、ならびに集電シートが配置される太陽電池素子の形態に応じて適宜選択できる。
【0102】
集電シートにおいては、例えば、複数枚の集電シート用樹脂フィルムに対し、同一のワイヤが配置されていてもよい。例えば、図5は、2枚の集電シート用樹脂フィルム10Aおよび集電シート用樹脂フィルム10Bに対し、同一のワイヤ11が配置されている例を示している。また、図5に示すように、隣接する集電シート用樹脂フィルム10A、10B同士は、互いにポリエチレン樹脂層3側の面が逆の面方向となるように配置されていてもよい。すなわち、一方の集電シート用樹脂フィルム10Aのポリエチレン樹脂層3側の面と、他方の集電シート用樹脂フィルム10Bの基材層1側の面とが、同一の面方向に配置されていてもよい。集電シートが上記構造を有することにより、例えば図3(a)に示すように、2つの太陽電池素子31を直列に配置することが可能な集電シート20とすることができる。なお、図示しないが、隣接する集電シート用樹脂フィルム同士は、互いにポリエチレン樹脂層側の面が同一の面方向となるように配置されていてもよい。
【0103】
III.集電シートの製造方法
本開示における集電シートの製造方法としては、集電シート用樹脂フィルムのポリエチレン樹脂層の面側にワイヤを固定できる程度に埋め込むことができる方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。一例としては、集電シート用樹脂フィルムのポリエチレン樹脂層の面側にワイヤを置き、ワイヤを加熱することで、ポリエチレン樹脂層中のポリエチレン樹脂の一部を溶融させて、ワイヤを埋め込む方法を挙げることができる。
【0104】
C.集電シート付き太陽電池素子
本開示における集電シート付き太陽電池素子は、上述の集電シートと、集電シートのポリエチレン樹脂層の面側に配置され、ワイヤと電気的に接続された太陽電池素子と、を有する。
【0105】
図3(a)~(c)は、本開示における集電シート付き太陽電池素子を例示する概略斜視図および断面図であり、図3(b)は図3(a)のA-A線断面図であり、図3(c)は図3(a)のB-B線断面図である。図3(a)~(c)に示すように、集電シート付き太陽電池素子30は、集電シート10と、集電シート10のポリエチレン樹脂層3の面側に配置され、ワイヤ11と電気的に接続された太陽電池素子31とを有する。図3(a)~(c)は、集電シート20が2枚の集電シート用樹脂フィルム10を有し、それぞれの集電シート用樹脂フィルム10に太陽電池素子31が配置されている例を示している。
【0106】
本開示における集電シート付き太陽電池素子においては、上述の集電シートを有することにより、集電シート用樹脂フィルムによって、太陽電池素子に対してワイヤを良好に固定できる。また、集電シート用樹脂フィルムによって、熱によるワイヤの位置ずれを抑制できる。よって、集電シート付き太陽電池素子を太陽電池に用いた場合には、発電効率を良くし、信頼性を向上させることができる。
【0107】
I.集電シート付き太陽電池素子の構成
本開示における集電シート付き太陽電池素子は、集電シートと、太陽電池素子と、を有する。
【0108】
1.集電シート
集電シートについては、上述した「B.集電シート」で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0109】
集電シート付き太陽電池素子が複数枚の集電シートを有する場合、少なくとも1枚の集電シートが、上述の集電シートであればよい。この場合、集電シート付き太陽電池素子は、集電シートとして、上述の集電シート以外の他の集電シートを有していてもよい。中でも、全ての集電シートが、上述の集電シートであることが好ましい。
【0110】
2.太陽電池素子
太陽電池素子は、一般的な太陽電池に用いられる素子と同様とすることができる。太陽電池素子としては、例えば、単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子、アモルファスシリコン型太陽電池素子、化合物半導体型太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、量子ドット型太陽電池素子、有機薄膜型太陽電池素子等が挙げられる。太陽電池素子の大きさ、形態等については、太陽電池の用途に応じて適宜選択できる。
【0111】
II.集電シート付き太陽電池素子の構造
集電シート付き太陽電池素子は、通常、集電シートと太陽電池素子とが積層された積層構造を有する。
【0112】
集電シート付き太陽電池素子は、太陽電池素子の集電シートの配置面を基準として見たとき、例えば図3(c)に示すように、配置面に対する垂直方向Dでの集電シート用樹脂フィルム10の厚さ、すなわち、太陽電池素子31の集電シート20が配置された面から、基材層1の太陽電池素子31とは反対側の面までの距離は、ワイヤ11が配置された領域が他の領域に対して厚い(距離が大きい)ことが好ましい。このような積層構造とすることにより、基材層1が効果的にワイヤ11を太陽電池素子31側に押圧でき、ワイヤ11の太陽電池素子31に対する接触不良等の不具合を防止できる。
【0113】
この場合、配置面に対する垂直方向Dのワイヤ11の最大距離y、すなわち、ワイヤ11の太陽電池素子31の集電シート20が配置された面からの最大距離yと、配置面に対する垂直方向Dの集電シート用樹脂フィルム10の最小距離x、すなわち、太陽電池素子31の集電シート20が配置された面から、基材層1の太陽電池素子31とは反対側の面までの距離のうちの最小距離xとの比率x/yは、例えば、2/3以下であることが好ましく、1/2以下であることがより好ましい。
【0114】
なお、上記比率x/yの下限は、ポリエチレン樹脂層の厚さおよびワイヤの太さに応じて適宜調整される値ではあるが、例えば、1/20以上である。上記比率がx/yが上記範囲内であることにより、集電シート用樹脂フィルムを用いて、太陽電池素子に対しワイヤを良好に固定できる。
【0115】
ワイヤの太さ(直径等)およびポリエチレン樹脂層の厚さを調整することにより、上記比率x/yを制御できる。また、後述するように、集電シートを太陽電池素子に熱圧着させる際の圧力を調整することによっても、上記比率x/yを制御できる。
【0116】
また、例えば図3(c)に示すように、集電シート付き太陽電池素子30の断面視において、上記最大距離yとなる位置から上記最小距離xとなる位置に向かって、太陽電池素子31の集電シート20側の面から、基材層1の太陽電池素子31とは反対側の面までの距離が徐々に小さくなっていることが好ましい。
【0117】
また、ワイヤが複数配置されている場合、例えば図3(c)に示すように、集電シート付き太陽電池素子30の断面視において、隣接するワイヤ11の間に、太陽電池素子31の集電シート20が配置された面から、基材層1の太陽電池素子31とは反対側の面までの距離のうち、最小の距離となる部分が配置されていることが好ましい。ワイヤ間に窪みができ、集電シートが凹凸形状を持つような構造になるので、基材層の太陽電池素子とは反対側の面の面積が大きくなる。これにより、集電シート付き太陽電池素子を有する太陽電池において、基材層と後述する封止材との接触面積が大きくなるので、封止材に対する密着性を向上させることができる。
【0118】
また、集電シート付き太陽電池素子においては、上述の「B.集電シート」の項にも記載したように、例えば図3(c)に示すように、ワイヤ11が基材層1に接触するようにポリエチレン樹脂層3に埋め込まれていてもよい。これにより、集電シート付き太陽電池素子の厚さを薄くできるので、太陽電池を薄型化することができる。
【0119】
集電シート付き太陽電池素子は、少なくとも1つの太陽電池素子と、太陽電池素子の正極および負極の少なくとも一方の電極と接続された集電シートとを有していればよい。例えば、1つの太陽電池素子の正極および負極のそれぞれに集電シートが配置された、単セル型の太陽電池を構成する集電シート付き太陽電池素子であってもよい。また、例えば、集電シート付き太陽電池素子は、複数の太陽電池素子を集電シートを用いて並列または直列に接続した太陽電池モジュール型の太陽電池(太陽電池モジュール)を構成する集電シート付き太陽電池素子であってもよい。
【0120】
III.その他
本開示における集電シート付き太陽電池素子の製造方法は、太陽電池素子に対し、集電シートのワイヤを電気的に接続させて固定した構造を得ることができる方法であれば特に限定されない。例えば、太陽電池素子に対し、集電シートを仮接着する仮接着工程と、仮接着された集電シートを太陽電池素子に熱圧着させることにより、太陽電池素子に対し集電シートのワイヤを電気的に接続させて固定する固定工程とを有する製造方法を挙げることができる。仮接着方法および熱圧着方法については、公知の方法を用いることができ、例えば、真空熱ラミネート法を挙げることができる。また、固定工程は、例えば後述する「D.太陽電池」の項で説明するように、太陽電池の各部材を積層させて一体化する一体化工程と同時に行ってもよい。
【0121】
集電シート付き太陽電池素子は、通常、太陽電池を構成する部材として用いられる。なお、集電シート付き太陽電池素子が、例えば、1つの太陽電池素子と、太陽電池素子の正極または負極のうち、一方の電極のみと接続された集電シートとを有する場合、集電シート付き太陽電池素子は、例えば、上記の単セル型の太陽電池の一部、または、上記の太陽電池モジュールを構成する集電シート付き太陽電池素子の一部として用いることができる。
【0122】
D.太陽電池
本開示における太陽電池は、透明基板と、第1封止材と、上述の集電シート付き太陽電池素子と、第2封止材と、対向基板と、をこの順にする。
【0123】
図6は、本開示における太陽電池を例示する概略断面図である。図6に示すように、太陽電池40は、透明基板41と、第1封止材42と、集電シート付き太陽電池素子30と、第2封止材43と、対向基板44とを有する。
【0124】
本開示における太陽電池は、複数の集電シート付き太陽電池素子を有する太陽電池モジュールであってもよい。
【0125】
本開示における太陽電池においては、上述の集電シート付き太陽電池素子を有することにより、集電シート用樹脂フィルムによって、太陽電池素子に対してワイヤを良好に固定できる。また、集電シート用樹脂フィルムによって、熱によるワイヤの位置ずれを抑制できる。よって、発電効率を良くし、信頼性を向上させることができる。
【0126】
I.太陽電池の構成
本開示における太陽電池は、透明基板と、第1封止材と、集電シート付き太陽電池素子と、第2封止材と、対向基板と、をこの順に有する。
【0127】
1.集電シート付き太陽電池素子
集電シート付き太陽電池素子については、上述した「C.集電シート付き太陽電池素子」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0128】
2.透明基板および対向基板
透明基板は、対向基板とともに、太陽電池素子を保護する部材である。また、透明基板は、通常、太陽電池の受光面側に配置され、受光面側の前面保護板として機能する。透明基板の透明性は、太陽電池素子の発電を阻害しない程度であれば特に限定されない。透明基板としては、一般的な太陽電池に用いられる透明基板と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0129】
対向基板は、上記透明基板とともに、太陽電池素子を保護する部材である。対向基板は、透明性を有していてもよく、透明性を有していなくてもよい。対向基板が透明性を有する場合は、太陽電池の両面を太陽光の受光面として用いることができる。対向基板としては、上述した透明基板を用いることができる。また、対向基板としては、太陽電池用の裏面保護シートを用いることもできる。
【0130】
3.第1封止材および第2封止材
第1封止材および第2封止部材は、太陽電池素子を封止する部材である。第1封止材は、通常、太陽電池の受光面側に配置される。
【0131】
第1封止材および第2封止部材は、熱可塑性樹脂を含有する。第1封止材および第2封止部材に用いられる熱可塑性樹脂としては、一般的な太陽電池の封止材に用いられる熱可塑性樹脂と同様とすることができ、例えば、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の各種のオレフィン樹脂を主成分とする封止材を用いることができる。なお、これらの樹脂を主成分とするとは、全樹脂成分の中でもこれらの樹脂の割合が最も多いことをいう。
【0132】
第1封止材は、通常、紫外線吸収剤を含有する。紫外線による、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有する基材層の劣化、例えば、黄変、クラック、破断等を抑制できる。
【0133】
上記対向基板が透明性を有する場合、第2封止材は、上記第1封止材と同様に、通常、紫外線吸収剤を含有する。
【0134】
紫外線吸収剤としては、一般的な太陽電池の封止材に用いられる紫外線吸収剤と同様とすることができる。
【0135】
第1封止材および第2封止材の厚さは、太陽電池の種類、大きさに応じて適宜選択される。
【0136】
II.太陽電池の製造方法
本開示における太陽電池の製造方法は、一般的な太陽電池の製造方法と同様とすることができる。一例としては、透明基板、第1封止材、集電シート付き太陽電池素子、第2封止材および対向基板をこの順に積層した積層体を形成する積層体形成工程と、上記積層体に加熱および加圧処理することにより一体化して太陽電池とする一体化工程とを有する製造方法を挙げることができる。
【0137】
加熱および加圧処理は、特に限定されず、一般的な太陽電池の製造時において行われる処理と同様とすることができる。例えば、真空熱ラミネート法が好ましい。真空熱ラミネート法の条件は、特に限定されず、太陽電池の大きさ、各部材の種類等に応じて適宜選択できる。ラミネート温度は、例えば、130℃以上170℃以下であることが好ましい。また、ラミネート時間は、例えば、5分以上30分以下であることが好ましく、8分以上15分以下であることがより好ましい。
【0138】
III.用途
本開示における太陽電池の用途としては、例えば、電子機器用の太陽電池、屋外設置用の大型太陽電池等の種々の用途を挙げることができる。
【0139】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0140】
[実施例1]
基材層として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(デュポン社製「LBD」)を用いた。また、接着剤(アンカーコート剤)として、ポリカーボネート系の主剤(ロックペイント社製「KT-0035」)と、イソシアネート系の硬化剤(ロックペイント社製「H-039Z2」)とからなる2液型接着剤を用いた。また、ポリエチレン樹脂として、密度0.92g/cm、融点106℃、MFR(190℃)7g/10分の高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)を用いた。
【0141】
上記基材層の片面に、アンカー剤として上記接着剤を0.1g/m塗布し、上記ポリエチレン樹脂を厚さ60μmで押し出して、ポリエチレン樹脂層を形成した。さらに、上記ポリエチレン樹脂層の基材層とは反対側の面にコロナ処理を施した。これにより、基材層と、接着層と、ポリエチレン樹脂層とをこの順に有する集電シート用樹脂フィルムを得た。
【0142】
[実施例2]
基材層に、200℃、10秒のアニール処理を施したこと以外は、実施例1と同様にして、集電シート用樹脂フィルムを作製した。
【0143】
[比較例1]
基材層として、厚さ12μmのPETフィルムを用いた。また、接着剤(アンカーコート剤)として、ウレタン系接着剤を用いた。また、ポリエチレン樹脂として、融点109℃、MFR(190℃)5.7g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いた。
【0144】
実施例1と同様にして、集電シート用樹脂フィルムを作製した。
【0145】
[比較例2]
基材層として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製「E5104」)を用いた。また、接着剤(アンカーコート剤)として、ポリカーボネート系の主剤(ロックペイント社製「KT-0035」)と、イソシアネート系の硬化剤(ロックペイント社製「H-039Z2」)とからなる2液型接着剤を用いた。また、ポリエチレン樹脂層として、密度0.915g/cm、融点105℃、MFR(190℃)2g/10分のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)を含むポリエチレンフィルムを用いた。
【0146】
ドライラミネート法により、基材層とポリエチレン樹脂層とを接着剤を介して貼り合わせることによって、集電シート用樹脂フィルムを得た。
【0147】
[比較例3]
ポリエチレン樹脂層として、密度0.915g/cm、融点110℃、MFR(190℃)2g/10分のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)を含むポリエチレンフィルムを用いたこと以外は、比較例2と同様にして、集電シート用樹脂フィルムを作製した。
【0148】
[比較例4]
ポリエチレン樹脂層の厚さを70μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、集電シート用樹脂フィルムを作製した。
【0149】
[評価]
(1)熱収縮率
集電シート用樹脂フィルムのMD方向およびTD方向の熱収縮率は、ASTM D1204に準拠して測定した。測定条件は、150℃、10分間とした。
【0150】
(2)波長400nm以上1200nm以下における光線透過率
集電シート用樹脂フィルムの波長400nm以上1200nm以下における光線透過率を、JIS K7361 1に準拠して、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150を用いて測定した。
【0151】
(3)ヘイズ
集電シート用樹脂フィルムを50mm×50mmにカットし、試験片を作製した。次いで、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)フィルムと試験片とETFEフィルムとをこの順に積層し、設定温度165℃、真空引き2分、プレス2.5分、圧力100kPaの条件で真空ラミネートを行った。続いて、試験片の両面からそれぞれETFEフィルムを除去し、測定用サンプルを得た。そして、測定用サンプルのヘイズを、JIS K7136に準拠して、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150を用いて測定した。
【0152】
(4)ワイヤ密着性
ワイヤとして、SnIn系はんだで被覆されているワイヤAおよびSnBi系はんだで被覆されているワイヤBを用いた。ワイヤAおよびワイヤBの直径はそれぞれ、250μmであった。集電シート用樹脂フィルムを100mm×100mmにカットし、試験片を作製した。次いで、試験片の基材層側の面に、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)フィルムを配置した。また、試験片のポリエチレン樹脂層側の面に、ワイヤAおよびワイヤBを10mmピッチの間隔をあけてそれぞれ5本ずつと、ETFEフィルムとを順に配置した。その後、設定温度120℃、プレス圧力0.1MPaの条件で熱ロールラミネーターを用いてラミネートを行った。続いて、試験片の両面からそれぞれETFEフィルムを除去し、評価用サンプルを得た。そして、評価用サンプルのワイヤを180度屈曲させて、引張速度300mm/minの条件で集電シート用樹脂フィルムから剥離し、集電シート用樹脂フィルムからの集電ワイヤの剥離強度を測定した。ワイヤ密着性は、下記基準にて評価した。なお、「N/ワイヤ」とは、ワイヤ1本を剥離した際の剥離強度を示している。
A:剥離強度が0.1N/ワイヤ超である。
B:集電シート用樹脂フィルムにワイヤが密着するが、剥離強度が0.1N/ワイヤ以下である。
C:集電シート用樹脂フィルムにワイヤが密着せず自然剥離する。
【0153】
(5)モジュール信頼性
まず、上記のワイヤ密着性の評価における評価用サンプルの作製方法と同様にして、集電シート用樹脂フィルムにワイヤが固定された集電シートを得た。この際、試験片のポリエチレン樹脂層側の面には、8mmピッチで計18本のワイヤを配置した。なお、ワイヤ密着性の評価が「C」であったサンプルについては、熱ロールラミネーターでの設定温度を130℃に上げることで、ワイヤ密着性を担保した。
【0154】
透明基板として、厚さ3.2mmの白板強化ガラスを用い、第1封止材および第2封止材として、厚さ470μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)シート(タキロンシーアイ社製、ファストキュアEVA)を用い、太陽電池素子として、N型シリコンセルを用い、対向基板として、アルミニウム層含有バックシート(大日本印刷社製、VAPE-CW)を用いた。次に、透明基板と、第1封止材と、集電シートと、太陽電池素子と、集電シートと、第2封止材と、対向基板とを積層し、設定温度150℃、真空引き5分、プレス7.5分、圧力100kPaの条件で真空ラミネートを行った。なお、各部材を積層する際には、集電シートを、集電シートのワイヤ側の面が太陽電池素子側を向くように配置した。また、この際、図3(b)に例示するように、集電シート20を太陽電池素子31の上下に配置していくことで、4つの太陽電池素子を直列接合した太陽電池モジュールとして評価用モジュールを作製した。
【0155】
評価用モジュールについて、高温高湿試験(85℃、85%RH、2000時間)、および、温度サイクル試験(-40℃⇔90℃、200サイクル、1サイクル=6時間)をそれぞれ実施した。各試験前後の光起電力の出力を測定し、出力低下率を求めた。モジュール信頼性は、下記基準にて評価した。
A:両方の試験後の出力低下率が5%未満である。
B:少なくとも一方の試験後の出力低下率が5%以上10%未満である。
C:少なくとも一方の試験後の出力低下率が10%以上である。
【0156】
【表1】
【0157】
表1から、集電シート用樹脂フィルムにおけるポリエチレン樹脂層のMFRが所定の範囲内であり、集電シート用樹脂フィルムの熱収縮率が所定の範囲内である場合には、ワイヤ密着性およびモジュール信頼性が良好であることが確認された。
【0158】
また、比較例1、4では、温度サイクル試験後に出力が低下した。これは、集電シート用樹脂フィルムの熱収縮率が高いと、モジュールラミネート後の残留応力が高くなるためである。
【0159】
なお、実施例1および比較例4において基材層として用いたPETフィルム単体についても、集電シート用樹脂フィルムと同様に熱収縮率を測定したところ、MD方向の熱収縮率は1.4%、TD方向の熱収縮率は0.3%であった。このことから、基材層自体の熱収縮率が2.0%以下であっても、集電シート用樹脂フィルム全体の熱収縮率が2.0%以下になるとは限らないことが示唆された。
【0160】
本開示は、以下の[1]~[11]を提供する。
[1]太陽電池の集電シートに用いられる集電シート用樹脂フィルムであって、
基材層と、接着層と、ポリエチレン樹脂層と、をこの順に有し、
上記基材層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有し、
上記ポリエチレン樹脂層の190℃におけるメルトマスフローレートが、4g/10分以上8g/10分以下であり、
150℃で10分間保持したときの熱収縮率が、2.0%以下である、集電シート用樹脂フィルム。
[2]上記ポリエチレン樹脂層の融点が、100℃以上120℃以下である、[1]に記載の集電シート用樹脂フィルム。
[3]上記ポリエチレン樹脂層の厚さが、上記基材層の厚さよりも厚い、[1]または[2]に記載の集電シート用樹脂フィルム。
[4]上記ポリエチレン樹脂層の厚さが、40μm以上100μm以下である、[1]から[3]までのいずれかに記載の集電シート用樹脂フィルム。
[5]上記基材層の厚さが、12μm以上38μm以下である、[1]から[4]までのいずれかに記載の集電シート用樹脂フィルム。
[6]上記接着層の厚さが、0.1μm以上10μm以下である、[1]から[5]までのいずれかに記載の集電シート用樹脂フィルム。
[7]上記基材層が、上記接着層とは反対の面に、表面処理部を有する、[1]から[6]までのいずれかに記載の集電シート用樹脂フィルム。
[8]太陽電池に用いられる集電シートであって、
[1]から[7]までのいずれかに記載の集電シート用樹脂フィルムと、
上記集電シート用樹脂フィルムの上記ポリエチレン樹脂層の面側に配置されたワイヤと、
を有する、集電シート。
[9][8]に記載の集電シートと、
上記集電シートの上記ポリエチレン樹脂層の面側に配置され、上記ワイヤと電気的に接続された太陽電池素子と、
を有する、集電シート付き太陽電池素子。
[10]透明基板と、第1封止材と、[9]に記載の集電シート付き太陽電池素子と、第2封止材と、対向基板と、をこの順に有する、太陽電池。
[11]上記太陽電池は、複数の上記集電シート付き太陽電池素子を有する太陽電池モジュールである、[10]に記載の太陽電池。
【符号の説明】
【0161】
1 … 基材層
2 … 接着層
3 … ポリエチレン樹脂層
10、10A、10B … 集電シート用樹脂フィルム
11 … ワイヤ
20 … 集電シート
30 … 集電シート付き太陽電池素子
31 … 太陽電池素子
40 … 太陽電池
41 … 透明基板
42 … 第1封止材
43 … 第2封止材
44 … 対向基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6