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特開2023-178633集電シート用フィルム、集電シート、集電シート付き太陽電池素子、および太陽電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178633
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】集電シート用フィルム、集電シート、集電シート付き太陽電池素子、および太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/05 20140101AFI20231211BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H01L31/04 570
B32B27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091430
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕司
(72)【発明者】
【氏名】在原 慶太
(72)【発明者】
【氏名】中原 敦
(72)【発明者】
【氏名】高山 泰樹
【テーマコード(参考)】
4F100
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
4F100AA12B
4F100AA15B
4F100AA17B
4F100AA20B
4F100AH06C
4F100AK03C
4F100AK04C
4F100AK06C
4F100AK16C
4F100AK21C
4F100AK42A
4F100AK42C
4F100AK69C
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00D
4F100EJ64E
4F100JA13E
4F100JD02B
4F100JD04
4F100JD06
4F100JN01
4F100JN01A
4F100JN01B
5F151AA02
5F151AA03
5F151AA05
5F151AA07
5F151AA11
5F151BA18
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5F251EA19
5F251JA03
5F251JA04
5F251JA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高いバリア性を有する集電シート用フィルム、ならびに、これを用いた集電シート、集電シート付き太陽電池素子および太陽電池を提供する。
【解決手段】太陽電池の集電シートに用いられる集電シート用フィルムであって、透明基材と、透明バリア層と、接着層と、封止層と、をこの順に有する、集電シート用フィルムを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池の集電シートに用いられる集電シート用フィルムであって、
透明基材と、透明バリア層と、接着層と、封止層と、をこの順に有する、集電シート用フィルム。
【請求項2】
前記透明バリア層と前記接着層との間に、保護層を有する、請求項1に記載の集電シート用フィルム。
【請求項3】
前記透明バリア層と前記接着層との間に、オーバーコート層を有する、請求項1または請求項2に記載の集電シート用フィルム。
【請求項4】
水蒸気透過度が、1×10-3g/(m・day)以上1g/(m・day)以下である、請求項1または請求項2に記載の集電シート用フィルム。
【請求項5】
前記封止層が、ポリオレフィン樹脂を含有する、請求項1または請求項2に記載の集電シート用フィルム。
【請求項6】
前記ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン樹脂である、請求項5に記載の集電シート用フィルム。
【請求項7】
前記封止層が、前記接着層とは反対の面に、表面処理部を有する、請求項1または請求項2に記載の集電シート用フィルム。
【請求項8】
太陽電池に用いられる集電シートであって、
請求項1または請求項2に記載の集電シート用フィルムと、
前記集電シート用フィルムの前記封止層の面側に配置されたワイヤと、
を有する、集電シート。
【請求項9】
請求項8に記載の集電シートと、
前記集電シートの前記封止層の面側に配置され、前記ワイヤと電気的に接続された太陽電池素子と、
を有する、集電シート付き太陽電池素子。
【請求項10】
透明基板と、第1封止材と、請求項9に記載の集電シート付き太陽電池素子と、第2封止材と、裏面保護シートと、をこの順に有する、太陽電池。
【請求項11】
前記太陽電池は、複数の前記集電シート付き太陽電池素子を有する太陽電池モジュールである、請求項10に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記裏面保護シートが、前記第2封止材側から順に、易接着層と、バリアフィルムと、基材層とを有する、請求項10に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集電シート用フィルム、集電シート、集電シート付き太陽電池素子、および太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素が原因とされる地球温暖化が世界的に問題となっている。この問題に対し、環境にやさしく、クリーンなエネルギー源として、太陽光エネルギーを利用した太陽電池が注目され、積極的な研究開発が進められている。
【0003】
太陽電池は、例えば、複数の太陽電池素子を接続したモジュールの形態で用いられる。太陽電池素子同士を接続する方法としては、例えば、バスパーと称される幅2mm~5mm程度の帯状の導線を用いて、太陽電池素子同士を接続する方法が従来から用いられている。バスパーを用いた接続方法の場合、太陽電池モジュールにおいて、バスパーが配置された領域では太陽光が物理的に遮断されるため、太陽電子素子への太陽光の入射量が減少してしまうという課題がある。
【0004】
これに対し、近年、例えば、直径150μm以上300μm以下程度のワイヤ(細線状の導線)を用いて太陽電池素子同士を接続する、マルチワイヤ接続と称される方法が採用され始めている。マルチワイヤ接続において、ワイヤを太陽電池素子に固定する方法としては、例えば、熱溶着性を有する樹脂フィルムにワイヤを埋め込んで集電シートとし、上記集電シートを太陽電池素子に熱圧着することにより固定する方法が挙げられる(特許文献1および2)。集電シートに用いられる樹脂フィルムは、コネクティングフィルムとも称される。
【0005】
ところで、太陽電池は、長期間にわたって屋外で使用されるため、太陽電池を構成する各部材には長期間にわたって屋外における過酷な環境に耐え得る耐久性が求められる。これらの部材のうち、裏面保護シートは、高い耐候性が要求されるとともに、太陽電池素子を水分等から保護するために、高い水蒸気バリア性を有することが求められている。
【0006】
例えば、太陽電池モジュールを構成する裏面保護シートとしては、耐候性を有する基材に、アルミニウム箔等の金属箔を積層させた裏面保護シートが知られている(特許文献3)。しかしながら、金属箔を有する裏面保護シートは、太陽電池モジュールに使用した際には、絶縁性が低いために漏電のおそれがある。また、金属箔の端面の絶縁処理が行われているが、生産性が低下し、製造コストが増加する。
【0007】
また、裏面保護シートとしては、金属箔の代わりに、樹脂フィルムに無機蒸着膜が形成されたバリアフィルムを有する裏面保護シートも知られている。このような裏面保護シートは、金属箔を使用しなくとも、水蒸気バリア性を発揮できる。しかしながら、金属箔に匹敵する高い水蒸気バリア性を有するガスバリアフィルムは、非常に高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/021455号
【特許文献2】国際公開第2017/076735号
【特許文献3】特開2002-134770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、マルチワイヤ接続の太陽電池モジュールにおいて、水蒸気バリア性の向上のために、裏面保護シートだけでなく、上記の集電シートに用いられる樹脂フィルムにも、水蒸気バリア性を付与することが考えられる。
【0010】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高いバリア性を有する集電シート用フィルム、ならびに、これを用いた集電シート、集電シート付き太陽電池素子および太陽電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一実施形態は、太陽電池の集電シートに用いられる集電シート用フィルムであって、透明基材と、透明バリア層と、接着層と、封止層と、をこの順に有する、集電シート用フィルムを提供する。
【0012】
本開示の他の実施形態は、太陽電池に用いられる集電シートであって、上述の集電シート用フィルムと、上記集電シート用フィルムの上記封止層の面側に配置されたワイヤとを有する、集電シートを提供する。
【0013】
本開示の他の実施形態は、上述の集電シートと、上記集電シートの上記封止層の面側に配置され、上記ワイヤと電気的に接続された太陽電池素子とを有する、集電シート付き太陽電池素子を提供する。
【0014】
本開示の他の実施形態は、透明基板と、第1封止材と、上述の集電シート付き太陽電池素子と、第2封止材と、裏面保護シートと、をこの順に有する、太陽電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本開示は、高いバリア性を有する集電シート用フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示における集電シート用フィルムを例示する概略断面図である。
図2】本開示における集電シートを例示する概略平面図および断面図である。
図3】本開示における集電シート付き太陽電池素子を例示する概略斜視図および断面図である。
図4】本開示における集電シート用フィルムを例示する概略断面図である。
図5】本開示における集電シートを例示する概略断面図である。
図6】本開示における集電シート付き太陽電池素子を例示する概略断面図である。
図7】本開示における太陽電池を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0018】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」あるいは「面側に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0019】
また、本明細書において、「フィルム」、「シート」、「基板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。
【0020】
以下、本開示における集電シート用フィルム、集電シート、集電シート付き太陽電池素子、および太陽電池について、詳細に説明する。
【0021】
A.集電シート用フィルム
本開示における集電シート用フィルムは、太陽電池の集電シートに用いられる集電シート用フィルムであって、透明基材と、透明バリア層と、接着層と、封止層と、をこの順に有する。
【0022】
本開示における集電シート用フィルムについて図を用いて説明する。図1は、本開示における集電シート用フィルムを例示する概略断面図である。図1に示すように、集電シート用フィルム10は、透明基材1と、透明バリア層2と、接着層3と、封止層4とをこの順に有する。図1に示す集電シート用フィルム10においては、透明基材1および透明バリア層2が、バリアフィルム5を構成している。
【0023】
図2(a)、(b)は、本開示における集電シート用フィルムを有する集電シートを例示する概略平面図および断面図である。図2(b)は、図2(a)のA-A線断面図である。図2(a)、(b)に示すように、集電シート20は、集電シート用フィルム10と、集電シート用フィルム10の封止層4の面側に配置されたワイヤ11とを有する。このように、集電シート用フィルム10は、ワイヤ11を支持するために用いられる。なお、図2(a)は、集電シート用フィルムの封止層側から集電シートを見た概略平面図を示している。
【0024】
図3(a)~(c)は、本開示における集電シート用フィルムを有する集電シートを備える集電シート付き太陽電池素子を例示する概略斜視図および断面図である。図3(b)は、図3(a)のA-A線断面図であり、図3(c)は、図3(a)のB-B線断面図である。図3(a)~(c)に示すように、集電シート付き太陽電池素子30は、集電シート10と、集電シート10の封止層4の面側に配置され、ワイヤ11と電気的に接続された太陽電池素子31とを有する。このように、集電シート用フィルム10は、太陽電池素子31に電気的に接続されたワイヤ11を固定するために用いられる。なお、図3(a)~(c)は、集電シート20が2枚の集電シート用フィルム10を有し、各集電シート用フィルム10に太陽電池素子31が配置されている例を示している。
【0025】
本開示における集電シート用フィルムは、透明バリア層を有することにより、バリア性を付与できる。そのため、集電シート用フィルムを有する集電シートを太陽電池に用いた場合には、バリアフィルムを有する集電シート用フィルムと、バリアフィルムを有する裏面保護シートとを組み合わせることで、バリア性を向上させることが可能である。そのため、裏面保護シートに、金属箔を有する裏面保護シートや、高価なガスバリアフィルムを有する裏面保護シートを使用しなくとも、高いバリア性を得ることができる。したがって、生産性を高め、製造コストを削減できる。
【0026】
また、上述したように、集電シート用フィルムを有する集電シートを太陽電池に用いた場合には、裏面保護シートに、金属箔を有する裏面保護シートを用いなくとも高いバリア性が得られるため、裏面保護シートの絶縁性を高くでき、漏電を抑制できる。したがって、太陽電池の信頼性を高めることができる。
【0027】
以下、本開示における集電シート用フィルムの各構成について説明する。
【0028】
I.集電シート用フィルムの構成
本開示における集電シート用フィルムは、透明基材と、透明バリア層と、接着層と、封止層とをこの順に有する。
【0029】
1.透明バリア層
本開示における透明バリア層は、透明基材の一方の面に配置され、透明性を有し、水蒸気や酸素に対してバリア性を有する部材である。また、透明バリア層は、通常、バリアフィルムを構成する部材である。
【0030】
透明バリア層の透明性としては、集電シート用フィルムが透明性を有していれば、透明バリア層が透明性を有するということができる。具体的には、後述するように、集電シート用フィルムの波長400nm以上1200nm以下における光線透過率およびヘイズが所定の範囲であることが好ましい。
【0031】
また、透明バリア層のバリア性としては、集電シート用フィルムがバリア性を有していれば、透明バリア層がバリア性を有するということができる。具体的には、後述するように、集電シート用フィルムの水蒸気透過度が所定の範囲内であることが好ましい。
【0032】
また、透明バリア層は、絶縁性を有する。これにより、集電シート用フィルムの絶縁性を高めることができる。また、透明バリア層が絶縁性を有することにより、集電シート用フィルムにおいて、透明バリア層の端面に絶縁処理を施す必要がない。そのため、生産性を高め、製造コストを削減できる。
【0033】
透明バリア層は、透明基材の一方の面に形成可能であり、水蒸気や酸素に対してバリア性を有する層であれば特に限定されず、例えば、無機化合物膜、バリア性樹脂膜、有機-無機ハイブリッド膜等が挙げられる。
【0034】
無機化合物膜に含まれる無機化合物としては、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、無機酸化炭化物、無機酸化炭化窒化物等が挙げられる。具体的には、無機化合物膜に含まれる無機化合物としては、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、チタン、ホウ素、イットリウム、ジルコニウム、セリウム、亜鉛等の酸化物、酸化窒化物、窒化物、酸化炭化物、酸化炭化窒化物等が挙げられる。より具体的には、SiO等のケイ素酸化物、Al等のアルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、ケイ素亜鉛合金酸化物、インジウム合金酸化物、ケイ素窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物、酸化窒化ケイ素、酸化ケイ素亜鉛等を挙げることができる。無機化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
中でも、無機化合物膜に含まれる無機化合物は、コストおよび性能の面から、ケイ素を含む無機化合物であることが好ましく、SiO等のケイ素酸化物であることがより好ましい。
【0036】
また、無機化合物に含まれる金属元素は、後述のオーバーコート層に用いられる金属アルコキシド中の金属元素と同じ種類であることが好ましい。透明バリア層とオーバーコート層とが同じ金属元素を有することにより、透明バリア層とオーバーコート層との密着性を向上させることができる。これより、集電シート用フィルムのバリア性を高めることができる。中でも、透明バリア層およびオーバーコート層のいずれもが、ケイ素を含むことが好ましい。
【0037】
バリア性樹脂膜としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等を含むバリア性樹脂膜が挙げられる。
【0038】
透明バリア層は、単層であってもよく、多層であってもよい。多層の場合、各層の組成は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
また、透明バリア層は、蒸着膜であってもよく、コーティング等による塗布膜であってもよい。
【0040】
透明バリア層の形成方法は、透明バリア層の材料や種類に応じて適宜選択される。例えば、蒸着法、塗布法、圧着法等が挙げられる。また、透明バリア層がバリア性樹脂膜である場合には、共押出法により、透明基材と透明バリア層とを積層して形成してもよい。
【0041】
透明バリア層の厚さは、所望のバリア性および透明性を得ることができれば特に限定されず、透明バリア層の種類や構成に応じて適宜設定される。例えば、透明バリア層が蒸着膜である場合、透明バリア層の厚さは、5nm以上200nm以下であってもよく、10nm以上100nm以下であってもよい。また、例えば、透明バリア層が塗布膜である場合、透明バリア層の厚さは、数μm程度であってもよい。また、例えば、透明バリア層がバリア性樹脂膜である場合、透明バリア層の厚さは、数十μm程度であってもよい。透明バリア層の厚さが薄すぎると、十分なバリア性が得られない可能性がある。また、透明バリア層の厚さが厚すぎると、クラック等が発生しやすくなる可能性がある。
【0042】
また、本開示における集電シート用フィルムは、バリア層として、金属層を有さないことが好ましい。金属層は、通常、導電性を有する。集電シート用フィルムが、導電性を有するバリア層を有さないことにより、絶縁性を高めることができる。金属層は、金属または合金からなる層である。金属層は、例えば、金属箔であってもよく、蒸着膜であってもよい。なお、集電シート用フィルムは、通常、透明性を有することから、金属箔を有さない。
【0043】
2.透明基材
本開示における透明基材は、例えば、上記透明バリア層を支持する部材である。
【0044】
透明基材の透明性としては、上記透明バリア層と同様に、集電シート用フィルムが透明性を有していれば、透明基材が透明性を有するということができる。
【0045】
また、透明基材は、耐熱性を有することが好ましい。具体的には、透明基材の融点は、
200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることが好ましい。
【0046】
ここで、透明基材の融点は、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠し、示差走査熱量分析(DSC)により行うことができる。なお、その際、融点ピークが2つ以上存在する場合は、高い温度の方を融点とすることができる。
【0047】
透明基材は、透明性および耐熱性を有し、上記透明バリア層を支持できれば特に限定されない。中でも、透明基材は、上記融点を有する熱可塑性樹脂を含む、樹脂フィルムであることが好ましい。上記融点を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。特に、耐熱性、透明性、耐薬品性、耐水性、寸法安定性、コスト等の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0048】
透明基材は、必要に応じて、種々の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、光安定化剤、充填剤、滑剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、改質用樹脂等を挙げることができる。これらの添加剤の含有量は、特に限定されず、その目的に応じて適宜調整される。
【0049】
透明基材は、未延伸の樹脂フィルムであってもよく、一軸または二軸延伸された樹脂フィルムであってもよい。
【0050】
透明基材の厚さは、上記透明バリア層を支持することが可能な厚さであれば特に限定されず、集電シート用フィルムが用いられる太陽電池の大きさ、用途に応じて適宜選択できる。中でも、後述するように、透明基材の厚さは、封止層の厚さより薄いことが好ましい。具体的には、透明基材の厚さは、12μm以上38μm以下であることが好ましく、12μm以上25μm以下であることがより好ましい。透明基材の厚さが薄すぎると、バリア層を支持するのが困難になる可能性がある。また、透明基材の厚さが厚すぎると、剛性が高くなりすぎて、集電シート用フィルムのワイヤへの追従性が低下する可能性がある。
【0051】
透明基材および透明バリア層がバリアフィルムを構成している場合、透明基材の透明バリア層側の面には、透明バリア層との密着性向上のために、表面処理が施されていてもよい。
【0052】
また、後述するように、透明バリア層と接着層との間に保護層が配置されており、保護層が樹脂フィルムであり、保護層および透明バリア層がバリアフィルムを構成している場合、例えば、バリアフィルムの透明バリア層上に第2の接着層を介して透明基材を積層できる。この場合、ドライラミネート法が好ましく用いられる。ドライラミネート法の場合、積層時に、透明バリア層にせん断がかかるのを抑制できる。
【0053】
3.封止層
本開示における封止層は、熱溶着性を有し、集電シート用フィルムを集電シートに用いた場合に、ワイヤを支持する部材である。
【0054】
(1)封止層の材料
封止層に含まれる樹脂は、通常、熱溶着性を有する樹脂である。また、封止層に含まれる樹脂は、集電シートを太陽電池素子に熱圧着した際にワイヤの周囲に回りこむ性質を有することが好ましい。以下、上述の性質をワイヤの埋め込み性と称して説明する場合がある。熱溶着性およびワイヤの埋め込み性を有する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を挙げることができる。中でも、透明性の観点から、熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂、アイオノマー樹脂であることが好ましく、ポリオレフィン樹脂であることがより好ましい。以下、ポリオレフィン樹脂の詳細を説明する。
【0055】
(a)ポリオレフィン樹脂
封止層に用いられるポリオレフィン樹脂の融点は、所望の熱溶着性およびワイヤの埋め込み性を示すことができれば特に限定されない。ポリオレフィン樹脂の融点は、例えば、125℃以下であり、120℃以下であってもよく、110℃以下であってもよい。また、ポリオレフィン樹脂の融点は、例えば、80℃以上である。ポリオレフィン樹脂の融点が高すぎる場合は、集電シートを太陽電池素子に熱圧着する際の温度を高くする必要があることから、製造コストが増大したり、太陽電池素子が劣化したりする可能性がある。一方、ポリオレフィン樹脂の融点が低すぎる場合は、太陽電池の使用環境において、封止層が融解し、ワイヤを固定することが困難となる可能性がある。
【0056】
ここで、ポリエチレン樹脂の融点は、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠し、示差走査熱量分析(DSC)により行うことができる。なお、その際、融点ピークが2つ以上存在する場合は、高い温度の方を融点とすることができる。
【0057】
中でも、ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂であることが好ましく、ポリエチレン樹脂であることがより好ましい。ワイヤの埋め込み性に優れるためである。
【0058】
ポリエチレン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等が挙げられる。ポリエチレン樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、柔軟性や加工性が良いことから、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
【0059】
ポリエチレン樹脂の密度は、特に限定されず、例えば、0.890g/cm以上0.930g/cm以下であることが好ましく、0.900g/cm以上0.925g/cm以下であることがより好ましい。
【0060】
ここで、ポリエチレン樹脂の密度は、例えば、JIS K7112に準拠したピクノメーター法により測定できる。
【0061】
封止層は、樹脂成分として、ポリオレフィン樹脂のみを含有していてもよく、ポリオレフィン樹脂に加えて、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂をさらに含有していてもよい。後者の場合、封止層は、ポリオレフィン樹脂を主成分として含有することが好ましい。なお、封止層がポリオレフィン樹脂を主成分として含有するとは、全樹脂成分の中でもポリオレフィン樹脂の割合が最も多いことをいう。
【0062】
封止層中の全樹脂成分に対するポリオレフィン樹脂の割合は、例えば、50質量%以上であり、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよい。また、上記ポリオレフィン樹脂の割合は、例えば、99質量%以下であり、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよい。なお、上記ポリオレフィン樹脂の割合は、100質量%であってもよい。
【0063】
(b)接着性向上剤
本開示における封止層は、接着性向上剤を含有していてもよい。接着性向上剤は、ワイヤに対する密着性や太陽電池素子に対する密着性を向上させる成分である。
【0064】
接着性向上剤としては、例えば、シラン変性樹脂、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0065】
(i)シラン変性樹脂
シラン変性樹脂としては、例えば、シラン変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。シラン変性ポリオレフィン樹脂は、α-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体である。共重合体としては、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、およびグラフト共重合体のいずれであってもよい。中でも、共重合体は、グラフト共重合体であることが好ましく、ポリオレフィンを主鎖とし、エチレン性不飽和シラン化合物が側鎖として重合したグラフト共重合体であることが好ましい。このようなグラフト共重合体は、密着性に寄与するシラノール基の自由度が高くなるため、ワイヤに対する密着性および太陽電池素子に対する密着性を一層向上させることができる。
【0066】
シラン変性ポリオレフィン樹脂を構成するα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等が挙げられる。α-オレフィンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリエチレンが好ましい。すなわち、シラン変性ポリオレフィン樹脂は、シラン変性ポリエチレン樹脂であることが好ましい。上述したように、封止層はポリエチレン樹脂を含むことが好ましい。この場合、シラン変性ポリエチレン樹脂は、封止層に含まれるポリエチレン樹脂との相溶性が良い。
【0067】
また、シラン変性ポリエチレン樹脂は、主鎖として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にエチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合させた樹脂であることが好ましい。
【0068】
上記エチレン性不飽和シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリカルボキシシランを挙げることができる。エチレン性不飽和シラン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
シラン変性ポリオレフィン樹脂は、例えば、特開2003-46105号公報に記載されている製造方法により得ることができる。
【0070】
シラン変性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
封止層の全樹脂成分に対する、シラン変性樹脂の割合は、特に限定されず、例えば、25質量%以下であってもよい。
【0072】
(ii)シランカップリング剤
シランカップリング剤としては、一般的な太陽電池の封止材に使用されているシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
封止層中のシランカップリング剤の含有量は、特に限定されず、例えば、5質量%以下であってもよい。
【0074】
(c)他の成分
封止層は、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等の添加剤を含有してもよい。
【0075】
ここで、集電シート用フィルムの各層に含有される各樹脂成分の割合は、例えば、示査走査熱量測定(DSC)、赤外分光法(IR)、核磁気共鳴(NMR)で検出されるピーク比等から分析できる。
【0076】
(2)その他
封止層の厚さは、集電シート用フィルムを集電シートに用いた場合に、ワイヤを支持できれば特に限定されず、ワイヤの太さに応じて適宜選択できる。封止層の厚さは、上記透明基材の厚さよりも厚いことが好ましく、また、後述の保護層の厚さよりも厚いことが好ましい。これにより、ワイヤに対する密着性およびワイヤの埋め込み性を高めることができる。具体的には、封止層の厚さは、40μm以上100μm以下であることが好ましく、45μm以上80μm以下であることがより好ましい。封止層の厚さが上記範囲内であることにより、ワイヤに対する密着性およびワイヤの埋め込み性を高めることができる。
【0077】
封止層の接着層とは反対の面は、表面処理が施されていてもよい。すなわち、封止層は、接着層とは反対の面に表面処理部を有していてもよい。これにより、ワイヤに対する密着性および太陽電池素子に対する密着性を向上させることができる。
【0078】
表面処理は、ワイヤに対する密着性や太陽電池素子に対する密着性を高めることが可能な表面処理であれば特に限定されず、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、電子線処理、フレーム処理等が挙げられる。中でも、加工コストや封止層へのダメージ軽減の面から、コロナ処理が好ましい。
【0079】
4.接着層
本開示における接着層は、上記の透明バリア層を有するバリアフィルムと、封止層との間に配置され、バリアフィルムと封止層とを接着するための部材である。
【0080】
接着層に用いられる接着剤としては、透明性を有し、かつ、バリアフィルムと封止層とを接着させることが可能な接着剤であれば特に限定されず、一般的なフィルムの貼り合わせに用いられる接着剤を挙げることができる。接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリカーボネート系接着剤、フェノール系接着剤等が挙げられる。また、接着剤は、例えば、ドライラミネート用接着剤であってもよく、押し出しラミネート用アンカーコート剤であってもよい。
【0081】
また、接着剤は、耐湿熱性を有することが好ましい。加水分解による接着強度の低下を抑制できる。例えば、接着剤を構成する樹脂成分は、エステル結合を有さないことが好ましい。具体的には、ウレタン系接着剤の場合、主剤がポリカーボネートポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0082】
接着層の厚さは、透明性を有し、バリアフィルムと封止層とを接着させることが可能であれば特に限定されず、例えば、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0083】
5.保護層
本開示における集電シート用フィルムは、例えば図4(a)、(b)に示すように、透明バリア層2と接着層3との間に保護層6を有していてもよい。この場合、例えば図4(a)に示すように、透明基材1および透明バリア層2がバリアフィルム5を構成していてもよく、図4(b)に示すように、保護層6および透明バリア層2がバリアフィルム5を構成していてもよい。保護層は、上記透明バリア層を保護する部材である。透明バリア層を有するバリアフィルムと封止層とを接着層を介して積層する際に、保護層によって、透明バリア層を保護できる。また、集電シート用フィルムを有する集電シートを用いて集電シート付き太陽電池素子や太陽電池を製造する場合に、保護層によって、ワイヤが透明バリア層に接触するのを抑制できる。これにより、ワイヤが透明バリア層に接触することによって、透明バリア層にクラック等が発生し、バリア性が低下するのを抑制できる。
【0084】
中でも、押し出しラミネート法により、上記のバリアフィルム上に接着層を介して封止層を積層する場合には、透明バリア層と接着層との間に保護層が配置されていることが好ましい。押し出しラミネートの際には、透明バリア層にせん断がかかることによって、透明バリア層のバリア性が低下する可能性がある。そのため、押し出しラミネート時に、保護層によって透明バリア層を保護でき、透明バリア層のバリア性の低下を抑制できる。
【0085】
保護層は、上記透明バリア層を保護できれば特に限定されない。保護層の材料としては、例えば、樹脂が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アセタール樹脂、セルロース樹脂等を挙げることができる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂等が挙げられる。ポリアミド樹脂としては、各種のナイロンが挙げられる。
【0086】
中でも、耐熱性、透明性、耐薬品性、耐水性、寸法安定性等の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂が好ましい。特に、汎用性およびコストの観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0087】
保護層は、必要に応じて、種々の添加剤を含むことができる。添加剤については、上記透明基材に用いられる添加剤と同様とすることができる。これらの添加剤の含有量は、特に限定されず、その目的に応じて適宜調整される。
【0088】
保護層は、樹脂フィルムであってもよく、コーティング等による塗布膜であってもよい。
【0089】
保護層が樹脂フィルムである場合、未延伸の樹脂フィルムであってもよく、一軸または二軸延伸された樹脂フィルムであってもよい。
【0090】
保護層の厚さは、特に限定されず、集電シート用フィルムが用いられる太陽電池の大きさ、用途に応じて適宜選択できる。上述したように、保護層の厚さは、封止層の厚さより薄いことが好ましい。具体的には、保護層の厚さは、12μm以上38μm以下であることが好ましい。保護層の厚さが薄すぎると、透明バリア層を十分に保護することが困難になる可能性がある。また、保護層の厚さが厚すぎると、剛性が高くなりすぎて、集電シート用フィルムのワイヤへの追従性が低下する可能性がある。
【0091】
保護層が樹脂フィルムであり、バリアフィルムが透明基材および透明バリア層を有する場合、透明バリア層上に保護層を配置する方法としては、例えば、バリアフィルムの透明バリア層上に第2の接着層を介して保護層を積層する方法が挙げられる。この場合、ドライラミネート法が好ましく用いられる。ドライラミネート法の場合、積層時に、透明バリア層にせん断がかかるのを抑制できる。
【0092】
保護層が塗布膜である場合、保護層の形成方法としては、保護層の材料や種類に応じて適宜選択され、各種塗布法を用いることができる。
【0093】
また、保護層が樹脂フィルムであり、バリアフィルムが保護層および透明バリア層を有する場合、保護層の透明バリア層側の面には、透明バリア層との密着性向上のために、表面処理が施されていてもよい。
【0094】
6.オーバーコート層
本開示における集電シート用フィルムは、例えば図4(c)、(d)に示すように、透明バリア層2と接着層3との間にオーバーコート層7を有していてもよい。集電シート用フィルムが、透明バリア層に加えてオーバーコート層を有することにより、バリア性を高めることができる。オーバーコート層は、通常、透明バリア層とともに、バリアフィルムを構成する部材である。
【0095】
例えば図4(c)に示すように、集電シート用フィルム10が保護層6を有する場合であって、バリアフィルム5が透明基材1および透明バリア層2を有する場合には、オーバーコート層7は、透明バリア層2と保護層6との間に配置される。また、例えば図4(d)に示すように、集電シート用フィルム10が保護層6を有する場合であって、バリアフィルム5が保護層6および透明バリア層2を有する場合には、オーバーコート層7は、透明基材1と透明バリア層2との間に配置される。
【0096】
オーバーコート層の材料としては、一般にバリアコート剤やオーバーコート剤として用いられている材料を使用できる。オーバーコート層は、有機物のみを含んでいてもよく、無機物および有機物の混合物を含んでいてもよい。中でも、オーバーコート層は、無機物および有機物の混合物を含むことが好ましい。水蒸気バリア性を高めることができる。
【0097】
特に、オーバーコート層は、金属アルコキシドと親水基含有樹脂とを含有する樹脂組成物から生成された加水分解重縮合物を含むことが好ましい。水蒸気バリア性を向上させることができる。
【0098】
金属アルコキシドとしては、下記一般式で表される1種以上のアルコキシドが挙げられる。
M(OR
(ただし、上記式中、R、Rは、炭素数1以上、8以下の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)
【0099】
上記式で表わされるアルコキシドの金属原子Mとしては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等が挙げられる。中でも、ケイ素が好ましい。
【0100】
また、上記式において、n=0であることが好ましい。
【0101】
上記式において、金属原子Mがケイ素であり、n=0であるアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができる。ケイ素のアルコキシドは、テトラエトキシシラン(TEOS)が好ましい。
【0102】
上記式で表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用できる。また、上記アルコキシドの部分加水分解物は、アルコキシ基のすべてが加水分解されるものに限定されず、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよい。さらに、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2~6量体のものを使用してもよい。
【0103】
また、親水基含有樹脂としては、親水基を含む樹脂が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アクリル酸系樹脂、天然高分子系のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバー、多糖類等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
【0104】
上記樹脂組成物における親水基含有樹脂の含有量は、金属アルコキシドの含有量100質量部に対して、例えば、5質量部以上20質量部以下であることが好ましく、7質量部以上18質量部以下であることがより好ましい。
【0105】
上記加水分解重縮合物は、金属元素と酸素元素と親水基含有樹脂とを含有する混合化合物とすることができ、親水基含有樹脂中の炭素原子(C)と金属アルコキシド中の金属原子(M)との間に、酸素(O)を介したC-O-M結合を有することができる。中でも、上記加水分解重縮合物が、テトラエトキシシラン(TEOS)およびポリビニルアルコール系樹脂の重縮合物であることが好ましい。テトラエトキシシラン(TEOS)およびポリビニルアルコール系樹脂の重縮合物については、例えば特許第5568897号公報に開示されているものと同様とすることができる。
【0106】
オーバーコート層は、必要に応じて、種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0107】
オーバーコート層の厚さは、特に限定されないが、例えば、100nm以上4μm以下であり、200nm以上1μm以下であってもよい。オーバーコート層の厚さが上記範囲内であれば、高いバリア性を維持しつつ、クラック等の発生を抑制できる。
【0108】
上記加水分解重縮合物を含むオーバーコート層の形成方法としては、例えば、ゾルゲル法による薄膜形成方法を挙げることができる。すなわち、金属アルコキシドと親水基含有樹脂とを含有し、さらに、ゾルゲル法によって重縮合して得られる原料液を用いる方法である。具体的には、まず、親水基含有樹脂を水系溶媒で溶解させた溶液に、金属アルコキシドまたはその加水分解物を混合して、コーティング液を調製する。上記水系溶媒としては、例えば、水、あるいは、水およびアルコールの混合溶媒を用いることができる。次いで、上記コーティング液を、透明バリア層上に塗布し、加熱乾燥し、加熱処理を行う。これにより、上記加水分解重縮合物を含むオーバーコート層が得られる。
【0109】
7.その他
本開示における集電シート用フィルムの厚さは、特に限定されず、集電シートに用いられるワイヤの太さ等に応じて適宜選択できる。集電シート用フィルムの厚さは、例えば、50μm以上300μm以下であってもよい。集電シート用フィルムの厚さが薄すぎると、太陽電池素子に対しワイヤを固定するのが困難になる可能性がある。一方、集電シート用フィルムの厚さが厚すぎると、透明性が低下する可能性がある。
【0110】
II.集電シート用フィルムの物性
1.水蒸気透過度
本開示における集電シート用フィルムは、透明バリア層を有することにより、水蒸気バリア性を有する。集電シート用フィルムの水蒸気透過度は、例えば、1×10-3g/(m・day)以上、1g/(m・day)以下であることが好ましく、1×10-3g/(m・day)以上、1×10-1g/(m・day)以下であることがより好ましく、1×10-3g/(m・day)以上、1×10-2g/(m・day)以下であることがさらに好ましい。
【0111】
ここで、水蒸気透過度の測定は、ISO 15106-5:2015(差圧法)に準拠して、温度40℃、相対湿度差90%RHの条件で、水蒸気透過度測定装置を用いて測定できる。水蒸気透過度測定装置としては、例えば、英国Technolox社製「DELTAPERM」を用いることができる。測定は、集電シート用フィルムの表面のうち、集電シート用フィルムの厚さ方向において透明基材に対して透明バリア層側に位置する表面が高湿度側(水蒸気供給側)となるようにして、水蒸気透過度測定装置の上室と下室との間に集電シート用フィルムを装着し、透過面積50.24cm(透過領域:直径8cmの円形)として上記の条件で行う。1つの条件で少なくとも3つのサンプルを測定し、それらの測定値の平均をその条件での水蒸気透過度の値とする。
【0112】
2.波長400nm以上1200nm以下における光線透過率
本開示における集電シート用フィルムの波長400nm以上1200nm以下における光線透過率は、太陽電池素子が発電可能な程度に太陽光を透過させることができる程度であれば特に限定されない。集電シート用フィルムの波長400nm以上1200nm以下における光線透過率は、例えば、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。上記光線透過率が上記範囲内であることにより、太陽電池素子の光の利用効率を高くすることができる。
【0113】
ここで、上記の波長400nm以上1200nm以下における光線透過率は、波長400nm以上1200nm以下における光線透過率の平均値である。波長400nm以上1200nm以下における光線透過率は、JIS K7361 1に準拠して測定できる。具体的には、波長400nm以上1200nm以下における光線透過率は、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150を用いて、測定できる。
【0114】
3.ヘイズ
本開示における集電シート用フィルムの透明性は、太陽電池素子が発電可能な程度に太陽光を透過させることができる程度であれば特に限定されない。集電シート用フィルムの透明性は、例えば、ヘイズによって評価できる。集電シート用フィルムのヘイズは、例えば、1%以上40%以下であり、5%以上30%以下であってもよく、10%以上20%以下であってもよい。
【0115】
ここで、ヘイズは、JIS K7136に準拠して測定する。ヘイズは、例えば、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150を用いて、測定できる。
【0116】
なお、集電シート用フィルムのヘイズを測定するに際しては、測定用サンプルを作製し、測定に供する。測定用サンプルは、以下の方法により作製する。まず、集電シート用フィルムを50mm×50mmにカットし、試験片を作製する。次いで、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)フィルムと試験片とETFEフィルムとをこの順に積層し、設定温度165℃、真空引き2分、プレス2.5分、圧力100kPaの条件で真空ラミネートを行う。これは、製膜段階での集電シート用フィルムの表面の微細な凹凸を排除するためである。続いて、試験片の両面からそれぞれETFEフィルムを除去し、測定用サンプルを作製する。
【0117】
III.集電シート用フィルムの製造方法
本開示における集電シート用フィルムの製造方法は、透明基材と透明バリア層と接着層と封止層とをこの順に有する集電シート用フィルムを得ることができれば特に限定されない。例えば、透明基材および透明バリア層を有するバリアフィルムと、フィルム状の封止層とを用い、ドライラミネート法により、バリアフィルムおよび封止層をドライラミネート用接着剤を介して積層する方法や、透明基材および透明バリア層を有するバリアフィルムを用い、押し出しラミネート法により、バリアフィルム上に封止層を押し出しラミネート用アンカーコート剤を介して積層する方法等が挙げられる。
【0118】
また、集電シート用フィルムが、透明基材と透明バリア層と保護層と接着層と封止層とをこの順に有する場合には、例えば、透明基材および透明バリア層を有するバリアフィルムと、フィルム状の保護層と、フィルム状の封止層とを用い、ドライラミネート法または押し出しラミネート法により、各フィルムを接着剤を介して積層する方法や、フィルム状の透明基材と、透明バリア層および保護層を有するバリアフィルムと、フィルム状の封止層とを用い、ドライラミネート法または押し出しラミネート法により、各フィルムを接着剤を介して積層する方法等が挙げられる。
【0119】
バリアフィルムの作製方法としては、例えば、フィルム状の透明基材または保護層を用い、透明基材または保護層上に透明バリア層を形成する方法が挙げられる。また、バリアフィルムの作製方法においては、透明バリア層上にオーバーコート層を形成してもよい。透明バリア層の形成方法およびオーバーコート層の形成方法は、上述の通りである。
【0120】
フィルム状の封止層の形成方法としては、例えば、封止層を形成するための樹脂組成物を準備し、上記樹脂組成物を溶融成形する方法を挙げることができる。溶融成形法としては、公知の成形法を用いることができ、例えば、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、回転成形等を挙げることができる。成形時の温度は、例えば、樹脂組成物の融点以上である。成形時の温度の上限は、樹脂組成物の種類に応じて適宜調整される。
【0121】
B.集電シート
本開示における集電シートは、太陽電池に用いられる集電シートであって、上述の集電シート用フィルムと、集電シート用フィルムの封止層の面側に配置されたワイヤと、を有する。
【0122】
図2(a)、(b)は、本開示における集電シートを例示する概略平面図および断面図であり、図2(b)は図2(a)のA-A線断面図である。図2(a)、(b)に示すように、集電シート20は、集電シート用フィルム10と、集電シート用フィルム10の封止層4の面側に配置されたワイヤ11とを有する。なお、図2(a)は、集電シート用フィルムの封止層側から集電シートを見た概略平面図を示している。
【0123】
本開示における集電シートにおいては、上述の集電シート用フィルムを有することにより、バリア性を付与できる。したがって、集電シートを太陽電池に用いた場合には、バリア性を向上させることができ、信頼性を高めることができる。
【0124】
I.集電シートの構成
本開示における集電シートは、集電シート用フィルムと、ワイヤと、を有する。
【0125】
1.集電シート用フィルム
集電シート用フィルムは、ワイヤを支持する部材である。また、集電シート用フィルムは、太陽電池素子に対しワイヤを固定する部材である。
【0126】
集電シート用フィルムについては、上述した「A.集電シート用フィルム」で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0127】
後述するように、集電シートが複数枚の集電シート用フィルムを有する場合は、少なくとも1枚の集電シート用フィルムが、上述の集電シート用フィルムであればよい。この場合、集電シートは、集電シート用フィルムとして、上述の集電シート用フィルム以外の他の集電シート用フィルムを有していてもよい。中でも、集電シートが有する複数枚の集電シート用フィルムの全てが、上述の集電シート用フィルムであることが好ましい。
【0128】
2.ワイヤ
ワイヤは、集電シート用フィルムの封止層の面側に配置される。ワイヤは、例えば、太陽電池モジュールにおいて、太陽電池素子同士を接続するために用いられる。また、ワイヤは、例えば、単セル型の太陽電池において、太陽電池素子で発生した電気を集電するために用いられる。ワイヤは、通常、太陽電池素子の電極と接続するように配置される。
【0129】
ワイヤの断面形状は、典型的には、真円形状、楕円形状等の円形状であるが、これに限定されない。
【0130】
ワイヤの太さ、すなわちワイヤの断面の大きさは、太陽電池素子への太陽光の入射を妨げない程度であれば、特に限定されず、例えば、100μm以上300μm以下である。ワイヤの断面の大きさは、例えば、断面形状が円形状である場合は直径をいい、楕円である場合は長径をいい、多角形である場合は最大の対角線の長さをいう。
【0131】
ワイヤの材料は、所望の導電性を示すことができれば特に限定されず、一般的な太陽電池素子の集電シートに用いられるワイヤの材料と同様とすることができる。ワイヤの材料としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属材料を用いることができる。また、ワイヤは、例えば、コア部と、コア部の外部側に配置された表皮部とを有していてもよい。この場合、コア部の材料としては、例えば、上記金属材料を用いることができる。また、表皮部の材料としては、はんだを用いることができる。
【0132】
はんだの融点は、例えば、70℃以上140℃以下であることが好ましく、80℃以上135℃以下であることがより好ましい。はんだの融点が高すぎると、太陽電池素子にワイヤを接続する際に、上記集電シート用フィルムの各層を劣化させる可能性がある。
【0133】
このようなはんだとしては、例えば、Sn-In-Ag-Bi系、Sn-In系、Bi-Sn系等が挙げられる。
【0134】
II.集電シートの構造
本開示における集電シートにおいては、1枚の集電シート用フィルムに対し、少なくとも1本以上のワイヤが配置されていればよい。集電シートの導電性を高める観点からは、1枚の集電シート用フィルムに対し、複数本のワイヤが配置されていることが好ましい。
【0135】
集電シートが複数本のワイヤを有する場合、平面視上のワイヤの配列は、特に限定されず、公知の集電シートにおけるワイヤの配列と同様とすることができる。例えば、図2(a)に示すように、ワイヤ11がライン状に配置されていてもよく、図示しないが、ワイヤが格子状に配置されていてもよい。
【0136】
また、集電シートにおいて、ワイヤは、集電シート用フィルムの封止層の面側に配置される。例えば図2(b)に示すように、ワイヤ11の一部が集電シート用フィルム10の封止層4に埋め込まれ、ワイヤ11の一部が露出するように、ワイヤ11が配置されていることが好ましい。ワイヤを良好に固定できる。
【0137】
また、例えば、集電シート用フィルム10が透明バリア層2および接着層3の間に保護層を有さない場合には、図2(b)に示すように、ワイヤ11が透明バリア層2に接触しないように封止層4に埋め込まれていることが好ましい。
【0138】
また、例えば、集電シート用フィルム10が透明バリア層2および接着層3の間に保護層6を有する場合には、図5(a)に示すように、ワイヤ11が保護層6に接触しないように封止層4に埋め込まれていてもよく、図5(b)に示すように、ワイヤ11が保護層6に接触するように封止層4に埋め込まれていてもよい。ワイヤが保護層に接触するように封止層に埋め込まれている場合には、集電シートの厚さを薄くできるので、集電シートを用いた太陽電池を薄型化することができる。
【0139】
ワイヤの埋め込みの程度、すなわち、ワイヤの露出の程度は、特に限定されず、封止層の材料および厚さ、ワイヤの太さ、ならびに集電シートが配置される太陽電池素子の形態に応じて適宜選択できる。
【0140】
集電シートにおいては、例えば、複数枚の集電シート用フィルムに対し、同一のワイヤが配置されていてもよい。例えば、図6は、2枚の集電シート用フィルム10Aおよび集電シート用フィルム10Bに対し、同一のワイヤ11が配置されている例を示している。また、図6に示すように、隣接する集電シート用フィルム10A、10B同士は、互いに封止層4側の面が逆の面方向となるように配置されていてもよい。すなわち、一方の集電シート用フィルム10Aの封止層4側の面と、他方の集電シート用フィルム10Bの透明基材1側の面とが、同一の面方向に配置されていてもよい。集電シートが上記構造を有することにより、例えば図3(a)に示すように、2つの太陽電池素子31を直列に配置することが可能な集電シート20とすることができる。なお、図示しないが、隣接する集電シート用フィルム同士は、互いに封止層側の面が同一の面方向となるように配置されていてもよい。
【0141】
III.集電シートの製造方法
本開示における集電シートの製造方法としては、集電シート用フィルムの封止層の面側にワイヤを固定できる程度に埋め込むことができる方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。一例としては、集電シート用フィルムの封止層の面側にワイヤを置き、ワイヤを加熱することで、封止層中の樹脂成分の一部を溶融させて、ワイヤを埋め込む方法を挙げることができる。
【0142】
C.集電シート付き太陽電池素子
本開示における集電シート付き太陽電池素子は、上述の集電シートと、集電シートの封止層の面側に配置され、ワイヤと電気的に接続された太陽電池素子と、を有する。
【0143】
図3(a)~(c)は、本開示における集電シート付き太陽電池素子を例示する概略斜視図および断面図であり、図3(b)は図3(a)のA-A線断面図であり、図3(c)は図3(a)のB-B線断面図である。図3(a)~(c)に示すように、集電シート付き太陽電池素子30は、集電シート10と、集電シート10の封止層4の面側に配置され、ワイヤ11と電気的に接続された太陽電池素子31とを有する。図3(a)~(c)は、集電シート20が2枚の集電シート用フィルム10を有し、それぞれの集電シート用フィルム10に太陽電池素子31が配置されている例を示している。
【0144】
本開示における集電シート付き太陽電池素子においては、上述の集電シートを有することにより、バリア性を付与できる。したがって、集電シート付き太陽電池素子を太陽電池に用いた場合には、バリア性を向上させることができ、信頼性を高めることができる。
【0145】
I.集電シート付き太陽電池素子の構成
本開示における集電シート付き太陽電池素子は、集電シートと、太陽電池素子と、を有する。
【0146】
1.集電シート
集電シートについては、上述した「B.集電シート」で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0147】
集電シート付き太陽電池素子が複数枚の集電シートを有する場合、少なくとも1枚の集電シートが、上述の集電シートであればよい。この場合、集電シート付き太陽電池素子は、集電シートとして、上述の集電シート以外の他の集電シートを有していてもよい。中でも、全ての集電シートが、上述の集電シートであることが好ましい。
【0148】
また、集電シート付き太陽電池素子を太陽電池に用いた場合に、集電シートは、太陽電池の受光面側に位置するよう配置されることが好ましい。
【0149】
2.太陽電池素子
太陽電池素子は、一般的な太陽電池に用いられる素子と同様とすることができる。太陽電池素子としては、例えば、単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子、アモルファスシリコン型太陽電池素子、化合物半導体型太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、量子ドット型太陽電池素子、有機薄膜型太陽電池素子等が挙げられる。太陽電池素子の大きさ、形態等については、太陽電池の用途に応じて適宜選択できる。
【0150】
II.集電シート付き太陽電池素子の構造
集電シート付き太陽電池素子は、通常、集電シートと太陽電池素子とが積層された積層構造を有する。
【0151】
集電シート付き太陽電池素子は、太陽電池素子の集電シートの配置面を基準として見たとき、例えば図3(c)に示すように、配置面に対する垂直方向Dでの集電シート用フィルム10の厚さ、すなわち、太陽電池素子31の集電シート20が配置された面から、集電シート用フィルム10の太陽電池素子31とは反対側の面までの距離は、ワイヤ11が配置された領域が他の領域に対して厚い(距離が大きい)ことが好ましい。このような積層構造とすることにより、集電シート用フィルム10が効果的にワイヤ11を太陽電池素子31側に押圧でき、ワイヤ11の太陽電池素子31に対する接触不良等の不具合を防止できる。
【0152】
この場合、配置面に対する垂直方向Dのワイヤ11の最大距離y、すなわち、ワイヤ11の太陽電池素子31の集電シート20が配置された面からの最大距離yと、配置面に対する垂直方向Dの集電シート用フィルム10の最小距離x、すなわち、太陽電池素子31の集電シート20が配置された面から、集電シート用フィルム10の太陽電池素子31とは反対側の面までの距離のうちの最小距離xとの比率x/yは、例えば、2/3以下であることが好ましく、1/2以下であることがより好ましい。
【0153】
なお、上記比率x/yの下限は、封止層の厚さおよびワイヤの太さに応じて適宜調整される値ではあるが、例えば、1/20以上である。上記比率がx/yが上記範囲内であることにより、集電シート用フィルムを用いて、太陽電池素子に対しワイヤを良好に固定できる。
【0154】
ワイヤの太さ(直径等)および封止層の厚さを調整することにより、上記比率x/yを制御できる。また、後述するように、集電シートを太陽電池素子に熱圧着させる際の圧力を調整することによっても、上記比率x/yを制御できる。
【0155】
また、例えば図3(c)に示すように、集電シート付き太陽電池素子30の断面視において、上記最大距離yとなる位置から上記最小距離xとなる位置に向かって、太陽電池素子31の集電シート20側の面から、集電シート用フィルム10の太陽電池素子31とは反対側の面までの距離が徐々に小さくなっていることが好ましい。
【0156】
また、ワイヤが複数配置されている場合、例えば図3(c)に示すように、集電シート付き太陽電池素子30の断面視において、隣接するワイヤ11の間に、太陽電池素子31の集電シート20が配置された面から、集電シート用フィルム10の太陽電池素子31とは反対側の面までの距離のうち、最小の距離となる部分が配置されていることが好ましい。ワイヤ間に窪みができ、集電シートが凹凸形状を持つような構造になるので、集電シート用フィルムの太陽電池素子とは反対側の面の面積が大きくなる。これにより、集電シート付き太陽電池素子を有する太陽電池において、集電シート用フィルムと後述する封止材との接触面積が大きくなるので、封止材に対する密着性を向上させることができる。
【0157】
また、集電シート付き太陽電池素子においては、集電シート用フィルムが透明バリア層および接着層の間に保護層を有する場合には、上述の「B.集電シート」の項にも記載したように、図示しないが、ワイヤが保護層に接触するように封止層に埋め込まれていてもよい。これにより、集電シート付き太陽電池素子の厚さを薄くできるので、太陽電池を薄型化することができる。
【0158】
集電シート付き太陽電池素子は、少なくとも1つの太陽電池素子と、太陽電池素子の正極および負極の少なくとも一方の電極と接続された集電シートとを有していればよい。例えば、1つの太陽電池素子の正極および負極のそれぞれに集電シートが配置された、単セル型の太陽電池を構成する集電シート付き太陽電池素子であってもよい。また、例えば、集電シート付き太陽電池素子は、複数の太陽電池素子を集電シートを用いて並列または直列に接続した太陽電池モジュール型の太陽電池(太陽電池モジュール)を構成する集電シート付き太陽電池素子であってもよい。
【0159】
III.その他
本開示における集電シート付き太陽電池素子の製造方法は、太陽電池素子に対し、集電シートのワイヤを電気的に接続させて固定した構造を得ることができる方法であれば特に限定されない。例えば、太陽電池素子に対し、集電シートを仮接着する仮接着工程と、仮接着された集電シートを太陽電池素子に熱圧着させることにより、太陽電池素子に対し集電シートのワイヤを電気的に接続させて固定する固定工程とを有する製造方法を挙げることができる。仮接着方法および熱圧着方法については、公知の方法を用いることができ、例えば、真空熱ラミネート法を挙げることができる。また、固定工程は、例えば後述する「D.太陽電池」の項で説明するように、太陽電池の各部材を積層させて一体化する一体化工程と同時に行ってもよい。
【0160】
集電シート付き太陽電池素子は、通常、太陽電池を構成する部材として用いられる。なお、集電シート付き太陽電池素子が、例えば、1つの太陽電池素子と、太陽電池素子の正極または負極のうち、一方の電極のみと接続された集電シートとを有する場合、集電シート付き太陽電池素子は、例えば、上記の単セル型の太陽電池の一部、または、上記の太陽電池モジュールを構成する集電シート付き太陽電池素子の一部として用いることができる。
【0161】
D.太陽電池
本開示における太陽電池は、透明基板と、第1封止材と、上述の集電シート付き太陽電池素子と、第2封止材と、裏面保護シートと、をこの順にする。
【0162】
図7は、本開示における太陽電池を例示する概略断面図である。図7に示すように、太陽電池40は、透明基板41と、第1封止材42と、集電シート付き太陽電池素子30と、第2封止材43と、裏面保護シート44とを有する。
【0163】
本開示における太陽電池は、複数の集電シート付き太陽電池素子を有する太陽電池モジュールであってもよい。
【0164】
本開示における太陽電池においては、上述の集電シート付き太陽電池素子を有することにより、バリア性を向上させることができ、信頼性高めることができる。
【0165】
I.太陽電池の構成
本開示における太陽電池は、透明基板と、第1封止材と、集電シート付き太陽電池素子と、第2封止材と、裏面保護シートと、をこの順に有する。
【0166】
1.集電シート付き太陽電池素子
集電シート付き太陽電池素子については、上述した「C.集電シート付き太陽電池素子」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0167】
2.裏面保護シート
裏面保護シートは、上記透明基板とともに、太陽電池素子を保護する部材である。裏面保護シートは、透明性を有していてもよく、透明性を有していなくてもよい。裏面保護シートが透明性を有する場合は、太陽電池の両面を太陽光の受光面として用いることができる。裏面保護シートとしては、一般的な太陽電池に用いられる裏面保護シートと同様とすることができる。
【0168】
中でも、裏面保護シートは、後述の第2封止材側から順に、易接着層と、第2のバリアフィルムと、基材層とを有することが好ましい。
【0169】
なお、本明細書において、便宜上、裏面保護シートが有するバリアフィルムを、第2のバリアフィルムと称する。
【0170】
(1)第2のバリアフィルム
第2のバリアフィルムは、基材とバリア層とを有することができる。第2のバリアフィルムは、通常、基材が易接着層側、バリア層が基材層側になるように配置される。
【0171】
バリア層は、透明性を有していてもよく、透明性を有していなくてもよい。
【0172】
バリア層については、上記集電シート用フィルムに用いられる透明バリア層と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0173】
基材は、透明性を有していてもよく、透明性を有していなくてもよい。
【0174】
基材については、上記集電シート用フィルムに用いられる透明基材と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0175】
第2のバリアフィルムは、バリア層の基材とは反対の面側に第2のオーバーコート層を有することが好ましい。バリア性を向上させることができる。
【0176】
第2のオーバーコート層については、上記集電シート用フィルムに用いられるオーバーコート層と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0177】
(2)基材層
基材層は、一般的な太陽電池に用いられる裏面保護シートを構成する基材層と同様とすることができる。基材層としては、例えば、耐候性を有する樹脂フィルムを用いることができる。
【0178】
(3)易接着層
易接着層は、裏面保護シートと第2封止材との密着性を高めるための部材である。易接着層としては、一般的な太陽電池に用いられる裏面保護シートを構成する易接着層と同様とすることができる。易接着層としては、例えば、ポリエチレンフィルムが挙げられる。
【0179】
(4)その他
裏面保護シートにおいて、基材層および第2のガスバリアフィルムの間には、第3の接着層が配置されていてもよい。また、裏面保護シートにおいて、第2のガスバリアフィルムおよび易接着層の間には、第4の接着層が配置されていてもよい。第3の接着層および第4の接着層については、上記集電シート用フィルムに用いられる接着層と同様とすることができる。
【0180】
3.透明基板
透明基板は、裏面保護シートとともに、太陽電池素子を保護する部材である。また、透明基板は、通常、太陽電池の受光面側に配置され、受光面側の前面保護板として機能する。透明基板の透明性は、太陽電池素子の発電を阻害しない程度であれば特に限定されない。透明基板としては、一般的な太陽電池に用いられる透明基板と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0181】
4.第1封止材および第2封止材
第1封止材および第2封止材は、太陽電池素子を封止する部材である。第1封止材は、通常、太陽電池の受光面側に配置される。
【0182】
第1封止材および第2封止材は、熱可塑性樹脂を含有する。第1封止材および第2封止材に用いられる熱可塑性樹脂としては、一般的な太陽電池の封止材に用いられる熱可塑性樹脂と同様とすることができ、例えば、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の各種のオレフィン樹脂を主成分とする封止材を用いることができる。なお、これらの樹脂を主成分とするとは、全樹脂成分の中でもこれらの樹脂の割合が最も多いことをいう。
【0183】
第1封止材は、通常、紫外線吸収剤を含有する。紫外線による、透明基材や保護層の劣化、例えば、黄変、クラック、破断等を抑制できる。
【0184】
上記裏面保護シートが透明性を有する場合、第2封止材は、上記第1封止材と同様に、通常、紫外線吸収剤を含有する。
【0185】
紫外線吸収剤としては、一般的な太陽電池の封止材に用いられる紫外線吸収剤と同様とすることができる。
【0186】
第1封止材および第2封止材の厚さは、太陽電池の種類、大きさに応じて適宜選択される。
【0187】
II.太陽電池の製造方法
本開示における太陽電池の製造方法は、一般的な太陽電池の製造方法と同様とすることができる。一例としては、透明基板、第1封止材、集電シート付き太陽電池素子、第2封止材および裏面保護シートをこの順に積層した積層体を形成する積層体形成工程と、上記積層体に加熱および加圧処理することにより一体化して太陽電池とする一体化工程とを有する製造方法を挙げることができる。
【0188】
加熱および加圧処理は、特に限定されず、一般的な太陽電池の製造時において行われる処理と同様とすることができる。例えば、真空熱ラミネート法が好ましい。真空熱ラミネート法の条件は、特に限定されず、太陽電池の大きさ、各部材の種類等に応じて適宜選択できる。ラミネート温度は、例えば、130℃以上170℃以下であることが好ましい。また、ラミネート時間は、例えば、5分以上30分以下であることが好ましく、8分以上15分以下であることがより好ましい。
【0189】
III.用途
本開示における太陽電池の用途としては、例えば、電子機器用の太陽電池、屋外設置用の大型太陽電池等の種々の用途を挙げることができる。
【0190】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0191】
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
【0192】
[実施例1]
保護層および透明バリア層を有するバリアフィルムとして、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の面に厚さ10nmの酸化ケイ素蒸着膜が形成されたバリアフィルム(三菱ケミカル社製「テックバリア Tech LX」)を用いた。また、接着剤として、ポリカーボネート系の主剤(ロックペイント社製「KT-0035」)と、イソシアネート系の硬化剤(ロックペイント社製「H-039Z2」)とからなる2液型接着剤を用いた。また、ポリエチレン樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)(住友化化学社製「スミカセンCE4009」)を用いた。また、透明基材として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(デュポン社製「LBD」)を用いた。
【0193】
上記透明基材の片面に上記接着剤を厚さ5μmで塗布し、上記バリアフィルムの酸化ケイ素蒸着膜側の面とドライラミネート法を用いて貼り合わせを行った。続いて、接着剤硬化のために、45℃、5日間のエージングを行った。次に、上記バリアフィルムの保護層側の面に、上記接着剤をアンカー剤として塗布し、ポリエチレン樹脂を厚さ60μmで押し出して、封止層を形成した。さらに、上記封止層のバリアフィルムとは反対側の面にコロナ処理を施した。これにより、透明基材と、第2の接着層と、透明バリア層と、保護層と、接着層と、封止層とをこの順に有する集電シート用フィルムを得た。
【0194】
[実施例2]
下記のようにしてバリアフィルムを作製したこと以外は、実施例1と同様にして、集電シート用フィルムを作製した。これにより、透明基材と、第2の接着層と、オーバーコート層と、透明バリア層と、保護層と、接着層と、封止層とをこの順に有する集電シート用フィルムを得た。
【0195】
透明基材および透明バリア層を有するフィルムとして、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の面に厚さ10nmの酸化ケイ素蒸着膜(透明バリア層)が形成されたフィルム(三菱ケミカル社製「テックバリア Tech LX」)を用いた。
【0196】
また、オーバーコート層を形成するための樹脂組成物を調製した。具体的には、下記組成のA液に、下記組成のB液を加えて撹拌し、ゾルゲル法によりオーバーコート層用樹脂組成物を得た。
【0197】
<A液:混合液>
ポリビニルアルコール(PVA) 1.81質量部
イソプロピルアルコール 39.8質量部
イオン交換水 2.09質量部
【0198】
<B液:加水分解液>
オルトケイ酸テトラエチル(TEOS) 21.49質量部
イソプロピルアルコール 5.03質量部
0.5N塩酸水溶液 0.69質量部
イオン交換水 29.1質量部
【0199】
上記フィルムの透明バリア層上に、上記樹脂組成物を塗布し、150℃で30秒間加熱乾燥し、200℃で30秒間加熱処理を行った。これにより、透明基材と透明バリア層とオーバーコート層とをこの順に有するバリアフィルムを得た。
【0200】
[比較例1]
透明基材として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(デュポン社製「LBD」)を用いた。また、接着剤として、ポリカーボネート系の主剤(ロックペイント社製「KT-0035」)と、イソシアネート系の硬化剤(ロックペイント社製「H-039Z2」)とからなる2液型接着剤を用いた。また、ポリエチレン樹脂として、低密度ポリエチレン(LDPE)(住友化化学社製「スミカセンCE4009」)を用いた。
【0201】
上記透明基材の片面に、上記接着剤をアンカー剤として塗布し、上記ポリエチレン樹脂を厚さ60μmで押し出して、ポリエチレン樹脂を含む封止層を形成した。さらに、封止層の透明基材とは反対側の面にコロナ処理を施した。これにより、透明基材と接着層と封止層とをこの順に有する集電シート用フィルムを得た。
【0202】
[参考例1]
厚さ50μmの白色PETフィルム(デュポン社製「S-PV8W」)と、厚さ7μmのアルミニウム箔と、厚さ250μmの透明PETフィルム(デュポン社製「Mylar A S6」)と、厚さ30μmのポリエチレンフィルム(タマポリ社製「SE625NWT02」、白色LLDPE)とがこの順に、接着剤を介して積層された、裏面保護シートAを準備した。
【0203】
[参考例2]
厚さ140μmの透明PETフィルム(デュポン社製「AP」)と、実施例2で用いたバリアフィルムと、厚さ140μmの透明PETフィルム(デュポン社製「AP」)と、実施例2で用いたバリアフィルムとがこの順に、接着剤を介して積層され、さらに、透明PETフィルム側の面に、厚さ5μmのアクリル系樹脂をベースとする耐候性トップコート層が形成され、バリアフィルム側の面に厚さ1μmの易接着プライマー層が形成された、裏面保護シートBを準備した。
【0204】
[参考例3]
厚さ152μmの白色PETフィルム(デュポン社製「BP」)と、厚さ30μmのポリエチレンフィルム(タマポリ社製「SE625N」、白色LLDPE)とがこの順に、接着剤を介して積層された、裏面保護シートCを準備した。
【0205】
[製造例1]
基材層として、厚さ152μmの耐加水分解性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(デュポン社製「BP」)を用いた。また、易接着層として、厚さ30μmのポリエチレンフィルム(タマポリ社製「SE625N」)を用いた。また、接着剤として、ポリカーボネート系の主剤(ロックペイント社製「KT-0035」)と、イソシアネート系の硬化剤(ロックペイント社製「H-039Z2」)とからなる2液型接着剤を用いた。
【0206】
ドライラミネート法により、基材層と易接着層とを接着剤を介して積層した。これにより、基材層と第3の接着層と易接着層とをこの順に有する裏面保護シートDを得た。
【0207】
[製造例2]
基材層として、厚さ152μmの耐加水分解性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(デュポン社製「BP」)を用いた。また、第2のバリアフィルムとして、実施例2で用いた、透明基材と透明バリア層とオーバーコート層とをこの順に有するバリアフィルムを用いた。また、易接着層として、厚さ30μmのポリエチレンフィルム(タマポリ社製「SE625N」)を用いた。また、接着剤として、ポリカーボネート系の主剤(ロックペイント社製「KT-0035」)と、イソシアネート系の硬化剤(ロックペイント社製「H-039Z2」)とからなる2液型接着剤を用いた。
【0208】
ドライラミネート法により、基材層と第2のバリアフィルムと易接着層とをそれぞれ接着剤を介して積層した。これにより、基材層と第3の接着層と第2のバリアフィルムと第4の接着層と易接着層とをこの順に有する裏面保護シートEを得た。第2のバリアフィルムは、透明基材が易接着層側、オーバーコート層が基材層側になるように配置した。
【0209】
[評価]
(1)水蒸気透過度
集電シート用フィルムおよび裏面保護シートについて、ISO 15106-5:2015(差圧法)に準拠して、水蒸気透過度測定装置(Technolox社製の「DELTAPERM」)を用いて、温度40℃、相対湿度差90%RHの条件で、水蒸気透過度を測定した。
【0210】
(2)バリア性
まず、集電シート用フィルムおよび裏面保護シートを用いて、試験用太陽電池モジュールを作製した。具体的には、透明基板として、厚さ3.2mmの白板強化ガラスを用い、第1封止材および第2封止材として厚さ470μmのエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)シート(タキロンシーアイ社製、ファストキュアEVA)を用いた。次いで、透明基板と、第1封止材と、集電シート用フィルムと、塩化コバルト紙と、集電シート用フィルムと、第2封止材と、裏面保護シートとを、この順に積層し、設定温度150℃、真空引き5分、プレス7.5分、圧力100kPaの条件で真空ラミネートを行い、試験用太陽電池モジュールを作製した。塩化コバルト紙(アドバンテック東洋社製)は、予め80℃のオーブンで乾燥させて用いた。
【0211】
次に、試験用太陽電池モジュールに対して、高温高湿試験を実施した。高温高湿試験は、試験用太陽電池モジュールを、温度85℃、湿度85%RHに設定したオーブンに投入して行い、12時間、24時間、72時間、96時間、120時間経過後における塩化コバルト紙の呈色を目視により観察した。
【0212】
【表1】
【0213】
【表2】
【0214】
表1および表2から、集電シート用フィルムがバリアフィルムを有する場合には、バリア性が良好であることが確認された。特に、集電シート用フィルムおよび裏面保護シートの両方がバリアフィルムを有する場合(試験番号8、9)には、裏面保護シートがアルミニウム箔を有する場合(試験番号1)や、裏面保護シートが、水蒸気バリア性に優れ高価なバリアフィルムである場合(試験番号2)と、同程度の高温高湿試験結果が得られることが示された。
【0215】
本開示は、以下の[1]~[12]を提供する。
[1]太陽電池の集電シートに用いられる集電シート用フィルムであって、
透明基材と、透明バリア層と、接着層と、封止層と、をこの順に有する、集電シート用フィルム。
[2]上記透明バリア層と上記接着層との間に、保護層を有する、[1]に記載の集電シート用フィルム。
[3]上記透明バリア層と上記接着層との間に、オーバーコート層を有する、[1]または[2]に記載の集電シート用フィルム。
[4]水蒸気透過度が、1×10-3g/(m・day)以上1g/(m・day)以下である、[1]から[3]までのいずれかに記載の集電シート用フィルム。
[5]上記封止層が、ポリオレフィン樹脂を含有する、[1]から[4]までのいずれかに記載の集電シート用フィルム。
[6]上記ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン樹脂である、[5]に記載の集電シート用フィルム。
[7]上記封止層が、上記接着層とは反対の面に、表面処理部を有する、[1]から[6]までのいずれかに記載の集電シート用フィルム。
[8]太陽電池に用いられる集電シートであって、
[1]から[7]までのいずれかに記載の集電シート用フィルムと、
上記集電シート用フィルムの上記封止層の面側に配置されたワイヤと、
を有する、集電シート。
[9][8]に記載の集電シートと、
上記集電シートの上記封止層の面側に配置され、上記ワイヤと電気的に接続された太陽電池素子と、
を有する、集電シート付き太陽電池素子。
[10]透明基板と、第1封止材と、[9]に記載の集電シート付き太陽電池素子と、第2封止材と、裏面保護シートと、をこの順に有する、太陽電池。
[11]上記太陽電池は、複数の上記集電シート付き太陽電池素子を有する太陽電池モジュールである、[10]に記載の太陽電池。
[12]上記裏面保護シートが、上記第2封止材側から順に、易接着層と、バリアフィルムと、基材層とを有する、[10]または[11]に記載の太陽電池。
【符号の説明】
【0216】
1 … 透明基材
2 … 透明バリア層
3 … 接着層
4 … 封止層
5 … バリアフィルム
6 … 保護層
7 … オーバーコート層
10、10A、10B … 集電シート用フィルム
11 … ワイヤ
20 … 集電シート
30 … 集電シート付き太陽電池素子
31 … 太陽電池素子
40 … 太陽電池
41 … 透明基板
42 … 第1封止材
43 … 第2封止材
44 … 裏面保護シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7