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特開2023-178639ワイヤーハーネス及びワイヤーハーネスの取付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178639
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス及びワイヤーハーネスの取付構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20231211BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20231211BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20231211BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20231211BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20231211BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H02G3/30
H01B7/00 301
F16B2/08 E
B60R16/02 623Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091437
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山下 隼人
【テーマコード(参考)】
3J022
5G309
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
3J022DA14
3J022EA15
3J022EB14
3J022EC14
3J022ED02
3J022ED06
3J022ED20
3J022FA05
3J022FB03
3J022GA02
3J022GB45
3J022GB75
5G309AA01
5G309AA09
5G357DA06
5G357DA10
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD05
5G357DE05
5G357DG05
5G363AA08
5G363AA16
5G363BA02
5G363BA07
5G363DA15
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】部品点数の削減、又は、ワイヤーハーネスの細径化に有利となる、ワイヤーハーネス及びワイヤーハーネスの取付構造を提供する。
【解決手段】ワイヤーハーネス10は、幹線11と、幹線11を覆う外装保護部材20と、外装保護部材20の開口端20aから露出した幹線11の一部に分岐部12aを設定し、当該分岐部12aから外装保護部材20が配置されている方向に折り曲げられた枝線12と、枝線12の分岐部12aからの折り曲げ状態を維持するように枝線12と外装保護部材20とを束ねる結束部材30とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線と、
前記幹線を覆う外装保護部材と、
前記外装保護部材の開口端から露出した前記幹線の一部に分岐部を設定し、当該分岐部から前記外装保護部材が配置されている方向に折り曲げられた枝線と、
前記枝線の前記分岐部からの折り曲げ状態を維持するように前記枝線と前記外装保護部材とを束ねる結束部材と、
を備える、ワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記枝線の一部は、前記外装保護部材の外表面と接触する、請求項1に記載のワイヤーハーネス。
【請求項3】
ワイヤーハーネスを被取付部材に取り付ける取付構造であって、
前記ワイヤーハーネスは、請求項1又は2に記載のワイヤーハーネスであり、
前記被取付部材は、前記結束部材を貫通させる孔部を有し、
前記結束部材は、前記孔部に貫通された状態で、前記被取付部材の一部と、前記枝線及び前記外装保護部材とを束ねることで、前記被取付部材に前記ワイヤーハーネスを取り付ける、ワイヤーハーネスの取付構造。
【請求項4】
前記ワイヤーハーネスは、前記枝線に接続されたコネクタを備え、
前記被取付部材は、前記結束部材の位置を基準として、前記外装保護部材の前記開口端が位置する側とは反対側の部位で、前記コネクタを保持する、請求項3に記載のワイヤーハーネスの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス及びワイヤーハーネスの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力の供給や通信信号の伝達のために車両内に配索されるワイヤーハーネスがある。特許文献1は、幹線と、幹線から分岐する複数の枝線とを有し、幹線及び枝線の双方が保護用のチューブで覆われている、ワイヤーハーネスの外装構造に関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-57853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているワイヤーハーネスでは、幹線のみならず、すべての枝線も保護用のチューブで覆われているため、少なくとも枝線の数に合わせたチューブ分、部品点数が増加する。また、幹線及び枝線の双方が保護用のチューブで覆われることで、幹線に枝線が同束されて二重経路となる部位では、ワイヤーハーネスの収束径が大きくなることも、例えば、周辺部品と干渉しやすくなる点で懸念される。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、部品点数の削減、又は、ワイヤーハーネスの細径化に有利となる、ワイヤーハーネス及びワイヤーハーネスの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るワイヤーハーネスは、幹線と、幹線を覆う外装保護部材と、外装保護部材の開口端から露出した幹線の一部に分岐部を設定し、当該分岐部から外装保護部材が配置されている方向に折り曲げられた枝線と、枝線の分岐部からの折り曲げ状態を維持するように枝線と外装保護部材とを束ねる結束部材と、を備える。
【0007】
また、本発明の態様に係るワイヤーハーネスの取付構造は、ワイヤーハーネスを被取付部材に取り付ける取付構造であって、ワイヤーハーネスは、上記のワイヤーハーネスであり、被取付部材は、結束部材を貫通させる孔部を有し、結束部材は、孔部に貫通された状態で、被取付部材の一部と、枝線及び外装保護部材とを束ねることで、被取付部材にワイヤーハーネスを取り付ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品点数の削減、又は、ワイヤーハーネスの細径化に有利となる、ワイヤーハーネス及びワイヤーハーネスの取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るワイヤーハーネスの構成図である。
図2】一実施形態に係るワイヤーハーネスの側面図である。
図3】比較例としてのワイヤーハーネスの構成図である。
図4】比較例としてのワイヤーハーネスの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて実施形態に係るワイヤーハーネス及びワイヤーハーネスの取付構造について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0011】
図1は、一実施形態に係るワイヤーハーネス10の構成図である。図1では、包含される電線類の配置及び接続の関係を明らかにするために、ワイヤーハーネス10が概略的に描かれている。ワイヤーハーネス10は、例えば、自動車等の車両内に配索され、複数の車載機器同士を電気的に接続して通信信号の伝達を行う部品である。
【0012】
ワイヤーハーネス10は、幹線11と、少なくとも1つの枝線と、少なくとも1つの外装保護部材と、結束部材30とを備える。
【0013】
幹線11は、ワイヤーハーネス10における主たる電線群である。幹線11として結束される電線類は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、第1電線11a、第2電線11b及び第3電線11cとして例示されている。これらの電線類は、例えば、信号線、信号GND線又は電力用アース線等であってもよい。信号線は、単線又はツイスト線等で構成され、車載機器同士の間で通信信号を伝送する。信号GND線は、信号線に付随して車載機器同士の間で接続され、当該車載機器同士で回路動作の基準となる電位を合わせる。電力用アース線は、車載機器の電源系を接地する。
【0014】
枝線は、幹線11の一部から分岐した電線類である。本実施形態では、一例として、第1枝線12と、第2枝線13との2つの枝線がある。これらの枝線は、信号線又は電力用アース線等であってもよい。
【0015】
外装保護部材は、幹線11を覆い、保護する。本実施形態では、一例として、第1外装保護部材20と、第2外装保護部材21との2つの外装保護部材がある。これらの外装保護部材は、ビニールチューブ又は粘着テープ等で構成される。なお、ワイヤーハーネス10では、すべての枝線のうちの少なくとも1つの枝線、例えば、本実施形態における第1枝線12は、外装保護部材の類で覆われておらず、外部に露出している。
【0016】
ここで、外装保護部材は、幹線11の全体を覆わずに、幹線11の一部を外部に露出させる。本実施形態では、第1外装保護部材20と第2外装保護部材21とは、互いに離間している。具体的には、第1外装保護部材20の一方の端部である第1開口端20aと、第2外装保護部材21の一方の端部である第2開口端21aとは、互いに離間しつつ対向する。つまり、第1開口端20aと第2開口端21aとの間では、幹線11の一部が外部に露出することになる。なお、第1外装保護部材20の他方の端部は、後述する第1コネクタ40の近傍にあってもよい。同様に、第2外装保護部材21の他方の端部は、後述する第2コネクタ41の近傍にあってもよい。
【0017】
第1外装保護部材20と第2外装保護部材21とが上記のように幹線11を覆うものとすると、少なくとも、第1枝線12は、第1開口端20aから第2開口端21a側に露出した幹線11の一部に第1分岐部12aを設定する。また、第1枝線12は、第1分岐部12aから第1外装保護部材20が配置されている方向に折り曲げられる。一方、第2枝線13は、第2開口端21aから第1開口端20a側に露出した幹線11の一部に第2分岐部13aを設定してもよい。
【0018】
結束部材30は、少なくとも第1枝線12の第1分岐部12aからの折り曲げ状態を維持するように、第1枝線12と第1外装保護部材20とを束ねる。結束部材30は、結束バンド又は結束テープ等であってもよい。
【0019】
また、ワイヤーハーネス10は、不図示の複数の車載機器ごとに、直接的に又は間接的に接続される複数のコネクタ類を備える。図1に示す例では、ワイヤーハーネス10は、第1コネクタ40、第2コネクタ41、第3コネクタ42及び第4コネクタ43の計4つのコネクタを備えるものとしているが、それら以外のコネクタを備えてもよい。
【0020】
第1コネクタ40は、幹線11の一方の端部に接続され、第2コネクタ41は、幹線11の他方の端部に接続される。第3コネクタ42は、第1分岐部12aから分岐した第1枝線12の端部に接続される。第4コネクタ43は、第2分岐部13aから分岐した第2枝線13の端部に接続される。接続される電線類の種類や数によっては、これらのコネクタは、多芯コネクタであってもよいし、又は、いずれかのコネクタに代わり、圧着端子等であってもよい。
【0021】
このようなワイヤーハーネス10は、車両内の設置部1に、被取付部材を介して設置され得る。以下、設置部1におけるワイヤーハーネス10の作用、及び、ワイヤーハーネス10の取付構造について説明する。
【0022】
図2は、実施例としてのワイヤーハーネス10の側面図である。ワイヤーハーネス10の取付構造の一部として、車両内の設置部1には、ブラケット50が設けられる。
【0023】
ブラケット50は、設置部1にワイヤーハーネス10が設置されるに際して介在する被取付部材である。ブラケット50は、例えば、金属板体に、切削、穴あけ又は折り曲げ等の各種加工を施すことで形成される。なお、ブラケット50は、金属材に限らず、各種の樹脂材又はカーボン材等で形成されるものであってもよい。
【0024】
また、ブラケット50は、例えば、取付板部50aと、コネクタ取付板部50bと、支持板部50cと、被取付板部50dとを有する。
【0025】
取付板部50aは、ワイヤーハーネス10の側面の一部を取付面50eに接触させて、ワイヤーハーネス10を取り付ける。取付板部50aは、第1分岐部12aが設けられている幹線11の露出部位と、第1開口端20aを含む第1外装保護部材20の先端部位とが取付面50e上に位置し得る形状を有する。なお、取付板部50aは、第2分岐部13aも併せて設けられている幹線11の露出部位の他に、第2開口端21aを含む第2外装保護部材21の先端部位も取付面50e上に位置し得る形状を有する。そのため、取付板部50aの具体的な形状は、例えば、取付状態にあるワイヤーハーネス10の延伸方向を基準とすると、当該延伸方向に合わせて長い矩形状であってもよい。
【0026】
ここで、図2に示す例では、第1枝線12と第1外装保護部材20とを束ねる結束部材30として、結束バンドを採用する。この場合、取付板部50aは、結束部材30としての結束バンドを各々貫通させる第1孔部51aと第2孔部51bとを有する。第1孔部51aと第2孔部51bとは、取付状態にあるワイヤーハーネス10の延伸方向に沿った取付板部50aの長手方向に対して垂直な方向で互いに対向するように形成される。
【0027】
一方、図2に示す例では、更に、第2外装保護部材21の外表面と接触するように設けられる固定部材60としての結束バンドを採用する。この場合、取付板部50aは、固定部材60としての結束バンドを各々貫通させる第3孔部52aと第4孔部52bとを有してもよい。第3孔部52aと第4孔部52bとは、取付板部50aの長手方向に対して垂直な方向で互いに対向するように形成される。また、第3孔部52aは、取付板部50aの長手方向で第1孔部51aと対向するように形成されてもよいし、第4孔部52bは、取付板部50aの長手方向で第2孔部51bと対向するように形成されてもよい。
【0028】
コネクタ取付板部50bは、第1分岐部12aから分岐した第1枝線12の端部に接続されている多芯コネクタとしての第3コネクタ42を取り付ける。コネクタ取付板部50bは、結束部材30の位置を基準として、第1外装保護部材20の第1開口端20aが位置する側とは反対側の部位で第3コネクタ42を保持し得る形状を有する。そのため、コネクタ取付板部50bは、例えば、取付板部50aと連続する平面を有し、かつ、取付板部50aの長手方向の端部のうち、第3孔部52a及び第4孔部52bの組よりも第1孔部51a及び第2孔部51bの組の側に近い端部に連接されてもよい。また、コネクタ取付板部50bは、取付板部50aとの連接位置から、取付板部50aの長手方向に対して垂直となる方向に折れ曲がる形状を有してもよい。このような形状によれば、コネクタ取付板部50bは、第3コネクタ42を、取付板部50aの長手方向に対して垂直となる方向に沿い、かつ、第1外装保護部材20から離れる方向に向かう姿勢で取り付けることができる。
【0029】
支持板部50cは、取付板部50aの長手方向の端部のうち、コネクタ取付板部50bが連接される側とは反対側に連接される。支持板部50cは、取付板部50aにワイヤーハーネス10を取り付けた際に第2外装保護部材21と干渉しないように、取付板部50aの取付面50eとは反対の表面側に折れ曲がる形状を有する。支持板部50cは、取付板部50aを一定の姿勢で支持するとともに、被取付板部50dに一定の姿勢で支持される。また、被取付板部50dは、支持板部50cの一部と連続し、車両内の設置部1に対して、ボルト等の締結部材を介して取り付けられる。支持板部50c及び被取付板部50dの具体的形状は、個々の車両における設置部1の具体的構造に依拠するため、特に限定されるものではない。
【0030】
なお、図1では、ブラケット50及び固定部材60が設けられるとした場合の各々位置が、二点鎖線で概略的に示されている。
【0031】
ブラケット50に対してワイヤーハーネス10を取り付けるとき、作業者は、まず、第1分岐部12aが設けられている幹線11の露出部位が取付面50e上に位置するように、ワイヤーハーネス10の一部を取付板部50aに寄せる。次に、作業者は、第3コネクタ42をコネクタ取付板部50bに取り付ける。
【0032】
次に、作業者は、結束部材30としての結束バンドを第1孔部51aと第2孔部51bとに貫通された状態で、第1外装保護部材20の第1開口端20aの近傍で、第1枝線12と第1外装保護部材20とを束ねる。これにより、結束部材30は、少なくとも第1外装保護部材20を取付面50eに押し付けつつ、ブラケット50の一部である取付板部50aと、第1枝線12及び第1外装保護部材20とを一体的に束ねることになる。このとき、結束部材30は、第1枝線12の一部が第1外装保護部材20の外表面と接触するように束ねてもよい。
【0033】
更に、作業者は、固定部材60としての結束バンドを第3孔部52aと第4孔部52bとに貫通された状態で、第2外装保護部材21の第2開口端21aの近傍で、第2外装保護部材21を固定する。これにより、固定部材60は、第2外装保護部材21を取付面50eに押し付けつつ、取付板部50aと第1外装保護部材20とを一体的に固定することになる。そして、ブラケット50に対するワイヤーハーネス10の取付作業が完了する。
【0034】
ワイヤーハーネス10が取付状態にあるとき、第1分岐部12a及び第2分岐部13aの双方が設けられている幹線11の露出部位は、結束部材30と固定部材60との間の領域に位置することになる。なお、第2分岐部13aから分岐する第2枝線13は、図2に示すように、直接的に設置部1内で配索されてもよい。又は、第2枝線13は、第1枝線12と同様に、固定部材60を結束部材30と同等の結束部材と見立てて、第2外装保護部材21と束ねられてもよい。
【0035】
次に、ワイヤーハーネス10及びワイヤーハーネス10の取付構造の効果について説明する。
【0036】
本実施形態に係るワイヤーハーネス10は、幹線11と、幹線11を覆う第1外装保護部材20とを備える。また、ワイヤーハーネス10は、第1外装保護部材20の第1開口端20aから露出した幹線11の一部に第1分岐部12aを設定し、第1分岐部12aから第1外装保護部材20が配置されている方向に折り曲げられた第1枝線12を備える。更に、ワイヤーハーネス10は、第1枝線12の第1分岐部12aからの折り曲げ状態を維持するように第1枝線12と第1外装保護部材20とを束ねる結束部材30を備える。
【0037】
まず、ワイヤーハーネス10及びワイヤーハーネス10の取付構造の効果の理解を容易とするために、本実施形態の特徴を採用しない比較例について説明する。
【0038】
図3は、本実施形態に関する図1に対応するように描画された、比較例としてのワイヤーハーネス110の構成図である。図4は、本実施形態に関する図2に対応するように描画された、比較例としてのワイヤーハーネス110の側面図である。なお、図1及び図2に示す設置部1及びワイヤーハーネス10と同一構成の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0039】
ワイヤーハーネス110では、第3コネクタ42には、本実施形態における第1枝線12に代わる第1枝線112が接続される。第1枝線112は、幹線11のうち、本実施形態における第1外装保護部材20に代わる第1外装保護部材120で覆われている部位に設定された第1分岐部112aから分岐する。そして、第1枝線112は、幹線11を覆う第1外装保護部材120とは別の第3外装保護部材120bで覆われる。第3外装保護部材120bの一方の端部は、開口端120c(図3参照)として、第3コネクタ42に接続される第1枝線112の端部を露出させる。第3外装保護部材120bの他方の端部は、第1外装保護部材120に接続される。
【0040】
ここで、このようなワイヤーハーネス110を、本実施形態で例示したブラケット50に取り付ける場合を想定する。まず、ブラケット50の構造上、第1孔部51a、第2孔部51b、第3孔部52a及び第4孔部52bの各形成位置、及び、第3コネクタ42の取付位置が確定している。そのため、第2分岐部13aが設けられている幹線11の露出部位近傍の取付構造は、本実施形態と同様である。ただし、比較例では、第1孔部51a及び第2孔部51bに貫通して第1外装保護部材120のみを固定するものは、結束部材30に代わる第2の固定部材61である。
【0041】
一方、比較例では、第3コネクタ42の位置が予め規定されていることに加えて、第1枝線112が第3外装保護部材120bに覆われている。この場合、第1分岐部112aは、ブラケット50における取付面50e上に位置させることができない。そのため、第1枝線112は、ブラケット50外に位置する第1分岐部112aから、幹線11との二重経路としてブラケット50に向けて延伸することになる。
【0042】
もし、第1枝線112が、ブラケット50外からブラケット50に向かうよう配索されている状態で、第3外装保護部材120bで覆われていないとすると、適切に保護されない。つまり、比較例としてのワイヤーハーネス110では、幹線11を覆う第1外装保護部材120及び第2外装保護部材21の他に、第1枝線112を覆う第3外装保護部材120bを要し、その結果、部品点数が増加する。
【0043】
また、第3外装保護部材120bで覆われた第1枝線112が、第1外装保護部材120で覆われた幹線11との二重経路として配索される場合、ブラケット50外で、第1外装保護部材120と第3外装保護部材120bとを結束させる結束部材62も要し得る。したがって、ワイヤーハーネス110の取付構造全体としても、他の結束部材62分、部品点数が増加することもあり得る。
【0044】
更に、ワイヤーハーネス110のうち、第3外装保護部材120bで覆われた第1枝線112が、第1外装保護部材120で覆われた幹線11との二重経路として配索される部位では、収束径が大きくなる。したがって、例えば、ワイヤーハーネス110が周辺部品と干渉しやすくなる点で懸念がある。
【0045】
これに対して、本実施形態に係るワイヤーハーネス10によれば、第1枝線12は、第1開口端20aから露出した幹線11の一部に設定された第1分岐部12aから第1外装保護部材20が配置されている方向に折り曲げられている。また、結束部材30は、第1分岐部12aからの折り曲げ状態を維持するように第1枝線12と第1外装保護部材20とを束ねる。したがって、例えば、ワイヤーハーネス10がブラケット50のような被取付部材に取り付けられるような場合、少なくとも、第1枝線12では外装保護部材を要しない構造とし得る分、ワイヤーハーネス10の部品点数を削減させることができる。
【0046】
また、ワイヤーハーネス10によれば、上記のように第1枝線12では外装保護部材を要しない構造とし得る分、ワイヤーハーネス10の収束径を小さくすることができる。
【0047】
以上のように、本実施形態によれば、部品点数の削減、又は、ワイヤーハーネス10の細径化に有利となる、ワイヤーハーネス10を提供することができる。
【0048】
また、ワイヤーハーネス10では、第1枝線12の一部は、第1外装保護部材20の外表面と接触してもよい。
【0049】
このワイヤーハーネス10によれば、結束部材30が、第1分岐部12aから第1外装保護部材20が配置されている方向に折り曲げられた第1枝線12が直接的に第1外装保護部材20の外表面と接触するように、第1枝線12を結束させることができる。その結果、ワイヤーハーネス10を可能な限り細径化させることができる。
【0050】
一方、ワイヤーハーネス10を例えばブラケット50である被取付部材に取り付ける取付構造では、ワイヤーハーネスは、上記のワイヤーハーネス10であり、被取付部材は、結束部材30を貫通させる第1孔部51a及び第2孔部51bを有してもよい。結束部材30は、第1孔部51a及び第2孔部51bに貫通された状態で、被取付部材の一部と、第1枝線12及び第1外装保護部材20とを束ねることで、被取付部材にワイヤーハーネス10を取り付けてもよい。
【0051】
この取付構造によれば、ワイヤーハーネス10において部品点数を削減することに加えて、比較例において例示したような被取付部材の外部で要する他の結束部材62を削減することもできる。したがって、ワイヤーハーネス10の取付構造全体としても、部品点数を削減することができる。
【0052】
更に、ワイヤーハーネス10の取付構造では、ワイヤーハーネス10は、第1枝線12に接続された第3コネクタ42を備えてもよい。また、被取付部材は、結束部材30の位置を基準として、第1外装保護部材20の第1開口端20aが位置する側とは反対側の部位で第3コネクタ42を保持してもよい。
【0053】
この取付構造によれば、被取付部材がブラケット50である例で示したように、ブラケット50にワイヤーハーネス10を取り付けたとき、第1分岐部12aが設けられている幹線11の露出部位をブラケット50の取付面50e上に位置させやすい。その結果、第1枝線12は、全体として取付面50eに沿って配索されることになるので、外装保護部材で覆われていなくとも、実質的にブラケット50により保護されるという利点がある。
【0054】
なお、上記各図を用いた説明では、例えば結束バンドである結束部材30を、ブラケット50の取付板部50aに形成された第1孔部51aと第2孔部51bとの一組の孔部に貫通させる場合を例示した。しかしながら、ブラケット50は、このような形状に限られず、例えば、結束部材30を貫通させる孔部は、1つであってもよい。この場合、結束部材30は、1つの孔部を貫通するとともに、取付板部50aの外周縁側から回り込むことで、ブラケット50の一部と、第1枝線12及び第1外装保護部材20とを束ねることができる。
【0055】
以上、一実施形態を説明したが、実施形態はこれらに限定されるものではなく、実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 ワイヤーハーネス
11 幹線
12 第1枝線
12a 第1分岐部
20 第1外装保護部材
20a 第1開口端
30 結束部材
42 第3コネクタ
50 ブラケット
51a 第1孔部
51b 第2孔部
図1
図2
図3
図4