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特開2023-178640受電装置、給電装置、光給電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178640
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】受電装置、給電装置、光給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/30 20160101AFI20231211BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20231211BHJP
【FI】
H02J50/30
H02J50/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091439
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】津田 真司
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 俊
(72)【発明者】
【氏名】木村 良之
(72)【発明者】
【氏名】石井 隆裕
(57)【要約】
【課題】空間伝送が行われる給電光の照射の影響を抑制すること。
【解決手段】給電光112の空間伝送により給電装置110Bから受電装置310Bへの給電を行う光給電システム1Bであって、給電装置110Bは、給電光112を出力する発光部111と、給電光112のビーム径を可変調節する調節部150Bとを有し、受電装置310Bは、受光した給電光112を電力に変換する受光部311と、給電光112のビーム径の適否に応じて給電装置110Bに応答を行う応答部350Bとを有し、調節部150Bによって給電光112の出力開始からのビーム径を漸次縮小させると共に応答に基づいて縮小を停止させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電光の空間伝送により給電装置から受電装置への給電を行う光給電システムであって、
前記給電装置は、前記給電光を出力する発光部と、前記給電光のビーム径を可変調節する調節部とを有し、
前記受電装置は、受光した前記給電光を電力に変換する受光部と、前記給電光のビーム径の適否に応じて前記給電装置に応答を行う応答部とを有し、
前記調節部によって前記給電光の出力開始からのビーム径を漸次縮小させると共に前記応答に基づいて縮小を停止させる光給電システム。
【請求項2】
前記応答部は、前記受光部の出力に基づいて前記応答を行う請求項1に記載の光給電システム。
【請求項3】
前記受光部における前記給電光の受光状態の異常を前記給電装置に通知する通知部を備え、
前記給電装置は、前記通知によって前記給電光の出力を停止する請求項1に記載の光給電システム。
【請求項4】
前記発光部は、光-電気間の変換効果を奏する半導体領域を構成する半導体材料が、レーザー波長500nm以下のレーザー媒体とされた半導体レーザーである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光給電システム。
【請求項5】
前記受光部は、光-電気間の変換効果を奏する半導体領域を構成する半導体材料が、レーザー波長500nm以下のレーザー媒体とされた光電変換素子である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光給電システム。
【請求項6】
給電光の空間伝送により受電装置への給電を行う給電装置であって、
前記給電光を出力する発光部と、前記給電光のビーム径を可変調節する調節部とを有し、
前記調節部によって前記給電光の出力開始からのビーム径を漸次縮小させると共に、前記給電光のビーム径に応じて得られる応答に基づいて縮小を停止させる給電装置。
【請求項7】
前記発光部は、光-電気間の変換効果を奏する半導体領域を構成する半導体材料が、レーザー波長500nm以下のレーザー媒体とされた半導体レーザーである請求項6に記載の給電装置。
【請求項8】
給電装置からの給電光の空間伝送により給電が行われる受電装置であって、
受光した前記給電光を電力に変換する受光部と、前記給電光のビーム径の適否に応じて前記給電装置に応答を行う応答部とを有し、
前記給電装置によって出力開始からの前記給電光のビーム径が漸次縮小されると、前記応答部が前記給電光のビーム径に応じて前記給電装置に応答を行う受電装置。
【請求項9】
前記応答部は、前記受光部が前記給電光を変換した電力に応じて前記応答を行う請求項8に記載の受電装置。
【請求項10】
前記受光部は、光-電気間の変換効果を奏する半導体領域を構成する半導体材料が、レーザー波長500nm以下のレーザー媒体とされた光電変換素子である請求項8又は請求項9に記載の受電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受電装置、給電装置、光給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、電力を光(給電光と呼ばれる)に変換して伝送し、当該給電光を電気エネルギーに変換して電力として利用する光給電システムが研究されている。
従来の光給電システムは、パワーの大きな給電光が外部の物体に照射されると損傷を与える虞があることに鑑みて、以下の構成によって対策を施していた。
【0003】
即ち、従来の光給電システムは、光ファイバーの両端部に第一の反射鏡と第二の反射鏡とを配置し、第一の反射鏡と光ファイバーの一端部と間に半導体光増幅器を配置し、第二の反射鏡との外側に受光モジュールを配置する構成としていた(例えば、特許文献1参照)。
上記の光給電システムは、光ファイバーの両側に位置する二つの反射鏡と半導体光増幅器とがレーザー共振器を構成し、当該レーザー共振器から出力されたレーザー光(給電光)を受光モジュールが受光することで電気エネルギーに変換する。
一方、光ファイバーが外れてレーザー光が外部に漏洩すると、第一の反射鏡と第二の反射鏡による共振が行えなくなるので、漏洩したレーザー光のパワーが低減されて無力化されるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/032148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光給電システムに光ファイバーを使用すると給電光に生じるロスが大きくなることから、近年は、空間伝送による給電が検討されている。
しかしながら、上記従来の光給電システムは、光ファイバーが必須の構成であるため、空間伝送を行う光給電システムでは給電光の照射の影響を抑制することができない、という問題があった。
【0006】
本開示は、空間伝送が行われる給電光の照射の影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る光給電システムは、
給電光の空間伝送により給電装置から受電装置への給電を行う光給電システムであって、
前記給電装置は、前記給電光を出力する発光部と、前記給電光のビーム径を可変調節する調節部とを有し、
前記受電装置は、受光した前記給電光を電力に変換する受光部と、前記給電光のビーム径の適否に応じて前記給電装置に応答を行う応答部とを有し、
前記調節部によって前記給電光の出力開始からのビーム径を漸次縮小させると共に前記応答に基づいて縮小を停止させる。
【0008】
本開示に係る給電装置は、
給電光の空間伝送により受電装置への給電を行う給電装置であって、
前記給電光を出力する発光部と、前記給電光のビーム径を可変調節する調節部とを有し、
前記調節部によって前記給電光の出力開始からのビーム径を漸次縮小させると共に、前記給電光のビーム径に応じて得られる応答に基づいて縮小を停止させる。
【0009】
本開示に係る受電装置は、
給電装置からの給電光の空間伝送により給電が行われる受電装置であって、
受光した前記給電光を電力に変換する受光部と、前記給電光のビーム径の適否に応じて前記給電装置に応答を行う応答部とを有し、
前記給電装置によって出力開始からの前記給電光のビーム径が漸次縮小されると、前記応答部が前記給電光のビーム径に応じて前記給電装置に応答を行う。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、空間伝送が行われる給電光の照射を受けた場合の影響を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1実施形態に係る光給電システムの構成図である。
図2】本開示の第2実施形態に係る光給電システムの構成図である。
図3】本開示の第3実施形態に係る光給電システムの構成図である。
図4図4(A)~図4(C)は給電光のビーム径の適正値を示す説明図である。
図5図5(A)及び図5(B)は給電光の受光状態の異常のパターンを示す説明図である。
図6】調節部の制御装置が行う給電光の出力制御を示すフローチャートである。
図7】本開示の第4実施形態に係る光給電システムの構成図である。
図8】本開示の第5実施形態に係る光給電システムの構成図である。
図9】本開示の第6実施形態に係る光給電システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本開示の一実施形態につき図面を参照して説明する。
【0013】
(1)システム概要
〔第1実施形態〕
図1に示すように本実施形態の光給電システム1Aは、給電装置(PSE: Power Sourcing Equipment)110と、受電装置(PD: Powered Device)310を備える。
上記給電装置110は電力を光エネルギーに変換して供給する装置であり、上記受電装置310は光エネルギーの供給を受け当該光エネルギーを電力に変換する装置である。
【0014】
光給電システム1Aは、光ファイバーの伝送によるエネルギー損失を解消するために、給電光の空間伝送により給電装置110から受電装置310への給電を行う。このような光給電の方式は、PoA(Power over Air)と呼ばれる。なお、ここでいう空間伝送とは、給電装置110と受電装置310の間の空間伝送区間中に光ファイバーを配置せず、空間のみが存在する状態で給電光の伝送を行うことを示す。この場合、上記空間は真空状態でも良いし、空気、その他の気体が存在する状態でもよい。以下に示す各実施形態では、特に言及しない場合には、給電装置110と受電装置310の間には大気が存在する場合を例示する。
【0015】
また、給電装置110と受電装置310の給電光112の伝送経路の全てを空間伝送区間と構成しなくともよい。例えば、伝送経路の一部を光ファイバーで構成し、残る一部を空間伝送経路で構成してもよい。但し、以下に示す各実施形態では、特に言及しない場合には、給電装置と受電装置の給電光の伝送経路の全てを空間伝送区間で構成する場合を例示する。
【0016】
また、給電装置110とで受電装置310との間の給電光の伝送経路には、当該伝送経路を周囲から隔離する隔壁や防護柵等を設けてもよいが、以下に示す各実施形態では、特に言及しない場合には、これらの隔壁や防護柵等を設けない場合を例示する。
【0017】
給電装置110は、発光部としての給電用半導体レーザー111を含む。
給電装置110は電源に接続され、給電用半導体レーザー111等が電気駆動される。
給電用半導体レーザー111は、上記電源からの電力によりレーザー発振して給電光112を出力する。
給電装置110からの給電光112は、空気中を伝搬し、受電装置310に入力される。
【0018】
受電装置310は、受光部としての光電変換素子311を含む。
光電変換素子311は、空気中を伝送されてきた給電光112を電力に変換する。光電変換素子311により変換された電力が、受電装置310内で必要な駆動電力とされる。さらに受電装置310は光電変換素子311により変換された電力を外部機器用に出力可能とされる。
【0019】
給電用半導体レーザー111及び光電変換素子311の光-電気間の変換効果を奏する半導体領域を構成する半導体材料が500nm以下の短波長のレーザー波長をもった半導体とされる。
短波長のレーザー波長をもった半導体は、バンドギャップが大きく光電変換効率が高いので、光給電の発電側及び受電側における光電変換効率が向上され、光給電効率が向上する。
そのためには、同半導体材料として、例えば、ダイヤモンド、酸化ガリウム、窒化アルミニウム、GaN等、レーザー波長(基本波)が200~500nmのレーザー媒体の半導体材料を用いてもよい。
また、同半導体材料として、2.4eV以上のバンドギャップを有した半導体が適用される。
例えば、ダイヤモンド、酸化ガリウム、窒化アルミニウム、GaN等、バンドギャップ2.4~6.2eVのレーザー媒体の半導体材料を用いてもよい。
なお、レーザー光は長波長ほど伝送効率が良く、短波長ほど光電変換効率が良い傾向にある。したがって、長距離伝送の場合には、レーザー波長(基本波)が500nmより大きいレーザー媒体の半導体材料を用いてもよい。また、光電変換効率を優先する場合には、レーザー波長(基本波)が200nmより小さいレーザー媒体の半導体材料を用いてもよい。
これらの半導体材料は、給電用半導体レーザー111及び光電変換素子311のいずれか一方に適用してもよい。給電側又は受電側における光電変換効率が向上され、光給電効率が向上する。
【0020】
以上のように、光給電システム1Aは、給電光112の伝送経路として光ファイバーを利用せず、空間中を伝送している。一般に、光ファイバーを給電光112の伝送経路とした場合には、損失がおよそ30[dB/km]程度となり、空間伝送の場合には損失がおよそ1[dB/km]程度にまで低減することが可能となる。
また、給電用半導体レーザー111の光-電気間の変換効果を奏する半導体領域を構成する半導体材料が500nm以下の短波長のレーザー波長をもった半導体とする場合、さらには、ダイヤモンド、酸化ガリウム、窒化アルミニウム、GaN等のレーザー波長(基本波)が200~500nmのレーザー媒体の半導体材料を用いる場合には、伝送距離の長さに応じて光ファイバーによる損失が生じる傾向となるが、空間伝送の場合には、顕著に損失を低減することが可能となる。
【0021】
さらに、給電光112の伝送経路として光ファイバーを利用せず、空間中を利用する空間伝送を行っている。このため、光ファイバーに規定されているハンドリングパワーの制限を受けないことから、大きな出力で給電光112を出力させることができ、受電装置310により大きな電力を供給することが可能となる。
【0022】
〔第2実施形態〕
図2に示すように本実施形態の光給電システム1は、空間伝送を行う給電(PoA:Power over Air)システムと光通信システムとを含むものであり、給電装置(PSE: Power Sourcing Equipment)110を含む第1のデータ通信装置100と、光ファイバーケーブル200と、受電装置(PD: Powered Device)310を含む第2のデータ通信装置300とを備える。
給電装置110は、給電用半導体レーザー111を含む。第1のデータ通信装置100は、給電装置110のほか、データ通信を行う発信部120と、受信部130とを含む。第1のデータ通信装置100は、データ端末装置(DTE: Data Terminal Equipment)、中継器(Repeater)等に相当する。発信部120は、信号用半導体レーザー121と、モジュレーター122とを含む。受信部130は、信号用フォトダイオード131を含む。
【0023】
光ファイバーケーブル200は、信号光の伝送路を形成する光ファイバー250を含む。
【0024】
受電装置310は、光電変換素子311を含む。第2のデータ通信装置300は、受電装置310のほか、発信部320と、受信部330と、データ処理ユニット340とを含む。第2のデータ通信装置300は、パワーエンドステーション(Power End Station)等に相当する。発信部320は、信号用半導体レーザー321と、モジュレーター322とを含む。受信部330は、信号用フォトダイオード331を含む。データ処理ユニット340は、受信した信号を処理するユニットである。また、第2のデータ通信装置300は、給電ネットワークにおけるノードである。または第2のデータ通信装置300は、他のノードと通信するノードでもよい。
【0025】
第1のデータ通信装置100は電源に接続され、給電用半導体レーザー111、信号用半導体レーザー121、モジュレーター122、信号用フォトダイオード131等が電気駆動される。また、第1のデータ通信装置100は、給電ネットワークにおけるノードである。または第1のデータ通信装置100は、他のノードと通信するノードでもよい。
給電用半導体レーザー111は、上記電源からの電力によりレーザー発振して給電光112を出力する。
【0026】
光電変換素子311は、空間伝送されてきた給電光112を電力に変換する。光電変換素子311により変換された電力は、発信部320、受信部330及びデータ処理ユニット340の駆動電力、その他の第2のデータ通信装置300内で必要となる駆動電力とされる。さらに第2のデータ通信装置300は、光電変換素子311により変換された電力を外部機器用に出力可能とされていてもよい。
【0027】
一方、発信部120のモジュレーター122は、信号用半導体レーザー121からのレーザー光123を送信データ124に基づき変調して信号光125として出力する。
受信部330の信号用フォトダイオード331は、光ファイバーケーブル200を通して伝送されてきた信号光125を電気信号に復調し、データ処理ユニット340に出力する。データ処理ユニット340は、当該電気信号によるデータをノードに送信し、その一方で当該ノードからデータを受信し、送信データ324としてモジュレーター322に出力する。
発信部320のモジュレーター322は、信号用半導体レーザー321からのレーザー光323を送信データ324に基づき変調して信号光325として出力する。
受信部130の信号用フォトダイオード131は、光ファイバーケーブル200を通して伝送されてきた信号光325を電気信号に復調し出力する。当該電気信号によるデータがノードに送信され、その一方で当該ノードからのデータが送信データ124とされる。
【0028】
(2)給電光のビーム径の適正化を図る構成の適用
次に、給電光112のビーム径の適正化を図る構成が適用された光給電システムについて説明する。
以下に説明する各実施形態において、第1実施形態又は第2実施形態と同じ構成については同じ符号を付して重複する説明は省略する。
【0029】
〔第3実施形態〕
図3は、給電光112のビーム径の適正化を図る構成が適用された第3実施形態に係る光給電システム1Bを示す構成図である。
第3実施形態の光給電システム1Bは、給電装置110Bと、受電装置310Bとを備える。
【0030】
給電装置110Bは、給電用半導体レーザー111と、給電光112のビーム径を可変調節する調節部150Bとを備える。
受電装置310Bは、光電変換素子311と、給電光112のビーム径の適否に応じて給電装置110Bに応答を行う応答部350Bとを備える。
【0031】
調節部150Bは、給電用半導体レーザー111の給電光112のビーム径を可変とする光学素子151Bと、当該光学素子151Bを制御する制御装置152Bと、受電装置310Bの応答部350Bからのビーム径の適正状態を示す応答を受信する応答受信部153Bとを有する。
【0032】
光学素子151Bは、例えば、ビームエキスパンダーや可変焦点レンズ等から構成される。光学素子151Bは、給電光112の光軸に沿って並んだ複数のレンズと一部のレンズを光軸方向に移動させるアクチュエータとを有する。
上記アクチュエータにより移動可能なレンズの光軸方向の位置を制御することにより、給電光112のビーム径を任意に調整することができる。
アクチュエータは、動作量を外部からの制御指令に基づいて任意に制御可能なアクチュエータ、例えば、ステッピングモータやボイスコイルモータ等を利用することができる。
また、調節部150Bは、コリメータレンズを有する構成とし、出力する給電光112を平行光化すると共に、当該平行光からなる給電光112のビーム径を調整可能としてもよい。
【0033】
制御装置152Bは、給電用半導体レーザー111及び光学素子151Bを制御対象とし、給電用半導体レーザー111に対する給電光112の出力と停止の動作、及び、光学素子151Bによる給電光112のビーム径の調整を行うことができる。
なお、上記制御装置152Bは、マイクロコンピュータから構成されてもよいし、アナログ回路又はデジタル回路を利用したシーケンサから構成されてもよい。
【0034】
応答受信部153Bは、例えば、フォトダイオードからなり、受電装置310Bの応答部350Bからの応答である信号光112Bを受光して電気信号に復調し、制御装置152Bに出力する。
なお、受電装置310Bの応答部350Bからの信号光112Bは、ビーム径の適正状態を示す応答である場合に加えて、給電光112の受光状態の異常の通知である場合と給電光112の停止状態からの再開許可の通知である場合とがある。これらについては後述する。
【0035】
応答部350Bは、信号光112Bとしてのレーザー光を出力する信号用半導体レーザー351Bと、所定条件に応じて信号用半導体レーザー351Bによる信号光112Bの出力を行わせる制御装置352Bと、予備電源353Bとを有する。
【0036】
制御装置352Bは、給電光112の受光により光電変換素子311が出力する電力を監視して、給電光112のビーム径の適否の判定及び受光状態の異常の判定を行う。
そして、制御装置352Bは、上記各判定結果に基づいて、ビーム径の適正状態を示す応答又は給電光112の受光状態の異常の通知としての信号光112Bを信号用半導体レーザー351Bから出力させる制御を行う。
なお、上記制御装置352Bは、マイクロコンピュータから構成されてもよいし、アナログ回路又はデジタル回路を利用したシーケンサから構成されてもよい。
【0037】
予備電源353Bは、給電光112の受光状態の異常が生じた場合に、給電光112の受光状態の異常の通知としての信号光112Bを信号用半導体レーザー351Bから出力させるための電源である。
給電光112の受光状態の異常が生じると、信号用半導体レーザー351Bが信号光112Bを出力するための電力が給電光112から得られなくなるおそれがあるので、そのような場合に、予備電源353Bが電力を供給する。
予備電源353Bは、一次電池でも良いし、二次電池やキャパシタでもよい。予備電源353Bを二次電池やキャパシタで構成する場合には、給電光112を受光したときに充電を行う構成としてもよい。
【0038】
図4(A)~図4(C)は給電光112のビーム径sの適正値を示す説明図である。
給電用半導体レーザー111は、一定の出力で給電光112を出射する。そして、図4(A)及び図4(B)に示すように、受電装置310Bの光電変換素子311における給電光112のビーム径sは、受電装置310Bの光電変換素子311の受光面311aよりも大きい場合には、給電光112の一部が電力に変換されないので光給電効率が低下する。
これに対して、給電光112のビーム径sが、光電変換素子311の受光面311aよりも小さい場合には、給電光112の全体を電力に変換することができる。
【0039】
一方、給電光112のビーム径sが小さくなると、照射範囲のエネルギー密度が高くなるため、給電光112の照射範囲内に異物(物体)が進入した場合に、照射部位が発熱により破損するおそれがある。
従って、給電光112のビーム径sは、図4(C)に示すように、光電変換素子311の受光面311aに収まる範囲で最大径とすることで、光給電効率を高く維持し、異物に対する影響も抑制することができる。つまり、図4(C)の給電光112のビーム径sは、光電変換素子311の受光面311aに収まる範囲での最大径が適正値ということができる。
【0040】
図5(A)及び図5(B)は給電光112の受光状態の異常のパターンを示す説明図である。
給電装置110Bの給電用半導体レーザー111から受電装置310Bの光電変換素子311までの給電光112の空間中の経路上に異物hが進入すると、図5(A)のように給電光112が完全に遮断されるか、図5(B)のように給電光112の一部が遮蔽されるかにより、光電変換素子311の出力は、大きく低下を生じる。
従って、受電装置310Bの応答部350Bの制御装置152Bは、給電開始以降、光電変換素子311の出力を監視して、図5(A)又は図5(B)に示す給電光112の受光状態の異常の発生を判定する。
なお、制御装置152Bは、光電変換素子311の出力に閾値を定め、閾値を下回った場合に受光状態の異常の発生と判定しても良いし、光電変換素子311の出力の低下率の大きさに閾値を定めて、光電変換素子311の出力の低下率が閾値を超えた場合に受光状態の異常の発生と判定しても良い。
【0041】
図6は調節部150Bの制御装置152Bが行う給電光112の出力制御を示すフローチャートである。
図4(A)~図6に基づいて、調節部150Bの制御装置152Bが行う制御とこれに対応して応答部350Bの制御装置352Bが行う制御の詳細とについて説明する。
【0042】
まず、調節部150Bの制御装置152Bは、ビーム径が、光電変換素子311の受光面311aよりも明らかに大きい初期値となるように調節部150Bの光学素子151Bを制御して、給電光112の出力を開始する(ステップS1)。
制御装置152Bには、光電変換素子311の受光面311aの縦横の幅が既知である場合には、縦横のいずれの幅よりも大きくなる値が初期値として登録されている。また、受光面311aの縦横の幅が既知ではない場合には、受電装置310Bの光電変換素子311として技術常識の範囲で採り得る値よりも大きくなる値が初期値として制御装置152Bに登録されている。
【0043】
そして、制御装置152Bには、給電光112の照射開始と共に、光学素子151Bを制御して、給電光112のビーム径を漸次縮小させる(ステップS3)。
このとき、図4(A)に示すように、受電装置310B側では、光電変換素子311の受光面311aの外側にも給電光112が照射されるので、光電変換素子311から出力される電力量は、給電光112の出力に対して小さくなる。
さらに、図4(B)に示すように、給電光112のビーム径を漸次縮小されると、受光面311aにおける給電光112の密度が漸次高くなるので、光電変換素子311から出力される電力量は、漸増する。
【0044】
応答部350Bの制御装置352Bは、光電変換素子311が給電光112の受光を開始すると、電力の供給を受けて、給電光112の受光開始からの光電変換素子311が出力する電力の変化を監視する。
そして、給電光112のビーム径が漸次縮小する過程で、図4(C)に示すように、給電光112のビーム径が受光面311aの内側の範囲に収まるサイズ(前述した給電光112のビーム径の適正値)に到達すると、光電変換素子311が出力する電力は、漸増を停止して一定の状態となる。
応答部350Bの制御装置352Bは、光電変換素子311が出力する電力の漸増の停止を検出すると、給電光112のビーム径が受光面311aの内側の範囲に収まるサイズになったことを認識すると共に、信号用半導体レーザー351Bを制御して、ビーム径の適正状態を示す応答としての信号光112Bの出力を行う。
【0045】
一方、調節部150Bの制御装置152Bは、給電光112のビーム径の縮小の開始以降、応答受信部153Bによる応答部350Bからの信号光112Bの受信を監視する(ステップS5)。
そして、信号光112Bの受信が検出されない場合には、給電光112のビーム径の縮小を継続し、信号光112Bの受信が検出された場合には、給電光112のビーム径が適正値に達したことが認識され、制御装置152Bは、光学素子151Bによる給電光112のビーム径の縮小を停止して、ビーム径を適正値に維持する(ステップS7)。
【0046】
ビーム径の適正状態を示す応答としての信号光112Bの出力を行った後、応答部350Bの制御装置352Bは、光電変換素子311が出力する電力によって、図5(A)に示す異物hによる給電光112の遮断又は図5(B)に示す異物hによる給電光112の一部遮蔽による電力の低下又は急減の発生を監視する。
そして、電力の低下又は急減の発生が検出された場合には、応答部350Bの制御装置352Bは、給電光112の受光状態の異常の通知としての信号光112Bを信号用半導体レーザー351Bから出力させる。
【0047】
一方、調節部150Bの制御装置152Bは、給電光112のビーム径を適正値に維持する制御以降は、応答受信部153Bによる応答部350Bからの信号光112Bの受信を再び監視する(ステップS9)。
そして、再び、信号光112Bの受信が検出されると、給電光112の受光状態の異常発生が認識され、制御装置152Bは、給電用半導体レーザー111からの給電光112の出力を停止する(ステップS11)。
【0048】
その後、調節部150Bの制御装置152Bは、給電の再開が可能か否かを確認するために、給電用半導体レーザー111からの短時間の給電光112の出力を定期的に実行する(ステップS13)。
【0049】
これに対して、応答部350Bの制御装置352Bは、給電光112による給電が停止されて電源を喪失するため、予備電源353Bからの供給電力によって、光電変換素子311における給電光112の受光による電力の有無を監視する。
この時点で、図5(A)に示す異物hによる給電光112の遮断又は図5(B)に示す異物hによる給電光112の一部遮蔽等の受光状態の異常が解消されていれば、給電の再開が可能か否かを確認するための給電光112を受光して、光電変換素子311から一定の電力が検出される。
従って、応答部350Bの制御装置352Bは、給電光112の受光状態の異常が解消していることを認識することができ、再開許可の通知としての信号光112Bを信号用半導体レーザー351Bから出力させる。
【0050】
一方、調節部150Bの制御装置152Bは、給電の再開が可能か否かを確認するための給電光112の出力を行うたびに、応答受信部153Bによる応答部350Bからの信号光112Bの受信を監視する(ステップS15)。
そして、応答部350Bからの信号光112Bの受信が得られない場合には、ステップS13に戻って給電の再開が可能か否かを確認するための給電光112の出力を行う。
また、応答部350Bからの信号光112Bの受信が検出された場合には、ステップS7に戻って前述したビーム径の適正値での給電光112の出力を再開する。
【0051】
以上のように、光給電システム1Bでは、調節部150Bの光学素子151Bにより給電光112の出力開始からの給電光112のビーム径を漸次縮小させると共に、給電光112のビーム径の適否に応じて得られる応答としての信号光112Bに基づいて縮小を停止させる制御を行っている。
これにより、給電光112のビーム径の適正化を図ることができ、光給電効率を高く維持しつつ、給電光112の照射範囲内に進入した異物hに対する影響を低減又は抑制することが可能となる。
【0052】
また、光給電システム1Bは、受電装置310Bが給電光112のビーム径の適否に応じて応答を行う応答部350Bを有するので、ビーム径の適否の判断を受電装置310B側で行うことができ、給電光112のビーム径について容易に監視することができ、給電光112のビーム径の適正化をより良好に行うことが可能となる。
特に、応答部350Bは、光電変換素子311の出力に基づいて応答を行うので、既設の構成を利用して給電光112のビーム径の適否を検出することができ、専用の検出装置を不要とし、部品点数の低減によるコスト低減、装置資源の有効活用を図ることが可能となる。
【0053】
また、光給電システム1Bでは、受電装置310Bが、光電変換素子311における給電光112の受光状態の異常を給電装置110Bに通知する通知部として機能する応答部350Bを備え、給電装置110Bは、通知によって給電光112の出力を停止するので、受光状態の異常の原因が、給電光112の照射範囲内に進入した異物hである場合に、当該異物hに対する給電光112の照射を速やかに停止することができ、この場合も、給電光112の照射範囲内に進入した異物hに対する影響を低減又は抑制することが可能となる。
【0054】
なお、第3実施形態の光給電システム1Bにおいて、調節部150Bと応答部350Bとの間で、応答、異常通知、再開許可の信号光112Bを空間伝送で伝える構成を例示しているが、当該信号光112Bについては、光ファイバーを用いて伝送してもよい。
さらに、調節部150Bと応答部350Bとの間における、応答、異常通知、再開許可の通知は、光信号に限らず、電波による無線通信や電気信号による有線通信で送る構成としてもよい。
【0055】
〔第4実施形態〕
図7は給電光112のビーム径の適正化を図る構成が適用された第4実施形態に係る光給電システム1Cを示す構成図である。第4実施形態において、既に説明した他の実施形態と同一の構成については同符号を付して重複する説明は省略する。
【0056】
光給電システム1Cは、給電装置110Cと、受電装置310Cとを備える。
【0057】
給電装置110Cは、給電用半導体レーザー111と、給電光のビーム径を可変調節する調節部150Cとを備える。
受電装置310Cは、光電変換素子311と、給電光112のビーム径の適否に応じて給電装置110Cに応答を行う応答部350Cとを備える。
【0058】
調節部150Cは、給電用半導体レーザー111の給電光112のビーム径を可変とする光学素子151Bと、当該光学素子151Bを制御する制御装置152Cと、受電装置310Cの応答部350Cからの応答や通知を受信する応答受信部153Cとを有する。
【0059】
受電装置310Cの応答部350Cからの応答は、給電光112の反射光からなる信号光112Cにより行われる。このため、調節部150Cの応答受信部153Cは、信号光112Cを受光して検出信号を制御装置152Cに入力する光電変換素子やフォトダイオードからなる。
【0060】
制御装置152Cは、給電用半導体レーザー111及び調節部150Bを制御対象とし、これらに対する制御及び応答受信部153Cにおいて信号光112Cを受光したときに行う処理については、前述した制御装置152Bと同一である。
この制御装置152Cも、マイクロコンピュータから構成されてもよいし、アナログ回路又はデジタル回路を利用したシーケンサから構成されてもよい。
【0061】
応答部350Cは、給電光112を調節部150Cの応答受信部153Cに向けて反射する可動式の反射体を備えた反射装置351Cと、反射装置351Cの制御を行う制御装置352Cと、予備電源353Bとを有する。
【0062】
制御装置352Cは、前述した制御装置352Bと同一の手法により給電光112のビーム径の適否の判定及び受光状態の異常の判定を行う。
制御装置352Cも、マイクロコンピュータから構成されてもよいし、アナログ回路又はデジタル回路を利用したシーケンサから構成されてもよい。
【0063】
反射装置351Cは、光電変換素子311の受光面311aの手前に配置され、反射体を給電光112の伝送経路内となる反射位置と伝送経路外となる退避位置との間で移動可能に支持する。
反射装置351Cは、反射体を上記二位置の間で移動させるアクチュエータを有し、制御装置352Cによって反射体を各位置に移動させる制御が行われる。
反射位置にある反射体は、給電装置110Cからの給電光112を調節部150Cの応答受信部153Cに向けて反射することができ、反射光としての信号光112Cを調節部150Cに送信することができる。
【0064】
応答部350Cは、上記構成により、給電光112の受光状態の異常を給電装置110Cに通知する通知部としても機能する。
【0065】
光給電システム1Cは、上記構成により、光給電システム1Bの調節部150Bの制御装置152Bが行う図6に示す給電光112の出力制御と同じ制御を行うことが可能である。
但し、図5(A)に示すような給電光112が完全に遮断される受光状態の異常が発生した場合には、給電光112の反射光からなる信号光112Cを送信することができない(図5(B)の受光状態の異常の場合には信号光112Cの送信は可能)。このため、光給電システム1Cにおける給電光112の出力制御の際には、図6におけるステップS9以降の処理は省略してもよい。
【0066】
光給電システム1Cは、上記構成により、光給電システム1Bと同じ技術的効果を有すると共に、応答部350Cには、信号用半導体レーザー等の通信を行うための構成を不要とすることができる。このため、給電光112から得られた電力の消費を抑えることができ、他の用途に電力を供給することが可能となる。
【0067】
〔第5実施形態〕
図8は給電光112のビーム径の適正化を図る構成が適用された第5実施形態に係る光給電システム1Dを示す構成図である。第5実施形態において、光給電システム1Cと異なる点のみについて説明し、既に説明した他の実施形態と同一の構成については同符号を付して重複する説明は省略する。
【0068】
光給電システム1Dは、受電装置の光電変換素子311の受光面311aの周囲に応答部としての反射体351Dを備える点が光給電システム1Cと異なっている。
反射体351Dは、光電変換素子311の受光面311aの外縁部において、当該受光面311aの外縁部と殆ど隙間が生じないように設けられており、受光面311aの外側に照射された給電光112は全て、調節部150Cの応答受信部153Cに向けて反射されるように構成されている。
【0069】
光給電システム1Dでは、給電光112の出力開始時には、受光面311aの外側に照射される給電光112は、反射体351Dにより反射され、その反射光は、信号光112Dとして調節部150Cの応答受信部153Cに入射される。従って、信号光112Dが応答受信部153Cによって検出されている間は、制御装置152Cは、給電光112のビーム径が適正値よりも大きい状態であることを認識することができる。
そして、給電光112が漸次縮小されると、受光面311a内に収まり、反射体351Dによる反射が行われず、信号光112Dが応答受信部153Cによって検出されなくなり、制御装置152Cは、給電光112のビーム径が適正値に達したことを認識することができる。つまり、信号光112Dが途絶えることが、給電光112のビーム径が適正値に到達したことを示す応答に該当する。
この応答が得られた時点で、給電光112のビーム径の縮小化を停止し、ビーム径を適正値に維持する制御が行われる。
【0070】
上記光給電システム1Dは、上記制御によって給電光112のビーム径の適正化を図ることができ、光給電システム1Cと同様に、ビーム径の適正化により技術的効果を得ることができる。
さらに、光給電システム1Dは、上記構成により、応答部を反射体351Dのみで構成することができ、応答部の構成の簡略化並びに応答部による電力消費をなくすことができ、給電光112から得られた電力の消費を極めて低減することができ、他の用途により多くの電力を供給することが可能となる。
【0071】
〔第6実施形態〕
図9は、給電光112のビーム径の適正化を図る構成が適用された第6実施形態に係る光給電システム1Eを示す構成図である。
第6実施形態の光給電システム1Eは、第2実施形態の光給電システム1における第1のデータ通信装置100に調節部150Eを加え、第2のデータ通信装置300に応答部及び通知部としての機能を持たせた構成である。
以下の説明では、光給電システム1Eについて、光給電システム1と異なる点のみについて説明する。
【0072】
調節部150Eは、前述した光学素子151Bと、光学素子151B及び給電用半導体レーザー111を制御する制御装置152Eとを備える。
制御装置152Eは、前述した光給電システム1Bの制御装置152Bと同じ給電光112の出力制御(図6)を実行する。
【0073】
光給電システム1Eにおいて、応答部が行う処理(給電光112の出力制御に伴って実行される給電光112の受光開始からの光電変換素子311が出力する電力の変化を監視する処理、給電光112の受光状態の異常を監視する処理、受光状態の異常の解消を判定する処理)については、第2のデータ通信装置300が有するデータ処理ユニット340が実行する。
さらに、応答部が行う第2のデータ通信装置300の受電装置310からのビーム径の適正状態を示す応答、通知部が行う給電光112の受光状態の異常の通知及び給電光112の停止状態からの再開許可の通知は、第2のデータ通信装置300が有する発信部320が発する信号光325によって行われる。
これらの信号は、第1のデータ通信装置100の受信部130で受信され、制御装置152Eに入力される。
これらにより、制御装置152Eは、前述した制御装置152Bと同じ給電光112の出力制御(図6)を実行することができる。
【0074】
光給電システム1Eは、上記構成により、光給電システム1Bと同じ技術的効果を得ることができる。
【0075】
なお、光給電システム1Eは、発信部320がモジュレーター322を備えているので、当該モジュレーター322によって、ビーム径の適正状態を示す応答と給電光112の受光状態の異常の通知と給電光112の停止状態からの再開許可の通知とを個別に識別する情報を含ませて、調節部150Eに送信することができる。これにより、信号光325を受信した調節部150Eは、受信した信号光325が、ビーム径の適正状態を示す応答と給電光112の受光状態の異常の通知と給電光112の停止状態からの再開許可の通知のいずれを示すものであるかを識別することができる。
前述した光給電システム1Bでは、ビーム径の適正状態を示す応答と、受光状態の異常の通知と、再開許可の通知とは、いずれも同一の信号光112Bが利用されている。そして、受信した信号光112Bが、ビーム径の適正状態を示す応答と受光状態の異常の通知と再開許可の通知のいずれであるかを判別することなく、いずれの処理工程(タイミング)で受信したか否かによって、制御装置152Bがそれぞれの応答又は通知に対応する制御を実行する構成となっている。
これに対して、光給電システム1Eのモジュレーター322によって、ビーム径の適正状態を示す応答と給電光112の受光状態の異常の通知と給電光112の停止状態からの再開許可の通知とを個別に識別可能とした場合には、これらの応答又は通知が決められた処理工程(タイミング)でのみ送信する制約がなくなるので、給電光112のビーム径の適否の判断と受光状態の異常の判定とをいずれも任意のタイミングで実行することができ、これらに対する制御を速やかに行うことが可能となる。
【0076】
上記第6実施形態では、信号光125,325を光ファイバーケーブル200を通して伝送する構成を例示しているが、これらの信号光125,325も空間伝送する構成としてもよい。
【0077】
[その他]
以上、本開示の各実施形態について説明した。しかし、本開示は上記の実施形態に限られない。
例えば、給電光112の伝送経路の全てを空間伝送とせずに、伝送経路の一部を光ファイバーで構成し、残る一部を空間伝送で構成してもよい。
その場合、空間伝送区間の最も給電装置110側に光学素子151Bを設けることが好ましい。
また、例えば、発信部120及び320は、信号用半導体レーザーが出力するレーザー光をモジュレーターによって変調する、いわゆる外部変調方式でレーザー光を変調しているが、信号用半導体レーザーがレーザー光を直接的に変調させて出力する、いわゆる直接変調方式でレーザー光を変調してもよい。
【0078】
以下、本開示の一実施形態を示す。一実施形態において、
(1)給電光の空間伝送により給電装置から受電装置への給電を行う光給電システムであって、
前記給電装置は、前記給電光を出力する発光部と、前記給電光のビーム径を可変調節する調節部とを有し、
前記受電装置は、受光した前記給電光を電力に変換する受光部と、前記給電光のビーム径の適否に応じて前記給電装置に応答を行う応答部とを有し、
前記調節部によって前記給電光の出力開始からのビーム径を漸次縮小させると共に前記応答に基づいて縮小を停止させる。
【0079】
(2)上記(1)の光給電システムにおいて、
前記応答部は、前記受光部の出力に基づいて前記応答を行う。
【0080】
(3)上記(1)又は(2)の光給電システムにおいて、
前記受光部における前記給電光の受光状態の異常を前記給電装置に通知する通知部を備え、
前記給電装置は、前記通知によって前記給電光の出力を停止する。
【0081】
(4)上記(1)から(3)のいずれか一つの光給電システムにおいて、
前記発光部は、光-電気間の変換効果を奏する半導体領域を構成する半導体材料が、レーザー波長500nm以下のレーザー媒体とされた半導体レーザーである。
【0082】
(5)上記(1)から(4)のいずれか一つの光給電システムにおいて、
前記受光部は、光-電気間の変換効果を奏する半導体領域を構成する半導体材料が、レーザー波長500nm以下のレーザー媒体とされた光電変換素子である。
【0083】
(6)給電光の空間伝送により受電装置への給電を行う給電装置であって、
前記給電光を出力する発光部と、前記給電光のビーム径を可変調節する調節部とを有し、
前記調節部によって前記給電光の出力開始からのビーム径を漸次縮小させると共に、前記給電光のビーム径に応じて得られる応答に基づいて縮小を停止させる。
【0084】
(7)上記(6)の給電装置において、
前記発光部は、光-電気間の変換効果を奏する半導体領域を構成する半導体材料が、レーザー波長500nm以下のレーザー媒体とされた半導体レーザーである。
【0085】
(8)給電装置からの給電光の空間伝送により給電が行われる受電装置であって、
受光した前記給電光を電力に変換する受光部と、前記給電光のビーム径の適否に応じて前記給電装置に応答を行う応答部とを有し、
前記給電装置によって出力開始からの前記給電光のビーム径が漸次縮小されると、前記応答部が前記給電光のビーム径に応じて前記給電装置に応答を行う。
【0086】
(9)上記(6)の受電装置において、
前記応答部は、前記受光部が前記給電光を変換した電力に応じて前記応答を行う。
【0087】
(10)上記(8)又は(9)の受電装置において、
前記受光部は、光-電気間の変換効果を奏する半導体領域を構成する半導体材料が、レーザー波長500nm以下のレーザー媒体とされた光電変換素子である。
【符号の説明】
【0088】
1,1A~1E 光給電システム
100 第1のデータ通信装置
110,110B,110C 給電装置
111 給電用半導体レーザー(発光部)
112 給電光
112B,112C,112D 信号光
120 発信部
125 信号光
130 受信部
131 信号用フォトダイオード
150B,150C,150E 調節部
151B 光学素子
152B,152C,152E 制御装置
153B,153C 応答受信部
200 光ファイバーケーブル
250 光ファイバー
300 第2のデータ通信装置
310,310B,310C 受電装置
311 光電変換素子
311a 受光面
320 発信部
321 信号用半導体レーザー
322 モジュレーター
323 レーザー光
325 信号光
330 受信部
340 データ処理ユニット
350B,350C 応答部
351B 信号用半導体レーザー
351C 反射装置
351D 反射体(応答部)
352B,352C 制御装置
h 異物
s ビーム径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9