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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178645
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/10 20060101AFI20231211BHJP
   A01D 33/12 20060101ALI20231211BHJP
   F04B 17/03 20060101ALI20231211BHJP
   F04B 17/05 20060101ALI20231211BHJP
   F04B 49/00 20060101ALI20231211BHJP
   F04B 49/02 20060101ALI20231211BHJP
   F02N 11/08 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
F04B49/10 331Q
A01D33/12
F04B17/03
F04B17/05
F04B49/00 A
F04B49/02 331C
F02N11/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091445
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 英明
(72)【発明者】
【氏名】高木 真吾
(72)【発明者】
【氏名】二宮 浩二
(72)【発明者】
【氏名】後田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】北川 智志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大翔
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
【テーマコード(参考)】
2B072
3H069
3H145
【Fターム(参考)】
2B072AA10
2B072BA02
2B072CA12
2B072DA04
2B072DA11
2B072EA08
2B072EA14
2B072FA01
2B072FA04
3H069AA03
3H069AA09
3H069CC01
3H069CC03
3H069DD41
3H069DD42
3H069EE15
3H145AA42
3H145AA44
3H145BA32
3H145CA03
3H145CA09
3H145DA10
3H145EA13
3H145EA17
(57)【要約】
【課題】エンジンと電動モータからの動力を2つのワンウェイクラッチと上位の切換機構を介して油圧ポンプを1軸で駆動する車両がある。しかしながら、2つのワンウェイクラッチの上位に切換機構が必要であり構造が煩雑で大型化となる。そこで、電動モータとエンジンで油圧ポンプを駆動する構造が簡潔で小型となる作業車両を提供する。
【解決手段】油圧アクチュエータに圧油を供給して作動させる油圧ポンプ30を装備した作業車両において、油圧ポンプ30に2つの入力軸を設け、一方の入力軸に電動モータ32から電動モータ側クラッチ33aを介して動力を入力し、他方の入力軸にエンジン7からエンジン側クラッチを介して動力を入力する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータ(24c)に圧油を供給して作動させる油圧ポンプ(30)を装備した作業車両において、油圧ポンプ(30)に2つの入力軸(31c,31d)を設け、一方の入力軸(31c)に電動モータ(32)から電動モータ側クラッチ(33a)を介して動力を入力し、他方の入力軸(31d)にエンジン(7)からエンジン側クラッチ(33b)を介して動力を入力することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
電動モータ(32)を低回転の常用回転とし、一定の動力を油圧ポンプ(30)に与えて油圧を基準圧とし、油圧アクチュエータ(24c)を作動させる指令信号により、所定の油圧に達するように電動モータ(32)の回転数を上昇させる制御装置(40)を設けたことを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
油圧アクチュエータ(24c)に圧油を供給して作動させる油圧ポンプ(30)を装備した作業車両において、油圧ポンプ(30)に2つの入力軸(31c,31d)を設け、一方の入力軸(31c)に電動モータ(32)からワンウェイクラッチを介して動力を入力し、他方の入力軸(31d)にエンジン(7)からワンウェイクラッチを介して動力を入力することを特徴とする作業車両。
【請求項4】
電動モータ(32)を低回転の常用回転とし、一定の動力を油圧ポンプ(30)に与えて油圧を基準圧とし、油圧アクチュエータ(24c)を作動させる指令信号により、エンジン(7)からの動力にて所定の油圧に達するようにする制御装置(40)を設けたことを特徴とする請求項3記載の作業車両。
【請求項5】
電動モータ(32)で油圧ポンプ(30)を駆動している状態からエンジン(7)で油圧ポンプ(30)を駆動する状態に変更する場合、エンジン側クラッチ(33b)が切りでないとエンジン(7)を始動するセルモータ(36)の作動を規制する制御装置(40)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の作業車両。
【請求項6】
バッテリ残容量が所定量以下になった時にジェネレータ(35)にて発電してバッテリに蓄電する為にセルモータ(36)を作動させてエンジン(7)を始動する場合、エンジン側クラッチ(33b)が切りでないとセルモータ(36)の作動を規制する制御装置(40)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の作業車両。
【請求項7】
バッテリ残容量が所定量以下になった時にジェネレータ(35)にて発電してバッテリに蓄電する為にセルモータ(36)を作動させてエンジン(7)を始動する場合、エンジン側クラッチ(33b)が切りでないとセルモータ(36)の作動を規制する制御装置(40)を設けたことを特徴とする請求項5記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、根菜類収穫機等の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンと電動モータからの動力を2つのワンウェイクラッチと上位の切換機構を介して油圧ポンプを1軸で駆動する車両がある(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-168974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、2つのワンウェイクラッチの上位に切換機構が必要であり構造が煩雑で大型化となる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電動モータとエンジンで油圧ポンプを駆動する構造が簡潔で小型となる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、油圧アクチュエータ24cに圧油を供給して作動させる油圧ポンプ30を装備した作業車両において、油圧ポンプ30に2つの入力軸31c,31dを設け、一方の入力軸31cに電動モータ32から電動モータ側クラッチ33aを介して動力を入力し、他方の入力軸31dにエンジン7からエンジン側クラッチ33bを介して動力を入力する作業車両である。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、油圧ポンプ30に2つの入力軸31c,31dを設け、一方の入力軸31cに電動モータ32から電動モータ側クラッチ33aを介して動力を入力し、他方の入力軸31dにエンジン7からエンジン側クラッチ33bを介して動力を入力するので、機体を停止して油圧アクチュエータ24cを作動させる作業のみの場合(低動力作業の場合)は、エンジン7を停止しエンジン側クラッチ33bを切りにし、電動モータ側クラッチ33aを入りにして電動モータ32の駆動力で油圧ポンプ30を駆動する。よって、エンジン7を停止した省エネ作業が行える。
【0008】
また、機体を前進または後進させて作業を行う場合(高動力作業の場合)は、エンジン7が稼働しているので、電動モータ側クラッチ33aを切りにし、エンジン側クラッチ33bを入りにしてエンジン7の駆動力で油圧ポンプ30を駆動する。
【0009】
以上のように、油圧ポンプ30の電動モータ32による駆動とエンジン7による駆動は、電動モータ側クラッチ33aとエンジン側クラッチ33bで行えて小型化ができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、電動モータ32を低回転の常用回転とし、一定の動力を油圧ポンプ30に与えて油圧を基準圧とし、油圧アクチュエータ24cを作動させる指令信号により、所定の油圧に達するように電動モータ32の回転数を上昇させる制御装置40を設けた請求項1記載の作業車両である。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の作用効果に加えて、電動モータ32を低回転の常用回転とし、一定の動力を油圧ポンプ30に与えて油圧を基準圧とし、油圧アクチュエータ24cを作動させる指令信号により、所定の油圧に達するように電動モータ32の回転数を上昇させる制御装置40を設けたので、電動モータ32を低回転の常用回転で基準圧をかけておき、必要に応じて回転数を上げることにより省エネ運転が行える。
【0012】
請求項3記載の発明は、油圧アクチュエータ24cに圧油を供給して作動させる油圧ポンプ30を装備した作業車両において、油圧ポンプ30に2つの入力軸31c,31dを設け、一方の入力軸31cに電動モータ32からワンウェイクラッチを介して動力を入力し、他方の入力軸31dにエンジン7からワンウェイクラッチを介して動力を入力する作業車両である。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、油圧ポンプ30に2つの入力軸31c,31dを設け、一方の入力軸31cに電動モータ32からワンウェイクラッチを介して動力を入力し、他方の入力軸31dにエンジン7からワンウェイクラッチを介して動力を入力するので、エンジン7が停止している場合は、電動モータ32からワンウェイクラッチを介して油圧ポンプ30を駆動し、油圧ポンプ30からエンジン7側へはエンジン7と油圧ポンプ30間に設けたワンウェイクラッチにて駆動が遮断される。
【0014】
また、エンジン7が稼動している場合は、エンジン7からワンウェイクラッチを介して油圧ポンプ30を駆動し、油圧ポンプ30から電動モータ32側へは電動モータ32と油圧ポンプ30間に設けたワンウェイクラッチにて駆動が遮断される。
【0015】
よって、電動モータ32作動時は油圧ポンプ30への動力伝達までとなり、エンジン7側に動力が伝わらないので、動力損失が防止できる。また、エンジン7作動時は油圧ポンプ30への動力伝達までとなり、電動モータ32側に動力が伝わらないので、動力損失が防止できる。
【0016】
請求項4記載の発明は、電動モータ32を低回転の常用回転とし、一定の動力を油圧ポンプ30に与えて油圧を基準圧とし、油圧アクチュエータ24cを作動させる指令信号により、エンジン7からの動力にて所定の油圧に達するようにする制御装置40を設けた請求項3記載の作業車両である。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明の作用効果に加えて、電動モータ32を低回転の常用回転とし、一定の動力を油圧ポンプ30に与えて油圧を基準圧とし、油圧アクチュエータ24cを作動させる指令信号により、エンジン7からの動力にて所定の油圧に達するようにする制御装置40を設けたので、電動モータ32の動力は、油圧ポンプ30の基準圧を保持する動力とし、油圧アクチュエータ24cを作動させる所定の油圧まで油圧ポンプ30の回転数を上げる動力はエンジン7の動力を用いることにより、即応性のある省エネ運転を可能とする。
【0018】
また、電動モータ32が小型でもよくなり、安価である。
【0019】
請求項5記載の発明は、電動モータ32で油圧ポンプ30を駆動している状態からエンジン7で油圧ポンプ30を駆動する状態に変更する場合、エンジン側クラッチ33bが切りでないとエンジン7を始動するセルモータ36の作動を規制する制御装置40を設けた請求項1または請求項2記載の作業車両である。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の発明の作用効果に加えて、電動モータ32で油圧ポンプ30を駆動している状態からエンジン7で油圧ポンプ30を駆動する状態に変更する場合、エンジン側クラッチ33bが切りでないとエンジン7を始動するセルモータ36の作動を規制する制御装置40を設けたので、セルモータ36の作動時には、エンジン側クラッチ33bが切りで油圧ポンプ30が駆動しない状態となっており、動力損失を防止できる。
【0021】
請求項6記載の発明は、バッテリ残容量が所定量以下になった時にジェネレータ35にて発電してバッテリに蓄電する為にセルモータ36を作動させてエンジン7を始動する場合、エンジン側クラッチ33bが切りでないとセルモータ36の作動を規制する制御装置40を設けた請求項1または請求項2記載の作業車両である。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の発明の作用効果に加えて、バッテリ残容量が所定量以下になった時にジェネレータ35にて発電してバッテリに蓄電する為にセルモータ36を作動させてエンジン7を始動する場合、エンジン側クラッチ33bが切りでないとセルモータ36の作動を規制する制御装置40を設けたので、セルモータ36の作動時には、エンジン側クラッチ33bが切りで油圧ポンプ30が駆動しない状態となっており、動力損失を防止できる。
【0023】
請求項7記載の発明は、バッテリ残容量が所定量以下になった時にジェネレータ35にて発電してバッテリに蓄電する為にセルモータ36を作動させてエンジン7を始動する場合、エンジン側クラッチ33bが切りでないとセルモータ36の作動を規制する制御装置40を設けた請求項5記載の作業車両である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態にかかる人参収穫機の側面図である。
図2】同人参収穫機の概略平面図である。
図3】同人参収穫機の正面図である。
図4】同人参収穫機の油圧ポンプの斜視図である。
図5】同人参収穫機のエンジンの斜視図である。
図6】同人参収穫機のエンジンの反対側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態の一実施例として示す作業車両の一種である人参収穫機を説明する。以下においては、機体の前進方向を基準に、前後、左右と謂う。
【0026】
<全体構成>
図1、2、3に示すように、人参収穫機は、機体を走行させる走行部Aと、操縦者が搭乗する操縦部Bと、機体左右一側で圃場から人参を引き抜いて機体後上側に搬送する収穫部Cと、該収穫部Cから人参を引き継いで茎葉切断部にて機体後方に搬送しながら茎葉部を切断し、茎葉切断部から落下する人参を受けて残葉処理部にて人参に残った茎葉部を処理し、残葉処理部から人参を引き継いで人参を機体左右一側から左右他側へと搬送し、搬送中の人参を補助作業者が選別する選別搬送部Dと、該選別搬送部Dから排出される人参の収容部材を配置する収容部Eから構成される。
【0027】
<走行部A>
機体フレーム1の下方に機体前部側の左右駆動スプロケット2,2と機体後部側の左右従動輪3,3と、該左右駆動スプロケット2,2と左右従動輪3,3との間に取り付けた複数の転輪4の周りに左右ベルト5,5を巻き掛けて左右のクローラ6L,6Rを構成する。そして、該左右クローラ6L,6Rの左右駆動スプロケット2,2を、エンジン7の動力が伝動されるミッションケースから左右両側に延出させた左右ドライブシャフトに取り付け、一定の左右間隔を設けて左右クローラ6L,6Rを該機体フレーム1に取り付ける。
【0028】
<操縦部B>
前記機体フレーム1の右側上部に操縦部フレームを取り付け、該操縦部フレームには操縦座席8を取り付けると共に、機体前側に操縦パネル9を取り付ける。そして、該操縦パネル9に機体の前後進及び走行速度を切り換える変速操作レバー10を取り付けると共に、機体の左右旋回操作及び収穫部Cの作業高さを操作する昇降操作レバー11を取り付ける。
【0029】
また、前記操縦部フレームの機体左右他側(機体右側)にエンジン7を冷却するラジエータ(図示省略)を保護すると共に冷却風を取り込むラジエータカバー12を着脱自在に取り付けることにより。操縦部Bが構成される。
【0030】
上記構成により、変速操作レバー10や昇降操作レバー11のような、1本で複数の操作を行える操縦部材を設けることによって、機体の操縦が容易になるため操縦者の作業を軽減することができる。
【0031】
<収穫部C>
左右引抜フレーム13,13の機体前側に左右従動プーリを回転自在に装着し、機体後側に左右駆動プーリを装着し、該左右従動プーリと左右駆動プーリとの間に人参を引き抜き機体後部へと搬送する左右挟持搬送ベルト15,15を巻き掛けると共に、複数のテンションローラによって該左右挟持搬送ベルト15,15を張圧し、左右挟持搬送ベルト15,15の機体内側面を互いに圧接させて人参の引抜搬送経路Rを構成する。そして、前記機体フレーム1の上方に左右横軸を回動支点として上下方向に回動自在な回動フレームを取り付け、該回動フレームの後端部に前記左右駆動プーリに駆動力を伝動する伝動ケースを、回動支点を中心として上下回動自在に取り付ける。また、前記機体フレーム1と回動フレームとを昇降シリンダで連結し、該昇降シリンダを操縦部Bで操作可能に取り付けて引抜搬送装置17を構成する。
【0032】
また、該引抜搬送装置17の前方に人参の茎葉部を引き起こす縦引起し装置18と、該縦引起し装置18が引起した茎葉部を掬い上げる横引起し装置19と、該横引起し装置19の前部に設ける分草杆20と、引抜搬送装置17の下り過ぎを防止する回転自在なゲージ輪と、前記エンジン7の駆動力で往復振動して土中の人参の左右の土を解す左右振動ソイラSとを設ける。
【0033】
そして、前記引抜搬送通路Rの下方に引抜搬送装置17で搬送中の人参のひげ根を切断する尻尾切装置を取り付けて、収穫部Cを構成する。
【0034】
上記構成により、機体前側に分草杆20を備える横引起し装置19と、縦引起し装置18を設けることによって、圃場に倒伏した人参の茎葉を掻き上げながら収穫作業ができ、収穫する人参の視認性が向上するので引き抜き位置が合わせやすく、作物の抜き残しが減少するため作業能率が向上する。
【0035】
また、人参に左右振動ソイラS等が接触して傷つくことを防止できるので、人参の商品価値が向上する。
【0036】
そして、機体フレーム1と左右横軸を回動支点として上下方向に回動自在な回動フレームとを昇降シリンダで連結し、昇降シリンダを操縦部Bの昇降操作レバー11を操作することによって伸縮させる構成としたことによって、昇降操作レバー11の操作により収穫部C全体の上下高さを調節することができるので、収穫部Cの引抜搬送始端部の位置を上下方向に調節しするとともに圃場に植生する人参の適切な引き抜き高さに合わせて引抜搬送始端部の位置調節を行え、人参の抜き残しが防止されるので作業能率が向上する。
【0037】
また、旋回時に収穫部Cを上昇させておくと、収穫部Cの下端部が圃場に接触しにくくなるため、旋回動作がスムーズに行われて作業能率が向上する。
【0038】
<選別搬送部D>
選別搬送部Dの選別作業用の選別搬送装置21は、収穫部Cの引抜搬送装置17の後部下方から人参を収容する収容部材であるフレコンバッグのある収容部Eに向けて機体左右方向に配置され、エンジン7からの駆動力にて周回動する一定間隔の桟を備えるチェーンコンベアにて構成されている。なお、引抜搬送装置17にて茎葉部が挟持されて搬送してきた人参は、その茎葉部下端(人参の頭部の少し上)が茎葉切断部にて切断されて人参が下方に落下するが、該落下する人参を残葉処理部が受けて人参に残った茎葉部を処理して選別搬送部Dに搬送する。そして、選別搬送部Dの選別搬送装置21は、人参をその左端から右方(収容部E)に搬送する。
【0039】
<収容部E>
収容部Eは、選別搬送装置21の右側方に配置され、該選別搬送装置21右端部に設けた作動アーム24により上下動及び左右動する吊り下げハンガー25と、該吊り下げハンガー25に吊り下げられたフレコンバッグを載置する載置台26により構成されている。
【0040】
なお、図3は、作動アーム24、吊り下げハンガー25及び載置台26を機体内方に折り畳み収納した状態を示し、収穫作業時には、作動アーム24、吊り下げハンガー25及び載置台26を機体右該側方に展開した状態で作業を行う。
【0041】
吊り下げハンガー25は、選別搬送装置21右端部に設けた作動アーム24により上下動及び左右動する。
【0042】
作動アーム24は、基部が選別搬送装置21右端部に背面視で反時計方向には回動するが時計方向には所定位置で回動が停止するように枢支され、先端側が機体右外側上方に向けて延設されている基部アーム24aと、該基部アーム24a先端に回動自在に枢支された回動アーム24bと、基部アーム24aと回動アーム24b間に配設された油圧アクチュエータとしての回動用油圧シリンダ24cから構成される。
【0043】
回動用油圧シリンダ24cは、エンジン7の側壁に取付けられた後述の油圧ポンプ30にて圧送される油圧にて作動する。
【0044】
吊り下げハンガー25は、回動アーム24bの先端に設けられている。載置台26上方で、吊り下げハンガー25の4つのフック25aをフレコンバッグの上端縁部の係止孔に各々引っ掛けてフレコンバッグを吊下げ支持する。
【0045】
操縦パネル9右端には、十字方向操作レバーが設けられており、作業者が圃場に降りて機体後方を向いた状態で右に操作すると上下動用電動シリンダが伸長して選別搬送装置21が枢支軸回りに回動して上昇し、左に操作すると上下動用電動シリンダが縮小して選別搬送装置21が枢支軸回りに回動して下降し、機体後方に操作すると回動用油圧シリンダ24cが伸長して回動アーム24bが枢支軸回りに回動して右外側方に開き、機体前方に操作すると回動用油圧シリンダ24cが縮小して回動アーム24bが枢支軸回りに回動して左機体内側に閉じる。
【0046】
<油圧ポンプ30>
油圧ポンプ30は、エンジン7の側壁に取付けられ、オイルタンクから吸油して回動用油圧シリンダ24cに十字方向操作レバーにて作動する油圧バルブを介して圧油を圧送する。
【0047】
図4に示すように、油圧ポンプ30は、下方に設けた吸油口31aからオイルタンクのオイルを吸油し、上方に設けた送油口31bから圧油を回動用油圧シリンダ24cに圧送する。
【0048】
また、図4及び図5に示すように、油圧ポンプ30は、左右一側に電動モータ32から電動モータ側クラッチ33aを介して駆動回転される第1入力軸31cを設け、左右他側にエンジン7からギヤケース34及びエンジン側クラッチ33bを介して駆動回転される第2入力軸31dを設けている。
【0049】
そして、油圧ポンプ30は、エンジン7のクランク軸7aと平行に上記油圧ポンプ30の第1入力軸31c及び第2入力軸31dを配置して、エンジン7の外側に設けられている。
【0050】
また、油圧ポンプ30の第1入力軸31c側に電動モータ側クラッチ33a及び電動モータ32を設け、油圧ポンプ30の第2入力軸31d側にエンジン側クラッチ33b及びギヤケース34を設けている。
【0051】
従って、エンジン7の外側には、クランク軸7aと平行に電動モータ32、電動モータ側クラッチ33a、油圧ポンプ30、エンジン側クラッチ33b及びギヤケース34が一直線状に設けられている。
【0052】
電動モータ側クラッチ33a及びエンジン側クラッチクラッチ33bは、各々電磁ソレノイドで入り切り操作される。即ち、電動モータ側クラッチ33a及びエンジン側クラッチ33bは、操縦パネル9下方の外装カバー内に設けた制御装置40にて各々の電磁ソレノイドが作動して入り切り操作される。
【0053】
電動モータ側クラッチ33aが入りで、エンジン側クラッチ33bが切りの場合は、油圧ポンプ30は電動モータ32にて駆動される。
【0054】
エンジン側クラッチ33bが入りで、電動モータ側クラッチ33aが切りの場合は、油圧ポンプ30はエンジン7にて駆動される。
【0055】
変速操作レバー10を前進または後進操作していることまたは駐車ブレーキを解除していることを制御装置40が検出すると(機体が前進または後進している作業状態であることを検出すると)、制御装置40はエンジン側クラッチ33bを入りにし電動モータ側クラッチ33aを切りにして、油圧ポンプ30をエンジン7にて駆動する。
【0056】
この場合、エンジン7は稼動しているので、収穫作業を行いながらエンジン7に装備されたジェネレータ35にて発電してバッテリに蓄電する。
【0057】
変速操作レバー10を中立に操作していることまたは駐車ブレーキをかけていることを制御装置40が検出すると(機体が停車状態であることを検出すると)、制御装置40はエンジン7を停止しエンジン側クラッチ33bを切りにし電動モータ側クラッチ33aを入りにして、油圧ポンプ30を電動モータ32にて駆動する。
【0058】
即ち、機体を停止して十字方向操作レバーを操作して、回動用油圧シリンダ24cを作動させてフレコンバッグを載置台26の右外側方に降ろす作業をしている場合は、エンジン7を停止した省エネ状態にして、油圧ポンプ30を電動モータ32にて駆動する。
【0059】
従って、機体を前進または後進させて作業を行う場合には、エンジン7が稼働しているので、エンジン側クラッチ33bを入りにしてエンジン7の駆動力で油圧ポンプ30を駆動する。なお、油圧ポンプ30は、回動用油圧シリンダ24c以外に左右水平制御機構が設けられている場合に左右水平作動用の油圧シリンダ等の他の油圧シリンダを作動させる構成としても良い。
【0060】
そして、機体を停止して回動用油圧シリンダ24c等の油圧シリンダを作動させる作業のみの場合(低動力作業の場合)は、エンジン7を停止し、電動モータ側クラッチ33aを入りにして電動モータ32の駆動力で油圧ポンプ30を駆動する。よって、エンジン7を停止した省エネ作業が行える。
【0061】
また、油圧ポンプ30の電動モータ32による駆動とエンジン7による駆動は、電動モータ側クラッチ33aとエンジン側クラッチ33bで行えて小型化ができる。
【0062】
また、エンジン7を停止し、電動モータ側クラッチ33aを入りにして電動モータ32の駆動力で油圧ポンプ30を駆動する場合、制御装置40は、電動モータ32を低回転の常用回転とし、一定の動力を油圧ポンプ30に与えて油圧を基準圧とし、回動用油圧シリンダ24cを作動させる指令信号により、所定の油圧に達するように電動モータ32の回転数を上昇させる。
【0063】
従って、電動モータ32を低回転の常用回転で基準圧をかけておき、必要に応じて回転数を上げることにより省エネ運転が行える。
【0064】
また、制御装置40は、回動用油圧シリンダ24cを作動停止する指令信号がきても、所定時間(数秒間)電動モータ32の回転数を上昇したままとし、回動用油圧シリンダ24cが断続して作動する場合のレスポンスを良くしても良い。
【0065】
図6に示すように、エンジン7には、エンジン7を始動するセルモータ36が装備されている。
【0066】
制御装置40は、電動モータ32で油圧ポンプ30を駆動している状態からエンジン7で油圧ポンプ30を駆動する状態に変更する場合、エンジン7を始動すべくセルモータ36を作動させる。
【0067】
また、制御装置40は、バッテリ残量が少なくなった時にジェネレータ35にて発電してバッテリに蓄電する為に、セルモータ36を作動させてエンジン7を始動する。
【0068】
エンジン7を始動すべくセルモータ36を作動させる際に、制御装置40は、エンジン側クラッチ33bが切りでないとセルモータ36の作動を規制する。換言すると、制御装置40は、エンジン側クラッチ33bが切りの場合のみセルモータ36の作動を可能とし、また、エンジン側クラッチ33bが入りの場合、電磁ソレノイドを作動させてエンジン側クラッチ33bを切った後にセルモータ36を作動させる。
【0069】
従って、セルモータ36の作動時には、エンジン側クラッチ33bが切りで油圧ポンプ30が駆動しない状態となっており、動力損失を防止できる。
【0070】
また、電動モータ32にブレーキ機構を設けるか、または、油圧ポンプ30に逆流防止チェック弁を設けることにより、電動モータ32の回転停止時の逆転を防止し、または、逆転しても支障がないようにしている。
【0071】
なお、制御装置40がエンジン7で油圧ポンプ30を駆動する際に電動モータ側クラッチ33aを入りのままとして、エンジン7で油圧ポンプ30を駆動する際にエンジン7にて電動モータ32が駆動回転され、電動モータ32がオルタネータを兼ねるようにしても良い。この時、バッテリの充電量が十分であれば、電動モータ側クラッチ33aを切って負荷を軽減しても良い。
【0072】
<人参の収穫作業>
先ず、操縦者は、メインスイッチにてセルモータ36を作動させてエンジン7を始動し、昇降操作レバー11を操作して収穫部Cを上昇して、変速操作レバー10を操作して人参の植生している畝の始端に移動して、変速操作レバー10を中立位置にして駐車ブレーキをかける。
【0073】
すると、制御装置40は、エンジン7を停止しエンジン側クラッチ33bを切りにし電動モータ側クラッチ33aを入りにして、油圧ポンプ30を電動モータ32にて駆動する。
【0074】
そして、作動アーム24、吊り下げハンガー25及び載置台26を機体右該側方に展開した作業状態とし、十字方向操作レバーを操作して、回動アーム24bが左機体内側に閉じた状態で選別搬送装置21を最下降位置にする。
【0075】
この時、回動用油圧シリンダ24cは、電動モータ32で駆動される油圧ポンプ30にて作動する。
【0076】
そして、吊り下げハンガー25の各フック25aにフレコンバッグの上端縁部の係止孔を各々引っ掛けてフレコンバッグを吊下げ、フレコンバッグの底が載置台26に受けられた状態とする。
【0077】
そして、操縦座席8に着座した操縦者がセルモータ36を作動させてエンジン7を始動し、駐車ブレーキを解除して変速操作レバー10を前進位置に操作して人参収穫機を進行させて、収穫部Cの引抜搬送装置17の引抜搬送経路R前端を圃場の人参条に合わせた後に昇降操作レバー11を操作して収穫部Cを下降させ、掘取りクラッチを「入」にして各部を駆動させて前進する。すると、分草杆20や縦引起し装置18や横引起し装置19にて人参の茎葉を掻き上げて引抜搬送装置17の引抜搬送経路Rに人参の茎葉が挟持され、左右振動ソイラSにて人参の側方及び下方の土をほぐして、人参は引抜搬送装置17にて挟持されて引き抜かれて、後方上方に搬送される。
【0078】
この時、回動用油圧シリンダ24cは、エンジン7で駆動される油圧ポンプ30にて作動する。
【0079】
そして、引抜搬送装置17にて茎葉部が挟持されて搬送してきた人参は、その茎葉部下端(人参の頭部の少し上)が茎葉切断部にて切断されて人参が下方に落下するが、該落下する人参は残葉処理部が受けて人参に残った茎葉部を処理して選別搬送部Dに搬送される。そして、人参は、選別搬送部Dの選別搬送装置21にてその左端から右方(収容部E)に搬送される。
【0080】
そして、選別搬送装置21の機体後方側の補助作業座席に着座した作業者が選別搬送装置21にて送られてくる人参のなかから商品にならないもの(小さい人参や異形の人参)を取り出し、商品価値のある人参のみが収容部Eに送られる。
【0081】
選別搬送装置21にて右端に送られてきた人参は、選別搬送装置21右端の吊り下げハンガー25の各フック25aに吊下げられたフレコンバッグ内に落下して収納される。
【0082】
そして、フレコンバッグ内に収納された人参の量が多くなるにつれて、補助作業座席に着座した作業者が上昇スイッチを踏み込み操作して上下動用電動シリンダを伸長させて選別搬送装置21を枢支軸回りに回動して順次上昇させる。
【0083】
そして、フレコンバッグ内に人参が満杯になるまで選別搬送装置21を枢支軸回りに回動して上昇させると、操縦者は変速操作レバー10を中立位置にして駐車ブレーキをかけて停車する。
【0084】
この時、回動用油圧シリンダ24cは、電動モータ32で駆動される油圧ポンプ30にて作動する。
【0085】
補助作業座席に着座した作業者は、補助作業座席から離れて圃場に降りて操縦パネル9右端近くに立って、機体後方を向いた状態で十字方向操作レバーを操作する。
【0086】
先ず、十字方向操作レバーを右に操作して、上下動用電動シリンダを伸長させて選別搬送装置21を最上昇位置まで上昇させて、フレコンバッグを載置台26上方に持ち上げる。
【0087】
そして、十字方向操作レバーを機体後方に操作して、回動用油圧シリンダ24cを伸長させて回動アーム24bを枢支軸回りに回動して右外側方に開いて、フレコンバッグを載置台26の右外側方まで移動させる。
【0088】
そして、十字方向操作レバーを左に操作して、上下動用電動シリンダを縮小させて選別搬送装置21を最下降位置まで下降させて、フレコンバッグを圃場に降ろす。
【0089】
そして、吊り下げハンガー25の各フック25aをフレコンバッグの上端縁部の係止孔から外して、十字方向操作レバーを操作して最初の回動アーム24bが左機体内側に閉じた状態で選別搬送装置21を最下降位置に戻して、吊り下げハンガー25の各フック25aに空のフレコンバッグの上端縁部の係止孔を各々引っ掛けてフレコンバッグを吊下げてフレコンバッグの底が載置台26に受けられた状態とした後に、補助作業座席に着座する。
【0090】
そして、上記と同様にして各部を駆動して機体を進行させて収穫作業を再開する。
【0091】
<他の実施形態>
【0092】
(1)上記実施形態の電動モータ側クラッチ33a及びエンジン側クラッチ33bに換えて、同じ位置に各々ワンウェイクラッチを設けても良い。
【0093】
即ち、電動モータ32からワンウェイクラッチを介して油圧ポンプ30を駆動し、エンジン7からギヤケース34及びワンウェイクラッチを介して油圧ポンプ30を駆動する。
【0094】
従って、エンジン7が停止している場合は、電動モータ32からワンウェイクラッチを介して油圧ポンプ30を駆動し、油圧ポンプ30からエンジン7側へはエンジン7と油圧ポンプ30間に設けたワンウェイクラッチにて駆動が遮断される。
【0095】
また、エンジン7が稼動している場合は、エンジン7からワンウェイクラッチを介して油圧ポンプ30を駆動し、油圧ポンプ30から電動モータ32側へは電動モータ32と油圧ポンプ30間に設けたワンウェイクラッチにて駆動が遮断される。
【0096】
よって、電動モータ32作動時は油圧ポンプ30への動力伝達までとなり、エンジン7側に動力が伝わらないので、動力損失が防止できる。また、エンジン7作動時は油圧ポンプ30への動力伝達までとなり、電動モータ32側に動力が伝わらないので、動力損失が防止できる。
【0097】
(2)上記(1)記載の実施形態において、電動モータ32は低回転の常用回転とし、一定の動力を油圧ポンプ30に与えて油圧を基準圧とし、制御装置40は、回動用油圧シリンダ24cを作動させる指令信号により、エンジン7を稼働してエンジン7からの動力にて所定の油圧に達するようにする。
【0098】
従って、電動モータ32の動力は、油圧ポンプ30の基準圧を保持する動力とし、回動用油圧シリンダ24cを作動させる所定の油圧まで油圧ポンプ30の回転数を上げる動力はエンジン7の動力を用いることにより、即応性のある省エネ運転を可能とする。また、電動モータ32が小型でもよくなり、安価である。
【符号の説明】
【0099】
7 エンジン
24c 油圧アクチュエータ(回動用油圧シリンダ)
30 油圧ポンプ
31c 入力軸(第1入力軸)
31d 入力軸(第2入力軸)
32 電動モータ
33a 電動モータ側クラッチ
33b エンジン側クラッチ
35 ジェネレータ
36 セルモータ
40 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6