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特開2023-178646管理装置、蓄電装置及び電圧シミュレーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178646
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】管理装置、蓄電装置及び電圧シミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231211BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231211BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20231211BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20231211BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20231211BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20231211BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R31/3828
G01R31/389
G01R31/396
G01R31/367
B60R16/033 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091447
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國田 智士
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA02
2G216BA53
2G216BA71
2G216CB04
2G216CB11
2G216CB35
5G503AA07
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503DA06
5G503EA09
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS01
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF42
(57)【要約】
【課題】放電パターンによる放電可否の誤判定を抑制する。
【解決手段】
蓄電装置50の電圧シミュレーションを周期的に実行する管理装置130であって、演算部131と、記憶部132と、を含む。前記記憶部132は、放電電流の時系列データからなる放電パターンPを記憶する。前記放電パターンPは、放電電流の第1時系列データD1と第2時系列データD2と、を含み、前記第1時系列データD1は、放電電流の所定時間分の時系列データであり、前記第2時系列データD2は、前記蓄電装置の電圧シミュレーション実行周期内における放電電流の時系列データである。前記演算部131は、前記蓄電装置を前記放電パターンPで放電した時の前記蓄電装置50の電圧変化を推定する電圧シミュレーションを、周期的に実行し、電圧シミュレーションの結果に基づいて、前記蓄電装置の前記放電パターンPによる放電可否を周期的に判定する。
【選択図】図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置の電圧シミュレーションを周期的に実行する管理装置であって、
演算部と、
記憶部と、を含み、
前記記憶部は、
放電電流の時系列データからなる放電パターンを記憶し、
前記放電パターンは、
放電電流の第1時系列データと第2時系列データと、を含み、
前記第1時系列データは、放電電流の所定時間分の時系列データであり、
前記第2時系列データは、前記蓄電装置の電圧シミュレーション実行周期内における放電電流の時系列データであり、
前記演算部は、
前記蓄電装置が前記放電パターンで放電した時の前記蓄電装置の電圧変化を推定する電圧シミュレーションを周期的に実行し、電圧シミュレーションの結果に基づいて、前記蓄電装置の前記放電パターンによる放電可否を、周期的に判定する、管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の管理装置であって、
電圧シミュレーションの実行周期は、切り換え可能である、管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の管理装置であって、
前記蓄電装置は車両用であり、
前記演算部は、
車両が第1状態の場合、第1周期で、電圧シミュレーションを実行し、
車両が第2状態の場合、第2周期で、電圧シミュレーションを実行する、管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の管理装置であって、
前記第1状態は、車両走行中、第2状態は、車両非走行中であり、
前記第2周期は、前記第1周期より長い、管理装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の管理装置であって、
前記第2時系列データは、車両の状態により、異なる、管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の管理装置であって、
前記第1状態は、車両走行中、第2状態は、車両非走行中であり、
車両非走行中の第2時系列データは、車両走行中の第2時系列データよりも小さい、管理装置。
【請求項7】
請求項2又は請求項3に記載の管理装置であって、
前記記憶部は、電圧シミュレーションの前記実行周期として、
第1周期用の時系列データを有する第1放電パターンと、
第2周期用の時系列データを有する第2放電パターンと、を記憶し、
前記演算部は、
第1周期が選択された場合、前記第1放電パターンを選択して、電圧シミュレーションを実行し、
第2周期が選択された場合、前記第2放電パターンを選択して、電圧シミュレーションを実行する、管理装置。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の管理装置であって、
前記演算部は、電圧シミュレーションにおいて、
前記蓄電装置のSOCと、セルの内部抵抗と、放電電流と、セルの温度と、充放電履歴と、に基づいて、前記蓄電装置の電圧変化を推定する、管理装置。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の管理装置であって、
前記演算部は、第1時系列データの異なる複数の放電パターンを用いて、複数の電圧シミュレーションを並行して行う、管理装置。
【請求項10】
蓄電装置であって、
セルと、
請求項1又は請求項2に記載の管理装置と、を含む、蓄電装置。
【請求項11】
電圧シミュレーション方法であって、
前記蓄電装置が放電パターンで放電した時の前記蓄電装置の電圧変化を推定する電圧シミュレーションを周期的に実行し、
電圧シミュレーションの結果に基づいて、前記蓄電装置の前記放電パターンによる放電可否を周期的に判定し、
前記放電パターンは、
放電電流の第1時系列データと第2時系列データと、を含み、
前記第1時系列データは、放電電流の所定時間分の時系列データであり、
前記第2時系列データは、前記蓄電装置の電圧シミュレーション実行周期内における放電電流の時系列データである、電圧シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の電圧シミュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置は、自動車等に代表される移動体の電源や太陽光発電システムの蓄電用など、さまざまな用途で使用されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-5985号公報
【特許文献2】特開2019-126110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電装置の機能の一つに電圧シミュレーションがある。電圧シミュレーションは、所定の放電パターンで放電したときの、蓄電装置の電圧変化を推定するものである。例えば、自動車用の蓄電装置の場合、電圧シミュレーションの結果を用いて、放電パターンによる放電可否を、判定している。
【0005】
電圧シミュレーションを周期的に実行することで、放電パターンによる放電が可能か、周期的に確認できる。電圧シミュレーションは、自動車用に限らず、太陽光発電システムの蓄電用など他の用途にも、適用することもできる。
【0006】
しかしながら、電圧シミュレーションの実行周期内で、蓄電装置が放電していると、放電可否を誤判定する可能性があった。
【0007】
本発明の課題は、放電パターンによる放電可否の誤判定を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
管理装置の概要を説明する。
管理装置は、蓄電装置の電圧シミュレーションを周期的に実行する装置である。管理装置は、演算部と、記憶部と、を含む。蓄電装置の電圧シミュレーションは、外部端子の電圧シミュレーションでもよいし、セルや組電池の電圧シミュレーションでもよい。
【0009】
前記記憶部は、放電電流の時系列データからなる放電パターンを記憶する。前記放電パターンは、放電電流の第1時系列データと第2時系列データと、を含む。前記第1時系列データは、放電電流の所定時間分の時系列データであり、前記第2時系列データは、前記蓄電装置の電圧シミュレーション実行周期内における放電電流の時系列データである。
【0010】
前記演算部は、前記蓄電装置が前記放電パターンで放電した時の前記蓄電装置の電圧変化を推定する電圧シミュレーションを周期的に実行し、電圧シミュレーションの結果に基づいて、前記蓄電装置の前記放電パターンによる放電可否を周期的に判定する。
【0011】
本技術は、電圧シミュレーション方法や電圧シミュレーションプログラムに適用することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本技術は、放電パターンによる放電可否の誤判定を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】自動車の側面図
図2】バッテリの分解斜視図
図3】二次電池セルの平面図
図4図3のA-A線断面図
図5】バッテリの電気的構成を示すブロック図
図6A】改善前の放電パターンの波形
図6B】改善後の放電パターンの波形
図7】電圧シミュレーションのタイムライン
図8】電圧シミュレーションによる電圧推定結果
図9】電圧シミュレーションによる電圧推定結果
図10】演算部に対する入出力を示す図
図11】電圧シミュレーションの実行周期を示す図
図12A】第1放電パターンの波形
図12B】第2放電パターンの波形
図13】電圧シミュレーションのフローチャート
図14】演算部に対する入出力を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
管理装置の概要を説明する。
(1)本発明の一実施形態に係る管理装置は、蓄電装置の電圧シミュレーションを周期的に実行する装置である。管理装置は、演算部と、記憶部と、を含む。
【0015】
前記記憶部は、放電電流の時系列データからなる放電パターンを記憶する。前記放電パターンは、放電電流の第1時系列データと第2時系列データと、を含む。前記第1時系列データは、放電電流の所定時間分の時系列データであり、前記第2時系列データは、前記蓄電装置の電圧シミュレーション実行周期内における放電電流の時系列データである。
【0016】
前記演算部は、前記蓄電装置が前記放電パターンで放電した時の前記蓄電装置の電圧変化を推定する電圧シミュレーションを周期的に実行し、電圧シミュレーションの結果に基づいて、前記蓄電装置の前記放電パターンによる放電可否を周期的に判定する。
【0017】
上記(1)に記載の管理装置によれば、放電パターンは、放電電流の第1時系列データに加え、第2時系列データを含む。第2時系列データは、蓄電装置の電圧シミュレーション実行周期内における放電電流の時系列データであるから、実行周期内の放電を考慮した、電圧シミュレーションが可能となる。
【0018】
そのため、実行周期内の放電により、実際には、蓄電装置が放電パターンで放電する余力が無い状態であるにも関わらず、蓄電装置は放電パターンにより放電可能である、と誤判定することを抑制できる。
【0019】
(2)上記(1)に記載の管理装置において、電圧シミュレーションの実行周期は、切り換え可能でもよい。上記(2)に記載の管理装置によれば、実行周期を短くすることで、放電可否の判定周期が短くなるため、蓄電装置が放電可能な状態から不能な状態に移行した場合、それを早期に発見できる。実行周期を長くすることで、演算部の演算負荷を下げ、省エネルギーにできる。
【0020】
(3)上記(2)に記載の管理装置において、前記蓄電装置は車両用でもよい。上記(3)に記載の管理装置によれば、前記演算部は、車両が第1状態の場合、第1周期で、電圧シミュレーションを実行し、車両が第2状態の場合、第2周期で、電圧シミュレーションを実行してもよい。この構成では、車両の状態に応じて、放電可否の判定精度を切り換えることが出来る。
【0021】
(4)上記(3)に記載の管理装置において、前記第1状態は、車両走行中、第2状態は、車両非走行中であり、前記第2周期は、前記第1周期より長くてもよい。上記(4)に記載の管理装置によれば、車両走行中は、電圧シミュレーションを第1周期(短周期)で実行するから、蓄電装置が放電パターンによる放電が不能な状態に至った場合、それを早期に発見することが可能である。一方、車両非走行中は、電圧シミュレーションを第2周期(長周期)で実行するから、管理装置の電力消費を抑え、省エネルギーにすることが出来る。
【0022】
(5)上記(3)又は(4)に記載の管理装置において、前記第2時系列データは、車両の状態により、異なってもよい。上記(5)に記載の管理装置によれば、電圧シミュレーションを、車両の状態に応じた第2時系列データを用いて行うから、電圧シミュレーションの実行周期内における放電電流の推定誤差を抑えることが出来る。そのため、精度の高い電圧シミュレーションを実行することが出来る。
【0023】
(6)上記(5)に記載の管理装置において、前記第1状態は、車両走行中、第2状態は、車両非走行中でもよい。車両非走行中の第2時系列データは、車両走行中の第2時系列データよりも小さくてもよい。上記(5)に記載の管理装置によれば、放電が多い車両走行中は、第2時系列データの値を大きくし、放電が少ない車両非走行中は、第2時系列データの値を小さくすることで、放電電流の誤差(実際の放電電流とシミュレーションの放電電流の誤差)を小さくすることが出来る。
【0024】
(7)上記(2)から(6)のいずれか一項に記載の管理装置において、前記記憶部は、電圧シミュレーションの前記実行周期として、第1周期用の時系列データを有する第1放電パターンと、第2周期用の時系列データを有する第2放電パターンと、を記憶してもよい。前記演算部は、第1周期が選択された場合、前記第1放電パターンを選択して、電圧シミュレーションを実行し、第2周期が選択された場合、前記第2放電パターンを選択して、電圧シミュレーションを実行してもよい。上記(7)に記載の管理装置によれば、放電パターンを周期ごとに設けているから、周期の相違によらず、電圧シミュレーションの精度が高い。そのため、放電パターンによる放電可否の判定精度をより向上させることが出来る。
【0025】
(8)上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の管理装置において、前記演算部は、前記電圧シミュレーションにおいて、前記蓄電装置のSOCと、セルの内部抵抗と、放電電流と、セルの温度と、充放電履歴と、に基づいて、前記蓄電装置の電圧変化を推定してもよい。上記(8)に記載の管理装置によれば、SOC変化に伴う電圧変化や内部抵抗、温度、充放電履歴による電圧変化を加味した電圧シミュレーションを行うから、電圧推定精度、電力供給可否の判定精度を高くすることが出来る。
【0026】
(9)上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の管理装置において、前記演算部は、複数の放電パターンを用いて、複数の電圧シミュレーションを並行して行ってもよい。上記(9)に記載の管理装置によれば、複数の放電パターンによる放電可否を判定することが出来る。
【0027】
(10)本発明の一実施形態に係る蓄電装置は、セルと、上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の管理装置と、を含む。上記(10)に記載の管理装置によれば、放電パターンによる電圧シミュレーションを内蔵する管理装置で実行できる。
<実施形態1>
1.バッテリ50の説明
図1に示すように、自動車10には、エンジン20と、バッテリ50とが搭載されている。バッテリ50は、自動車10の補機用である。バッテリ50は、「蓄電装置」の一例である。自動車10には、車両駆動用の蓄電装置や、燃料電池が搭載されていてもよい。
【0028】
図2に示すように、バッテリ50は、組電池60と、回路基板ユニット65と、収容体71を備える。収容体71は、合成樹脂材料からなる本体73と蓋体74とを備える。本体73は有底筒状であり、底面部75と、4つの側面部76と、を備える。4つの側面部76によって、本体73の上端に開口部77が形成されている。
【0029】
収容体71は、組電池60と回路基板ユニット65を収容する。回路基板ユニット65は、回路基板100上に各種部品(電流遮断装置53、図5に示す電流検出部54や管理装置130等)を搭載した基板ユニットであり、図2に示すように組電池60の、例えば上方に隣接して配置されている。代替的に、回路基板ユニット65は、組電池60の側方に隣接して配置されていてもよい。
【0030】
蓋体74は、本体73の開口部77を閉鎖する。蓋体74の周囲には外周壁78が設けられている。蓋体74は、平面視略T字形の突出部79を有する。蓋体74の前部のうち、一方の隅部に正極の外部端子51が固定され、他方の隅部に負極の外部端子52が固定されている。回路基板ユニット65は、収容体71の本体73に代えて、蓋体74内に(例えば突出部79内に)収容されていてもよい。
【0031】
組電池60は、複数のセル62から構成されている。図4に示すように、セル62は、直方体形状(プリズマティック)のケース82内に電極体83を非水電解質と共に収容したものである。セル62は、例えばリチウムイオン二次電池セルである。ケース82は、ケース本体84と、その上方の開口部を閉鎖する蓋85とを有している。
【0032】
電極体83は、詳細は図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極板と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極板との間に、多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。これらはいずれも帯状で、セパレータに対して負極板と正極板とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体84に収容可能となるように扁平状に巻回されている。電極体83は、巻回タイプのものに代えて、積層タイプのものであってもよい。
【0033】
正極板には正極集電体86を介して正極端子87が、負極板には負極集電体88を介して負極端子89がそれぞれ接続されている。正極集電体86及び負極集電体88は、平板状の台座部90と、この台座部90から延びる脚部91とを有する。台座部90には貫通孔が形成されている。脚部91は正極板又は負極板に接続されている。
【0034】
正極端子87及び負極端子89は、端子本体部92と、その下面中心部分から下方に突出する軸部93とからなる。正極端子87の端子本体部92と軸部93とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子89においては、端子本体部92がアルミニウム製で、軸部93が銅製であり、これらが組み付けられている。正極端子87及び負極端子89の端子本体部92は、蓋85の両端部に絶縁材料からなるガスケット94を介して配置され、図3に示すように、このガスケット94から外方へ露出されている。
【0035】
蓋85は、圧力開放弁95を有している。圧力開放弁95は、正極端子87と負極端子89の間に位置している。圧力開放弁95は、安全弁である。圧力開放弁95は、ケース82の内圧が制限を超えた場合に、開放して、ケース82の内圧を下げる。
【0036】
図5は、バッテリ50の電気的構成を示すブロック図である。バッテリ50は、組電池60と、電流検出部54と、電流遮断装置53と、電圧検出部110と、温度センサ58と、管理装置130と、を備える。
【0037】
バッテリ50には、車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)140と、エンジン20の動力により発電する発電機であるオルタネータ150と、自動車10の補機160と、が電気的に接続されている。車両ECU140は、自動車10を制御する車両制御部である。
【0038】
車両ECU140は、オルタネータ150や補機160を制御する。車両ECU140は、エンジン等の駆動系も制御してもよい。車両ECU140は1つに限らず、複数でもよい。
【0039】
補機160は、特定負荷160Aと一般負荷160Bを含む。特定負荷160Aは、後述する電圧シミュレーションの対象負荷である。一般負荷160Bは、例えば、ヘッドライド、ワイパー、カーナビゲーションシステム、空調装置などが含まれる。
【0040】
エンジン20の駆動中において、オルタネータ150の発電量が補機160の電力消費量より大きい場合、バッテリ50はオルタネータ150により充電される。オルタネータ150の発電量が補機160の電力消費量より小さい場合、バッテリ50は、その不足分を補うため、放電する。
【0041】
エンジン20の停止中、オルタネータ150は発電を停止する。発電停止中、バッテリ50は、充電されない状態となり、車両ECU140や補機160に対して放電のみ行う状態となる。
【0042】
組電池60のセル62は、例えば12個あり(図2参照)、3並列で4直列に接続されている。図5は、並列に接続された3つのセル62を1つの電池記号で表している。セル62は、「蓄電セル」の一例である。
【0043】
蓄電セルは、プリズマティックセルに限定はされず、円筒型セルであってもよいし、ラミネートフィルムケースを有するパウチセルであってもよい。バッテリ50は、定格12Vである。
【0044】
組電池60、電流遮断装置53及び電流検出部54は、パワーライン55P、パワーライン55Nを介して、直列に接続されている。パワーライン55P、55Nは、銅などの金属材料からなる板状導体であるバスバーBSB(図2参照)を用いることが出来る。
【0045】
図5に示すように、パワーライン55Pは、正極の外部端子51と組電池60の正極とを接続する。パワーライン55Nは、負極の外部端子52と組電池60の負極とを接続する。外部端子51、52は、バッテリ50の、自動車10(補機160)との接続用端子である。バッテリ50を、外部端子51、52を介してオルタネータ150や補機160に電気的に接続することが出来る。
【0046】
電流遮断装置53は、正極のパワーライン55Pに設けられている。電流遮断装置53は、FETなどの半導体スイッチでもよいし、機械式の接点を有するリレーでもよい。電流遮断装置53は、ラッチリレーなどの自己保持型スイッチであることが好ましい。
【0047】
電流遮断装置53は、ノーマリクローズタイプであり、正常時、クローズ状態に制御される。バッテリ50に何らかの異常があった場合、電流遮断装置53をクローズ状態からオープン状態に切り換えることで、組電池60の電流を遮断できる。
【0048】
電流検出部54は、負極のパワーライン55Nに設けられている。電流検出部54は、シャント抵抗でもよい。抵抗式の電流検出部54は、電流検出部54の両端電圧Vrに基づいて、組電池60の電流Iを計測することができる。抵抗式の電流検出部54は、電圧の極性(正負)から放電と充電を判別できる。代替的に、電流検出部54は、磁気センサでもよい。
【0049】
電圧検出部110は、セル62の電圧Vsと、組電池60の総電圧Vtを検出することができる。温度センサ58は、組電池60に取り付けられており、組電池60の電池温度TSあるいはその周囲の温度TSを検出する。
【0050】
管理装置130は、回路基板100(図2参照)上に実装されており、図5に示すように、CPU等の演算部131と、記憶部132と、通信部133を備える。
【0051】
通信部133は、信号線を介して、車両ECU140に接続されており、車両ECU140と通信する。管理装置130は、車両ECU140から、自動車10の動作状態(走行中、停車中、駐車中など)に関する信号を通信により受信できる。
【0052】
管理装置130は、電圧検出部110、電流検出部54、温度センサ58の出力に基づいて、バッテリ50の状態を監視する。つまり、組電池60の電池温度TS、電流I、総電圧Vtを監視する。
【0053】
管理装置130は、組電池60の電流Iに基づいて、組電池60のSOC[%]を推定する。
【0054】
SOC(state of charge:充電状態)は、満充電容量に対する残存容量の比率であり、下記の(1)式にて表される。
【0055】
SOC=(Cr/Co)×100・・・・・・・・・・(1)
Coはセルの満充電容量、Crはセルの残存容量である。
【0056】
SOCは、下記の(2)式で示すように、電流Iの時間に対する積分値に基づいて推定することが出来る。電流Iの符号を、充電時はプラス、放電はマイナスとする。
【0057】
SOC=SOCo+100×(∫Idt/Co)・・・(2)
SOCoは、SOCの初期値、Iは電流である。
【0058】
記憶部132には、電圧シミュレーションの実行プログラムやプログラムの実行に必要なデータが記憶されている。記憶部132に記憶されるデータには、後述する放電パターンPのデータが含まれる。また、組電池60の内部抵抗Rのデータやバッテリ50の充放電履歴のデータが含まれる。
【0059】
プログラムは、CD-ROM等の記録媒体に記憶して使用、譲渡、貸与等されてもよい。プログラムは、電気通信回線を用いて配信されてもよい。
【0060】
2.電圧シミュレーション
電圧シミュレーションは、放電パターンPを用いて、組電池60の総電圧Vtの時間変化を推定するものである。
【0061】
放電パターンPは、放電電流の所定時間分の第1時系列データD1である。例えば、図6Aの放電パターンPは、横軸を時間、縦軸を放電電流としたグラフにより規定される12秒間の放電電流のデータである。放電パターンPは、一例として、特定機器160Aの動作に必要な放電電流であり、特定機器160Aの動作時間が12秒の場合、放電パターンPは、12秒分のデータである。
【0062】
電圧シミュレーションにより、バッテリ50が放電パターンPに従って12秒間放電した時、つまり、特定機器160Aに対して12秒間放電した時の、総電圧Vt0~Vt12が得られる。
【0063】
総電圧Vt0~Vt12を、総電圧Vtの下限電圧VLと比較することにより、バッテリ50が放電パターンPで放電可能か、つまり、特定負荷160Aを動作させる電力を特定負荷160Aに対して供給可能か、判定することが出来る。
【0064】
図7は、電圧シミュレーションのタイムライン、図8はシミュレーション結果である。図8のシミュレーション結果によると、総電圧Vt0~Vt12は下限電圧VL以上であることから、この場合、バッテリ50は放電パターンPにより放電可能、つまり、特定負荷160Aに対して電力供給可能(特定負荷160Aは動作可能)と判定される。
【0065】
一方、総電圧Vt0~Vt12の一部が下限電圧VLを下回った場合(Vt<VL)、放電パターンPによる放電は不可能、つまり、特定負荷160Aに対して電力供給不能(特定負荷160Aは動作不可)と判定される。
【0066】
図7に示すように、電圧シミュレーションを周期的(t1、t2、t3、・・・)に実行することで、放電パターンPによる放電可否を、周期的に確認できる。
【0067】
放電パターンPによる放電が不可能な場合、車両ECU140に充電を促することで、特定負荷160Aに対して電力供給可能な状態にバッテリ50を戻することができる。
【0068】
特定負荷160Aは、一例として、電動ブレーキ、電動ステアリング等の安全関連負荷であり、この実施形態では、自動車の機能安全を目的に、電圧シミュレーションを実行する。安全関連負荷を対象として、電圧シミュレーションを実行することで、自動運転中に車両発電システム(DCDCやオルタネータ)が故障した際に、安全関連負荷に対して自動車が停止するまでに期間中(例えば、1分程度)、バッテリ50から安全関連負荷に対して電力供給可能か、判断することが出来る。電圧シミュレーションは、機能安全に限らず、快適性の確保など、他の用途、目的に用いることが可能である。
【0069】
管理装置130は、電圧シミュレーションの結果、例えば、図7のt2の時点の判定が放電可能であった場合(Vt>VLの場合)、次の判定までの期間t2~t3は、放電パターンにより放電可能(特定負荷160Aに対して電力供給可能)と判断する。
【0070】
しかし、電圧シミュレーションの実行周期T内の放電を考慮すると、放電パターンPによる放電が不可能な可能性がある(放電可否の誤判定)。
【0071】
具体的に説明すると、バッテリ50は、電圧シミュレーションの対象となる特定負荷160Aだけでなく、一般負荷160Bに放電する場合がある。一般負荷160Bの種類により、常時放電する場合もある。
【0072】
一般負荷160Bへの放電がある場合(特定負荷160Aなど一般負荷160B以外の負荷に放電している場合も同様)、電圧シミュレーションの実行周期T内においても、バッテリ50の蓄電量が減少する。
【0073】
例えば、時刻t2において、放電パターンPによる放電が可能な状態で、放電後の総電圧Vt12が下限電圧VLに対して余裕がある状態でも、t2以降は、実行周期T内の放電により、下限電圧VLに対する余裕が減少する。時刻ta時点で余裕が無くなると、時刻taから次の判定時点t3までの期間に、放電パターンPで放電した場合、総電圧Vtが下限電圧VLを下回る可能性がある。
【0074】
図9は、時刻tbで放電パターンPによる放電を開始した時の総電圧Vtの変化を示している。この例では、時刻tbで放電開始後、10秒~11秒の時点で、総電圧Vtは下限電圧VLを下回り、バッテリ50は電欠状態に至っている。
【0075】
管理装置130は、こうした問題を解決するため、電圧シミュレーションに、改良した放電パターンPを用いる。
【0076】
改良した放電パターンPは、図6Bに示すように、第1時系列データD1に対して第2時系列データD2を付加したものである。つまり、放電時間を、第1時系列データD1と第2時系列データD2の合計時間とし、第1時系列データD1のみ放電する場合に比べて、第2時系列データD2分だけ、余分に放電する放電パターンとしている。
【0077】
第2時系列データD2は、実行周期T内において、バッテリ50が、一般負荷160B等に放電する放電電流の時系列データである。第2時系列データD2は、過去の実績値(固定値)を用いてもよいし、前回周期Tの放電電流を用いてもよい。また、自動車10の動作状態に応じて切り換えてもよい。この実施形態は、放電電流は、約50Aの固定値としている。
【0078】
改良した放電パターンPは、改良前の放電パターンPよりも、1周期分長いデータである。第1時系列データD1は12秒、実行周期Tは1秒であり、放電パターンPは13秒のデータである。
【0079】
この実施形態では、第1時系列データD1の前(図6Bの左)に、第2時系列データD2を付加しているが、第1時系列D1の後(図6Bの右)に付加してもよい。
【0080】
図10に示すように、演算部131は、(A)~(F)を入力として、放電パターンPで放電した時の組電池60の総電圧Vtの時間変化を推定する(電圧シミュレーション)。
【0081】
具体的には、(3)式で示すように、総電圧の初期値Vt0から、放電パターンPによる放電に伴う総電圧の電圧変化量ΔVを減算することで、総電圧Vtの時間変化を推定する。
【0082】
電圧変化量ΔVは、組電池60のSOC、内部抵抗R、電池温度TS及び充放電履歴Zの情報等から算出できる。ΔVは、所定の演算式を用いて算出してもよいし、参照テーブルを用いて算出してもよい。
【0083】
Vt=Vt0-ΔV(SOC、R、I、TS、Z) (3)式
Vtは総電圧、Vt0は総電圧の初期値、ΔVは電圧変化量、Rは組電池の内部抵抗、Iは特定負荷への放電電流、TSは電池温度である。Zはバッテリ50の充放電履歴である。
【0084】
(A)改良した放電パターンP
(B)組電池60の総電圧の初期値Vt0
(C)組電池60のSOC
(D)組電池60の内部抵抗R
(E)電池温度TS
(F)バッテリ50の充放電履歴Z
【0085】
Vt0は電圧検出部110の計測値、TSは温度センサ58の計測値を用いる。SOCは電流積算法による演算値を用いる。Iは放電パターンのデータを用いる。内部抵抗Rは、記憶部132に記憶した固定値(経験値)を用いてもよいし、電流検出部54、電圧検出部110の計測値I、Vtから求めた演算値を用いてもよい。
【0086】
電池温度TSを、電圧シミュレーションの入力値に含める理由は、内部抵抗Rを温度補正するためである。温度補正をしない場合、電池温度TSは入力から省いてもよい。
【0087】
バッテリ50の充放電履歴Z(充放電回数等)を、電圧シミュレーションの入力値に含める理由は、バッテリ50の劣化による内部抵抗Rの増加を考慮するためである。バッテリ50の劣化を考慮しない場合、充放電履歴Zは入力から省いてもよい。
【0088】
この実施形態では、特定負荷160Aを電動ブレーキ、電動ステアリング等の安全関連負荷としたが、ドアロック装置や自動車10の運転モードを切り換える装置でもよい。非常時の退避走行に使用される機器でもよい。
【0089】
3.効果説明
電圧シミュレーションに、第2時系列データD2を付加した放電パターンPを用いることで、実行周期T内におけるバッテリ50の放電により、実際には、放電パターンPで放電する余力が無い状態にも関わらず、バッテリ50は放電可能である、と誤判定することを抑制できる。よって、放電パターンPによる放電可否を正確に判定することが出来る。
【0090】
<実施形態2>
実施形態2は、図11に示すように、電圧シミュレーションの実行周期Tを、第1周期T1と第2周期T2の2周期設定しており、実行周期Tの切り換えが可能である。
【0091】
T1は短周期である。T1の選択により、放電パターンPによる放電可否の判定周期が短くなるため、バッテリ50が放電可能な状態から不可能な状態に移行した場合、それを早期に発見できる。
【0092】
T2は長周期である。T2の選択により、管理装置130の演算負荷を軽減し、消費電力を抑えることが出来る。
【0093】
記憶部132は、第1放電パターンP1と、第2放電パターンP2を記憶する。図12Aは、第1放電パターンP1の波形、図12Bは、第2放電パターンP2の波形である。
【0094】
第1放電パターンP1及び第2放電パターンP2は、いずれも、第1時系列データD1と第2時系列データD2から構成されている。
【0095】
第1放電パターンP1はT1用(短周期)、第2放電パターンP2はT2用(長周期)である。2つの放電パターンP1、P2は、周期の相違により、第2時系列データD2が相違している。具体的には、データ長(放電時間)と電流値が異なっている。
【0096】
また、2つの放電パターンP1、P2は、同じ特定負荷160Aに対する電力供給可否の判定用であり、第1時系列データD1は共通している。
【0097】
この実施形態は、自動車10の状態に応じて、実行周期T、放電パターンPを切り換えており、図12に示すように、自動車10の走行中は、第1放電パターンP1を選択して、第1周期T1で電圧シミュレーションを実行し、非走行中は、第2放電パターンP2を選択して、第2周期T2で電圧シミュレーションを実行する。
【0098】
図13は、電圧シミュレーションのフローチャートである。
電圧シミュレーションの実行処理は、S10~S70の7つのステップから構成されている。
【0099】
管理装置130の起動後、S10に移行し、演算部131は、自動車10の動作状態が走行中か判定する。自動車10の動作状態は、車両ECU140との通信により、判定することが出来る。自動車10の動作状態は、バッテリ50の電流Iで判定することもできる。
【0100】
走行中の場合、S20に移行し、演算部131は、記憶部132から第1放電パターンP1を読み出す。
【0101】
その後、演算部131は、第1放電パターンP1を用いて、電圧シミュレーションを行い、第1放電パターンP1で放電した時の組電池60の総電圧Vtの電圧変化を推定する(S40)。
【0102】
演算部131は、電圧シミュレーションの実行後、組電池60の総電圧Vtを下限電圧VLと比較する(S50)。
【0103】
Vt≧VLの場合(S60:NO)、演算部131は、「第1放電パターンP1で放電可能」と判定する。その後、処理はS10に戻る。
【0104】
自動車10の走行中、電圧シミュレーションの実行処理(S10、S20、S40、S50、S60)は、第1周期T1で実行される。
【0105】
自動車10が停車、駐車など非走行状態に移行すると、S10にてNO判定され、S30に移行し、演算部131は、記憶部132から第2放電パターンP2を読み出す。
【0106】
その後、演算部131は、読み出した第2放電パターンP2を用いて、電圧シミュレーションを行い、第2放電パターンP2で放電した時の組電池60の総電圧Vtの電圧変化を推定する(S40)。
【0107】
演算部131は、組電池60の総電圧Vtを下限電圧VLと比較し、第2放電パターンP2による放電可否を判定する(S50、S60)。
【0108】
自動車10の非走行中、電圧シミュレーションの実行処理(S10、S30、S40、S50、S60)は、第2周期T2で実行される。
【0109】
自動車10が走行中、非走行中のいずれの場合も、電圧シミュレーションの結果、Vt<VLの場合(S60:YES)、演算部131は、「バッテリ50は放電パターンPによる放電は不可能」と判定する。
【0110】
この場合、S70に移行し、管理装置130は、車両ECU140に警告情報を通知し、バッテリ50の充電を促す。
【0111】
充電によりバッテリ50の総電圧Vtは上昇し、第1放電パターンP又は第2放電パターンによる放電が可能な状態に復帰する。
【0112】
この実施形態では、自動車10の走行中は、電圧シミュレーションを短周期T1で実行するから、バッテリ50が第1放電パターンP1による放電が不可能な状態に至った場合、それを早期に発見することが可能である。
【0113】
一方、自動車10の非走行中は、電圧シミュレーションを長周期T2で実行するから、管理装置130の電力消費を抑え、省エネルギーにすることが出来る。
【0114】
<実施形態3>
実施形態3は、図14に示すように、電圧シミュレーションに、2つの放電パターンPa、Pbを使用する。例えば、第1放電パターンPaは、第1特定負荷用(緊急用通信装置)、第2放電パターンPbは、第2特定負荷用(ハザードランプ)である。
【0115】
放電パターンPa、Pbは、第1時系列データD1が異なり、第2時系列データD2は共通する。第1時系列データD1が異なる理由は、電力供給対象となる特定負荷が異なるからである。
【0116】
演算部131は、2つの放電パターンPa、Pbを使用し、2パターンの電圧シミュレーションを、並行して行う。2パターンの電圧シミュレーションを並行して行うことで、2種類の放電パターンPa、Pbによる放電可否を判定することが出来る。
【0117】
上記例であれば、第1特定負荷(緊急用通信装置)に対する電力供給可否と、第2特定負荷(ハザードランプ)に対する電力供給可否を判定できる。
【0118】
この構成であれば、バッテリ50の放電パターンを選択することが可能となるから、車両ECU140による、バッテリ50の放電制御、車両負荷制御に役立てることが出来る。
【0119】
この実施形態では、2つの放電パターンPa、Pbを記憶しているから、2つの放電パターンで同時放電した場合(複数の特定負荷に同時に電力供給した場合)の電圧シミュレーションを行い、複数の放電パターンPa、Pbによる同時放電の可否(複数の特定負荷に対する同時電力供給可否)を判断することもできる。
【0120】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0121】
(1)蓄電セル62は、リチウムイオン二次電池に限らず、他の非水電解質二次電池でもよい。蓄電セル62は、複数を直並列に接続する場合に限らず、直列の接続や、単セルでもよい。蓄電セル62に代えて、キャパシタを用いることも出来る。
【0122】
(2)上記実施形態では、バッテリ50を自動車10に搭載したが、船舶や航空機など車両以外の移動体に搭載してもよい。また、バッテリ(蓄電装置)50は、移動体に限らず、分散型発電システムにおける変動吸収用の蓄電装置など、定置用途に用いてもよい。
【0123】
(3)上記実施形態では、管理装置130を、バッテリ50の内部に設けた。バッテリ50は、電流検出部54や電圧検出部110などの計器類を少なくとも備えていればよく、管理装置130や電流遮断装置53は、バッテリ50の装置外に有ってもよい。
【0124】
(4)上記実施形態2では、実行周期T1、T2ごとに、放電パターンP1、P2を設けたが、放電パターンPは共通でもよい。例えば、周期は、T1、T2を平均した平均周期Tavを用い、周期内の放電電流はT1、T2内の放電電流I1、I2を平均した平均電流Iavを用いた時系列データとすればよい。
【0125】
(5)放電パターンPの第2時系列データD2は、自動車10の状態により、異なってもよい。例えば、放電が多い車両走行中は、第2時系列データD2の値を大きくし(図12Aに示す第1放電パターンP1)、放電が少ない車両非走行中は、第2時系列データD2の値を小さくしてもよい(図12Bに示す第2放電パターンP2)。このようにすることで、放電電流の誤差(実際の放電電流とシミュレーションの放電電流の誤差)を小さくすることが出来る。
【0126】
(6)放電パターンPの第1時系列データD1は、放電電流の所定時間分の時系列データであれば、放電の目的は問わない。実施形態で例示したように、特定負荷160Aへの放電を目的としていてもよいし、車両ECU140や一般負荷160Bなど、特定負荷160A以外の負荷への放電を目的としてもよい。複数負荷への放電を目的としてもよい。
【符号の説明】
【0127】
10 自動車
50 バッテリ(蓄電装置)
60 組電池
130 管理装置
131 演算部
132 記憶部
140 車両ECU
160 補機
160A 特定負荷
160B 一般負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14