(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178650
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】エネルギー消費予測方法、エネルギー消費予測システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
H02J3/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091451
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】越智 一喜
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AE01
5G066AE09
(57)【要約】
【課題】ユーザの負担を抑制しつつ、特異日を除外する手法でエネルギー消費量予測精度の向上を図る。
【解決手段】時刻別の需要の変化率を求め(S102)、変化率とその平均値との差分の絶対値を日単位で積算した積算値を求め(S104)、最大積算値を最大積算値以外の積算値の平均で除した値である判定値が閾値以上である場合、最大積算値の日を外れ日(第1特異日)とし(S107)、過去に遡る予め定められた日から第1特異日を除外した場合の、平均値、積算値、最大積算値及び判定値を求め、判定値が閾値以上である場合の最大積算値の日を外れ日(第2特異日)とし(S107)、第1特異日を除外する前の実績値である第1の実績値、第1の実績値から第1特異日を除外した後の第2の実績値、及び、第2の実績値から第2特異日を除外した後の第3の実績値を算出する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー消費についての実績値を取得し、
取得した前記実績値の過去に遡る予め定められた日数の各日について時間経過に伴う予め定められている時間ごとの変化率である時間変化率を求め、
前記時間変化率と当該時間変化率の平均値との差分の絶対値を日単位で積算した積算値を求め、
前記積算値のうち最も大きい値の積算値である最大積算値を当該最大積算値以外の積算値の平均で除した値である判定値が閾値以上であるかどうかの判定を行い、当該判定の結果が当該閾値以上である場合、当該最大積算値の日を第1特異日とし、
過去に遡る予め定められた日から前記第1特異日を除外した場合の、前記平均値、前記積算値、前記最大積算値及び前記判定値を求め、当該判定値による前記判定を行い、当該判定の結果が前記閾値以上である場合の当該最大積算値の日を第2特異日とし、
前記第1特異日を除外する前の前記実績値である第1の実績値、当該第1の実績値から当該第1特異日を除外した後の第2の実績値、及び、当該第2の実績値から前記第2特異日を除外した後の第3の実績値を算出し、
前記算出した第1乃至第3の実績値の各々を用いて、予め定められている手法でエネルギー消費予測を行う、エネルギー消費予測方法。
【請求項2】
前記第2特異日を除外した場合の、前記最大積算値及び前記判定値を求め、当該判定値による前記判定の結果が前記閾値以上である場合に当該最大積算値の日を第3特異日とする処理である3番目以降の特異日に関する処理を、当該判定の結果が当該閾値未満になるまで行い、
前記3番目以降の特異日に関する処理により少なくとも3番目の特異日が存在する場合、当該n(nは3以上の整数)番目に除外された日を前記第nの実績値から除外した後の第n+1の実績値を最後の特異日まで順に算出し、
前記算出した第nの実績値を用いて前記エネルギー消費予測を行う、請求項1に記載のエネルギー消費予測方法。
【請求項3】
前記3番目以降の特異日に関する処理は、前記日単位の積算値が3つになるまで行う、請求項2に記載のエネルギー消費予測方法。
【請求項4】
前記算出した実績値を用いる前記エネルギー消費予測の各々について予測誤差を計算する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエネルギー消費予測方法。
【請求項5】
前記実績値の過去に遡る予め定められた日数及び前記閾値を予め指定された範囲における変数とし、それぞれの変数の組み合わせで実施する、請求項4に記載のエネルギー消費予測方法。
【請求項6】
エネルギー消費についての実績値を取得する手段と、
取得した前記実績値の過去に遡る予め定められた日数の各日について時間経過に伴う予め定められている時間ごとの変化率である時間変化率を求める手段と、
前記時間変化率と当該時間変化率の平均値との差分の絶対値を日単位で積算した積算値を求める手段と、
前記積算値のうち最も大きい値の積算値である最大積算値を当該最大積算値以外の積算値の平均で除した値である判定値が閾値以上であるかどうかの判定を行い、当該判定の結果が当該閾値以上である場合、当該最大積算値の日を第1特異日とする手段と、
過去に遡る予め定められた日から前記第1特異日を除外した場合の、前記平均値、前記積算値、前記最大積算値及び前記判定値を求め、当該判定値による前記判定を行い、当該判定の結果が前記閾値以上である場合の当該最大積算値の日を第2特異日とする手段と、
前記第1特異日を除外する前の前記実績値である第1の実績値、当該第1の実績値から当該第1特異日を除外した後の第2の実績値、及び、当該第2の実績値から前記第2特異日を除外した後の第3の実績値を算出する手段と、
前記算出した第1乃至第3の実績値の各々を用いて、予め定められている手法でエネルギー消費予測を行う手段と、
を備えるエネルギー消費予測システム。
【請求項7】
情報処理装置に、
エネルギー消費についての実績値を取得する機能と、
取得した前記実績値の過去に遡る予め定められた日数の各日について時間経過に伴う予め定められている時間ごとの変化率である時間変化率を求める機能と、
前記時間変化率と当該時間変化率の平均値との差分の絶対値を日単位で積算した積算値を求める機能と、
前記積算値のうち最も大きい値の積算値である最大積算値を当該最大積算値以外の積算値の平均で除した値である判定値が閾値以上であるかどうかの判定を行い、当該判定の結果が当該閾値以上である場合、当該最大積算値の日を第1特異日とする機能と、
過去に遡る予め定められた日から前記第1特異日を除外した場合の、前記平均値、前記積算値、前記最大積算値及び前記判定値を求め、当該判定値による前記判定を行い、当該判定の結果が前記閾値以上である場合の当該最大積算値の日を第2特異日とする機能と、
前記第1特異日を除外する前の前記実績値である第1の実績値、当該第1の実績値から当該第1特異日を除外した後の第2の実績値、及び、当該第2の実績値から前記第2特異日を除外した後の第3の実績値を算出する機能と、
前記算出した第1乃至第3の実績値の各々を用いて、予め定められている手法でエネルギー消費予測を行う機能と、
を実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー消費予測方法、エネルギー消費予測システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、分類された対象カテゴリー毎に、昼と夜のそれぞれを区別して、エネルギー消費量の予想対象日から過去に遡って所定数の所定時間ごとのエネルギー消費量情報を平均化して、昼と夜のそれぞれの平均エネルギー消費パターンを作成するパターン作製手段と、カテゴリー毎に、気温情報とエネルギー消費量との相関をとり、予測対象日の予想最高気温から、昼の予想エネルギー消費量を算出するとともに、予測対象日の予想最低気温から、夜の予想エネルギー消費量を算出するエネルギー消費量予想手段と、昼と夜のそれぞれについて、平均エネルギー消費パターンにおける総エネルギー消費量と予想エネルギー消費量とを比較し、エネルギー消費量が予想エネルギー消費量と一致するように、平均エネルギー消費パターンに対し所定時間ごとに一定の定数を乗じて、所定時間ごとの補正エネルギー消費量を算出するエネルギー消費量補正手段を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、過去の実績値にバラツキがあると、実績値を基に算出するエネルギー消費予測に影響を与えてしまい、予測精度の低下につながってしまうものの、ユーザが実績値からバラツキが大きい特異日を特定して除外する場合、エネルギー消費予測に関するユーザの負担が大きくなる。
【0005】
本発明の目的は、このような課題を解決することであり、具体的には、ユーザの負担を抑制しつつ、特異日を除外する手法でエネルギー消費量予測精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、エネルギー消費についての実績値を取得し、取得した前記実績値の過去に遡る予め定められた日数の各日について時間経過に伴う予め定められている時間ごとの変化率である時間変化率を求め、前記時間変化率と当該時間変化率の平均値との差分の絶対値を日単位で積算した積算値を求め、前記積算値のうち最も大きい値の積算値である最大積算値を当該最大積算値以外の積算値の平均で除した値である判定値が閾値以上であるかどうかの判定を行い、当該判定の結果が当該閾値以上である場合、当該最大積算値の日を第1特異日とし、過去に遡る予め定められた日から前記第1特異日を除外した場合の、前記平均値、前記積算値、前記最大積算値及び前記判定値を求め、当該判定値による前記判定を行い、当該判定の結果が前記閾値以上である場合の当該最大積算値の日を第2特異日とし、前記第1特異日を除外する前の前記実績値である第1の実績値、当該第1の実績値から当該第1特異日を除外した後の第2の実績値、及び、当該第2の実績値から前記第2特異日を除外した後の第3の実績値を算出し、前記算出した第1乃至第3の実績値の各々を用いて、予め定められている手法でエネルギー消費予測を行う、エネルギー消費予測方法である。
ここで、前記第2特異日を除外した場合の、前記最大積算値及び前記判定値を求め、当該判定値による前記判定の結果が前記閾値以上である場合に当該最大積算値の日を第3特異日とする処理である3番目以降の特異日に関する処理を、当該判定の結果が当該閾値未満になるまで行い、前記3番目以降の特異日に関する処理により少なくとも3番目の特異日が存在する場合、当該n(nは3以上の整数)番目に除外された日を前記第nの実績値から除外した後の第n+1の実績値を最後の特異日まで順に算出し、前記算出した第nの実績値を用いて前記エネルギー消費予測を行うことができる。かかる場合、前記3番目以降の特異日に関する処理は、前記日単位の積算値が3つになるまで行うことができる。
ここで、前記算出した実績値を用いる前記エネルギー消費予測の各々について予測誤差を計算することができる。かかる場合、前記実績値の過去に遡る予め定められた日数及び前記閾値を予め指定された範囲における変数とし、それぞれの変数の組み合わせで実施することができる。
上記の目的を達成する他の本発明は、エネルギー消費についての実績値を取得する手段と、取得した前記実績値の過去に遡る予め定められた日数の各日について時間経過に伴う予め定められている時間ごとの変化率である時間変化率を求める手段と、前記時間変化率と当該時間変化率の平均値との差分の絶対値を日単位で積算した積算値を求める手段と、前記積算値のうち最も大きい値の積算値である最大積算値を当該最大積算値以外の積算値の平均で除した値である判定値が閾値以上であるかどうかの判定を行い、当該判定の結果が当該閾値以上である場合、当該最大積算値の日を第1特異日とする手段と、過去に遡る予め定められた日から前記第1特異日を除外した場合の、前記平均値、前記積算値、前記最大積算値及び前記判定値を求め、当該判定値による前記判定を行い、当該判定の結果が前記閾値以上である場合の当該最大積算値の日を第2特異日とする手段と、前記第1特異日を除外する前の前記実績値である第1の実績値、当該第1の実績値から当該第1特異日を除外した後の第2の実績値、及び、当該第2の実績値から前記第2特異日を除外した後の第3の実績値を算出する手段と、前記算出した第1乃至第3の実績値の各々を用いて、予め定められている手法でエネルギー消費予測を行う手段と、を備えるエネルギー消費予測システムである。
上記の目的を達成する他の本発明は、情報処理装置に、エネルギー消費についての実績値を取得する機能と、取得した前記実績値の過去に遡る予め定められた日数の各日について時間経過に伴う予め定められている時間ごとの変化率である時間変化率を求める機能と、前記時間変化率と当該時間変化率の平均値との差分の絶対値を日単位で積算した積算値を求める機能と、前記積算値のうち最も大きい値の積算値である最大積算値を当該最大積算値以外の積算値の平均で除した値である判定値が閾値以上であるかどうかの判定を行い、当該判定の結果が当該閾値以上である場合、当該最大積算値の日を第1特異日とする機能と、過去に遡る予め定められた日から前記第1特異日を除外した場合の、前記平均値、前記積算値、前記最大積算値及び前記判定値を求め、当該判定値による前記判定を行い、当該判定の結果が前記閾値以上である場合の当該最大積算値の日を第2特異日とする機能と、前記第1特異日を除外する前の前記実績値である第1の実績値、当該第1の実績値から当該第1特異日を除外した後の第2の実績値、及び、当該第2の実績値から前記第2特異日を除外した後の第3の実績値を算出する機能と、前記算出した第1乃至第3の実績値の各々を用いて、予め定められている手法でエネルギー消費予測を行う機能と、を実現させるプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザの負担を抑制しつつ、特異日を除外する手法でエネルギー消費量予測精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係るエネルギー消費予測システムの構成例を示す図である。
【
図2】設備制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】端末のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図4】冷房需要と気温との関係を示すグラフで、縦軸が冷房需要(MJ)、横軸が気温(℃)のグラフであり、(a)は事例1、(b)は事例2を示す。
【
図6】特異日を予測から外す処理を示すフローチャートである。
【
図7】エネルギー需要を時系列で示すグラフであり、縦軸がエネルギー需要(MJ)、横軸が時刻である。
【
図8】
図6のステップ103及び104を説明する図であり、(a)はステップ103、(b)はステップ104を示す。
【
図10】
図6のステップ112を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係るエネルギー消費予測システム1の構成例を示す図である。
本実施の形態では、マンション等の建物に設置されたエネルギー設備10を設備制御装置20により制御する構成において、エネルギー消費予測システム1は、設備制御装置20に対してエネルギー消費予測情報を提供し、エネルギー設備10の効率的な運用を図るものである。
【0010】
エネルギー消費予測システム1は、エネルギー消費予測を行う端末30を備える。端末30は、端末40から気象データを取得する。端末30は、設備制御装置20及び端末40とネットワーク50を介して接続されている。
【0011】
エネルギー設備10は、建物で消費される電力を例えば都市ガスで発電すると共に発電に伴って熱を建物に供給するための設備であり、効率的な運用を図ることにより省エネや省コストが実現される。そのため、端末30から設備制御装置20に対して設備運転計画を送信し、設備制御装置20は、設備運転計画に基づいてエネルギー設備10を稼動制御する。
【0012】
エネルギー消費予測システム1の端末30は、例えば、コンピュータにより実現される。端末30は、単一のコンピュータにより構成しても良いし、複数のコンピュータによる分散処理により実現しても良い。端末30は、情報処理装置の一例である。
なお、端末30におけるエネルギー消費の予測として、電力消費のほかやガス消費に対しても適用可能である。
【0013】
端末40は、気象データ会社の端末であり、例えば、PC(Personal Computer)等により実現される。端末40は、端末30に対して定期的に又は要求に応じて、気温等の気象データを送信する。
【0014】
ネットワーク50は、データの送受信が可能であれば、その種類は特に限定されず、例えばインターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等として良い。データ通信に用いられる通信回線は、有線であっても無線であっても良い。また、複数のネットワーク50や通信回線を介して各装置を接続する構成としても良い。
【0015】
次に、設備制御装置20の機能構成について説明する。
図2は、設備制御装置20の機能構成例を示すブロック図である。
設備制御装置20は、送受信部21と、実績値計測部22と、実績値保存部23と、予測情報取得部24と、稼動制御部25と、を備える。
【0016】
送受信部21は、ネットワーク50(
図1参照)を介して端末30と接続するためのネットワークインターフェイスである。これにより、設備制御装置20は、端末30とデータ交換を行う。
【0017】
実績値計測部22は、エネルギー設備10での単位時間当たりのエネルギー需要を実績値として計測する。ここにいう単位時間としては、例えば30分、1時間、4時間等の単位である。なお、かかる実績値は、対象となる建物や、店舗、事業所に対し、過去の複数の日における各日毎、所定時間毎の電力消費量に関する情報であり、電力消費情報ということがある。
【0018】
実績値保存部23は、実績値計測部22により計測された実績値を保存し、定期的に又は要求に応じて端末30に実績値を読み出す。読み出された実績値は、送受信部21により、端末30に送信される。
【0019】
予測情報取得部24は、端末30から送信されたエネルギー消費予測情報を、送受信部21を介して取得する。
稼動制御部25は、予測情報取得部24により取得されたエネルギー消費予測情報に応じてエネルギー設備10の稼動を制御する。
【0020】
なお、本実施の形態では、設備制御装置20を端末30とは別に構成しているが、上述した設備制御装置20の機能構成を端末30が備えるようにしてもよい。すなわち、エネルギー設備10を端末30が制御する変形例である。
【0021】
図3は、端末30のハードウェア構成例を示すブロック図である。
同図に示すように、端末30は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)100aと、主記憶手段であるメモリ100cとを備える。また、各装置は、外部デバイスとして、磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)100g、ネットワークインターフェイス100f、表示機構100d、音声機構100h、キーボードやマウス等の入力デバイス100i等を備える。
【0022】
メモリ100cおよび表示機構100dは、システムコントローラ100bを介してCPU100aに接続されている。また、ネットワークインターフェイス100f、磁気ディスク装置100g、音声機構100hおよび入力デバイス100iは、I/Oコントローラ100eを介してシステムコントローラ100bと接続されている。各構成要素は、システムバスや入出力バスなどの各種のバスによって接続される。
【0023】
磁気ディスク装置100gには、各機能を実現するためのプログラムが格納されている。そして、このプログラムがメモリ100cにロードされ、このプログラムに基づく処理がCPU100aにより実行されることで、各種の機能が実現される。
【0024】
ここで、温室効果ガスあるいは二酸化炭素の排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにするネットゼロ達成に向けて、再エネの利活用だけでなく、使用するエネルギー量を減らしていく省エネ活動の究め込みも重要である。近年では、電力や熱などのエネルギー消費量を予測し、その予測結果をもとにエネルギー設備を最適に運用するエネルギーマネジメントシステムを導入する事例がある。省エネを追求していくためには、いかに高精度な予測を行うかが重要となる。
【0025】
ここで、
図4は、冷房需要と気温との関係を示すグラフであり、過去の実績値をひし形で示し、予測値を正四角形で示し、実際値を正三角形で示す。(a)は事例1、(b)は事例2を示す。(a)及び(b)の各縦軸は、当日の冷房需要(MJ)、各横軸は、当日の最高気温としての気温(℃)である。
図4(a)に示すように、日ごとの実績値をプロットして散布図を作成すると、冷房需要と気温との間には正の相関が認められる。そして、その直線を定めることで、予想温度から冷房需要を導くことができる。
図4(a)の事例1では、実績値にバラツキが比較的少なく、予測値と実際値との差が小さい。
なお、実績値は、曜日または営業形態によるカテゴリー分類がなされたものを用いることができる。
【0026】
その一方で、
図4(b)の事例2では、日ごとの実績値に、他の大部分のデータから離れている外れ値があることから、外れ値のない事例1に比べて、予測値と実際値との差が大きい。
このように、同じカテゴリーの過去日に他の日と明らかに傾向が異なる日(特異日)がある場合であってもその日を予測に用いてしまうと、精度の悪化につながる。
【0027】
そこで、本実施の形態に係るエネルギー消費予測システム1では、需要予測の乖離原因になり得る外れ値の存在に着目し、同じカテゴリー内の特異日を予測に用いる過去日から外すことにより、予測精度の向上を図る。すなわち、本実施の形態では、容易に入手可能な情報を有効活用することにより、エネルギー消費量予測の大外しを回避し、年間を通じて高精度な予測を行うことを可能にする。
以下、具体的に説明する。
【0028】
まず、端末30の機能構成について説明する。
図5は、端末30の機能構成例を示すブロック図である。
同図に示すように、端末30は、送受信部31、気象データ取得部32、実績値取得部33、消費予測高度化処理部34、エネルギー消費予測部35及び表示部36を備えている。
【0029】
送受信部31は、ネットワーク50(
図1参照)を介して設備制御装置20、端末40と接続するためのネットワークインターフェイスである。これにより、端末30は、設備制御装置20とデータ交換を行い、端末40とデータ通信を行う。
【0030】
気象データ取得部32は、気象データ会社の端末40から、気温等の気象データを取得し、取得した気象データを保存する。ここにいう気温としては、予想最高気温及び予想最低気温のほか、過去の最高気温及び最低気温が含まれる。なお、予想最高気温と予想最低気温は、変更された場合には最新の気象データを取得し、保存する。
【0031】
実績値取得部33は、設備制御装置20から実績値保存部23に保存されている実績値を取得する。実績値取得部33は、取得した実績値をカテゴリーごとに分類し、保存する。
【0032】
消費予測高度化処理部34は、実績値取得部33に保存されている実績値を用いて、エネルギー消費予測部35による消費予測の精度を高度化するためのデータ処理を行う。かかるデータ処理は、実績値に、予測精度の低下につながる外れ値ないし外れ日を特定するものであるが、詳細は後述する。
【0033】
エネルギー消費予測部35は、過去の実績値を基に、将来のエネルギー消費を予測する。より詳細に説明すると、エネルギー消費予測部35は、実績値取得部33により取得され保存されている実績値ないし電力消費量情報をカテゴリーごとに分類し、それぞれのカテゴリー毎に、単位時間毎の実績値をそれぞれの時間毎に平均化して、各日の昼と夜のそれぞれの平均電力消費パターンを作成する。
【0034】
また、エネルギー消費予測部35は、気象データ取得部32により取得され記憶されている各日の気温情報(最高気温および最低気温)と実績値とから、カテゴリー毎に気温と電力消費量との相関を昼と夜とのそれぞれについて作成する。さらに、エネルギー消費予測部35は、予測対象日の気温情報から、対象日の予想電力消費量を算出する。
【0035】
エネルギー消費予測部35は、上述の平均電力消費パターンにおける総電力消費量と上述の予想電力消費量とを比較する。また、エネルギー消費予測部35は、平均電力消費パターンにおける総電力消費量が予想電力消費量と一致するように、平均電力消費パターンに対し30分毎に一定の定数を乗じて、30分毎の補正電力消費量を算出する。
なお、補正電力消費量(予測値)の算出は、例えば昼の平均電力消費パターンによる昼の総電力消費量に対して、昼の予想電力消費量が20%大きい場合には、30分毎の全ての電力消費量に対して1.2を乗じる。
【0036】
表示部36は、得られた情報を表示する。例えば、日付、対象日の予想最高気温、最低気温、契約電力(許容エネルギー使用量)、節電設定(節電率及び実施予定時刻の設定)、表示設定(グラフ表示/非表示の設定)、補正電力消費量(予測値)と実績値(電力消費量)等が表示される。
【0037】
次に、運用パターンが異なる日(特異日)を予測から外すデータ処理について説明する。
図6は、特異日を予測から外す処理を示すフローチャートであり、かかる処理は、端末30の実績値取得部33、消費予測高度化処理部34及びエネルギー消費予測部35により行われる。また、
図7は、エネルギー需要を時系列で示すグラフであり、縦軸がエネルギー需要(MJ)、横軸が時刻である。
図8は、
図6のステップ103及び104を説明する図であり、(a)はステップ103、(b)はステップ104をそれぞれ示す。
図9は、ステップ109を説明する図であり、
図10は、ステップ112を説明する図である。
【0038】
[ステップ101、102]
図6に示す処理例では、エネルギー消費についての実績値を実績値取得部33が取得すると(ステップ101)、消費予測高度化処理部34は、時刻別の需要の変化率を求める(ステップ102)。すなわち、
図7に示す例では、0時の実績値1が1000MJであり、0時30分の実績値2が1500MJであり、かかる場合、0時から0時30分までの時刻帯における時刻別の需要の変化率は、実績値2を実績値1で除した値すなわち1.5になる。それ以降の時間帯についても同様に算出する。
【0039】
[ステップ103]
このような需要の変化率は、時間経過に伴う予め定められている時間ごとの変化率である時間変化率であり、取得した実績値の過去に遡る予め定められた日数の各日について行われる。ここにいう予め定められた日数としては、例えば7日、10日、15日等を挙げることができる。
【0040】
例えば
図8(a)では、需要変化の数値欄にあるように、過去日1、過去日2及び過去日3の各日について、時刻間に対する変化率1~変化率3を求める。なお、予め定められた日数が7日である場合には、同様に変化率4~7を求めることになる。後述する
図8(b)についても同様である。
そして、消費予測高度化処理部34は、
図8(a)に示す平均欄にあるように、時刻間別に、変化率の平均値を求める(ステップ103)。
【0041】
[ステップ104]
消費予測高度化処理部34は、次に、求めた変化率が平均値からどれくらい乖離しているかを求めた後に、各日について乖離の積算値を求める(ステップ104)。
ここにいう乖離は、需要の変化率(時間変化率)と変化率の平均値との差分の絶対値を指すものであり、例えば、
図8(b)では、平均値からの乖離欄にあるように、過去日1については、|変化率の平均値-変化率1|を算出する。また、過去日2について、|変化率の平均値-変化率2|を算出し、過去日3について、|変化率の平均値-変化率3|を算出する。
【0042】
ステップ104における乖離の積算値は、日単位で全時刻分を積算したものであり、
図8(b)では、積算値欄に示すように、過去日1~過去日3の各々の乖離を積算する。
【0043】
なお、
図8(a)及び(b)では、過去日が3日であるが、これに限られず、過去日1~過去日3のほかに過去日4以降があってもよい。さらに説明すると、このような過去日を何日にするかを一律に予め定めておく場合の他、過去日を示すパラメータをユーザが予め定めることができるようにしてもよい。
【0044】
[ステップ105]
消費予測高度化処理部34は、ステップ104で求めた各日についての乖離の積算値のうち、最も大きい値である日を決定する(ステップ105)。すなわち、乖離の積算値のうち最も大きい値の積算値である最大積算値M1を特定すると共に、特定された最大積算値の日も特定しておく。
【0045】
[ステップ106]
そして、消費予測高度化処理部34は、特定された最大積算値M1の日における各時刻の変化率を除外した場合の「変化率の平均値」である第1平均値A1を算出し、最大積算値M1を第1平均値A1で除した値である判定値V1が予め定められている閾値S以上であるかどうかを判定する。すなわち、M1/A1=V1≧Sが成立するかどうかの判定を行う(ステップ106)。
【0046】
[ステップ107]
判定値V1が閾値S以上であるとして上記式が成立する場合(ステップ106でYes)、特定されている最大積算値M1の日すなわち積算値が最も大きい日を、第1特異日の一例である外れ日と決定する(ステップ107)。すなわち、積算値が最も大きい日が、予測精度を悪化させる可能性が最も高い日として扱う。
なお、閾値Sを1とする場合及び1未満とする場合すなわち閾値Sを1以上とする場合には、上記式は必ず成立することから、外れ日は必ず決定される。
【0047】
[ステップ108]
このままだと外す必要のない日(乖離の積算値がその他の日とあまり変わらない日)まで予測から外してしまうことになる。そこで、本実施の形態では、以下の処理を行う。
すなわち、ステップ107で外れ日と決定された日を除外した場合に残りの過去日が3日以下であるかどうかを判定する(ステップ108)。
【0048】
過去日が3日を超えた日数である場合(ステップ108でNo)、ステップ103に戻る。すなわち、実績値取得部33が取得した実績値から外れ日(第1特異日の一例)を除外した実績値を用いたステップ103以降の処理が、分岐処理を含めて行われる。
【0049】
[繰り返し処理]
2回目に行われるステップ103以降の処理(繰り返し処理)について補足説明すると、第1特異日の一例としての外れ日を除外した場合、ステップ103で変化率の平均値を求め、ステップ104で乖離の積算値を求め、さらにステップ105では、最も大きい積算値は最大積算値M2として特定される。
そして、ステップ106では、最大積算値M2の日における各時刻の変化率を除外した場合の「変化率の平均値」である第2平均値A2を算出し、判定値V2(=M2/A2)が閾値S以上であるかの判定(V2≧S)を行う。ステップ107では、最大積算値M2の日を、第2特異日の一例である外れ日と決定する。
【0050】
また、3回目のステップ103以降の処理(繰り返し処理)が行われた場合について補足説明すると、第2特異日の一例としての外れ日を除外した場合、ステップ103では変化率の平均値、ステップ104では乖離の積算値をそれぞれ求め、ステップ105では、最も大きい積算値は最大積算値M3として特定される。
そして、ステップ106では、最大積算値M3の日における各時刻の変化率を除外した場合の「変化率の平均値」である第3平均値A3を算出し、判定値V3(=M3/A3)が閾値S以上であるかの判定(V3≧S)を行う。ステップ107では、最大積算値M3の日を、第3特異日の一例である外れ日と決定する。
【0051】
なお、このようなステップ103以降の繰り返し処理は、求めた判定値が閾値S未満になるまで行われる。また、ステップ103以降の繰り返し処理は、日単位の積算値が3つになるまで行われる。
【0052】
かかる第3特異日の一例である外れ日を決定する処理は、「3番目以降の特異日に関する処理」の一例である。「3番目以降の特異日に関する処理」により少なくとも3番目の特異日が存在する場合、n(nは3以上の整数)番目に除外された日を第nの実績値から除外した後の第n+1の実績値を最後の特異日まで順に算出する。
【0053】
なお、第1特異日、第2特異日及び第3特異日の一例である外れ日と定義される日は、時刻別の変化率が異なる日であり、負荷の大小は関係がない。
【0054】
[ステップ109]
ステップ103に戻る処理は、判定値が閾値Sを下回るか、残りの過去日が3日になるまで繰り返し実施される。すなわち、1回目以降におけるステップ106において、判定値が閾値S未満である場合(ステップ106でNo)、または、外れ日と決定された日を除外した場合に残りの過去日が3日以下である場合(ステップ108でYes)、消費予測高度化処理部34は、外された過去日に対して外された順番で順位を付ける(ステップ109)。
【0055】
より詳細には、第1特異日の一例である外れ日には順位1が付けられ、第2特異日の一例である外れ日には順位2が付けられ、第3特異日の一例である外れ日には順位3が付けられる。
例えば、
図9に示す例では、過去日1~過去日15までのうち、過去日2に順位4が付けられ、過去日3に順位1が付けられ、過去日15に順位8が付けられている。また、
図9に示す例では、外れ日とされていないのは、過去日1、過去日4である。なお、この場合の過去日3は、第1特異日の一例である。
【0056】
このように付された順位は、高いほど運用の傾向が他の日と異なるものである。需要予測上、最低3日分の過去日を残す必要があるため、最も似た運用パターンを持つ3日は順位が付かないことがある。
【0057】
[ステップ110、111]
ステップ109の後、エネルギー消費予測部35は、外れ日なしでエネルギー消費予測(需要予測)を行い(ステップ110)、外れ日の順位が高いものから一つずつ外し、その度にエネルギー消費予測を行う(ステップ111)。すなわち、まず、外れ日なしの実績値でエネルギー消費予測を行った後、外れ日の順位1が付けられた日(第1特異日)を外した実績値でエネルギー消費予測を行い、次に、外れ日の順位1が付けられた日(第1特異日)及び順位2が付けられた日(第2特異日)を外してエネルギー消費予測を行う。このような都度のエネルギー消費予測を、最後の特異日まで行う。
【0058】
なお、外れ日なしの実績値は、第1の実績値の一例であり、外れ日なしの実績値から第1特異日を除外した場合の実績値は、第2の実績値の一例であり、外れ日なしの実績値から第1特異日及び第2特異日を除外した場合の実績値(第2の実績値から第2特異日を除外した場合の実績値)は、第3の実績値の一例である。
【0059】
さらに説明すると、エネルギー消費予測は、外されていない過去日が3つになるまで行われる。上述した
図9に示す過去日1~過去日15の例では、外れ日なしのエネルギー消費予測と、順位1~12の各々を順に外した場合のエネルギー消費予測が行われ、全部で13回のエネルギー消費予測が行われる。
【0060】
[ステップ112]
そして、ステップ111の後、エネルギー消費予測部35は、エネルギー消費予測する度に予測誤差を計算し、各結果との比較を行う。最も予測精度(実績との絶対誤差の平均値)の高い予測結果を採用する。すなわち、最も予測精度が高い予測精度を表示部36(
図5参照)に提示する(ステップ112)。
【0061】
例えば、
図10に示す例では、予測1及び予測2が破線で示されている。また、04時の時点での当日0時から04時までの実績値が実線で示されている。なお、一点鎖線は、当日04時以降の実績値である。そして、予測1の予測誤差G1と予測2の予測誤差G2を比較すると、予測2の予測誤差G2が予測1の予測誤差G1よりも小さい(G2<G1)。このため、予測1よりも予測2の方が高い予測精度であるとして、予測2が予測結果として採用される。
【0062】
図10に示す例では、エネルギー消費予測部35が予測2を予測結果とすると説明したが、これに限られず、表示部36(
図5参照)に
図10の画像(ただし、一点鎖線を除く画像)を表示し、ユーザが予測1又は予測2を選択するようにしてもよい。
【0063】
なお、当日の予測をしても、全ての時刻間(コマ)で実績が存在するわけではない場合がある。かかる場合には、すでに実績が存在するコマのみを用いて、予測誤差を計算することになる。
【0064】
ここで、エネルギー消費予測部35において、実績値の過去日の日数及び閾値Sを予め指定された範囲における変数とし、それぞれの変数の組み合わせで実施するようにしてもよい。かかる場合には、ユーザは、これらの変数の組み合わせのいずれかを選択する。
過去日の日数の予め指定された範囲としては、例えば7~30日であり、1日刻みとすることが考えられる。なお、
図9に示す例では、過去日の日数が15日である。
また、閾値Sの予め指定された範囲としては、例えば1~1.2であり、0.1刻みとすることが考えられる。
過去の日数は、実績値の過去に遡る予め定められた日数の一例である。
【0065】
ここで、端末30の実績値取得部33は、実績値を取得する手段(機能)の一例である。
消費予測高度化処理部34は、時間変化率を求める手段(機能)の一例であり、時間変化率を求める手段(機能)の一例であり、第1特異日とする手段(機能)の一例であり、第2特異日とする手段(機能)の一例であり、算出する手段(機能)の一例である。
エネルギー消費予測部35は、エネルギー消費予測を行う手段(機能)の一例である。
【0066】
本発明の実施形態を実現するプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータが読取可能な記録媒体に記憶した状態で提供し得る。また、インターネットなどの通信手段を用いて提供することも可能である。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。上記の実施形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0068】
1…エネルギー消費予測システム、30…端末、33…実績値取得部、34…消費予測高度化処理部、35…エネルギー消費予測部