(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178651
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】車両のボディ構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/04 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
B62D25/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091452
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 充
(72)【発明者】
【氏名】大國 崇
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 涼一
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB54
3D203CA02
3D203CA22
3D203CA33
3D203CA34
3D203DA32
(57)【要約】
【課題】延性が低い超ハイテン材を引っ張り力が加わる骨格部材の材料として使用できるようにすることである。
【解決手段】筒状の骨格部材143を備える車両のボディ構造であって、骨格部材143は、複数の成形パネル143x,143yを接合させることにより筒状に形成されて、車両衝突荷重を受けて長さ方向における途中位置が一定方向に曲がるように構成されており、骨格部材143を構成する成形パネル143xには、車両衝突時に骨格部材143が曲がる際、引っ張り力が加わる部位に延び代となる加工部50が設けられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の骨格部材を備える車両のボディ構造であって、
前記骨格部材は、複数の成形パネルを接合させることにより筒状に形成されて、車両衝突荷重を受けて長さ方向における途中位置が一定方向に曲がるように構成されており、
前記骨格部材を構成する成形パネルには、車両衝突時に前記骨格部材が曲がる際、引っ張り力が加わる部位に延び代となる加工部が設けられている車両のボディ構造。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のボディ構造であって、
前記骨格部材は、前記複数の成形パネルの幅方向における端縁が互いに接合されることにより、径寸法に対して長さ寸法が大きな筒状に形成されており、
前記引っ張り力は前記成形パネルの端縁の長さ方向に加わる構成であり、
前記加工部は、前記成形パネルの端縁に形成されたビードで、前記ビードの稜線の方向が前記成形パネルの端縁の長さ方向と交差している車両のボディ構造。
【請求項3】
請求項2に記載された車両のボディ構造であって、
前記成形パネルには、前記端縁の長さ方向に沿ってパネル稜線が形成されており、
前記ビードは、前記成形パネルの端縁のエッジ部から前記パネル稜線を横断して形成されている車両のボディ構造。
【請求項4】
請求項1に記載された車両のボディ構造であって、
前記骨格部材は、前記複数の成形パネルの幅方向における端縁が互いに接合されることにより、径寸法に対して長さ寸法が大きな筒状に形成されており、
前記引っ張り力は前記成形パネルの端縁の長さ方向に加わる構成であり、
前記加工部は、前記成形パネルの端縁のエッジ部において長さ方向に沿って形成された切り欠きである車両のボディ構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに形成された車両のボディ構造であって、
前記骨格部材は、車両ボディのドア開口部の開口縁を構成するピラーであり、前記加工部は、前記ピラーにおいて前記ドア開口部のコーナー部を構成する部位の外周側に設けられている車両のボディ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の骨格部材を備える車両のボディ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のボディ構造に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の車両は、
図14に示すように、フロントドア開口部102の前側のベルトライン上に固定ガラス103を備える車両である。前記車両は、固定ガラス103の窓枠を構成するフロントピラー104とドア側フロントピラー105とを備えている。フロントピラー104とドア側フロントピラー105とは筒状の骨格部材であり、互いの上端後部が同じく筒状の骨格部材であるルーフサイドレール106の前端部に接続されている。ここで、車両前突時の衝突荷重は、主としてドア側フロントピラー105を介してルーフサイドレール106に伝わるようになる。
【0003】
前記衝突荷重がドア側フロントピラー105を介してルーフサイドレール106に伝わると、
図15に示すように、ドア側フロントピラー105の上端後部がルーフサイドレール106に対して下回動方向(起立方向(
図14の二点鎖線参照))に湾曲する。即ち、ドア側フロントピラー105の上端後部の湾曲により、ドア側フロントピラー105の上端後部には下面側(フロントドア開口部102側)に対して圧縮力が加わり、上面側(固定ガラス103側)に対して引っ張り力が加わるようになる(
図15における矢印参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車両の軽量化の要請から鋼板の所定強度を保持したままで薄肉化を図るため、高張力鋼材である超ハイテン材が使用される傾向がある。しかし、超ハイテン材は、延性が低いため、上記したドア側フロントピラー105に対して超ハイテン材を使用する場合、衝突荷重に起因する引っ張り力が加わる部位で破断が発生する懸念がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、延性が低い超ハイテン材を引っ張り力が加わる骨格部材の材料として使用できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、筒状の骨格部材を備える車両のボディ構造であって、前記骨格部材は、複数の成形パネルを接合させることにより筒状に形成されて、車両衝突荷重を受けて長さ方向における途中位置が一定方向に曲がるように構成されており、前記骨格部材を構成する成形パネルには、車両衝突時に前記骨格部材が曲がる際、引っ張り力が加わる部位に延び代となる加工部が設けられている。
【0008】
本発明によると、骨格部材を構成する成形パネルには、車両衝突時に前記骨格部材が曲がる際、引っ張り力が加わる部位に延び代となる加工部が設けられている。このため、骨格部材が曲がる際、前記加工部が延びることで、引っ張り力が加わる部位の破断を防止できる。これにより、延性が低い超ハイテン材を引っ張り力が加わる骨格部材の材料として使用できるようになる。
【0009】
第2の発明によると、骨格部材は、複数の成形パネルの幅方向における端縁が互いに接合されることにより、径寸法に対して長さ寸法が大きな筒状に形成されており、引っ張り力は前記成形パネルの端縁の長さ方向に加わる構成であり、加工部は、前記成形パネルの端縁に形成されたビードで、前記ビードの稜線の方向が前記成形パネルの端縁の長さ方向と交差している。このため、引っ張り力はビードの幅方向に加わるようになる。これにより、前記ビードが引っ張り力により容易に延び変形し、前記引っ張り力をある程度吸収できるようになる。この結果、車両衝突時の引っ張り力に起因する骨格部材の成形パネルの破断を防止できる。
【0010】
第3の発明によると、成形パネルには、端縁の長さ方向に沿ってパネル稜線が形成されており、ビードは、成形パネルの端縁のエッジ部からパネル稜線を横断して形成されている。このため、パネル稜線の影響を受けずにビードが幅方向に変形し易くなる。
【0011】
第4の発明によると、骨格部材は、複数の成形パネルの幅方向における端縁が互いに接合されることにより、径寸法に対して長さ寸法が大きな筒状に形成されており、引っ張り力は前記成形パネルの端縁の長さ方向に加わる構成であり、加工部は、前記成形パネルの端縁のエッジ部において長さ方向に沿って形成された切り欠きである。即ち、引っ張り力により、切り欠きの部分が延びることで、骨格部材の成形パネルの破断を防止できる。
【0012】
第5の発明によると、骨格部材は、車両ボディのドア開口部の開口縁を構成するピラーであり、加工部は、前記ピラーにおいて前記ドア開口部のコーナー部を構成する部位の外周側に設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、延性が低い超ハイテン材を引っ張り力が加わる骨格部材の材料として使用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1に係るボディ構造を備える車両を左前方から見た斜視図である。
【
図2】車両のボディ構造における前部骨格を左外側から見た側面図である。
【
図3】フロントピラーの上端後部、ドア側フロントピラーの上端後部を車両外側から見た側面図(
図2のIII部拡大側面図)である。
【
図6】車両のボディ構造を構成するフロントピラー、ドア側フロントピラー、ルーフパネル、及びルーフサイドレールを左斜め前上方(車両外側上方)から見た斜視図である。
【
図7】フロントピラーの上端後部、ドア側フロントピラーの上端後部を車両外側上方から見た斜視図(
図6のVII部拡大斜視図)である。
【
図8】フロントピラーの上端後部、ドア側フロントピラーの上端後部を車両内側上方から見た斜視図である。
【
図14】従来車両のボディ構造を表す側面図である。
【
図15】車両の前突時のボディの変形の様子を表す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
以下、
図1から
図13に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のボディ構造の説明を行なう。本実施形態に係る車両のボディ構造は、車両前突時におけるフロントピラー(ドア側フロントピラー)の曲がり部における引っ張り破断を防止するための構造である。ここで、図中に示す前後左右、及び上下は、前記車両における前後左右、及び上下に対応している。
【0016】
<車両ボディ10の前部の概要について>
車両ボディ10の車室Rの左右両側には、
図1、
図2に示すように、フロントドア12により開閉されるフロントドア開口部13が設けられている。ここで、
図1、
図2等には、車両ボディ10の左側のみを記載しており、右側は省略されている。車室Rの床部の左右両端には、
図2に示すように、車両前後方向に延びるロッカーレール11が設けられており、それらのロッカーレール11がフロントドア開口部13の下辺部を構成している。ロッカーレール11の前端部には、フロントドア開口部13の下側前縁部を構成するフロント下側支柱部140が立設されている。そして、フロント下側支柱部140の上端の後部にフロントドア開口部13の上側前縁部を構成するドア側フロントピラー143の根元部143kが接続されている。また、フロント下側支柱部140の上端の前部には、フロントガラス18の窓枠を構成するフロントピラー145の根元部145kが接続されている。
【0017】
フロントピラー145とドア側フロントピラー143との上端後部は、
図1、
図2に示すように、互いに接続されており、そのフロントピラー145とドア側フロントピラー143とが車室Rの前部側面に設けられる三角形状の固定ガラス147の窓枠を構成している。また、フロントピラー145とドア側フロントピラー143との上端後部がルーフサイドレール16の前端部に接続されている。フロントピラー145、及びドア側フロントピラー143を支えるフロント下側支柱部140の車両前側には、
図2に示すように、前輪20fを車幅方向内側に収納するホイールハウス20が形成されている。そして、ホイールハウス20の上側にエンジンルームERの側壁を構成するフレームであるアッパメンバ27が設けられている。アッパメンバ27は、
図2に示すように、車両前後方向に延びるように設けられており、そのアッパメンバ27の後端部がドア側フロントピラー143の根元部143kとフロント下側支柱部140との接続位置に連結されている。
【0018】
フロントピラー145、ドア側フロントピラー143の根元部145k,143kと、フロント下側支柱部140と、アッパメンバ27等は、
図1に示すように、フェンダパネル15によって覆われている。そして、左右のフェンダパネル15の間には、車両のエンジンルームERを開閉可能に構成されたエンジンフード17が設けられている。また、エンジンフード17の後側で左右のフロントピラー145とルーフパネル16pとによって囲まれた位置には、フロントガラス18が設けられている。
【0019】
<フロントピラー145、ドア側フロントピラー143について>
フロントピラー145は、
図4(
図3のIV-IV断面図)、
図5(
図3のV-V断面図)に示すように、筒状に形成された骨格部材である。フロントピラー145は、成形パネルであるアウターパネル145xとインナーパネル145yとを備えている。アウターパネル145xとインナーパネル145yとは、
図6、
図7に示すように、長さ方向に延びる上端フランジ部Fuと下端フランジ部Fdとを備えている。そして、アウターパネル145xとインナーパネル145yとが、
図4等に示すように、互いのフランジ部Fu,Fdにおいて接合されることにより、フロントピラー145は径寸法に対して長さ寸法が大きな筒状に形成されている。
【0020】
ドア側フロントピラー143も、
図4等に示すように、アウターパネル143xとインナーパネル143yとを備えている。アウターパネル145xとインナーパネル145yとは、長さ方向に延びる上端フランジ部Fuと下端フランジ部Fdとを備えている。そして、アウターパネル143xとインナーパネル143yが互いのフランジ部Fu,Fdにおいて接合されることにより、ドア側フロントピラー143は径寸法に対して長さ寸法が大きな筒状に形成されている。
【0021】
ここで、車両前突による衝突荷重は主にドア側フロントピラー143を介してルーフサイドレール16に伝えられる。このため、ドア側フロントピラー143はフロントピラー145よりも強度が大きくなるように構成されている。ドア側フロントピラー143の材料としては超ハイテン材が使用されており、所定強度を確保した状態で薄肉化できるように構成されている。また、フロントピラー145の材料としてはハイテン材が使用されている。ここで、超ハイテン材とは、一般的に引っ張り強度が約1000MPa以上の鋼材をいい、ハイテン材とは、一般的に引っ張り強度が約500MPa以上の鋼材をいう。超ハイテン材はハイテン材と比較して延性が低下している。このため、本実施形態における車両ボディ10では、超ハイテン材の延性の低下を補うために、ドア側フロントピラー143の上端後部(衝突荷重を受けて曲がる部位)に延び加工部50(後記する)を設けている。
【0022】
<フロントピラー145、ドア側フロントピラー143とルーフサイドレール16との連結構造について>
ルーフサイドレール16は、フロントピラー145等と同様に筒状に形成された骨格部材である。ルーフサイドレール16は、
図4等に示すように、アウターパネル16xとインナーパネル16yとが互いの上端フランジ部Fu,下端フランジ部Fdにおいて接合されることにより、筒状に形成されている。
図6、
図7に示すように、フロントピラー145のアウターパネル145xの上端後部は、ルーフサイドレール16のアウターパネル16xの前端部に重ねられた状態で互いの上端フランジ部Fu、下端フランジ部Fdが接合されている。また、フロントピラー145のインナーパネル145yの上端後部は、
図8に示すように、ルーフサイドレール16のインナーパネル16yの前端部に重ねられた状態で互いの上端フランジ部Fu,下端フランジ部Fdが接合されている。
【0023】
ドア側フロントピラー143のアウターパネル143xの上端後部には、
図6、
図7に示すように、フロントピラー145のアウターパネル143xの上端後部とルーフサイドレール16のアウターパネル16xの前端部とを外側から覆う後端延長フランジ部Fzが形成されている。そして、ドア側フロントピラー143のアウターパネル143xの上端後部には、上端フランジ部Fuと後端延長フランジ部Fzとの間に、フランジ部が切り欠かれた状態のフランジ切り欠き部Fcが形成されている。また、ドア側フロントピラー143のアウターパネル143xの下端フランジ部Fdは、後端延長フランジ部Fzの位置まで連続して形成されている。ドア側フロントピラー143のアウターパネル143xの後端延長フランジ部Fzは、フロントピラー145のアウターパネル143xとルーフサイドレール16のアウターパネル16xとの上端フランジ部Fu、下端フランジ部Fdに対して外側から接合されている。
【0024】
ドア側フロントピラー143のアウターパネル143xには、
図6、
図7に示すように、アウターパネル143xの強度を確保するために、上端フランジ部Fu、及びフランジ切り欠き部Fcに沿って後端延長フランジ部Fzの位置まで延びるパネル稜線Yが形成されている。同様に、アウターパネル143xには、下端フランジ部Fdに沿って後端延長フランジ部Fzの位置まで延びるパネル稜線Yが形成されている。
【0025】
ドア側フロントピラー143のインナーパネル143yの上端後部は、
図8に示すように、フロントピラー145のインナーパネル145yの上端後部と、ルーフサイドレール16のインナーパネル16yの前端部とを室内側から覆っている。そして、ドア側フロントピラー143のインナーパネル143yの上端フランジ部Fu、下端フランジ部Fdがフロントピラー145のインナーパネル145yとルーフサイドレール16のインナーパネル16yとの上端フランジ部Fu、下端フランジ部Fdに接合されている。
【0026】
ここで、ドア側フロントピラー143の上端後部では、
図5~
図7に示すように、インナーパネル145yの上端フランジ部Fuとアウターパネル143xのフランジ切り欠き部Fcとの間が開口となっている。そして、車両前方衝突時には、
図7に示すように、ドア側フロントピラー143の上側、即ち、アウターパネル143xのフランジ切り欠き部Fcに対して引っ張り力(白矢印参照)が加わるようになる。また、車両前方衝突時には、ドア側フロントピラー143の下側、即ち、フロントドア開口部13側のアウターパネル143xの下端フランジ部Fdに対して圧縮力(黒矢印参照)が加わるようになる。
【0027】
<延び加工部50について>
引っ張り力が加わるドア側フロントピラー143のアウターパネル143xのフランジ切り欠き部Fcには、延び加工部50が形成されている。延び加工部50は、超ハイテン材により形成されたドア側フロントピラー143のアウターパネル143xの破断防止を目的とするためのものであり、引っ張り力が加わる方向に一定寸法だけ延び可能に構成されている。延び加工部50は、
図9、及び
図12(
図9のXII矢視正面図)に示すように、アウターパネル143xのフランジ切り欠き部Fcのエッジ部に形成された逆台形状の浅い切り欠き52(
図12参照)と、その切り欠き52の底位置からパネル稜線Yを直角に横断するように形成されたビード54とを備えている。
【0028】
切り欠き52は、上記したように、逆台形状に形成されており、切り欠き52の底部、即ち、台形の上底に相当する部分の寸法がビード54の幅寸法と等しい値に設定されている。ビード54は、
図11に示すように、断面台形の溝状に形成されており、アウターパネル143xのパネル稜線Yに対して直角方向に延びるビード稜線Ryを幅方向両側に備えている。そして、ビード54の先端部には、
図10等に示すように、アウターパネル143xのパネル表面に接続される傾斜部54sが形成されている。
【0029】
<本実施形態に係るボディ構造の働きについて>
車両前突時の衝突荷重がドア側フロントピラー143を介してルーフサイドレール16に伝わると、
図7に示すように、ドア側フロントピラー143の上端後部がルーフサイドレール16に対して下回動方向(起立方向)に湾曲する。即ち、ドア側フロントピラー143の上端後部の湾曲により、ドア側フロントピラー143の上端後部には下面側(フロントドア開口部13側)に対して圧縮力(黒矢印参照)が加わり、上面側(固定ガラス147側)に対して引っ張り力が加わるようになる(白矢印参照)。即ち、ドア側フロントピラー143のアウターパネル143xのフランジ切り欠き部Fcには、前後方向から車両前突による引っ張り力が加わるようになる。
【0030】
この結果、ドア側フロントピラー143のアウターパネル143xのフランジ切り欠き部Fcの延び加工部50に対して前記引っ張り力が加わるようになる。これにより、延び加工部50を構成するビード54が前記引っ張り力により幅方向(前後方向)に延び、さらに切り欠き52が同じく引っ張り力により前後方向に延びるようになる。即ち、延び加工部50が引っ張り力の方向に延びることで、アウターパネル143xのフランジ切り欠き部Fcの破断を防止できるようになる。
【0031】
<本実施形態で使用した用語と本発明の用語との対応>
本実施形態におけるドア側フロントピラー143が本発明における骨格部材に相当し、ドア側フロントピラー143を構成するアウターパネル143x、及びインナーパネル143yが本発明における成形パネルに相当する。また、アウターパネル143xのフランジ切り欠き部Fcが本発明における成形パネルの幅方向における端縁に相当する。さらに、ドア側フロントピラー143が本発明におけるピラーに相当し、フロントドア開口部13が本発明のドア開口部に相当する。
【0032】
<本実施形態に係る車両のボディ構造の長所について>
本実施形態に係る車両のボディ構造によると、ドア側フロントピラー143(骨格部材)を構成するアウターパネル143x(成形パネル)には、車両衝突時にドア側フロントピラー143が曲がる際、引っ張り力が加わる部位に延び代となる延び加工部50(加工部)が設けられている。このため、ドア側フロントピラー143が曲がる際、延び加工部50が延びることで、引っ張り力が加わる部位の破断を防止できる。これにより、延性が低い超ハイテン材を引っ張り力が加わるドア側フロントピラー143の材料として使用できるようになる。
【0033】
また、延び加工部50(加工部)は、ドア側フロントピラー143のアウターパネル143xのフランジ切り欠き部Fcに形成されたビード54であり、そのビード54のビード稜線Ryの方向がフランジ切り欠き部Fcの長さ方向と交差している。このため、引っ張り力はビード54の幅方向に加わるようになる。これにより、ビード54が引っ張り力により容易に延び変形できるようになる。さらに、ビード54は、アウターパネル143xのフランジ切り欠き部Fcのエッジ部からパネル稜線Yを横断して形成されているため、パネル稜線Yの影響を受けずにビード54が幅方向に変形し易くなる。また、延び加工部50(加工部)は、ビード54と共に切り欠き52を備えているため、さらに、引っ張り力の方向に延び易くなる。
【0034】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、延び加工部50をドア側フロントピラー143のアウターパネル143xのフランジ切り欠き部Fcにのみ設ける例を示した。しかし、延び加工部50をドア側フロントピラー143のアウターパネル143xのフランジ切り欠き部Fcと共にインナーパネル143yの上端フランジ部Fuに設けることも可能である。また、本実施形態では、延び加工部50を切り欠き52とビード54とから構成する例を示した。しかし、
図13に示すように、延び加工部50を切り欠き52のみから構成することも可能であるし、ビード54のみから構成することも可能である。また、本実施形態では、延び加工部50を一か所に設ける例を示したが、延び加工部50を長さ方向に複数設けることも可能である。また、本実施形態では、骨格部材としてドア側フロントピラー143を例示したが、例えば、ルーフサイドレール16やセンターピピラー等の骨格部材に対して本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
10・・・車両ボディ
13・・・フロントドア開口部(ドア開口部)
50・・・加工部
52・・・切り欠き
54・・・ビード
143・・ドア側フロントピラー(骨格部材)
143x・アウターパネル(成形パネル)
143y・インナーパネル(成形パネル)
Fc・・・フランジ切り欠き部(端縁)
Fd・・・下端フランジ部(端縁)
Fu・・・上端フランジ部(端縁)
Fz・・・後端延長フランジ部
Ry・・・ビード稜線
Y・・・・パネル稜線