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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178659
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】生体内埋込用器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
A61F2/44
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091463
(22)【出願日】2022-06-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】501046420
【氏名又は名称】HOYA Technosurgical株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】清水 満
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA10
4C097BB01
4C097CC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】骨どうしの間に充分に強固に固定することのできる生体内埋込用器具を提供する。
【解決手段】対向する骨どうしの間に挟むための生体内埋込用器具100において、一方の骨に当接する第1の当接面21と、第1の当接面と背中合わせに形成されて他方の骨に当接する第2の当接面と、第1の当接面から第2の当接面にかけて貫通する孔部23と、を有する細長形状の本体部10を備え、第1の当接面及び第2の当接面の少なくとも一方は、孔部を挟んだ一方の側に複数の第1の歯1が本体部の長手方向Lに沿って配列するように設けられているとともに、他方の側に複数の第2の歯2が長手方向Lに沿って配列するように設けられており、第1の歯が延在する幅方向T1及び第2の歯が延在する幅方向T2は、第1の当接面または第2の当接面の面内方向であるとともに長手方向Lに垂直な方向である横方向Wに対して傾いているようにした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する骨どうしの間に挟むための生体内埋込用器具において、
一方の骨に当接する第1の当接面と、
前記第1の当接面と背中合わせに形成されて他方の骨に当接する第2の当接面と、
前記第1の当接面から前記第2の当接面にかけて貫通する孔部と、
を有する細長形状の本体部を備え、
前記第1の当接面及び前記第2の当接面の少なくとも一方は、前記孔部を挟んだ一方の側に複数の第1の歯が前記本体部の長手方向に沿って配列するように設けられているとともに、他方の側に複数の第2の歯が前記長手方向に沿って配列するように設けられており、
前記第1の歯が延在する幅方向及び前記第2の歯が延在する幅方向は、前記第1の当接面または前記第2の当接面の面内方向であるとともに前記長手方向に垂直な方向である横方向に対して傾いていることを特徴とする、生体内埋込用器具。
【請求項2】
請求項1に記載の生体内埋込用器具において、
前記本体部は、前記長手方向の一端がくさび形状に形成されており、
前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記孔部側が前記一端に近くなるように傾いて設けられたことを特徴とする、生体内埋込用器具。
【請求項3】
請求項2に記載の生体内埋込用器具において、
前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記横方向に対して10度以上25度以下の傾きを有するように設けられたことを特徴とする、生体内埋込用器具。
【請求項4】
請求項3に記載の生体内埋込用器具において、
前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記横方向に対して10度以上20度以下の傾きを有するように設けられたことを特徴とする、生体内埋込用器具。
【請求項5】
請求項4に記載の生体内埋込用器具において、
前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記横方向に対して7.5度以上17.5度以下の傾きを有するように設けられたことを特徴とする、生体内埋込用器具。
【請求項6】
請求項5に記載の生体内埋込用器具において、
前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記横方向に対して15度の傾きを有するように設けられたことを特徴とする、生体内埋込用器具。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の生体内埋込用器具において、
前記第1の当接面または前記第2の当接面は、前記横方向に延在する第3の歯が前記第1の歯及び前記第2の歯と隣り合うように設けられており、前記第3の歯と前記第1の歯及び前記第2の歯との間隔は、前記孔部に近い位置ほど大きくなっていることを特徴とする、生体内埋込用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向する骨どうしの間に挟むための生体内埋込用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対向する骨どうしの間に挟むための生体内埋込用器具が知られている。この種の生体内埋込用器具は、骨から出てくる組織が多孔性の材料に侵入して結合することにより、骨に固定されていた。このため、有意な量の多孔性の材料を利用するがコスト効率は変わらず、生体内埋込用器具に要求される強度を維持する改良された生体内埋込用器具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-135243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術による生体内埋込用器具では、上面部と下面部を通るように中央部に形成された空洞を有していることから、生体内埋込用器具を対向する骨どうしの間に強固に固定することは困難であった。空洞に骨成長促進物質を設置することができるが、空洞が大きくなるほど骨との接触面積が小さくなり、生体内埋込用器具の固定力は低下することとなる。
【0005】
本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、骨と接触面を小さくする空洞ないし孔を有していても、骨どうしの間に充分に強固に固定することのできる生体内埋込用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、対向する骨どうしの間に挟むための生体内埋込用器具において、一方の骨に当接する第1の当接面と、前記第1の当接面と背中合わせに形成されて他方の骨に当接する第2の当接面と、前記第1の当接面から前記第2の当接面にかけて貫通する孔部と、を有する細長形状の本体部を備え、前記第1の当接面及び前記第2の当接面の少なくとも一方は、前記孔部を挟んだ一方の側に複数の第1の歯が前記本体部の長手方向に沿って配列するように設けられているとともに、他方の側に複数の第2の歯が前記長手方向に沿って配列するように設けられており、前記第1の歯が延在する幅方向及び前記第2の歯が延在する幅方向は、前記第1の当接面または前記第2の当接面の面内方向であるとともに前記長手方向に垂直な方向である横方向に対して傾いていることを特徴とする。
【0007】
この場合において、前記本体部は、前記長手方向の一端がくさび形状に形成されており、前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記孔部側が前記一端に近くなるように傾いて設けられていてもよい。前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記横方向に対して10度以上25度以下の傾きを有するように設けられていてもよい。前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記横方向に対して10度以上20度以下の傾きを有するように設けられていてもよい。前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記横方向に対して7.5度以上17.5度以下の傾きを有するように設けられていてもよい。前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記横方向に対して15度の傾きを有するように設けられていてもよい。前記第1の当接面または前記第2の当接面は、前記横方向に延在する第3の歯が前記第1の歯及び前記第2の歯と隣り合うように設けられており、前記第3の歯と前記第1の歯及び前記第2の歯との間隔は、前記孔部に近い位置ほど大きくなっていていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、骨と接触面を小さくする空洞ないし孔を有していても、骨どうしの間に充分に強固に固定することのできる生体内埋込用器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る生体内埋込用器具を示す斜視図を示す。
図2】生体内埋込用器具を脊椎間に挿入している様子を示す模式図を示す。
図3】生体内埋込用器具の上面図を示す。
図4】生体内埋込用器具の側面図を示す。
図5】横方向に対する第1の歯及び第2の歯の角度が15°である生体内埋込用器具の六面図を示す。
図6】横方向に対する第1の歯及び第2の歯の角度が15°である生体内埋込用器具の特徴的な歯の部分のみを実線で示した六面図を示す。
図7】長手方向の引き抜き試験を模式的に示す。
図8】横方向の引き抜き試験を模式的に示す。
図9】従来の生体内埋込用器具の上面図及び側面図を示す。
図10】横方向に対する第1の歯及び第2の歯の角度が10°である変形例に係る生体内埋込用器具の六面図を示す。
図11】横方向に対する第1の歯及び第2の歯の角度が20°である変形例に係る生体内埋込用器具の六面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る生体内埋込用器具を示す斜視図を示し、図2は、生体内埋込用器具を脊椎間に挿入している様子を示す模式図を示し、図3は、生体内埋込用器具の上面図を示し、図4は、生体内埋込用器具の側面図を示し、図5は、横方向に対する第1の歯及び第2の歯の角度が15°である生体内埋込用器具の六面図を示し、図6は、横方向に対する第1の歯及び第2の歯の角度が15°である生体内埋込用器具の特徴的な歯の部分のみを実線で示した六面図を示す。
【0011】
本実施形態に係る生体内埋込用器具100は、図1に示すように、略直方体に形成されて第1の当接面21及び第2の当接面22を有し、脊椎において対向する骨どうしの間で第1の当接面21及び第2の当接面22を骨に接触させて挟まれるように介在させるための脊椎インプラントである。生体内埋込用器具100を脊椎間に挿入する際には、図2に示すように、例えば、専用の器具101が固定され、生体内埋込用器具100が脊椎間の所望の位置に配置された状態で器具101を外すようになっている。
【0012】
生体内埋込用器具100は、図3に示すように、細長形状のフレーム(本体部)10と癒合部である基材20とを有している。フレーム10及び基材20は、チタンまたはチタン合金を用いて一体で成形されており、3Dプリンタを用いて製造される。
【0013】
フレーム10は、中実に形成されており、2つの側壁11,12と、後壁13と、前壁14とが矩形に組み合わされた形状を有して、内部に基材20が形成されている。
【0014】
基材20は、第1の当接面21及び第2の当接面22(図1参照)から露出して。基材20は、外周がフレーム10の前壁14、側壁11,12、及び後壁13で覆われるように略矩形に設けられている。基材20は、フレーム10と同一材料かつ一体で網状に成形されている。
【0015】
一対の側壁11,12は、それぞれ平坦な面を有するように形成されており、互いに対向するように位置している。これら側壁11,12は、図4に示すように、長手方向Lの中央に位置するように、前壁14側から後壁13側に向けて長手方向Lに延びる長円形状を有する開口部11a,12aが形成されている。
【0016】
側壁11,12の後部には、平坦に形成された後壁13が位置している。この後壁13は、器具101(図2参照)を取り付けるためのねじ穴が形成されていてもよい。
【0017】
側壁11,12の前部に設けられた前壁14は、長手方向Lに突出したくさび形に形成されている。
【0018】
第1の当接面21及び第2の当接面22は、図3に示すように、孔部23を挟んだ一方の側に複数の第1の歯1がフレーム10の長手方向Lに沿って配列するように設けられているとともに、他方の側に複数の第2の歯2が長手方向Lに沿って配列するように設けられている。第1の歯1が孔部23から側壁11に向けて延在する幅方向T1は、第1の当接面21の面内方向であるとともに長手方向Lに垂直な方向である横方向Wに対して角度θ1だけ傾いている。同様に、第2の歯2が孔部23から側壁12に向けて延在する幅方向T2は、第2の当接面22の面内方向であるとともに長手方向Lに垂直な方向である横方向Wに対して角度θ2だけ傾いている。本実施形態では、第1の歯1の角度θ1と第2の歯2の角度θ2との大きさが同じになっている。これら第1の歯1及び第2の歯2は、孔部23側ほど前壁14に近くなるように傾いて設けられている。なお、本実施形態では、第1の歯1の角度θ1と第2の歯2の角度θ2とは15°となっている。
【0019】
本実施形態に係る生体内埋込用器具100は、図5に示すように、横方向W(図1参照)の全体幅が6mm以上12mm以下であることが好ましく、7mm以上11mm以下であることがより好ましく、8mm以上10mm以下であることがさらに好ましく、本実施形態において、横方向Wの全体幅は9mmである。上記全体幅がそのような好ましい範囲内であることにより、生体内埋込用器具100は、骨どうしの間に充分に強固に固定されることが可能になる。
【0020】
本実施形態に係る生体内埋込用器具100は、図5に示すように、長手方向L(図1参照)の全体長さが17mm以上29mm以下であることが好ましく、19mm以上27mm以下であることがより好ましく、21mm以上25mm以下であることがさらに好ましく、本実施形態において、長手方向Lの全体長さは23mmである。上記長さがそのような好ましい範囲内であることにより、生体内埋込用器具100は、骨どうしの間に充分に強固に固定されることが可能になる。
【0021】
複数の第1の歯1及び複数の第2の歯2の高さは、図6に示すように、高さ方向H(図1参照)において、第1の当接面21及び第2の当接面22を基準として0.2mm以上0.8mm以下であることが好ましく、0.3mm以上0.7mm以下であることがより好ましく、0.4mm以上0.6mm以下であることがさらに好ましい。本実施形態において、この高さは0.5mmである。上記高さがそのような好ましい範囲内であることにより、生体内埋込用器具100は、骨どうしの間に充分に強固に固定されることが可能になる。
【0022】
複数の第1の歯1及び複数の第2の歯2は、長手方向L(図1参照)において、それぞれ、ある歯の頂点からそれに隣接する歯の頂点までの距離(歯のピッチ)が、1.0mm以上3.0mm以下であることが好ましい。このピッチは1.5mm以上2.3mm以下であることがより好ましく、1.8mm以上2.0mm以下であることがさらに好ましい。本実施形態において、このピッチは、1.9mmである。上記間隔がそのような好ましい範囲内であることにより、生体内埋込用器具100は、骨どうしの間に充分に強固に固定されることが可能になる。
【0023】
本実施形態に係る生体内埋込用器具100は、図5に示すように、横方向W(図1参照)における第1の歯1及び第2の歯2の幅が、1.6mm以上2.4mm以下であることが好ましく、1.7mm以上2.3mm以下であることがより好ましく、1.8mm以上2.2mm以下であることがさらに好ましく、1.9mm以上2.1mm以下であることがさらにより好ましく、本実施形態においては2.0mmである。本実施形態に係る生体内埋込用器具100は、第1の歯1及び第2の歯2の横方向Wにおける幅がそのような範囲内であっても、第1の歯1及び第2の歯2に上述したような角度が付けられていること等によって、骨どうしの間に充分に強固に固定されることが可能になる。
【0024】
本実施形態に係る生体内埋込用器具100は、図5に示すように、横方向W(図1参照)における孔部23の幅が、4.2mm以上5.8mm以下であることが好ましく、4.4mm以上5.6mm以下であることがより好ましく、4.6mm以上5.4mm以下であることがさらに好ましく、4.8mm以上5.2mm以下であることがさらにより好ましく、本実施形態において、5.0mmである。本実施形態に係る生体内埋込用器具100は、横方向Wにおける孔部23の幅がそのような範囲内であっても、第1の歯1及び第2の歯2に上述したような角度が付けられていること等によって、骨どうしの間に充分に強固に固定されることが可能になる。
【0025】
本実施形態に係る生体内埋込用器具100は、図5に示すように、長手方向L(図1参照)における孔部23の長さが、8mm以上16mm以下であることが好ましく、9mm以上15mm以下であることがより好ましく、10mm以上14mm以下であることがさらに好ましく、11mm以上13mm以下であることがさらにより好ましく、本実施形態において、12mmである。なお、長手方向Lにおける孔部23の長さは、最長部分を指すものとする。本実施形態に係る生体内埋込用器具100は、上記孔部23の長手方向Lにおける長さがそのような範囲内であっても、第1の歯1及び第2の歯2に上述したような角度が付けられていること等によって、骨どうしの間に充分に強固に固定されることが可能になる。
【0026】
第1の歯1及び第2の歯2の後壁13側には、図3に示すように、横方向Wに延在する第3の歯3が第1の歯1及び第2の歯2と隣り合うように第1の当接面21上及び第2の当接面22上に設けられている。第3の歯3と第1の歯1及び第2の歯2との間隔は、孔部23に近い位置ほど大きくなっている。これにより、生体内埋込用器具100は、どうしの間に充分に強固に固定されることが可能になる。
【0027】
図7は、長手方向の引き抜き試験を模式的に示し、図8は、横方向の引き抜き試験を模式的に示す。
長手方向Lの引き抜き試験は、図7に示すように、一対の模擬骨30,31の間に生体内埋込用器具100を挟み、生体内埋込用器具100を長手方向Lに引き抜くときの最大荷重(N)を測定した。この試験において、模擬骨としては、ソーボーン社製の「Solid rigidpolyurethane foam 15 pcf」(材質はポリウレタンフォーム、ASTM F1839に準拠するGrade 15)を用いており、押付荷重100Nで生体内埋込用器具100を挟むように上側の模擬骨を矢印Aで示す方向に押し付けた。生体内埋込用器具100は、側壁11の開口部11aと側壁12の開口部12aを通って渡された軸32をワイヤ33で長手方向Lに矢印Bで示すように引き抜いており、このときの引抜速度は10mm/minである。
【0028】
長手方向Lの引き抜き試験では、第1の歯1及び第2の歯2の横方向Wに対して傾いた角度θ1,θ2をそれぞれ同じ大きさとし、角度θ1,θ2を0度、5度、10度、15度、20度、25度、30度、35度、40度と変化させたときの平均引抜最大荷重(N)について測定している。歯の角度が0度であり、孔部が本実施形態の生体内埋込用器具100よりも小さい(従って、歯の幅は本実施形態の生体内埋込用器具100よりも大きい)従来品についても同様の試験を行った。従来品は下記表において「従来」と表記する。従来品の構造は図9に示す。
【0029】
長手方向Lの引き抜き試験の測定結果は、表1に示すようになった。なお、この表において、角度θ1,θ2が15度のものだけ5回測定し、それ以外の角度θ1,θ2では4回測定した。
【0030】
【表1】
【0031】
横方向Wの引き抜き試験は、図8に示すように、一対の模擬骨30,31の間に生体内埋込用器具100を挟み、生体内埋込用器具100を横方向Wに引き抜くときの最大荷重(N)を測定した。この試験は、引き抜き方向を前方ではなく後方にする等の変更をした以外は、基本的にASTM F-04.25.02.02に基づいて行った。この試験において、模擬骨としては、ソーボーン社製の「Solid rigidpolyurethane foam 15 pcf」(材質はポリウレタンフォーム、ASTM F1839に準拠するGrade 15)を用いており、押付荷重100Nで生体内埋込用器具100を挟むように上側の模擬骨を矢印Aで示す方向に押し付けた。生体内埋込用器具100は、縦棒34aと横棒34bとが一体でT字形状に組まれたT字部材34の縦棒34a部分を側壁11の開口部11a(図4参照)と側壁12の開口部12a(図4参照)とを通し、横棒34b部分を側壁12に外側から当接させ、T字部材34をワイヤ35で横方向Wに矢印Cで示すように引き抜いており、このときの引抜速度は10mm/minである。
【0032】
横方向Wの引き抜き試験でも、第1の歯1及び第2の歯2の横方向Wに対して傾いた角度θ1,θ2をそれぞれ同じ大きさとし、角度θ1,θ2を0度、5度、10度、15度、20度、25度、30度、35度、40度と変化させたときの平均引抜最大荷重(N)について測定している。
【0033】
横方向Wの引き抜き試験の測定結果は、表2に示すようになった。なお、この表において、全ての角度θ1,θ2について4回測定した。
【0034】
【表2】
【0035】
表1及び表2から、第1の歯1及び第2の歯2の横方向Wに対する角度θ1,θ2は、10度以上25度以下であることが好ましく、より好ましくは10度以上20度以下、さらに好ましくは7.5度以上17.5度以下であり、特に15度とすると引抜荷重が大幅に大きくなり最も好ましいことが分かる。
【0036】
従来品は、本実施形態の生体内埋込用器具100よりも孔部が小さく、歯が本実施形態の生体内埋込用器具100よりも大きいため、歯の角度が同じ0度においては、長手方向L及び横方向Wのいずれにおいても、本実施形態の生体内埋込用器具100よりも大きい平均引抜最大荷重(N)を発揮した。しかし、従来品は、孔部が小さいため、そもそも、本実施形態の生体内埋込用器具100のように多量又は大きい多孔性の材料を充填することはできないものであり、比較的大きい孔部を有し(接触面が比較的小さい)ながら骨に対して充分な固定力を発揮するという本発明の課題を解決し得るものではない。
【0037】
本実施形態に係る生体内埋込用器具100は、生体内埋込用器具100を挟み込むように位置する一方の骨に当接する第1の当接面21と、第1の当接面21と背中合わせに形成されて他方の骨に当接する第2の当接面22と、第1の当接面21から第2の当接面22にかけて貫通する孔部23と、を有する細長形状のフレーム10を備え、第1の当接面21及び第2の当接面22の少なくとも一方は、孔部23を挟んだ一方の側に複数の第1の歯1がフレーム10の長手方向Lに沿って配列するように設けられているとともに、他方の側に複数の第2の歯2が長手方向Lに沿って配列するように設けられており、第1の歯1が延在する幅方向T1及び第2の歯2が延在する幅方向T2は、第1の当接面21または第2の当接面22の面内方向であるとともに横方向Wに対して傾いている。これにより、生体内埋込用器具100は、第1の歯1及び第2の歯2が骨に対して位置ずれし難くなるため、骨と接触面を小さくする空洞ないし孔を有していても、骨どうしの間に充分に強固に固定されることができる。
【0038】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、横方向に対する第1の歯及び第2の歯の角度が15°である生体内埋込用器具について説明しているが、これに限定されない。上記実施形態に係る生体内埋込用器具100と同程度の寸法を有し、第1の歯と第2の歯とが横方向に対して傾いていれば、例えば、図10に示すように、横方向に対する第1の歯及び第2の歯の角度が10°であったり、図11に示すように、横方向に対する第1の歯及び第2の歯の角度が20°であったりしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
W…横方向
L…長手方向
T1…幅方向
T2…幅方向
1…第1の歯
2…第2の歯
3…第3の歯
10…フレーム(本体部)
11…側壁
11a…開口部
12…側壁
12a…開口部
13…後壁
14…前壁
20…基材
21…第1の当接面
22…第2の当接面
23…孔部
30…模擬骨
31…模擬骨
32…軸
33…ワイヤ
34…T字部材
34a…縦棒
34b…横棒
35…ワイヤ
100…生体内埋込用器具
101…器具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-11-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する骨どうしの間に挟むための生体内埋込用器具において、
一方の骨に当接する第1の当接面と、
前記第1の当接面と背中合わせに形成されて他方の骨に当接する第2の当接面と、
前記第1の当接面から前記第2の当接面にかけて貫通する孔部と、
を有する細長形状の本体部を備え、
前記第1の当接面及び前記第2の当接面はそれぞれ、前記孔部を挟んだ一方の側に複数の第1の歯が前記本体部の長手方向に沿って配列するように設けられているとともに、他方の側に複数の第2の歯が前記長手方向に沿って配列するように設けられており、
前記第1の歯が延在する幅方向及び前記第2の歯が延在する幅方向は、前記第1の当接面または前記第2の当接面の面内方向であるとともに、前記長手方向に垂直な方向である横方向に対して傾いており、
前記本体部は、前記長手方向の一端がくさび形状に形成されており、
前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記孔部側が前記一端に近くなるように傾いて設けられており、
前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記横方向に対して10度以上25度以下の傾きを有することを特徴とする、生体内埋込用器具。
【請求項2】
請求項に記載の生体内埋込用器具において、
前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記横方向に対して10度以上20度以下の傾きを有するように設けられたことを特徴とする、生体内埋込用器具。
【請求項3】
請求項に記載の生体内埋込用器具において、
前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記横方向に対して7.5度以上17.5度以下の傾きを有するように設けられたことを特徴とする、生体内埋込用器具。
【請求項4】
請求項に記載の生体内埋込用器具において、
前記第1の歯及び前記第2の歯は、前記横方向に対して15度の傾きを有するように設けられたことを特徴とする、生体内埋込用器具。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の生体内埋込用器具において、
前記第1の当接面または前記第2の当接面は、前記横方向に延在する第3の歯が前記第1の歯及び前記第2の歯と隣り合うように設けられており、前記第3の歯と前記第1の歯及び前記第2の歯との間隔は、前記孔部に近い位置ほど大きくなっていることを特徴とする、生体内埋込用器具。