(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178660
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】表皮材止着具
(51)【国際特許分類】
A47C 31/02 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
A47C31/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091465
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 翼
(72)【発明者】
【氏名】足立 武文
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 泰成
(57)【要約】
【課題】溝に対する保持強度を向上させた表皮材止着具を提供する。
【解決手段】表皮材止着具1は、表皮材6が装着される基部20と、基部20から溝深さ方向となるZ方向に延伸する支持部30と、支持部30よりも溝幅方向となるY方向の一方側で基部20に接続されるフック40部と、を備える。フック部40は、基部20からZ方向に延伸する第1延伸部411と、第1延伸部411との間にY方向の段差41Sを形成するように第1延伸部411よりもY方向の他方側に配置され、かつ、Z方向に延伸する第2延伸部412と、第1延伸部411と第2延伸部412との間を連結する連結部413と、第2延伸部412からY方向の他方側に向かって湾曲しながら突出する湾曲部42と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝(5A)が形成されたクッション材(5)に対して表皮材(6)を止着する表皮材止着具(1)であって、
前記表皮材(6)が装着される基部(20)と、
前記基部(20)から溝深さ方向となる第1方向に延伸する支持部(30)と、
前記支持部(30)よりも溝幅方向となる第2方向の一方側で前記基部(20)に接続されるフック部(40)と、を備え、
前記フック部(40)は、
前記基部(20)から前記第1方向に延伸する第1延伸部(411)と、
前記第1延伸部(411)との間に前記第2方向の段差(41S)を形成するように前記第1延伸部(411)よりも前記第2方向の他方側に配置され、かつ、前記第1方向に延伸する第2延伸部(412)と、
前記第1延伸部(411)と前記第2延伸部(412)との間を連結する連結部(413)と、
前記第2延伸部(412)から前記第2方向の前記他方側に向かって湾曲しながら突出する湾曲部(42)と、を有する、表皮材止着具。
【請求項2】
前記湾曲部(42)は、前記支持部(30)よりも前記第2方向の前記他方側に突出する先端爪部(422)を含む、請求項1に記載の表皮材止着具。
【請求項3】
前記連結部(413)は、前記第2延伸部(412)との間に鈍角状の凹部(43)を形成するように、前記第1方向に対して傾斜する方向に延びている、請求項1に記載の表皮材止着具。
【請求項4】
前記支持部(30)は、前記第1延伸部(411)よりも前記第1方向に延伸している、請求項1に記載の表皮材止着具。
【請求項5】
前記第2方向における前記湾曲部(42)の寸法(W1)は、前記第2方向における前記第1延伸部(411)から前記支持部(30)までの外寸(W2)以下である、請求項1に記載の表皮材止着具。
【請求項6】
前記基部(20)は、
前記支持部(30)と前記フック部(40)とを前記第2方向に連結する本体部(21)と、
前記本体部(21)から前記第2方向の前記一方側に突出する第1端縁部(22)と、
前記本体部(21)から前記第2方向の前記他方側に突出する第2端縁部(23)と、を備える、請求項1に記載の表皮材止着具。
【請求項7】
前記フック部(40)の前記湾曲部(42)が前記溝(5A)の開口に位置する際、前記フック部(40)の前記連結部(413)および前記基部(20)の前記第1端縁部(22)は、前記クッション材(5)の溝形成面(53)に当接可能である、請求項6に記載の表皮材止着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション材に表皮材を止着するための表皮材止着具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、座席や椅子などでは、座面や背当てなど人体に触れる部分にクッション材を設置し、その表面を表皮材で被覆したものが多用されており、このような表皮材の固定手段としての表皮材止着具が知られている。例えば、特許文献1に開示の表皮材止着具(フック)は、表皮材に装着される延出部と、複数の爪を有する矢じり形状の引掛部と、を備えている。表皮材をクッション材に止着するとき、引掛部をクッション材の溝内に挿入し、引掛部の各爪を当該溝の各壁面に係合させることで、表皮材止着具が溝に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示される表皮材止着具では、引掛部を溝に挿入する際、引掛部の各爪が溝幅を広げるように溝壁面を押圧するため、溝壁面に損傷が生じ易い。これにより、クッション材に対する表皮材止着具の取付強度が低下する恐れがある。
【0005】
本発明は、クッション材への損傷を抑制できる表皮材止着具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る表皮材止着具は、溝が形成されたクッション材に対して表皮材を止着する表皮材止着具であって、前記表皮材が装着される基部と、前記基部から溝深さ方向となる第1方向に延伸する支持部と、前記支持部よりも溝幅方向となる第2方向の一方側で前記基部に接続されるフック部と、を備え、前記フック部は、前記基部から前記第1方向に延伸する第1延伸部と、前記第1延伸部との間に前記第2方向の段差を形成するように前記第1延伸部よりも前記第2方向の他方側に配置され、かつ、前記第1方向に延伸する第2延伸部と、前記第2延伸部から前記第2方向の他方側に向かって湾曲しながら突出する湾曲部と、を有する。
【0007】
このような構成では、表皮材止着具をクッション材に取り付ける際、支持部およびフック部をクッション材の溝に挿入する。このとき、フック部の第1延伸部が溝の一方の溝壁面(以下、第1溝壁面と称する)に当接し、支持部が溝の他方の溝壁面(以下、第2溝壁面と称する)に当接することで、溝幅方向における表皮材止着具の配置が保持される。また、フック部の湾曲部の先端が第2溝壁面に係合することで、表皮材止着具が溝から脱落することを抑制できる。これにより、表皮材止着具がクッション材の溝に安定的に保持される。
ここで、フック部では、第1延伸部と第2延伸部との間に段差を形成することにより、湾曲部の第2方向(溝幅方向)の寸法を抑えることができる。これにより、クッション材の溝にフック部を挿入する際、湾曲部が第2溝壁面に不要に干渉することを抑制できる。その結果、第2溝壁面の損傷を抑制できる。
【0008】
本発明の一態様に係る表皮材止着具において、前記湾曲部は、前記支持部よりも前記第2方向の前記他方側に突出する先端爪部を含むことが好ましい。
このような構成では、フック部の先端爪部を第2溝壁面に好適に係合させることができる。例えばクッション材の溝が溝底側に向かって広がった形状である場合であっても、先端爪部を第2溝壁面に係合させることができる。
【0009】
本発明の一態様に係る表皮材止着具において、前記フック部は、前記第1延伸部と前記第2延伸部との間を連結する連結部をさらに有し、前記連結部は、前記第2延伸部との間に鈍角状の凹部を形成するように、前記第1方向に対して傾斜する方向に延びていることが好ましい。
このような構成では、表皮材止着具をクッション材に取り付ける際、クッション材の第1溝壁面の縁にフック部の凹部を合わせ、当該凹部を中心にして表皮材止着具を回動させることで、フック部を溝内へ挿入させることができる。これにより、表皮材止着具の取り付け作業が容易になる。
【0010】
本発明の一態様に係る表皮材止着具において、前記支持部は、前記第1延伸部よりも前記第1方向に延伸していることが好ましい。
このような構成では、表皮材止着具をクッション材に取り付ける際、フック部の凹部を中心にして表皮材止着具を回動させると、支持部がクッション材の第2溝壁面の縁に当接する。そして、フック部を溝に押し込むことにより、フック部の先端を第2溝壁面に係合させることができる。これにより、フック部を第2溝壁面に係合させるための動作を好適に行うことができる。
【0011】
本発明の一態様に係る表皮材止着具において、前記第2方向における前記湾曲部の寸法は、前記第2方向における前記第1延伸部から前記支持部までの外寸以下であることが好ましい。
このような構成では、例えば、第2方向における第1延伸部から支持部までの外寸を溝幅に合わせて設計し、第2方向における湾曲部の寸法を溝幅以下に設計することで、溝に対する表皮材止着具の保持強度の向上と、第2溝壁面の損傷の抑制とを共に好適に実現できる。
【0012】
本発明の一態様に係る表皮材止着具において、前記基部は、前記支持部と前記フック部とを前記第2方向に連結する本体部と、前記本体部から前記第2方向の前記一方側に延出する第1端縁部と、前記本体部から前記第2方向の前記他方側に延出する第2端縁部と、を備えることが好ましい。
このような構成では、基部の第1端縁部または第2端縁部に対して表皮材を縫製などで容易に装着できる。また、表皮材止着具をクッション材の溝に挿入または抜去する作業の際、基部の第1端縁部または第2端縁部を利用することで表皮材止着具の姿勢を調整できるため、当該作業が容易になる。
【0013】
本発明の一態様に係る表皮材止着具において、前記フック部の前記湾曲部が前記溝の開口に位置する際、前記フック部の前記連結部および前記基部の前記第1端縁部は、前記クッション材の溝形成面に当接可能であることが好ましい。
このような構成では、表皮材止着具をクッション材に取り付ける際、表皮材止着具が少なくとも2点でクッション材に当接するため、取り付け前の表皮材止着具を安定的に配置できる。このため、表皮材止着具の取り付け作業が容易になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、クッション材への損傷を抑制できる表皮材止着具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表皮材止着具を示す側面図。
【
図2】前記実施形態の表皮材止着具をクッション材の溝に挿入した状態を示す断面図。
【
図3】前記実施形態の表皮材止着具をクッション材の溝に挿入する様子を模式的に示す図。
【
図4】前記実施形態の表皮材止着具をクッション材の溝から抜去する様子を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1,
図2における本実施形態の表皮材止着具1は、座席などを構成するクッション材5に対して表皮材6を止着するものである。この表皮材止着具1は、
図2に示すように、表皮材6の一端部に装着され、かつ、クッション材5の溝5Aに挿入されることにより、表皮材6をクッション材5に止着することができる。
【0017】
クッション材5は、座席などの形状に成形されたフォーム材であり、クッション材5の任意の位置(例えば座面の裏側)には、表皮材止着具1を取り付けるための溝5Aが形成されている。溝5Aは、クッション材5の任意の方向に沿って延びており、溝5Aの幅方向に対向する一対の溝壁面51,52を有する。本実施形態では、一対の溝壁面51,52の一方を第1溝壁面51と称し、他方を第2溝壁面52と称する。また、クッション材5における溝5Aの縁部のうち、第1溝壁面51における縁部を第1縁部51Eとし、第2溝壁面52における縁部を第2縁部52Eとする。
なお、本実施形態では、第2溝壁面52が溝5Aの深さ方向に対して若干傾斜しており、溝5Aの底部が開口よりも広がっている。この溝5Aは、いわゆるアンダーカット形状を有する。
【0018】
クッション材5は、二種以上のフォーム材によって構成されてもよい。例えば、本実施形態のクッション材5では、発泡ビーズの表面に対して発泡ポリウレタンが一体成形されており、発泡ポリウレタンから露出した発泡ビーズ部分に対して溝5Aが形成されている。すなわち、本実施形態において、溝5Aが形成されるクッション材5の部分は、発泡ビーズとして、ある程度の強度を有する。
【0019】
表皮材6は、クッション材5の表面を覆うシートであればよく、例えば合成樹脂織物シートである。表皮材6は、表皮材止着具1に対して縫製等によって装着される。
【0020】
(表皮材止着具1の構成)
表皮材止着具1の構成について、
図1および
図2を参照して説明する。
なお、以下の説明では、表皮材止着具1が溝5Aに挿入された際に溝5Aの深さ方向に沿って配置される方向を表皮材止着具1の上下方向(Z方向;第1方向)とする。また、Z方向に直交する方向であって、表皮材止着具1が溝5Aに挿入された際に溝5Aの幅方向(溝幅方向)に沿って配置される方向を表皮材止着具1の左右方向(Y方向;第2方向)とする。また、Z方向およびY方向のそれぞれに直交する方向を表皮材止着具1の長さ方向(X方向)とする。
【0021】
表皮材止着具1は、弾性を有する合成樹脂製である。この表皮材止着具1は、表皮材6が装着される基部20と、基部20からZ方向に延伸する支持部30と、支持部30よりもY方向の一方側(+Y側)で基部20に接続されるフック部40と、を備える。なお、本実施形態の表皮材止着具1は、全体として、X方向に連続した形状を有している。
【0022】
基部20は、全体としてXY面に沿って配置される板形状を有する。具体的には、
図1に示すように、基部20は、支持部30とフック部40との間を連結する本体部21と、本体部21からY方向の一方側(+Y側)に突出する第1端縁部22と、本体部21からY方向の他方側(-Y側)に突出する第2端縁部23と、を備える。
なお、第1端縁部22は、基部20のうち、フック部40の後述する第1延伸部411よりも+Y側の部分であり、第1端縁部22には、表皮材6の一端部が縫製などにより装着される。第2端縁部23は、基部20のうち支持部30よりも-Y側の部分である。
【0023】
支持部30は、全体としてXZ面に沿って配置される板形状を有する。支持部30は、第1延伸部411よりもZ方向に延伸している。また、支持部30は、第2延伸部412に干渉しないように、第2延伸部412よりも基部20側に配置される。
【0024】
フック部40は、基部20からZ方向に延伸する延伸本体部41と、延伸本体部41から-Y側に向かって湾曲しながら延伸する湾曲部42と、を備える。
延伸本体部41のZ方向の長さは、特に限定されないが、支持部30のZ方向の長さ以上であることが好ましい。この延伸本体部41は、基部20に接続される第1延伸部411と、湾曲部42に接続される第2延伸部412と、第1延伸部411と第2延伸部412とを連結する連結部413と、を備える。
【0025】
第1延伸部411は、支持部30よりもY方向の一方側(+Y側)で基部20に接続され、基部20からZ方向に沿って延伸する。すなわち、第1延伸部411と支持部30との間には、Y方向の隙間が形成される。
第2延伸部412は、第1延伸部411よりも+Z側(溝5Aの底側)に配置され、Z方向に沿って延伸する。また、第2延伸部412は、第1延伸部411よりも-Y側、具体的にはY方向における第1延伸部411と支持部30との間に配置され、第1延伸部411との間に段差41Sを形成する。
連結部413は、第1延伸部411と第2延伸部412とを連結するように、Z方向に対して傾斜して配置される。また、連結部413は、第2延伸部412との間に鈍角状の凹部43を形成する。
【0026】
なお、基部20の第1端縁部22と、フック部40の連結部413とは、クッション材5の溝形成面53に対して、共に当接可能であることが好ましい。例えば、本実施形態では、基部20の第1端縁部22とは、フック部40の連結部413のうち凹部43を形成する面413Pと、同一の仮想線V上に配置されており、それぞれ溝形成面53に当接可能である。
【0027】
湾曲部42は、支持部30よりも+Z側(溝5Aの底側)に配置され、第2延伸部412の延伸先端から-Y側に向かって湾曲しながら延伸する。この湾曲部42は、第2延伸部412に接続される基端部421と、支持部30よりも-Y側に突出する先端爪部422とを含む。
先端爪部422は、後述するように、クッション材5の溝5Aの第2溝壁面52に係合する部位である。この先端爪部422は、-Y側に向かいつつ、-Z側(溝5Aの開口側)に向かうようにY方向に対して傾斜している。
【0028】
ここで、先端爪部422が支持部30よりも-Y側に突出する突出量Dは、特に限定されないが、段差41Sに略等しい、または、段差41Sの寸法以下であることが好ましい。また、Y方向における湾曲部42の寸法W1は、Y方向における第1延伸部411から支持部30までの外寸W2以下である。なお、湾曲部42の寸法W1とは、Y方向における基端部421から先端爪部422までの外寸に相当する。
【0029】
(表皮材6の取り付け方法)
クッション材5に対する表皮材6の取り付け方法の一例について説明する。
まず、作業者は、
図3に示すように、表皮材6が装着された表皮材止着具1と、溝5Aが形成されたクッション材5とを準備する。なお、Y方向における湾曲部42の寸法W1は、溝5Aの開口幅W3よりも小さく、Y方向における第1延伸部411から支持部30までの外寸W2は、溝5Aの開口幅W3よりも大きいものとする(
図1,
図3参照)。
【0030】
次に、作業者は、
図3に実線で示すように、クッション材5の溝5Aの第1縁部51Eにフック部40の凹部43を合わせるように、表皮材止着具1をクッション材5に乗せる。このとき、フック部40の湾曲部42が溝5Aの開口に配置されると共に、基部20の第1端縁部22とフック部40の連結部413とがクッション材5の溝形成面53に対して少なくとも2点で当接する状態(挿入前姿勢)に配置される。
【0031】
次に、作業者は、表皮材止着具1の基部20、特に基部20の第2端縁部23に対して押圧を加える。これにより、表皮材止着具1が主に凹部43を中心にして回動しながら溝5A内へ移動する(
図3の矢印AR1参照)。
ここで、表皮材止着具1の回動時、
図3の鎖線Aで示すように、フック部40の連結部413は、溝形成面53から起き上がり、第1縁部51Eに案内されて溝5A内に滑り込む。このとき、フック部40の湾曲部42の外面42Pが第2縁部52Eに案内されて溝5A内に滑り込み、先端爪部422は、第2溝壁面52に干渉せずに溝5A内へ移動する。
表皮材止着具1の回動後、
図3の鎖線Bで示すように、基部20の第2端縁部23がクッション材5の溝形成面53に当接し、かつ、基部20の第1端縁部22が溝形成面53との間に隙間を形成する状態(係合前姿勢)に配置される。このとき、支持部30は、溝5Aの第2縁部52Eに当接した状態に配置される。また、このとき、フック部40は、湾曲部42の基端部421が第1溝壁面51に当接しつつ、先端爪部422が第2溝壁面52に突き当る直前となる状態(非接触状態)に配置される。
【0032】
その後、作業者は、表皮材止着具1の基部20、特に基部20の第1端縁部22に対してさらに押圧を加える。これにより、表皮材止着具1が支持部30を中心にして回動しつつ溝5A内にさらに押し込まれ(
図3の矢印AR2参照)、
図2に示す状態となる。
ここで、表皮材止着具1の回動時、先端爪部422が-Y側に移動し、第2溝壁面52に突きささる。これにより、先端爪部422は、第2溝壁面52に対して溝深さ方向に係合する。
表皮材止着具1の回動後、
図2に示すように、表皮材止着具1は、第1延伸部411が第1溝壁面51に接触し、支持部30が第2溝壁面52に接触した状態(係合姿勢)に配置される。また、このとき、基部20の第1端縁部22および第2端縁部23は、それぞれ、クッション材5の溝形成面53に接触した状態に配置される。
【0033】
以上により、表皮材止着具1は、クッション材5の溝5Aに嵌合した状態となり、表皮材6をクッション材5に止着することができる。
【0034】
(表皮材6の取り外し方法)
次に、クッション材5から表皮材6を取り外す方法の一例について説明する。
まず、作業者は、表皮材止着具1の基部20、特に基部20の第1端縁部22をクッション材5から持ち上げる。これにより、表皮材止着具1が支持部30を中心にして回動しつつ、支持部30およびフック部40が溝5Aの外側へ移動する(
図4の矢印AR3参照)。
ここで、表皮材止着具1の回動時、
図4の仮想線で示すように、支持部30は、溝5Aの第2縁部52Eに案内されて溝5Aの外側へ移動する。また、先端爪部422は、第2溝壁面52から抜け出した後、第2溝壁面52に干渉しないまま、溝5Aの開口側へ向かう。
表皮材止着具1の回動後、
図4の実線で示すように、基部20の第2端縁部23と支持部30の先端部とがクッション材5の溝形成面53に支持された状態(抜去後姿勢)に配置される。
【0035】
その後、作業者は、表皮材止着具1をクッション材5から持ち上げることで、表皮材止着具1をクッション材5から取り外すことができる。これにより、表皮材6がクッション材5から取り外される。
【0036】
(本実施形態の効果)
上述したように、本実施形態の表皮材止着具1では、表皮材6をクッション材5に取り付ける際、支持部30およびフック部40をクッション材5の溝5Aに挿入する。このとき、フック部40の第1延伸部411が溝5Aの第1溝壁面51に当接し、支持部30が溝5Aの第2溝壁面52に当接することで、溝幅方向における表皮材止着具1の配置が保持される。また、フック部40の湾曲部42の先端が第2溝壁面52に係合することで、表皮材止着具1が溝5Aから脱落することを抑制できる。これにより、表皮材止着具1がクッション材5の溝5Aに安定的に保持される。
ここで、フック部40では、第1延伸部411と第2延伸部412との間に段差41Sを形成することにより、湾曲部42のY方向(溝幅方向)の寸法W1を抑えることができる。これにより、クッション材5の溝5Aにフック部40を挿入する際、湾曲部42が第2溝壁面52に不要に干渉することを抑制できる。その結果、第2溝壁面52の損傷を抑制できる。
特に、本実施形態では、表皮材止着具1を回動させつつ溝5Aに挿入することにより、フック部40が第2溝壁面52に係合する直前まで、フック部40を第2溝壁面52に干渉させないことができる。また、表皮材止着具1に押圧を加え、先端爪部422を第2溝壁面52に差し込むことで、作業者は、係合が完了したことをクリック感として感じることができる。
【0037】
本実施形態において、湾曲部42は、支持部30よりも-Y側に突出する先端爪部422を含むため、第2溝壁面52に好適に係合することができる。例えば、クッション材5の溝5Aが溝底側に向かって広がった形状であっても、先端爪部422は第2溝壁面52に係合可能である。
【0038】
本実施形態において、フック部40の連結部413が第2延伸部412との間に鈍角状の凹部43を形成するため、当該凹部43を利用することで、表皮材止着具1を回動させながらフック部40を溝5A内へ挿入させることができる。これにより、表皮材止着具1の取り付け作業が容易になる。
【0039】
本実施形態において、支持部30は、第1延伸部411よりもZ方向に延伸しているため、表皮材止着具1を回動させながらフック部40を溝5A内へ挿入させる際、第1延伸部411がクッション材5の第2溝壁面52の縁に当接する。そして、フック部40を溝5Aに押し込むことにより、フック部40の先端を第2溝壁面52に係合させることができる。これにより、フック部40を第2溝壁面52に係合させるための動作を好適に行うことができる。
【0040】
本実施形態では、Y方向における湾曲部42の寸法W1は、Y方向における第1延伸部411から支持部30までの外寸W2よりも小さい。例えば、Y方向における第1延伸部411から支持部30までの外寸W2を溝5Aの幅W3に合わせて設計し、Y方向における湾曲部42の寸法W1を溝5Aの幅W3以下に設計することで、溝5Aに対する表皮材止着具1の保持強度の向上と、第2溝壁面52の損傷の抑制とを共に好適に実現できる。
【0041】
本実施形態の基部20は、支持部30とフック部40とをY方向に連結する本体部21と、本体部21に対するY方向の一方側に突出する第1端縁部22と、本体部21に対するY方向の他方側に突出する第2端縁部23と、を備える。このような構成では、基部20の第1端縁部22(または第2端縁部23)に対して表皮材6を縫製などで容易に装着できる。また、表皮材止着具1を溝5Aに挿入する際、基部20の第1端縁部22がクッション材5の溝形成面53に支持されることで表皮材止着具1の姿勢が調整される。同様に、表皮材止着具1を溝5Aから抜去する際、基部20の第2端縁部23がクッション材5の溝形成面53に支持されることで表皮材止着具1の姿勢が調整される。これにより、表皮材止着具1を溝5Aに挿入または抜去する際の作業が容易になる。
【0042】
本実施形態では、フック部40の湾曲部42が溝5Aの開口に位置する際、フック部40の連結部413および基部20の第1端縁部22は、クッション材5の溝形成面53に当接可能である。このような構成では、表皮材止着具1をクッション材5に取り付ける際、表皮材止着具1が少なくとも2点でクッション材5に当接するため、取り付け前の表皮材止着具1を安定的に配置できる。このため、表皮材止着具1の取り付け作業が容易になる。
【0043】
(変形例)
前記実施形態において、フック部40の先端爪部422は、溝5Aの第2溝壁面52に差し込まれるが、第2溝壁面52に対する先端爪部422の係合形態は特に限定されない。例えば、フック部40の先端爪部422は、溝5Aの第2溝壁面52に対して単にZ方向に当接することで係合してもよい。
【0044】
前記実施形態において、クッション材5の溝5Aは、第2溝壁面52が溝深さ方向に傾斜することで開口が狭まった形状を有するが、溝5Aの形状は特に限定されない。例えば、溝5Aは、溝深さ方向に沿って一定の溝幅を有してもよい。このような場合、フック部40の先端爪部422は、溝5Aの第2溝壁面52に差し込まれることで、第2溝壁面52に係合できる。
【0045】
前記実施形態において、基部20の形状は変更されてもよい。例えば、基部20は、支持部30とフック部40との間を連結する本体部21と、第1端縁部22または第2端縁部23のいずれか一方とを備えてもよい。この場合、表皮材6は、第1端縁部22または第2端縁部23に装着されればよい。
【0046】
前記実施形態において、フック部40の形状は変更されてもよい。例えば、Y方向における湾曲部42の寸法W1は、Y方向における第1延伸部411から支持部30までの外寸W2以上であってもよい。この場合、フック部40を溝5Aに挿入する際、湾曲部42を撓ませる等してもよい。
また、前記実施形態において、フック部40および基部20は、それぞれ、X方向に連続した形状を有さず、X方向に断続的な形状を有してもよい。
【0047】
前記実施形態では、クッション材5の溝5Aに対する表皮材止着具1の挿入方法および抜去方法を説明しているが、各方法は上述の方法に限られない。例えば、表皮材止着具1は、回動を伴わずに、溝5Aに挿入または抜去されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…表皮材止着具、20…基部、21…本体部、22…第1端縁部、23…第2端縁部、30…支持部、40…フック部、41…延伸本体部、41S…段差、411…第1延伸部、412…第2延伸部、413…連結部、42…湾曲部、421…基端部、422…先端爪部、43…凹部、5…クッション材、51…第1溝壁面、51E…第1縁部、52…第2溝壁面、52E…第2縁部、53…溝形成面、5A…溝、6…表皮材。