IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特開2023-178664内燃機関制御システム、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御プログラム
<>
  • 特開-内燃機関制御システム、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御プログラム 図1
  • 特開-内燃機関制御システム、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御プログラム 図2
  • 特開-内燃機関制御システム、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御プログラム 図3
  • 特開-内燃機関制御システム、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御プログラム 図4
  • 特開-内燃機関制御システム、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御プログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178664
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】内燃機関制御システム、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F02D 23/00 20060101AFI20231211BHJP
   F02B 37/12 20060101ALI20231211BHJP
   F02B 37/18 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
F02D23/00 N
F02B37/12 302B
F02B37/12 302D
F02B37/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091473
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】菊地 茂太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達也
(72)【発明者】
【氏名】溝口 紘晶
【テーマコード(参考)】
3G005
3G092
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA04
3G005GB28
3G005GD02
3G005GD13
3G005JA02
3G005JA06
3G005JA13
3G092AA18
3G092FA03
3G092FA10
3G092FA24
3G092GA05
3G092GA12
3G092HA01Z
3G092HA04Z
3G092HA06Z
(57)【要約】
【課題】低負荷領域かつ定常状態では常にウェイストゲートバルブの閉制御を禁止する内燃機関制御システムを提供する。
【解決手段】内燃機関、過給機、ウェイストゲートバルブ及びコントローラを備える内燃機関制御システムであって、コントローラは、内燃機関に加えられる負荷を測定する負荷測定部(201)と、所定の期間、負荷の変化が所定の範囲内であるか否かを判定する負荷判定部(202)と、所定の期間、負荷の変化が所定の範囲内であるとき定常状態であると判定してウェイストゲートバルブの閉制御を禁止し、所定の期間、負荷の変化が所定の範囲内でないときウェイストゲートバルブを閉制御する、ウェイストゲートバルブ制御部(203)と、を備える内燃機関制御システムを提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバのアクセル操作またはブレーキ操作により負荷が加えられる内燃機関と、前記内燃機関の排気通路に接続された過給機と、前記排気通路の前記過給機をバイパスする通路に設けられたウェイストゲートバルブと、前記内燃機関、前記過給機及び前記ウェイストゲートバルブを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記内燃機関に加えられる前記負荷を測定する負荷測定部と、
所定の期間、低負荷であるか否か及び前記負荷の変化が所定の範囲内であるか否かを判定する負荷判定部と、
前記所定の期間、低負荷であり、かつ前記負荷の変化が前記所定の範囲内であるとき低負荷領域かつ定常状態であると判定して前記ウェイストゲートバルブの閉制御を禁止し、
前記所定の期間、低負荷でない、または前記負荷の変化が前記所定の範囲内でないとき前記ウェイストゲートバルブを閉制御する、ウェイストゲートバルブ制御部と、を備える内燃機関制御システム。
【請求項2】
低燃費よりも高負荷を優先させる高負荷モードを備え、
前記定常状態と判定されていた場合において、前記ドライバが前記高負荷モードに設定したとき、前記ウェイストゲートバルブ制御部は、前記ウェイストゲートバルブを閉制御する、請求項1に記載の内燃機関制御システム。
【請求項3】
前記定常状態と判定されていた場合において、前記負荷測定部が前記負荷を測定して前記負荷判定部が、前記負荷が所定の閾値を超えたことを判定したとき、前記ウェイストゲートバルブ制御部は、前記ウェイストゲートバルブを閉制御する、請求項1または2に記載の内燃機関制御システム。
【請求項4】
ドライバのアクセル操作またはブレーキ操作により負荷が加えられる内燃機関と、前記内燃機関の排気通路に接続された過給機と、前記排気通路の前記過給機をバイパスする通路に設けられたウェイストゲートバルブと、前記内燃機関、前記過給機及び前記ウェイストゲートバルブを制御するコントローラと、を備える内燃機関の制御方法であって、
前記内燃機関に加えられる前記負荷を測定するステップと、
所定の期間、低負荷であるか否か及び前記負荷の変化が所定の範囲内であるか否かを判定するステップと、
前記所定の期間、低負荷でありかつ前記負荷の変化が前記所定の範囲内であるとき低負荷領域かつ定常状態であると判定して前記ウェイストゲートバルブの閉制御を禁止するステップと、
前記所定の期間、低負荷でない、または前記負荷の変化が前記所定の範囲内でないとき前記ウェイストゲートバルブを閉制御するステップと、を備える、内燃機関の制御方法。
【請求項5】
ドライバのアクセル操作またはブレーキ操作により負荷が加えられる内燃機関と、前記内燃機関の排気通路に接続された過給機と、前記排気通路の前記過給機をバイパスする通路に設けられたウェイストゲートバルブと、前記内燃機関、前記過給機及び前記ウェイストゲートバルブを制御するコントローラと、を備える内燃機関の制御プログラムであって、
前記内燃機関に加えられる前記負荷を測定するステップと、
所定の期間、低負荷であるか否か及び前記負荷の変化が所定の範囲内であるか否かを判定するステップと、
前記所定の期間、低負荷でありかつ前記負荷の変化が前記所定の範囲内であるとき低負荷領域かつ定常状態であると判定して前記ウェイストゲートバルブの閉制御を禁止するステップと、
前記所定の期間、低負荷でない、または前記負荷の変化が前記所定の範囲内でないとき前記ウェイストゲートバルブを閉制御するステップと、を前記コントローラに実行させる内燃機関の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関制御システム、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
過給機をバイパスする通路に設けられたウェイストゲートバルブ(WGV(Waste Gate Valve))を備える内燃機関を備えた車両が開発されている。特許文献1では、ターボチャージャによる過給を不要とする低負荷状態であるときにWGVを開作動させる車両走行用内燃機関が開示されている。この車両走行内燃機関は、車速Vが所定速度V1より大きく、かつ方向指示器がONであるような車両が加速する可能性が高い状態であるときにWGVの開作動が禁止されている。このとき低負荷状態であるか否かに拘わらず強制的にWGVを閉作動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-14289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように低負荷領域(NA(Natural Aspiration)領域)でWGVを閉じると、背圧が上昇しポンピングロスの増加により燃費が悪化する。また、内燃機関で発生するトルクが等しいときで比較すると、ポンピングロス分のトルクを補うため空気量が増加し、インテークマニホールド負圧が減少することでPCV換気率が悪化するという問題があった。そこで、本開示の目的は、低負荷領域かつ定常状態であるときは常にウェイストゲートバルブの閉制御を禁止する内燃機関制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の内燃機関制御システムは、
ドライバのアクセル操作またはブレーキ操作により負荷が加えられる内燃機関と、前記内燃機関の排気通路に接続された過給機と、前記排気通路の前記過給機をバイパスする通路に設けられたウェイストゲートバルブと、前記内燃機関、前記過給機及び前記ウェイストゲートバルブを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記内燃機関に加えられる前記負荷を測定する負荷測定部と、
所定の期間、低負荷であるか否か及び前記負荷の変化が所定の範囲内であるか否かを判定する負荷判定部と、
前記所定の期間、低負荷でありかつ前記負荷の変化が前記所定の範囲内であるとき低負荷領域かつ定常状態であると判定して前記ウェイストゲートバルブの閉制御を禁止し、
前記所定の期間、低負荷でない、または前記負荷の変化が前記所定の範囲内でないとき前記ウェイストゲートバルブを閉制御する、ウェイストゲートバルブ制御部と、を備える内燃機関制御システムである。
【0006】
上記内燃機関制御システムにより、低負荷領域かつ定常状態のときは常にウェイストゲートバルブの閉制御が禁止され、燃費を向上させることができる。
【0007】
また、本開示の内燃機関制御システムは、
低燃費よりも高負荷を優先させる高負荷モードを備え、
前記定常状態と判定されていた場合において、前記ドライバが前記高負荷モードに設定したとき、前記ウェイストゲートバルブ制御部は、前記ウェイストゲートバルブを閉制御する、ことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ドライバが、POWERモード、SPORTモードなどの高負荷モードを選択した場合は、ドライバが燃費よりも加速性を優先する意図があると判断し、定常状態を無効化することができる。
【0009】
また、本開示の内燃機関制御システムは、
前記定常状態と判定されていた場合において、前記負荷測定部が前記負荷を測定して前記負荷判定部が、前記負荷が所定の閾値を超えたことを判定したとき、前記ウェイストゲートバルブ制御部は、前記ウェイストゲートバルブを閉制御する、ことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、ドライバがアクセルを早く踏み込むなど、アクセル開度変化速度が所定以上の場合、ドライバが強い加速の意思があると判断し、定常状態を無効化することができる。
【0011】
本開示の内燃機関の制御方法は、
ドライバのアクセル操作またはブレーキ操作により負荷が加えられる内燃機関と、前記内燃機関の排気通路に接続された過給機と、前記排気通路の前記過給機をバイパスする通路に設けられたウェイストゲートバルブと、前記内燃機関、前記過給機及び前記ウェイストゲートバルブを制御するコントローラと、を備える内燃機関の制御方法であって、
前記内燃機関に加えられる前記負荷を測定するステップと、
所定の期間、低負荷であるか否か及び前記負荷の変化が所定の範囲内であるか否かを判定するステップと、
前記所定の期間、低負荷でありかつ前記負荷の変化が前記所定の範囲内であるとき低負荷領域かつ定常状態であると判定して前記ウェイストゲートバルブの閉制御を禁止するステップと、
前記所定の期間、低負荷でない、または前記負荷の変化が前記所定の範囲内でないとき前記ウェイストゲートバルブを閉制御するステップと、を備える、内燃機関の制御方法である。
【0012】
本開示の内燃機関の制御方法により、低負荷領域かつ定常状態のときは常にウェイストゲートバルブの閉制御が禁止され、燃費を向上させることができる。
【0013】
本開示の内燃機関の制御プログラムは、
ドライバのアクセル操作またはブレーキ操作により負荷が加えられる内燃機関と、前記内燃機関の排気通路に接続された過給機と、前記排気通路の前記過給機をバイパスする通路に設けられたウェイストゲートバルブと、前記内燃機関、前記過給機及び前記ウェイストゲートバルブを制御するコントローラと、を備える内燃機関の制御プログラムであって、
前記内燃機関に加えられる前記負荷を測定するステップと、
所定の期間、低負荷であるか否か及び前記負荷の変化が所定の範囲内であるか否かを判定するステップと、
前記所定の期間、低負荷でありかつ前記負荷の変化が前記所定の範囲内であるとき低負荷領域かつ定常状態であると判定して前記ウェイストゲートバルブの閉制御を禁止するステップと、
前記所定の期間、低負荷でない、または前記負荷の変化が前記所定の範囲内でないとき前記ウェイストゲートバルブを閉制御するステップと、を前記コントローラに実行させる内燃機関の制御プログラムである。
【0014】
本開示の内燃機関の制御プログラムにより、低負荷領域かつ定常状態のときは常にウェイストゲートバルブの閉制御が禁止され、燃費を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示により、低負荷領域かつ定常状態のときは常にウェイストゲートバルブの閉制御が禁止され、燃費を向上させることができる内燃機関制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態にかかる内燃機関制御システムの一例を示す模式図である。
図2】本実施の形態にかかるコントローラの内部構成の一例を示すブロック図である。
図3】本実施の形態にかかるコントローラの動作の一例を示すフローチャートである。
図4】本実施の形態にかかるコントローラの動作の別の一例を示すフローチャートである。
図5】本実施の形態にかかるコントローラの動作のさらに別の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、実施の形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0018】
(本実施の形態の内燃機関制御システムの説明)
図1は、本実施の形態にかかる内燃機関制御システムの一例を示す模式図である。図2は、本実施の形態にかかるコントローラの内部構成の一例を示すブロック図である。図1及び2を参照しながら、本実施の形態の内燃機関制御システムを説明する。
【0019】
図1に示すように、内燃機関制御システム10は、内燃機関100と、吸気通路101と、排気通路102と、エアフローメータ103と、吸気温度センサ104と、ターボ過給機105と、スロットルバルブ106と、スロットルポジションセンサ107と、排気バイパス通路108と、ウェイストゲートバルブ(WGV)109と、ブローバイガス通路110と、PCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブ111と、コントローラ(ECU(Electronic Control Unit)112と、を備える。
【0020】
また、内燃機関100の各気筒には、吸気通路101と排気通路102が連通している。ターボ過給機105は、コンプレッサ151と、タービン152とを備える。さらに、ブローバイガス通路110は、軽負荷時ブローバイガス通路113と、高負荷時ブローバイガス通路114とを備える。
【0021】
内燃機関100は、シリンダ内でガソリンなどの燃料を燃焼させ、発生した燃焼ガスを用いて動力を得る装置である。
【0022】
吸気通路101は、空気を内燃機関100に導入する通路である。吸気通路101の入り口近傍には、エアフローメータ103と、吸気温度センサ104とが設けられている。
【0023】
排気通路102は、内燃機関100から排出される排気ガスを大気に放出する通路である。また、排気通路102には、タービン152をバイパスする排気バイパス通路108が接続されている。
【0024】
エアフローメータ103は、吸気通路101に吸入される空気の流量に応じた信号をコントローラ112に出力する。
【0025】
吸気温度センサ104は、吸気通路101に吸入される空気の温度(吸気温度または外気温度)に応じた信号をコントローラ112に出力する。エアフローメータ103及び吸気温度センサ104の下流には、ターボ過給機105のコンプレッサ151が設置されている。
【0026】
ターボ過給機105は、排気の流れを利用して、内燃機関100が吸入する空気の密度を高くする装置である。ターボ過給機105は、コンプレッサ151と、タービン152と、連結軸153とを備える。
【0027】
コンプレッサ151は、連結軸153を介してタービン152と一体的に連結されている。タービン152は、排気通路102に配置されている。コンプレッサ151は、タービン152から伝えられた動力を用いて空気の密度を高くする。コンプレッサ151の下流には、内燃機関100に吸入される空気量を調整するためのスロットルバルブ106が設けられている。
【0028】
タービン152は、排気の流れを利用して回転する。タービン152は、コンプレッサ151に連結軸153を介して回転による動力を伝達する。
【0029】
スロットルバルブ106は、アクセル開度に基づいてスロットルモータ(図示せず)により駆動される電子制御式のバルブである。スロットルバルブ106の近傍には、スロットルポジションセンサ107が設けられている。
【0030】
スロットルポジションセンサ107は、スロットル開度を検出するセンサである。スロットルポジションセンサ107は、検出したスロットル開度に応じた信号をコントローラ112に出力する。
【0031】
排気バイパス通路108は、タービン152を迂回して排気ガスを大気中に放出する通路である。排気バイパス通路108の途中には、ウェイストゲートバルブ(WGV)109が設けられている。
【0032】
WGV109は、排気バイパス通路108を開閉するバルブである。具体的には、WGV109は、内燃機関100のクランクケース内に接続し、クランクケースよりもインテークマニホールドの内圧が低いときに開いて一方向にのみ通気する。WGV109は、ここでは調圧式または電動式のアクチュエータ(図示せず)によって任意の開度に調整可能である。WGV109が開かれると、排気は排気バイパス通路108を通るので、燃費は向上するが加速性が悪くなる。反対にWGV109が閉じられると、燃費は悪くなるが加速性が向上する。
【0033】
ブローバイガス通路110は、内燃機関100の内部に生じたブローバイガスを処理するために、内燃機関100と吸気通路101とを接続する通路である。より具体的には、ブローバイガス通路110の一端が内燃機関100に接続されている。ブローバイガス通路110は、その途中で軽負荷時ブローバイガス通路113と高負荷時ブローバイガス通路114に分岐している。
【0034】
ここでは、分岐後にスロットルバルブ106よりも下流側の吸気通路101に接続される通路を、軽負荷時ブローバイガス通路113とする。また、分岐後にコンプレッサ151よりも上流側の吸気通路101に接続される通路を、高負荷時ブローバイガス通路114とする。
【0035】
PCVバルブ111は、吸気負圧に応じて作動するバルブである。PCVバルブ111は、軽負荷時ブローバイガス通路113の間に設けられる。軽負荷時には、PCVバルブ111が開く。そのため、スロットルバルブ106の下流側の吸気マニホールド負圧に応じた量のブローバイガスが軽負荷時ブローバイガス通路113を介して吸気通路101に導入される。なお、このブローバイガスは、スロットルバルブ106よりも下流側の吸気通路101に導入される。一方、高負荷時(過給時)には、PCVバルブ111が閉じる。そのため、ブローバイガスは、高負荷時ブローバイガス通路114を介してコンプレッサ151よりも上流側の吸気通路101に導入される。
【0036】
コントローラ112は、内燃機関制御システム10を制御する装置である。コントローラ112は、WGV109を制御する装置としても機能する。
【0037】
図2に示すように、コントローラ112は、内部構成として負荷測定部201と、負荷判定部202と、ウェイストゲートバルブ制御部203と、を備える。
【0038】
負荷測定部201は、内燃機関100に加えられる負荷を測定する機能を有する。負荷測定部201は、車両のアクセル開度信号及びブレーキ信号と電気的に接続される。すなわち、負荷は、アクセル操作またはブレーキ操作で変化する。高負荷であればアクセル開度が大きくなり、低負荷であればアクセル開度は小さくなる。また高負荷であれば急ブレーキがかけられ、低負荷であればブレーキは緩やかにかけられる。高負荷であれば内燃機関100の回転が上がり、低負荷であれば内燃機関100の回転が下がる。同様に、高負荷であれば内燃機関100を積んだ車両の加速度が上がり、低負荷であれば内燃機関100を積んだ車両の加速度は小さい。
【0039】
負荷判定部202は、所定の期間、低負荷であるか否か及び負荷の変化が所定の範囲内であるか否かを判定する機能を有する。負荷判定部202は、負荷測定部201と接続される。負荷判定部202は、負荷測定部201で測定された負荷が低負荷であるか否かを判定する。例えば、負荷判定部202には、低負荷領域の上限を示す閾値が予め設定されている。負荷判定部202は、測定負荷を閾値と比較して、低負荷であるか否かを判定する。つまり、負荷判定部202は、測定負荷が閾値以下の場合、低負荷領域であると判定し、測定負荷が閾値よりも大きい場合、低負荷領域でないと判定する。
【0040】
さらに、負荷判定部202は、負荷測定部201で測定された負荷の変化を判定する。所定の期間とは、内燃機関100を積んだ車両の走行中のある期間である。すなわち、所定の期間とは、内燃機関100が稼働中である、ある期間である。所定の期間は、連続して設定されてもよいし、間隔を空けて設定されてもよいし、重複して設定されてもよい。負荷の変化とは、ドライバのアクセルワーク及びブレーキワークの変化である。負荷の変化が所定の範囲であるとは、アクセルワーク及びブレーキワークが一定の範囲に収まることを指す。
【0041】
すなわち、負荷判定部202は、車両が走行中のある期間、ドライバの加速及び減速が一定の範囲内にあるか否かを判定する。この範囲内にあるとき、定常状態であるという。
【0042】
ウェイストゲートバルブ制御部203は、負荷判定部202と接続される。ウェイストゲートバルブ制御部203は、負荷判定部202の判定に従って、低負荷領域かつ定常状態であるときウェイストゲートバルブ109の閉制御を禁止する機能を有する。また、ウェイストゲートバルブ制御部203は、負荷判定部202の判定に従って、低負荷領域でないまたは定常状態でないときウェイストゲートバルブ109を閉制御する機能を有する。閉制御とは、ウェイストゲートバルブ109が完全に閉じてもよいし、一部閉じてもよい状態である。
【0043】
このような内燃機関制御システム10により、低負荷領域かつ定常状態のときは常にウェイストゲートバルブ109の閉制御が禁止され、燃費を向上させることができる。
【0044】
また、ドライバによりSPORTモード、POWERモードなど低燃費よりも加速性を優先する高負荷モードに設定されることがある。ドライバが高負荷モードに設定した場合、低負荷領域かつ定常状態であっても、ウェイストゲートバルブ制御部203は、ウェイストゲートバルブ109を閉制御する。
【0045】
このような内燃機関制御システム10により、ドライバが、POWERモード、SPORTモードなどの高負荷モードを選択した場合は、ドライバが低燃費よりも加速性を優先する意図があると判断し、ウェイストゲートバルブ制御部203は、ウェイストゲートバルブ109を閉制御する。
【0046】
また、負荷判定部202は、低負荷領域かつ定常状態において負荷測定部201で測定された負荷を判定する。負荷判定部202が、負荷が所定の閾値を超えたことを判定したとき、ウェイストゲートバルブ制御部203は、ウェイストゲートバルブ109を閉制御する。
【0047】
このような内燃機関制御システム10により、ドライバがアクセルを早く踏み込むなど、アクセル開度変化速度が所定以上の場合、ドライバが強い加速の意思があると判断し、ウェイストゲートバルブ109を閉制御する。
【0048】
(本実施の形態の内燃機関の制御方法の説明)
図3は、本実施の形態にかかるコントローラの動作の一例を示すフローチャートである。図4は、本実施の形態にかかるコントローラの動作の別の一例を示すフローチャートである。図5は、本実施の形態にかかるコントローラの動作のさらに別の一例を示すフローチャートである。図3乃至5を参照しながら、本実施の形態の内燃機関の制御方法を説明する。
【0049】
内燃機関が作動中であるところから開始し、以下のステップを実行する。図3を参照すると、まず負荷測定部201が内燃機関100に加えられる負荷を測定する(S301)。次に負荷判定部202が、低負荷であるか否か判定する(S302)。低負荷でない場合(S302のNOの場合)、ウェイストゲートバルブ制御部203は、WGV109を閉制御して終了する(S305)。低負荷である場合(S302のYESの場合)、負荷判定部202が、所定の期間、負荷の変化が所定の範囲内であるか否かを判定する(S303)。
【0050】
負荷の変化が所定の範囲内であった場合(S303のYESの場合)、低負荷領域かつ定常状態であるとして、ウェイストゲートバルブ制御部203は、ウェイストゲートバルブ(WGV)109の閉制御を禁止して終了する(S304)。負荷の変化が所定の範囲内にない場合(S303のNOの場合)、ウェイストゲートバルブ制御部203は、WGV109を閉制御して終了する(S305)。
【0051】
このようにすることで、低負荷領域かつ定常状態のときは常にウェイストゲートバルブ109の閉制御が禁止され、燃費を向上させることができる。
【0052】
図4を参照すると、内燃機関100が作動して車両が低負荷領域かつ定常状態であるところから始まる(S401)。次に、車両がSPORTモードまたはPOWERモードなど高負荷モードに設定されたか否かコントローラ112が、判定する(S402)。
【0053】
高負荷モードに設定された場合(S402のYESの場合)、ウェイストゲートバルブ制御部203は、WGVを閉制御する(S403)。高負荷モードに設定されない場合(S402のNOの場合)、低負荷領域かつ定常状態であるとして、ウェイストゲートバルブ制御部203は、WGV109の閉制御を禁止して終了する。
【0054】
このようにすることで、ドライバが、POWERモード、SPORTモードなどの高負荷モードを選択した場合は、ドライバが低燃費よりも加速性を優先する意図があると判断し、ウェイストゲートバルブ制御部203がWGV109の閉制御を行う。
【0055】
図5を参照すると、内燃機関100が作動して車両が低負荷領域かつ定常状態であるところから始まる(S501)。次に、負荷測定部201で測定している負荷が所定の閾値を超えたか否か負荷判定部202が判定する(S502)。
【0056】
負荷が所定の閾値を超えた場合(S502のYESの場合)、ウェイストゲートバルブ制御部203は、WGV109を閉制御して、終了する(S503)。つまり、負荷判定部202が低負荷領域にないと判定するため、ウェイストゲートバルブ制御部203は、WGV109を閉制御する。負荷が閾値を超えない場合(S502のNOの場合)、低負荷領域かつ定常状態であるとして、ウェイストゲートバルブ制御部203は、WGV109の閉制御を禁止したまま終了する。
【0057】
このようにすることで、ドライバがアクセルを早く踏み込むなど、アクセル開度変化速度が所定以上の場合、ドライバが強い加速の意思があると判断し、ウェイストゲートバルブ制御部203がWGV109の閉制御を行う。
【0058】
また、上述したコントローラ112における処理の一部又は全部は、コンピュータプログラムとして実現可能である。このようなプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0059】
このような内燃機関の制御プログラムをコントローラ112に実行させることにより、低負荷領域であり、かつ定常状態であるときは常にウェイストゲートバルブ109の閉制御が禁止され、燃費を向上させることができる。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 内燃機関制御システム
100 内燃機関
101 吸気通路
102 排気通路
103 エアフローメータ
104 吸気温度センサ
105 ターボ過給機
106 スロットルバルブ
107 スロットルポジションセンサ
108 排気バイパス通路
109 ウェイストゲートバルブ
110 ブローバイガス通路
111 PCVバルブ
112 コントローラ
113 軽負荷時ブローバイガス通路
114 高負荷時ブローバイガス通路
152 タービン
151 コンプレッサ
153 連結軸
201 負荷測定部
202 負荷判定部
203 ウェイストゲートバルブ制御部
図1
図2
図3
図4
図5