IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

特開2023-178665中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法
<>
  • 特開-中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法 図1
  • 特開-中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法 図2
  • 特開-中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法 図3
  • 特開-中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法 図4
  • 特開-中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法 図5
  • 特開-中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法 図6
  • 特開-中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法 図7
  • 特開-中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178665
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20231211BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B01D63/02
B01D63/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091474
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波形 和彦
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA02
4D006HA05
4D006HA09
4D006HA18
4D006HA19
4D006JA13C
4D006JB03
4D006JB06
4D006MA01
4D006MC28
4D006MC40
4D006MC62
4D006PA10
4D006PB17
4D006PB65
4D006PC72
4D006PC80
(57)【要約】
【課題】ケースへの中空糸膜の装填作業の作業性の向上を図ることのできる中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】筒状のケースと、前記ケースに収納される複数の中空糸膜310と、前記ケースの一端側と他端側で、複数の中空糸膜310の各々の中空内部を開放させた状態で前記ケースの開口部をそれぞれ封止し、かつ複数の中空糸膜310を前記ケースに固定する一対の封止固定部と、を備え、複数の中空糸膜310は、編目の形状が四角形となるように複数の中空糸膜310を編むことにより構成されるシート状の中空糸膜ユニット300により構成されることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースと、
前記ケースに収納される複数の中空糸膜と、
前記ケースの一端側と他端側で、前記複数の中空糸膜の各々の中空内部を開放させた状態で前記ケースの開口部をそれぞれ封止し、かつ前記複数の中空糸膜を前記ケースに固定する一対の封止固定部と、
を備え、
前記複数の中空糸膜は、編目の形状が四角形となるように前記複数の中空糸膜を編むことにより構成されるシート状の中空糸膜ユニットにより構成されることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記中空糸膜ユニットは、畳まれた状態で前記ケース内に配されていることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
前記中空糸膜ユニットは、円筒状又は円柱状に巻かれた状態で前記ケース内に配されていることを特徴とする請求項2に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記中空糸膜ユニットは、一本ずつ中空糸膜を編むことにより構成されることを特徴とする請求項1,2または3に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】
前記中空糸膜ユニットは、複数本の中空糸膜を束にしたものを編むことにより構成されることを特徴とする請求項1,2または3に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項6】
編目の形状が四角形となるように複数本の中空糸膜を編むことでシート状の中空糸膜ユニットを製作する工程と、
前記中空糸膜ユニットを畳む工程と、
畳まれた前記中空糸膜ユニットをケース内に収納する工程と、
畳まれた前記中空糸膜ユニットの両端に封止固定部を形成する工程と、
を有することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池においては、電解質膜を加湿する加湿装置に中空糸膜モジュールが用いられている。中空糸膜モジュールにおいては、ケースに複数の中空糸膜が収納されている。例えば、燃料電池車の加湿装置に用いられる中空糸膜モジュールの場合には、ケースに数千本の中空糸膜が収納される。この場合、一度に全ての中空糸膜をケースに装填するのは困難なため、数十から数百本単位の中空糸膜を束にして、一束ずつケースに装填するなどの手法を採用している。
【0003】
図8は従来技術に係る中空糸膜モジュールに装填される中空糸膜束の外観図である。図示のように、中空糸膜束500は、複数の中空糸膜510の両端が、糸520により縛られている。このように構成される中空糸膜束500が、一つずつケースに収納されることで、ケースに多数の中空糸膜を収納することができる。
【0004】
このような手法を採用した場合、最初のうちは容易にケースに中空糸膜束500を装填できるものの、最後の方はケースの空きが少なくなり、装填作業が困難になり、作業時間も長くなる。また、中空糸膜同士が擦れることで、中空糸膜が傷ついたり折れたりすることがある。また、ケース内における中空糸膜束500の配置状態も不安定になり易く、中空糸膜が密になる箇所と疎になる箇所が生じてしまう。更に、複数の中空糸膜を束ねるために中空糸膜以外の部材(糸など)を用いた場合、封止固定部との接着性の相性によっては、封止固定部に悪影響が出てしまう。この場合、中空糸膜以外の部材が封止固定部に入り込まないように処理を施すと、別途、作業が必要になるだけでなく、中空糸膜に悪影響が出たりすることも懸念される。
【0005】
なお、加湿装置に用いる中空糸膜モジュールだけでなく、濾過用の中空糸膜モジュールにおいても同様の問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-176003号公報
【特許文献2】特許第3324919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ケースへの中空糸膜の装填作業の作業性の向上を図ることのできる中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、本発明の中空糸膜モジュールは、
筒状のケースと、
前記ケースに収納される複数の中空糸膜と、
前記ケースの一端側と他端側で、前記複数の中空糸膜の各々の中空内部を開放させた状態で前記ケースの開口部をそれぞれ封止し、かつ前記複数の中空糸膜を前記ケースに固定
する一対の封止固定部と、
を備え、
前記複数の中空糸膜は、編目の形状が四角形となるように前記複数の中空糸膜を編むことにより構成されるシート状の中空糸膜ユニットにより構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、複数の中空糸膜はシート状の中空糸膜ユニットにより構成されるため、ケースへの複数の中空糸膜の装填作業は容易である。
【0011】
前記中空糸膜ユニットは、畳まれた状態で前記ケース内に配されているとよい。
【0012】
前記中空糸膜ユニットは、円筒状又は円柱状に巻かれた状態で前記ケース内に配されていると好適である。
【0013】
前記中空糸膜ユニットは、一本ずつ中空糸膜を編むことにより構成されるとよい。
【0014】
前記中空糸膜ユニットは、複数本の中空糸膜を束にしたものを編むことにより構成されることも好適である。
【0015】
本発明の中空糸膜モジュールの製造方法は、
編目の形状が四角形となるように複数本の中空糸膜を編むことでシート状の中空糸膜ユニットを製作する工程と、
前記中空糸膜ユニットを畳む工程と、
畳まれた前記中空糸膜ユニットをケース内に収納する工程と、
畳まれた前記中空糸膜ユニットの両端に封止固定部を形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、ケースへの中空糸膜の装填作業の作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの模式的断面図である。
図2図2は本発明の実施例に係る中空糸膜ユニットの外観図である。
図3図3は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの製造工程図である。
図4図4は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの製造工程図である。
図5図5は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの製造工程図である。
図6図6は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの製造工程図である。
図7図7は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの製造工程図である。
図8図8は従来技術に係る中空糸膜モジュールに装填される中空糸膜束の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
(実施例)
図1図7を参照して、本発明の実施例に係る中空糸膜モジュール及び中空糸膜モジュールの製造方法について説明する。
【0021】
<中空糸膜モジュール>
図1を参照して、本実施例に係る中空糸膜モジュールについて説明する。図1は本発明が適用可能な中空糸膜モジュールの一例について、2種類の中空糸膜モジュールを模式的断面図にて示している。
【0022】
図1(a)に示す中空糸膜モジュール10は、円筒状のケース100と、ケース100の内部に配される円筒状の内ケース200と、ケース100と内ケース200との間の環状隙間に収納される中空糸膜ユニット300とを備えている。中空糸膜ユニット300は、複数の中空糸膜310により構成される。また、中空糸膜モジュール10は、一対の封止固定部410,420を備えている。封止固定部410,420は、ケース100と内ケース200の一端側(図1中右側)と他端側(図1中左側)で、複数の中空糸膜310の各々の中空内部を開放させた状態でケース100の開口部をそれぞれ封止し、かつ複数の中空糸膜310をケース100と内ケース200に固定する役割を担っている。これらの封止固定部410,420は、エポキシ樹脂などのポッティング材料が硬化することにより得られる。なお、便宜上、以下、中空糸膜モジュール10において、図1中、右側を「一端側」、左側を「他端側」と称する。
【0023】
ケース100の他端側には複数の貫通孔101が設けられている。内ケース200は、円筒状の部材の一端が塞がれた構成である。これにより、内ケース200には、他端側に開口する中空部が設けられる構成となっている。また、内ケース200においては、円筒状の部分の一端側に複数の貫通孔201が設けられている。
【0024】
以上のように構成される中空糸膜モジュール10は、加湿装置や除湿装置として好適に用いることができる。この場合、例えば、中空糸膜310の膜外に湿潤気体を供給し、中空糸膜310の膜内(中空内部)に上記の湿潤気体よりも湿度の低い乾燥気体を供給することで、加湿装置や除湿装置として利用することができる。すなわち、上記のように湿潤気体と乾燥気体を供給すると、中空糸膜310による膜分離作用によって、湿潤気体中の水分が乾燥気体側に移動する。従って、乾燥気体については加湿され、湿潤気体については除湿されるため、加湿装置としても除湿装置としても利用することができる。なお、本実施例に係る中空糸膜モジュール10は、燃料電池に備えられる電解質膜を加湿するための加湿装置として好適に用いることができる。この場合、燃料電池において発生した湿潤空気が、上記の湿潤気体として利用される。そして、加湿された気体(空気)が、燃料電池に備えられる電解質膜に供給されることで、電解質膜については、湿った状態が維持される。ここで、中空糸膜310の素材としては、例えば、孔径制御による毛管凝縮機構により水分を透過する特性を有するPPSU(ポリフェニルスルホン)などを好適に用いることができる。なお、製膜溶液(中空糸膜の原料)を調整する際、溶媒中にPPSUと親水性高分子(ポリビニルポロリドン)を添加した製膜溶液を用いて紡糸を行うことで親水性を有する中空糸膜を得ることができる。また、溶解拡散により水分を透過する特性を有する親水性の材料であるナフィオン(登録商標)を用いることもできる。以上のような材料は、低溶出性であり、かつ強度も高いため、加湿装置として好適に用いることができる。
【0025】
中空糸膜モジュール10を加湿装置や除湿装置として用いる場合の流体の流れについて説明する。湿潤気体は、内ケース200の中空部へと供給されて(図中、矢印R1)、複数の貫通孔201から中空糸膜ユニット300が配された環状隙間に入っていく。環状隙間に入った湿潤気体は、中空糸膜310の膜外を通って、ケース100の貫通孔101からケース100の外側に流れていく。また、乾燥気体は、他端側の封止固定部420から
複数の中空糸膜310の各中空内部に供給され(矢印R2)、それぞれの中空糸膜310の膜内を流れていく。その後、一端側の封止固定部410から排出される。以上の過程で、中空糸膜310による膜分離作用によって、湿潤気体中の水分が乾燥気体側に移動して、乾燥気体は加湿され、湿潤気体は除湿される。
【0026】
図1(b)に示す中空糸膜モジュール10Aは、円筒状のケース100Aと、ケース100Aに収納される中空糸膜ユニット300とを備えている。中空糸膜ユニット300は、複数の中空糸膜310により構成される。また、中空糸膜モジュール10Aは、一対の封止固定部410A,420Aを備えている。封止固定部410A,420Aは、ケース100Aの一端側(図1中右側)と他端側(図1中左側)で、複数の中空糸膜310の各々の中空内部を開放させた状態でケース100Aの開口部をそれぞれ封止し、かつ複数の中空糸膜310をケース100Aに固定する役割を担っている。これらの封止固定部410,420は、エポキシ樹脂などのポッティング材料が硬化することにより得られる。なお、便宜上、以下、中空糸膜モジュール10Aにおいて、図1中、右側を「一端側」、左側を「他端側」と称する。ケース100Aの一端側と他端側には、それぞれ貫通孔104,103が設けられている。
【0027】
以上のように構成される中空糸膜モジュール10Aにおいても、上記の中空糸膜モジュール10と同様に、加湿装置や除湿装置として好適に用いることができる。
【0028】
中空糸膜モジュール10Aを加湿装置や除湿装置として用いる場合の流体の流れについて説明する。湿潤気体は、ケース100Aの他端側の貫通孔103から供給されて(図中、矢印R3)、ケース100A内に入っていく。ケース100A内に入った湿潤気体は、中空糸膜310の膜外を通って、ケース100Aの貫通孔104からケース100Aの外側に流れていく。また、乾燥気体は、一端側の封止固定部410Aから複数の中空糸膜310の各中空内部に供給され(矢印R4)、それぞれの中空糸膜310の膜内を流れていく。その後、一端側の封止固定部420Aから排出される。以上の過程で、中空糸膜310による膜分離作用によって、湿潤気体中の水分が乾燥気体側に移動して、乾燥気体は加湿され、湿潤気体は除湿される。
【0029】
なお、以上の説明においては、中空糸膜モジュールが加湿装置や除湿装置として利用する場合を説明したが、本発明の中空糸膜モジュールは、ろ過装置として利用する場合にも適用可能である。この場合には、例えば、ケース内に備えられる複数の中空糸膜の中空内部に濾過対象の液体を流し、中空糸膜によって濾過されて中空糸膜の膜外に流れ出た濾過後の液体をケースの貫通孔から排出させることができる。図1(b)に示す構成を例に説明すると、濾過対象の液体を図中R4方向に流すことで、中空糸膜310によって濾過された液体を貫通孔103,104から排出させることができる。
【0030】
<中空糸膜ユニット及び中空糸膜モジュールの製造方法>
図2図7を参照して、本実施例に係る中空糸膜ユニット及び中空糸膜モジュールの製造方法について説明する。本実施例においては、まず、編目の形状が四角形となるように複数本の中空糸膜310を編むことでシート状の中空糸膜ユニット300が製作される。図2はシート状の中空糸膜ユニット300の外観図(平面図)であり、図中、楕円で囲んだ部分を拡大した図も示している。この図の例では、中空糸膜ユニット300が、一本ずつ中空糸膜310を編むことにより構成される場合の例を示している。しかしながら、強度を高めるために、複数本(2~5本程度)の中空糸膜310を束にしたもの(束にして1本の状態にしたもの)を編むことでシート状の中空糸膜ユニット300を製作してもよい。複数本の中空糸膜310を編む作業については、手作業でもよいし、自動機を用いてもよい。
【0031】
一本ずつ中空糸膜310を編む場合、及び複数本の中空糸膜310を束にしたものを編む場合のいずれにおいても、編目の形状は四角形(例えば、ひし形)となるように構成される。なお、図2中の拡大図においては、編目の一つを太い点線で囲って示している(図中、300A参照)。
【0032】
次に、シート状の中空糸膜ユニット300において、中空糸膜310がバラバラにならないように、複数本の中空糸膜310の両端付近において、テープ320が貼り付けられる(図3(a)参照)。なお、図3においては、中空糸膜310については簡略化して、中空糸膜ユニット300の外形のみを示している。
【0033】
テープ320が貼り付けられた後に、シート状の中空糸膜ユニット300は畳まれる。図1(a)に示す中空糸膜モジュール10の場合には、内ケース200に対して、中空糸膜ユニット300を円筒状に巻き付けるとよい。なお、図3(b)は、内ケース200に、中空糸膜ユニット300を円筒状に巻き付ける途中の状態を示している。図中、300Bは円筒状に巻き付けけられた部分を示している。図3(b)において、左側は中空糸膜ユニット300を円筒状に巻く際の様子を示す平面図であり、右側は左側の図を図中矢印方向に見た図である。
【0034】
また、図1(b)に示す中空糸膜モジュール10Aの場合には、中空糸膜ユニット300を円柱状に巻くように畳むとよい。なお、図3(c)は、中空糸膜ユニット300を円柱状に巻く途中の状態を示している。図中、300Cは円柱状に巻かれた部分を示している。図3(c)において、左側は中空糸膜ユニット300を円柱状に巻く際の様子を示す平面図であり、右側は左側の図を図中矢印方向に見た図である。
【0035】
なお、図1に示す中空糸膜モジュール10,10Aの場合には、ケース100,100Aが円筒状の部材により構成されるため、中空糸膜ユニット300は円筒状又は円柱状に巻かれるように畳まれる。しかしながら、例えば、ケースが直方体のような場合には、中空糸膜ユニット300を折り畳んで、折り畳んだ後の全体形状が直方体になるようにすればよい。
【0036】
上記のように畳まれた中空糸膜ユニット300はケース内に収納される。図4(a)は、図1(a)に示す中空糸膜モジュール10を製造するために、ケース100に、内ケース200と共に、内ケース200に巻かれた中空糸膜ユニット300を収納した状態を模式的断面図にて示している。また、図4(b)は、図1(b)に示す中空糸膜モジュール10Aを製造するために、ケース100Aに円柱状に巻かれた中空糸膜ユニット300を収納した状態を模式的断面図にて示している。
【0037】
中空糸膜ユニット300がケースに収納された後に、中空糸膜ユニット300の両端のテープ320が貼られた部分が切断される。図5(a)は、図4(a)に示した中空糸膜ユニット300の両端のテープ320が貼られた部分を切断した後の状態を示す模式的断面図である。図5(b)は、図4(b)に示した中空糸膜ユニット300の両端のテープ320が貼られた部分を切断した後の状態を示す模式的断面図である。以上の工程により、ケース100,100Aに収納された中空糸膜ユニット300は、中空糸膜310のみにより構成され、他の部材は存在しない状態となる。
【0038】
その後、中空糸膜ユニット300の両端に封止固定部を設けるために、液状のポッティング材料が注入される。注入されたポッティング材料は、その後、硬化する。図6(a)は、図5(a)に示した中空糸膜ユニット300の両端に、硬化した後のポッティング材料411,421が設けられた状態を示す模式的断面図である。図6(b)は、図5(b)に示した中空糸膜ユニット300の両端に、硬化した後のポッティング材料411A,
421Aが設けられた状態を示す模式的断面図である。なお、ポッティング材料を注入する前に、中空糸膜310の中空内部の奥深くまでポッティング材料が進入しないように、中空糸膜310の端部の開口部を塞ぐ処理を行うと、より好適である。
【0039】
ポッティング材料が硬化した後に、その一部を切断することによって、複数の中空糸膜310の各々の中空内部が開放されて、封止固定部が得られる。図7(a)は、図6(a)に示した硬化した後のポッティング材料411,421の一部が切断されることで、封止固定部410,420が形成された状態を示す模式的断面図である。。図7(b)は、図6(b)に示した硬化した後のポッティング材料411A,421Aの一部が切断されることで、封止固定部410A,420Aが形成された状態を示す模式的断面図である。以上の工程により、中空糸膜モジュール10,10Aが得られる。
【0040】
なお、液状のポッティング材料を用いて、封止固定部を設ける方法については、各種公知技術を採用できる。ここでは、その一例を簡単に説明する。例えば、図7(c)に示すように、ケース100Aの一端部の付近に注入口105を設け、ケース100Aの一端側の開口部はキャップ150により塞がれた状態とする。この状態で、遠心力を作用させつつ、注入口105から液状のポッティング材料を一定量注入する。これにより、液状のポッティング材料は、ケース100Aの一端側に片寄った位置に留められた状態が維持される。そして、ポッティング材料が硬化した後に、遠心機からケース100Aを取り外して、ケース100Aの一部を含むように、硬化したポッティング材料を切断する(図中、太線Cの部分を切断する)ことで、封止固定部が形成される。
【0041】
<本実施例に係る中空糸膜モジュール及びその製造方法の優れた点>
本実施例においては、複数の中空糸膜310は、シート状の中空糸膜ユニット300により構成される。そのため、中空糸膜ユニット300を畳んだ状態で、ケース100,100Aに収納することで、複数の中空糸膜310をケース100,100Aに容易に装填することができる。従って、ケース100,100Aへの中空糸膜310の装填作業の作業性の向上を図ることができる。
【0042】
また、ケース100,100Aに対して収納される中空糸膜ユニット300の姿勢は安定するため、ケース100,100A内の複数の中空糸膜310の状態を安定化させることができる。従って、中空糸膜310が密になる箇所と疎になる箇所が生じてしまうことを抑制することができる。これにより、中空糸膜モジュール10,10Aが加湿装置や除湿装置として適用される場合には、加湿効率や除湿効率を安定させることができる。また、中空糸膜モジュール10,10Aが濾過装置として適用される場合には、濾過効率を安定させることができる。
【0043】
更に、本実施例においては、シート状の中空糸膜ユニット300は、編目の形状が四角形となるように複数本の中空糸膜310が編み込まれた構成である。そのため、中空糸膜310同士の接触箇所の面積を小さくすることができ、中空糸膜310の大部分は他の中空糸膜310に接触しない状態とすることができる。従って、加湿効率、除湿効率、濾過効率を高めることができる。
【0044】
なお、図1(a)に示す構成を加湿装置として利用した場合において、従来のように中空糸膜束を複数装填した場合と、本実施例のように、シート状の中空糸膜ユニット300を円筒状に巻いたものを装填した場合とで比較試験を行った。具体的には、中空糸膜310の総数を同程度にして、水蒸気等価係数の比較により、加湿性能について比較した。水蒸気透過係数の測定は、中空糸膜の膜外に湿潤空気を流し、中空糸膜の膜内(中空内部)に乾燥空気を流し、乾燥空気がどれくらい加湿されたかを測定した。その結果、従来構成の場合には、水蒸気透過係数の平均値が6.75g/sであったのに対して、本実施例の
場合には、水蒸気透過係数を7.18g/s程度まで向上させることができた。
【符号の説明】
【0045】
10,10A 中空糸膜モジュール
100,100A ケース
101,103,104 貫通孔
105 注入口
150 キャップ
200 内ケース
201 貫通孔
300 中空糸膜ユニット
310 中空糸膜
320 テープ
410,420,410A,420A 封止固定部
411,421,411A,421A ポッティング材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8