(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178669
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】請求遅れ分析装置、報知装置、および請求遅れ分析システム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20231211BHJP
【FI】
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091479
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】投石 真義
(72)【発明者】
【氏名】角 元貴
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】診療報酬明細書の請求遅れの理由やその影響を詳細に分析することができる請求遅れ分析装置、報知装置、および請求遅れ分析システムを提供する。
【解決手段】請求遅れ分析システムにおいて、請求遅れ分析装置1は、診療報酬明細書を提出すべき時期に提出できなかった場合に、医療施設において生成される、診療報酬の請求遅れに関する報告を含む請求遅れ報告レコードを所定期間分取得する取得部11と、請求遅れ報告レコードを用いて所定の統計処理を行い、請求遅れに関する分析結果を出力する分析部12と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診療報酬明細書を提出すべき時期に提出できなかった場合に、医療施設において生成される、診療報酬の請求遅れに関する報告を含む請求遅れ報告レコードを所定期間分取得する取得部と、
前記請求遅れ報告レコードを用いて所定の統計処理を行い、前記請求遅れに関する分析結果を出力する分析部と、
を備える、請求遅れ分析装置。
【請求項2】
前記分析部は、前記請求遅れ報告レコードに含まれる前記請求遅れの理由の分析結果に基づいて、前記理由を複数のカテゴリに分類する、
請求項1に記載の請求遅れ分析装置。
【請求項3】
前記分析部は、前記分析結果および既存の理由を示すカテゴリデータに基づいて、前記理由を前記複数のカテゴリに分類する、
請求項2に記載の請求遅れ分析装置。
【請求項4】
前記分析部は、前記統計処理において、前記請求遅れ報告レコードに含まれる、前記理由を示す理由文を単語に分け、複数の前記請求遅れ報告レコードに含まれる理由文の中に出現する単語毎の出現回数を計数し、前記出現回数が閾値回数より多い単語を抽出する、
請求項2に記載の請求遅れ分析装置。
【請求項5】
前記分析部は、前記統計処理において、抽出された単語に対してクラスタリングを行い、前記クラスタリングの結果を前記分析結果とする、
請求項4に記載の請求遅れ分析装置。
【請求項6】
前記分析部は、
前記請求遅れ報告レコードに含まれる、月毎の前記請求遅れの発生件数に基づいて、今後の月毎の前記請求遅れの発生件数を予測する、
請求項1に記載の請求遅れ分析装置。
【請求項7】
前記分析部は、月毎の在庫変動量に基づいて、今後の月毎の前記在庫変動量を予測する、
請求項1に記載の請求遅れ分析装置。
【請求項8】
前記分析部は、前記医療施設の月毎の売上および経費、ならびに、前記請求遅れにより当月中に請求できなかった未請求額に基づいて、今後の月毎のキャッシュフローを予測する、
請求項1に記載の請求遅れ分析装置。
【請求項9】
前記分析部は、前記医療施設の月毎の利益額に基づいて、今後の月毎の前記利益額を予測する、
請求項1に記載の請求遅れ分析装置。
【請求項10】
請求項1に記載の請求遅れ分析装置による前記分析結果に基づく報知を行う報知部を備える、
報知装置。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の請求遅れ分析装置と、
請求項10に記載の報知装置と、
を備える、請求遅れ分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、診療報酬明細書の提出遅れについて分析する請求遅れ分析装置、報知装置、および請求遅れ分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設は、被保険者に対して行った医療行為の報酬の一部を、保険者に対して請求するために、医療行為の内容などを記載した診療報酬明細書(レセプトとも呼ばれる)を作成し、審査支払機関に審査を依頼する。審査支払機関は、レセプトの内容を審査し、問題がない場合に、保険者に報酬を支払わせる。
【0003】
レセプトを審査支払期間に提出する期限が、月毎に定められている。月毎の期限を超えた場合、そのレセプトは当月中の提出ができないので、医療施設は、そのレセプトを翌月以降に改めて提出する必要がある。本明細書では、このように本来提出すべき月にレセプトを提出できず、翌月以降に提出することを、請求遅れと記載する。
【0004】
請求遅れは、例えばレセプトの提出前に、医療施設の担当者などがレセプトのミスに気付いた場合などに生じる。特許文献1には、レセプトのエラーを自動検出し、効率よく修正することができる医事支援プログラムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
請求遅れが生じた場合、本来なら得ることができた報酬を当月中に受け取ることができないので、医療施設のその月の収益が減ってしまう。このようなことが重なると、医療施設の経営に影響が出るため、請求遅れの理由やその影響について分析を行うことで、請求遅れを低減させることが要望されている。
【0007】
本開示の目的は、診療報酬明細書の請求遅れの理由やその影響を詳細に分析することができる請求遅れ分析装置、報知装置、および請求遅れ分析システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の請求遅れ分析装置は、診療報酬明細書を提出すべき時期に提出できなかった場合に、医療施設において生成される、診療報酬の請求遅れに関する報告を含む請求遅れ報告レコードを所定期間分取得する取得部と、前記請求遅れ報告レコードを用いて所定の統計処理を行い、前記請求遅れに関する分析結果を出力する分析部と、を備える。
【0009】
本開示の報知装置は、上記の請求遅れ分析装置による前記分析結果に基づく報知を行う報知部を備える。
【0010】
本開示の請求遅れ分析システムは、上記の請求遅れ分析装置と、上記の報知装置と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、診療報酬明細書の請求遅れの理由やその影響を詳細に分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】請求遅れ分析システムが使用される態様を例示した概念図
【
図2】請求遅れ分析システムの構成の一例を示すブロック図
【
図3】請求遅れ分析システムの動作例を説明するフローチャート
【
図4】請求遅れ分析装置の構成の一例を示すブロック図
【
図5】請求遅れ分析装置による分析処理について説明するためのフローチャート
【
図6】請求遅れの理由分析処理について説明するためのフローチャート
【
図9】ある調剤薬局の店舗における、請求遅れの月毎の件数の推移に関する表示画面の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明、例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明などは省略する場合がある。
【0014】
図1は、請求遅れ分析システムが使用される態様を例示した概念図である。
図1には、複数の調剤薬局Phと、複数の調剤薬局Phを統括する本部HQと、が示されている。本実施の形態において、複数の調剤薬局Phは、例えば薬局チェーンに属するそれぞれの店舗に対応する。本部HQは、例えば薬局チェーンに属する各店舗の経営を管理する組織である。本実施の形態における調剤薬局は、本開示の医療施設の一例である。なお、本実施の形態では、医療施設が調剤薬局である場合について説明するが、本開示では、医療施設には、調剤薬局以外にも、保険診療を行う病院、診療所、歯科診療所など、医療に関する種々の施設(以下、医療機関)が含まれうる。
【0015】
各調剤薬局Phには、端末装置TEが配置されている。端末装置TEは、調剤薬局Phに属する担当者(薬剤師など)による、各種の入力操作を受け付ける。
【0016】
各調剤薬局Phの端末装置TEは、ネットワークNWを介して、本部HQに配置された請求遅れ分析システム100に接続されている。請求遅れ分析システム100は、各調剤薬局Phにおいて発生した請求遅れについて様々な分析を行うシステムである。
【0017】
なお、請求遅れとは、上述したように、各調剤薬局Phが、診療報酬明細書(レセプト)の不備などにより、本来提出すべき月にレセプトを支払審査機関に対して提出できず、翌月以降に提出することである。請求遅れは、例えば、レセプトを提出する前に内容を確認した調剤薬局Phの担当者が、レセプトの不備などを発見した場合に生じうる。
【0018】
ネットワークNWは、例えばインターネットなどの公衆通信網、またはイントラネットなどである。
【0019】
レセプトの請求遅れが発生した場合、各調剤薬局Phにおいて、請求遅れが発生したことを報告する請求遅れ報告の入力が、担当者により、端末装置TEを介して行われる。端末装置TEでは、例えば、1件の請求遅れにつき1件の請求遅れ報告の入力が行われる。これにより、端末装置TEは、1件の入力につき1件の請求遅れ報告レコードを生成し、ネットワークNWを介して本部HQに配置された請求遅れ分析システム100に送信する。
【0020】
なお、請求遅れ報告レコードは、請求できなかったレセプトを特定する情報(識別番号など)、請求遅れが発生した月を示す情報、請求遅れのにより請求できなかった金額に関する情報、請求遅れの理由を示す文章に関する情報などを含む。請求遅れの理由を示す文章に関する情報は、調剤薬局Phの担当者が、端末装置TEを用いて、文章を入力、または複数の定型文から選択することで、生成される。
【0021】
以下の説明において、請求遅れの理由を示す文章を理由文と記載することがある。理由文には、例えば「保険証の有効期限が切れている。」、「所得区分が処方箋に記載されていない。」など、文章としての体をなしているものの他、「記号番号誤り」、「請求忘れ」など、単語または文節の組み合わせも含まれる。また、理由文は、2つ以上の文、単語または文節を含んでいてもよい。
【0022】
請求遅れ報告は、各調剤薬局Phにおいて、予め決められたタイミングで入力されてもよいし、任意のタイミングで入力されてもよい。予め決められたタイミングとは、例えば、一月のうち、特定の日(例えば末日など)である。また、任意のタイミングとは、例えば、レセプトの請求遅れが発生したタイミング、または、調剤薬局Phの担当者の手が空いたタイミングなどである。
【0023】
<請求遅れ分析システム100>
以下では、請求遅れ分析システム100について詳細に説明する。
図2は、請求遅れ分析システム100の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、請求遅れ分析システム100は、請求遅れ分析装置1と、報知装置2と、記憶部3と、を備える。
【0024】
記憶部3は、請求遅れ分析装置1および報知装置2が実行する処理に用いられる各種情報を記憶する。特に、記憶部3は、各調剤薬局Phの端末装置TEから受信した請求遅れ報告レコードを蓄積する請求遅れ報告データベース(DB)を有している。
【0025】
請求遅れ分析装置1は、記憶部3に記憶された情報に基づいて、過去に生じた請求遅れの理由を分析する。報知装置2は、記憶部3に記憶された情報、および、請求遅れ分析装置1の分析結果に基づいて、様々な報知を行う。
【0026】
図3は、請求遅れ分析システム100の全体的な動作の例を説明するフローチャートである。
【0027】
ステップS1において、記憶部3は、調剤薬局Phに配置された端末装置TEからネットワークNWを介して受信した請求遅れ報告レコードを請求遅れ報告DBに蓄積する。
【0028】
ステップS2において、請求遅れ分析装置1は、蓄積された請求遅れ報告レコードに基づいて、請求遅れについて分析処理を行う。請求遅れ分析装置1による分析処理の詳細については、後述する。
【0029】
ステップS3において、報知装置2は、分析結果に基づいて、種々の報知処理を行う。報知装置2による報知処理の詳細については、後述する。
【0030】
<請求遅れ分析装置1>
図4は、請求遅れ分析装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、請求遅れ分析装置1は、取得部11と、分析部12と、を備える。
【0031】
取得部11は、記憶部3の請求遅れ報告DBから、必要な請求遅れ報告レコードを取得する。
【0032】
分析部12は、請求遅れ報告DBに蓄積された請求遅れ報告レコードに基づいて、調剤薬局Phにおいて発生した請求遅れについて種々の分析を行う。
【0033】
[請求遅れ分析装置1の動作例]
以下、請求遅れ分析装置1の動作例について説明する。
図5は、請求遅れ分析装置1による、分析処理について説明するためのフローチャートである。
図5に示すフローチャートは、
図3のステップS2に対応している。
図5に示す分析処理は、例えば、所定の周期で行われてもよいし、請求遅れ分析システム100の管理者が要求するタイミングで行われてもよい。具体的には、分析処理は、一月に一回、請求遅れ報告レコードが調剤薬局Phから送られてきたタイミングで、実行されればよい。
【0034】
図5に示す分析処理は、請求遅れ分析システム100が設置される本部HQに対して、請求遅れ報告レコードを送信する複数の調剤薬局Phのそれぞれに対して行われる(
図1参照)。
【0035】
ステップS11において、請求遅れ分析装置1は、請求遅れの理由分析処理を行う。請求遅れの理由分析処理は、請求遅れ報告レコードに含まれる理由文に基づいて行われる。
【0036】
ステップS12において、請求遅れ分析装置1は、請求遅れを考慮したキャッシュフローのシミュレーション処理を行う。
【0037】
ステップS13において、請求遅れ分析装置1は、請求遅れを考慮した利益額のシミュレーション処理を行う。
【0038】
ステップS14において、請求遅れ分析装置1は、処理対象の調剤薬局Phにおける在庫変動量のシミュレーション処理を行う。在庫変動量とは、調剤薬局Phにある薬剤在庫の一月毎の変動量である。
【0039】
分析処理の各ステップの詳細については、以下説明する。
【0040】
(請求遅れの理由分析処理)
図6は、請求遅れの理由分析処理について説明するためのフローチャートである。
【0041】
ステップS21において、請求遅れ分析装置1は、請求遅れ報告レコードのそれぞれから、理由文を抽出する。
【0042】
ステップS22において、請求遅れ分析装置1は、全ての理由文を単語に分ける。なお、請求遅れ分析装置1は、理由文を、単語でなく、文節に分けてもよい。本開示において、請求遅れ分析装置1が理由文を単語または文節に分けることを、単に請求遅れ分析装置1が理由文を単語に分けると記載することがある。
【0043】
また、請求遅れ分析装置1は、理由文を単語に分ける際、医療関係の用語を含む辞書を参照してもよい。これにより、一般的ではない用語、例えば業界用語および略称などが理由文に含まれている場合でも、的確に単語に分けることができる。具体的には、診療報酬明細書(レセプト)の作成に用いられるレセプトコンピュータの略称である、レセコンなどの単語を含む辞書が挙げられる。
【0044】
そして、ステップS23において、請求遅れ分析装置1は、全ての理由文に含まれる単語を計数する。ステップS23において、請求遅れ分析装置1は、分けた単語を品詞で分類し、計数してもよい。
【0045】
次に、ステップS24において、請求遅れ分析装置1は、計数結果が閾値回数以上である単語を抽出する。閾値回数は、請求遅れ分析システム100の管理者などが予め設定する値である。閾値回数は、例えばステップS21において請求遅れ分析装置1が取得する理由文の数などに基づいて、適宜設定されればよい。
【0046】
次に、ステップS25において、請求遅れ分析装置1は、抽出された単語群およびそれぞれの単語の計数結果に基づいて、所定の統計処理を行う。所定の統計処理の例としては、相関分析、クラスター分析、および多次元尺度構成法などが挙げられる。
【0047】
これにより、各単語の出現回数がある程度多く、かつ単語間の距離または類似度が互いに近い単語群によりクラスターが形成される。それぞれのクラスターに含まれる単語群は、1つの理由文に含まれる可能性が高い単語群である。クラスターの数は例えば請求遅れ分析システム100の管理者などが適宜設定してもよい。
【0048】
なお、単語間の距離とは、理由文に含まれる単語同士の距離を意味する。すなわち、「生年月日の欄に誤記あり。」という理由文において、単語「生年月日」と単語「欄」との距離は1である(助詞「の」はカウントしないものとする)。同様に、単語「生年月日」と単語「誤記」との距離は2である。
【0049】
類似度とは、2つ以上の異なる単語間における意味的な近さを示す度合いである。類似度は、例えば相関分析で算出される、2つ以上の異なる単語同士の相関係数で表される。または、類似度は、一の単語が、他方の単語と理由文においてどの程度一緒に使われているかを、機械学習などにより学習して得られた値で表されてもよい。
【0050】
なお、クラスター分析の際に、各単語が抽出された理由文が含まれる請求遅れ報告レコードを作成した調剤薬局Phを示す情報、請求遅れ報告レコードを作成した調剤薬局Phが存在する地域を示す情報、または、請求遅れ報告レコードが作成された時期(年月日など)を示す情報などを用いてクラスタリングを行ってもよい。これにより、例えば特定の医療施設、地域、または時期と関連性が高い請求遅れを抽出することができるようになる。
【0051】
ステップS26において、請求遅れ分析装置1は、このようにして得られたクラスターに基づいて、カテゴリを生成する。具体的には、請求遅れ分析装置1は、単語間の距離および類似度が近い単語群のうち、特定の条件を満たす単語群を、1つの請求遅れのカテゴリとする。特定の条件を満たすとは、例えば、クラスタリングの結果としての1つのクラスターに属している、または、異なるクラスターに属する単語群であっても、既存のカテゴリデータに分類されている請求遅れのカテゴリに対応する単語群であることを意味する。
【0052】
図7は、請求遅れのカテゴリ分類の例を示す図である。
図7には、13個のカテゴリが示されているが、これは一例であり、異なるカテゴリ数が生成されてもよい。
【0053】
以上の処理により、請求遅れ分析装置1は、既存の請求遅れ報告レコードに基づいてカテゴリを生成する。生成したカテゴリを示す情報は、記憶部3に記憶される。
【0054】
このような処理により、請求遅れ分析装置1は、記憶部3に記憶されている請求遅れ報告レコードに含まれる理由文が示す請求遅れの理由を、既存のカテゴリデータと同じカテゴリに分類できるだけでなく、新たなカテゴリを生成することもできる。新たなカテゴリとは、例えば既存のカテゴリとは一致しないカテゴリであって、例えば特定の医療施設、地域、または時期などに特有の請求遅れが含まれうる。具体的には、例えばある薬局の業務プロセスに不備がある場合、当該薬局において多くの請求遅れが生じることがあり、この場合、請求遅れ分析装置1は、当該薬局が診療報酬明細書を生成したことを新たな請求遅れの理由のカテゴリに設定することができる。または、ある地域で局地的に感染症が流行している場合、当該地域に存在する薬局には当該感染症関連の請求遅れが増大することがあり、この場合、請求遅れ分析装置1は、当該地域の薬局が診療報酬明細書を生成したことを新たな請求遅れの理由のカテゴリに設定することができる。さらに、例えば診療報酬改定の影響により診療報酬の算定ルールに関する変化が生じたとき、診療報酬改定から所定期間において、変化に伴って増大する請求遅れの理由を既存のカテゴリとは別の新たなカテゴリに分類することも可能である。
【0055】
また、請求遅れ分析装置1は、クラスタリングの結果と既存のカテゴリデータとに基づいて、既存のカテゴリデータにおけるカテゴリ分類が的確であるか否かを判断してもよい。例えば、クラスタリングの結果と既存のカテゴリデータとがかけ離れている場合、クラスタリングの結果と既存のカテゴリ分類のいずれかが的確ではないと判断することができる。クラスタリングの結果と既存のカテゴリ分類のいずれかが的確ではないと判断した場合、請求遅れ分析装置1は、その判断結果を報知装置2を介して報知させてもよい。
【0056】
なお、請求遅れ分析装置1は、既存のカテゴリデータが他の請求遅れ分析システムにより生成されたものである場合、既存のカテゴリデータの生成時に用いられた請求遅れに含まれる単語群に関するデータを用いて学習し、学習の結果に基づいてカテゴリの分類を行ってもよい。または、請求遅れ分析システム100が過去の請求遅れ報告レコードを用いて過去にカテゴリ分類を行っていた場合、過去のカテゴリ分類の際に用いられた請求遅れに含まれる単語群に関するデータを用いて学習し、学習の結果に基づいてカテゴリの分類を行ってもよい。
【0057】
図6の説明に戻る。ステップS27において、請求遅れ分析装置1は、カテゴリ分類の結果に関するデータを報知装置2および記憶部3に出力する。記憶部3は、新たなカテゴリ分類に関するデータを記憶する。これにより、請求遅れ分析装置1における請求遅れの理由分析処理は完了する。
【0058】
以上説明したように、請求遅れ分析装置1は、記憶部3に蓄積された請求遅れ報告レコードに基づいて、請求遅れを所定数のカテゴリに分類することができる。請求遅れ分析装置1によるカテゴリ分類は、既存の請求遅れのカテゴリ分類を参考にしながら、請求遅れ報告レコードの理由文に含まれる単語をクラスタリングした結果、行われるものである。このように、請求遅れ分析装置1は、請求遅れ報告レコードに含まれる理由文が示す請求遅れを、様々なカテゴリに分類することができる。また、既存のカテゴリ分類が的確なものであるか否かを判断することもできる。
【0059】
また、請求遅れ分析装置1は、複数の調剤薬局Phで入力された数多くの請求遅れ報告レコードに基づいてカテゴリ分類を行うため、例えば特定の医療施設のみで入力された請求遅れ報告レコードに基づいてカテゴリ分類を行う場合と比較して、より精度が高いカテゴリ分類を行うことができる。
【0060】
また、請求遅れ分析装置1は、記憶部3に蓄積された請求遅れ報告レコードの請求遅れが、特定の医療施設、地域、または時期との関連性が高い場合、特定の医療施設、地域、または時期に対応する新たなカテゴリを設定することができる。このため、例えば特定の医療施設で人手不足により業務が停滞している場合、特定の地域である感染症が流行している場合、または診療報酬改定の影響で請求遅れが増大している場合などには、即時的かつ適切に請求遅れの理由のカテゴリ分類を行うことができる。これにより、請求遅れ分析装置1は、既存のカテゴリに分類される理由だけでなく、様々な理由を分析することができる。
【0061】
(キャッシュフローのシミュレーション処理)
次に、
図5のステップS12に対応する、キャッシュフローのシミュレーション処理について説明する。
【0062】
請求遅れ分析装置1は、記憶部3から、過去から現在までの売上および経費、ならびに、請求遅れにより当月中に請求できなかった未請求額等の月毎の情報を取得する。そして、請求遅れ分析装置1は、特定の月や季節と入金額および未請求額との相関関係、月毎の入金額および未請求額の変動量等を算出する。さらに、請求遅れ分析装置1は、算出結果に基づいて、今後の調剤薬局Phのキャッシュフローをシミュレートする。
【0063】
相関関係の算出方法や、算出結果に基づくキャッシュフローのシミュレーション方法については、既知の方法を適宜採用することができる。
【0064】
(利益額のシミュレーション処理)
次に、
図5のステップS13に対応する、利益額のシミュレーション処理について説明する。
【0065】
請求遅れ分析装置1は、上記説明したキャッシュフローのシミュレーション結果に基づいて、今後の調剤薬局Phの利益額をシミュレートする。利益額のシミュレーション方法については、既知の方法を適宜採用することができる。
【0066】
以上のようにして、請求遅れ分析装置1は、請求遅れに関する種々の分析を行うことができる。分析結果は、記憶部3に格納されるとともに報知装置2に出力され、報知装置2による報知処理に用いられる。以下では、報知装置2の構成および動作について説明する。
【0067】
(在庫変動量のシミュレーション処理)
次に、
図5のステップS14に対応する、在庫変動量のシミュレーション処理について説明する。在庫変動量とは、調剤薬局Phにある薬剤在庫の一月毎の変動量である。
【0068】
請求遅れ分析装置1は、記憶部3から、処理対象の調剤薬局Phの過去から現在までの月毎の在庫量を取得する。そして、請求遅れ分析装置1は、特定の月や季節と在庫量との相関関係、請求遅れの発生件数と在庫量との相関関係、月毎の在庫の変動量等を算出する。さらに、請求遅れ分析装置1は、算出結果に基づいて、今後の調剤薬局Phの在庫変動量をシミュレートする。
【0069】
相関関係の算出方法や、算出結果に基づく在庫変動量のシミュレーション方法については、既知の方法を適宜採用することができる。
【0070】
<報知装置2>
次に、報知装置2について説明する。
図8は、報知装置2の構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、報知装置2は、受信部21と、報知部22と、を備える。
【0071】
受信部21は、請求遅れ分析装置1から出力された請求遅れの分析結果に関する情報を受信する。
【0072】
報知部22は、例えば液晶ディスプレイなどの表示部などを有し、当該表示部を介して、請求遅れ分析システム100の管理者に対する報知を行う。なお、報知部22による報知は、表示部への表示に限られず、例えばスピーカーなどの音声出力部を介した音声の発出により行われてもよい。
【0073】
また、報知部22は、報知の内容によっては、調剤薬局Phの端末装置TEを介して、調剤薬局Phの担当者に対して報知を行う(
図1参照)。
【0074】
以下では、報知装置2による報知処理について詳細に説明する。報知の対象についても各処理において説明する。
【0075】
(報知処理)
報知装置2による報知処理によって報知される内容は、例えば、(1)請求遅れの理由のカテゴリ分類、(2)請求遅れの月毎の件数の推移、(3)請求遅れに関するアラート、(4)適正在庫量のシミュレーション結果、(5)キャッシュフローのシミュレーション処理、(6)利益額のシミュレーション結果、(7)調剤薬局へのアラート、などの種々の内容を含む。以下、それぞれについて説明する。
【0076】
(1)請求遅れの理由のカテゴリ分類に関する報知
報知装置2は、請求遅れ分析装置1によって行われた請求遅れの理由のカテゴリ分類の結果を、表示部を介して請求遅れ分析システム100の管理者に対して報知する。簡単のため、以下では請求遅れの理由のカテゴリ分類の結果を、単に分類結果と記載する。
【0077】
分類結果の報知は、例えば、月末や月初めなどの所定のタイミング、または、請求遅れ分析システム100の管理者などが要求したタイミングで行われればよい。報知装置2がカテゴリ分類の結果を表示する際には、例えば
図7に示すような一覧表の形式で表示すればよい。
【0078】
報知装置2は、例えば、請求遅れ分析装置1による請求遅れの理由のカテゴリ分類の結果を表示する。これにより、請求遅れ分析システム100の管理者などは、どのような理由で請求遅れが生じているかを確認することができる。
【0079】
(2)請求遅れの月毎の件数の推移に関する報知
また、報知装置2は、請求遅れの月毎の件数の推移を、表示部を介して請求遅れ分析システム100の管理者に対して報知する。請求遅れの件数の推移に関する報知は、分類結果などと同様に、例えば、月末や月初めなどの所定のタイミング、または、請求遅れ分析システム100の管理者などが要求したタイミングで行われればよい。
【0080】
図9は、ある調剤薬局の店舗における、請求遅れの月毎の件数の推移に関する表示画面の一例を示す図である。
図9には、請求遅れの件数の推移とともに、入金額(入金予定額)の推移が示されている。このような表示画面により、請求遅れ分析システム100の管理者などは、調剤薬局毎の請求遅れの件数の推移と、請求遅れによる入金額の影響とを把握することができる。
【0081】
なお、
図9に示す例は、調剤薬局の一店舗に関する表示画面であったが、全店舗における請求遅れの発生件数の合計や、あるエリア内の調剤薬局における請求遅れの発生件数の合計などを表示してもよい。
【0082】
(3)請求遅れに関するアラート
報知装置2は、所定の条件が満たされた場合に、表示部を介して請求遅れ分析システム100の管理者に対してアラートを出す。所定の条件とは、例えば請求遅れ分析システム100の管理者などにより設定される条件である。所定の条件の1つの例としては、例えば、所定の期間の請求遅れ報告レコードのうち、特定のカテゴリの請求遅れに対応する理由文を含む請求遅れ報告レコードの数が、所定数より多いか否かである。所定の条件の他の例としては、例えば、所定の期間の請求遅れ報告レコードのうち、特定の調剤薬局Phが入力した請求遅れ報告レコードの数が、所定数より多いか否かである。
【0083】
報知装置2が報知を行うか否かを判断するための所定の条件は、予め複数設定されており、報知装置2は、いずれか1つの条件に基づいて報知を行うか否かを判断してもよいし、複数の条件の組み合わせにより報知を行うか否かを判断してもよい。例えば、報知装置2は、特定の調剤薬局Phにおいて、請求遅れの理由文を含む請求遅れ報告レコードの数が所定数以上となったカテゴリがある場合に、当該カテゴリに分類される請求遅れに関する報知を行うようにしてもよい。
【0084】
報知装置2による報知の内容について、具体例を挙げて説明する。例えば、所定の条件として、所定の期間内に、特定の薬局において、計数結果が所定数より多いカテゴリであることが設定されているとする。この場合、報知装置2は、所定の期間内における特定の薬局Aで生成された請求遅れ報告レコードのカテゴリ毎に計数し、計数結果が所定数より多いカテゴリを抽出する。この場合、報知装置2は、例えば「薬局Aにおいて、○○のカテゴリによる請求遅れが多発しています。」など、計数結果が所定数より多いカテゴリについての報知を行う。
【0085】
なお、所定の条件は、より詳細に設定可能であってもよい。例えば、
図7に示す各カテゴリの要素(分類名、原因、理由文の例)を用いて条件を設定可能であってもよい。例えば、所定の条件として、特定の薬局で生成された先月1ヶ月分の請求遅れ報告レコードのうち、それぞれの請求遅れ報告レコードが含む理由文の請求遅れが「薬歴未作成」、かつ原因が「薬局」であるレコードの件数が所定数以上であることが設定されているとする(
図7参照)。この場合、報知装置2は、特定の薬局Aで入力された先月1ヶ月分の請求遅れ報告レコードのうち、理由が「薬歴未作成」、かつ原因が「薬局」であるレコードを計数し、計数結果が所定数より多い場合に、報知を行う。報知の内容は、例えば、「薬局Aでは、薬歴未作成による請求遅れが多く発生しています。」などである。報知の内容は、例えば請求遅れ分析システム100の管理者などが所定の条件とともに設定すればよい。なお、報知装置2による報知は、上記の例のようなメッセージ以外にも、例えば特定の薬局に特定の理由による請求遅れが多いことを示すアイコンの表示、または、特定の薬局に特定の理由による請求遅れが多いことを示す特定のアラーム音の再生などにより行われてもよい。
【0086】
また、所定の条件として、診療報酬改定後の1ヶ月間における請求遅れ報告レコードのうち、それぞれの請求遅れ報告レコードが含む理由文の分類名が「算定方法不明」であるレコードの件数が所定数以上であることが設定されているとする。この場合、報知装置2は、全ての調剤薬局Phで入力された、診療報酬改定後の1ヶ月間における請求遅れ報告レコードのうち、それぞれの請求遅れ報告レコードが含む理由文の分類名が「算定方法不明」であるレコードを計数し、報知装置2は、計数結果が所定数より多い場合に報知を行う。報知の内容は、例えば、「診療報酬改定により、算定ルールが分からないケースが増えています。各薬局に注意を呼びかけて下さい。」などである。
【0087】
なお、上述した例では、報知の内容は、請求遅れ分析システム100の管理者などが所定の条件とともに設定しておくとした。しかしながら、例えば、過去に設定された所定の条件と、当該条件に基づいて行われた報知の内容とを教師データとして学習モデルを生成しておき、新たに所定の条件に基づく報知を行う場合に、学習モデルに基づいて適切な報知の内容を生成するようにしてもよい。この場合、請求遅れ分析システム100の管理者などが報知の内容を設定する労力を低減させることができる。
【0088】
さらに、報知装置2は、所定の条件に基づく報知を行うとともに、請求遅れを解消するための解消方法を提示してもよい。解消方法の提示は、例えば特定の薬局Aにおいて薬歴未作成による請求遅れが多く生じている場合、「薬局Aにおいて薬歴を確実に作成するよう注意してください。」などのメッセージの表示により行われる。解消方法は、例えば請求遅れ分析システム100の管理者などにより、請求遅れ毎に予め設定されていてもよいし、請求遅れと過去に提示された解消方法とを教師データとして予め生成された学習モデルに基づいて、所定の条件に基づく報知が行われるタイミングで生成されるようにしてもよい。
【0089】
(4)キャッシュフローのシミュレーション結果に関する報知
報知装置2は、調剤薬局毎に行われた、キャッシュフローのシミュレーション結果を、表示部を介して請求遅れ分析システム100の管理者に対して報知する。この際、報知装置2は、シミュレーションのために用いた、過去から現在までの売上、経費、および未請求額に関する情報を、シミュレーション結果とともに報知してもよい。これにより、請求遅れ分析システム100の管理者などは、これまでの請求遅れによるキャッシュフローへの影響と、今後の調剤薬局毎のキャッシュフローの予測とを把握することができる。
【0090】
具体的には、報知装置2は、例えば請求遅れによるキャッシュフローへの影響金額(以下、単に影響金額と記載)を、以下のように算出する。
(請求遅れにより支払われなかった報酬額)×(請求遅れの件数)=(影響金額)
この式において、パラメータ(請求遅れにより支払われなかった報酬額)は、例えば、ある調剤薬局において過去に請求遅れにより支払われなかった報酬額の平均値である。
【0091】
(5)利益額のシミュレーション結果に関する報知
報知装置2は、調剤薬局毎に行われた、利益額のシミュレーション結果を、表示部を介して請求遅れ分析システム100の管理者に対して報知する。この際、報知装置2は、シミュレーションのために用いた、過去から現在までの利益額の変化に関する情報を、シミュレーション結果とともに報知してもよい。これにより、請求遅れ分析システム100の管理者などは、これまでの請求遅れによるキャッシュフローへの影響と、今後の調剤薬局毎のキャッシュフローの予測とを把握することができる。
【0092】
具体的には、報知装置2は、調剤薬局毎に、例えば影響金額を考慮した第1利益額と、影響金額を考慮しない第2利益額と、を当該調剤薬局の過去の利益額などに基づいて算出し、第1利益額と第2利益額との差分を、利益改善目標金額として報知する。利益改善目標金額とは、請求遅れが解消されることにより、当該調剤薬局の利益額を改善できる金額をシミュレーションしたものである。この場合、利益改善目標金額の報知を受けた管理者は、当該調剤薬局に対して、利益改善目標金額を通知し、当該目標金額を達成できるように要求することにより、調剤薬局における、報酬遅れによる利益額への影響を最小限に抑えることができる。
【0093】
(6)適正在庫量のシミュレーション結果に関する報知
報知装置2は、調剤薬局毎に行われた、適正在庫量のシミュレーション結果を、表示部を介して請求遅れ分析システム100の管理者に対して報知する。この際、報知装置2は、シミュレーションのために用いた、過去から現在までの在庫変動量に関する情報を、シミュレーション結果とともに報知してもよい。これにより、請求遅れ分析システム100の管理者などは、これまでの請求遅れによる在庫量への影響と、今後の調剤薬局毎の適正在庫量とを把握することができる。
【0094】
具体的には、報知装置2は、調剤薬局毎に、例えば影響金額を考慮した第1在庫金額と、影響金額を考慮しない第2在庫金額と、を当該調剤薬局の過去の経費などに基づいて算出し、第1在庫金額と第2在庫金額との差分を、在庫削減目標金額として報知する。なお、在庫金額とは、調剤薬局における、在庫購入のための経費に相当する。また、在庫削減目標金額とは、請求遅れが解消されることにより、当該調剤薬局の在庫状況を改善できる金額をシミュレーションしたものである。この場合、在庫削減目標金額の報知を受けた管理者は、当該調剤薬局に対して、在庫削減目標金額を通知し、当該目標金額を達成できるように在庫調整させることにより、調剤薬局における、報酬遅れによる在庫への影響を最小限に抑えることができる。
【0095】
報知装置2による上述の(4)~(6)の報知は、分類結果などと同様に、例えば、月末や月初めなどの所定のタイミング、または、請求遅れ分析システム100の管理者などが要求したタイミングで行われればよい。
【0096】
(7)調剤薬局へのアラートに関する報知
報知装置2は、所定の条件が満たされた場合に、調剤薬局Phの端末装置TEを介して調剤薬局Phの担当者に対して、アラートを出す。具体例を挙げると、例えば過去に請求遅れの原因となった患者がある調剤薬局を訪れたとき、担当者が端末装置TEを介して当該患者に関する情報を入力すると、報知装置2はその情報に基づいて、担当者に対してアラートを出す。アラートは、例えば「○○さんは前回保険証を忘れています。保険証の提示に留意してください。」メッセージの表示、または担当者に対して注意を促すランプの点灯などによって行われればよい。この場合、報知装置2は、どのような場合に調剤薬局へのアラートを行うかの条件を示す情報を保有しており、条件が満たされた場合に自動的に調剤薬局へのアラートを行うようにすればよい。条件を示す情報は、例えば請求遅れ分析システム100の管理者などによって、予め設定されていればよい。
【0097】
報知装置2がアラートを出す条件としては、上記に例示した、患者の保険証忘れなど、患者に起因する条件の他、調剤薬局に起因する条件が設定されてもよい。調剤薬局に起因する条件の例としては、担当者の記入漏れ、記入内容の間違い、などが挙げられる。
【0098】
また、報知装置2は、アラートとともに、そのアラートに関して生じうる請求遅れの回収難易度に関する情報を報知してもよい。回収難易度は、ある請求遅れに関し、改めて審査支払機関への請求を行うために、その請求遅れが起きた原因を解消する難易度を示す度合いである。回収難易度は、例えば「高」、「低」の2段階で表される。回収難易度「高」は、請求遅れが患者に起因するものであった場合に該当し、回収難易度「低」は、請求遅れが調剤薬局に起因するものであった場合に該当する。なお、患者に起因する請求遅れの回収難易度が「高」である理由は、調剤薬局チェーンの本部HQにとって、患者の行動をコントロールしにくいからである。また、薬局に起因する請求遅れの回収難易度が「低」である理由は、調剤薬局内部で生じた問題は、比較的対応およびコントロールしやすいからである。
【0099】
なお、回収難易度は、「高」、「中」、「低」の3段階、またはより多くの段階で表されてもよい。
【0100】
また、調剤薬局へのアラートは、例えばある調剤薬局Phにおいて、ある月の特定の理由の請求遅れの件数が、所定の閾値を超えた場合などに行われる。この場合、アラートは、月末などの特定のタイミングで行われればよい。
【0101】
以上説明したように、報知装置2は、請求遅れ分析装置1が行った請求遅れのカテゴリ分類の結果を表示する。これにより、請求遅れ分析装置1の管理者などは、記憶部3に蓄積された請求遅れ報告レコードの請求遅れが、特定の医療施設、地域、または時期との関連性が高い場合、特定の医療施設、地域、または時期に対応する新たなカテゴリが設定されたことを認識することができる。このため、請求遅れ分析装置1の管理者などは、例えば特定の医療施設で人手不足により業務が停滞している、特定の地域である感染症が流行している、または診療報酬改定後、改正の影響で請求遅れが増大している、などの問題を認識しやすくなる。
【0102】
また、報知装置2は、記憶部3に蓄積された請求遅れ報告レコードの計数結果が所定の条件を満たした場合に、所定の条件に対応する報知を行う。このため、請求遅れ分析装置1の管理者などは、予め条件を設定することにより、請求遅れを低減するためには留意すべき点を用意に把握することができる。
【0103】
さらに、報知装置2は、所定の条件に基づく報知とともに、請求遅れを解消するための解消方法を提示するため、請求遅れ分析装置1の管理者などは、請求遅れを低減するためにどのような対策を行えばよいかを容易に把握することができる。
【0104】
<作用、効果>
以上説明したように、本開示の請求遅れ分析システムによれば、過去の請求遅れを理由によりカテゴリに分類して報知することができる。また、本開示の請求遅れ分析システムによれば、請求遅れに関する情報に基づき、今後の請求遅れの発生予測、請求遅れによる影響を考慮した医療施設のキャッシュフローや利益額の予測、請求遅れを考慮した適正な在庫量の予測など、種々の報知を行うことができる。さらに、医療施設の端末装置に対して、突発的なアラートを行うことも可能である。
【0105】
このため、本開示の請求遅れ分析システムによれば、請求遅れに関し、様々な知見を得ることができるとともに、請求遅れの理由を解消するように改善を図ることが容易となる。これにより、請求遅れ分析システムを導入した医療施設グループ全体で請求遅れの件数を低減することができるようになる。
【0106】
<変形例>
以上の説明では、本開示の一実施の形態について説明した。本開示は上述した実施の形態には限定されず、下記のような種々の変形が行われてもよい。
【0107】
上述した実施の形態では、請求遅れ分析装置1が、記憶部3に蓄積された請求遅れ報告レコードに基づいて、請求遅れを所定数のカテゴリに分類する動作について説明したが、請求遅れ分析装置1は、例えば調剤薬局Phの端末装置TEにおいて、請求遅れ報告レコードの理由文が入力されている最中に、当該入力途中の理由文をネットワークNWを介して実時間で取得し、取得した理由文が示す請求遅れがどのカテゴリに対応するかを判断してもよい。この際、請求遅れ分析装置1は、調剤薬局Phにおいて入力されている理由文が、判断したカテゴリにふさわしいものでない場合には、理由文を修正すべきであることを示すメッセージなどを、ネットワークNWを介して調剤薬局Phの端末装置TEに送信し、表示させるようにしてもよい。また、請求遅れ分析装置1は、調剤薬局Phにおいて入力されている理由文が属するカテゴリに応じて、請求遅れ報告レコードの作成に必要な情報を提示してもよい。具体的には、請求遅れ分析装置1は、「今入力中の理由文は、○○カテゴリの請求遅れに該当すると思われます。○○カテゴリの請求遅れ報告には、××のデータが必要です。」などのメッセージを端末装置TEに表示させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本開示は、診療報酬明細書の請求遅れを分析する請求遅れ分析システムに有用である。
【符号の説明】
【0109】
100 請求遅れ分析システム
1 請求遅れ分析装置
11 取得部
12 分析部
2 報知装置
21 受信部
22 報知部
3 記憶部