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特開2023-178673無菌水の再利用方法及び無菌水を再利用する無菌充填機
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178673
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】無菌水の再利用方法及び無菌水を再利用する無菌充填機
(51)【国際特許分類】
   B67C 3/00 20060101AFI20231211BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20231211BHJP
   B65B 55/24 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B67C3/00 A
B65B55/04 C
B65B55/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091487
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000157946
【氏名又は名称】岩井機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】早川 睦
(72)【発明者】
【氏名】栗山 貴義
【テーマコード(参考)】
3E079
【Fターム(参考)】
3E079AA10
3E079AB01
3E079BB05
3E079EE01
3E079EE13
3E079FF03
(57)【要約】
【課題】無菌充填機に使用する無菌水のエネルギーの無駄を省く無菌充填機に使用される無菌水の再利用方法、及び無菌水を再利用する無菌充填機を提供する。
【解決手段】搬送される容器を殺菌し、殺菌された容器に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填し、内容物が充填された容器を殺菌された蓋材により無菌雰囲気で密封する無菌充填機において、殺菌、充填及び密封を行う各部をチャンバーにより遮蔽し、チャンバー内に供給される無菌水を回収し、回収された無菌水を熱交換装置に供給し、無菌水を製造するための殺菌前の水と熱交換する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される容器を殺菌し、
殺菌された前記容器に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填し、
前記内容物が充填された前記容器を殺菌された蓋材により無菌雰囲気で密封する無菌充填機において、
前記殺菌、前記充填及び前記密封を行う各部をチャンバーにより遮蔽し、
前記チャンバー内に供給される無菌水を回収し、
回収された前記無菌水を熱交換装置に供給し、前記無菌水を製造するための殺菌前の水と熱交換する無菌水の再利用方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無菌水の再利用方法において、
前記チャンバー内に供給される前記無菌水の温度が60℃以上、100℃以下である無菌水の再利用方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の無菌水の再利用方法において、
前記無菌水が、前記無菌充填機の稼働前に前記チャンバー内を洗浄又は殺菌を行うときに使用される無菌水の再利用方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の無菌水の再利用方法において、
前記無菌水が、前記無菌充填機の稼働時に殺菌された容器のリンス又は殺菌された蓋材のリンスの少なくともいずれか一方に使用される無菌水の再利用方法。
【請求項5】
搬送される容器を殺菌する殺菌装置、
前記殺菌装置により殺菌された前記容器に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填する充填装置、
前記内容物が充填された前記容器を殺菌された蓋材により無菌雰囲気で密封する密封装置、
前記殺菌装置、前記充填装置及び前記密封装置を遮蔽するチャンバー、
前記チャンバー内に供給される無菌水を回収する無菌水回収装置、及び
前記無菌水回収装置により回収された前記無菌水を、前記無菌水を製造するための殺菌前の水と熱交換する熱交換装置を備える無菌水を再利用する無菌充填機。
【請求項6】
請求項5に記載の無菌水を再利用する無菌充填機において、
前記チャンバー内に供給される前記無菌水の温度が60℃以上、100℃以下であるように構成される無菌水を再利用する無菌充填機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、PETボトル等の容器に飲料を充填する無菌充填機において、無菌充填機の洗浄に使用する洗浄液又無菌充填機の殺菌に使用する殺菌液をすすぐ無菌水及び殺菌後の容器又はキャップをリンスする無菌水を再利用する無菌水の再利用方法及び無菌水を再利用する無菌充填機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料の無菌充填機において、ボトル等の容器に充填する飲料の種類を、例えば今まで茶飲料であったものをミルクコーヒーに切り替える際は、この無菌充填機の飲料供給系配管内を、まずCIP(Cleaning in Place)を行い、次にSIP(Sterilizing in Place)を行っている(特許文献1参照)。
【0003】
CIPは、飲料充填流路の管路内から充填機の充填ノズルに至るまでの流路に、例えば水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加した洗浄液を流した後に、水に酸性薬剤を添加した洗浄液を流すことにより行われる。これにより、飲料充填流路内に付着した前回の飲料の残留物等が除去される(特許文献1、2、3参照)。
【0004】
SIPは、例えば、上記CIPで洗浄した飲料充填流路内に蒸気や熱水等を流すことによって行われる。これにより、飲料充填流路内が殺菌され、無菌状態とされる(特許文献1参照)。
【0005】
無菌充填機には、容器を殺菌する殺菌装置、容器に飲料を自動的に充填する充填機及び容器を蓋材により密封する密封装置が配置され、殺菌装置、充填機及び密封装置は、無菌雰囲気に維持することができるチャンバーで囲まれて、外部から遮蔽されている。充填機及び密封装置を遮蔽するチャンバーの内部には、前回の充填作業で充填した飲料の飛沫等が付着しているので、充填する飲料の種類を切り替える場合、前回の充填作業でチャンバーの内壁及びチャンバー内の設備の外面に付着した飲料の飛沫等をチャンバー内から除去するため、チャンバー内の洗浄が行われる。チャンバー内の洗浄は、例えば、洗浄剤を含む洗浄液をチャンバー内にシャワー状に噴霧することにより行われる(特許文献4参照)。
【0006】
さらに、飲料の種類を切り替える際の各種作業中に微生物がチャンバー内に侵入するおそれもあるので、チャンバー内の殺菌も行われる。チャンバー内の殺菌は、例えば、過酢酸、過酸化水素等の殺菌剤を含む殺菌液をミスト状又はシャワー状にしてチャンバー内に供給した後、ホットエアをチャンバー内に吹き込んで残留した殺菌液を乾燥させることにより行われる(特許文献4参照)。
【0007】
チャンバー内の洗浄又はチャンバー内の殺菌を行う際、洗浄液又は殺菌液の洗い流しのために無菌水がチャンバー内に噴霧される。無菌充填機には、必要な無菌水を製造するため,水を熱殺菌する殺菌装置が備えられる(特許文献5参照)。
【0008】
上述のように、無菌充填機が稼働する前に行うチャンバー内の洗浄又は殺菌に無菌水が使用される、また、無菌充填機が稼働すると、無菌充填機において容器及び蓋材が殺菌される。殺菌された容器及び蓋材に付着する殺菌液を洗い流すために無菌水が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-22600号公報
【特許文献2】特開2007-331801号公報
【特許文献3】特開2000-153245号公報
【特許文献4】特許第6056930号公報
【特許文献5】特開2010-189034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
無菌充填機では、無菌充填機を構成するチャンバー内の洗浄に使用する洗浄液又はチャンバー内の殺菌に使用する殺菌液をすすぐ無菌水、及び殺菌後の容器又はキャップをリンスする無菌水が必要であり、無菌水が大量に使用される。チャンバー内の洗浄又は殺菌を行う際、洗浄液若しくは殺菌液の洗い流しのために無菌水がチャンバー内に噴霧される。無菌充填機の稼働前に行われるチャンバー内の洗浄又は殺菌を行う際に使用する無菌水、及び無菌充填機の稼働時に使用される殺菌後の容器内の洗浄、殺菌後のキャップの洗浄並びに飲料充填後の容器口部外面の洗浄に使用される無菌水を製造するために、容器に充填する飲料を殺菌する殺菌装置以外に無菌水を製造する殺菌装置が必要である。
【0011】
チャンバー内の洗浄又は殺菌を行うために、チャンバー内に供給される大量の無菌水を、使用後にそのまま排出することは無駄である。しかし、洗浄後の無菌水に含まれる殺菌剤を分解し、殺菌剤を分解した水を再度殺菌することは方法が煩雑であり、装置も付加しなければならない。
【0012】
無菌充填機の稼働時及び稼働前にチャンバーに供給される無菌水を、使用後にそのまま排出するのはエネルギーの無駄となる。無菌充填機のチャンバーに供給される無菌水をエネルギーの無駄とならないように、再利用する必要があり、使用される無菌水を再利用する無菌充填機が求められている。
【0013】
本開示は、無菌充填機に使用する無菌水のエネルギーの無駄を省く、無菌充填機に使用される無菌水の再利用方法、及び無菌水を再利用する無菌充填機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示に係る無菌水の再利用方法は、搬送される容器を殺菌し、殺菌された前記容器に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填し、前記内容物が充填された前記容器を殺菌された蓋材により無菌雰囲気で密封する無菌充填機において、前記殺菌、前記充填及び前記密封を行う各部をチャンバーにより遮蔽し、前記チャンバー内に供給される無菌水を回収し、回収された前記無菌水を熱交換装置に供給し、前記無菌水を製造するための殺菌前の水と熱交換する。
【0015】
また、本開示に係る無菌水の再利用方法において、前記チャンバー内に供給される前記無菌水の温度が60℃以上、100℃以下であると好適である。
【0016】
また、本開示に係る無菌水の再利用方法において、前記無菌水が、前記無菌充填機の稼働前に前記チャンバー内を洗浄又は殺菌を行うときに使用されると好適である。
【0017】
また、本開示に係る無菌水の再利用方法において、前記無菌水が、前記無菌充填機の稼働時に殺菌された容器のリンス又は殺菌された蓋材のリンスの少なくともいずれか一方に使用されると好適である。
【0018】
本開示に係る無菌水を再利用する無菌充填機は、搬送される容器を殺菌する殺菌装置、前記殺菌装置により殺菌された前記容器に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填する充填装置、前記内容物が充填された前記容器を殺菌された蓋材により無菌雰囲気で密封する密封装置、前記殺菌装置、前記充填装置及び前記密封装置を遮蔽するチャンバー、前記チャンバー内に供給される無菌水を回収する無菌水回収装置、及び前記無菌水回収装置により回収された前記無菌水を、前記無菌水を製造するための殺菌前の水と熱交換する熱交換装置を備えている。
【0019】
また、本開示に係る無菌水を再利用する無菌充填機において、前記チャンバー内に供給される前記無菌水の温度が60℃以上、100℃以下であるように構成されると好適である。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、無菌充填機の稼働前にチャンバー内の洗浄に使用する洗浄液又はチャンバー内の殺菌に使用する殺菌液の洗い流しのためにチャンバー内に供給される無菌水、又は無菌充填機の稼働時に殺菌される容器若しくは蓋材をリンスするためにチャンバー内に供給される無菌水と、無菌水を製造するために供給される殺菌前の水を熱交換することによりチャンバー内に供給される無菌水を再利用し、チャンバー内に供給される無菌水を無駄に排出することなく、エネルギーの利用効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の実施の形態に係る無菌充填機の概略を示す平面図である。
図2A】本開示の実施の形態に係る無菌充填機の加熱部の工程に供給されるプリフォームを示す。
図2B】上記無菌充填機の加熱部の工程のうち、プリフォーム加熱工程を示す。
図2C】上記無菌充填機の成形部の工程のうち、ブロー成形工程を示す。
図2D】上記無菌充填機の成形部の工程のうち、容器取り出し工程を示す。
図2E-1】上記無菌充填機の殺菌部の工程のうち、容器をトンネルにより遮蔽して行う殺菌剤ガス吹き付け工程を示す。
図2E-2】殺菌剤ガス吹き付けノズルを容器に挿入して行う殺菌剤ガス吹き付け工程を示す。
図2F-1】上記無菌充填機のリンス部の工程のうち、容器が正立状態での無菌水リンス工程を示す。
図2F-2】容器が倒立状態での無菌水リンス工程を示す。
図2G】上記無菌充填機の充填部の工程のうち、充填工程を示す。
図2H】上記無菌充填機の充填部の工程のうち、密封工程を示す。
図3】本開示の実施の形態に係る無菌充填機のチャンバー内の洗浄又は殺菌に使用するために供給される無菌水の回収装置及び熱交換装置を示す。
図4】本開示の実施の形態に係る無菌充填機のリンス装置チャンバーに供給される無菌水の回収装置及び熱交換装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1に本開示の実施の形態に係る無菌充填機を示す。供給されたプリフォームを加熱するプリフォームの加熱装置、加熱されたプリフォームを容器に成形する成形装置、成形された容器の検査装置、容器を殺菌する殺菌装置、殺菌された容器を無菌水によりリンスするリンス装置、リンスされた容器に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填する充填装置、内容物が充填された容器を殺菌された蓋材により無菌雰囲気で密封する密封装置及び密封された容器を排出する排出装置からなる無菌充填機であって、各装置を遮蔽するチャンバー内に供給される無菌水を製造する無菌水製造装置、各チャンバーに供給された無菌水を回収する無菌水回収装置、回収された無菌水を無菌水製造装置に供給される水と熱交換する熱交換装置を備える無菌充填機の概要を図1により説明し、各装置の詳細を図2Aから図2Hにより説明する。この実施の形態によれば、無菌充填機の各チャンバー内の洗浄又は殺菌のために使用する無菌水、及び殺菌された容器又は蓋材のリンスに使用される無菌水を未殺菌状態の水と熱交換することで再利用し、エネルギー消費を減少させることができる。
【0024】
(実施の形態の概要)
図1に示すように、実施の形態に係る無菌充填機は、プリフォーム1を供給するプリフォーム供給装置4、プリフォーム1を容器2に成形する温度に加熱する加熱装置6、加熱されたプリフォーム1を容器2に成形する成形装置10、成形された容器2を検査する検査ホイール14、成形された容器2を殺菌する殺菌装置17、殺菌された容器2をリンスするリンス装置19、リンスされた容器2に殺菌された内容物を無菌雰囲気で充填する充填装置21、密封部材である蓋材3を殺菌する蓋材殺菌装置31、内容物が充填された容器2を殺菌された蓋材3により無菌雰囲気で密封する密封装置24、密封された容器2を排出コンベヤ30に載置する排出装置28及び排出コンベヤ30により容器2を非無菌ゾーンに排出する排出部を備える。ここで、検査ホイール14は備えなくても構わない。
【0025】
加熱装置6は加熱装置チャンバー7、成形装置10及び検査ホイール14は成形装置チャンバー11、殺菌装置17は殺菌装置チャンバー18、リンス装置19はリンス装置チャンバー20、充填装置21は充填装置チャンバー23、密封装置24は密封装置チャンバー25、排出装置28は排出装置チャンバー29により各々遮蔽されている。蓋材殺菌装置31もチャンバーにより遮蔽されている。殺菌装置17で発生する殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が成形装置10に流入しないように、成形装置チャンバー11と殺菌装置チャンバー18の間には雰囲気遮断チャンバー16が設けられている。殺菌装置チャンバー18で発生する殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物は、雰囲気遮断チャンバー16が排気されることで、成形装置チャンバー11内に流入することはない。ここで、加熱装置6と成形装置10は単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。また、蓋材殺菌装置31と密封装置24も単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。さらに、密封装置24と排出装置28も単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。
【0026】
無菌充填機を稼働する前に、各チャンバー内の洗浄を行い、さらに各チャンバー内の殺菌を行う。各チャンバー内の洗浄には洗浄液、殺菌には殺菌液が使用され、各チャンバー内に噴霧される。噴霧された洗浄液又は殺菌液を洗い流すために各チャンバー内に無菌水が供給される。図1に示すように、水供給タンク33から無菌水製造装置35に水を供給し、供給された水を無菌水製造装置35により加熱し殺菌することで無菌水が製造される。製造された無菌水は無菌水供給配管36により、殺菌装置チャンバー18,リンス装置チャンバー20、充填装置チャンバー23、密封装置チャンバー25、排出装置チャンバー29及び蓋材殺菌装置31を遮蔽するチャンバーに供給される。各チャンバーに供給される無菌水は、洗浄効果及び殺菌効果を高めるために加熱されている。
【0027】
殺菌装置チャンバー18及びリンス装置チャンバー20は内容物により汚染の懸念がないため洗浄しなくても構わない。また、洗浄後の洗浄液の洗い流しは無菌水でなくても構わない。殺菌装置チャンバー18は無菌充填機稼働中に殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が噴霧されるため、無菌充填機の稼働前に殺菌装置チャンバー18内を殺菌しなくても構わない。
【0028】
各チャンバーに供給される無菌水は、洗浄液又は殺菌液を洗い流した後に回収される。回収される無菌水は無菌水回収配管37により回収され、熱交換装置34により、水供給タンク33から供給される水と熱交換される。無菌水回収配管37により回収される無菌水は、タンクに貯留された後に熱交換されても構わない。熱交換装置34は無菌水製造装置35に組み込まれても構わない。
【0029】
無菌充填機の稼働前に、チャンバー内の洗浄又は殺菌のために使用される無菌水は、回収され、熱交換された後に排出されても構わない。無菌充填機を稼働する前に、熱交換された後の無菌水を密封された容器2の外面を洗浄する洗浄装置の洗浄に使用しても構わない。また、無菌水製造装置35に供給し、無菌水製造のための水として使用しても構わない。
【0030】
無菌充填機の稼働時に、リンス装置チャンバー20又は蓋材殺菌装置31のチャンバーに供給され、殺菌後の容器2又は蓋材3の殺菌後のリンスに使用された無菌水は回収され、熱交換された後に密封された容器2の外面の洗浄に使用されても構わない。
【0031】
無菌充填機の稼働中には、チャンバー内の殺菌が行われた殺菌装置チャンバー18、リンス装置チャンバー20、充填装置チャンバー23、密封装置チャンバー25、排出装置チャンバー29及び蓋材殺菌装置31を遮蔽するチャンバーは、除菌フィルタにより無菌化された無菌エアが供給され、各チャンバー内の圧力を陽圧にすることで、無菌充填機の無菌性が維持される。陽圧に保持する圧力は、充填装置チャンバー23内が最も高く、リンス装置チャンバー20、殺菌装置チャンバー18と上流に行くほど低く設定される。また、密封装置チャンバー25、排出装置チャンバー29と下流に行くにほど低く設定される。雰囲気遮断チャンバー16が排気されることで、雰囲気遮断チャンバー16内の圧力は、大気圧とほぼ同一に保持される。例えば、充填装置チャンバー23内の圧力を20Pa以上、40Pa以下とすると、他のチャンバー内の圧力は充填装置チャンバー23内の圧力よりも低い。
【0032】
(実施の形態の詳細)
まず、図2Aに示すプリフォーム1が、図1に示すプリフォーム供給装置4から、プリフォーム供給コンベヤ5により所望の速度で連続的に加熱装置6に搬送される。
【0033】
本実施形態におけるプリフォーム1は試験管状の有底筒状体であり、図2Dに示した容器2と同様な口部1aがその成形当初に付与される。この口部1aにはプリフォーム1の成形と同時に雄ネジが形成される。また、プリフォーム1には口部1aの下部に、搬送のためのサポートリング1bが形成される。プリフォーム1又は容器2はこのサポートリング1bを介してグリッパ32により把持され、無菌充填機内を走行する。プリフォーム1は射出成形、圧縮成形等によって成形される。プリフォーム1の材質はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフラノエート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなり、これらの樹脂単体又は混合物であっても構わないし、リサイクルされた熱可塑性樹脂を含んでも構わない。また、バリア性を付与するために、エチレン-ビニルアルコール共重合体、メタキシリレンジアミンのような芳香族アミンをモノマーとするポリアミド等の熱可塑性樹脂を層として、又は混合物として含んでも構わない。
【0034】
加熱装置6に供給されたプリフォーム1は、一定ピッチで多数のグリッパ32が設けられたホイールにより搬送される。加熱装置6により加熱されるプリフォーム1は、図2Bのようにグリッパ32から解放され、口部1aにスピンドル9が挿入されて搬送される。
【0035】
プリフォーム1は、図2Bに示すように、赤外線ヒータ8又はその他の加熱手段によって、後のブロー成形に適した温度まで加熱される。この温度は90℃から130℃であると好適である。
【0036】
なお、プリフォーム1の口部1aの温度は、変形等を防止するため70℃以下の温度に抑えられる。
【0037】
プリフォーム1は図2Bに示すように、口部1aにスピンドル9が挿入され、赤外線ヒータ8により加熱され、回転しながら無端チェーンにより搬送される。スピンドル9は無端チェーンに一定間隔で設けられている。無端チェーンはプーリにより回転する。スピンドル9に代えてマンドレルをプリフォーム1に挿入することにより、プリフォーム1を倒立状態で回転させつつ搬送することも可能である。
【0038】
加熱されたプリフォーム1は、スピンドル9から解放され、グリッパ32に把持されて、成形装置10の成形ホイール12に搬送される。成形ホイール12に備えられた金型13により、図2Cに示すように、プリフォーム1は容器2にブロー成形される。金型13及びブローノズルは、成形ホイール12の回りに複数個配置され、成形ホイール12の回転とともに成形ホイール12の周りを一定速度で旋回する。加熱されたプリフォーム1が到来すると、金型13はプリフォーム1を挟み込む。続いてブローノズルがプリフォーム1に接合され、図示しない延伸ロッドがブローノズルに設けられた孔に導かれ、プリフォーム1内に挿入される。挿入される延伸ロッドがプリフォーム1の底部を伸ばすことによりプリフォーム1は縦延伸され、同時にブローノズルからプリフォーム1内に空気等の気体が吹きこまれ横延伸される。プリフォーム1は金型13内で縦延伸及び横延伸され、容器2が成形される。成形された容器2は、図2Dに示すように、金型13から取り出され、検査ホイール14に設けられたグリッパ32によりサポートリング1bを把持され、検査ホイール14に受け渡される。
【0039】
成形された容器2は、検査ホイール14の周辺に備えられた検査装置15により、容器温度、容器胴部、サポートリング1b、容器口部天面、容器底部等が検査され、異常と判断された場合は、図示しない排出装置により、無菌充填機の外部に排出される。容器の検査は成形装置チャンバー11内で行われるが、検査装置15は別個のチャンバーにより遮蔽されても構わない。
【0040】
容器2の温度検査は、容器2の表面温度を検査して、容器2の良否を判断する。温度センサは、例えば赤外線放射温度計であるが、他の温度計を使用することも可能である。容器成形時の余熱が容器2に残存することが、容器2を適正に殺菌するために必要である。温度センサにより検出される温度は40℃以上であることが好ましい。
【0041】
また、容器胴部、サポートリング1b、容器口部天面、容器底部はカメラにより撮像され、各箇所の状態が検査される。撮像された画像は画像処理装置により処理され、傷、異物、変形、変色等の異常の存否について判断される。許容範囲を超えた容器2は異常と判断される。
【0042】
検査装置15による検査により異常と判断されなかった容器2は、殺菌装置17で発生する殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が成形装置10に流入しないように、成形装置10と殺菌装置17の間に設けられた雰囲気遮断チャンバー16内のホイールを経て、殺菌装置17に搬送される。
【0043】
殺菌装置17に搬送された容器2は殺菌される。容器2を殺菌するための容器2への殺菌剤のガス吹き付け工程を図2E-1に示す。容器2に殺菌剤のガスを吹き付けるため、殺菌剤ガス吹き付けノズル38が設けられる。殺菌剤ガス吹き付けノズル38は、その先端のノズル孔が直下を走行する容器2の口部1aの開口に正対し得るように固定される。また、必要に応じて殺菌剤ガス吹き付けノズル38の下方に容器2の走行路に沿って、図2E-1に示すように殺菌剤ガス吹き付けトンネル39が設けられる。殺菌剤ガス吹き付けノズル38は一本であっても複数本であっても構わない。容器2に吹き付けられた殺菌剤のガスが容器2の内部に流入し、容器2の内面を殺菌する。このとき、容器2が殺菌剤ガス吹き付けトンネル39内を走行することで、殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物が、容器2の外面にも流れて、容器2の外面が殺菌される。
【0044】
また、図2E-2に示すように、殺菌剤ガス吹き付けノズル38を容器2の搬送に追従させ、殺菌剤吹き付けノズル38を容器2の内部に挿入して、殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物を容器2の内面に直接吹き付けても構わない。容器2から溢れた出た殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物は、殺菌剤ガス吹き付けノズル38を囲繞して設けた案内部材38aに衝突し、容器2の外面に流れ、容器2の外面に接触する。案内部材38aには殺菌剤ガス吹き付けノズル38と同軸のフランジ部とフランジ部から外周に突出する環状壁部が設けられている。
【0045】
殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物は、殺菌剤ガス生成器によりガス化される殺菌剤若しくはガス化された殺菌剤が凝結したミスト又はこれらの混合物である。殺菌剤ガス生成器は、殺菌剤を滴状にして供給する二流体スプレーノズルである殺菌剤供給部と、この殺菌剤供給部から供給された殺菌剤を分解温度以下に加熱して気化させる気化部とを備える。殺菌剤供給部は、殺菌剤供給路及び圧縮空気供給路からそれぞれ殺菌剤と圧縮空気を導入して殺菌剤を気化部内に噴霧するようになっている。気化部は、内外壁間にヒータを挟み込んだパイプであり、このパイプ内に吹き込まれた殺菌剤を加熱し気化させる。気化した殺菌剤のガスは殺菌剤ガス吹き付けノズル38から気化部外に噴出する。ヒータに換えて誘導加熱により気化部を加熱しても構わない。
【0046】
殺菌剤ガス生成器は上述のような構造に限定されず、液状の殺菌剤をガス化できるものであれば、どのようなものでも構わない。
【0047】
殺菌剤のガスは、図2E-1又は図2E-2に示すように殺菌剤ガス吹き付けノズル38から容器2に吹き付けられる。殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物の吹き付け量は任意であるが、吹き付け量は、殺菌剤ガス生成器に供給される殺菌剤の量と吹き付け時間により決まる。殺菌剤ガス生成器は複数備えても構わない。吹き付け量は容器2の大きさによっても変動する。
【0048】
殺菌剤ガス生成器で生成される殺菌剤のガスは、蓋材殺菌装置31に供給され、搬送される蓋材3の全面に吹き付けられ、蓋材3は殺菌される。
【0049】
殺菌剤は少なくとも過酸化水素を含有することが好ましい。その含有量は0.5質量%以上、65質量%以下の範囲が適当である。0.5質量%未満では殺菌力が不足する場合があり、65質量%を超えると安全上、扱いが困難となる。また、さらに好適なのは0.5質量%以上、40質量%以下であり、40質量%以下では扱いがより容易であり、低濃度となるために殺菌後の容器2への殺菌剤の残留量を低減できる。
【0050】
殺菌剤を過酸化水素水とした場合、過酸化水素水のガスの吹き付け量は以下の通りとなる。殺菌剤ガス吹き付けノズル38から容器2の内面に吹き付けられる過酸化水素水のガスにより、容器2の内面に付着する過酸化水素の量は、過酸化水素を35質量%含む過酸化水素水の量として、30μL/容器以上、150μL/容器以下が好ましく、より好ましくは50μL/容器以上、100μL/容器以下である。また、容器2に吹き付けられる過酸化水素水のガスの過酸化水素濃度は、2mg/L以上、20mg/L以下が好ましく、より好ましくは5mg/L以上、10mg/L以下である。
【0051】
また、殺菌剤は水を含んでなるが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、グリコールエーテル類等の1種又は2種以上を含んでも構わない。
【0052】
さらに、殺菌剤は過酢酸、酢酸等の有機酸、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素化合物、オゾン等の殺菌効果を有する化合物、陽イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤、リン酸化合物等の添加剤を含んでも構わない。
【0053】
殺菌剤が吹き付けられた容器2は必要に応じて、無菌エアが吹き付けられる。無菌エアは、ブロワによるエアを無菌フィルタに通したものであり、エアは40℃以上、70℃以下に加熱されていることが好ましい。加熱されたエアを吹き付けることにより殺菌剤が活性化し、殺菌効果が高まる。エアを吹き付けることにより、容器2に残存する余剰の殺菌剤は除去される。
【0054】
殺菌剤が吹き付けられた蓋材3は容器2と同様に無菌エア又は加熱された無菌エアが吹き付けられ、殺菌剤の殺菌効果を高め、蓋材3に残存する余剰の殺菌剤が除去される。
【0055】
殺菌装置17で殺菌された容器2は、図1に示すように、リンス装置19に搬送される。容器2は、図2F-1に示すように容器リンスノズル40により正立状態の容器2に無菌水が吹き付けられる。無菌水は図1に示すように、無菌水製造装置35により製造され、無菌水供給配管36によりリンス装置チャンバー20に供給される。無菌水は、無菌水製造装置35により殺菌されるが、殺菌後に常温まで冷却されずに、60℃以上、100℃以下の温度でリンス装置に供給される。無菌水は、容器2の内部に残存する殺菌剤を排出し、残存する殺菌剤を分解してさらに殺菌効果を高め、容器2の内部に異物が存在する場合は排除する効果もある。容器2の内部に吹き付けられた無菌水はグリッパ32を回転させ、容器2を転倒させることで排出される。
【0056】
図2F-2に示すように、容器2を倒立状態にして無菌水を容器2内に吹き付けても構わない。この場合、異物の排除には正立状態よりも効果的である。容器リンスノズル40は上下動可能として、無菌水を容器2内に吹き込んでも構わない。
【0057】
リンス装置19でリンスされた容器2は図1に示すように、充填装置21に搬送される。充填装置21では、図1に示す充填ホイール22にて、図2Gに示す充填工程のように、充填ノズル41により容器2に内容物が充填される。内容物はあらかじめ殺菌されており、容器2と同期的に走行する充填ノズル41により、容器2内に一定量の飲料等の内容物が充填される。
【0058】
調合装置で調合され、内容物殺菌装置で殺菌された内容物はサージタンクに貯留され、さらに充填装置21の近傍に備えられるヘッドタンクに送液され、ヘッドタンクから充填ノズル41に供給されて容器2に充填される。
【0059】
内容物が充填された容器2は、図1に示す充填ホイール22を経て密封装置24に搬送される。密封装置24に設けられた密封ホイール26では、図2Hに示す密封工程のように、蓋材殺菌装置31により殺菌された密封部材である蓋材3が、蓋材供給ホイールを経て、密封ホイール26に供給され、図示しないキャッパーにより、容器2の口部1aに巻き締められ、容器2は密封される。
【0060】
密封された容器2は、密封ホイール26のグリッパ32から排出装置28の排出ホイール27のグリッパ32に受け渡される。排出ホイール27に受け渡された容器2は排出コンベヤ30に載置される。排出コンベヤ30に載置された容器2は無菌充填機の外部に排出される。
【0061】
殺菌装置チャンバー18,リンス装置チャンバー20、充填装置チャンバー23、密封装置チャンバー25、排出装置チャンバー29及び蓋材殺菌装置31を遮蔽するチャンバーの各チャンバー内は、無菌充填機の稼働前にチャンバー内の洗浄及びチャンバー内の殺菌が行われる。
【0062】
各チャンバー内の殺菌の前に、内容物が充填される充填装置チャンバー23から下流のチャンバー内は洗浄される。内容物がチャンバー内に飛散して汚染が激しいチャンバー内は温水、熱水、苛性ソーダを主成分とするアルカリ性洗浄液又は酸性洗浄液を噴射することで洗浄される。殺菌装置チャンバー18、リンス装置チャンバー20、排出装置チャンバー29及び蓋材殺菌装置31を遮蔽するチャンバーは汚染が限定的であるため、洗浄しなくても構わない。
【0063】
無菌充填機により飲料を容器に充填する連続運転の後、内容物を変更する場合、又は長時間の連続運転によりチャンバー内が内容物の飛沫により汚染された場合は、無菌充填機の運転を停止して、無菌充填機のチャンバー内の洗浄及び殺菌を行う。内容物による汚染がないチャンバー内は殺菌のみを行う。
【0064】
洗浄によりチャンバー内に残存する洗浄液又は殺菌によりチャンバー内に残存する殺菌液を洗い流すために各チャンバー内には無菌水が噴射される。チャンバー内には無菌水を噴射するために無菌水噴射ノズルが設けられる。無菌水噴射ノズルから洗浄液又は殺菌液を噴射し、チャンバー内の洗浄又は殺菌を行っても構わない。図1に示すように、無菌水製造装置35で製造された無菌水が、無菌水供給配管36により各チャンバーに供給される。
【0065】
上述のように、チャンバーによって異なるが、チャンバーの機能により洗浄及び殺菌を行うためにチャンバー内に洗浄液、殺菌液及び無菌水を噴射するスプレーノズルが備えられる。スプレーノズルは、一流体ノズル、二流体ノズル、回転ノズル等のスプレーノズルであり、洗浄を行うときは洗浄液を噴射し、殺菌を行うときは殺菌液を噴射する。殺菌に使用する殺菌液として過酢酸及び過酸化水素を含む液体を使用する場合は、殺菌液も液体となり、スプレーノズルは兼用できる。さらに無菌水も液体であり、無菌水も同一の液体用スプレーノズルからチャンバー内に噴射できる。
【0066】
図3に示すように、各チャンバー内には洗浄液、殺菌液及び無菌水を噴射するチャンバー内噴射ノズル42及びチャンバー内噴射回転ノズル43が備えられる。チャンバー内噴射ノズル42及びチャンバー内噴射回転ノズル43は液体を噴射することができる。また、チャンバー内には、液体ではなくガスを噴射するノズルを設けても構わない。
【0067】
チャンバー内噴射ノズル42は、一流体スプレー又は洗浄液若しくは殺菌液を圧縮エアと混合して噴霧する二流体スプレーが使用され、洗浄液又は殺菌液を洗浄又は殺菌が必要な各チャンバー内の全域に付着するように吹き付ける。吹き付けられた洗浄液又は殺菌液により、チャンバー内が洗浄又は殺菌される。チャンバー内噴射ノズル42はチャンバー内の全域に洗浄液又は殺菌液が付着するように配置される。
【0068】
洗浄液は水及び水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基性化合物、又はエタノールアミン、ジエチルアミン等の有機塩基性化合物を含む。この他に、有機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、エチレンジアミン四酢酸等の金属イオン封鎖剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類等の非イオン界面活性剤、クメンスルホン酸ナトリウム等の可溶化剤、ポリアクリル酸等の酸系高分子又はこれらの金属塩、腐食抑制剤、防腐剤、酸化防止剤、分散剤、消泡剤などを含んでも構わない。また、水に塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸又は酢酸、蟻酸、オクタン酸、シュウ酸、クエン酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸を添加した酸性洗浄液であっても構わない。
【0069】
殺菌液は、容器を殺菌するために使用される殺菌剤と同様のものが使用でき、過酢酸や過酸化水素を含む殺菌液を使用することが好ましい。殺菌液の吹き付けは、異なる殺菌液を複数回吹き付けても構わない。
【0070】
無菌充填機の稼働中には、チャンバー内を殺菌した後の各チャンバー内の無菌性を維持するために、図3に示すように、各チャンバーに無菌エア供給装置44が設けられる。無菌エア供給装置44は、ブロワ45によるエアを除菌フィルタ46により無菌化したエアを各チャンバー内に供給する。エアを加熱装置47により加熱しても構わない。除菌フィルタ46のチャンバー側表面は殺菌液が噴射されることで殺菌される。また、チャンバー内の圧力を適正に保持するために、チャンバーの下部に排気装置48を設けても構わない。
【0071】
洗浄液、殺菌液及び無菌水を各チャンバー内に噴射する場合、例えば、洗浄を行うために洗浄液を噴射し、洗浄液を洗い流すために無菌水を噴射し、殺菌を行うために殺菌液を噴射し、殺菌液を洗い流すために無菌水を噴射する。洗浄液を洗い流すときは、後に殺菌を行うため、無菌水を使用しなくても構わない。しかし、菌によりチャンバー内の汚染を抑制するために無菌水を使用することが好ましい。
【0072】
図1に示すように、水供給タンク33から無菌水製造装置35に水を供給し、供給された水を無菌水製造装置35により加熱することにより殺菌し、無菌水を製造する。水の加熱は少なくとも120℃で4分以上行われる。無菌水は、充填される内容物の殺菌条件以上の殺菌価で殺菌された水でも構わない。加熱されて殺菌された無菌水は、常温まで冷却せずに、加温された状態で各チャンバー内に噴射される。常温を超える温度とすることで、無菌水の洗浄能力が向上する。好ましくは60℃以上、100℃以下とすることで、無菌水の洗浄能力を各段に向上させることができる。
【0073】
無菌水製造装置35は、例えば複数個のシェル&チューブ式熱交換器を直列で連結してなる第1段加熱部で水を20℃から65℃まで加熱し、第1段加熱部より多くのシェル&チューブ式熱交換器を直列で連結してなる第2段加熱部で水を65℃から140℃まで加熱し、140℃に加熱された水をホールディングチューブで140℃に保持して殺菌する装置である。水は、さらに無菌水製造装置35に備えられる冷却部で冷却される。無菌水は常温まで冷却されずに、加温された状態で供給される。また、製造された無菌水は、貯留タンクに貯留された後、各チャンバーに供給されても構わない。
【0074】
図3に示すように、洗浄液又は殺菌液を洗い流すために各チャンバー内に吹き付けられた加温された状態の無菌水は、無菌水回収装置49により回収され、無菌水回収配管37を通り、熱交換装置34に送られ、水供給タンク33から無菌水製造装置35に送られる水と熱交換される。常温の水が回収された無菌水と熱交換されることで、常温から昇温して無菌水製造装置35に送られる。
【0075】
図3に示すように、各チャンバー内に吹き付けられた無菌水は、チャンバーの下部に設けられる無菌水回収溝50に集められ、無菌水回収溝50からバルブを経て無菌水回収ポンプ51により無菌水回収配管37に送液される。無菌水回収装置49は少なくとも、無菌水回収配管37、バルブ及び無菌水回収ポンプ51を備える。
【0076】
熱交換装置34は、各チャンバー内に供給された後に回収された無菌水と、水供給タンク33から供給される水を熱交換する。水供給タンク33から供給される水は常温であるが、回収される無菌水は、60℃以上、100℃以下で供給された無菌水が降温したものであり、50℃以上、90℃以下であり、水供給タンク33から供給される常温の水を30℃以上、50℃以下に昇温することができる。無菌水製造装置35の加熱部で、加温のための供給されるエネルギーを低減することができるため、エネルギーの節約となり、CO排出削減に貢献することができる。
【0077】
熱交換装置34は、無菌水製造装置35の第1段加熱部の能力に相当する加温能力を有している。また、無菌水製造装置35に熱交換装置34を第1段加熱部として、若しくは第1段加熱部の構成要素として組み込んでも構わない。
【0078】
回収され、熱交換された無菌水は20℃以上、40℃以下に降温する。降温した無菌水は排出される。排出せずに、密封された容器2の外面を洗浄する洗浄装置の洗浄に使用しても構わない。
【0079】
内容物を容器2に充填するために、無菌充填機を稼働する前に、充填ノズル41を含む内容物供給系配管内を洗浄するCIP及び殺菌するSIPが行われる。チャンバー内の洗浄又は殺菌と同様に、洗浄液又は殺菌液が使用される。使用される洗浄液又は殺菌液を洗い流すために内容物供給系配管内に無菌水が供給される。洗浄液又は殺菌液を充填ノズルで受けて、内容物供給系配管内を循環させることにより、CIP又はSIPが行われる。CIP又はSIPにおいて、洗浄液又は殺菌液を洗い流す無菌水と無菌水製造装置に供給される水を熱交換することは、特開2021-35867号公報に開示されている。この場合、既に形成されている循環路の入口である水供給箇所で熱交換するものであり、洗い流しに使用した無菌水の回収は、循環路において行われることであり、新たに回収装置を設ける必要はない。本開示におけるチャンバー内の洗浄又は殺菌に使用した洗浄液又は殺菌液の洗い流しに使用する無菌水の回収には、新たな回収装置が必要である。無菌水により洗い流すべき面積を比較すると、チャンバー内の洗浄又は殺菌に使用する無菌水は、CIP又はSIPに使用される無菌水の量に比べ、はるかに多量であり、エネルギー削減効果も大きい。
【0080】
無菌充填機の稼働時には、図1に示すように無菌水製造装置35で製造される無菌水は、無菌水供給配管36によりリンス装置チャンバー20に供給される。供給される無菌水は、図2F-1又は図2F-2に示すように、殺菌された容器2に吹き付けられる。容器2に吹き付けられた無菌水は、容器2に付着する殺菌剤及び異物を洗い流す。
【0081】
図4に示すように、リンス装置チャンバー20において容器2に吹き付けられた無菌水は、リンス装置チャンバー20の下部に設けられる無菌水回収溝50に集められ、無菌水回収溝50からバルブを経て無菌水回収ポンプ51により無菌水回収配管37に送液される。無菌水回収装置49は少なくとも、無菌水回収配管37、バルブ及び無菌水回収ポンプ51を備える。
【0082】
殺菌された蓋材3に付着する殺菌剤を洗い流すために、蓋材殺菌装置31に無菌水が供給される。蓋材3をリンスした無菌水は、蓋材殺菌装置31内に設けられる無菌水回収溝に集められ、回収され、無菌水回収配管37に送液される。
【0083】
図4に示すように、殺菌された容器2をリンスするためにリンス装置チャンバー20に供給された無菌水は、無菌水回収装置49により回収され、無菌水回収配管37を通り、熱交換装置34に送られ、水供給タンク33から無菌水製造装置35に送られる水と熱交換される。常温の水が回収された無菌水と熱交換されることで、常温から昇温して無菌水製造装置35に送られる。回収された無菌水は、タンクに貯留された後、熱交換装置34に送られても構わない。
【0084】
熱交換装置34には、殺菌された容器2をリンスした無菌水及び蓋材3をリンスした無菌水を供給しても構わない。回収された無菌水と水供給タンク33から供給される水を熱交換する。水供給タンク33から供給される水は常温であるが、回収される無菌水は、60℃以上、100℃以下で供給された無菌水が降温したものであり、50℃以上、90℃以下であり、水供給タンク33から供給される常温の水を30℃以上、50℃以下に昇温することができる。無菌水製造装置35の加熱部での加温のためのエネルギー供給を低減することができるため、エネルギーの節約となり、CO排出削減に貢献することができる。
【0085】
回収されて熱交換された無菌水は20℃以上、40℃以下に降温する。降温した無菌水は、密封された容器2の外面を洗浄する洗浄装置に供給し、密封された容器2の外面の洗浄に使用しても構わない。
【0086】
実施例では、容器を過酸化水素で殺菌する方式を述べたが、過酢酸リンス方式やボトル温水リンス方式でも構わない。
【符号の説明】
【0087】
1…プリフォーム
1a…口部
1b…サポートリング
2…容器
3…蓋材
17…殺菌装置
18…殺菌装置チャンバー
19…リンス装置
20…リンス装置チャンバー
21…充填装置
23…充填装置チャンバー
24…密封装置
25…密封装置チャンバー
28…排出装置
29…排出装置チャンバー
30…排出コンベヤ
31…蓋材殺菌装置
33…水供給タンク
34…熱交換装置
35…無菌水製造装置
36…無菌水供給配管
37…無菌水回収配管
40…容器洗浄ノズル
42…チャンバー内噴射ノズル
43…チャンバー内噴射回転ノズル
49…無菌水回収装置
50…無菌水回収溝
51…無菌水回収ポンプ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E-1】
図2E-2】
図2F-1】
図2F-2】
図2G
図2H
図3
図4