(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178676
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】検体測定装置及び検体測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
G01N35/00 C
G01N35/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091494
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】林 雅人
(72)【発明者】
【氏名】金子 周平
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058BB02
2G058BB07
2G058BB12
2G058BB18
2G058CB15
2G058CD11
2G058CD23
2G058ED02
2G058ED14
2G058HA02
(57)【要約】
【課題】装置の小型化に対応することができる検体測定装置を提供する。
【解決手段】検体測定装置1は、試薬を入れた試薬容器580が収納される試薬容器収納部52と、試薬を用いて検体を測定する測定部53と、を備える。試薬容器収納部52は、試薬容器580が収納される筐体500と、筐体500を冷却する冷却部501と、を有する。筐体500内における試薬容器ラック581の下方には通気路602が設けられ、冷却部501の少なくとも一部は、筐体500において、通気路602よりも高い部分に設けられている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を入れた試薬容器が収納される試薬容器収納部と、
前記試薬を用いて検体を測定する測定部と、
を備え、
前記試薬容器収納部は、
前記試薬容器が収納される筐体と、
前記筐体を冷却する冷却部と、
を有し、
前記筐体内における前記試薬容器の下方には通気路が設けられ、
前記冷却部の少なくとも一部は、前記筐体において、前記通気路よりも高い部分に設けられている、
検体測定装置。
【請求項2】
前記筐体は、上面部、底面部及び側面部を有し、
前記冷却部は、前記筐体の前記側面部又は前記上面部に設けられている、
請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項3】
前記筐体は、対向する二つの前記側面部を有し、
前記冷却部は、前記筐体において前記対向する二つの前記側面部の一方に設けられている、
請求項2に記載の検体測定装置。
【請求項4】
前記試薬容器収納部における前記試薬容器に収容された試薬を吸引し、前記検体が収容された反応容器に分注するピペットを、さらに備え、
前記筐体の前記上面部には、前記ピペットが出入りするための貫通孔が設けられている、
請求項1に記載の検体測定装置。
【請求項5】
前記筐体は、熱伝導性である伝熱筐体部を含み、
前記伝熱筐体部は、
第1の側壁部と、
前記第1の側壁部に対し前記試薬容器を挟んだ反対側に配置され、前記第1の側壁部に対向する第2の側壁部と、
前記第1の側壁部と前記第2の側壁部を接続する上面接続部を有し、
前記冷却部は、前記第1の側壁部、前記第2の側壁部又は前記上面接続部に設けられている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の検体測定装置。
【請求項6】
前記冷却部は、前記第1の側壁部又は前記第2の側壁部に設けられている、
請求項5に記載の検体測定装置。
【請求項7】
前記筐体の前記底面部は、前記伝熱筐体部よりも熱伝導性が低い部材を含む、
請求項5に記載の検体測定装置。
【請求項8】
前記伝熱筐体部の前記上面接続部は、平面視で、前記筐体に収納された試薬容器に重ならない位置に設けられている、
請求項5に記載の検体測定装置。
【請求項9】
前記筐体は、複数の前記試薬容器を、前記第1の側壁部から前記第2の側壁部に向かう方向に対して直交する方向に沿って並べて収納可能に構成されている、
請求項5に記載の検体測定装置。
【請求項10】
前記試薬容器は、試薬容器ラックに保持された状態で前記筐体内に収納され、
前記試薬収容ラックは、複数の前記試薬容器が並べて保持される方向に長い形状を有し、
前記筐体は、前記試薬容器ラックの長手方向を、前記第1の側壁部から前記第2の側壁部に向かう方向に対して直交する方向に向けた状態で、前記試薬容器ラックを収納するように構成されている、
請求項5に記載の検体測定装置。
【請求項11】
前記筐体は、前記伝熱筐体部を覆う断熱筐体部を有する、
請求項5に記載の検体測定装置。
【請求項12】
前記試薬容器は、試薬容器ラックに保持された状態で前記筐体内に収納され、
前記試薬容器収納部は、
前記筐体内において、前記試薬容器ラックを支持するラック支持部を有し、
前記ラック支持部は、前記筐体内から引き出し自在に構成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の検体測定装置。
【請求項13】
前記通気路は、前記試薬容器ラックと前記ラック支持部の間に形成されている、
請求項12に記載の検体測定装置。
【請求項14】
前記通気路は、前記ラック支持部に形成されている、
請求項12に記載の検体測定装置。
【請求項15】
前記筐体の前記底面部は、前記ラック支持部をスライドさせるレール部を有し、
前記通気路は、前記レール部に設けられている、
請求項12に記載の検体測定装置。
【請求項16】
前記通気路は、前記試薬容器ラックに形成されている、
請求項12に記載の検体測定装置。
【請求項17】
前記冷却部により生じた熱を排熱する排熱部をさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の検体測定装置。
【請求項18】
前記測定部及び前記試薬容器収納部を内部に有する装置筐体をさらに備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の検体測定装置。
【請求項19】
前記筐体は、
前記冷却部の冷却により前記筐体の内部に生じる自然対流が、前記筐体の第1の側面部と前記試薬容器との間、前記通気路、前記筐体の前記第1の側面部に対向する第2の側面部と前記試薬容器との間、前記筐体の前記上面部と前記試薬容器との間をこの順で循環するように構成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の検体測定装置。
【請求項20】
試薬容器が収納される筐体において、前記試薬容器の下方に通気路を設けた検体測定装置を用いた検体測定方法であって、
前記筐体において少なくとも前記通気路よりも高い部分を冷却することにより、前記試薬容器内の試薬を冷却する冷却工程と、
冷却された前記試薬容器内の試薬を吸引し反応容器に分注する分注工程と、
前記試薬が分注された前記反応容器の検体を測定する測定工程と、を含む、
検体測定方法。
【請求項21】
前記筐体は、熱伝導性の伝熱筐体部を有し、
前記伝熱筐体部は、
第1の側壁部と、
前記第1の側壁部に対し前記試薬容器を挟んだ反対側に配置され、前記第1の側壁部に対向する第2の側壁部と、
前記第1の側壁部と前記第2の側壁部を接続する上面接続部を有し、
前記冷却工程では、
前記前記伝熱筐体部の全体が冷却される、
請求項20に記載の検体測定方法。
【請求項22】
前記冷却工程において、前記筐体の内部に生じる自然対流が、前記筐体の第1の側面部と前記試薬容器との間、前記通気路、前記筐体の前記第1の側面部に対向する第2の側面部と前記試薬容器との間、前記筐体の前記上面部と前記試薬容器との間をこの順で循環する、
請求項20に記載の検体測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体測定装置及び検体測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試薬を用いて検体を測定する検体測定装置は、試薬が入れられた試薬容器を収納する試薬容器収納部を備えている。
【0003】
試薬は、検体測定の精度を維持するために所定の温度以下に維持する必要があるため、検体測定装置の試薬容器収納部は、試薬容器に入れられた試薬を冷却する機能を有している。
【0004】
特許文献1には、試薬庫におけるハウジングの底部を冷却部によって冷却し、ハウジング内に設けられたファンによってハウジング内の空気を循環させて、試薬を冷却する検体分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記検体分析装置は、試薬庫におけるハウジング内の空気を循環させるファンが必要なため、装置が大型化してしまい小型の装置には不向きであった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、装置の小型化に対応することができる検体測定装置及び検体測定方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図2、
図6乃至
図9に示すように、本発明による検体測定装置(1)は、試薬を入れた試薬容器(580)が収納される試薬容器収納部(52)と、試薬を用いて検体を測定する測定部(53)と、を備え、試薬容器収納部(52)は、試薬容器(580)が収納される筐体(500)と、筐体(500)を冷却する冷却部(501)と、を有し、筐体(500)内における試薬の下方には通気路(602)が設けられ、冷却部(501)の少なくとも一部は、筐体(500)において、通気路(602)よりも高い部分に設けられている。
【0009】
本発明による検体測定装置(1)によれば、試薬容器収納部(52)の筐体(500)における通気路(602)よりも高い部分を冷却部(501)で冷却することにより、筐体(500)内に通気路(602)を通過する自然対流を生じさせて、筐体(500)内の試薬を冷却することができる。これにより、筐体(500)内の空気を循環させるためのファンを設ける必要がなく、装置の小型化に対応することができる。
【0010】
図13、
図2、
図6及び
図9に示すように、本発明による検体測定方法は、試薬容器(580)が収納される筐体(500)において、試薬容器(580)の下方に通気路(602)を設けた検体測定装置(1)を用いた検体測定方法であって、筐体(500)において少なくとも通気路(602)よりも高い部分を冷却することにより、試薬容器(580)内の試薬を冷却する冷却工程(T1)と、冷却された試薬容器(580)内の試薬を吸引し反応容器(70)に分注する分注工程(S4)と、試薬が分注された反応容器(70)の検体を測定する測定工程(S5)と、を含む。
【0011】
本発明による検体測定方法によれば、筐体(500)における通気路(602)よりも高い部分を冷却することにより、筐体(500)内に通気路(602)を通過する自然対流を生じさせて、筐体(500)内の試薬を冷却することができる。これにより、筐体(500)内の空気を循環させるためのファンを設ける必要がなく、装置の小型化に対応することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置の小型化に対応することができる検体測定装置及び検体測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、検体測定装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、検体測定装置の内部構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、検体測定装置の制御に関するブロック図である。
【
図4】
図4は、分注装置の構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、容器保持部の構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、試薬容器収納部の構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、試薬容器収納部のA-A断面図である。
【
図10】
図10は、ラック支持部の引き出し機構を示す模式図である。
【
図11】
図11は、冷却部が伝熱筐体部に取り付けられている状態を示す説明図である。
【
図12】
図12は、試薬容器収納部の排熱部の構成を示す検体測定装置の部分断面図である。
【
図14】
図14は、通気路の他の構成例を示すラック支持部の側面図である。
【
図15】
図15は、通気路の他の構成例を示すラック支持部及びレール部の側面図である。
【
図16】
図16は、通気路の他の構成例を示すラック支持部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る検体測定装置及び検体測定方法の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0015】
<検体測定装置>
図1は、本実施の形態にかかる検体測定装置1の外観を示す斜視図である。検体測定装置1は、例えば、検体(血液検体)の凝固因子の活性を分析する血液凝固測定に用いられる。
【0016】
検体測定装置1は、略直方体形状の装置筐体10を有している。装置筐体10は、前面20、後面21、右側面22、左側面23、上面24及び底面25を有している。なお、本明細書において、検体測定装置1の「左」、「右」は、前面20を正面から見たときの方向を基準にする。
【0017】
前面20には、開閉自在なカバー30が設けられ、カバー30を開けることでユーザが装置筐体10の内部にアクセスすることができる。前面20には、後述の試薬容器収納部52の内部にアクセスするための扉31と、検体ラック収納部50の内部にアクセスするための扉32が設けられている。
【0018】
上面24は、方形の平坦面であり、その上にモニター40を設置することができる。モニター40は、タッチパネル式のディスプレイであり、検体測定に必要な操作のための入力、各種情報の表示や検体測定の結果情報を表示することができる。
【0019】
図2は、検体測定装置1の内部構成の一例を示す平面図である。検体測定装置1は、装置筐体10の内部に、検体ラック収納部50と、反応容器収納部51と、試薬容器収納部52と、測定部53と、洗浄部54と、廃棄部55と、電源部56と、制御部57と、分注部58を備えている。
【0020】
検体ラック収納部50は、装置筐体10の前後方向Yの中央よりも前面20側であって、装置筐体10の左右方向Xの中央付近に設けられている。検体ラック収納部50は、複数の検体容器を保持する検体ラックを収納するものである。検体ラック収納部50は、上面部60を有し、上面部60には、複数の孔61が形成されている。分注部58の後述のピペット200は、孔61を通じて、検体ラック収納部50内の検体容器に進入し、検体容器内の検体を吸引することができる。検体ラック収納部50の検体ラックは、
図1に示す装置筐体10の扉32から出し入れされる。
【0021】
図2に示す反応容器収納部51は、装置筐体10の前後方向Yの中央よりも前面20側であって、装置筐体10の左右方向Xの中央よりも右側に設けられている。反応容器収納部51は、複数の反応容器70を保持する容器ラック71を収納するものである。
【0022】
試薬容器収納部52は、装置筐体10の前後方向Yの中央よりも前面20側であって、装置筐体10の左右方向Xの中央よりも左側に設けられている。試薬容器収納部52は、検体ラック収納部50の左隣に設けられている。試薬容器収納部52は、試薬が収容された複数の試薬容器を収納するものである。試薬容器収納部52の詳細は後述する。
【0023】
測定部53は、加温部80と検出部81を有している。加温部80及び検出部81は、装置筐体10の前後方向Yの中央よりも後面21側であって、装置筐体10の左右方向Xの中央よりも右側に設けられている。
【0024】
加温部80は、反応容器70を保持する複数の保持孔90を有している。複数の保持孔90は、左右方向Xに一列に並べて配置されている。加温部80は、熱源により、保持孔90に保持された反応容器70を加温することができる。
【0025】
検出部81は、反応容器70を保持する複数の保持孔100を有している。複数の保持孔100は、左右方向Xに一列に並べて配置されている。複数の保持孔100は、加温部80の保持孔90の後面21側に設けられている。検出部81は、保持孔100に保持された反応容器70内の検体に光を照射し当該検体を透過した光を受光することによって、検体に関する測定データを検出することができる。
【0026】
洗浄部54は、装置筐体10の前後方向Yの中央付近であって、測定部53と反応容器収納部51との間に設けられている。洗浄部54は、分注部58のピペット200を洗浄する洗浄槽110を有している。
【0027】
廃棄部55は、測定部53と反応容器収納部51との間に設けられている。廃棄部55は、反応容器70を廃棄する廃棄口120を有している。
【0028】
電源部56は、装置筐体10の前後方向Yの後面21付近であって、左右方向Xの中央よりも左側に設けられている。電源部56は、外部電源から供給された電力を、試薬容器収納部52、測定部53、制御部57、分注部58などの各種装置に供給するものである。
【0029】
制御部57は、装置筐体10の前後方向Yの後面21付近であって、左右方向Xの中央よりも右側に設けられている。制御部57は、
図3に示すように、試薬容器収納部52、測定部53、分注部58などの各種装置と通信可能であり、各種装置の動作を制御するものである。制御部57は、メモリやCPUを有し、CPUが、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、各種装置を制御して、検体測定を実行することができる。制御部57は、モニター40と通信可能であり、モニター40から入力された情報に基づいて検体測定を実行したり、検体測定の結果をモニター40に表示することができる。
【0030】
図2に示すように装置筐体10は、その内部に、前後方向Yの中央よりも後面21側に配置された垂直壁140を有する。垂直壁140は、板面が前後方向Yに向けられた板形状を有する。垂直壁140は、装置筐体10の内部を主領域R1と背面領域R2に隔離する。電源部56と制御部57は、背面領域R2に設けられている。電源部56と制御部57は、垂直壁140の背面領域R2側の面に取り付けられている。検体ラック収納部50と、反応容器収納部51と、試薬容器収納部52と、測定部53と、洗浄部54と、廃棄部55及び分注部58は、主領域R1に設けられている。
【0031】
分注部58は、検体容器、反応容器70、試薬容器に対し分注する機能を有している。分注部58は、分注装置150と、分注装置150を移動させる移動装置151とを有している。
【0032】
<分注部58の構成>
図4は、分注装置150の構成の一例を示す斜視図である。分注装置150は、ピペット200と、容器保持部201と、移動機構202等を備えている。
【0033】
ピペット200は、鉛直方向Zに延伸する細長い管であり、所定量の液体を管内に保持することができる。ピペット200は、先端部210から液体を吸引したり、吸引した液体を吐出することができるように構成されている。
【0034】
容器保持部201は、
図5に示すように反応容器70を保持する二本(一対)の保持アーム220を有している。保持アーム220は、ピペット200の下方に配置され、ピペット200の鉛直方向Zの同軸上で反応容器70を保持することができる。ピペット200は、容器保持部201の二本の保持アーム220の間隔よりも細く、二本の保持アーム220の間を鉛直方向Zに挿通可能である。
【0035】
図4に示すように、移動機構202は、保持アーム220とピペット200とを同軸上に維持した状態で、ピペット200と容器保持部201を鉛直方向Zに相対的に移動させるものである。
【0036】
移動機構202は、ピペット200と容器保持部201の一方が上昇すると、他方がそれに連動して下降するように構成された機械的な機構を有している。また、移動機構202は、ピペット200が下降し、それに連動して容器保持部201が上昇し、容器保持部201が所定位置まで上昇したときに連動が解除され、容器保持部201の上昇が止まった状態でピペット200が下降するように構成された機械的な機構を有している。以下、かかる機械的な機構の一例について説明する。
【0037】
移動機構202は、ピペット200を鉛直方向Zに移動させるための第1の移動部250と、容器保持部201を鉛直方向Zに移動させるための第2の移動部251と、第1の移動部250と第2の移動部251を連動させるための連動部252と、連動部252を駆動する駆動源253を有している。
【0038】
移動機構202は、略長方形の板状部材260を有している。板状部材260は、板面が左右方向Xに向くように立てられている。第1の移動部250、第2の移動部251及び連動部252は、板状部材260の左右方向Xの右側(
図4の表側)の第1の板面260aに設けられている。駆動源253は、板状部材260の左右方向Xの左側(
図4の裏面側)の第2の板面260bに設けられている。
【0039】
第1の移動部250は、ピペット200を保持するピペット保持部材270と、ピペット保持部材270が固定され、連動部252よって昇降する第1の昇降部材271を有している。
【0040】
ピペット保持部材270の上部には、ピペット200内部への給気と吸引を行うための配管280が接続されている。配管280は、ポンプ装置に連通している。
【0041】
第1の昇降部材271は、板形状を有している。ピペット保持部材270は、第1の昇降部材271の左右方向Xの右側の板面に固定されている。
【0042】
第1の昇降部材271は、板状部材260の鉛直方向Zに向けて設けられた第1のガイドレール272に移動自在に取り付けられている。第1の昇降部材271は、後述のベルト322に取り付けられている。
【0043】
第2の移動部251は、容器保持部201が固定され、昇降自在な第2の昇降部材300と、第2の昇降部材300を上方に付勢する付勢部材301と、第2の昇降部材300の上昇を止めるストッパ302と、連動部252によって昇降し、第2の昇降部材300を下方に押圧可能な押圧部材303を有している。
【0044】
第2の昇降部材300は、本体部310と、本体部310と容器保持部201とを接続する腕部311を備えている。
【0045】
第2の昇降部材300は、板状部材260の鉛直方向Zに向けて設けられた第2のガイドレール304に移動自在に取り付けられている。
【0046】
付勢部材301は、スプリングであり、鉛直方向Zに向けられている。付勢部材301は、上端が板状部材260の第2の昇降部材300の上方の位置に固定され、下端が第2の昇降部材300の上部に固定されている。付勢部材301は、第2の昇降部材300を上方に付勢している。
【0047】
ストッパ302は、板状部材260の第2の昇降部材300の上方の位置に設けられている。ストッパ302は、第2の昇降部材300が所定の上限位置、すなわち容器保持部201の保持アーム220に保持された反応容器70にピペット200が挿入される所定位置(
図4及び
図5の位置)まで上昇したときに第2の昇降部材300の上部に当接し第2の昇降部材300の上昇を止めるように設けられている。
【0048】
押圧部材303は、第2の昇降部材300の上方の位置に設けられている。押圧部材303は、後述のベルト322に取り付けられており、ベルト322によって昇降自在である。押圧部材303は、下降したときに第2の昇降部材300を下に押すことができ、また、第2の昇降部材300の上限位置よりも上方に上昇することができる。
【0049】
かかる第2の移動部251は、容器保持部201を下降させる際に、連動部252により押圧部材303が下降し第2の昇降部材300を付勢部材301の付勢力に抗して下方に押し下げ、容器保持部201を上昇させる際に、連動部252により押圧部材303が上昇し、付勢部材301の付勢力により第2の昇降部材300が上昇し、容器保持部201が所定位置まで上昇すると、ストッパ302により第2の昇降部材300の上昇が止められるように構成されている。
【0050】
連動部252は、鉛直方向Zに配置された一対のプーリ320、321と、一対のプーリ320、321に掛けられた環状のベルト322を有している。
【0051】
一対のプーリ320、321は、板状部材260において上下に配置されている。一対のプーリ320、321は、前後方向Yにおいて、第1の移動部250の第1のガイドレール272と第2の移動部251の第2のガイドレール304との間に設けられている。プーリ320は、板状部材260の上部付近に設けられ、プーリ321は、板状部材260の下部付近に設けられている。
【0052】
ベルト322は、一対のプーリ320、321に掛けられており、プーリ320、321を介して前後方向Yに対向するベルト部分330、331が相反する方向に昇降する。
【0053】
第1の移動部250は、ベルト部分330によって駆動する。すなわち、第1の昇降部材271は、ベルト部分330に取り付けられており、ベルト部分330の昇降に伴い、第1の昇降部材271、ピペット保持部材270及びピペット200が昇降する。
【0054】
第2の移動部251は、ベルト部分331によって駆動する。すなわち、押圧部材303は、ベルト部分331に取り付けられており、ベルト部分331の昇降に伴い、押圧部材303が昇降する。この押圧部材303の昇降に伴い、第2の昇降部材300及び容器保持部201が昇降可能である。
【0055】
駆動源253は、単一のモータであり、プーリ320に接続されている。駆動源253は、板状部材260の左右方向Xの左側の第2の板面260bに固定されている。駆動源253は、正回転と逆回転を切り替え可能であり、プーリ320を介してベルト322を右回りと左回りに回転させることができる。
【0056】
移動機構202は、容器保持部201に保持された反応容器70を振動させる振動部材350を有している。振動部材350は、給電により振動する振動素子であり、第2の昇降部材300の腕部311に設けられている。
【0057】
移動機構202は、ピペット200の検体又は試薬を加温する加温部材360を有している。加温部材360は、給電により発熱する発熱素子であり、ピペット保持部材270に設けられている。
【0058】
図2に示す移動装置151は、分注装置150の全体を装置筐体10内の左右方向Xと前後方向Yの任意の位置に移送させるように構成されている。
【0059】
<試薬容器収納部52の構成>
試薬容器収納部52の構成について説明する。
図6は、試薬容器収納部52の斜視図であり、
図7は、試薬容器収納部52の分解図である。
図8は、試薬容器収納部52のA-A断面図である。
図6乃至
図8に示すように試薬容器収納部52は、筐体500と、冷却部501と、排熱部502を有している。
【0060】
<筐体500の構成>
筐体500は、複数の試薬容器を収納するものである。
図6に示すように筐体500は、前後方向Yに長い略直方体形状を有し、内部に略直方体形状の空間を形成する。
【0061】
筐体500は、六面体構造であり、第1の側面部500aと、第2の側面部500bと、第3の側面部500cと、第4の側面部500dと、上面部500e及び底面部500fを有する。
【0062】
図7に示すように筐体500は、伝熱筐体部530と、断熱筐体部531と、底面部500fと、ラック支持部533と、断熱部材534を有している。伝熱筐体部530は、アルミなどの熱伝導性材料により構成されている。伝熱筐体部530は、筐体500の内壁部の一部を構成する。伝熱筐体部530は、左右方向Xの左側に位置する第1の側壁部540と、左右方向Xの右側に位置する第2の側壁部541と、前後方向Yの後方側に位置する第3の側壁部542と、上方に位置する上面接続部543を有している。伝熱筐体部530の前後方向Yの前方側の面は開口している。
【0063】
第1の側壁部540と第2の側壁部541は、前後方向Yに長い長方形の板形状を有している。第1の側壁部540と第2の側壁部541は、板面が左右方向Xに向くように垂直に配置されている。第1の側壁部540と第2の側壁部541は、互いに対向し平行になるように配置されている。
【0064】
第3の側壁部542は、方形の板形状を有している。第3の側壁部542は、板面が前後方向Yに向くように垂直に配置されている。第3の側壁部542は、第1の側壁部540の後方側の端部と第2の側壁部541の後方側の端部を接続している。第3の側壁部542は、高さが第1の側壁部540と第2の側壁部541よりも低くなるように形成されている。
【0065】
上面接続部543は、方形の板形状を有している。上面接続部543は、板面が鉛直方向Zに向くように水平に配置されている。上面接続部543は、第1の側壁部540の前方側の上端部と第2の側壁部541の前方側の上端部を接続している。上面接続部543は、筐体500の上面部500eの全面を覆うように設けられておらず、筐体500の上面部500eの前方側の一部のみを覆う。上面接続部543は、平面視で、筐体500に収納された試薬容器580が重ならない位置に設けられている。
【0066】
第1の側壁部540には、温度センサ544が設けられている。温度センサ544は、伝熱筐体部530の温度を検出する。制御部57は、温度センサ544により検出された温度に基づいて冷却部501を制御し、筐体500内の温度を調整することができる。制御部57は、温度センサ544により測定された第1の側壁部540の温度が0℃から10℃、例えば5℃になるように冷却部501を制御している。
【0067】
断熱筐体部531は、発泡スチロールやセルロースファイバーなどの断熱性材料により構成されている。断熱筐体部531は、筐体500の外壁部の一部を構成する。断熱筐体部531は、左右方向Xの左側に位置する第1の外壁部550と、左右方向Xの右側に位置する第2の外壁部551と、前後方向Yの後方側に位置する第3の外壁部552と、上方に位置する上面外壁部553を有している。断熱筐体部531の前後方向Yの前方側の面は開口している。
【0068】
第1の外壁部550は、第1の側壁部540の外側に位置し、中央に方形の開口部550aを有している。第2の外壁部551は、前後方向Yに長い長方形の板形状を有している。第2の外壁部551は、板面が左右方向Xに向くように垂直に配置されている。第2の外壁部551は、第2の側壁部541の外側で第2の側壁部541を覆うように配置されている。
【0069】
第3の外壁部552は、方形の板形状を有している。第3の外壁部552は、板面が前後方向Yに向くように垂直に配置されている。第3の外壁部552は、第1の外壁部550の後方側の端部と第2の外壁部551の後方側の端部を接続している。第3の外壁部552は、第3の側壁部542の外側で第3の側壁部542を覆うように配置されている。
【0070】
上面外壁部553は、前後方向Yに長い長方形の板形状を有している。上面外壁部553は、板面が鉛直方向Zに向くように水平に配置されている。上面外壁部553は、第1の外壁部550の上端部と第2の外壁部551の上端部を接続している。上面外壁部553は、筐体500の上面部500eの全面を覆うように設けられている。上面外壁部553は、上面接続部543を覆う部分553aと、上面接続部543を覆わない部分553bを有している。
【0071】
上面外壁部553の部分553bには、分注部58のピペット200が出入りするための貫通孔555が設けられている。貫通孔555は、前後方向Yに沿って複数(本実施の形態では5つ)並べて設けられている。また、貫通孔555は、左右方向Xに複数列(本実施の形態では2列)設けられている。
【0072】
伝熱筐体部530と断熱筐体部531の前後方向Yの前方側の面には、ラック支持部533が出入りするための開口部560が形成されている。
【0073】
なお、本実施の形態において、伝熱筐体部530の第1の側壁部540と断熱筐体部531の第1の外壁部550は、筐体500の第1の側面部500aを構成し、伝熱筐体部530の第2の側壁部541と断熱筐体部531の第2の外壁部551は、筐体500の第2の側面部500bを構成する。伝熱筐体部530の第3の側壁部542と断熱筐体部531の第3の外壁部552は、筐体500の第3の側面部500cを構成し、伝熱筐体部530の上面接続部543及び断熱筐体部531の上面外壁部553は、筐体500の上面部500eを構成する。
【0074】
底面部500fは、前後方向Yに長い長方形の板形状を有している。底面部500fは、樹脂などの、伝熱筐体部530よりも熱伝導性の低い材料により構成されている。底面部500fには、ラック支持部533がスライドするレール部570が形成されている。
図8に示すように底面部500fの左右方向Xの左側の端部には、筐体500の内部結露が生じた場合に液体が回収される溝571が形成されている。
【0075】
図7に示すようにラック支持部533は、複数の試薬容器580を一列に保持する試薬容器ラック581を支持するものである。試薬容器ラック581は、複数の試薬容器580が並べられる方向(
図7の前後方向Y)に長い形状を有する。ラック支持部533は、左右方向Xに2つ並べて設けられている。
図9は、ラック支持部533を左右方向Xから見た側面図である。
図7及び
図9に示すように、ラック支持部533は、前後方向Yに長い底部590と、底部590の前側の端部において上方に延設する前部591と、前部591の前面側に形成された取手部592を有する。
【0076】
底部590は、レール部570を前後方向Yに移動するスライダ部600と、試薬容器ラック581が載置される載置部601を有する。スライダ部600は、レール部570に嵌合する。載置部601は、スライダ部600から上方に突出する突部601aを有する。突部601aは、底部590の前部と後部に設けられている。試薬容器ラック581は、この突部601aの上面に載置される。試薬容器ラック581が突部601aに載置された状態で、スライダ部600、載置部601及び試薬容器ラック581の間に左右方向Xに貫通し通気する通気路602が形成される。
【0077】
図7に示すように前部591は、前側から見て、方形の板形状を有している。2つのラック支持部533の前部591は、伝熱筐体部530と断熱筐体部531の前側の開口部560を閉鎖可能に構成されている。すなわち、2つの前部591は、筐体500の第4の側面部500dとして機能する。筐体500は、貫通孔555以外の部分で内部と外部で通気する部分がなく、内部に封鎖空間を形成することができる。
【0078】
取手部592は、前部591の上端から前側に延び、その後下方に延びるように構成されている。
【0079】
ラック支持部533は、底面部500fのレール部570上をスライダ部600が移動することで、筐体500に対し前後方向Yに移動自在である。これによりラック支持部533は、
図10に示すように、装置筐体10及び筐体500に対し引出自在である。ラック支持部533を装置筐体10の扉31から出し入れすることで、試薬容器ラック581及び試薬容器580を装置筐体10に対し出し入れすることができる。ラック支持部533により筐体500に収納された試薬容器580の位置は、平面視で、筐体500の貫通孔555と一致する。
【0080】
図7に示すように断熱部材(シール部材)534は、伝熱筐体部530の前面側にはめ込み可能な枠形状を有する。断熱部材534は、左右方向Xの左側に位置する第1の側壁部610と、左右方向Xの右側に位置する第2の側壁部611と、上方に位置する上面部612を有する。
【0081】
第1の側壁部610及び第2の側壁部611は、上方に長い長方形の板形状を有する。第1の側壁部610及び第2の側壁部611は、それぞれ、伝熱筐体部530の第1の側壁部540の内面と第2の側壁部541の内面に当接する。上面部612は、左右方向Xに長い長方形の板形状を有する。上面部612は、第1の側壁部610の上端と第2の側壁部611の上端を接続している。上面部612は、伝熱筐体部530の上面接続部543の内面に当接する。
【0082】
第1の側壁部610、第2の側壁部611及び上面部612は、ラック支持部533の前部591と当接する当接部630をそれぞれ有している。断熱部材534は、ラック支持部533と伝熱筐体部530との接触、試薬容器ラック581と伝熱筐体部530との接触を防止している。また、断熱部材534は、筐体500内の空気がラック支持部533と伝熱筐体部530との間から外部に流出することを防止している。
【0083】
<冷却部501の構成>
図11に示すように冷却部501は、ペルチェ素子により構成されている。冷却部501は、方形の板形状を有する。冷却部501は、伝熱筐体部530の第1の側壁部540の外面に面同士で接着されている。
【0084】
<排熱部502の構成>
図12に示すように排熱部502は、吸気口800と、ダクト801、排気口802と、ヒートシンク803と、ファン804を有する。
【0085】
ヒートシンク803は、冷却部501の左右方向Xの左側に取り付けられ、ファン804は、ヒートシンク803の左右方向Xの左側に取り付けられている。
【0086】
吸気口800及び排気口802は、装置筐体10の左右方向Xの左側面23に設けられている。吸気口800と排気口802は、上下に配置され、排気口802は、吸気口800よりも高い位置に設けられている。ダクト801は、吸気口800からファン804に到達し、ヒートシンク803から排気口802に到達するように形成されている。
【0087】
<検体測定方法>
次に、以上のように構成された検体測定装置1を用いた検体測定の一例について説明する。
図13は、検体測定全体の処理フローの一例を示す。
【0088】
検体測定装置1の検体測定では、主に、試薬の冷却工程T1の開始工程S1と、反応容器の移送工程S2と、検体の分注工程S3と、試薬の分注工程S4と、測定工程S5及び反応容器の回収・廃棄工程S6がこの順に行われる。試薬の冷却工程T1は、他の工程S2~S6が行われている間継続的に行われている。これらの各工程は、制御部57により実行される。
【0089】
検体測定の開始前には、
図2に示すように空の複数の反応容器70が反応容器収納部51に収納される。また、検体が収容された複数の検体容器が検体ラックに保持され、検体ラックが、
図1に示す扉32から検体ラック収納部50に収納される。
【0090】
検体測定で使用される試薬は、
図10に示すように複数の試薬容器580に収容され、複数の試薬容器580は、試薬容器ラック581に保持され、試薬容器ラック581が、ラック支持部533に支持される。そして、ラック支持部533が、装置筐体10の扉31から、レール部570に沿って試薬容器収納部52の筐体500内に入れられ、試薬容器580が筐体500内に収納される。このとき、筐体500の内部には、複数の試薬容器580が収納された状態で封鎖空間が形成される。
【0091】
そして、試薬の冷却工程T1が開始される(
図13の工程S1)。先ず、
図8に示す冷却部501が作動し、筐体500が冷却される。このとき、冷却部501が筐体500の伝熱筐体部530の第1の側壁部540の熱を吸熱する。これにより、伝熱筐体部530の第1の側壁部540が冷却され、筐体500内の上方で生成された冷気が下方に向かって流れて通気路602を通過する自然対流を生じさせて筐体500の内部空間の温度が目標温度以下に下げられる。
【0092】
また、冷却部501のある第1の側壁部540の温度が最も低く、次に上面接続部543及び第3の側壁部542の温度が低く、次に第2の側壁部541の温度が低く、底面部500fの温度が最も高い。これにより、筐体500の内部空間に温度分布ができ、自然対流が生じる。自然対流は、先ず、第1の側壁部540付近の温度の低い空気が、温度が最も高い底面部500fに向けて、第1の側壁部540と試薬容器580との間隙を下方に流れ、次に、底面部500f上で試薬容器ラック581の下方の通気路602を左右方向Xの右側に流れ、次に、第2の側壁部541と試薬容器580との間隙を上方に流れ、次に、上面接続部543及び上面外壁部553と試薬容器580との間隙を左右方向Xの左側に流れ、第1の側壁部540付近に戻り、この循環が継続される。
【0093】
一方、筐体500の外側では、
図12に示すように冷却部501の外側のファン804が作動し、装置筐体10の外部の空気が吸気口800からダクト801に流れ込み、ヒートシンク803に供給される。冷却部501により生じた熱は、ヒートシンク803において空気に伝達される。ヒートシンク803を通過した空気は、熱と共にダクト801を通って排気口802に到達し、排気口802から装置筐体10の外部に排気される。こうして、冷却部501の熱が装置筐体10の外部に排熱される。
【0094】
図13に示すように試薬の冷却工程T1の開始後に、反応容器の移送工程S2が行われる。反応容器の移送工程S2では、先ず、
図2に示す分注装置150の容器保持部201が、初期位置から、反応容器収納部51の容器ラック71上に移動し、その後下降し、容器ラック71の空の反応容器70を保持する。
【0095】
次に、分注装置150の容器保持部201が加温部80上に移動し、その後下降し、反応容器70が加温部80の保持孔90に保持される。そして、容器保持部201が上昇する。
【0096】
続いて、検体の分注工程S3(
図13に示す)が行われる。先ず、
図2に示す分注装置150のピペット200が、検体ラック収納部50上に移動し、下降する。ピペット200は、上面部60の孔61を通って、検体ラック収納部50内の検体ラックの検体容器に挿入され、検体を吸引する。
【0097】
その後、ピペット200が検体ラック収納部50上で上昇し、加温部80上に移動する。ピペット200は、加温部80の反応容器70に向けて下降し、検体を反応容器70に注入する。
【0098】
次に、ピペット200が加温部80上で上昇し、洗浄部54上に移動する。ピペット200は、洗浄部54の洗浄槽110に向けて下降し、洗浄槽110に挿入され、洗浄される。最後に、ピペット200が洗浄部54上で上昇する。
【0099】
次に、試薬の分注工程S4が行われる(
図13に示す)。先ず、
図2に示す分注装置150のピペット200が、試薬容器収納部52の筐体500上に移動する。続いて、ピペット200が下降し、上面外壁部553の貫通孔555を通じて筐体500内に進入する。ピペット200は、さらに試薬容器ラック581の試薬容器580に挿入され、試薬容器580の試薬を吸引する。
【0100】
次に、ピペット200は、試薬容器収納部52上で上昇する。次に、加温部材360によりピペット200の試薬が加温される。ピペット200の試薬が加温されながら、ピペット200は、加温部80上に移動する。
【0101】
次に、分注装置150の容器保持部201が、加温部80の反応容器70に向けて下降し、加温部80の反応容器70を保持する。
【0102】
次に、
図5に示すように容器保持部201が加温部80上で上昇するとともに、ピペット200が下降し反応容器70に挿入される。そして、ピペット200は、試薬を容器保持部201の反応容器70に注入する。次に、容器保持部201の反応容器70が、振動部材350により振動され、試薬が入った検体が攪拌される。
【0103】
次に、
図2に示す容器保持部201が、検出部81上に移動し、下降する。容器保持部201は、検出部81の保持孔100に向けて下降し、反応容器70を保持孔100に保持させる。最後に、容器保持部201が検出部81上で上昇する。
【0104】
次に、測定工程S5(
図13に示す)が行われる。検出部81において、反応容器70の検体の凝固因子の活性を分析する血液凝固測定が行われる。
【0105】
最後に、反応容器の回収・廃棄工程S6(
図13に示す)が行われる。先ず、
図2に示す分注装置150の容器保持部201が検出部81の上に移動し、下降する。次に、容器保持部201が、検出部81の反応容器70を保持する。
【0106】
次に、容器保持部201が検出部81上で上昇し、廃棄部55上に移動する。容器保持部201は、廃棄部55の廃棄口120に向けて下降し、反応容器70を廃棄口120に廃棄する。最後に、容器保持部201が廃棄部55上で上昇し、その後、初期位置に戻される。
【0107】
本実施の形態によれば、検体測定装置1の試薬容器収納部52が、筐体500と、筐体500を冷却する冷却部501と、筐体500内において試薬容器580を保持する試薬容器ラック581を有し、冷却部501は、筐体500の第1の側面部500aの一部である第1の側壁部540に設けられ、筐体500内における試薬容器ラック581と底面部500fとの間には通気路602が設けられている。かかる場合、冷却部501により筐体500の第1の側壁部540が冷却されるので、筐体500内の第1の側壁部540付近に下降気流が生じ、筐体500内に通気路602を通過するような自然対流が生じる。これにより、筐体500内の空気を循環させるためのファンを設ける必要がなく、装置の小型化に対応することができる。また、自然対流による冷却により、冷気を筐体500内に行き渡らせ、複数の試薬容器580を周囲から冷却することができ、これにより複数の試薬容器580内の試薬の温度管理を均一に行うことができる。
【0108】
筐体500の上面部500eには、ピペット200が出入りするための貫通孔555が設けられている。かかる場合、ピペット200は筐体500の外部にあり、必要に応じてピペット200が筐体500内に進入して試薬を吸引することができる。このため、筐体500の容積を小さくすることができ、この結果筐体500内に強い自然対流を確実に生じさせることができる。よって、筐体500内の試薬容器580の試薬を安定的かつ十分に冷却することができる。
【0109】
筐体500は、熱伝導性の伝熱筐体部530を有し、伝熱筐体部530は、第1の側壁部540と、第2の側壁部541と、上面接続部543を有し、冷却部501は、第1の側壁部540に設けられている。これにより、伝熱筐体部530の全体が好適に冷却され、試薬容器580の上方と左右から試薬を冷却することができる。この結果、試薬容器580の試薬の冷却を好適かつ安定的に行うことができる。また、冷却部501により先ず伝熱筐体部530自体が冷却され、その後筐体500の内部空気が冷却され、それによって試薬容器580が冷却されるため、試薬容器580に結露することを抑制することができる。
【0110】
筐体500の底面部500fは、伝熱筐体部530よりも熱伝導性の低い部材を含む。これにより、冷却部501が設けられた第1の側壁部540と底面部500fとの間の温度差が大きくなる。この結果、第1の側壁部540近傍から底面部500f側に向かう下降気流が強くなり、自然対流が強くなるため、試薬容器580の試薬を十分に冷却することができる。
【0111】
伝熱筐体部530の上面接続部543は、平面視で、筐体500に収納された試薬容器580に重ならない位置に設けられている。これにより、上面接続部543が冷却され仮に結露しても、水滴が試薬容器580に落ちることを防止することができる。
【0112】
筐体500は、複数の試薬容器580を、第1の側壁部540と第2の側壁部541に沿った前後方向Yに沿って並べて収納可能に構成されている。また、筐体500は、試薬容器ラック581の長手方向を、第1の側壁部540から第2の側壁部541に向かう左右方向Xに対して直交する前後方向Yに向けた状態で、試薬容器ラック581を収納するように構成されている。これにより、自然対流が生じる方向の筐体500の内壁に沿った経路が短くなり、強い自然対流が生じやすくなる。この結果、試薬容器580の試薬を十分に冷却することができる。
【0113】
筐体500は、伝熱筐体部530を覆う断熱筐体部531を有するので、伝熱筐体部530を効率的に冷却することができる。
【0114】
試薬容器収納部52は、筐体500内において、試薬容器ラック581を支持するラック支持部533を有し、ラック支持部533は、筐体500内から引き出し自在に構成されている。これにより、試薬容器580の取り出し、交換を簡単に行うことができる。
【0115】
通気路602は、試薬容器ラック581とラック支持部533の間に形成されている。これにより、自然対流が通過するための通気路602を好適に形成することができる。
【0116】
検体測定装置1は、冷却部501により生じた熱を排熱する排熱部502を備えている。これにより、冷却部501の熱が筐体500に滞留することがないので、筐体500における試薬容器580の試薬の冷却を適切に行うことができる。
【0117】
検体測定装置1は、測定部53及び試薬容器収納部52を内部に有する装置筐体10を備えている。これにより、試薬容器収納部52の筐体500は、装置筐体10の内部に位置する。よって、筐体500の容積を小さくすることができ、筐体500内の試薬容器580の試薬を効率的に冷却することができる。
【0118】
筐体500は、冷却部501の冷却により筐体500の内部に生じる自然対流が、筐体500の第1の側面部500aと試薬容器580との間、通気路602、筐体500の第2の側面部500bと試薬容器580との間、筐体500の上面部500eと試薬容器580との間をこの順で循環するように構成されている。このため、筐体500における試薬容器580の試薬の冷却を適切に行うことができる。
【0119】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0120】
上記実施の形態で記載した検体測定装置1は、他の構成を有するものであってもよい。試薬容器収納部52の筐体500、伝熱筐体部530、断熱筐体部531、底面部500f、ラック支持部533等は他の構成を有するものであってよい。冷却部501、排熱部502も他の構成を有するものであってもよい。冷却部501は、ペルチェ素子に限らず、冷却機能を有するものであれば、他のものであってよい。冷却部501は、ペルチェ素子などの一つの素子から構成されている必要はなく、複数の素子から構成されていてもよい。
【0121】
通気路602は、
図14に示すようにラック支持部533に形成されていてもよい。この場合、通気路602は、ラック支持部533の底部590を貫通するように形成されていてもよい。また、通気路602は、
図15に示すように底面部500fに形成されていてもよい。この場合、通気路602は、レール部570の下部を貫通するように形成されてもよい。さらに、通気路602は、
図16に示すように試薬容器ラック581に形成されていてもよい。
【0122】
冷却部501は、筐体500の第1の側面部500aの一部である第1の側壁部540に設けられていたが、他の側面部500b、500c、500dのいずれかに設けられていてもよい。また冷却部501は、筐体500の上面部500eに設けられていてもよい。かかる場合も、筐体500の上面部500eが冷却されることで、筐体500内の上面部付近の空気が下降し、通気路602を通る自然対流が形成され、これにより試薬容器580の試薬を冷却することができる。また、冷却部501は、その一部が筐体500における通気路620よりも高い部分に設けられていれば、筐体500の他の部分に設けられていてもよい。冷却部501は、筐体500の側面部500a、500b、500c、500dの全体に設けられていてもよく、上面部500eの全体に設けられていてもよい。冷却部501は、筐体500の側面部500a、500b、500c、500dと上面部500eの両方の全体に設けられていてもよい。また、冷却部501は、側面部500a、500b、500c、500d、上面部500eのうちの一部に設けられていてもよい。冷却部501は、筐体500に直接接している必要はなく、ヒートシンクなどの伝熱部材を介して間接的に接していてもよい。
【0123】
本発明の検体測定装置は、血液凝固測定以外の検体測定、血液免疫分析、血球数測定、生化学分析、尿分析等にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、装置の小型化に対応することができる検体測定装置及び検体測定方法を提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0125】
1 検体測定装置
52 試薬容器収納部
53 測定部
70 反応容器
500 筐体
500a乃至500d 側面部
500e 上面部
500f 底面部
501 冷却部
502 排熱部
533 ラック支持部
580 試薬容器
581 試薬容器ラック
602 通気路