(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178678
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】電源装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20231211BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20231211BHJP
H05K 7/12 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H02M3/00 Y
H02M3/00 C
H02M7/48 Z
H02M7/48 M
H05K7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091498
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】半田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】筒 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大暉
【テーマコード(参考)】
4E353
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
4E353AA21
4E353BB01
4E353CC12
4E353DD02
4E353DR08
4E353DR27
4E353DR49
4E353GG21
5H730AA16
5H730AA18
5H730AA20
5H730BB82
5H730CC01
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5H770AA09
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5H770CA02
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5H770HA06Z
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5H770HA15Z
5H770JA13W
5H770JA13Z
5H770LB10
5H770QA25
5H770QA28
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】複数の電源ユニットを備える電源装置において、電源ユニット間の異常の発生を検出できる電源装置を提供する。
【解決手段】複数の電源ユニット10を備え、電源ユニット10同士が着脱可能に連結される電源装置100であって、各電源ユニット10は、電力変換回路140と、電力変換回路140が有する巻線LPが巻回された磁性体コア70,80と、筐体20と、連結機構61,62と、を備え、各電源ユニット10は、隣り合う電源ユニット10の連結機構61,62同士が連結されることにより、隣り合う電源ユニット10が有する磁性体コア70,80同士が磁気的に結合されるように構成されており、連結機構61,62によって各電源ユニット10が連結された状態において、各電源ユニット10のうち、隣り合う電源ユニット10が有する磁性体コア70,80同士の磁気結合状態が異常であるか否かを判定する判定部140を備える。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源ユニット(10)を備え、前記電源ユニット同士が着脱可能に連結される電源装置(100)であって、
各前記電源ユニットは、
外部から給電される給電機能及び外部に電力を出力する出力機能の少なくとも一方を有する電力変換回路(140)と、
前記電力変換回路が有する巻線(LP)が巻回された磁性体コア(70,80)と、
前記電力変換回路及び前記磁性体コアを収容する筐体(20)と、
前記筐体に設けられ、隣り合う前記電源ユニットの前記筐体同士を連結する連結機構(61,62)と、
を備え、
各前記電源ユニットは、隣り合う前記電源ユニットの前記連結機構同士が連結されることにより、隣り合う前記電源ユニットが有する前記磁性体コア同士が磁気的に結合されるように構成されており、
前記連結機構によって各前記電源ユニットが連結された状態において、各前記電源ユニットのうち、隣り合う前記電源ユニットが有する前記磁性体コア同士の磁気結合状態が異常であるか否かを判定する判定部(140)を備える、電源装置。
【請求項2】
隣り合う前記電源ユニットが有する前記磁性体コア間の距離を検出する検出部を備え、
前記判定部は、隣り合う前記電源ユニットの前記連結機構同士が連結された状態において、前記検出部により検出された距離が距離閾値よりも大きい場合に、前記異常であると判定する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記判定部は、複数の前記電源ユニットのうち少なくとも1つにおける前記巻線のインピーダンスを算出し、算出した前記インピーダンスがインピーダンス閾値よりも小さい場合に、前記異常であると判定する、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
各前記電源ユニットのうち前記判定部により前記異常があると判定された電源ユニットである異常ユニットにおける前記電力変換回路の前記給電機能及び前記出力機能を停止させる停止部(140)を備える、請求項2又は3に記載の電源装置。
【請求項5】
各前記電源ユニットの前記電力変換回路に接続されるマスタ制御部(150)と、
前記停止部により前記異常ユニットにおける前記電力変換回路の前記給電機能及び前記出力機能が停止された後に、前記判定部により前記異常があると判定されたことを前記マスタ制御部に通知する通知部(140)と、を備え、
前記マスタ制御部は、前記通知部から前記異常の通知を受けた場合に、各前記電源ユニットにおける前記電力変換回路の前記給電機能及び前記出力機能を停止させる、請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記マスタ制御部は、
各前記電源ユニットにおける前記電力変換回路の前記給電機能及び前記出力機能を停止させた後に、所定の復帰条件を満たした場合に、各前記電源ユニットにおける前記電力変換回路の前記給電機能及び前記出力機能を復帰させる、請求項5に記載の電源装置。
【請求項7】
複数の電源ユニット(10)と、コンピュータ(142A)とを備え、前記電源ユニット同士が着脱可能に連結される電源装置(100)に適用されるプログラムであって、
各前記電源ユニットは、
外部から給電される給電機能及び外部に電力を出力する出力機能の少なくとも一方を有する電力変換回路(140)と、
前記電力変換回路が有する巻線(LP)が巻回された磁性体コア(70,80)と、
前記電力変換回路及び前記磁性体コアを収容する筐体(20)と、
前記筐体に設けられ、隣り合う前記電源ユニットの前記筐体同士を連結する連結機構(61,62)と、
を備え、
各前記電源ユニットは、隣り合う前記電源ユニットの前記連結機構同士が連結されることにより、隣り合う前記電源ユニットが有する前記磁性体コア同士が磁気的に結合されるように構成されており、
前記コンピュータに、
前記連結機構によって各前記電源ユニットが連結された状態において、各前記電源ユニットのうち、隣り合う前記電源ユニットが有する前記磁性体コア同士の磁気結合状態が異常であるか否かを判定する判定処理を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電源ユニットを備える電源装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの電子機器を接続する接続装置が記載されている。この接続装置では、2つの電子機器のうちのいずれか一方の電子機器の筐体内に、電子機器の接触及び離間によって駆動するリンク機構が設けられている。リンク機構は、2つの電子機器同士を着脱可能に連結するための機構である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つの電子機器同士が連結された後において、意図せずに電子機器同士が離間することがある。また、ユーザが2つの電子機器をしっかりと連結したつもりであっても、2つの電子機器がうまく連結されていないことがある。このような異常が発生した状態で、この異常がユーザに認識されないまま電子機器の使用が継続されると、電子機器をユーザの意図通りに動作させることができないといった不都合が生じる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の電源ユニットを備える電源装置において、電源ユニット間の異常の発生を検出できる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の電源ユニットを備え、前記電源ユニット同士が着脱可能に連結される電源装置であって、
各前記電源ユニットは、
外部から給電される給電機能及び外部に電力を出力する出力機能の少なくとも一方を有する電力変換回路と、
前記電力変換回路が有する巻線が巻回された磁性体コアと、
前記電力変換回路及び前記磁性体コアを収容する筐体と、
前記筐体に設けられ、隣り合う前記電源ユニットの前記筐体同士を連結する連結機構と、
を備え、
各前記電源ユニットは、隣り合う前記電源ユニットの前記連結機構同士が連結されることにより、隣り合う前記電源ユニットが有する前記磁性体コア同士が磁気的に結合されるように構成されており、
前記連結機構によって各前記電源ユニットが連結された状態において、各前記電源ユニットのうち、隣り合う前記電源ユニットが有する前記磁性体コア同士の磁気結合状態が異常であるか否かを判定する判定部を備える。
【0007】
上記構成によれば、隣り合う電源ユニットの連結機構同士が連結されることにより、隣り合う電源ユニットが有する磁性体コア同士が磁気的に結合される。これにより、各電源ユニットの電力変換回路は、外部から供給される電力を、磁性体コアを介して他の電源ユニットに送電したり、磁性体コアを介して他の電源ユニットから受電した電力を外部に出力したりすることができる。つまり、各電源ユニットが備える磁性体コアが電力経路として機能する。
【0008】
この場合において、連結機構により電源ユニット同士が連結された後において意図せずに電源ユニット同士が離間することがある、また、ユーザが電源ユニット同士をしっかりと連結したつもりであっても、2つの電源ユニットがうまく連結されていないことがある。このような電源ユニット間の異常により、隣り合う電源ユニットが有する磁性体コア同士が離間するなど、磁性体コア同士の磁気結合状態が異常となると、磁性体コアを介して授受される電力が低下し、電源装置をユーザの意図通りに動作させることができないといった不都合が生じる。この点、上記構成では、連結機構により電源ユニット同士が連結された状態において、隣り合う電源ユニットが有する磁性体コア同士の磁気結合状態が異常であるか否かを判定する。これにより、電源ユニット間の異常の発生を検出することができ、電源装置をユーザの意図通りに動作させることができないといった不都合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】マスタユニット、スレーブユニット及びエンドプレートの外観斜視図。
【
図3】スレーブユニットを第2側壁部側から見た側面図。
【
図5】
図4の断面図に対応するマスタユニットの電力用コアの断面図。
【
図6】
図4の断面図に対応するエンドプレートの電力用コアの断面図。
【
図7】互いに連結された状態の電力用コアの断面図。
【
図10】
図9の断面図に対応するマスタユニットの通信用コアの断面図。
【
図11】
図9の断面図に対応するエンドプレートの通信用コアの断面図。
【
図12】互いに連結された状態の通信用コアの断面図。
【
図15】第1実施形態に係る判定処理の処理手順を示すフローチャート。
【
図17】第1実施形態の変形例1に係る電源装置の簡略図。
【
図18】第1実施形態の変形例2に係る電源装置の簡略図。
【
図19】第1実施形態の変形例3に係る電源装置の簡略図。
【
図20】第2実施形態に係る判定処理の処理手順を示すフローチャート。
【
図21】第3実施形態に係る電源ユニットの外観斜視図。
【
図22】第3実施形態に係る電源装置の外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
本発明に係る電源装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態の電源装置は、例えば移動販売車等のMaaS(Mobility as a Service)に搭載される。本実施形態の電源装置は、多様な外部機器に接続可能であり、接続された外部機器から供給される多様な電圧の直流電力又は交流電力を受け入れるとともに、接続された外部機器に対して適切な電圧の直流電力又は交流電力を供給する。
【0011】
図1は、本実施形態の電源装置100の外観斜視図である。電源装置100は、複数の電源ユニット10を備えており、本実施形態では4つの電源ユニット10を備えている。各電源ユニット10は、筐体20を有している。筐体20の外表面形状は、略直方体形状である。
図1には、筐体20の短手方向(幅方向)をX軸方向にて示し、筐体20の奥行方向をY軸方向にて示し、筐体20の高さ方向をZ軸方向にて示す。各電源ユニット10は、筐体20の幅方向において互いに連結されている。各電源ユニット10は、内部に電力経路及び通信経路を有しており、電力経路を介して相互に電力の授受が可能であるとともに、通信経路を介して相互に通信が可能となっている。
【0012】
電源装置100は、電源ユニット10として、マスタユニット30と、複数のスレーブユニット40とを含む。
【0013】
スレーブユニット40は、給電機能及び出力機能を有する。給電機能は、系統電源、蓄電装置、発電機又は太陽電池等の外部電源から供給される電力を受電し、電力経路を介して他の電源ユニット10に給電する機能である。出力機能は、電力経路を介して他の電源ユニット10から供給される電力を外部に出力する機能である。
【0014】
マスタユニット30は、通信経路を介してスレーブユニット40を制御する。具体的には、マスタユニット30は、スレーブユニット40に対して起動指令及び停止指令を出力する。スレーブユニット40は、マスタユニット30からの起動指令に基づいて給電機能及び出力機能の実行を開始し、マスタユニット30からの停止指令に基づいて給電機能及び出力機能を停止する。また、マスタユニット30は、スレーブユニット40のユニット情報を取得する。ユニット情報には、スレーブユニット40が有する給電機能及び出力機能についての情報と、スレーブユニット40のID情報とが含まれる。さらに、マスタユニット30は、スレーブユニット40の授受電力情報を取得し、スレーブユニット40の授受電力を制御する。本実施形態では、マスタユニット30も給電機能及び出力機能を有しており、マスタユニット30は、マスタユニット30自身の授受電力を制御する。
【0015】
電源装置100において、スレーブユニット40はマスタユニット30に対して着脱可能に連結される。また、各スレーブユニット40同士も着脱可能に連結される。
図1では、マスタユニット30は、右端に配置され、3個のスレーブユニット40が、マスタユニット30の左側に一列に連結され、左端のスレーブユニット40にエンドプレート50が連結されている。電源装置100のユーザは、複数種類のスレーブユニット40のうち、所望の1又は複数のスレーブユニット40を選択し、マスタユニット30に連結することにより、使用用途に応じた電源装置100を構成することができる。
【0016】
次に、マスタユニット30,スレーブユニット40及びエンドプレート50の構成について説明する。
【0017】
図2は、マスタユニット30,スレーブユニット40及びエンドプレート50の外観斜視図である。マスタユニット30の筐体20は、長方形状の底板部31と、底板部31において対向する一対の周縁部から上方に延びる側壁部32と、各側壁部32の上端を覆う天板部33とを備えている。マスタユニット30の筐体20は、天板部33、各側壁部32及び底板部31の一方の縁部により形成された開口部を覆う正面板部34と、天板部33、各側壁部32及び底板部31の他方の縁部により形成された開口部を覆う背面板部35とを備えている。一対の側壁部32のうち、一方を内側側壁部32Aと称し、他方を外側側壁部32Bと称す。
【0018】
同様に、スレーブユニット40の筐体20は、底板部41、側壁部42、天板部43、正面板部44及び背面板部45を備えている。スレーブユニット40の筐体20の幅方向寸法は、マスタユニット30の筐体20の幅方向寸法よりも小さい。スレーブユニット40の筐体20の奥行方向寸法は、マスタユニット30の筐体20の奥行方向寸法と同じである。スレーブユニット40の一対の側壁部42のうち、一方を第1側壁部42Aと称し、他方を第2側壁部42Bと称す。
【0019】
マスタユニット30の正面板部34には、外部機器との間で電力の入出力が可能な入出力端子TAと、外部機器との間で通信が可能な通信端子TBと、電源装置100の電源スイッチSWと、マスタユニット30の状態を表すLEDランプLMとが設けられている。スレーブユニット40の正面板部44には、外部機器との間で電力の入出力が可能な入出力端子TAと、スレーブユニット40の状態を表すLEDランプLMとが設けられている。
【0020】
エンドプレート50は、幅方向寸法がスレーブユニット40の筐体20の幅方向寸法よりも小さい薄板状部材である。エンドプレート50は、内側側壁部52Aと、外側側壁部52Bとを有している。
【0021】
マスタユニット30には、第1連結機構61が設けられている。第1連結機構61は、マスタユニット30の内側側壁部32Aの下端部に設けられたフック61Aと、内側側壁部32Aの上端部に設けられたねじ61Bとを含む。ねじ61Bは、内側側壁部32Aの上端部において奥行方向に並んで複数(2つを例示)設けられている。ねじ61Bは、内側側壁部32Aの外側に向かって斜め下方を向くように設けられている。
【0022】
スレーブユニット40には、マスタユニット30の第1連結機構61に連結する第2連結機構62が設けられている。第2連結機構62は、スレーブユニット40の底板部41に設けられ、フック61Aを引っ掛ける引っ掛け部62Aと、第1側壁部42Aの上端部に設けられ、雌ねじが形成されたねじ穴62Bとを含む。マスタユニット30の内側側壁部32Aとスレーブユニット40の第1側壁部42Aとを当接させて引っ掛け部62Aにフック61Aを引っ掛けた状態で、ねじ61Bがねじ穴62Bにねじ込まれる。これにより、マスタユニット30の筐体20とスレーブユニット40の筐体20とが連結される。
【0023】
図示を省略するが、スレーブユニット40の第2側壁部42Bにも、マスタユニット30と同様の第1連結機構61が設けられている。そのため、隣り合うスレーブユニット40のうち、一方のスレーブユニット40の第1連結機構61と、他方のスレーブユニット40の第2連結機構62とにより、隣り合うスレーブユニット40が連結される。
【0024】
エンドプレート50の内側側壁部52Aにも、スレーブユニット40の第1側壁部42A側と同様に、第2連結機構62が設けられている。そのため、スレーブユニット40の第1連結機構61と、エンドプレート50の第2連結機構62とにより、スレーブユニット40とエンドプレート50とが連結される。なお、本実施形態では、マスタユニット30の外側側壁部32Bと、エンドプレート50の外側側壁部52Bとには、連結機構が設けられていない。なお、以上説明した第1,第2連結機構61,62は、一例であり、種々の構成が採用され得る。
【0025】
マスタユニット30及びスレーブユニット40は、磁性体コアを有している。磁性体コアは、例えばフェライトからなる部材であり、筐体20に収容されている。磁性体コアは、電源装置100を構成する各ユニット間の電力伝達用の電力用コア、及び各ユニット間の通信用の通信用コアである。
【0026】
図3及び
図4を用いて、スレーブユニット40が備える電力用コアについて説明する。
図3は、他のユニットと連結されていない状態のスレーブユニット40を第2側壁部42B側から見た図である。
図4は、
図3のIV-IV線断面図である。
【0027】
スレーブユニット40の電力用コア70は、電力用中間コア71と、2つの電力用外側コア72とからなる。電力用中間コア71及び電力用外側コア72は、筐体20の幅方向に延びる長尺状の部材である。電力用中間コア71の横断面形状は円柱状である。電力用外側コア72は、奥行方向に長い扁平な断面形状を有している。2つの電力用外側コア72のうち、一方は電力用中間コア71の上方に設けられ、他方は電力用中間コア71の下方に設けられている。
【0028】
電力用外側コア72の奥行方向における長さ寸法は、電力用中間コア71の奥行方向における長さ寸法よりも大きい。また、電力用外側コア72の横断面における断面積は、電力用中間コア71の横断面における断面積よりも小さい。具体的には、電力用外側コア72の横断面における断面積は、電力用中間コア71の横断面における断面積の半分である。
【0029】
第1側壁部42Aには、電力用第1開口部46Aが形成されている。第2側壁部42Bのうち幅方向において電力用第1開口部46Aと対向する位置には、電力用第2開口部46Bが形成されている。電力用中間コア71の長手方向の第1端部は、電力用第1開口部46Aから露出している。この第1端部は、第1側壁部42Aの外面から微小に突出している。電力用中間コア71の長手方向の第2端部は、電力用第2開口部46Bから露出している。この第2端部は、第2側壁部42Bの外面から微小に突出している。
【0030】
図4に示すように、電力用中間コア71において、長手方向の中間部は、それ以外の部分よりも径方向寸法が大きい拡径部71Aとされている。スレーブユニット40の筐体20内には、第1中間台座部47A及び第2中間台座部47Bが設けられている。第1中間台座部47Aは、拡径部71Aのうち第1側壁部42A側の部分に対向する円環状の部分である。第2中間台座部47Bは、拡径部71Aのうち第2側壁部42B側の部分に対向する円環状の部分である。
【0031】
拡径部71Aと第1中間台座部47Aとの間には、第1中間付勢部材73Aが設けられており、拡径部71Aと第2中間台座部47Bとの間には、第2中間付勢部材73Bが設けられている。本実施形態の各中間付勢部材73A,73Bは、コイルばねである。各中間付勢部材73A,73Bは、自然長よりも圧縮された状態で設けられている。
図4に示す状態から、電力用中間コア71が第1側壁部42A側に変位すると、電力用中間コア71には電力用第2開口部46B側に向かう力が第1中間付勢部材73Aから付与される。一方、
図4に示す状態から、電力用中間コア71が第2側壁部42B側に変位すると、電力用中間コア71には電力用第1開口部46A側に向かう力が第2中間付勢部材73Bから付与される。
【0032】
第1側壁部42Aには、電力用第1副開口部48Aが形成されている。第2側壁部42Bのうち幅方向において電力用第1副開口部48Aと対向する位置には、電力用第2副開口部48Bが形成されている。電力用外側コア72の長手方向の第1端部は、電力用第1副開口部48Aから露出している。この第1端部は、第1側壁部42Aの外面から微小に突出している。電力用外側コア72の長手方向の第2端部は、電力用第2副開口部48Bから露出している。この第2端部は、第2側壁部42Bの外面から微小に突出している。
【0033】
電力用外側コア72において、長手方向の中間部は、それ以外の部分よりもZ方向寸法が大きい拡径部72Aとされている。スレーブユニット40の筐体20内には、第1外側台座部49A及び第2外側台座部49Bが設けられている。第1外側台座部49Aは、拡径部72Aのうち第1側壁部42A側の部分に対向する部分である。第2外側台座部49Bは、拡径部72Aのうち第2側壁部42B側の部分に対向する部分である。
【0034】
拡径部72Aと第1外側台座部49Aとの間には、第1外側付勢部材74Aが設けられており、拡径部72Aと第2外側台座部49Bとの間には、第2外側付勢部材74Bが設けられている。本実施形態の各外側付勢部材74A,74Bは、板ばねである。
図4に示す状態から、電力用外側コア72が第1側壁部42A側に変位すると、電力用外側コア72には電力用第2副開口部48B側に向かう力が第1外側付勢部材74Aから付与される。一方、
図4に示す状態から、電力用外側コア72が第2側壁部42B側に変位すると、電力用外側コア72には電力用第1副開口部48A側に向かう力が第2外側付勢部材74Bから付与される。
【0035】
図5を用いて、マスタユニット30が備える電力用コアについて説明する。
図5は、
図4の断面図に対応するマスタユニット30の電力用コア80の断面図である。
【0036】
マスタユニット30の電力用コア80は、電力用中間コア81と、2つの電力用外側コア82と、電力用外側コア82及び電力用中間コア81を繋ぐ連結コア83とからなる。電力用中間コア81の横断面形状は、スレーブユニット40の電力用中間コア71の横断面形状と同じである。また、電力用外側コア82の横断面形状は、スレーブユニット40の電力用外側コア72の横断面形状と同じである。また、連結コア83の横断面形状は、電力用外側コア82の横断面形状と同じである。そのため、連結コア83の横断面の面積は、電力用中間コア81の横断面の面積よりも小さい。
【0037】
内側側壁部32Aには、電力用開口部36が形成されている。電力用中間コア81の長手方向の第1端部は、電力用開口部36から露出している。この第1端部は、内側側壁部32Aの外面から微小に突出している。
【0038】
内側側壁部32Aには、電力用副開口部37が形成されている。電力用外側コア82の長手方向の第1端部は、電力用副開口部37から露出している。この第1端部は、内側側壁部32Aの外面から微小に突出している。マスタユニット30の筐体20内には、台座部38が設けられている。台座部38は、電力用コア80のうち外側側壁部32Bに対向する部分である。電力用コア80と台座部38との間には、付勢部材84が設けられている。本実施形態の付勢部材84は、板ばねである。
図5に示す状態から、電力用コア80が外側側壁部32B側に変位すると、電力用コア80には内側側壁部32A側に向かう力が付勢部材84から付与される。
【0039】
図6を用いて、エンドプレート50が備える電力用コアについて説明する。
図6は、
図4の断面図に対応するエンドプレート50の電力用コア90の断面図である。
【0040】
エンドプレート50の電力用コア90は、電力用中間コア91と、2つの電力用外側コア92と、電力用外側コア92及び電力用中間コア91を繋ぐ連結コア93とからなる。電力用中間コア91の横断面形状は、スレーブユニット40の電力用中間コア71の横断面形状と同じである。また、電力用外側コア92の横断面形状は、スレーブユニット40の電力用外側コア72の横断面形状と同じである。また、連結コア93の横断面形状は、電力用外側コア72の横断面形状と同じである。そのため、連結コア93の横断面の面積は、電力用中間コア71の横断面の面積よりも小さい。
【0041】
内側側壁部52Aには、電力用開口部53が形成されている。電力用中間コア91の長手方向の第1端部は、電力用開口部53から露出している。内側側壁部52Aには、電力用副開口部54が形成されている。電力用外側コア92の長手方向の第1端部は、電力用副開口部54から露出している。
【0042】
図7は、マスタユニット30、スレーブユニット40及びエンドプレート50が互いに連結された状態の電力用コアの断面図である。電源装置100では、マスタユニット30、スレーブユニット40及びエンドプレート50の連結機構61,62同士が連結されることにより、隣り合うユニット30,40及びエンドプレート50が有する電力用コア同士が磁気的に結合される。
【0043】
具体的には、スレーブユニット40の第1側壁部42Aとマスタユニット30の内側側壁部32Aとを当接させてスレーブユニット40及びマスタユニット30の連結機構61,62同士が連結されることにより、第1側壁部42Aの開口部46A,48Aから露出したスレーブユニット40の電力用コア70と、内側側壁部32Aの開口部36,37から露出したマスタユニット30の電力用コア80とが当接し、電力用コア同士が磁気的に結合される。この場合スレーブユニット40とマスタユニット30との電力用コア同士が、電力用コア70,80間の磁気抵抗を低減することができ、電力用コアを介した電力伝達効率を向上させることができる。
【0044】
スレーブユニット40の電力用コア70とマスタユニット30の電力用コア80とが当接される場合に、第1側壁部42Aから微少に突出しているスレーブユニット40の電力用コア70が第2側壁部42B側に変位し、電力用コア70には第1側壁部42A側に向かう力が付勢部材73B,74Bから付与される。また、内側側壁部32Aから微少に突出しているマスタユニット30の電力用コア80が外側側壁部32B側に変位し、電力用コア80には内側側壁部32A側に向かう力が付勢部材84から付与される。そのため、スレーブユニット40及びマスタユニット30の連結機構61,62同士が連結されている状態において、スレーブユニット40の電力用コア70とマスタユニット30の電力用コア80とが、付勢部材73B,74B,84によって互いに押し付け合う。これにより、電力用コア70,80間の磁気抵抗を好適に低減することができ、電力用コアを介した電力伝達効率をより向上させることができる。
【0045】
同様に、スレーブユニット40の第1側壁部42Aとスレーブユニット40の第2側壁部42Bとを当接させてスレーブユニット40の連結機構61,62同士が連結されることにより、第1側壁部42Aの開口部46A,48Aから露出した一方のスレーブユニット40の電力用コア70と、第2側壁部42Bの開口部46B,48Bから露出した他方のスレーブユニット40の電力用コア70とが当接する。この場合に、第1側壁部42Aから微少に突出している一方のスレーブユニット40の電力用コア70が第2側壁部42B側に変位し、当該電力用コア70には第1側壁部42A側に向かう力が付勢部材73B,74Bから付与される。また、第2側壁部42Bから微少に突出している他方のスレーブユニット40の電力用コア70が第1側壁部42A側に変位し、電力用コア70には第2側壁部42B側に向かう力が付勢部材73A,74Aから付与される。そのため、2つのスレーブユニット40の連結機構61,62同士が連結されている状態において、スレーブユニット40の電力用コア70同士が、付勢部材73A,73B,74A,74Bによって互いに押し付け合う。
【0046】
また、エンドプレート50の内側側壁部52Aとスレーブユニット40の第2側壁部42Bとを当接させてエンドプレート50とスレーブユニット40の連結機構61,62同士が連結されることにより、内側側壁部52Aの開口部53,54から露出したエンドプレート50の電力用コア90と、第2側壁部42Bの開口部46B,48Bから露出したスレーブユニット40の電力用コア70とが当接する。この場合に、第2側壁部42Bから微少に突出しているスレーブユニット40の電力用コア70が第1側壁部42A側に変位し、電力用コア70には第2側壁部42B側に向かう力が付勢部材73A,74Aから付与される。そのため、エンドプレート50及びスレーブユニット40の連結機構61,62同士が連結されている状態において、エンドプレート50の電力用コア90とスレーブユニット40の電力用コア70とが、付勢部材73A,74Aによって互いに押し付け合う。
【0047】
なお、スレーブユニット40では、電力用コア70の幅方向寸法が筐体20の幅方向寸法よりも微少に長くなっている。そのため、マスタユニット30、スレーブユニット40及びエンドプレート50が互いに連結された状態では、電力用コア70と筐体20との幅方向寸法の差に応じて、スレーブユニット40の電力用コア70が第1側壁部42A側に変位する。電力用コア70の第1側壁部42A側への変位量は、エンドプレート50から離間したスレーブユニット40ほど大きくなる。ただし、電力用コア70と筐体20との幅方向寸法の差は微少であるため、電力用コア70の第1側壁部42A側への変位量は、マスタユニット30の付勢部材84の圧縮により調整される。
【0048】
図8は、マスタユニット30、スレーブユニット40及びエンドプレート50が互いに連結された状態の電力用コアの全体構成図である。
図8に示すように、隣り合うユニット30,40及びエンドプレート50が有する電力用コア同士が磁気的に結合されることにより、電力用コアとして環状の磁路が形成されている。具体的には、互いに当接する複数の電力用中間コア71,81,91と、互いに当接する複数の電力用外側コア72,82,92とが連結コア83,93により連結されることにより、電力伝達用の第1環状磁路ZA及び第2環状磁路ZBが形成されている。各ユニット30,40において、電力用中間コア81,71に電力巻線LPが巻回されている。これにより、電力用コアを用いた電力トランスが形成され、各ユニット30,40の電力巻線LPが磁気結合する。そのため、各ユニット30,40では、電力用コアを介して相互に電力の授受が可能となる。
【0049】
ここで、連結コア83,93の断面積は、電力用中間コア71,81,91の断面積よりも狭くなっている。そのため、連結コア83,93の断面積を電力用中間コア71,81,91の断面積と略同一とする場合に比べて、マスタユニット30及びエンドプレート50の体格を小さくすることが可能となる。
【0050】
具体的には、連結コア83,93の断面積は、電力用中間コア71,81,91の断面積の半分の大きさに設定されている。つまり、連結コア83,93のうち、電力用中間コア71,81,91と一方の電力用外側コア72,82,92とを連結する部分の断面積と、電力用中間コア71,81,91と他方の電力用外側コア72,82,92とを連結する部分の断面積との合計が、電力用中間コア71,81,91の断面積と等しくなるように設定されている。同様に、各電力用外側コア72,82,92の断面積は、電力用中間コア71,81,91の断面積の半分の大きさとなるように設定されている。つまり、各電力用外側コア72,82,92の断面積の合計が、電力用中間コア71,81,91の断面積と等しくなるように設定されている。そのため、電力用中間コア71,81,91を介して流れた磁束を、連結コア83,93を介して各電力用外側コア72,82,92に分散して流すことができる。
【0051】
次に、スレーブユニット40が備える通信用コアについて説明する。
【0052】
スレーブユニット40の通信用コア110は、
図3に示すように、電力用コア70の2つの電力用外側コア72のうち、電力用中間コア71の下方に設けられた電力用外側コア72の下方に設けられている。つまり、通信用コア110は、電力用中間コア71の下方に設けられた電力用外側コア72に対して、電力用中間コア71とは反対側に配置されている。
【0053】
スレーブユニット40の通信用コア110は、通信用中間コア111と、2つの通信用外側コア112とからなる。通信用中間コア111及び通信用外側コア112は、筐体20の幅方向に延びる長尺状の部材である。通信用中間コア111の横断面形状は円柱状であり、電力用外側コア72の横断面形状は、直方体状である。2つの通信用外側コア112のうち、一方は通信用中間コア111の奥行方向における奥側に設けられ、他方は通信用中間コア111の奥行方向における手前側に設けられている。
【0054】
通信用外側コア112の上下方向における長さ寸法は、通信用中間コア111の上下方向における長さ寸法に略等しい。また、通信用外側コア112の横断面における断面積は、通信用中間コア111の横断面における断面積に略等しい。
【0055】
図9は、
図3のIX-IX線断面図である。第1側壁部42Aには、通信用第1開口部113Aが形成されている。第2側壁部42Bのうち幅方向において通信用第1開口部113Aと対向する位置には、通信用第2開口部113Bが形成されている。通信用中間コア111の長手方向の第1端部は、通信用第1開口部113Aから露出している。この第1端部は、第1側壁部42Aの外面から微小に突出している。通信用中間コア111の長手方向の第2端部は、通信用第2開口部113Bから露出している。この第2端部は、第2側壁部42Bの外面から微小に突出している。
【0056】
図9に示すように、通信用中間コア111において、長手方向の中間部は、それ以外の部分よりも径方向寸法が大きい拡径部111Aとされている。スレーブユニット40の筐体20内には、第1中間台座部114A及び第2中間台座部114Bが設けられている。第1中間台座部114Aは、拡径部111Aのうち第1側壁部42A側の部分に対向する円環状の部分である。第2中間台座部114Bは、拡径部71Aのうち第2側壁部42B側の部分に対向する円環状の部分である。
【0057】
拡径部111Aと第1中間台座部114Aとの間には、第1中間付勢部材115Aが設けられており、拡径部111Aと第2中間台座部114Bとの間には、第2中間付勢部材115Bが設けられている。本実施形態の各中間付勢部材115A,115Bは、コイルばねである。各中間付勢部材115A,115Bは、自然長よりも圧縮された状態で設けられている。
図9に示す状態から、通信用中間コア111が第1側壁部42A側に変位すると、通信用中間コア111には通信用第2開口部113B側に向かう力が第1中間付勢部材115Aから付与される。一方、
図9に示す状態から、通信用中間コア111が第2側壁部42B側に変位すると、通信用中間コア111には通信用第1開口部113A側に向かう力が第2中間付勢部材115Bから付与される。
【0058】
第1側壁部42Aには、通信用第1副開口部116Aが形成されている。第2側壁部42Bにおいて幅方向において通信用第1副開口部116Aと対向する位置には、通信用第2副開口部116Bが形成されている。通信用外側コア112の長手方向の第1端部は、通信用第1副開口部116Aから露出している。この第1端部は、第1側壁部42Aの外面から微小に突出している。通信用外側コア112の長手方向の第2端部は、通信用第2副開口部116Bから露出している。この第2端部は、第2側壁部42Bの外面から微小に突出している。
【0059】
通信用外側コア112において、長手方向の中間部は、それ以外の部分よりも径方向寸法が大きい拡径部112Aとされている。スレーブユニット40の筐体20内には、第1外側台座部117A及び第2外側台座部117Bが設けられている。第1外側台座部117Aは、拡径部112Aのうち第1側壁部42A側の部分に対向する部分である。第2外側台座部117Bは、拡径部112Aのうち第2側壁部42B側の部分に対向する部分である。
【0060】
拡径部112Aと第1外側台座部117Aとの間には、第1外側付勢部材118Aが設けられており、拡径部112Aと第2外側台座部117Bとの間には、第2外側付勢部材118Bが設けられている。本実施形態の各外側付勢部材118A,118Bは、板ばねである。
図4に示す状態から、通信用外側コア112が第1側壁部42A側に変位すると、通信用外側コア112には通信用第2副開口部116B側に向かう力が第1外側付勢部材118Aから付与される。一方、
図4に示す状態から、通信用外側コア112が第2側壁部42B側に変位すると、通信用外側コア112には通信用第1副開口部116A側に向かう力が第2外側付勢部材118Bから付与される。
【0061】
図10を用いて、マスタユニット30が備える通信用コアについて説明する。
図10は、
図9の断面図に対応するマスタユニット30の通信用コア120の断面図である。
【0062】
マスタユニット30の通信用コア120は、通信用中間コア121と、2つの通信用外側コア122と、通信用外側コア122及び通信用中間コア121を繋ぐ連結コア123とからなる。通信用中間コア121の横断面形状は、スレーブユニット40の通信用中間コア111の横断面形状と同じである。また、通信用外側コア122の横断面形状は、スレーブユニット40の通信用外側コア112の横断面形状と同じである。また、連結コア83の横断面形状は、電力用外側コア82の横断面形状と同じである。
【0063】
内側側壁部32Aには、通信用開口部124が形成されている。通信用中間コア121の長手方向の第1端部は、通信用開口部124から露出している。この第1端部は、内側側壁部32Aの外面から微小に突出している。
【0064】
内側側壁部32Aには、通信用副開口部125が形成されている。通信用外側コア122の長手方向の第1端部は、通信用副開口部125から露出している。この第1端部は、内側側壁部32Aの外面から微小に突出している。マスタユニット30の筐体20内には、台座部126が設けられている。台座部126は、通信用コア120のうち外側側壁部32Bに対向する部分である。通信用コア120と台座部126との間には、付勢部材127が設けられている。本実施形態の付勢部材127は、板ばねである。
図10に示す状態から、通信用コア120が外側側壁部32B側に変位すると、通信用コア120には内側側壁部32A側に向かう力が付勢部材127から付与される。
【0065】
図11を用いて、エンドプレート50が備える通信用コアについて説明する。
図11は、
図9の断面図に対応するエンドプレート50の通信用コア130の断面図である。
【0066】
エンドプレート50の通信用コア130は、通信用中間コア131と、2つの通信用外側コア132と、通信用外側コア132及び通信用中間コア131を繋ぐ連結コア133とからなる。通信用中間コア131の横断面形状は、スレーブユニット40の通信用中間コア111の横断面形状と同じである。また、通信用外側コア132の横断面形状は、スレーブユニット40の通信用外側コア112の横断面形状と同じである。また、連結コア133の横断面形状は、通信用外側コア132の横断面形状と同じである。
【0067】
内側側壁部52Aには、通信用開口部134が形成されている。通信用中間コア131の長手方向の第1端部は、通信用開口部134から露出している。内側側壁部52Aには、通信用副開口部135が形成されている。通信用外側コア132の長手方向の第1端部は、通信用副開口部135から露出している。
【0068】
図12は、マスタユニット30、スレーブユニット40及びエンドプレート50が互いに連結された状態の通信用コアの断面図である。電源装置100では、マスタユニット30、スレーブユニット40及びエンドプレート50の連結機構61,62同士が連結されることにより、隣り合うユニット30,40及びエンドプレート50が有する電力用コア同士が磁気的に結合されるとともに、通信用コア同士が磁気的に結合される。
【0069】
具体的には、スレーブユニット40の第1側壁部42Aとマスタユニット30の内側側壁部32Aとを当接させてスレーブユニット40及びマスタユニット30の連結機構61,62同士が連結されることにより、第1側壁部42Aの開口部113A,116Aから露出したスレーブユニット40の通信用コア110と、内側側壁部32Aの開口部124,125から露出したマスタユニット30の通信用コア120とが当接し、通信用コア110,120同士が磁気的に結合される。この場合、通信用コア間の磁気抵抗を低減することができ、通信用コア110,120を介した通信の信頼性を向上させることができる。
【0070】
スレーブユニット40の通信用コア110とマスタユニット30の通信用コア120とが当接される場合に、第1側壁部42Aから微少に突出しているスレーブユニット40の通信用コア110が第2側壁部42B側に変位し、通信用コア110には第1側壁部42A側に向かう力が付勢部材115B,118Bから付与される。また、内側側壁部32Aから微少に突出しているマスタユニット30の通信用コア120が外側側壁部32B側に変位し、通信用コア110には内側側壁部32A側に向かう力が付勢部材127から付与される。そのため、スレーブユニット40及びマスタユニット30の連結機構61,62同士が連結されている状態において、スレーブユニット40の通信用コア110とマスタユニット30の通信用コア120とが、付勢部材115B,118B,127によって互いに押し付け合う。これにより、通信用コア間の磁気抵抗を好適に低減することができ、通信用コアを介した通信の信頼性をより向上させることができる。
【0071】
同様に、スレーブユニット40の第1側壁部42Aとスレーブユニット40の第2側壁部42Bとを当接させてスレーブユニット40の連結機構61,62同士が連結されることにより、第1側壁部42Aの開口部113A,116Aから露出した一方のスレーブユニット40の通信用コア110と、第2側壁部42Bの開口部113B,116Bから露出した他方のスレーブユニット40の通信用コア110とが当接する。この場合に、第1側壁部42Aから微少に突出している一方のスレーブユニット40の通信用コア110が第2側壁部42B側に変位し、当該通信用コア110には第1側壁部42A側に向かう力が付勢部材115B,118Bから付与される。また、第2側壁部42Bから微少に突出している他方のスレーブユニット40の電力用コア70が第1側壁部42A側に変位し、当該通信用コア110には第2側壁部42B側に向かう力が付勢部材115A,118Aから付与される。そのため、2つのスレーブユニット40の連結機構61,62同士が連結されている状態において、スレーブユニット40の通信用コア110同士が、付勢部材115A,115B,118A,118Bによって互いに押し付け合う。
【0072】
また、エンドプレート50の内側側壁部52Aとスレーブユニット40の第2側壁部42Bとを当接させてエンドプレート50とスレーブユニット40の連結機構61,62同士が連結されることにより、内側側壁部52Aの開口部134,135から露出したエンドプレート50の通信用コア130と、第2側壁部42Bの開口部113B,116Bから露出したスレーブユニット40の通信用コア110とが当接する。この場合に、第2側壁部42Bから微少に突出しているスレーブユニット40の通信用コア110が第1側壁部42A側に変位し、通信用コア110には第2側壁部42B側に向かう力が付勢部材115A,118Aから付与される。そのため、エンドプレート50及びスレーブユニット40の連結機構61,62同士が連結されている状態において、エンドプレート50の通信用コア130とスレーブユニット40の通信用コア110とが、付勢部材115A,118Aによって互いに押し付け合う。
【0073】
なお、スレーブユニット40では、通信用コア110の幅方向寸法が筐体20の幅方向寸法よりも微少に長くなっている。そのため、マスタユニット30、スレーブユニット40及びエンドプレート50が互いに連結された状態では、通信用コア110と筐体20との幅方向寸法の差に応じて、スレーブユニット40の通信用コア110が第1側壁部42A側に変位する。通信用コア110の第1側壁部42A側への変位量は、エンドプレート50から離間したスレーブユニット40ほど大きくなる。ただし、通信用コア110と筐体20との幅方向寸法の差は微少であるため、通信用コア110の第1側壁部42A側への変位量は、マスタユニット30の付勢部材127の圧縮により調整される。
【0074】
図13は、マスタユニット30、スレーブユニット40及びエンドプレート50が互いに連結された状態の通信用コアの全体構成図である。
図13に示すように、隣り合うユニット30,40及びエンドプレート50が有する通信用コア同士が磁気的に結合されることにより、通信用コアとして環状の磁路が形成されている。具体的には、互いに当接する複数の通信用中間コア111,121,131と、互いに当接する複数の通信用外側コア112,122,132(手前側)とが連結コア123,133により連結されることにより、通信用の第1環状磁路ZC及び第2環状磁路ZDが形成されている。各ユニット30,40において、通信用中間コア121,111に通信巻線LTが巻回されている。これにより、通信用コアを用いた通信トランスが形成され、各ユニット30,40の通信巻線LTが磁気結合する。そのため、各ユニット30,40では、通信用コアを介して相互に通信が可能となる。
【0075】
電力用中間コア71に巻回された電力巻線LPに通電されると、磁束が発生する。
図3に示すように、通信用コア110は、電力用中間コア71の下方に設けられた電力用外側コア72に対して、電力用中間コア71とは反対側に配置されている。そのため、電力用外側コア72が電磁シールドとして機能し、電力巻線LPへの通電に伴う漏れ磁束の影響が、通信用コア110に及ぶことを抑制できる。その結果、通信用コア110を介した通信品質を向上できる。
【0076】
次に、
図14を用いて、各ユニット30,40の回路構成について説明する。マスタユニット30は、電力変換回路140及びマスタ回路150を有する。本実施形態では、マスタユニット30において、電力変換回路140及びマスタ回路150が同一の筐体20に収容されている。また、スレーブユニット40は、電力変換回路140を有する。各ユニット30,40では、筐体20内において、正面板部34,44側に電力変換回路140が設けられ、背面板部35,45側に電力用コア70,80及び通信用コア110,120が設けられている。本実施形態において、マスタ回路150は「マスタ制御部」に相当する。
【0077】
まず、電力変換回路140について説明する。電力変換回路140は、主回路141と、コントローラ142と、ゲートドライバ143と、通信回路144と、同期回路145と、補助電源146とを備えている。主回路141は、PFC(Power factor correction)回路及びDAB(Dual Active Bridge)回路を含む。
【0078】
コントローラ142は、マイコン142Aを備えている。コントローラ142が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウエア及びそれを実行するコンピュータ(マイコン142A)、ソフトウエアのみ、ハードウエアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、コントローラ142がハードウエアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、コントローラ142は、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。
図15等の処理のプログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等の通信ネットワークを介して更新可能である。
【0079】
コントローラ142の主要な処理の一例として、コントローラ142は、主回路141を構成する複数のスイッチング素子を、ゲートドライバ143を用いて制御することにより、給電機能及び出力機能を実行する。本実施形態では、マスタユニット30は、車両の高圧バッテリに接続されており、マスタユニット30のコントローラ142は、主回路141を用いて、高圧バッテリから入力された直流電力を交流電力に変換して電力巻線LPに出力し、電力用コア70,80,90を介してスレーブユニット40に送電する。また、マスタユニット30のコントローラ142は、主回路141を用いて、高圧バッテリから入力された直流電力を、適切な電圧の直流電力又は交流電力に変換して入出力端子TAに出力する。また、スレーブユニット40のコントローラ142は、主回路141を用いて、マスタユニット30から送電された電力を受電し、適切な電圧の直流電力又は交流電力に変換して入出力端子TAに出力する。この場合に、各ユニット30,40のコントローラ142は、補助電源146に蓄えられた電力を用いて、同期回路145から入力される同期信号に基づいて、各ユニット30,40における電力変換制御を行う。
【0080】
通信回路144は、コントローラ142の制御により他のユニット30,40と通信を行う。具体的には、通信回路144は、コントローラ142から入力された信号を、通信パルス信号に変換して通信巻線LTに出力し、通信用コア110,120,130を介して他のユニット30,40に送信する。また、通信回路144は、他のユニット30,40から送信された信号を受信し、受信した信号をコントローラ142に出力する。また、通信回路144は、通信用コア110,120,130を介して授受される微少な電力により補助電源146を充電する。本実施形態において、通信用コア110,120,130を介した通信に用いる通信周波数は、電力用コア70,80,90を介した電力の送電に用いる送電周波数よりも高い。また、通信用コア110,120,130を介して授受される電力は、電力用コア70,80,90を介して授受される電力よりも非常に小さい。
【0081】
また、電力変換回路140は、電圧センサSVと、電流センサSIと、温度センサSTと、距離センサSLとを備えている。電圧センサSVは、電力巻線LPの両端間の電圧を検出電圧VDとして検出する。電流センサSIは、電力巻線LPに流れる電流を検出電流IDとして検出する。温度センサSTは、電力巻線LPの温度を検出温度TDとして検出する。距離センサSLは、例えば光学式の距離センサであり、側壁部に設けられている。具体的には例えば、各ユニット30,40の側壁部における磁性体コアの露出部分の近傍に設けられている。マスタユニット30及びスレーブユニット40の距離センサSLは、隣り合うユニット30,40における磁性体コア間の離間距離LRを検出する。スレーブユニット40の距離センサSLは、隣り合うスレーブユニット40又はエンドプレート50との離間距離LRを検出する。
【0082】
さらに、電力変換回路140は、LEDランプLMを備えている。コントローラ142は、LEDランプLMとして、例えば正常状態や異常状態など、各ユニット30,40の複数の状態に応じた複数色のランプを有しており、コントローラ142は、例えば、各ユニット30,40の状態に応じた色のLEDランプLMを点灯させる。
【0083】
次に、マスタ回路150について説明する。マスタ回路150は、マスタコントローラ151と、無線通信回路152とを備えている。
【0084】
マスタコントローラ151は、マイコン151Aを備えている。マスタコントローラ151が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウエア及びそれを実行するコンピュータ(マイコン151A)、ソフトウエアのみ、ハードウエアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マスタコントローラ151がハードウエアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マスタコントローラ151は、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。
図15等の処理のプログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えば、インターネット等の通信ネットワークを介して更新可能である。
【0085】
マスタコントローラ151の主要な処理の一例として、マスタコントローラ151は、各ユニット30,40における電力変換回路140の電力変換制御を行う。具体的には、マスタコントローラ151は、信号線LSを介してマスタユニット30内のコントローラ142に接続されており、マスタユニット30における電力変換回路140の電力変換制御を行う。また、マスタコントローラ151は、信号線LSを介してマスタユニット30内の通信回路144に接続されており、通信用コア110,120,130を介して各スレーブユニット40における電力変換回路140の電力変換制御を行う。
【0086】
無線通信回路152はアンテナ152Aを有しており、ユーザにより携帯されるスマートフォンやタブレットPC等の携帯通信機器との間で無線通信を行う。ユーザは、無線通信回路152から送信された情報に基づいて、各ユニット30,40の状態、電力巻線LPの温度、及び電力等を確認することができる。本実施形態では、無線通信回路152は、通信端子TBに接続されており、携帯通信機器との間で有線による通信をすることも可能とされている。
【0087】
ところで、電源装置100では、マスタユニット30、スレーブユニット40及びエンドプレート50が、連結機構61,62により連結される。そのため、これらによる連結が解除されるまでは、マスタユニット30、スレーブユニット40及びエンドプレート50の磁性体コアの接触状態が維持され、磁性体コア同士の磁気結合状態が維持される。
【0088】
しかし、例えば、マスタユニット30とスレーブユニット40とがうまく連結されておらず、マスタユニット30とスレーブユニット40とが離間する離間異常が発生することがある。また、マスタユニット30の磁性体コアとスレーブユニット40の磁性体コアとの間に異物が入り込んだ状態で各ユニット30,40が連結されることにより、離間異常が発生し得る。異物は、例えば、導電性異物又は電気的絶縁性を有する異物である。なお、隣り合うスレーブユニット40同士や、スレーブユニット40とエンドプレート50とについても同様に、離間異常が発生し得る。
【0089】
離間異常が発生した場合、磁性体コア同士が離間し、磁性体コア同士の磁気結合状態が異常となる。具体的には例えば電力用コア同士が離間すると、電力用コアからの漏れ磁束が増大し、電力用コアを介して授受される電力が低下する。この場合、ユーザが電源装置100に接続された外部機器を意図通りに動作させることができないといった不都合が生じる。そこで、電力変換回路140のコントローラ142及びマスタ回路150のマスタコントローラ151は、離間異常が発生しているか否かを判定する判定処理を行う。
【0090】
図15に、本実施形態の判定処理の手順を示す。判定処理は、例えば電源装置100動作期間に所定周期で繰り返し実施される。
【0091】
まず、各ユニット30,40のコントローラ142が実行する処理について説明する。コントローラ142は、判定処理を開始すると、ステップS11において、検出電圧VD,検出電流ID及び離間距離LRを取得する。ステップS12では、ステップS11で取得した検出電圧VD及び検出電流IDを用いて電力巻線LPのインピーダンスIPを算出する。本実施形態において、ステップS11の処理が「検出部」に相当する。
【0092】
ステップS13では、ステップS12で算出したインピーダンスIPがインピーダンス閾値IPthよりも小さいか否かを判定する。ステップS13で否定判定すると、判定処理を終了する。一方、ステップS13で肯定判定すると、ステップS14において、ステップS11で取得した離間距離LRが距離閾値Lthよりも大きいか否かを判定する。ステップS14で否定判定すると、判定処理を終了する。
【0093】
一方、ステップS14で肯定判定すると、離間異常が発生していると判定し、ステップS15において、各ユニット30,40のうち、離間異常が発生しているユニットである異常ユニットにおける給電機能及び出力機能を停止させる。異常ユニットは、離間異常がマスタユニット30とスレーブユニット40との間で発生している場合は各ユニット30,40のことであり、スレーブユニット40同士の間で発生している場合には、2つのスレーブユニット40のことであり、スレーブユニット40とエンドプレート50との間で発生している場合にはスレーブユニット40のことである。本実施形態において、ステップS13,S14の処理が「判定部,判定処理」に相当し、ステップS15の処理が「停止部」に相当する。
【0094】
ちなみに、ステップS13又はS14のいずれかの処理を無くしてもよい。例えば、S14の処理を無くす場合、距離センサSLは必須ではない。
【0095】
続くステップS16では、離間異常の発生をマスタコントローラ151に通知し、判定処理を終了する。この通知は、異常ユニットにおける給電機能及び出力機能が停止された後に行われる。本実施形態において、ステップS16の処理が「通知部」に相当する。
【0096】
次に、マスタコントローラ151が実行する処理について説明する。マスタコントローラ151は、判定処理を開始すると、ステップS21において、コントローラ142から離間異常の発生の通知を受信するまで待機する。離間異常の発生の通知を受信していない場合、ステップS22に進み、各ユニット30,40の授受電力等の情報を取得し、判定処理を終了する。一方、離間異常の発生の通知を受信した場合、ステップS23に進み、各ユニット30,40における給電機能及び出力機能を停止させる機能停止指令を出力し、判定処理を終了する。
【0097】
図16を用いて、電源装置100の使用方法について説明する。
図16(A)に、上述した構成を示す。
図16(A)に示す構成以外にも、
図16(B),(C)に示す電源装置100を構成することができる。
図16(B)には、マスタユニット30,スレーブユニット40及びエンドプレート50を1個ずつ備える電源装置100を簡略化して示す。
図16(C)には、マスタユニット30及びエンドプレート50を1個ずつと、2個のスレーブユニット40とを備える電源装置100を簡略化して示す。
図16(A)~(C)に示すように、電源装置100では、使用用途に応じて、使用するスレーブユニット40の数を増減させることが可能である。
【0098】
本実施形態では、連結機構61,62により各ユニット30,40同士が連結された状態において、判定処理が行われ、隣り合うユニット30,40及び隣り合うスレーブユニット40とエンドプレート50とが有する磁性体コア同士の離間異常が発生しているか否かが判定される。これにより、離間異常の発生を検出することができ、電源装置100をユーザの意図通りに動作させることができないといった不都合を解消することができる。
【0099】
具体的には、隣り合うユニット30,40における磁性体コア間の離間距離LR、又は隣り合うスレーブユニット40とエンドプレート50とにおける磁性体コア間の離間距離LRが取得され、取得された離間距離LRが距離閾値Lthよりも大きい場合に、離間異常が発生していると判定される。これにより、隣り合うユニット30,40及び隣り合うスレーブユニット40とエンドプレート50とが離間しているか否かを適正に判定することができるとともに、離間異常が発生している場合には、離間異常が発生している箇所を特定することができる。
【0100】
本実施形態では、電力巻線LPのインピーダンスIPが算出され、算出されたインピーダンスIPがインピーダンス閾値IPthよりも小さい場合に、離間異常が発生していると判定される。インピーダンスIPは、少なくとも1つの隣り合うユニット30,40間、又は隣り合うスレーブユニット40とエンドプレート50との間において離間距離LRが大きくなると、インピーダンス閾値IPthよりも小さくなる。そのため、インピーダンスIPを用いることで、いずれの箇所で離間異常が発生した場合でも、離間異常の発生を検出することができる。
【0101】
本実施形態では、離間異常が発生していると判定された場合に、各ユニット30,40のうち、離間異常が発生しているユニットである異常ユニットにおける給電機能及び出力機能が停止される。これにより、例えば離間異常として、隣り合う電力用コアの間に導電性異物が入り込んでいる場合において、給電機能及び出力機能が継続されることにより導電性異物の温度が過剰に高くなることを抑制することができる。
【0102】
本実施形態では、離間異常が発生していると判定された場合に、離間異常の発生がマスタコントローラ151に通知され、マスタコントローラ151が、各ユニット30,40における給電機能及び出力機能を停止させる機能停止指令を出力する。これにより、電源装置100をユーザの意図通りに動作させることができない状態で、電源装置100の使用が継続されることを抑制することができる。
【0103】
(第1実施形態の変形例1)
図17に示すように、マスタ回路150は、信号線LSに代えて、マスタユニット30の筐体20内に収容された通信用コア120を介して筐体20内の電力変換回路140に接続されてもよい。
【0104】
(第1実施形態の変形例2)
図18に示すように、マスタ回路150は、電力変換回路140が収容された筐体20と異なる筐体160に収容されていてもよい。この場合、電力変換回路140が収容された筐体20と、マスタ回路150が収容された筐体160により、マスタユニット30が構成される。
【0105】
マスタ回路150が収容された筐体160内に磁性体コアが収容されていてもよい。この場合、
図18(A)に示すように、マスタ回路150は、信号線LSを介して筐体160外の電力変換回路140に接続されてもよければ、
図18(B)に示すように、筐体160内に収容された通信用コア120を介して筐体160外の電力変換回路140に接続されてもよい。また、マスタ回路150が収容された筐体160内に磁性体コアが収容されていなくてもよい。この場合、
図18(C)に示すように、マスタ回路150は、信号線LSを介して筐体160外の電力変換回路140に接続されればよい。
【0106】
本変形例では、マスタユニット30において、電力変換回路140及びマスタ回路150が互いに異なる筐体20,160に収容されている。そのため、マスタユニット30のうち、電力変換回路140が収容された筐体20を、スレーブユニット40の筐体20と共通化することができる。
【0107】
(第1実施形態の変形例3)
図19(A)に示すように、連結コアが、各ユニット30,40に設けられないようにしてもよい。この場合、連結コアは、エンドプレート50に設けられる。具体的には、マスタユニット30において、磁性体コアは、筐体20を幅方向に貫通し、マスタユニット30の外側側壁部32B側に配置されたエンドプレート50と結合する。
【0108】
また、
図19(B)に示すように、連結コアが、各ユニット30,40に設けられるようにしてもよい。この場合、エンドプレート50は不要となる。具体的には、スレーブユニット40において、磁性体コアは、スレーブユニット40の第1側壁部42Aから筐体20の幅方向に延びる一方、スレーブユニット40を幅方向に貫通していない。スレーブユニット40に連結コアが設けられており、連結コアは、磁性体コアの第2側壁部42B側の端部を連結する。
【0109】
また、
図19(C)に示すように、マスタユニット30において、電力変換回路140が収容される筐体20とマスタ回路150が収容される筐体160とが異なる場合には、連結コア170を、電力変換回路140が収容される筐体20と、マスタ回路150が収容される筐体160との間に配置するようにしてもよい。この場合に、連結コア170を、筐体20に収容された磁性体コアに対応する部分にのみ形成することで、連結コア170と信号線LSとの干渉を抑制することができる。
【0110】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に
図20を参照しつつ説明する。本実施形態では、判定処理において、全てのユニット30,40における電力変換回路140の給電機能及び出力機能を停止させた後に、電力変換回路140の給電機能及び出力機能を復帰させるか否かを判定する点で、第1実施形態と異なる。
【0111】
図20に、本実施形態における判定処理のフローチャートを示す。
図20において、先の
図15に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0112】
まず、各ユニット30,40のコントローラ142が実行する処理について説明する。コントローラ142は、ステップS16において離間異常の発生をマスタコントローラ151に通知すると、ステップS31に進み、離間距離LRの送信要求を受信するまで待機する。離間距離LRの送信要求を受信した場合、ステップS32に進み、ステップS11で取得した離間距離LRをマスタコントローラ151に送信し、判定処理を終了する。
【0113】
次に、マスタコントローラ151が実行する処理について説明する。マスタコントローラ151は、ステップS23において機能停止指令を出力すると、ステップS41に進み、離間距離LRの送信要求をコントローラ142に送信する。続くステップS42では、離間距離LRを受信するまで待機する。離間距離LRを受信した場合、ステップS43に進み、ステップS42で受信した離間距離LRに基づいて、各ユニット30,40における電力変換回路140の給電機能及び出力機能を復帰させる復帰条件が成立したか否かを判定する。
【0114】
復帰条件は、例えば、離間距離LRが、ユーザによる電源装置100の使用状態に応じた給電機能及び出力機能を発揮できる判定距離以下であるとの条件である。離間距離LRが判定距離以下であれば、電源装置100から外部機器への最大給電電力が低下したとしても、ユーザが外部機器の使用を継続できる。このために、例えば、マスタコントローラ151は、離間異常が発生する直前など、離間異常が発生する前にステップS22で取得された情報に基づいて、電源装置100と外部機器との間の授受電力を取得する。マスタコントローラ151には、授受電力と、その授受電力を実現可能な判定距離とが対応付けられた対応情報が記憶されている。ステップS43では、取得した授受電力と対応情報とに基づいて判定距離を設定し、離間距離LRが判定距離以下であると判定した場合に、復帰条件が成立したと判定すればよい。
【0115】
復帰条件が成立していないと判定すると、判定処理を終了する。一方、復帰条件が成立したと判定すると、ステップS44において、各ユニット30,40における電力変換回路140の給電機能及び出力機能を復帰させる復帰指令を出力し、判定処理を終了する。なお、ステップS44では、復帰条件が成立したことを前提に復帰したことを、例えばLEDランプLMを用いてユーザに報知する処理を行ってもよい。これにより、電源装置100を構成する隣り合うユニット間の連結状態の確認をユーザに促すことができる。
【0116】
以上詳述した本実施形態によれば、離間異常が発生した場合でも、復帰条件が成立した場合には、各ユニット30,40における電力変換回路140の給電機能及び出力機能を復帰させる。これにより、離間異常が発生した場合でも、電源装置100の使用を継続することができる。
【0117】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に
図21~25を参照しつつ説明する。本実施形態では、各電源ユニット10の構成が第1実施形態と異なる。第1実施形態では、隣り合うユニットが一列に並ぶように連結されたが、本実施形態では、ユニット間の連結自由度を高めた構成が採用されている。
【0118】
図21に、本実施形態の電源ユニット10の外観斜視図を示す。電源ユニット10の筐体20は、直方体形状をなしており、底板部、側壁部及び天板部を有する。本実施形態では、
図22に示すように、複数の電源ユニット10が互いに連結されることにより、各電源ユニット10が有する磁性体コアが磁気的に結合するように構成されている。
図22に示す例では、7つの電源ユニット10A~10Gが連結されている。磁性体コアは、電力用コア及び通信用コアを備えている。本実施形態では、各電源ユニット10は、電力用コアとして電力用中間コアのみを有しており、通信用コアとして通信用中間コアのみを有している。
【0119】
図23に、
図22のXXIII-XXIII線断面図を示す。
図23では、各電源ユニット10の電力用コアの断面が示されている。なお、
図23~25では、各電源ユニット10のうち電力用コア以外の部分について、断面を示すハッチングが省略されている。
図23に示すように、各電源ユニット10の電力用コアは、略L字状又は略X字状の断面形状を有している。各電源ユニット10において、電力用コアの端部は、電源ユニット10の4つの側壁部のうち、互いに異なる2以上の側壁部において露出している。本実施形態では、側壁部に露出した電力用コアの端部同士が互いに当接するように電源ユニット10が連結され、その結果、環状の磁路が形成されるように電源ユニット10が連結されている。
図17に示す例では、4つの電源ユニット10A~10Dの電力用コアが互いに当接することにより、環状磁路ZEが形成されているとともに、互いに連結する4つの電源ユニット10D~10Gの電力用コアが互いに当接することにより、環状磁路ZFが形成されている。
【0120】
電力用コアにおける磁性体コアの形状は、
図24(A)~(C)の形状以外にも種々の形状を採用することができ、例えば
図24(D)~(G)に示す形状を採用することができる。なお、
図24では、
図23と同様に、電力用コア以外の部分について、断面を示すハッチングが省略されている。
図24(C)に示す電力用コアの断面形状はX字状をなしており、
図24(D)に示す断面形状はT字状をなしている。
図24(C),(D)に示す電力用コアを備える電源ユニット10では、電力用コアの端部は、電源ユニット10の互いに異なる3以上の側壁部において露出している。また、
図24(E),(F)に示す電力用コアを備える電源ユニット10では、
図24(B)に示すL字状の断面形状を有する電源ユニット10と同様に、電力用コアの端部は、電源ユニット10の互いに隣り合う2つの側壁部において露出している。
【0121】
図24(G)に示す電力用コアを備える電源ユニット10は、
図24(B)に示すL字状の平面形状を有する電源ユニット10を2個連結したものであり、電力用コアは、略C字状の断面形状をしている。電力用コアの両端は、電源ユニット10の同一の側壁部において露出している。そのため、
図25に示すように、
図24(A)に示す断面形状を有する電力用コアと、
図24(G)に示す略C字状の電力用コアとを連結することにより、
図25に示すように、環状磁路ZGが形成される。
【0122】
なお、これまで電力用コアについて説明したが、通信用コアについても同様であるため、説明を省略する。
【0123】
以上説明したように、本実施形態によれば、電源ユニット10の接続の自由度を高めることができる。
【0124】
(第3実施形態の変形例)
図23において、電源ユニット10E~10Gが設けられない構成を採用することもできる。この場合、電源ユニット10Dの2つ側壁部において、電力用コアの端部が露出したままとなる。この場合において、電力用コアの端部が露出したままとなる側壁部にエンドプレート50が連結されることが好ましいが、エンドプレート50は必ずしも連結されなくてもよい。通信用コアについても同様である。
【0125】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0126】
・電源ユニット10の筐体20の形状は、略直方体形状に限られるものではなく、多面体形状であればよい。
【0127】
・電源ユニット10の側壁部に、開口部が設けられていなくてもよい。この場合、磁性体コア同士は、各電源ユニット10において磁性体コアの端部を覆う保護層を介して対向しつつ磁気結合する。
【0128】
・連結機構として、フック61A及びねじ61Bを有する例を示したが、これに限られない。例えば各電源ユニット10にスライド機構が形成されており、他の電源ユニット10に対してスライド可能かつ着脱可能に連結するようにしてもよい。
【0129】
・上記第1実施形態では、電力用コアが2つの電力用外側コアを有する例を示したが、3以上の電力用外側コアを有していてもよい。この場合に、電力用コアが有する電力用外側コアの数がN個(Nは2以上の整数)であれば、各電力用外側コア及び連結コアの断面積は、電力用中間コアの断面積の1/N以上であり、かつ電力用中間コアの断面積よりも小さければよい。
【0130】
・上記第1実施形態では、電源装置100にマスタユニット30が1つ含まれる例を示したが、これに限られず、マスタユニット30が複数含まれていてもよい。また、電源装置100に含まれる電源ユニット10の全てが、マスタユニット30であってもよい。電源装置100にマスタユニット30が複数含まれることで、マスタ回路150が実行する処理を分散させることができ、各マスタ回路150の処理負担を軽減することができる。
【0131】
・上記実施形態では、判定処理において、巻線のインピーダンスとして電力巻線LPのインピーダンスIPを算出する例を示したが、これに代えて、又はこれに加えて通信巻線LTのインピーダンスIPを算出するようにしてもよい。
【0132】
・上記実施形態では、判定処理において、各ユニット30,40のコントローラ142は、離間異常が発生していると判定した場合に、異常ユニットにおける給電機能又は出力機能を停止させる例を示したが、異常ユニットにおける給電機能又は出力機能を停止させることなく、離間異常の発生をマスタコントローラ151に通知するようにしてもよい。この場合、マスタコントローラ151は、機能停止指令を出力し、異常ユニットを含む全てのユニット30,40における電力変換回路140の給電機能及び出力機能を停止させるようにしてもよい。
【0133】
・上記実施形態では、電源装置100を構成する各電源ユニット10が、電力変換回路140及びマスタ回路150の少なくとも一方を含む例を示したが、これに限られない。電源装置100を構成する複数の電源ユニット10のうち少なくとも一つにおいて、電力変換回路140及びマスタ回路150の両方が含まれていなくてもよい。この場合、電力変換回路140及びマスタ回路150が含まれていない電源ユニット10では、筐体20内に磁性体コアのみが含まれることとなる。
【0134】
・上記実施形態では、光学式の距離センサにより離間距離LRを検出する例を示したが、これに限られない。離間距離LRを検出するセンサとして、圧力スイッチ等の機械式センサ、静電スイッチ等の電気式センサ、磁気スイッチ等の磁気式センサを用いてもよい。また、これらのセンサが配置される場所も各ユニット30,40の側壁部における開口部の近傍に限られず、各ユニット30,40の側壁部以外の部分、例えば各ユニット30,40の底板部、天板部、又は各ユニット30,40の内部に設けられてもよい。
【0135】
・上記実施形態では、電力用コアと通信用コアとが、同一の材質からなる例を示したが、電力用コアと通信用コアとの材質が異なっていてもよい。例えば、電力用コアがマンガン亜鉛からなり、通信用コアがニッケル亜鉛からなっていてもよい。
【0136】
・磁性体コアの端部が、筐体20の開口部から外側に突出していなくてもよい。
【符号の説明】
【0137】
10…電源ユニット、20…筐体、61,62…連結機構、70,80…電力用コア、100…電源装置、140…電力変換回路、LP…電力巻線。