(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178679
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】電圧比較回路
(51)【国際特許分類】
H03K 5/153 20060101AFI20231211BHJP
H03K 5/08 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H03K5/153 A
H03K5/08 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091499
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健
【テーマコード(参考)】
5J039
【Fターム(参考)】
5J039DA09
5J039DA11
5J039DB06
5J039KK09
5J039KK10
5J039KK13
5J039KK18
5J039KK20
(57)【要約】
【課題】電力消費の増大を抑制しつつ応答速度を向上させる。
【解決手段】電圧比較回路(1)は、バイアス電流を用いて入力電圧(Vin)を基準電圧(Vref)と比較し且つ比較結果を示す信号(Vout)を出力するよう構成されたメインコンパレータ(10)と、基準電圧より高い第1判定電圧(Vd1)及び基準電圧より低い第2判定電圧(Vd2)を夫々に入力電圧と比較し、入力電圧が第1判定電圧から第2判定電圧までの電圧範囲内に収まる期間の少なくとも一部において、他の期間よりもバイアス電流を増大させるよう構成されたブースト制御回路(20)と、備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアス電流を用いて入力電圧を基準電圧と比較し且つ比較結果を示す信号を出力するよう構成されたメインコンパレータと、
前記基準電圧より高い第1判定電圧及び前記基準電圧より低い第2判定電圧を夫々に前記入力電圧と比較し、前記入力電圧が前記第1判定電圧から前記第2判定電圧までの電圧範囲内に収まる期間の少なくとも一部において、他の期間よりも前記バイアス電流を増大させるよう構成されたブースト制御回路と、備える
、電圧比較回路。
【請求項2】
前記ブースト制御回路は、
前記第1判定電圧を前記入力電圧と比較し、前記第1判定電圧が前記入力電圧よりも高いときにアサート状態となる第1信号を出力するよう構成された第1サブコンパレータと、
前記第2判定電圧を前記入力電圧と比較し、前記入力電圧が前記第2判定電圧よりも高いときにアサート状態となる第2信号を出力するよう構成された第2サブコンパレータと、を有し、
前記第1信号及び前記第2信号に基づき、前記入力電圧が前記電圧範囲内に収まる期間の少なくとも一部において、前記バイアス電流を増大させる
、請求項1に記載の電圧比較回路。
【請求項3】
前記ブースト制御回路は、前記第1信号及び前記第2信号に基づきブースト信号を生成するよう構成されたブースト信号生成回路を更に有し、
前記ブースト信号生成回路は、前記入力電圧が前記電圧範囲内に収まる期間の少なくとも一部において、前記ブースト信号をアサート状態とし、
前記バイアス電流は、前記ブースト信号がアサート状態となるブースト期間において、そうでない期間よりも、大きい
、請求項2に記載の電圧比較回路。
【請求項4】
前記ブースト信号生成回路は、前記第1信号及び前記第2信号と、前記メインコンパレータの出力信号と、に基づき、前記ブースト信号を生成する
、請求項3に記載の電圧比較回路。
【請求項5】
前記メインコンパレータの出力信号は、前記入力電圧が前記基準電圧よりも低いときに第1レベルを有し、前記入力電圧が前記基準電圧よりも高いときに第2レベルを有し、
前記ブースト信号生成回路は、
前記入力電圧が前記第1判定電圧よりも高い状態から前記第1判定電圧よりも低い状態へ遷移することで前記第1信号がネゲート状態からアサート状態に切り替わったことを契機に、前記ブースト信号をネゲート状態からアサート状態に切り替え、その後、前記メインコンパレータの出力信号レベルが前記第2レベルから前記第1レベルに切り替わったことを契機に、前記ブースト信号をアサート状態からネゲート状態に切り替え、且つ、
前記入力電圧が前記第2判定電圧よりも低い状態から前記第2判定電圧よりも高い状態へ遷移することで前記第2信号がネゲート状態からアサート状態に切り替わったことを契機に、前記ブースト信号をネゲート状態からアサート状態に切り替え、その後、前記メインコンパレータの出力信号レベルが前記第1レベルから前記第2レベルに切り替わったことを契機に、前記ブースト信号をアサート状態からネゲート状態に切り替える
、請求項4に記載の電圧比較回路。
【請求項6】
前記ブースト信号生成回路は、前記メインコンパレータの出力信号の遅延信号に基づき、前記ブースト信号のアサート状態からネゲート状態への切り替えを行う
、請求項5に記載の電圧比較回路。
【請求項7】
前記ブースト信号生成回路は、前記第1信号及び前記第2信号の論理積に基づき、前記ブースト信号を生成する
、請求項3に記載の電圧比較回路。
【請求項8】
前記ブースト信号生成回路は、前記第1信号及び前記第2信号がともにアサート状態である期間を前記ブースト期間に設定する
、請求項7に記載の電圧比較回路。
【請求項9】
前記ブースト信号生成回路は、
前記入力電圧が前記第1判定電圧よりも高い状態から前記第1判定電圧よりも低い状態へ遷移することで前記第1信号がネゲート状態からアサート状態に切り替わったことを契機に、前記ブースト信号を第1時間だけアサート状態とし、且つ、
前記入力電圧が前記第2判定電圧よりも低い状態から前記第2判定電圧よりも高い状態へ遷移することで前記第2信号がネゲート状態からアサート状態に切り替わったことを契機に、前記ブースト信号を第2時間だけアサート状態とする
、請求項3に記載の電圧比較回路。
【請求項10】
前記入力電圧は、前記第1判定電圧よりも高い上側電圧と前記第2判定電圧よりも低い下側電圧との間で変動する
、請求項1~9の何れかに記載の電圧比較回路。
【請求項11】
前記入力電圧は、前記上側電圧から前記下側電圧に向けて単調減少した後、前記下側電圧から前記上側電圧に向けて単調増加する変動を周期的に繰り返す
、請求項10に記載の電圧比較回路。
【請求項12】
前記ブースト制御回路は、前記第1判定電圧及び前記第2判定電圧を、前記入力電圧の周波数及び振幅の内の少なくとも一方に応じて、可変設定する
、請求項11に記載の電圧比較回路。
【請求項13】
前記メインコンパレータは、
前記入力電圧及び前記基準電圧を受け、前記入力電圧及び前記基準電圧間の高低関係に応じた信号を第1バイアス電流を用いて出力するよう構成された差動入力段と、
前記差動入力段の出力信号に基づき第2バイアス電流を用いて前記メインコンパレータの出力信号を生成するよう構成された出力段と、を有し、
前記ブースト制御回路は、前記入力電圧が前記電圧範囲内に収まる期間の少なくとも一部において、前記第1バイアス電流及び前記第2バイアス電流を増大させる
、請求項1~9の何れかに記載の電圧比較回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電圧比較回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧比較回路では、バイアス電流を用いて電圧比較動作を行い、その結果を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電圧比較回路において応答速度を高めることは重要である。基本的にバイアス電流を増大させることで応答速度が高まるが、バイアス電流の増大は消費電力の増大を招く。応答速度向上と低消費電力を両立できる技術の開発が期待される。
【0005】
本開示は、応答速度向上及び低消費電力の両立に寄与する電圧比較回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電圧比較回路は、バイアス電流を用いて入力電圧を基準電圧と比較し且つ比較結果を示す信号を出力するよう構成されたメインコンパレータと、前記基準電圧より高い第1判定電圧及び前記基準電圧より低い第2判定電圧を夫々に前記入力電圧と比較し、前記入力電圧が前記第1判定電圧から前記第2判定電圧までの電圧範囲内に収まる期間の少なくとも一部において、前記バイアス電流を増大させるよう構成されたブースト制御回路と、備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、応答速度向上及び低消費電力の両立に寄与する電圧比較回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る電圧比較回路の概略全体構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係り、幾つかの信号及び電圧の関係図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、電圧比較回路の回路図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、両エッジ検出回路の構成
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、両エッジ検出回路に関わる信号波形図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、電圧比較回路のタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、電圧比較回路の変形回路図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、電圧比較回路の回路図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、電圧比較回路のタイミングチャートである。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に属する第3実施例に係り、電圧比較回路の回路図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に属する第3実施例に係り、幾つかの信号のタイミングチャートである。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に属する第5実施例に係り、メインコンパレータの概略内部ブロック図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に属する第5実施例に係り、メインコンパレータの回路図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態に属する第6実施例に係り、発振回路の回路図である。
【
図15】
図15は、本開示の実施形態に属する第6実施例に係り、電圧比較回路の出力信号と発振電圧の各波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“Vd1”によって参照される第1判定電圧は(
図1参照)、第1判定電圧Vd1と表記されることもあるし、判定電圧Vd1又は単に電圧Vd1と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0010】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧はグランドから見た電位を表す。
【0011】
レベルとは電位のレベルを指し、任意の注目した信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の注目した信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。任意の注目した信号について、当該信号がハイレベルであるとき、当該信号の反転信号はローレベルをとり、当該信号がローレベルであるとき、当該信号の反転信号はハイレベルをとる。
【0012】
任意の注目した信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジと称し、ローレベルからハイレベルへの切り替わりのタイミングをアップエッジタイミングと称する。アップエッジをライジングエッジに読み替えて良い。同様に、任意の注目した信号又は電圧において、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジと称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりのタイミングをダウンエッジタイミングと称する。ダウンエッジをフォーリングエッジに読み替えて良い。
【0013】
ハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる任意の信号について、当該信号のレベルがハイレベルとなる期間をハイレベル期間と称し、当該信号のレベルがローレベルとなる期間をローレベル期間と称する。ハイレベル又はローレベルの電圧レベルをとる任意の電圧についても同様である。
【0014】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。また、特に記述なき限り、任意のMOSFETにおいて、バックゲートはソースに短絡されていると考えて良い。任意のスイッチを1以上のFET(電界効果トランジスタ)にて構成することができ、或るスイッチがオン状態のときには当該スイッチの両端間が導通する一方で或るスイッチがオフ状態のときには当該スイッチの両端間が非導通となる。以下、任意のトランジスタ又はスイッチについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。
【0015】
任意の回路素子、配線、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0016】
図1に本開示の実施形態に係る電圧比較回路1の概略全体構成を示す。電圧比較回路1は、メインコンパレータ10と、ブースト制御回路20と、を備える。ブースト制御回路20は、サブコンパレータ21及び22と、ブースト信号生成回路23と、を備える。
【0017】
電圧比較回路1はグランドに接続されると共に電源電圧VDDが加わる端子に接続される。電圧比較回路1はグランド電位を基準に電源電圧VDDに基づいて動作する。従って、メインコンパレータ10、サブコンパレータ21及び22並びにブースト信号生成回路23はグランド電位を基準に電源電圧VDDに基づいて動作する。電源電圧VDDは正の直流電圧である。
【0018】
電圧比較回路1は、入力電圧Vinを基準電圧Vrefと比較することで、入力電圧Vin及び基準電圧Vref間の比較結果を示す信号Voutを生成及び出力する。信号Vout並びに後述の信号SET1、SET2及びBSTは、何れも二値信号である。任意の二値信号はハイレベル又はローレベルの信号レベルを有する。電圧比較回路1における任意の二値信号について、ハイレベルは実質的に電源電圧VDDのレベルを有し、ローレベルはグランドのレベルを有する。尚、信号Voutは、以下、比較結果信号Voutと称されることもあるし、メインコンパレータ10の出力信号Voutと称されることもある。
【0019】
メインコンパレータ10並びにサブコンパレータ21及び22は、夫々に、非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子を備える。
【0020】
メインコンパレータ10の非反転入力端子に対して入力電圧Vinが供給され、メインコンパレータ10の反転入力端子に対して基準電圧Vrefが供給される。入力電圧Vinの値は様々に変化するのに対し、基準電圧Vrefは所定の直流電圧値にて固定される。メインコンパレータ10において、非反転入力端子での入力電圧Vinと反転入力端子での基準電圧Vrefが比較される。そして、入力電圧Vin及び基準電圧Vref間の高低関係を示す信号が比較結果信号Voutとしてメインコンパレータ10にて生成され、メインコンパレータ10の出力端子から比較結果信号Voutが出力される。
【0021】
“Vin>Vref”であるとき、即ち入力電圧Vinが基準電圧Vrefより高いとき、比較結果信号Voutはハイレベルを有する。“Vin<Vref”であるとき、即ち入力電圧Vinが基準電圧Vrefより低いとき、比較結果信号Voutはローレベルを有する。“Vin=Vref”であるとき、即ち入力電圧Vinの値が基準電圧Vrefの値とちょうど一致するとき、比較結果信号Voutはハイレベル又はローレベルを有する。
【0022】
サブコンパレータ21の非反転入力端子に対して第1判定電圧Vd1が供給され、サブコンパレータ21の反転入力端子に対して入力電圧Vinが供給される。第1判定電圧Vd1は、基準電圧Vrefよりも電圧ΔV1だけ高い電圧である。電圧ΔV1は正の直流電圧値を有する。サブコンパレータ21において、非反転入力端子での第1判定電圧Vd1と反転入力端子での入力電圧Vinが比較される。そして、第1判定電圧Vd1と入力電圧Vinとの高低関係を示す信号SET1がサブコンパレータ21にて生成され、サブコンパレータ21の出力端子から信号SET1が出力される。
【0023】
“Vd1>Vin”であるとき、即ち第1判定電圧Vd1が入力電圧Vinより高いとき、信号SET1はハイレベルを有する。“Vd1<Vin”であるとき、即ち第1判定電圧Vd1が入力電圧Vinより低いとき、信号SET1はローレベルを有する。“Vd1=Vin”であるとき、即ち第1判定電圧Vd1の値が入力電圧Vinの値とちょうど一致するとき、信号SET1はハイレベル又はローレベルを有する。本実施形態において、ハイレベルの信号SET1はアサート状態の信号SET1(“1”の論理値を有する信号SET1)に相当し、ローレベルの信号SET1はネゲート状態の信号SET1(“0”の論理値を有する信号SET1)に相当する。
【0024】
サブコンパレータ22の非反転入力端子に対して入力電圧Vinが供給され、サブコンパレータ22の反転入力端子に対して第2判定電圧Vd2が供給される。第2判定電圧Vd2は、基準電圧Vrefよりも電圧ΔV2だけ低い電圧である。電圧ΔV2は正の直流電圧値を有する。サブコンパレータ22において、非反転入力端子での入力電圧Vinと反転入力端子での第2判定電圧Vd2が比較される。そして、入力電圧Vinと第2判定電圧Vd2との高低関係を示す信号SET2がサブコンパレータ22にて生成され、サブコンパレータ22の出力端子から信号SET2が出力される。
【0025】
“Vin>Vd2”であるとき、即ち入力電圧Vinが第2判定電圧Vd2より高いとき、信号SET2はハイレベルを有する。“Vin<Vd2”であるとき、即ち入力電圧Vinが第2判定電圧Vd2より低いとき、信号SET2はローレベルを有する。“Vin=Vd2”であるとき、即ち入力電圧Vinの値が第2判定電圧Vd2の値とちょうど一致するとき、信号SET2はハイレベル又はローレベルを有する。本実施形態において、ハイレベルの信号SET2はアサート状態の信号SET2(“1”の論理値を有する信号SET2)に相当し、ローレベルの信号SET2はネゲート状態の信号SET2(“0”の論理値を有する信号SET2)に相当する。
【0026】
図2に、入力電圧Vinと、基準電圧Vrefと、第1判定電圧Vd1と、第2判定電圧Vd2と、の関係を示す。電圧ΔV1の大きさと電圧ΔV2の大きさは、典型的には互いに同じであるが、互いに異なっていても良い。入力電圧Vinは第1判定電圧Vd1よりも高い上側電圧Vmaxと第2判定電圧Vd2よりも低い下側電圧Vminとの間で変動する。より具体的には例えば、入力電圧Vinは、上側電圧Vmaxから下側電圧Vminに向けて単調減少した後、下側電圧Vminから上側電圧Vmaxに向けて単調増加する変動を周期的に繰り返す。入力電圧Vinの単調減少とは、時間経過と共に入力電圧Vinが単調に低下することを指し、入力電圧Vinの単調増加とは、時間経過と共に入力電圧Vinが単調に上昇することを指す。
【0027】
本実施形態では、以下、入力電圧Vinは基準電圧Vrefを中心に周期的に変動する電圧(脈流電圧)であるとし、正弦波形状の波形を有するものとする。そうすると、電圧Vmax及びVref間の差、並びに、電圧Vmin及びVref間の差は、入力電圧Vinの振幅に相当する。基準電圧Vrefの電位を基準にとれば入力電圧Vinは交流電圧であると解される。入力電圧Vinの1周期分の期間を単位期間と称する。但し、ここでは、説明の便宜上、入力電圧Vinが上側電圧Vmaxと一致している状態から、入力電圧Vinの単調減少及び単調増加を経て上側電圧Vmaxに戻るまでの期間を、1単位期間と捉える。
【0028】
ブースト信号生成回路23は、信号SET1及びSET1に基づきブースト信号BSTを生成及び出力する。メインコンパレータ10には常時バイアス電流が供給されており、メインコンパレータ10は、バイアス電流を用いて入力電圧Vin及び基準電圧Vref間の比較動作と比較結果信号Voutの生成及び出力動作を行う。
【0029】
ブースト制御回路20はメインコンパレータ10のバイアス電流(以下、単にバイアス電流と称され得る)を制御する回路であり、ブースト信号BSTはメインコンパレータ10のバイアス電流の増大を指示する信号として機能する。但し、本実施形態では、ハイレベルのブースト信号BSTがアサート状態のブースト信号BST(“1”の論理値を有するブースト信号BST)に相当し、ローレベルのブースト信号BSTはネゲート状態のブースト信号BST(“0”の論理値を有するブースト信号BST)に相当する。このため、ブースト信号BSTのハイレベル期間においてのみメインコンパレータ10のバイアス電流の増大が指示される。以下、ブースト信号BSTのハイレベル期間はブースト期間と称され得る。ブースト期間におけるバイアス電流をブースト状態のバイアス電流と称し、それ以外の期間(即ちブースト信号BSTのローレベル期間)におけるバイアス電流を通常状態のバイアス電流と称する。ブースト状態のバイアス電流は通常状態のバイアス電流よりも大きい。
【0030】
メインコンパレータ10の応答速度は、メインコンパレータ10の出力段の負荷容量を駆動する能力及び出力段の前段の負荷容量を駆動する能力に依存し、それらの駆動能力はバイアス電流(回路電流)が大きいほど高まる。つまり、バイアス電流の増大により応答速度が高まるが、常時、大きなバイアス電流を供給することは消費電力の増大に繋がる。一方で、高い応答速度が必要となるのは、比較結果信号Voutがハイレベル及びローレベル間で切り替わるタイミング周辺である。
【0031】
これらを考慮し、ブースト信号生成回路23は、信号SET1及びSET2に基づき、入力電圧Vinが第1判定電圧Vd1から第2判定電圧Vd2までの電圧範囲に収まる期間の少なくとも一部においてブースト信号BSTをハイレベルとし、これによってバイアス電流を増大させ、それ以外の期間においてブースト信号BSTをローレベルとする。入力電圧Vinが上記電圧範囲に収まる期間において比較結果信号Voutのレベル切り替えが生じるため、当該期間にてバイアス電流を高めることで必要な応答速度の向上が見込める。一方で、ブースト期間を限定することにより消費電力の増大が抑制される。入力電圧Vinが上記電圧範囲を逸脱する期間では、比較結果信号Voutのレベルを維持すれば足るため、バイアス電流は小さくて良い。
【0032】
以下、複数の実施例の中で、電圧比較回路1に関わる幾つかの具体的な構成例、動作例、応用技術及び変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0033】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。
図3は第1実施例に係る電圧比較回路1の回路図である。第1実施例に係る電圧比較回路1はブースト信号生成回路23としてブースト信号生成回路23Aを備える。ブースト信号生成回路23Aは、FF231及び232とOR回路233と両エッジ検出回路239とを備える。
【0034】
FF231及び232の夫々は、ポジティブエッジトリガ型のDフリップフロップであり、データ入力端子(D)、クロック入力端子、データ出力端子(Q)及びリセット入力端子(R)を備える。FF231及び232におけるリセット入力端子(R)は正論理のリセット入力端子である。
【0035】
FF231及び232は電源電圧VDDに基づいて動作し、電源電圧VDDのレベルはFF231及び232にとってハイレベルに相当する。FF231及び232の各データ入力端子(D)に対し、電源電圧VDDが入力される、即ちハイレベルの信号が入力される。FF231のクロック入力端子に信号SET1が入力され、FF232のクロック入力端子に信号SET2が入力される。
図3の構成において、両エッジ検出回路239から出力される信号RSTがFF231及び232の各リセット入力端子(R)に入力される。FF231のデータ出力端子(Q)からFF231の出力信号Q1が出力される。FF232のデータ出力端子(Q)からFF232の出力信号Q2が出力される。
【0036】
OR回路233は2入力の論理和回路であり、第1入力端子、第2入力端子及び出力端子を有する。OR回路233の第1入力端子にFF231の出力信号Q1が入力され、OR回路233の第2入力端子にFF232の出力信号Q2が入力される。OR回路233の出力端子から、信号Q1及びQ2の論理和信号がブースト信号BSTとして出力される。
【0037】
FF231の出力信号Q1がローレベルである状態を起点にFF231の動作を説明する。FF231のリセット入力端子への入力信号がハイレベルであることを前提に、信号SET1にアップエッジが生じると、FF231は信号Q1にアップエッジを生じさせ、以後、FF231のリセット入力端子への入力信号がハイレベルになるまで、信号Q1をハイレベルに維持する。FF231のリセット入力端子への入力信号にアップエッジが生じると、FF231は信号Q1にダウンエッジを生じさせ、以後、信号SET1に次回のアップエッジが生じるまで信号Q1をローレベルに維持する。
【0038】
FF232の出力信号Q2がローレベルである状態を起点にFF232の動作を説明する。FF232のリセット入力端子への入力信号がローレベルであることを前提に、信号SET2にアップエッジが生じると、FF232は信号Q2にアップエッジを生じさせ、以後、FF232のリセット入力端子への入力信号がハイレベルになるまで、信号Q2をハイレベルに維持する。FF232のリセット入力端子への入力信号にアップエッジが生じると、FF232は信号Q2にダウンエッジを生じさせ、以後、信号SET2に次回のアップエッジが生じるまで信号Q2をローレベルに維持する。
【0039】
OR回路233は、信号Q1及びQ2の双方がローレベルであるときに限り、ブースト信号BSTをローレベルとし、信号Q1及びQ2の内、少なくとも一方がハイレベルであればブースト信号BSTをハイレベルとする。
【0040】
図4に両エッジ検出回路239の内部構成を示す。
図5に両エッジ検出回路239に関わる信号波形を示す。両エッジ検出回路239は原則として信号RSTをローレベルとする。両エッジ検出回路239は比較結果信号Voutのアップエッジ及びダウンエッジを検出し、比較結果信号Voutのアップエッジの発生を契機に微小時間だけ信号RSTをハイレベルとし、且つ、比較結果信号Voutのダウンエッジの発生を契機に微小時間だけ信号RSTをハイレベルとする。
【0041】
両エッジ検出回路239は、インバータ回路239a及び239dと、抵抗239bと、コンデンサ239cと、XOR回路239eと、を備える。インバータ回路239aはメインコンパレータ10からの比較結果信号Voutを受け、比較結果信号Voutの反転信号を自身の出力端子から出力する。インバータ回路239aの出力端子は抵抗239bの一端に接続され、抵抗239bの他端はインバータ回路239dの入力端子に接続されると共にコンデンサ239cを介してグランドに接続される。インバータ回路239dは、自身の入力端子への入力信号の反転信号を信号Vout’として出力する。
【0042】
XOR回路239eは2入力の排他的論理和回路である。XOR回路239eの第1入力端子に比較結果信号Voutが入力され、XOR回路239eの第2入力端子に信号Vout’が入力される。XOR回路239eは、信号Vout及びVout’の排他的論理和信号を出力する。XOR回路239eの出力信号が両エッジ検出回路239の出力信号RSTである。XOR回路239eは、信号Vout及びVout’の内、一方の信号がハイレベルを有し且つ他方の信号がローレベルを有しているときにのみハイレベルの信号RSTを出力し、それ以外のときにはローレベルの信号RSTを出力する。
【0043】
インバータ回路239a及び239dと抵抗239bとコンデンサ239cとにより比較結果信号Voutを所定の微小時間だけ遅延させる遅延回路が構成される。信号Vout’は比較結果信号Voutを所定の微小時間だけ遅延させた信号に相当する。このため、信号RSTは原則としてローレベルであり、信号Voutのアップエッジタイミングから上記微小時間だけ信号Vout、Vout’が夫々ハイレベル、ローレベルとなることで信号RSTがハイレベルとなり、且つ、信号Voutのダウンエッジタイミングから上記微小時間だけ信号Vout、Vout’が夫々ローレベル、ハイレベルとなることで信号RSTがハイレベルとなる。尚、上記微小時間は信号Voutのハイレベル期間の長さ及び信号Voutのローレベル期間の長さよりも十分に短いものとする。
【0044】
図6に、
図3の電圧比較回路1におけるタイミングチャートを示す。時刻t1から時刻t9までの単位期間(
図2参照)に注目する。時間の経過と共に、時刻t1、t2、t3、t4、t5、t6、t7、t8及びt9が、この順番で訪れる。入力電圧Vinは、時刻t1から時刻t5にかけて上側電圧Vmaxから下側電圧Vminへと単調減少し、その後、時刻t5から時刻t9にかけて下側電圧Vminから上側電圧Vmaxへと単調増加する(
図6では電圧Vmax及びVminの図示を省略)。
【0045】
時刻t1において“Vin>Vd1”であるため、信号SET1、SET2、Voutは、夫々、ローレベル、ハイレベル、ハイレベルである。また、時刻t1から始まる単位期間の直前の単位期間中の動作により、時刻t1においてブースト信号BSTはローレベルであり、また時刻t1において信号RSTはローレベルである。時刻t1を起点とする入力電圧Vinの単調減少により、時刻t2を境に“Vin>Vd1”から“Vin<Vd1”に遷移する。このため、時刻t2にて信号SET1にアップエッジが生じ、信号SET1のアップエッジに同期してブースト信号BSTにもアップエッジが生じる。その後、時刻t3を境に“Vin>Vref”から“Vin<Vref”に遷移する。このため、時刻t3にて比較結果信号Voutにダウンエッジが生じる。比較結果信号Voutのダウンエッジにより信号RSTにアップエッジが生じることでFF231がリセットされる。即ち、時刻t3における比較結果信号Voutのダウンエッジに同期して、信号Q1にダウンエッジが生じることでブースト信号BSTにもダウンエッジが生じる。
【0046】
次いで、時刻t4を境に“Vin>Vd2”から“Vin<Vd2”に遷移する。このため、時刻t4にて信号SET2にダウンエッジが生じる。その後、時刻t5を境に入力電圧Vinの変化方向が低下方向から上昇方向に転じ、時刻t6を境に“Vin<Vd2”から“Vin>Vd2”に遷移する。このため、時刻t6にて信号SET2にアップエッジが生じ、信号SET2のアップエッジに同期してブースト信号BSTにもアップエッジが生じる。その後、時刻t7を境に“Vin<Vref”から“Vin>Vref”に遷移する。このため、時刻t7にて比較結果信号Voutにアップエッジが生じる。比較結果信号Voutのアップエッジにより信号RSTにアップエッジが生じることでFF232がリセットされる。即ち、時刻t7における比較結果信号Voutのアップエッジに同期して、信号Q2にダウンエッジが生じることでブースト信号BSTにもダウンエッジが生じる。
【0047】
次いで、時刻t8を境に“Vin<Vd1”から“Vin>Vd1”に遷移する。このため、時刻t8にて信号SET1にダウンエッジが生じる。その後、時刻t9まで入力電圧Vinの単調増加が継続する。
【0048】
このように ブースト信号生成回路23Aは、“Vin>Vd1”から“Vin<Vd1”へ遷移することで信号SET1にアップエッジ(ネゲート状態からアサート状態への切り替わり)が生じたことを契機に、ブースト信号BSTをローレベル(ネゲート状態)からハイレベル(アサート状態)に切り替え、その後、比較結果信号Voutのダウンエッジを契機に、ブースト信号BSTをハイレベル(アサート状態)からローレベル(ネゲート状態)に切り替える(時刻t2及びt3)。
また、ブースト信号生成回路23Aは、“Vin<Vd2”から“Vin>Vd2”へ遷移することで信号SET2にアップエッジ(ネゲート状態からアサート状態への切り替わり)が生じたことを契機に、ブースト信号BSTをローレベル(ネゲート状態)からハイレベル(アサート状態)に切り替え、その後、比較結果信号Voutのアップエッジを契機に、ブースト信号BSTをハイレベル(アサート状態)からローレベル(ネゲート状態)に切り替える(時刻t6及びt7)。
【0049】
このため、入力電圧Vinが基準電圧Vrefに接近してきて入力電圧Vin及び基準電圧Vref間の高低関係が逆転する近辺においてのみ、バイアス電流がブースト状態のバイアス電流へと増大されることになる。比較結果信号Voutにレベル反転が生じるとバイアス電流を通常状態のバイアス電流へと戻す。これにより、高速応答を確保しつつ消費電力を極力抑えることが可能である。
【0050】
図3の構成から両エッジ検出回路239を削除することも可能である。
図3の構成から両エッジ検出回路239を削除する場合、FF231におけるリセット入力端子(R)を負論理のリセット入力端子とする一方でFF232におけるリセット入力端子(R)を正論理のリセット入力端子とした上で、比較結果信号VoutをFF231及び232の夫々のリセット入力端子に入力すれば良い。
【0051】
尚、比較結果信号Voutのレベル反転を契機に、即時に、バイアス電流を通常状態のバイアス電流へと戻す場合、メインコンパレータ10の構成等によっては比較結果信号Voutが不安定になる可能性がある。これを考慮し、
図7に示す如く、ブースト信号生成回路23Aに対して遅延回路234を追加する変形を施しても良い。
図7の構成において、遅延回路234はメインコンパレータ10の出力端子と両エッジ検出回路239の入力端子との間に挿入される。遅延回路234は比較結果信号Voutの遅延信号Vout_dlyを両エッジ検出回路239に入力する。遅延信号Vout_dlyは、比較結果信号Voutを所定の遅延時間T
DLYだけ遅延させた信号である。即ち、比較結果信号Voutにアップエッジが生じると比較結果信号Voutのアップエッジタイミングから遅延時間T
DLYが経過した後に遅延信号Vout_dlyにアップエッジが生じ、比較結果信号Voutにダウンエッジが生じると比較結果信号Voutのダウンエッジタイミングから遅延時間T
DLYが経過した後に遅延信号Vout_dlyにダウンエッジが生じる。
図7の構成が採用される場合、
図4のインバータ回路239aの入力端子及びXOR回路239eの第1入力端子には比較結果信号Voutの代わりに遅延信号Vout_dlyが入力される。このため、
図7の構成が採用される場合、両エッジ検出回路239は、信号RSTを原則としてローレベルとしつつ遅延信号Vout_dlyのアップエッジ及びダウンエッジを検出し、遅延信号Vout_dlyのアップエッジの発生を契機に微小時間だけ信号RSTをハイレベルとし、且つ、遅延信号Vout_dlyのダウンエッジの発生を契機に微小時間だけ信号RSTをハイレベルとする。
【0052】
遅延回路234を挿入する変形が適用された場合、遅延信号Vout_dlyに基づきブースト信号BSTにダウンエッジ(アサート状態からネゲート状態への切り替え)が生じることになる。即ち、時刻t3から遅延時間TDLYだけ後にFF231がリセットされてブースト信号BSTにダウンエッジが生じ、且つ、時刻t7から遅延時間TDLYだけ後にFF232がリセットされてブースト信号BSTにダウンエッジが生じることになる。
【0053】
図3の構成から両エッジ検出回路239を削除可能であるのと同様に、
図7の構成から両エッジ検出回路239を削除することも可能である。
図7の構成から両エッジ検出回路239を削除する場合、FF231におけるリセット入力端子(R)を負論理のリセット入力端子とする一方でFF232におけるリセット入力端子(R)を正論理のリセット入力端子とした上で、遅延信号Vout_dlyをFF231及び232の夫々のリセット入力端子に入力すれば良い。
【0054】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。
図8は第2実施例に係る電圧比較回路1の回路図である。第2実施例に係る電圧比較回路1はブースト信号生成回路23としてブースト信号生成回路23Bを備える。ブースト信号生成回路23BはAND回路235を備える。
【0055】
AND回路235は2入力の論理積回路であり、第1入力端子、第2入力端子及び出力端子を有する。AND回路235の第1、第2入力端子に、夫々、信号SET1、SET2が入力される。AND回路235の出力端子から、信号SET1及びSET2の論理積信号がブースト信号BSTとして出力される。故に、AND回路235は、信号SET1及びSET2が共にハイレベルであるときに限りハイレベルのブースト信号BSTを出力し、信号SET1及びSET2の内の少なくとも一方がローレベルであればローレベルのブースト信号BSTを出力する。つまり、ブースト信号生成回路23Bは、信号SET1及びSET2が共にハイレベル(アサート状態)である期間をブースト期間に設定する。
【0056】
従って、第2実施例では、
図9に示す如く、時刻t1から時刻t9までの単位期間の内、時刻t2及びt4間の期間と時刻t6及びt8間の期間とにおいてブースト信号BSTはハイレベルとなり、他の期間においてブースト信号BSTはローレベルとなる。
【0057】
第2実施例によっても、高速応答を確保しつつ消費電力を抑えることが可能である。第2実施例では、第1実施例と比べて、バイアス電流がブースト状態とされる時間が幾分長くなるが、回路構成が簡素である。
【0058】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。
図10は第3実施例に係る電圧比較回路1の回路図である。第3実施例に係る電圧比較回路1はブースト信号生成回路23としてブースト信号生成回路23Cを備える。ブースト信号生成回路23Cは、ワンショットパルス発生回路236及び237とOR回路238を備える。
【0059】
ワンショットパルス発生回路236は、インバータ回路236a、遅延回路236b及びAND回路236cを備え、信号SET1のアップエッジに同期して単一のパルスを発生させる。発生パルスを含む信号OSHT1が回路236から出される。ワンショットパルス発生回路237は、インバータ回路237a、遅延回路237b及びAND回路237cを備え、信号SET2のアップエッジに同期して単一のパルスを発生させる。発生パルスを含む信号OSHT2が回路237から出される。
図11に、第3実施例に係る信号SET1、SET2、OSHT1、OSHT2及びBSTの波形を示す。
【0060】
インバータ回路236aは信号SET1を受け、信号SET1の反転信号を出力する。遅延回路236bはインバータ回路236aの出力信号の遅延信号SET1B_dlyを生成及び出力する。遅延信号SET1B_dlyは、インバータ回路236aの出力信号を、設定された遅延時間TDLY1だけ遅延させた信号である。即ち、インバータ回路236aの出力信号にアップエッジが生じてから遅延時間TDLY1が経過すると遅延信号SET1B_dlyにアップエッジが生じ、インバータ回路236aの出力信号にダウンエッジが生じてから遅延時間TDLY1が経過すると遅延信号SET1B_dlyにダウンエッジが生じる。
【0061】
AND回路236cは2入力の論理積回路である。AND回路236cは信号SET1と遅延信号SET1B_dlyを受け、信号SET1と遅延信号SET1B_dlyの論理積信号を信号OSHT1として出力する。AND回路236cは、信号SET1及びSET1B_dlyが共にハイレベルであるときに限りハイレベルの信号OSHT1を出力し、信号SET1及びSET1B_dlyの内の少なくとも一方がローレベルであればローレベルの信号OSHT1を出力する。このため、
図11に示す如く、信号SET1のアップエッジに同期して信号OSHT1にアップエッジが生じ、信号SET1のアップエッジから遅延時間T
DLY1後に信号OSHT1にダウンエッジが生じる。遅延時間T
DLY1は、信号OSHT1に含まれるパルスのパルス幅に相当する。
【0062】
インバータ回路237aは信号SET2を受け、信号SET2の反転信号を出力する。遅延回路237bはインバータ回路237aの出力信号の遅延信号SET2B_dlyを生成及び出力する。遅延信号SET2B_dlyは、インバータ回路237aの出力信号を、設定された遅延時間TDLY2だけ遅延させた信号である。即ち、インバータ回路237aの出力信号にアップエッジが生じてから遅延時間TDLY2が経過すると遅延信号SET2B_dlyにアップエッジが生じ、インバータ回路237aの出力信号にダウンエッジが生じてから遅延時間TDLY2が経過すると遅延信号SET2B_dlyにダウンエッジが生じる。
【0063】
AND回路237cは2入力の論理積回路である。AND回路237cは信号SET2と遅延信号SET2B_dlyを受け、信号SET2と遅延信号SET2B_dlyの論理積信号を信号OSHT2として出力する。AND回路237cは、信号SET2及びSET2B_dlyが共にハイレベルであるときに限りハイレベルの信号OSHT2を出力し、信号SET2及びSET2B_dlyの内の少なくとも一方がローレベルであればローレベルの信号OSHT2を出力する。このため、
図11に示す如く、信号SET2のアップエッジに同期して信号OSHT2にアップエッジが生じ、信号SET2のアップエッジから遅延時間T
DLY2後に信号OSHT2にダウンエッジが生じる。遅延時間T
DLY2は、信号OSHT2に含まれるパルスのパルス幅に相当する
【0064】
OR回路238は2入力の論理和回路である。OR回路238は信号OSHT1及びOSHT2を受け、信号OSHT1及びOSHT2の論理和信号をブースト信号BSTとして出力する。このため、信号OSHT1及びOSHT2の少なくとも一方がハイレベルであればブースト信号BSTはハイレベルとなり、信号OSHT1及びOSHT2の双方がローレベルであればブースト信号BSTはローレベルとなる。
【0065】
尚、遅延時間T
DLY1及びT
DLY2に対し典型的には互いに同じ時間が設定されるが、互いに異なる時間が設定されても構わない。時刻t1から時刻t9までの単位期間に注目した場合(
図6参照)、遅延時間T
DLY1の長さが時刻t2及びt3間の長さ以上となるよう、且つ、遅延時間T
DLY2の長さが時刻t6及びt7間の長さ以上となるよう、入力電圧Vinの周波数等を考慮して遅延時間T
DLY1及びT
DLY2が予め設定されれば良い。この際、時刻t2及びt3間の長さと遅延時間T
DLY1の長さとの差をなるだけ小さくすることが好ましい。同様に、時刻t6及びt7間の長さと遅延時間T
DLY2の長さとの差をなるだけ小さくすることが好ましい。
【0066】
遅延時間T
DLY1の長さが時刻t2及びt3間の長さと一致し且つ遅延時間T
DLY2の長さが時刻t6及びt7間の長さと一致すると仮定したならば、第3実施例に係る電圧比較回路1のタイミングチャートは
図6のそれと同じとなり、第1実施例と同様の作用及び効果が奏される。
【0067】
このように、ブースト信号生成回路23Cは、“Vin>Vd1”から“Vin<Vd1”へ遷移することで信号SET1にアップエッジ(ネゲート状態からアサート状態への切り替わり)が生じたことを契機に、ブースト信号BSTを遅延時間TDLY1だけハイレベル(アサート状態)とし、且つ、“Vin<Vd2”から“Vin>Vd2”へ遷移することで信号SET2にアップエッジ(ネゲート状態からアサート状態への切り替わり)が生じたことを契機に、ブースト信号BSTを遅延時間TDLY2だけハイレベル(アサート状態)とする。
【0068】
第3実施例に係る電圧比較回路1は、入力電圧Vinの特性(周波数及び振幅)が既知であるときに好適である。信号OSHT1におけるパルス幅(遅延時間TDLY1)及び信号OSHT2におけるパルス幅(遅延時間TDLY2)を、入力電圧Vinの特性(周波数及び振幅)に応じて可変設定する回路(不図示)を、ブースト信号生成回路23Cに設けておいても良い。
【0069】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。
【0070】
バイアス電流を増大させるべき状態に至った後、実際にバイアス電流を所望電流まで増大させるためには或る程度の時間がかかる。故に、入力電圧Vinの周波数が相当に高いとき、電圧ΔV1及びΔV2(
図2参照)を相応に大きくしなければバイアス電流の増大制御が間に合わない可能性がある。逆に、入力電圧Vinの周波数が十分に低いときには電圧ΔV1及びΔV2は比較的小さくて足る。
【0071】
これらを考慮し、ブースト制御回路20は入力電圧Vinの周波数に応じて判定電圧Vd1及びVd2を可変設定して良い(換言すれば電圧ΔV1及びΔV2を可変設定して良い)。具体的には、入力電圧Vinの周波数が高くなるほど電圧ΔV1及びΔV2の大きさを増大させ、入力電圧Vinの周波数が低くなるほど電圧ΔV1及びΔV2の大きさを減少させれば良い。この際、電圧ΔV1及びΔV2の大きさに上限及び下限を設けておいても良い。入力電圧Vinの周波数に応じて判定電圧Vd1及びVd2を可変設定(換言すれば電圧ΔV1及びΔV2を可変設定)する電圧設定回路(不図示)が、ブースト制御回路20に設けられ得ると解して良い。
【0072】
また、電圧ΔV1及びΔV2の大きさが過度に小さい状態又は過度に大きい状態は好ましくない。電圧ΔV1及びΔV2の大きさが過度に小さければ、バイアス電流を増大させるべきときにバイアス電流の増大制御が間に合わない可能性があるからであり、電圧ΔV1及びΔV2の大きさが過度に大きければ、ブースト期間が過度に長くなって消費電力削減効果が減退するからである。一方、電圧ΔV1及びΔV2の適正な大きさは入力電圧Vinの振幅に依存する。
【0073】
これらを考慮し、ブースト制御回路20は入力電圧Vinの振幅に応じて判定電圧Vd1及びVd2を可変設定して良い(換言すれば電圧ΔV1及びΔV2を可変設定して良い)。具体的には、入力電圧Vinの振幅が大きくなるほど電圧ΔV1及びΔV2の大きさを増大させ、入力電圧Vinの振幅が小さくなるほど電圧ΔV1及びΔV2の大きさを減少されれば良い。この際、電圧ΔV1及びΔV2の大きさに上限及び下限を設けておいても良い。入力電圧Vinの振幅に応じて判定電圧Vd1及びVd2を可変設定(換言すれば電圧ΔV1及びΔV2を可変設定)する電圧設定回路(不図示)が、ブースト制御回路20に設けられ得ると解して良い。
【0074】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。
図12にメインコンパレータ10の概略内部ブロック図を示す。
図12のメインコンパレータ10は差動入力段10a及び出力段10bを備える。差動入力段10aは、入力電圧Vin及び基準電圧Vrefを受け、入力電圧Vin及び基準電圧Vref間の高低関係に応じた信号を第1バイアス電流を用いて生成及び出力する。出力段10bは、差動入力段10aの出力信号に基づき第2バイアス電流を用いてメインコンパレータ10の出力信号Voutを生成及び出力する。
【0075】
ブースト信号BSTがメインコンパレータ10に供給される。差動入力段10aはブースト信号BSTに基づき第1バイアス電流を可変設定し、出力段10bはブースト信号BSTに基づき第2バイアス電流を可変設定する。換言すれば、ブースト制御回路20はブースト信号BSTの出力を通じて第1及び第2バイアス電流の大きさを制御する。差動入力段10aにおいて、ブースト信号BSTのハイレベル期間での第1バイアス電流は、ブースト信号BSTのローレベル期間での第1バイアス電流よりも大きく設定される。出力段10bにおいて、ブースト信号BSTのハイレベル期間での第2バイアス電流は、ブースト信号BSTのローレベル期間での第2バイアス電流よりも大きく設定される。これにより、差動入力段10aの応答速度及び出力段10bの応答速度が向上し、メインコンパレータ10の全体の応答速度が向上する。
【0076】
図13にメインコンパレータ10の内部回路の一例を示す。
図13のメインコンパレータ10はトランジスタ111~123を備えて構成される。
図13に示されるトランジスタ100は、メインコンパレータ10並びにサブコンパレータ21及び22にて共用されるトランジスタであって良い。トランジスタ100がメインコンパレータ10の構成要素に含まれると解しても構わない。
【0077】
トランジスタ100、115~117及び119~122は、Pチャネル型のMOSFETにて構成される。トランジスタ111~114、118及び123は、Nチャネル型のMOSFETにて構成される。配線141には電源電圧VDDが加わる。
【0078】
トランジスタ100、115、116、119、120及び122の各ソースは配線141に接続される。トランジスタ100、115、116、119及び120の各ゲートは配線142に接続される。トランジスタ100のドレインも配線142に接続される。トランジスタ116のドレインはトランジスタ117のソースに接続される。トランジスタ115及び117の各ドレイン並びにトランジスタ111及び112の各ソースはノード143にて共通接続される。トランジスタ111のゲートは端子INPに接続されて入力電圧Vinを受ける。トランジスタ112のゲートは端子INNに接続されて基準電圧Vrefを受ける。端子INP、INNは、夫々、メインコンパレータ10の非反転入力端子、反転入力端子に相当する。尚、トランジスタ111及び112の各バックゲートには電源電圧VDDが加わる。
【0079】
トランジスタ111のドレインは、トランジスタ113のドレイン及びゲートとトランジスタ114のゲートに接続される。トランジスタ112及び114の各ドレイン並びにトランジスタ118のゲートはノード144にて共通接続される。トランジスタ113、114、118及び123の各ソースは配線146に接続される。
図13の構成において配線146はグランドに接続される。
【0080】
トランジスタ118、119及び121の各ドレインとトランジスタ122及び123の各ゲートはノード145にて共通接続される。トランジスタ120のドレインはトランジスタ121のソースに接続される。トランジスタ122及び123の各ドレインは端子OUTにて共通接続される。端子OUTはメインコンパレータ10の出力端子に相当し、端子OUTから比較結果信号Voutが出力される。
【0081】
配線142に対して電源電圧VDDよりも低い正のバイアス電圧が供給され、バイアス電圧に応じたドレイン電流がトランジスタ100に流れる。トランジスタ100、115、116、119及び120によりカレントミラー回路が形成され、トランジスタ100のドレイン電流に比例する電流が、トランジスタ115、116、119及び120の各ドレインに流れる。但し、トランジスタ115及び119には常にドレイン電流が流れるのに対し、トランジスタ116のドレイン電流はスイッチとして機能するトランジスタ117がオンであるときにのみ流れ、且つ、トランジスタ120のドレイン電流はスイッチとして機能するトランジスタ121がオンであるときにのみ流れる。トランジスタ117及び121の各ゲートにはブースト信号BSTの反転信号である信号BSTBが供給される。このため、ブースト信号BSTのハイレベル期間においてトランジスタ117及び121がオンとなり、ブースト信号BSTのローレベル期間においてトランジスタ117及び121がオフとなる。以下、トランジスタ115、116、119、120の各ドレイン電流を、夫々、記号“I1_ref”、“I1_bst”、“I2_ref”、I2_bst”にて参照する。電流I1_bstは第1ブースト電流に相当し、電流I2_bstは第2ブースト電流に相当する。
【0082】
トランジスタ115及び117の各ドレインからノード143に向けて供給される電流Ibias1が、第1バイアス電流である。トランジスタ115~117は第1バイアス電流を生成する第1バイアス電流生成回路131を形成する。ブースト信号BSTのローレベル期間において、電流Ibias1はトランジスタ115のドレイン電流I1_refと一致する。ブースト信号BSTのハイレベル期間(即ちブースト期間)において、電流Ibias1はトランジスタ115のドレイン電流I1_refとトランジスタ116のドレイン電流I1_bstとの和である。つまり、ブースト信号BSTのローレベル期間における電流Ibias1から見て、ブースト信号BSTのハイレベル期間では電流Ibias1に第1ブースト電流(I1_bst)が加算される。
【0083】
トランジスタ111及び112により差動入力対が形成され、入力電圧Vin及び基準電圧Vrefの高低関係に応じた信号がノード144に現れる。ノード144に生じる信号が差動入力段10aの出力信号に相当する。
図13の回路において差動入力段10aはトランジスタ111~114を構成要素として含む。第1バイアス電流生成回路131は差動入力段10aの構成要素に含まれると解して良い。但し、回路131が差動入力段10aとは別に設けられて、回路131が差動入力段10aに第1バイアス電流を供給する、という解釈も採用できる。
【0084】
トランジスタ119及び121の各ドレインからノード145に向けて供給される電流Ibias2が、第2バイアス電流である。トランジスタ119~121は第2バイアス電流を生成する第2バイアス電流生成回路132を形成する。ブースト信号BSTのローレベル期間において、電流Ibias2はトランジスタ119のドレイン電流I2_refと一致する。ブースト信号BSTのハイレベル期間(即ちブースト期間)において、電流Ibias2はトランジスタ119のドレイン電流I2_refとトランジスタ120のドレイン電流I2_bstとの和である。つまり、ブースト信号BSTのローレベル期間における電流Ibias2から見て、ブースト信号BSTのハイレベル期間では電流Ibias2に第2ブースト電流(I2_bst)が加算される。
【0085】
図13の回路において出力段10bはトランジスタ118、122及び123を構成要素として含む。第2バイアス電流生成回路132は出力段10bの構成要素に含まれると解して良い。但し、回路132が出力段10bとは別に設けられて、回路132が出力段10bに第2バイアス電流を供給する、という解釈も採用できる。
【0086】
図13のメインコンパレータ10において、トランジスタ111及び112は互いに同一の構造及び同一の電気的特性を有する。トランジスタ113及び114はカレントミラー回路を形成し、トランジスタ113及び114のドレイン電流値が互いに同じとなるように動作する。従って、“Vin>Vref”であるとき、トランジスタ112のドレイン電流がトランジスタ111のドレイン電流よりも大きくなることでノード144の電位が上昇し、トランジスタ118がオンとなる。結果、トランジスタ122がオン且つトランジスタ123がオフとなることで、比較結果信号Voutはハイレベルとなる。逆に、“Vin<Vref”であるとき、トランジスタ112のドレイン電流がトランジスタ111のドレイン電流よりも小さくなることでノード144の電位が低下し、トランジスタ118がオフとなる。結果、トランジスタ122がオフ且つトランジスタ123がオンとなることで、比較結果信号Voutはローレベルとなる。
【0087】
入力電圧Vin及び基準電圧Vrefの高低関係が逆転するときにおける、ノード144及び145の電位変化速度並びに比較結果信号Voutの電位変化速度は、バイアス電流(Ibias1及びIbias2)が大きいほど高くなる。このため、上記逆転が生じる時刻を含むブースト期間においてバイアス電流を増大させることで応答速度が向上する。
【0088】
尚、
図13の回路は一例に過ぎず、メインコンパレータ10の内部回路構成は様々に変形可能である。即ち例えば、スイッチとしてのトランジスタ117を配線141とトランジスタ116との間に挿入する変形を採用でき、同様に、スイッチとしてのトランジスタ121を配線141とトランジスタ120との間に挿入する変形を採用できる。また例えば、トランジスタ116のソース、ドレインを夫々配線141、ノード143に接続した上で、ブースト期間においてのみトランジスタ116にドレイン電流I1_bstが流れるよう、トランジスタ116のゲート電位を制御するようにしても良い。同様に、トランジスタ120のソース、ドレインを夫々配線141、ノード145に接続した上で、ブースト期間においてのみトランジスタ120にドレイン電流I2_bstが流れるよう、トランジスタ120のゲート電位を制御するようにしても良い。
【0089】
<<第6実施例>>
第6実施例を説明する。第6実施例では上述の電圧比較回路1の利用例を説明する。
図14は第6実施例に係る発振回路500の回路図である。発振回路500は、電圧比較回路501、共振回路502、電流供給回路503及びスイッチ504を備える。電圧比較回路501として上述の電圧比較回路1を用いられる。
【0090】
共振回路502はコイル502L及びコンデンサ502Cの並列回路である。コイル502L及びコンデンサ502Cの各一端はノード505にて共通接続され、コイル502L及びコンデンサ502Cの各他端はノード506にて共通接続される。ノード506から見てノード505に加わる電圧を電圧V
LCと称する。
図14においてノード506はグランド電位を有するが、ノード506の電位は任意の固定電位であって良い。
【0091】
電流供給回路503は電源電圧VCCに基づいて動作し、電流I
LCを発生させる。電流I
LCは定電流であって良い。発生した電流I
LCは共振回路502に供給される。但し、電流供給回路503とノード505との間にスイッチ504が挿入されているため、電流供給回路503は、スイッチ504がオンであるときのみ、スイッチ504を介しノード505に向けて電流I
LCを供給する。スイッチ504がオフであるとき、共振回路502への電流I
LCの供給は遮断される。電圧比較回路501は、ノード505における電圧V
LCを入力電圧Vinとして受ける。電圧比較回路501は、電圧V
LCとしての入力電圧Vinと基準電圧Vrefとの比較結果信号Voutを出力する。
図14では基準電圧Vrefがグランド電位を有することが想定されている。
【0092】
このため、
図15に示す如く、電圧V
LCが正であれば比較結果信号Voutはハイレベルを有し、電圧V
LCが負であれば比較結果信号Voutはローレベルを有する。スイッチ504のオン、オフ状態は、電圧比較回路501からの比較結果信号Voutに基づいて制御される。比較結果信号Voutのハイレベル期間においてスイッチ504はオンに制御され、比較結果信号Voutのローレベル期間においてスイッチ504はオフに制御される。
【0093】
電圧VLCが正であるときにスイッチ504をオンとし、共振回路502に電流ILCを供給する。このため、正帰還により共振回路502が発振し、正弦波状の波形を有する発振電圧が電圧VLCとして得られる。
【0094】
電圧比較回路501では、電圧VLCの正負間の切り替わり時に、極力短い遅延で、比較結果信号Voutのレベルをハイレベル及びローレベル間で変化させることが要求される。上述の電圧比較回路1を電圧比較回路501に適用することにより、低消費電力で当該要求に応えることが可能である。
【0095】
発振電圧を必要とする任意の装置(例えば高周波発振型のクロック生成回路)に発振回路500を適用できる。電圧比較回路の適用例として発振回路を挙げたが、本開示に係る電圧比較回路の適用範囲は発振回路に限定されない。電圧比較動作が必要な任意の装置に本開示に係る電圧比較回路を適用でき、特に低消費電力及び高速動作が求められる用途(例えばセンサIC、液晶駆動用のソースドライバ、携帯型電子機器)において本開示に係る電圧比較回路は有益である。
【0096】
<<第7実施例>>
第7実施例を説明する。第7実施例では、上述した各事項に対する補足事項等を説明する。
【0097】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。任意の二値信号において、ハイレベル及びローレベルの内、何れをアサート状態に対応付け、何れをネゲート状態に対応付けるのかは任意である。
【0098】
各実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示である。上述の主旨を損なわない形で、任意のFETのチャネルの種類はPチャネル型及びNチャネル型間で変更され得る。
【0099】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0100】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0101】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0102】
本開示の一側面に係る電圧比較回路(1)は、バイアス電流を用いて入力電圧(Vin)を基準電圧(Vref)と比較し且つ比較結果を示す信号(Vout)を出力するよう構成されたメインコンパレータ(10)と、前記基準電圧より高い第1判定電圧(Vd1)及び前記基準電圧より低い第2判定電圧(Vd2)を夫々に前記入力電圧と比較し、前記入力電圧が前記第1判定電圧から前記第2判定電圧までの電圧範囲内に収まる期間の少なくとも一部において、他の期間よりも前記バイアス電流を増大させるよう構成されたブースト制御回路(20)と、備える構成(第1の構成)である。
【0103】
これにより、応答速度向上及び低消費電力を両立できる(電力消費の増大を抑制しつつ応答速度を向上させることができる)。
【0104】
上記第1の構成に係る電圧比較回路において、前記ブースト制御回路は、前記第1判定電圧を前記入力電圧と比較し、前記第1判定電圧が前記入力電圧よりも高いときにアサート状態となる第1信号(SET1)を出力するよう構成された第1サブコンパレータ(21)と、前記第2判定電圧を前記入力電圧と比較し、前記入力電圧が前記第2判定電圧よりも高いときにアサート状態となる第2信号(SET2)を出力するよう構成された第2サブコンパレータ(22)と、を有し、前記第1信号及び前記第2信号に基づき、前記入力電圧が前記電圧範囲内に収まる期間の少なくとも一部において、前記バイアス電流を増大させる構成(第2の構成)であっても良い。
【0105】
上記第2の構成に係る電圧比較回路において、前記ブースト制御回路は、前記第1信号及び前記第2信号に基づきブースト信号(BST)を生成するよう構成されたブースト信号生成回路(23)を更に有し、前記ブースト信号生成回路は、前記入力電圧が前記電圧範囲内に収まる期間の少なくとも一部において、前記ブースト信号をアサート状態とし、前記バイアス電流は、前記ブースト信号がアサート状態となるブースト期間において、そうでない期間よりも、大きい構成(第3の構成)であっても良い。
【0106】
上記第3の構成に係る電圧比較回路において(
図3~
図7参照)、前記ブースト信号生成回路は、前記第1信号及び前記第2信号と、前記メインコンパレータの出力信号(Vout)と、に基づき、前記ブースト信号を生成する構成(第4の構成)であっても良い。
【0107】
これにより、応答速度の向上を図りつつ電力消費を極力抑えることが可能となる。
【0108】
上記第4の構成に係る電圧比較回路において(
図6参照)、前記メインコンパレータの出力信号は、前記入力電圧が前記基準電圧よりも低いときに第1レベルを有し、前記入力電圧が前記基準電圧よりも高いときに第2レベルを有し、前記ブースト信号生成回路は、前記入力電圧が前記第1判定電圧よりも高い状態から前記第1判定電圧よりも低い状態へ遷移することで前記第1信号がネゲート状態からアサート状態に切り替わったことを契機に、前記ブースト信号をネゲート状態からアサート状態に切り替え(t2)、その後、前記メインコンパレータの出力信号レベルが前記第2レベルから前記第1レベルに切り替わったことを契機に、前記ブースト信号をアサート状態からネゲート状態に切り替え(t3)、且つ、前記入力電圧が前記第2判定電圧よりも低い状態から前記第2判定電圧よりも高い状態へ遷移することで前記第2信号がネゲート状態からアサート状態に切り替わったことを契機に、前記ブースト信号をネゲート状態からアサート状態に切り替え(t6)、その後、前記メインコンパレータの出力信号レベルが前記第1レベルから前記第2レベルに切り替わったことを契機に、前記ブースト信号をアサート状態からネゲート状態に切り替える(t7)構成(第5の構成)であっても良い。
【0109】
これにより、応答速度の向上を図りつつ電力消費を極力抑えることが可能となる。尚、
図1に示された電圧比較回路の例において、上記第1レベルはローレベルに対応し且つ上記第2レベルはハイレベルに対応するが、それらの関係を逆にすることも可能である。
【0110】
上記第5の構成に係る電圧比較回路において(
図7参照)、前記ブースト信号生成回路は、前記メインコンパレータの出力信号の遅延信号(Vout_dly)に基づき、前記ブースト信号のアサート状態からネゲート状態への切り替えを行う構成(第6の構成)であっても良い。
【0111】
これにより、メインコンパレータの出力信号レベルの反転時において当該出力信号が不安定になる可能性を排除できる。
【0112】
上記第3の構成に係る電圧比較回路において(
図8及び
図9参照)、前記ブースト信号生成回路は、前記第1信号及び前記第2信号の論理積に基づき、前記ブースト信号を生成する構成(第7の構成)であっても良い。
【0113】
これにより、簡素な構成にて応答速度向上及び低消費電力を両立できる。
【0114】
上記第7の構成に係る電圧比較回路において、前記ブースト信号生成回路は、前記第1信号及び前記第2信号がともにアサート状態である期間を前記ブースト期間に設定する構成(第8の構成)であっても良い。
【0115】
上記第3の構成に係る電圧比較回路において(
図10及び
図11参照)、前記ブースト信号生成回路は、前記入力電圧が前記第1判定電圧よりも高い状態から前記第1判定電圧よりも低い状態へ遷移することで前記第1信号がネゲート状態からアサート状態に切り替わったことを契機に、前記ブースト信号を第1時間(T
DLY1)だけアサート状態とし、且つ、前記入力電圧が前記第2判定電圧よりも低い状態から前記第2判定電圧よりも高い状態へ遷移することで前記第2信号がネゲート状態からアサート状態に切り替わったことを契機に、前記ブースト信号を第2時間(T
DLY2)だけアサート状態とする構成(第9の構成)であっても良い。
【0116】
上記第1~第9の構成の何れかに係る電圧比較回路において、前記入力電圧は、前記第1判定電圧よりも高い上側電圧(Vmax)と前記第2判定電圧よりも低い下側電圧(Vmin)との間で変動する構成(第10の構成)であっても良い。
【0117】
上記第10の構成に係る電圧比較回路において、前記入力電圧は、前記上側電圧から前記下側電圧に向けて単調減少した後、前記下側電圧から前記上側電圧に向けて単調増加する変動を周期的に繰り返す構成(第11の構成)であっても良い。
【0118】
上記第11の構成に係る電圧比較回路において、前記ブースト制御回路は、前記第1判定電圧及び前記第2判定電圧を、前記入力電圧の周波数及び振幅の内の少なくとも一方に応じて、可変設定する構成(第12の構成)であっても良い。
【0119】
これにより、入力電圧の特性に応じて第1判定電圧及び第2判定電圧を適正化することができる。
【0120】
上記第1~第12の構成の何れかに係る電圧比較回路において(
図12及び
図13参照)、前記メインコンパレータは、前記入力電圧及び前記基準電圧を受け、前記入力電圧及び前記基準電圧間の高低関係に応じた信号を第1バイアス電流(Ibias1)を用いて出力するよう構成された差動入力段(10a)と、前記差動入力段の出力信号に基づき第2バイアス電流(Ibias2)を用いて前記メインコンパレータの出力信号を生成するよう構成された出力段(10b)と、を有し、前記ブースト制御回路は、前記入力電圧が前記電圧範囲内に収まる期間の少なくとも一部において、前記第1バイアス電流及び前記第2バイアス電流を増大させる構成(第13の構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0121】
1 電圧比較回路
10 メインコンパレータ
20 ブースト制御回路
21、22 サブコンパレータ
23、23A~23C ブースト信号生成回路
231、233 FF
233 OR回路
234 遅延回路
235 AND回路
236、237 ワンショットパルス発生回路
236a、237a インバータ回路
236b、237b 遅延回路
236c、237c AND回路
239 両エッジ検出回路
10a 差動入力段
10b 出力段
100、111~123 トランジスタ
Vin 入力電圧
Vref 基準電圧
Vd1 第1判定電圧
Vd2 第2判定電圧
Vout 比較結果信号
SET1、SET2 信号
BST ブースト信号
Ibias1、Ibias2 バイアス電流