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特開2023-178682制御装置、制御方法、制御プログラム及び燃焼装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178682
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、制御プログラム及び燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/00 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
F23N5/00 S
F23N5/00 J
F23N5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091504
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390029207
【氏名又は名称】オリンピア工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】池谷 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小西 信
(72)【発明者】
【氏名】小林 司
(72)【発明者】
【氏名】町田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】田原 聡太
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003FA01
3K003FA03
3K003FA07
3K003FB03
3K003GA03
3K003JA06
3K003JA13
(57)【要約】
【課題】燃焼装置の燃焼効率の向上に寄与する制御装置を実現する。
【解決手段】本発明の一態様に係る制御装置(14)は、炭素を含まない気体燃料と空気との混合気を燃焼させる燃焼装置(1)に用いられる、気体燃料又は空気の供給量を制御するための制御装置であって、予め設定された条件下での空気比が燃焼装置(1)に供給される空気の温度の変化に追従するようにフィードフォワード制御によって算出した空気比を、混合気の燃焼後の排気から取得した未燃焼の気体燃料濃度が予め設定された基準値となるようにフィードバック制御によって算出した補正値で補正し、算出した空気比を補正値で補正した補正空気比に基づいて気体燃料又は空気の供給量を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素を含まない気体燃料と空気との混合気を燃焼させる燃焼装置に用いられる、前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御するための制御装置であって、
予め設定された条件下での空気比が前記燃焼装置に供給される前記空気の温度の変化に追従するようにフィードフォワード制御によって算出した第1の空気比を、前記混合気の燃焼後の排気から取得した未燃焼の気体燃料濃度が予め設定された基準値となるようにフィードバック制御によって算出した補正値で補正し、前記第1の空気比を前記補正値で補正した補正空気比に基づいて前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御する、制御装置。
【請求項2】
前記混合気の燃焼後の排気から取得した窒素酸化物の濃度が予め設定された第1の閾値以上の場合、前記補正空気比に対して優先して、予め算出した前記窒素酸化物の濃度が前記第1の閾値未満となる第2の空気比に基づいて前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記混合気の燃焼中に取得した前記燃焼装置における前記気体燃料及び前記空気が供給される筐体の温度が予め設定された第2の閾値以上の場合、前記補正空気比に対して優先して、予め算出した前記筐体の温度が前記第2の閾値未満となる第3の空気比に基づいて前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御する、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1の空気比は、前記予め設定された条件下での空気比が前記燃焼装置に供給される前記空気の温度及び圧力の変化に追従するようにフィードフォワード制御によって算出する、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記予め設定された基準値は、前記混合気の燃焼後の排気内の前記未燃焼の気体燃料濃度が0%である、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記空気を供給する第1の供給ラインと、
前記第1の供給ラインに設けられ、前記空気の供給量を調整する第1のバルブと、
前記気体燃料を供給する第2の供給ラインと、
前記第2の供給ラインに設けられ、前記気体燃料の供給量を調整する第2のバルブと、
前記空気の温度を検出する第1の検出部と、
前記未燃焼の気体燃料濃度を検出する第2の検出部と、
前記第1のバルブ又は前記第2のバルブを制御する、請求項1又は2に記載の制御装置と、
前記第1の供給ライン及び前記第2の供給ラインが接続されたバーナーと、
前記バーナーが設けられた筐体と、
を備える、燃焼装置。
【請求項7】
炭素を含まない気体燃料と空気との混合気を燃焼させる燃焼装置に用いられる、前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御するための制御方法であって、
予め設定された条件下での空気比が前記燃焼装置に供給される前記空気の温度の変化に追従するようにフィードフォワード制御によって算出した空気比を、前記混合気の燃焼後の排気から取得した未燃焼の気体燃料濃度が予め設定された基準値となるようにフィードバック制御によって算出した補正値で補正し、前記算出した空気比を前記補正値で補正した補正空気比に基づいて前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御する、制御方法。
【請求項8】
炭素を含まない気体燃料と空気との混合気を燃焼させる燃焼装置に用いられる、前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御するための制御プログラムであって、
予め設定された条件下での空気比が前記燃焼装置に供給される前記空気の温度の変化に追従するようにフィードフォワード制御によって算出した空気比を、前記混合気の燃焼後の排気から取得した未燃焼の気体燃料濃度が予め設定された基準値となるようにフィードバック制御によって算出した補正値で補正し、前記算出した空気比を前記補正値で補正した補正空気比に基づいて前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御する処理をコンピュータに実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法、制御プログラム及び燃焼装置に関し、例えば、炭素を含まない気体燃料と空気との混合気を燃焼させる燃焼装置に用いられる、気体燃料又は空気の供給量を制御するための制御装置、制御方法、制御プログラム及び燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラントなどの燃焼装置は、エコロジーなどの観点から、より効率的に燃料を燃焼させることが求められている。例えば、特許文献1には、燃焼中の水素濃度を算出し、算出した水素濃度に基づいて、水素及び空気の供給量を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-184896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人は、以下の課題を見出した。燃料に用いられる空気は、空気の温度によって当該空気に含まれる酸素量が異なるため、特許文献1の技術のように、燃焼中の水素濃度のみによって水素及び空気の供給量を調整しても、燃焼効率の向上に限界がある。
【0005】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、燃焼装置の燃焼効率の向上に寄与する、制御装置、制御方法、制御プログラム及び燃焼装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る制御装置は、炭素を含まない気体燃料と空気との混合気を燃焼させる燃焼装置に用いられる、前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御するための制御装置であって、
予め設定された条件下での空気比が前記燃焼装置に供給される前記空気の温度の変化に追従するようにフィードフォワード制御によって算出した第1の空気比を、前記混合気の燃焼後の排気から取得した未燃焼の気体燃料濃度が予め設定された基準値となるようにフィードバック制御によって算出した補正値で補正し、前記第1の空気比を前記補正値で補正した補正空気比に基づいて前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御する。
【0007】
上述の制御装置は、前記混合気の燃焼後の排気から取得した窒素酸化物の濃度が予め設定された第1の閾値以上の場合、前記補正空気比に対して優先して、予め算出した前記窒素酸化物の濃度が前記第1の閾値未満となる第2の空気比に基づいて前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御することが好ましい。
【0008】
上述の制御装置は、前記混合気の燃焼中に取得した前記燃焼装置における前記気体燃料及び前記空気が供給される筐体の温度が予め設定された第2の閾値以上の場合、前記補正空気比に対して優先して、予め算出した前記筐体の温度が前記第2の閾値未満となる第3の空気比に基づいて前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御することが好ましい。
【0009】
上述の制御装置において、前記第1の空気比は、前記予め設定された条件下での空気比が前記燃焼装置に供給される前記空気の温度及び圧力の変化に追従するようにフィードフォワード制御によって算出することが好ましい。
【0010】
上述の制御装置において、前記予め設定された基準値は、前記混合気の燃焼後の排気内の前記未燃焼の気体燃料濃度が0%であることが好ましい。
【0011】
本開示の一態様に係る燃焼装置は、
前記空気を供給する第1の供給ラインと、
前記第1の供給ラインに設けられ、前記空気の供給量を調整する第1のバルブと、
前記気体燃料を供給する第2の供給ラインと、
前記第2の供給ラインに設けられ、前記気体燃料の供給量を調整する第2のバルブと、
前記空気の温度を検出する第1の検出部と、
前記未燃焼の気体燃料濃度を検出する第2の検出部と、
前記第1のバルブ又は前記第2のバルブを制御する、上述の制御装置と、
前記第1の供給ライン及び前記第2の供給ラインが接続されたバーナーと、
前記バーナーに設けられた筐体と、
を備える。
【0012】
本開示の一態様に係る制御方法は、炭素を含まない気体燃料と空気との混合気を燃焼させる燃焼装置に用いられる、前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御するための制御方法であって、
予め設定された条件下での空気比が前記燃焼装置に供給される前記空気の温度の変化に追従するようにフィードフォワード制御によって算出した空気比を、前記混合気の燃焼後の排気から取得した未燃焼の気体燃料濃度が予め設定された基準値となるようにフィードバック制御によって算出した補正値で補正し、前記算出した空気比を前記補正値で補正した補正空気比に基づいて前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御する。
【0013】
本開示の一態様に係る制御プログラムは、炭素を含まない気体燃料と空気との混合気を燃焼させる燃焼装置に用いられる、前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御するための制御プログラムであって、
予め設定された条件下での空気比が前記燃焼装置に供給される前記空気の温度の変化に追従するようにフィードフォワード制御によって算出した空気比を、前記混合気の燃焼後の排気から取得した未燃焼の気体燃料濃度が予め設定された基準値となるようにフィードバック制御によって算出した補正値で補正し、前記算出した空気比を前記補正値で補正した補正空気比に基づいて前記気体燃料又は前記空気の供給量を制御する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、燃焼装置の燃焼効率の向上に寄与する、制御装置、制御方法、制御プログラム及び燃焼装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態の燃焼装置を模式的に示す図である。
図2】実施の形態の燃焼装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態の制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態の燃焼装置において空気の供給量を制御する流れを示すフローチャート図である。
図5】実施の形態の燃焼装置での時間と燃焼空気量との関係を示す図である。
図6】制御装置に含まれるハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0017】
先ず、本実施の形態の燃焼装置の構成を説明する。図1は、本実施の形態の燃焼装置を模式的に示す図である。図2は、本実施の形態の燃焼装置の制御系の構成を示すブロック図である。本実施の形態の燃焼装置1は、水素やアンモニアなどの炭素を含まない気体燃料と空気との混合気を燃焼させる。
【0018】
燃焼装置1は、図1及び図2に示すように、筐体2、バーナー3、第1の供給ライン4、ファン5、第1のバルブ6、第2の供給ライン7、第2のバルブ8、第1の検出部9、第2の検出部10、第3の検出部11、第4の検出部12、第5の検出部13及び制御装置14を備えている。
【0019】
筐体2は、供給された気体燃料と空気との混合気を燃焼させる燃焼室であり、図1に示すように、筐体2に煙突2aが接続されている。バーナー3は、筐体2に設けられており、供給された気体燃料と空気との混合気を燃焼させる燃焼機である。第1の供給ライン4は、空気をバーナー3に供給するための供給管であり、第1の供給ライン4の一方の端部がバーナー3に接続されている。
【0020】
ファン5は、図1に示すように、第1の供給ライン4の他方の端部に接続されており、大気から空気を取り込んで第1の供給ライン4に供給する。但し、第1の供給ライン4に空気を供給することができる構成であれば、ファンである必要はなく、例えば、ポンプなどでもよい。第1のバルブ6は、第1の供給ライン4に設けられており、図示を省略した駆動源が駆動することでバーナー3への空気の供給量を調整する。
【0021】
第2の供給ライン7は、気体燃料をバーナー3に供給するための供給管であり、図1に示すように、第2の供給ライン7の一方の端部がバーナー3に接続されている。第2の供給ライン7の他方の端部は、例えば、図示を省略した気体燃料を貯蔵するタンクに接続されている。第2のバルブ8は、第2の供給ライン7に設けられており、図示を省略した駆動源が駆動することでバーナー3への気体燃料の供給量を調整する。
【0022】
第1の検出部9は、空気の温度を検出する温度測定器を備えており、検出した空気の温度データを制御装置14に出力する。第1の検出部9は、例えば、ファン5に取り込まれる空気の温度を検出することができるように、大気内(即ち、燃焼装置1の外部)に配置されている。但し、第1の検出部9は、空気がバーナー3に供給されるまでに当該空気の温度を検出できるように配置されていればよい。
【0023】
第2の検出部10は、空気の圧力を検出する圧力測定器を備えており、検出した空気の圧力データを制御装置14に出力する。第2の検出部10は、例えば、ファン5に取り込まれる空気の圧力を検出することができるように、大気内に配置されている。但し、第2の検出部10は、空気がバーナー3に供給されるまでに当該空気の圧力を検出できるように配置されていればよい。
【0024】
第3の検出部11は、混合気が燃焼後の排気内の未燃焼の気体燃料濃度を検出する濃度計(例えば、可燃ガス検出器)を備えており、検出した未燃焼の気体燃料濃度データを制御装置14に出力する。第3の検出部11は、例えば、排気内の未燃焼の気体燃料濃度を検出することができるように、筐体2に接続された煙突2a内に固定されている。但し、第3の検出部11は、混合気が燃焼後の排気内の未燃焼の気体燃料濃度を検出することができるように配置されていればよい。
【0025】
第4の検出部12は、混合気が燃焼後の排気内の窒素酸化物(NOx)の濃度を検出する濃度計を備えており、検出した窒素酸化物の濃度データを制御装置14に出力する。第4の検出部12は、例えば、排気内の窒素酸化物の濃度を検出することができるように、筐体2に接続された煙突2a内に固定されている。但し、第4の検出部12は、混合気が燃焼後の排気内の窒素酸化物の濃度を検出することができるように配置されていればよい。
【0026】
第5の検出部13は、混合気が燃焼中の筐体2の温度を検出する温度測定器を備えており、検出した筐体2の温度データを制御装置14に出力する。第5の検出部13は、筐体2に固定されている。なお、第5の検出部13は、例えば、混合気が燃焼中の筐体2が最も高温となる箇所近傍に配置されているとよい。
【0027】
制御装置14は、空気の温度データ、空気の圧力データ及び未燃焼の気体燃料濃度データに基づいて、未燃焼の気体燃料濃度が予め設定された基準値に近付くように、第1のバルブ6又は第2のバルブ8を制御して気体燃料又は空気の供給量を制御する。
【0028】
このとき、制御装置14は、空気の温度データ、空気の圧力データ及び未燃焼の気体燃料濃度データに基づく気体燃料又は空気の供給量の制御に対して優先して、窒素酸化物の濃度データに基づく気体燃料又は空気の供給量の制御を優先し、それらに対して、さらに筐体2の温度データに基づく気体燃料又は空気の供給量の制御を優先する。
【0029】
次に、本実施の形態の制御装置14の構成を示すブロック図である。図3は、本実施の形態の制御装置の構成を示すブロック図である。制御装置14は、図3に示すように、補正空気比算出部20、第2の空気比算出部30、第1の選択部40、第3の空気比算出部50、第2の選択部60、供給量算出部70及び制御部80を備えている。
【0030】
補正空気比算出部20は、図3に示すように、フィードフォワード制御部(FF制御部)21、フィードバック制御部(FB制御部)22、選択部23及び比較器24を備えている。フィードフォワード制御部21は、予め設定された条件下での空気比が第1の検出部9で検出された空気の温度及び第2の検出部10で検出された空気の圧力の変化に追従するように第1の空気比を算出する。
【0031】
例えば、予め設定された条件は、空気の温度が0℃、空気の圧力が大気圧(101.3Pa)であり、当該条件下の空気比は、1である。そして、例えば、第1の検出部9で検出された空気の温度が-10℃、第2の検出部10で検出された空気の圧力が103Paの場合、第1の空気比は以下のように算出することができる。
【0032】
一般的に理想気体の状態方程式に基づくと、(101.3×V0)/(R×273.15)=(103×V)/(R×263.15)が成り立つため、第1の空気比は、V/V0=101.3/103×263.15/273.15=0.947となる。
【0033】
但し、Rは気体常数、Vは空気の温度が-10℃、空気の圧力が103Paの条件下での空気の体積、V0は空気の温度が0℃、空気の圧力が101.3Paの条件下での空気の体積を示す。
【0034】
このようにフィードフォワード制御部21は、理想気体の状態方程式、予め設定された条件下での空気比、第1の検出部9で検出した空気の温度、及び第2の検出部10で検出した空気の圧力に基づいて、第1の空気比を算出することができる。
【0035】
フィードバック制御部22は、第3の検出部11で検出された未燃焼の気体燃料濃度が予め設定された基準値となるようにフィードバック制御によって補正値を算出する。つまり、フィードバック制御部22は、後述するように、前回、算出した補正値によって第1の空気比が補正された補正空気比に基づいて気体燃料又は空気の供給量を調整した混合気を燃焼させた際に第3の検出部11で検出された未燃焼の気体燃料濃度が予め設定された基準値となる補正値を算出する。ここで、予め設定された基準値は、混合気の燃焼後の排気内の未燃焼の気体燃料濃度が0%であるとよい。
【0036】
選択部23は、フィードバック制御部22で算出された補正値が0未満の場合、補正値として0を選択し、フィードバック制御部22で算出された補正値が0以上の場合、フィードバック制御部22で算出された補正値を選択する。
【0037】
つまり、フィードバック制御部22で算出された補正値が0未満の場合、例えば、第3の検出部11で検出された未燃焼の気体燃料濃度データにエラーが生じている可能性が高いため、選択部23は、補正値として0を選択する。
【0038】
比較器24は、フィードフォワード制御部21で算出された第1の空気比と、選択部23で選択された補正値と、を加算して、補正値によって第1の空気比が補正された補正空気比を算出する。
【0039】
第2の空気比算出部30は、図3に示すように、フィードバック制御部(FB制御部)31を備えている。フィードバック制御部31は、第4の検出部12で検出された窒素酸化物の濃度が第1の閾値未満となる第2の空気比を算出する。ここで、第1の閾値は、例えば、環境基準などに対して、余裕を有する値に設定するとよい。
【0040】
例えば、空気の供給量が多い場合、窒素と結合する酸素量が増え、窒素酸化物の濃度が上昇する。そのため、フィードバック制御部31は、例えば、空気の供給量を減少させて窒素酸化物の濃度が第1の閾値未満となるように、第2の空気比を減少させる。但し、窒素酸化物の濃度を低下させることができれば、第2の空気比を増加させてもよい。
【0041】
第1の選択部40は、第4の検出部12で検出された窒素酸化物の濃度が第1の閾値以上の場合、第2の空気比算出部30で算出された第2の空気比を選択し、第4の検出部12で検出された窒素酸化物の濃度が第1の閾値未満の場合、補正空気比算出部20で算出された補正空気比を選択する。これにより、燃焼効率よりも優先すべき、環境基準を優先して混合気を燃焼させることができる。
【0042】
第3の空気比算出部50は、図3に示すように、フィードバック制御部(FB制御部)51を備えている。フィードバック制御部51は、第5の検出部13で検出された筐体2の温度が第2の閾値未満となる第3の空気比を算出する。ここで、第2の閾値は、例えば、筐体2が損傷する温度に対して、余裕を有する値に設定するとよい。
【0043】
例えば、空気の供給量が少ない場合、燃焼温度が上昇して筐体2の温度が上昇する。そのため、フィードバック制御部51は、例えば、空気の供給量を増加させて筐体2の温度が第2の閾値未満となるように、第3の空気比を増加させる。
【0044】
第2の選択部60は、第5の検出部13で検出された筐体2の温度が第2の閾値以上の場合、第3の空気比算出部50で算出された第3の空気比を選択し、第5の検出部13で検出された筐体2の温度が第2の閾値未満の場合、第1の選択部40で選択した補正空気比又は第2の空気比を選択する。これにより、最も優先すべき、燃焼装置1の安全性を優先して混合気を燃焼させることができる。
【0045】
供給量算出部70は、第2の選択部60で選択された空気比(即ち、補正空気比、第2の空気比又は第3の空気比)に基づいて、バーナー3に供給する空気又は気体燃料の供給量を算出する。供給量算出部70は、例えば、空気の供給量、即ち、供給される気体燃料を燃焼させるための必要空気量を算出する。
【0046】
詳細には、例えば、気体燃料が水素の場合、H+0.5Oより、水素1(Nm)に対して必要な酸素は0.5(Nm)である。そして、空気内の酸素濃度は21%なので、理論空気量は0.5×100/21=2.38(Nm(Air)/Nm(H))となる。
【0047】
このとき、上述のように空気比が0.947の場合、2.38×0.947=2.25(Nm(Air)/Nm(H))となる。そして、水素の供給量が20(Nm(H)/h)の場合、空気の供給量は、2.25(Nm(Air)/Nm(H))×20(Nm(H)/h)=45(Nm(Air)/h)となる。
【0048】
このように供給量算出部70は、空気の供給量を算出することができる。但し、供給量算出部70は、空気の供給量を算出したが、制御装置14が水素などの気体燃料の供給量を調整する場合、気体燃料の供給量を算出してもよい。
【0049】
制御部80は、供給量算出部70で算出された空気の供給量又は気体燃料の供給量に基づいて、第1のバルブ6又は第2のバルブ8を制御する。詳細には、制御部80は、例えば、第1のバルブ6の流量とバルブ開度との関係を示す特性曲線と、供給量算出部70で算出された空気の供給量と、に基づいて第1のバルブ6の開度を算出し、算出した開度を実現するための制御信号を生成する。そして、制御部80は、生成した制御信号に基づいて第1のバルブ6を制御する。
【0050】
但し、制御部80は、第2のバルブ8の流量とバルブ開度との関係を示す特性曲線と、供給量算出部70で算出された気体燃料の供給量と、に基づいて第2のバルブ8の開度を算出し、算出した開度を実現するために生成した制御信号に基づいて第2のバルブ8を制御してもよい。
【0051】
次に、本実施の形態の燃焼装置1において空気の供給量を制御する流れを説明する。図4は、本実施の形態の燃焼装置において空気の供給量を制御する流れを示すフローチャート図である。ここで、以下の説明では、既に燃焼装置1において気体燃料と空気との混合気が燃焼している状態を前提する。また、選択した空気比に基づいて空気の供給量を調整するものとする。
【0052】
先ず、補正空気比算出部20は、補正空気比を算出する(S1)。詳細には、補正空気比算出部20のフィードフォワード制御部21は、第1の検出部9から空気の温度データを取得すると共に、第2の検出部10から空気の圧力データを取得し、予め設定された条件下での空気比が第1の検出部9で検出された空気の温度及び第2の検出部10で検出された空気の圧力の変化に追従するようにフィードフォワード制御によって第1の空気比を算出する。
【0053】
それと共に、補正空気比算出部20のフィードバック制御部22は、第3の検出部11から未燃焼の気体燃料濃度データを取得し、第3の検出部11で検出された未燃焼の気体燃料濃度が予め設定された基準値となるようにフィードバック制御によって補正値を算出する。
【0054】
次に、補正空気比算出部20の選択部23は、フィードバック制御部22で算出された補正値が0未満の場合、補正値として0を選択し、フィードバック制御部22で算出された補正値が0以上の場合、フィードバック制御部22で算出された補正値を選択する。
【0055】
次に、補正空気比算出部20の比較器24は、フィードフォワード制御部21で算出された第1の空気比と、選択部23で選択された補正値と、を加算して、補正値によって第1の空気比が補正された補正空気比を算出する。
【0056】
次に、第1の選択部40は、第4の検出部12で検出された窒素酸化物の濃度が第1の閾値以上か否かを判定し、窒素酸化物の濃度が第1の閾値以上の場合、第2の空気比算出部30で算出された第2の空気比を選択し、窒素酸化物の濃度が第1の閾値未満の場合、補正空気比算出部20で算出された補正空気比を選択する(S2)。
【0057】
このとき、第2の空気比算出部30のフィードバック制御部31は、燃焼装置1が混合気を燃焼中、常時又は断続的に、第4の検出部12から窒素酸化物の濃度データを取得し、第4の検出部12で検出された窒素酸化物の濃度が第1の閾値未満となる第2の空気比を算出しているとよい。
【0058】
次に、第2の選択部60は、第5の検出部13で検出された筐体2の温度が第2の閾値以上か否かを判定し、筐体2の温度が第2の閾値以上の場合、第3の空気比算出部50で算出された第3の空気比を選択し、筐体2の温度が第2の閾値未満の場合、第1の選択部40で選択した補正空気比又は第2の空気比を選択する(S3)。
【0059】
このとき、第3の空気比算出部50のフィードバック制御部51は、燃焼装置1が混合気を燃焼中、常時又は断続的に、第5の検出部13から筐体2の温度データを取得し、第5の検出部13で検出された筐体2の温度が第2の閾値未満となる第3の空気比を算出しているとよい。
【0060】
次に、供給量算出部70は、第2の選択部60で選択された空気比に基づいて、バーナー3に供給する空気の供給量を算出する(S4)。そして、制御部80は、供給量算出部70で算出された空気の供給量に基づいて、第1のバルブを制御する(S5)。
【0061】
このように本実施の形態の燃焼装置1、制御装置14及び制御方法は、予め設定された条件下での空気比が燃焼装置1に供給される空気の温度及び圧力の変化に追従するようにフィードフォワード制御によって算出した第1の空気比を、混合気が燃焼後の排気内の未燃焼の気体燃料濃度が予め設定された基準値となるようにフィードバック制御によって算出した補正値で補正し、第1の空気比を補正値で補正した補正空気比に基づいて気体燃料又は空気の供給量を制御する。
【0062】
ここで、図5は、本実施の形態の燃焼装置での時間と燃焼空気量との関係を示す図である。つまり、本実施の形態の燃焼装置1、制御装置14及び制御方法は、例えば、空気の供給量を制御する場合、図5に示すように、フィードフォワード制御(FF制御)によって予め設定された条件下での理論空気量を燃焼装置1に供給される空気の温度及び圧力に基づいて補正し、さらにフィードバック制御(FB制御)によって未燃焼の気体燃料濃度が予め設定された基準値となる最適空気量に近付くように空気の供給量を制御する。
【0063】
これにより、未燃焼の気体燃料濃度のみに基づいて空気又は気体燃料の供給量を制御する場合に比べて、外乱である空気の温度及び圧力の変化に基づいて空気又は気体燃料の供給量を調整することができ、燃焼装置1の燃焼効率の向上に寄与することができる。特に、フィードフォワード制御によって外乱である空気の温度及び圧力の変化の影響に対して、空気又は気体燃料の供給量をレスポンス良く制御することができる。
【0064】
しかも、本実施の形態の燃焼装置1、制御装置14及び制御方法で用いる気体燃料は、炭素を含んでいないため、不完全燃焼しても害が少なく、空気比を可能な限り1に近付けて燃焼効率を向上させることができる。このとき、予め設定された基準値として、未燃焼の気体燃料濃度が0%に設定されている場合、燃焼効率をさらに向上させることができる。
【0065】
また、本実施の形態の燃焼装置1、制御装置14及び制御方法は、第4の検出部12で検出された窒素酸化物の濃度が第1の閾値以上の場合、第2の空気比算出部30で算出された第2の空気比を選択し、窒素酸化物の濃度が第1の閾値未満の場合、補正空気比算出部20で算出された補正空気比を選択する。これにより、燃焼効率よりも優先すべき、環境基準を優先して混合気を燃焼させることができる。
【0066】
また、本実施の形態の燃焼装置1、制御装置14及び制御方法は、第5の検出部13で検出された筐体2の温度が第2の閾値以上の場合、第3の空気比算出部50で算出された第3の空気比を選択し、筐体2の温度が第2の閾値未満の場合、第1の選択部40で選択した補正空気比又は第2の空気比を選択する。これにより、最も優先すべき、燃焼装置1の安全性を優先して混合気を燃焼させることができる。
【0067】
なお、上記実施の形態1では、本開示をハードウェアの構成として説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。本開示は、各構成要素の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0068】
例えば、上記実施の形態の制御装置14は、次のようなハードウェア構成を備えることができる。図6は、制御装置に含まれるハードウェア構成の一例を示す図である。
【0069】
図6に示す装置は、インタフェース91とともに、プロセッサ92及びメモリ93を備えている。上記実施の形態で説明した制御装置14は、プロセッサ92がメモリ93に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより実現される。つまり、このプログラムは、プロセッサ92を制御装置14として機能させるためのプログラムである。
【0070】
ここで、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0071】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0072】
例えば、上記実施の形態では、第2の空気比算出部30、第1の選択部40、第3の空気比算出部50及び第2の選択部60を備えているが、省略してもよい。また、第2の空気比算出部30及び第1の選択部40、又は第3の空気比算出部50及び第2の選択部60のいずれか一方を備えていてもよい。
【0073】
例えば、上記実施の形態の第2の空気比算出部30及び第3の空気比算出部50は、フィードバック制御によって空気比を算出しているが、予め設定された閾値以下となる空気比を算出できれば算出手法は限定されない。
【0074】
例えば、上記実施の形態では、第1の空気比を算出する際に予め設定された条件下での空気比を空気の温度及び圧力の変化に追従させているが、予め設定された条件下での空気比を少なくとも空気の温度の変化に追従させればよい。
【0075】
例えば、上記実施の形態では、空気の供給量又は気体燃料の供給量を調整しているが、空気の供給量及び気体燃料の供給量の両方を調整してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 燃焼装置
2 筐体、2a 煙突
3 バーナー
4 第1の供給ライン
5 ファン
6 第1のバルブ
7 第2の供給ライン
8 第2のバルブ
9 第1の検出部
10 第2の検出部
11 第3の検出部
12 第4の検出部
13 第5の検出部
14 制御装置
20 補正空気比算出部
21 フィードフォワード制御部
22 フィードバック制御部
23 選択部
24 比較器
30 第2の空気比算出部
31 フィードバック制御部
40 第1の選択部
50 第3の空気比算出部
51 フィードバック制御部
60 第2の選択部
70 供給量算出部
80 制御部
91 インタフェース
92 プロセッサ
93 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6