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特開2023-178692加工軌跡表示システム、加工軌跡表示方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178692
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】加工軌跡表示システム、加工軌跡表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20231211BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20231211BHJP
   G09B 19/24 20060101ALI20231211BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20231211BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
B23K31/00 Z
G09B19/24 Z
G06T19/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091516
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】阿部 崇
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇介
【テーマコード(参考)】
5B050
【Fターム(参考)】
5B050AA06
5B050BA09
5B050EA07
5B050EA19
5B050FA06
(57)【要約】
【課題】簡易な装置を用いて、少ないデータにより加工具の先端部の軌跡を表示する軌跡表示システムを提供する。
【解決手段】加工部(101)と、加工部を支持する本体(102)と、を備える加工具と、本体に設けられ、加工具の座標情報を取得する座標情報取得装置(103)と、加工具の座標情報と、本体から加工部先端までの距離から加工部先端の位置情報を算出する先端位置情報算出部(111)と、加工部先端の位置情報に基づいて加工具の加工軌跡を算出する軌跡算出部(112)と、加工具の加工軌跡を表示する軌跡表示手段(120)と、を備える加工軌跡表示システムを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工部と、前記加工部を支持する本体と、を備える加工具と、
前記本体に設けられ、前記加工具の座標情報を取得する座標情報取得装置と、
前記加工具の前記座標情報と、前記本体から加工部先端までの距離から前記加工部先端の位置情報を算出する先端位置情報算出部と、
前記加工部先端の前記位置情報に基づいて前記加工具の加工軌跡を算出する軌跡算出部と、
前記加工具の前記加工軌跡を表示する軌跡表示手段と、を備える加工軌跡表示システム。
【請求項2】
前記軌跡表示手段は、
前記加工具の前記加工軌跡に基づいて加工速度を算出し、
前記加工速度に基づいて良品を製造できるか否か判定し、
前記判定に基づいて前記加工軌跡の色を変更して表示する、請求項1に記載の加工軌跡表示システム。
【請求項3】
前記先端位置情報算出部は、前記加工具の前記座標情報と、前記本体と加工面の距離から前記加工部先端の位置情報を算出する、請求項1または2に記載の加工軌跡表示システム。
【請求項4】
前記加工部が、溶接に応じて長さが変化する溶接棒を備えており、
前記溶接棒の長さの変化方向に沿った延長線と前記加工面との交点を前記加工部先端の位置とする、請求項3に記載の加工軌跡表示システム。
【請求項5】
加工部と、前記加工部を支持する本体と、を備える加工具を備え、
前記本体に設けられた座標情報取得装置が座標情報を取得するステップと、
先端位置情報算出部が、前記加工具の前記座標情報と、前記本体から加工部先端までの距離から前記加工部先端の位置情報を算出するステップと、
軌跡算出部が、前記加工部先端の前記位置情報に基づいて前記加工具の加工軌跡を算出するステップと、
軌跡表示手段が前記加工具の前記加工軌跡を表示するステップと、を備える加工軌跡表示方法。
【請求項6】
加工部と、前記加工部を支持する本体と、を備える加工具の座標情報を取得するステップと、
前記加工具の前記座標情報と、前記本体から加工部先端までの距離から前記加工部先端の位置情報を算出するステップと、
前記加工部先端の前記位置情報に基づいて前記加工具の加工軌跡を算出するステップと、
前記加工具の前記加工軌跡を表示するステップと、を情報処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は加工軌跡表示システム、加工軌跡表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接の熟練工の技術を習得するために、仮想現実シミュレーションするためのシステムが開発されてきた。特許文献1では、仮想溶接システムは、プログラム可能なプロセッサベースのサブシステムと、このプログラム可能なプロセッサベースのサブシステムに動作可能に接続された空間トラッカとを含むことが記載されている。空間トラッカによって空間的に追跡可能なモック溶接ツールを用いている。モック溶接ツールは、1つ以上のアダプタを有しており、各アダプタは、特定の溶接タイプの実世界の外観をエミュレートする。モック溶接ツールは、1つ以上のアダプタのそれぞれに取り外し可能に接続されたベースを有する。モック溶接ツールは、ベース内に配置された1つ以上のセンサを含む。また、特許文献1には、1以上のセンサによって追跡され、モック溶接ツールの相対位置を識別する、空間位置を有する磁石を備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-513115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにシミュレーション空間での訓練の場合、実作業との乖離をなくすためにバックデータを大量に確保することが必要になる。そこで本開示の目的は、簡易な装置を用いて、少ないデータにより加工具の先端部の軌跡を表示する軌跡表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の軌跡表示システムは、
加工部と、前記加工部を支持する本体と、を備える加工具と、
前記本体に設けられ、前記加工具の座標情報を取得する座標情報取得装置と、
前記加工具の前記座標情報と、前記本体から加工部先端までの距離から前記加工部先端の位置情報を算出する先端位置情報算出部と、
前記加工部先端の前記位置情報に基づいて前記加工具の加工軌跡を算出する軌跡算出部と、
前記加工具の前記加工軌跡を表示する軌跡表示手段と、を備える加工軌跡表示システムである。
【0006】
上記構成によれば、モーションキャプチャなどの簡易な座標情報取得装置を用いて、加工具の座標情報と先端までの距離から先端位置を算出し、加工具の先端部の軌跡を表示することができる。したがって、シミュレーションと実作業の乖離をなくすためのバックデータが不要になり、少ないデータを用いて加工軌跡を表示できる。
【0007】
また、本開示の軌跡表示システムは、
前記軌跡表示手段は、
前記加工具の前記加工軌跡に基づいて加工速度を算出し、
前記加工速度に基づいて良品を製造できるか否か判定し、
前記判定に基づいて前記加工軌跡の色を変更して表示することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、良品を製造できるか否かで表示する色を変更することで熟練工との比較が可能になる。
【0009】
また、本開示の軌跡表示システムは、
前記先端位置情報算出部は、前記加工具の前記座標情報と、前記本体と加工面の距離から前記加工部先端の位置情報を算出することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、加工部先端の位置が変化しても軌跡を表示することができる。
【0011】
また、本開示の軌跡表示システムは、
前記加工部が、溶接に応じて長さが変化する溶接棒を備えており、
前記溶接棒の長さの変化方向に沿った延長線と前記加工面との交点を前記加工部先端の位置とすることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、溶接に応じて長さが変化する溶接棒であっても、加工面に軌跡を表示することができる。
【0013】
本開示の軌跡表示方法は、
加工部と、前記加工部を支持する本体と、を備える加工具を備え、
前記本体に設けられた座標情報取得装置が座標情報を取得するステップと、
先端位置情報算出部が、前記加工具の前記座標情報と、前記本体から加工部先端までの距離から前記加工部先端の位置情報を算出するステップと、
軌跡算出部が、前記加工部先端の前記位置情報に基づいて前記加工具の加工軌跡を算出するステップと、
軌跡表示手段が前記加工具の前記加工軌跡を表示するステップと、を備える加工軌跡表示方法である。
【0014】
上記構成によれば、モーションキャプチャなどの簡易な座標情報取得装置を用いて、加工具の座標情報と先端までの距離から先端位置を算出し、加工具の先端部の軌跡を表示することができる。したがって、シミュレーションと実作業の乖離をなくすためのバックデータが不要になり、少ないデータを用いて加工軌跡を表示できる。
【0015】
本開示のプログラムは、
加工部と、前記加工部を支持する本体と、を備える加工具の座標情報を取得するステップと、
前記加工具の前記座標情報と、前記本体から加工部先端までの距離から前記加工部先端の位置情報を算出するステップと、
前記加工部先端の前記位置情報に基づいて前記加工具の加工軌跡を算出するステップと、
前記加工具の前記加工軌跡を表示するステップと、を情報処理装置に実行させるプログラムである。
【0016】
上記構成によれば、モーションキャプチャなどの簡易な座標情報取得装置を用いて、加工具の座標情報と先端までの距離から先端位置を算出し、加工具の先端部の軌跡を表示することができる。したがって、シミュレーションと実作業の乖離をなくすためのバックデータが不要になり、少ないデータを用いて加工軌跡を表示できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示により、簡易な装置を用いて、少ないデータにより加工具の先端部の軌跡を表示する軌跡表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態にかかる加工軌跡表示システムのブロック図である。
図2】実施の形態にかかる加工軌跡表示方法のフローチャートである。
図3】実施の形態にかかる座標情報取得装置の設けられた加工具で座標データを取得する概略図である。
図4】実施の形態にかかる座標データが入力されるアプリケーションソフトウェアの表示図である。
図5】実施の形態にかかる加工部先端の位置を取得する概略図である。
図6】実施の形態にかかる座標情報取得装置の設けられた加工具の加工部先端の軌跡を表示する概略図である。
図7】実施の形態にかかるアプリケーションソフトウェアに熟練工と比較しながら軌跡が表示される図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、実施の形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0020】
(実施の形態にかかる加工軌跡表示システムの説明)
図1は、実施の形態にかかる加工軌跡表示システムのブロック図である。図1を参照しながら、実施の形態にかかる加工軌跡表示システムを説明する。
【0021】
図1に示すように、加工軌跡表示システム10は、加工具100と、情報処理装置110と、軌跡表示手段120とを備える。加工具100は、例えば、ティグ溶接、プラズマ溶接、被覆アーク溶接、ミグ溶接、マグ溶接など溶接に用いられる溶接トーチまたは部材と部材をシールするコーキングガンなどである。加工具100は、特に消耗されて長さが変わる溶接棒を備える溶接に用いられることが好ましい。
【0022】
加工具100は、加工部101と、本体102と、座標情報取得装置103とを備える。加工部101は、例えば、溶接棒または接着剤射出口に該当する。本体102は、溶接トーチまたはコーキングガンなどの把持部分を備える固定部である。座標情報取得装置103は、簡易モーションキャプチャであり、例えば6自由度の位置(X,Y,Z)、姿勢(Roll,Pitch,Yaw)が計測可能なものである。例えば、座標情報取得装置103は、本体102の位置姿勢を一定の時間間隔で計測する。
【0023】
座標情報取得装置103は、本体102に固定して設けられている。このような座標情報取得装置103を用いることにより、本体102の向き及び移動位置を計測できる。また、加工部101は、本体102から距離を置いて本体102に支持される。したがって、座標情報取得装置103は、加工部101と距離を置いて設けられるため、溶接中高温部から離れるので溶接温度で故障しない。
【0024】
情報処理装置110は、中央処理装置、ROM(Read only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを備えるコンピュータである。情報処理装置110は、機能として先端位置情報算出部111と軌跡算出部112とを備える。情報処理装置110は、加工具100及び軌跡表示手段と異なる独立の装置であってもよいし、加工具100に組み込まれてもよいし、軌跡表示手段120に組み込まれてもよい。先端位置情報算出部111は、座標情報取得装置103で取得された加工具100の座標情報と、本体から加工部先端までの距離と、から加工部先端の位置情報を算出する。XYZ方向のそれぞれにおいて、本体から加工部までの距離が既知となっている。このため、先端位置情報算出部111は加工部先端の位置情報を算出することができる。例えば、本体102に対する加工部101の向きが一定となっている。つまり、本体102から加工部101の延びる方向が固定されている。先端位置情報算出部111は、座標情報及び距離に基づいて、加工部先端の位置情報を算出する。加工部先端の位置情報はXYZ座標として示される。なお、加工部先端の位置情報を示す座標系は、座標情報取得装置103の座標系と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0025】
特に先端位置情報算出部111は、加工具100の座標情報と、本体102と加工面の距離から加工部先端の位置情報を算出する。ここで、本体102から加工面までの距離は、XYZ座標系の各軸に沿った方向の距離で示される。先端位置情報算出部111は、加工部101の長さの変化方向に沿った延長線と加工面との交点を加工部先端の位置とする(図5参照)。例えば、先端位置情報算出部111は、加工面のXYZ座標を設定して、メモリなどに格納する。加工面は、例えば、対象物の表面形状に沿った面とすることができる。
【0026】
軌跡算出部112は、加工部先端の位置情報に基づいて加工具100の加工軌跡を算出する。加工部先端の軌跡が、加工具100の加工軌跡になるためである。情報処理装置110にインストールされたアプリケーションソフトウェア(以下、単にアプリという)等は、先端位置情報算出部111と軌跡算出部112とを含んでいてもよい。
【0027】
軌跡表示手段120は、表示装置121を備える。軌跡表示手段120には加工部先端の軌跡を示す情報が入力されている。さらに、情報処理装置110に加工面が設定されることで、軌跡表示手段120は、軌跡を表示する。
【0028】
このようにすることで、座標データと溶接軌跡が異なる場合であっても軌跡を表示できる。すなわち、加工部101の位置を動かしても、加工具100の本体102を回転させても、加工部101の長さが変化しても軌跡を表示することができる。アプリ等は、この本体102の座標データとして実際に溶接中の熟練工のデータを用いて、良品の製造条件を作成することができる。アプリ等は、加工具100の加工軌跡に基づいて加工速度を算出し、それにより良品の製造条件を作成する。
【0029】
表示装置121は、据え置き型のディスプレイを用いることができる。表示装置121は、アプリ等を用いて軌跡を表示する。表示装置121は、据え置き型のディスプレイに代えてまたはそれと共にヘッドマウントディスプレイ方式の複合現実ウェアラブルコンピュータを用いてもよい。複合現実ウェアラブルコンピュータは、市販のものを用いることができる。複合現実ウェアラブルコンピュータを用いることで、軌跡をリアルタイムで表示することができる。アプリ等は、良品の製造条件を用いてリアルタイムの加工軌跡を判定する。そして、軌跡表示手段120は、複合現実ウェアラブルコンピュータを通してその加工軌跡が良か否かを、色を変更して表示できる。
【0030】
(実施の形態にかかる加工軌跡表示方法の説明)
図2は、実施の形態にかかる加工軌跡表示方法のフローチャートである。図3は、実施の形態にかかる座標情報取得装置の設けられた加工具で座標データを取得する概略図である。図4は、実施の形態にかかる座標データが入力されるアプリケーションソフトウェアの表示図である。図5は、実施の形態にかかる加工部先端の位置を取得する概略図である。図6は、実施の形態にかかる座標情報取得装置の設けられた加工具の加工部先端の軌跡を表示する概略図である。図7は、実施の形態にかかるアプリケーションソフトウェアに熟練工と比較しながら軌跡が表示される図である。図2乃至図7を参照しながら、実施の形態にかかる加工軌跡表示方法を説明する。
【0031】
まず、加工具100の座標データを取得する(ステップS201)。図3に示すように実際の溶接時のデータを取得する。加工具100の本体102に固定されて設けられた座標情報取得装置103によって、加工部101で加工中の座標データを取得する。
【0032】
次に、情報処理装置110に、ステップS201で取得した座標データを入力する(ステップS202)。図4に示すように、情報処理装置のアプリ等は、3次元表示可能であり、モーションキャプチャで取得されたデータを表示する。
【0033】
次に、情報処理装置110のアプリ等に良品条件を設定する(ステップS203)。予め熟練工の作業した座標データが測定されていれば、良品条件を決定することができる。アプリは、加工具100の加工軌跡に基づいて加工速度を算出し、それにより良品の製造条件を作成する。
【0034】
次に、情報処理装置110にシミュレーションされる加工具100の座標情報取得装置103の位置と加工面を設定する(ステップS204)。図5に示すように、まず、加工部先端の最小距離A-A’を設定する。ここで、本体102の位置をAとし、加工部101が最小長さの時の加工部先端の位置をA’とする。位置AのXYZ座標と位置A’のXYZ座標から距離A-A’は既知となる。最小距離A-A’は加工部101の最小の長さである。最小長さを設定することで座標情報取得装置103から加工部先端の距離をこれ以上短くできなくすることができる。次に、加工部先端の方向を設定する。次に、加工面を設定する。最後に加工部先端を最小距離A-A’から加工面へ延長し、加工面と延長線の交点Bが加工部先端になる。この加工面での軌跡を加工軌跡という。位置A’から交点Bに向かう方向は、加工部101の長さが変化する方向と一致する。
【0035】
次に情報処理装置110のアプリ等に3Dモデル加工部先端の軌跡が表示される(ステップS205)。図6に示すように、加工具100の本体102に固定して設けられた座標情報取得装置103の座標データにより、加工部101の先端の軌跡が表示される。このようにすることで、座標データと溶接軌跡が異なる場合であっても軌跡を表示できる。すなわち、加工部101の位置を動かしても、加工具100の本体102を回転させても、加工部101の長さが変化しても軌跡を表示することができる。加工に伴って溶接棒が徐々に短くなっていく場合であっても、軌跡を適切に表示することができる。
【0036】
このような軌跡は、カラー表示されてもよい。表示された軌跡の速度、位置を判定し、カラー表示される(ステップS206)。図7に示すように、この判定は、良品条件と対比して行うことで、訓練者は自分が良品を作れるか否かシミュレーションできる。
【0037】
このように、実際に溶接したものの軌跡を表示できるため、訓練者は熟練工との違いを比較できる。また、訓練者は自身の軌跡を客観的に繰り返し見ることができ、加工軌跡表示システムを訓練に役立てることができる。さらに、熟練工の軌跡データをロボットに転用するためのデータにすることができる。軌跡表示手段120は、熟練工の加工作業での軌跡と、訓練者の加工作業での軌跡とを異なる色で表示するようにしてもよい。熟練工の作業では良品と判定され、訓練者の作業では不良品と判定される。したがって、良否判定に基づいて、軌跡表示手段120が、軌跡の色を変えて表示するようにしてもよい。これにより、ユーザが、自身の軌跡と良品の軌跡との比較を容易に行うことができる。
【0038】
訓練者は、表示装置121として複合現実ウェアラブルコンピュータを用いることで、シミュレーション中に軌跡をリアルタイムに表示し、熟練工の軌跡を真似ることができる。また、同様に加工軌跡表示システムに熟練工の動きも同時に表示されることで、訓練者は、その動きを真似ることができる。
【0039】
また、上述した情報処理装置110における処理の一部又は全部は、コンピュータプログラムとして実現可能である。このようなプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0040】
情報処理装置110は、加工具100及び軌跡表示手段120と連携できる。したがって、上記プログラムは、加工部と、加工部を支持する本体と、を備える加工具の座標情報を取得するステップと、加工具の座標情報と、本体から加工部先端までの距離から加工部先端の位置情報を算出するステップと、加工部先端の位置情報に基づいて加工具の加工軌跡を算出するステップと、加工具の加工軌跡を表示するステップと、を情報処理装置110に実行させることができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、加工具は、加工部の長さが変化する溶接トーチであることが好ましいが、熟練工の繊細な動きを必要とするシール工程などで用いられるコーキングガンにも応用できる。そのため、アプリにおいて、加工具100の3Dモデルを変更できるようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0042】
10 加工軌跡表示システム
100 加工具
101 加工部
102 本体
103 座標情報取得装置
110 情報処理装置
111 先端位置情報算出部
112軌跡算出部
120 軌跡表示手段
121 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7