(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178705
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】流路切換弁
(51)【国際特許分類】
F16K 11/048 20060101AFI20231211BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
F16K11/048 Z
F16K31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091537
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津久井 良輔
(72)【発明者】
【氏名】後藤 聡志
(72)【発明者】
【氏名】市川 卓
(72)【発明者】
【氏名】藤田 尚敬
【テーマコード(参考)】
3H062
3H067
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062BB10
3H062BB11
3H062CC04
3H062DD11
3H062EE06
3H067AA03
3H067BB02
3H067BB12
3H067CC44
3H067CC45
3H067DD05
3H067DD12
3H067DD32
3H067DD49
3H067EA02
3H067ED10
(57)【要約】
【課題】弁開度にかかわらず、安定した弁体駆動を確保できる流路切換弁を提供する。
【解決手段】流路切換弁は、弁本体と、前記弁本体内において、前記弁本体の軸線方向に移動可能に収容された弁軸と、前記弁軸に取り付けられ、第1弁座に当接可能な第1弁体を備えた第1弁体ユニットと、前記弁軸に取り付けられ、第2弁座に当接可能な第2弁体を備えた第2弁体ユニットと、を有し、前記弁本体には、前記第1弁体ユニットを挟んで弁室とは反対側に、第1均圧室が形成され、また前記第2弁体ユニットを挟んで前記弁室とは反対側に、第2均圧室が形成されており、前記第1弁体ユニットには、前記第1均圧室と前記弁室とを連通する第1連通開口が形成され、前記第2弁体ユニットには、前記第2均圧室と前記弁室とを連通する第2連通開口が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室に連通する第1流路、前記弁室に連通する第2流路及び第3流路、前記弁室と前記第2流路との間に形成された第1弁座、前記弁室と前記第3流路との間に形成された第2弁座、を備えた弁本体と、
前記弁本体内において、前記弁本体の軸線方向に移動可能に収容された弁軸と、
前記弁軸に取り付けられ、前記第1弁座に当接可能な第1弁体を備えた第1弁体ユニットと、
前記弁軸に取り付けられ、前記第2弁座に当接可能な第2弁体を備えた第2弁体ユニットと、を有し、
前記弁本体には、前記第1弁体ユニットを挟んで前記弁室とは反対側に、第1均圧室が形成され、また前記第2弁体ユニットを挟んで前記弁室とは反対側に、第2均圧室が形成されており、
前記第1弁体ユニットには、前記第1均圧室と前記弁室とを連通する第1連通開口が形成され、
前記第2弁体ユニットには、前記第2均圧室と前記弁室とを連通する第2連通開口が形成されている、
ことを特徴とする流路切換弁。
【請求項2】
前記弁本体の軸線方向の一端に取り付けられた中空円筒状の第1閉鎖部材と、前記弁本体の軸線方向の他端に取り付けられた中空円筒状の第2閉鎖部材とを有し、前記第1閉鎖部材の内側に前記第1均圧室が形成され、前記第2閉鎖部材の内側に前記第2均圧室が形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の流路切換弁。
【請求項3】
前記第1均圧室の軸線直交方向断面積は、前記第1弁座を端部に形成した円管部の内周の軸線直交方向断面積に等しく、前記第2均圧室の軸線直交方向断面積は、前記第2弁座を端部に形成した円管部の内周の軸線直交方向断面積に等しい、
ことを特徴とする請求項2に記載の流路切換弁。
【請求項4】
前記第1弁体ユニットは、前記第1閉鎖部材の内周に当接してシールする第1シール部を有し、
前記第2弁体ユニットは、前記第2閉鎖部材の内周に当接してシールする第2シール部を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の流路切換弁。
【請求項5】
前記第1弁体ユニットとともに移動する前記第1シール部が当接可能な範囲において、前記第1閉鎖部材の内径は等しく、前記第2弁体ユニットとともに移動する前記第2シール部が当接可能な範囲において、前記第2閉鎖部材の内径は等しい、
ことを特徴とする請求項4に記載の流路切換弁。
【請求項6】
前記第1弁体が前記第1弁座から離間したときに、前記第1シール部が前記第1閉鎖部材に当接する位置の内径は、前記第1弁体が前記第1弁座に着座したときに、前記第1シール部が前記第1閉鎖部材に当接する位置の内径より大きく、
前記第2弁体が前記第2弁座から離間したときに、前記第2シール部が前記第2閉鎖部材に当接する位置の内径は、前記第2弁体が前記第2弁座に着座したときに、前記第2シール部が前記第2閉鎖部材に当接する位置の内径より大きい、
ことを特徴とする請求項4に記載の流路切換弁。
【請求項7】
前記第1シール部は前記第1連通開口に対応して連通穴を有し、前記第2シール部は、前記第2連通開口に対応して連通穴を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の流路切換弁。
【請求項8】
前記第1弁体ユニットは、前記弁軸の一端側が挿入され、挿入された前記弁軸の周囲に第1バッファ室を形成する第1本体を有し、前記第1連通開口は、前記第1本体を貫通して前記第1均圧室と前記第1バッファ室とに連通しており、
前記第2弁体ユニットは、前記弁軸の他端側が挿入され、挿入された前記弁軸の周囲に第2バッファ室を形成する第2本体を有し、前記第2連通開口は、前記第2本体を貫通して前記第2均圧室と前記第2バッファ室とに連通している、
ことを特徴とする請求項1に記載の流路切換弁。
【請求項9】
前記弁軸に、前記第1連通開口及び前記第2連通開口のうち少なくとも一方が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の流路切換弁。
【請求項10】
前記弁軸を軸線方向に駆動する駆動部を有する、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の流路切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流路切換弁の一例として、特許文献1には、流路切換時に弁体に作用する荷重を小さくして、弁体の駆動トルクを低減でき、小型化、大容量化、省電力化等を図ることのできる流路切換弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の流路切換弁によれば、連結軸を軸線方向に貫通する貫通孔によって、上部弁体の上側に画成される背圧室と、下部弁体の下側に形成される下部空間とを連通する均圧通路が形成される。かかる均圧通路により、背圧室の内圧と下部空間の内圧とを等しくすることができ、それにより背圧室の内圧に応じて上部弁体に付与される力と、下部空間の内圧に応じて下部弁体に付与される力とを釣り合わせることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成において弁開度が大きい場合に、弁体駆動が不安定になるという現象が生じた。これに対し、本発明者らは鋭意研究を行った結果、流路切換弁の流入口から、第1流出口または第2流出口に向かう流体の流れに起因して、弁室内における上部弁体の近傍と下部弁体の近傍とで圧力差が生じ、その圧力差により上部弁体と下部弁体に付与される軸線方向力が変化して、上部弁体と下部弁体に付与される軸線方向力のバランスが崩れることを見出した。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、弁開度にかかわらず、安定した弁体駆動を確保できる流路切換弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の流路切換弁は、
弁室に連通する第1流路、前記弁室に連通する第2流路及び第3流路、前記弁室と前記第2流路との間に形成された第1弁座、前記弁室と前記第3流路との間に形成された第2弁座、を備えた弁本体と、
前記弁本体内において、前記弁本体の軸線方向に移動可能に収容された弁軸と、
前記弁軸に取り付けられ、前記第1弁座に当接可能な第1弁体を備えた第1弁体ユニットと、
前記弁軸に取り付けられ、前記第2弁座に当接可能な第2弁体を備えた第2弁体ユニットと、を有し、
前記弁本体には、前記第1弁体ユニットを挟んで前記弁室とは反対側に、第1均圧室が形成され、また前記第2弁体ユニットを挟んで前記弁室とは反対側に、第2均圧室が形成されており、
前記第1弁体ユニットには、前記第1均圧室と前記弁室とを連通する第1連通開口が形成され、
前記第2弁体ユニットには、前記第2均圧室と前記弁室とを連通する第2連通開口が形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、弁開度にかかわらず、安定した弁体駆動を確保できる流路切換弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る流路切換弁の縦断面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る流路切換弁の縦断面図である。
【
図3A】
図3Aは、第1弁体ユニットの周辺を拡大して示す断面図である。
【
図3B】
図3Bは、第2弁体ユニットの周辺を拡大して示す断面図である。
【
図3C】
図3Cは、変形例にかかる第1弁体ユニットの周辺を拡大して示す断面図である。
【
図3D】
図3Dは、変形例にかかる第2弁体ユニットの周辺を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明者らが行った実験結果を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る流路切換弁の縦断面図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係る流路切換弁の縦断面図である。
【
図7】
図7は、第1弁体ユニットの周辺を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る流路切換弁について、図面を参照して説明する。なお、本明細書において、駆動装置側を上方とし、その反対側を下方とする。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る流路切換弁1の縦断面図であり、入口流路(第1流路)と第1出口流路(第2流路)とが連通した状態を示し、また
図2は、第1の実施形態に係る流路切換弁1の縦断面図であり、入口流路と第2出口流路(第3流路)とが連通した状態を示す。流路切換弁1の軸線をLとする。なお、本実施形態では、第1流路から流入する流体を流路切換弁1により切り換えて、第2流路または第3流路から排出しているが、これとは逆の流れで、第2流路と第3流路から流入する流体のいずれかを、流路切換弁1の切り換えにより第1流路から排出するようにしてもよい。
【0012】
図に示すように、本実施形態の流路切換弁1は、三方切換弁であって、弁本体10と、弁軸20と、第1弁体ユニット30と、第2弁体ユニット40と、駆動装置50と、を有している。
【0013】
弁本体10は、弁ハウジング11と、第1閉鎖部材12と、第2閉鎖部材13と、蓋部材14と、を有する。
【0014】
弁ハウジング11は、それぞれ円筒状である、本体11aと、入口管状部11bと、第1出口管状部11cと、第2出口管状部11dとを連設してなる。
【0015】
本体11aは、上端が開口した上部円筒部11eと、下端が開口した下部円筒部11fと、上部円筒部11e及び下部円筒部11fより径が小さく、これらを同軸に連結する中間円筒部11gとを連結してなる。
【0016】
中間円筒部11gと上部円筒部11eとの接合部において、中間円筒部11gの内縁が上部円筒部11e側に突出するようにして上部短円管部11hが形成されている。上部短円管部11hの先端が第1弁座11iを構成する。中間円筒部11g内が弁室VCを構成する。第1弁座11iは、弁室VCと第1出口流路との間に形成される。
【0017】
中間円筒部11gと下部円筒部11fとの接合部において、中間円筒部11gの内縁が下部円筒部11f側に突出するようにして下部短円管部11jが形成されている。下部短円管部11jの先端が第2弁座11kを構成する。第2弁座11kは、弁室VCと第2出口流路との間に形成される。
【0018】
入口管状部11bは、中間円筒部11gから軸線Lに直交する方向に延在し、その内部に形成された入口流路が弁室VCに連通している。
【0019】
第1出口管状部11cは、上部円筒部11eから入口管状部11bとは弁本体10の軸線Lを挟んで反対側において軸線Lに直交する方向に延在し、その内部に形成された第1出口流路が弁室VCに連通している。
【0020】
第2出口管状部11dは、下部円筒部11fから入口管状部11bとは弁本体10の軸線Lを挟んで反対側において軸線Lに直交する方向に延在し、その内部に形成された第2出口流路が弁室VCに連通している。入口管状部11bの軸線と第1出口管状部11cの軸線との距離は、入口管状部11bの軸線と第2出口管状部11dの軸線との距離に等しいと好ましい。
【0021】
中実円筒状の弁軸20は、上部軸21と、中間軸22と、下部軸23と、を同軸に連設してなる。弁軸20は、その両端に第1弁体ユニット30と第2弁体ユニット40を取り付けており、これらは一体で軸線方向に移動可能となっている。
【0022】
中空円筒状の第1閉鎖部材12は、拡径部12aと、拡径部12aより小径の中間部12bと、中間部12bの下端から下方に向かって突出する環状部12cとを連設してなる。本実施形態では、後述する第1シール部32のシール体32aが常時当接する、拡径部12aと、中間部12bと、環状部12cの上半部の内径(円筒内周)は、等しくなっている。
【0023】
一方、環状部12cの下半部の内径は、下方に向かうに従って拡径するようにテーパ状になっている。第1閉鎖部材12は、弁ハウジング11の上部円筒部11e内に上方から挿入され、拡径部12aと中間部12bとの間の段差部を、弁ハウジング11の上部円筒部11eの上端開口の段差に突き当てつつ嵌合により、弁ハウジング11の上端に取り付けられている。
【0024】
図3Aは、第1弁体ユニット30の周辺を拡大して示す断面図であり、第1弁座11iに着座した状態で示す。第1弁体ユニット30は、円筒状の第1本体31と、第1シール部32と、第1シール押さえ33と、第1弁体34と、第1間座35とを有する。
【0025】
第1本体31は、第1閉鎖部材12の内周に嵌合して軸線方向に摺動可能な小径部31aと、小径部31aより大径であり小径部31aの下端に連設された大径部31bと、大径部31bの下端に連設された薄肉円筒状のカシメ部31cとを有する。
【0026】
環状の第1弁体34は、それより小径の環状である第1間座35とともに、カシメる前には円筒状であるカシメ部31cに下方から挿通される。その後、カシメ部31cの下端をカシメて拡径するように塑性変形させることにより、第1弁体34は第1間座35を介して第1本体31に固定される。このとき、第1弁体34の径方向外側が第1間座35より露出しており、その下面が弁ハウジング11の第1弁座11iに対向した状態となる。
【0027】
小径部31a及び大径部31bは、カシメ部31cの最小内径と等しい内径の大径開口31dと、大径開口31dに連通する小径開口31eとを同軸に有する。また、小径開口31eと平行に、大径開口31dの上端から第1本体31の上端に向かって延在する第1均圧孔31fが形成されている。
【0028】
第1本体31の上端に設置された第1シール部32は、樹脂製の可撓性を有するシール体32aと、金属性の板ばね32bとを有する。シール体32aと板ばね32bは、小径開口31eに対応した中央穴32c、32dと、第1均圧孔31fに対応した連通穴32e、32fとを有する。
【0029】
第1本体31より小径である環状の第1シール押さえ33は、小径開口31eに対応した中央穴33aと、第1均圧孔31fに対応した連通穴33bとを有する。
【0030】
第1シール部32が第1本体31の上端に設置され、さらに第1シール部32の上面に当接するようにして第1シール押さえ33が設置される。
【0031】
第1本体31の大径開口31dには、弁軸20の中間軸22が挿通されて、その上端が小径開口31eと大径開口31dとの段部に突き当てられる。また、上部軸21が小径開口31eと、シール体32aと板ばね32bの中央穴32c、32dと、第1シール押さえ33の中央穴33aと、を貫通して第1弁体ユニット30の上方に突出している。大径開口31dと中間軸22との間を第1バッファ室BF1とする。
【0032】
上部軸21の突出した上端には、薄肉円筒状のカシメ部21aが形成されており、カシメ部21aの上端をカシメて拡径するように塑性変形させることにより、第1シール部32は第1シール押さえ33を介して第1本体31に固定される。なお、第1シール部32を第1閉鎖部材12に対して組み付ける際に相対的に挿入しやすくするために、環状部12cの下半部はテーパ状となっている。
【0033】
図3Aに示すように、第1弁体ユニット30が第1閉鎖部材12に対して取り付けられたとき、シール体32aの外縁が上方に折れ曲がった状態で、全周で第1閉鎖部材12の内周に当接し、流体漏れを抑制する。また、板ばね32bの上方に折れ曲がった径方向外方端部は、シール体32aの折れ曲がった外縁の径方向内側に当接して、シール体32aを第1閉鎖部材12の内周に向かって付勢するように作用する。本実施形態では、第1弁体ユニット30とともに移動する第1シール部32のシール体32aが当接可能な範囲において、第1閉鎖部材12の内径は等しくなっている。なお、第1シール部32としては、例えば特開2017-223293号公報に開示されたものを使用することができるため、その詳細な説明は省略する。
【0034】
第1シール部32により密封される第1閉鎖部材12内の空間を第1均圧室EC1という。第1弁体ユニット30を挟んで弁室VCと反対側に形成される第1均圧室EC1の上部は、後述する駆動装置50により遮蔽される。第1均圧室EC1は、第1均圧孔31fと、連通穴32e、32fと、連通穴33bとを介して弁室VCに連通している。第1均圧孔31fと、連通穴32e、32fと、連通穴33bとを、第1連通開口という。
【0035】
ここで、第1閉鎖部材12の内径をAとし、上部短円管部11hの内周である第1弁口の内径をCとする。第1閉鎖部材12の内径Aは、第1弁口の内径Cに等しい。したがって、第1均圧室EC1の軸線直交方向断面積は、第1弁口の軸線直交方向断面積に等しい。また、第1弁体34が第1弁座11iに着座したときに、第1弁座11iから大径開口31dの上端までの軸線方向距離をBとする。すなわち、第1連通開口と第1弁座11iとは、第1バッファ室BF1を挟んで距離Bだけ離間している。
【0036】
図1において、中空円筒状の第2閉鎖部材13は、弁ハウジング11の下部円筒部11f内に下方から挿入され、その上端を、下部円筒部11fの中間位置に形成された内周段差11mに当接させて、弁ハウジング11の下端に取り付けられている。第2閉鎖部材13は、環状溝13aを下面に同軸に有しており、下部円筒部11fに取り付けられた状態で、第2閉鎖部材13の下端と下部円筒部11fの下端とは軸線方向位置が一致する。
【0037】
蓋部材14は、環状板部14aと、環状板部14aの内縁に連結された有底円筒部14bと、環状板部14aの上面に同軸に形成された薄肉円筒部14cとを有する。
【0038】
図3Bは、第2弁体ユニット40の周辺を拡大して示す断面図であり、第2弁座11kから離間した状態で示す。第2弁体ユニット40は、円筒状の第2本体41と、第2シール部42と、第2シール押さえ43と、第2弁体44と、第2間座45とを有し、第1弁体ユニット30に対して上下逆の関係となることを除き、ほぼ同様な構成を有するため、重複説明を省略する。
【0039】
第2弁体ユニット40が第1弁体ユニット30と異なる点は、第2本体41の下端中央にカシメ円筒部41gを連設している点である。カシメ円筒部41gが貫通するように第2シール部42及び第2シール押さえ43を第2本体41に取り付けたのち、カシメ円筒部41gの下端をカシメて拡径するように塑性変形させることにより、第2シール部42は第2シール押さえ43を介して第2本体41に固定される。弁軸20の下部軸23が第2弁体ユニット40内に挿通されている。第2本体41の大径開口41dと中間軸22との間を第2バッファ室BF2とする。
【0040】
組付けられた状態で、第2シール部42は第2閉鎖部材13の内周との間をシールする。第2弁体ユニット40とともに移動する第2シール部42のシール体が当接可能な範囲において、第2閉鎖部材13の内径は等しくなっている。第2本体41は、第2閉鎖部材13の内周と軸線方向に摺動可能に嵌合する。薄肉円筒部14cを環状溝13aに嵌合させつつ、蓋部材14は第2閉鎖部材13の下端に取り付けられる。このとき、コイルバネ15が蓋部材14と第2弁体ユニット40の第2シール押さえ43との間に配置され、蓋部材14に対して第2弁体ユニット40を上方に付勢している。
【0041】
第2弁体ユニット40と、中空円筒状の第2閉鎖部材13と、蓋部材14とで囲われた空間を第2均圧室EC2という。第2弁体ユニット40を挟んで弁室VCと反対側に形成される第2均圧室EC2は、第2本体41の第2均圧孔41fと、第2シール部42の連通穴と、第2シール押さえ43の連通穴43bとを介して弁室VCに連通している。第2均圧孔41fと、第2シール部42の連通穴と、連通穴43bとを、第2連通開口という。
【0042】
第2弁体ユニット40の第2弁体44の径方向外側が第2間座45より露出しており、その上面が弁ハウジング11の第2弁座11kに対向した状態となる。第2閉鎖部材13の内径は、第2弁座11kの内周である第2弁口の内径に等しい。すなわち、第2均圧室EC2の軸線直交方向断面積は、第2弁口の軸線直交方向断面積に等しい。第2シール部42のシール部が常時当接する範囲を含む第2閉鎖部材13の全体において、その内径は等しくなっている。
【0043】
駆動装置(駆動部)50は、電磁式アクチュエータであり、弁本体10の上方に配置され、第1均圧室EC1の上端を閉止している。駆動装置50は、キャン51(有底の円筒部材)と、吸引子52と、プランジャ53と、コイル54と、圧縮コイルばね55と、これらを収容する樹脂製のケース56とを有している。なお、駆動装置50は、電動モータやソレノイドを用いて、弁軸20を軸線L方向に駆動するものであってもよい。
【0044】
有頂円筒状に形成されたキャン51の下端部は、吸引子52の上端近傍に取り付けられている。下部開口52aを有する吸引子52は、第1閉鎖部材12の上端に取り付けられている。
【0045】
キャン51内で摺動可能に配置されたプランジャ53は、上部開口53aを有する。上端が上部開口53aに嵌合して固定された駆動軸57が、下部開口52aを貫通するようにして配置され、プランジャ53と一体で移動するように構成されている。駆動軸57の下端は拡径しており、吸引子52から下方に突出して、第1弁体ユニット30の第1シール押さえ33の上面に当接可能となっている。
【0046】
吸引子52とプランジャ53との間には、圧縮コイルばね55が配置されている。圧縮コイルばね55は、吸引子52とプランジャ53とに対して、離間方向に付勢力を付与している。コイル54は、内側にキャン51が挿通された状態で配置されている。
【0047】
(流路切換弁の動作)
次に、流路切換弁1の動作について説明する。
駆動装置50のコイル54に通電していない状態において、圧縮コイルばね55の付勢力によってプランジャ53及び駆動軸57が上昇させられる。このため、コイルバネ15の付勢力により、
図1に示すように、第1弁体ユニット30と、弁軸20と、第2弁体ユニット40は一体的に上昇する。
【0048】
第1弁体ユニット30の上昇により、第1弁体34が第1弁座11iから離間する。これにより、入口管状部11b内の入口流路を介して弁室VC内に進入した流体は、第1弁体34と第1弁座11iとの隙間を通過し、上部円筒部11eの内部を通って第1出口管状部11c内の第1出口流路を介して排出される。
【0049】
一方、第2弁体ユニット40の上昇により、第2弁体44が第2弁座11kに着座するため、弁室VC内に進入した流体は、第2出口管状部11d内の第2口流路を介して排出されることがない。したがって、流体は、流路切換弁1を介して入口流路から第1出口流路のみへと流れることとなる。
【0050】
これに対し、駆動装置50のコイル54に通電すると、発生した磁力により圧縮コイルばね55の付勢力に抗してプランジャ53及び駆動軸57が下降する。このため、コイルバネ15の付勢力に抗して、
図2に示すように、第1弁体ユニット30と、弁軸20と、第2弁体ユニット40は一体的に下降する。
【0051】
第2弁体ユニット40の下降により、第2弁体44が第2弁座11kから離間する。これにより、入口管状部11b内の入口流路を介して弁室VC内に進入した流体は、第2弁体44と第2弁座11kとの隙間を通過し、下部円筒部11fの内部を通って第2出口管状部11d内の第2出口流路を介して排出される。
【0052】
一方、第1弁体ユニット30の第1弁体34が第1弁座11iに着座するため、弁室VC内に進入した流体は、第1出口管状部11c内の第1口流路を介して排出されることがない。したがって、流体は、流路切換弁1を介して入口流路から第2出口流路のみへと流れることとなる。
【0053】
(比較例との比較)
ここで、特許文献1に示す構成のように、例えば第1弁体ユニット30が第1連通開口を有しておらず、また第2弁体ユニット40が第2連通開口を有しておらず、弁軸20が第1均圧室EC1と第2均圧室EC2とに連通する開口を有していたものを比較例とする。この比較例では、例えば第2弁体44が第2弁座11kに着座しているときに、第1均圧室EC1と第2均圧室EC2とは等しい流体圧を有することとなる。
【0054】
比較例においても、本実施形態と同様に、第2弁体44が第2弁座11kに着座しているときは、流体は、流路切換弁1を介して入口流路から第1出口流路のみへと流れる。このため、第1弁体ユニット30の下端近傍では第1出口流路へ向かって流れる流体により流体圧が低くなる一方、弁室VCにおける第2弁体ユニット40の上端近傍(第2弁口内)では流体の流れが滞るため流体圧が高くなる。
【0055】
上述したように、比較例では、第2弁体44が第2弁座11kに着座しているときに、第1均圧室EC1と第2均圧室EC2とは等しい流体圧を有することとなるが、流れの滞りにより第2弁口内の流体圧が高くなると、第2弁体ユニット40を挟んで第2均圧室EC2の流体圧が相対的に低くなる。これにより、圧力バランスが崩れるため、駆動装置50による弁軸20の駆動に影響が及ぶおそれがある。同様の問題は、第1弁体34が第1弁座11iに着座しているときにも生じうる。
【0056】
これに対し本実施形態によれば、第1弁体ユニット30が第1連通開口を有し、かつ第1均圧室EC1の軸線直交方向断面積は、第1弁口の軸線直交方向断面積に等しくなっており、また第2弁体ユニット40が第2連通開口を有し、かつ第2均圧室EC2の軸線直交方向断面積は、第2弁口の軸線直交方向断面積に等しくなっている。
【0057】
このため、たとえ第2弁体44が第2弁座11kに着座していても、第2弁体ユニット40を挟んで、第2均圧室EC2の内部圧力は、第2弁口の内部圧力と等しくなる。また、たとえ第1弁体34が第1弁座11iに着座していても、第1弁体ユニット30を挟んで、第1均圧室EC1の内部圧力は、第1弁口の内部圧力と等しくなる。このため、弁軸20の軸線方向位置にかかわらず、第2弁体ユニット40を挟んだ圧力差をキャンセルすることにより、駆動装置50は安定して弁軸20を駆動することができる。同様に、第1弁体34が第1弁座11iに着座しているときに、第1均圧室EC1の内部圧力は、第1弁口の内部圧力と等しくなるので、第1弁体ユニット30を挟んだ圧力差をキャンセルすることができる。
【0058】
図4は、本発明者らが行った実験結果を示す図であり、縦軸に、一方の弁体ユニットが受ける軸線方向荷重をとり、横軸に、弁軸の軸線方向位置(弁リフト量)をとり、本実施形態のグラフXと、上述した比較例のグラフYとを比較して示す。ここでは弁リフト量0mmのときに、第1弁体34が第1弁座11iに着座し、弁リフト量5mmのときに、第2弁体44が第2弁座11kに着座するものとする。また、第1弁体ユニット30と第2弁体ユニット40とは、弁リフト量に応じて逆方向の荷重を受ける。
【0059】
図4に示すように、比較例のグラフYは弁リフト量2.5mm(中間位置)を挟んで弁体ユニットが受ける荷重が大きく変動している。これに対し、本実施形態のグラフXは、比較例のグラフYに対して弁リフト量の全域で、弁体ユニットが受ける荷重が低下しており、荷重変動も少ない。具体的には、弁リフト量5mm、0mmの状態で、比較例のグラフYにおいては弁体ユニットが最大荷重を受けるのに対し、本実施形態のグラフXの弁体ユニットが受ける荷重は、比較例の最大荷重に対し1/20以下に低下することから、本実施形態の効果が有効であることが明らかである。また、弁体ユニットが受ける最大荷重も低下するので、弁軸20の駆動に必要な力も少なくて足り、駆動装置50の小型化や省電力を図れ、その選定の自由度も向上する。
【0060】
さらに本実施形態によれば、第1弁体ユニット30の第1連通開口と第1弁座11iとは、軸線方向に距離Bだけ離間し、両者間にバッファ室BF1が存在する。このため、第1弁体34が第1弁座11iから離間して流体が通過する際に圧力変動が生じても、第1バッファ室BF1により圧力変動が平均化されて、第1連通開口を介して第1均圧室EC1に伝わるため、圧力変動の影響を極力抑えることができる。第2弁体ユニット40の第2バッファ室BF2も、同様な機能を有する。なお距離Bの値としては、例えば第1弁体ユニット30の軸線方向長の1/3以上、2/3以下であると好ましい。
【0061】
(変形例)
図3Cは、変形例にかかる第1弁体ユニット30’の周辺を拡大して示す断面図であり、第1弁座11iに着座した状態で示す。
図3Dは、第2弁体ユニット40’の周辺を拡大して示す断面図であり、第2弁座11kから離間した状態で示す。上述した実施形態と共通する構成については、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0062】
本変形例においては、第1弁体ユニット30’及び第2弁体ユニット40’に連通開口を形成することなく、弁軸20’に第1連通開口及び第2連通開口を設けている。具体的に、
図3Cに示すように、第1弁体ユニット30’は第1連通開口を有しておらず、弁軸20’は、上端から弁本体10の軸線Lに沿って延在する第1縦穴25と、第1縦穴25に交差し第1バッファ室BF1内で開口する第1横穴26とを有する。第1縦穴25と第1横穴26とで第1連通開口を構成する。
【0063】
また、
図3Dに示すように、第2弁体ユニット40’は第2連通開口を有しておらず、弁軸20’は、下端から弁本体10の軸線Lに沿って延在する第2縦穴27と、第2縦穴27に交差し第2バッファ室BF2内で開口する第2横穴28とを有する。第2縦穴27と第2横穴28とで第2連通開口を構成する。なお、第1弁体ユニット30’と第2弁体ユニット40’のうち一方に連通開口を設け、他方に対応する弁軸20’に連通開口を設けてもよい。
【0064】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係る流路切換弁1Aの縦断面図であり、入口流路と第1出口流路とが連通した状態を示し、また
図6は、第2の実施形態に係る流路切換弁1Aの縦断面図であり、入口流路と第2出口流路とが連通した状態を示す。
【0065】
本実施形態の流路切換弁1Aが、上述した実施形態に対し、第1閉鎖部材12A及び第2閉鎖部材13Aが異なる。それ以外の構成は、上述した実施形態と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0066】
図7(a)は、本実施形態の第1弁体ユニット30の周辺を拡大して示す断面図であり、第1弁体34が第1弁座11iから離間した状態で示し、
図7(b)は、本実施形態の第1弁体ユニット30の周辺を拡大して示す断面図であり、第1弁体34が第1弁座11iに着座した状態で示す。
【0067】
第1閉鎖部材12Aは、上端側内周に、上方に向かうにしたがって拡径するテーパ部12Adを、中央部の円筒部12Aeに接続して有する。
図7(a)に示すように、第1弁体34が第1弁座11iから離間した状態では、第1シール部32のシール体32aが円筒部12Aeから、より大径であるテーパ部12Adへと移動する。このため第1閉鎖部材12Aに対する第1シール部32の摺動抵抗が減少するため、駆動装置50の駆動力をより低減できる。また、第1弁体34が第1弁座11iから離間した状態では、第1本体31の下端近傍の流体圧力が低くなるので、第1均圧室EC内からの流体漏れは特に考慮する必要がない。
【0068】
これに対し、
図7(b)に示すように、第1弁体34が第1弁座11iに着座したときに、第1シール部32のシール体32aがテーパ部12Adから、より小径である円筒部12Aeへと移動する。このため第1閉鎖部材12Aに対する第1シール部32の密着力を高めることで、第1均圧室EC内からの流体漏れを抑制し、第1連通開口を介して第1本体31の下端近傍の流体圧力と、第1均圧室ECの内圧とを均一化させることができる。
【0069】
換言すれば、第1弁体34が第1弁座11iから離間したときに、第1シール部32のシール体32aが第1閉鎖部材12Aに当接する位置の内径は、第1弁体34が第1弁座11iに着座したときに、第1シール部32のシール体32aが第1閉鎖部材12Aに当接する位置の内径より大きい。
【0070】
同様に、
図5,6に示すように、第2閉鎖部材13も、下端側内周に、下方に向かうにしたがって拡径するテーパ部13Adを、中央部の円筒部13Aeに接続して有する。このため、第2弁体44が第2弁座11kから離間したときに、第2シール部42のシール体が第2閉鎖部材13に当接する位置の内径は、第2弁体44が第2弁座11kに着座したときに、第2シール部42のシール体が第2閉鎖部材13に当接する位置の内径より大きい。このため、第2閉鎖部材13Aに対する第2シール部42の摺動抵抗を減少させることができる。
【0071】
本発明は、電磁弁に限られず、電磁コイルに給電を行うことで弁体を駆動するすべての流路切換弁に適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1、1A 流路切換弁
10 弁本体
11b 入口管状部
11c 第1出口管状部
11d 第2出口管状部
11i 第1弁座
11k 第2弁座
12 第1閉鎖部材
13 第2閉鎖部材
20、20’ 弁軸
25 第1縦穴
26 第1横穴
27 第2縦穴
28 第2横穴
30、30’ 第1弁体ユニット
31 第1本体
31f 第1均圧孔
32 第1シール部
32e、32f 連通穴
33 第1シール押さえ
33b 連通穴
34 第1弁体
40、40’ 第2弁体ユニット
41 第2本体
41f 第2均圧孔
42 第2シール部
43 第2シール押さえ
44 第2弁体
50 駆動装置
BF1 第1バッファ室
BF2 第2バッファ室
EC1 第1均圧室
EC2 第2均圧室
VC 弁室