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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178713
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】運転可否判定装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 28/02 20060101AFI20231211BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20231211BHJP
   B62J 50/21 20200101ALI20231211BHJP
   B62J 27/00 20200101ALI20231211BHJP
【FI】
B60K28/02
B62J45/00
B62J50/21
B62J27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091552
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】深谷 和幸
【テーマコード(参考)】
3D037
【Fターム(参考)】
3D037FA04
3D037FA09
3D037FB14
(57)【要約】
【課題】運転可否を判定するための特別な操作を要することなく機器の運転可否の判定を行うことができる運転可否判定装置を提供する。
【解決手段】運転者による自動二輪車の運転の可否を判定する運転可否判定装置10であって、前記運転者が携帯可能な端末20A(スマートキー20)に備えられた第一送受信ユニット23と、前記自動二輪車に搭載され、前記第一送受信ユニット23から送信された情報を受信する第二送受信ユニット26と、を備え、前記端末20Aは、前記端末20Aを携帯する前記運転者の身体の動きを計測する加速度センサ21と、前記加速度センサ21が計測したデータを記憶する記憶装置22と、を備え、前記加速度センサ21が計測したデータに基づき、前記自動二輪車の運転可否の判定が行われる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による機器(1)の運転の可否を判定する運転可否判定装置(10,110)であって、
前記運転者が携帯可能な端末(20A,120A)に備えられた送信装置(23)と、
前記機器(1)に搭載され、前記送信装置(23)から送信された情報を受信する受信装置(26)と、を備え、
前記端末(20A,120A)は、前記端末(20A,120A)を携帯する前記運転者の身体の動きを計測するセンサ(21)と、前記センサ(21)が計測したデータを記憶する記憶装置(22)と、を備え、
前記センサ(21)が計測したデータに基づき、前記機器(1)の運転可否の判定が行われることを特徴とする運転可否判定装置。
【請求項2】
前記機器(1)の運転可否の判定を行う判定部(12)を備え、
前記判定部(12)は、前記機器(1)に搭載されており、前記端末(20A)の送信装置(23)から前記機器(1)の受信装置(26)へ、前記センサ(21)の計測データが送信され、前記判定部(12)で前記運転可否が判定されることを特徴とする請求項1に記載の運転可否判定装置。
【請求項3】
前記機器(1)の運転可否の判定を行う判定部(24)を備え、
前記判定部(24)は、前記端末(120A)に搭載されており、前記端末(120A)の送信装置(23)から前記機器(1)の受信装置(26)へ、前記運転可否の判定結果が送信されることを特徴とする請求項1に記載の運転可否判定装置。
【請求項4】
前記判定部(12,24)は、前記センサ(21)が計測したデータから前記運転者の安定歩行を検出し、前記安定歩行が予め定めた閾値(L)を越えると、前記機器(1)の運転が可能であると判定し、その後、前記安定歩行が途切れてから予め定めた準備時間(H2)の間は、前記運転が可能との判定を維持することを特徴とする請求項2又は3に記載の運転可否判定装置。
【請求項5】
前記機器(1)および前記端末(20A,120A)の少なくとも一方は、運転者によるオン操作に応じて、駆動装置の始動あるいは駆動システムの駆動待機状態への移行を行うためのスタートスイッチ(30)を備え、
前記端末(20A,120A)の送信装置(23)と前記機器(1)の受信装置(26)との間の運転可否判定のための通信は、前記スタートスイッチ(30)がオン操作されたことに基づいて開始されることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の運転可否判定装置。
【請求項6】
前記端末(20A,120A)は、前記機器(1)と無線通信を行う電子キー(20)を備えていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の運転可否判定装置。
【請求項7】
前記機器(1)の運転可否の判定を行う判定部(12,24)と、
前記判定部(12,24)による運転可否判定の結果に基づいて前記機器(1)の駆動システムの作動を制御する制御部(13)と、を備え、
前記制御部(13)は、前記判定部(12,24)が前記機器(1)の運転が不可であると判定した場合に、駆動制限制御として、前記機器(1)の駆動装置の始動を制限するか、前記駆動システムの駆動待機状態への移行を制限することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の運転可否判定装置。
【請求項8】
前記駆動制限制御が実行されていることを表示する制限表示部(15a)を備えていることを特徴とする請求項7に記載の運転可否判定装置。
【請求項9】
前記機器(1)が備える運転情報表示装置(15)に、前記制限表示部(15a)が備えられていることを特徴とする請求項8に記載の運転可否判定装置。
【請求項10】
前記判定部(12,24)は、前記機器(1)の運転が不可であると判定した後、予め定めた適性回復時間(Ta)の経過後に前記判定をリセットすることを特徴とする請求項7に記載の運転可否判定装置。
【請求項11】
前記判定部(12,24)は、前記機器(1)の駆動システムの運転状態から前記駆動システムを停止させた後、予め定めた判定保持時間(Tb)の間は運転可能判定を維持することを特徴とする請求項7に記載の運転可否判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転可否判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行前に運転者が運転に適した状態にあるか否か(運転が可能か否か)を判定する運転可否判定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この技術では、車両の走行前に運転者が行う検査として、クラッチペダルを踏みながら指示計の指針を動かし、装置側が指定した課題にペダル操作を追従させることができるか否かで、運転者が運転に適した状態にあるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭59-30573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、運転可否判定に特別な検査が必要となり、心身異常のない運転者にとっては追加の手間が掛かって煩わしいという課題がある。
【0005】
そこで本発明は、運転可否を判定するための特別な操作を要することなく機器の運転可否の判定を行うことができる運転可否判定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、運転者による機器(1)の運転の可否を判定する運転可否判定装置(10,110)であって、前記運転者が携帯可能な端末(20A,120A)に備えられた送信装置(23)と、前記機器(1)に搭載され、前記送信装置(23)から送信された情報を受信する受信装置(26)と、を備え、前記端末(20A,120A)は、前記端末(20A,120A)を携帯する前記運転者の身体の動きを計測するセンサ(21)と、前記センサ(21)が計測したデータを記憶する記憶装置(22)と、を備え、前記センサ(21)が計測したデータに基づき、前記機器(1)の運転可否の判定が行われることを特徴とする。
この構成によれば、運転者が携帯可能な端末により運転者の歩行情報等の身体の動きを計測しておき、この身体の動きの情報に基づき、当該運転者による機器の運転の可否を判定する。この判定は、端末又は機器に搭載された判定部においてなされる。運転者が機器の運転準備をする際、端末と機器との間で通信が行われると、端末から機器へ、運転者の身体の動きの計測データ又は運転可否の判定結果が送信され、必要に応じて機器の始動を制限する等の制御がなされる。このように、機器の運転準備をする際、運転可否の判定のための特別な検査をする必要が無くなり、機器の運転準備を迅速に行うことができ、実用性の高い運転可否判定装置を提供することができる。
【0007】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、前記機器(1)の運転可否の判定を行う判定部(12)を備え、前記判定部(12)は、前記機器(1)に搭載されており、前記端末(20A)の送信装置(23)から前記機器(1)の受信装置(26)へ、前記センサ(21)の計測データが送信され、前記判定部(12)で前記運転可否が判定されることを特徴とする。
この構成によれば、機器の運転可否の判定を行う判定部を車両側に搭載することで、運転者が機器の運転準備をする際、端末と機器との間の通信により、端末から機器へ、身体の動きの計測データが送信される。この計測データは、機器側の判定部において運転可否の判定に供され、必要に応じて駆動装置の始動を制限する等の制御がなされる。このように、機器の運転準備をする際、運転可否の判定のための特別な検査をする必要な無くなり、機器の運転準備を迅速に行うことができる。また、判定部を機器側に搭載することで、運転者が携帯する端末を小型化または簡素化することができ、利便性を向上させるとともにコストダウンを図ることができる。
【0008】
本発明の第三の態様は、上記第一の態様において、前記機器(1)の運転可否の判定を行う判定部(24)を備え、前記判定部(24)は、前記端末(120A)に搭載されており、前記端末(120A)の送信装置(23)から前記機器(1)の受信装置(26)へ、前記運転可否の判定結果が送信されることを特徴とする。
この構成によれば、機器の運転可否の判定を行う判定部を端末側に搭載することで、運転者が機器の運転準備をする際、端末と機器との間の通信により、端末から機器へ、運転可否の判定結果が送信される。この判定結果に応じて、機器側で駆動装置の始動を制限する等の制御がなされる。このように、機器の運転準備をする際、運転可否の判定のための特別な検査をする必要な無くなり、機器の運転準備を迅速に行うことができる。また、判定部を端末側に搭載することで、端末の送信装置から機器の受信装置への送信情報は判定結果のみで済むため、運転者の動きの計測データ全体を送信する場合と比べて、通信量を削減することができる。
【0009】
本発明の第四の態様は、上記第二又は第三の態様において、前記判定部(12,24)は、前記センサ(21)が計測したデータから前記運転者の安定歩行を検出し、前記安定歩行が予め定めた閾値(L)を越えると、前記機器(1)の運転が可能であると判定し、その後、前記安定歩行が途切れてから予め定めた準備時間(H2)の間は、前記運転が可能との判定を維持することを特徴とする。
この構成によれば、センサの計測データから運転者の安定歩行を検出して機器の運転が可能であると判定するとともに、安定歩行が途切れてからも規定時間の間は運転可能判定を維持することで、運転者が機器周辺に到着した後にも、運転準備のための時間の余裕を持たせることができる。これにより、機器の運転準備を円滑に行うことが可能となり、運転可否判定装置の利便性を高めることができる。
【0010】
本発明の第五の態様は、上記第一から第四の態様の何れか一つにおいて、前記機器(1)および前記端末(20A,120A)の少なくとも一方は、運転者によるオン操作に応じて、駆動装置の始動あるいは駆動システムの駆動待機状態への移行を行うためのスタートスイッチ(30)を備え、前記端末(20A,120A)の送信装置(23)と前記機器(1)の受信装置(26)との間の運転可否判定のための通信は、前記スタートスイッチ(30)がオン操作されたことに基づいて開始されることを特徴とする。
この構成によれば、運転者のオン操作により駆動装置の始動等を行うスタートスイッチを備え、スタートスイッチの操作に応じて端末と機器との間で運転可否判定のための通信が開始されることで、運転者の運転意思を確実に反映して運転可否の判定を行うことができる。このため、端末(運転者)が通信エリアに入った際に自動的に運転可否判定のための通信が行われる構成と比べて、端末と機器との間の無駄な通信を避けることができ、運転可否判定装置の通信量および消費電力を抑えることができる。
【0011】
本発明の第六の態様は、上記第一から第五の態様の何れか一つにおいて、前記端末(20A,120A)は、前記機器(1)と無線通信を行う電子キー(20)を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、運転可否判定装置における機器と通信を行う端末が、機器と無線通信を行う電子キーと兼用されることで、運転者の持ち物を少なくして利便性を向上させることができる。
【0012】
本発明の第七の態様は、上記第一から第六の態様の何れか一つにおいて、前記機器(1)の運転可否の判定を行う判定部(12,24)と、前記判定部(12,24)による運転可否判定の結果に基づいて前記機器(1)の駆動システムの作動を制御する制御部(13)と、を備え、前記制御部(13)は、前記判定部(12,24)が前記機器(1)の運転が不可であると判定した場合に、駆動制限制御として、前記機器(1)の駆動装置の始動を制限するか、前記駆動システムの駆動待機状態への移行を制限することを特徴とする。
この構成によれば、機器の運転不可判定に基づいて機器の駆動システムを制御する制御部が、機器の駆動装置の始動を制限するか、あるいは機器の駆動システムの駆動待機状態(駆動準備完了状態)への移行を制限することで、機器の運転を確実に制限することができ、運転可否判定装置の実用性を高めることができる。
【0013】
本発明の第八の態様は、上記第七の態様において、前記駆動制限制御が実行されていることを表示する制限表示部(15a)を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、機器の駆動制限制御が実行されていることを示す制限表示部を備えることで、機器が駆動制限状態にあることを運転者に知らしめることができる。このため、運転者が機器の故障ではなく駆動制限状態にあることを容易に理解することができ、運転可否判定装置の実用性を高めることができる。
【0014】
本発明の第九の態様は、上記第八の態様において、前記機器(1)が備える運転情報表示装置(15)に、前記制限表示部(15a)が備えられていることを特徴とする。
この構成によれば、機器の運転情報を表示するメータ装置等に、駆動制限制御が実行されていることを示す制限表示部を備えることで、運転者が駆動制限制御がなされていることに気付きやすく、運転可否判定装置の実用性を高めることができる。
【0015】
本発明の第十の態様は、上記第七から第九の態様の何れか一つにおいて、前記判定部(12,24)は、前記機器(1)の運転が不可であると判定した後、予め定めた適性回復時間(Ta)の経過後に前記判定をリセットすることを特徴とする。
この構成によれば、機器の運転不可判定後、規定時間の経過後に前記判定が自動的にリセットされることで、追加のリセット操作を設定することなく機器の運転を再開することができる。このため、利便性の高い運転可否判定装置を提供することができる。
【0016】
本発明の第十一の態様は、上記第七から第十の態様の何れか一つにおいて、前記判定部(12,24)は、前記機器(1)の駆動システムの運転状態から前記駆動システムを停止させた後、予め定めた判定保持時間(Tb)の間は運転可能判定を維持することを特徴とする。
この構成によれば、機器を運転している状態から駆動システムを停止させた後、規定時間の間は運転可能判定を維持することで、機器の短時間の停止後に運転を再開するような場合には、運転可否判定を改めて行うことが不要となる。このため、利便性の高い運転可否判定装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、運転可否を判定するための特別な操作を要することなく機器の運転可否の判定を行うことができる運転可否判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態における自動二輪車の斜視図である。
図2】上記自動二輪車のスマートキーおよびメインスイッチノブを示す説明図である。
図3】上記自動二輪車の運転可否判定装置(第一実施形態)の構成を示すブロック図である。
図4】上記運転可否判定装置(第一実施形態)の制御フローを示すフローチャートである。
図5】上記運転可否判定装置における運転者の安定歩行距離と始動許可信号との時間変化を示すグラフである。
図6】上記運転可否判定装置(第二実施形態)の構成を示すブロック図である。
図7】上記運転可否判定装置(第二実施形態)の制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UP、が示されている。
【0020】
図1に示すように、本実施形態における運転可否判定装置10(図3参照)は、例えばスクータ型の自動二輪車(鞍乗り型車両)1に適用されている。
自動二輪車1は、操向輪である前輪FWと、駆動輪である後輪RWと、を備えている。前輪FWは、例えばフロントフォーク2に支持され、バーハンドル3によって操向可能である。後輪RWは、例えばスイングユニット4に支持され、走行用の駆動装置によって駆動可能である。実施形態の自動二輪車1は、駆動装置としてエンジン(内燃機関)を備えるものであるが、エンジンおよび電気モータの少なくとも一つを備えるものであればよい。
【0021】
自動二輪車1の車体は、車体カバー5によって覆われている。車体カバー5は、車体前部を覆うフロントボディカバーFBと、車体後部を覆うリヤボディカバーRBと、フロントボディカバーFBおよびリヤボディカバーRB間に渡るセンターカバーCTと、を備えている。
【0022】
フロントボディカバーFBの上部には、メータ装置15が配置されている。フロントボディカバーFBの内側には、ハンドルロックモジュール6が配置されている。ハンドルロックモジュール6は、本体部であるハンドルロック機構と、スマートコントロールユニット25(図3参照)と、自動二輪車1の主電源スイッチであるメインスイッチ30(スタートスイッチ、図3参照)と、を一体に備えている。
【0023】
リヤボディカバーRBの上方には、運転者が着座するシート7が支持されている。シート7は、例えば前端部がヒンジを介して支持され、リヤボディカバーRBの上部を開閉可能である。リヤボディカバーRBの内側には、不図示の物品収納部が配置されている。
センターカバーCTは、左右一対のフロアステップ部STを備えるとともに、左右フロアステップ部STの間にセンタートンネル部CT1を備えている。センタートンネル部CT1には、燃料タンクの給油口周辺を開閉可能なフューエルリッド8が備えられている。
【0024】
図2を併せて参照し、メインスイッチ30は、フロントボディカバーFBの後面側に、運転者による操作部としてのメインスイッチノブ31を配置している。メインスイッチノブ31は、後述するスマートキー20(スマートエントリーキー)のID認証がなされた状態で、回転操作が可能または有効となる。このメインスイッチノブ31の回転操作によって、メインスイッチ30がオン状態となり、後述する制御装置14に電力が供給されてエンジンの始動が可能となる。また、シート7、フューエルリッド8等の開閉体の電磁ロック(ソレノイドで作動する電動式のロック装置)の解錠が可能となる。さらに、ハンドルロック機構のロックおよびアンロックが可能となる。
【0025】
図3を参照し、自動二輪車1は、スマートキーシステム11を備えている。
スマートキーシステム11は、利用者(運転者)が保持するスマートキー20(携帯機器、FOBキー、端末)と、自動二輪車1の車体に搭載されるスマートコントロールユニット25(車載機器、SCU)と、の間で双方向通信を行い、スマートキー20のID認証を行う。スマートキーシステム11は、スマートキー20のID認証がなされた場合に、エンジンの始動、車両各部の解錠等を可能とする。
【0026】
エンジンの始動は、メインスイッチ30をオン状態とし、ブレーキを作動状態として、不図示のセルスイッチを押下することでなされる。セルスイッチの押下により、制御装置14がエンジンに付設したスタータモータ18を駆動させ、エンジンをクランキングさせてエンジン始動を可能とする。
【0027】
メインスイッチノブ31のオン操作(オン位置への回転操作)は、スマートキー20のID認証によって可能又は有効になり(解錠状態)、スマートキー20が離れる等によりスマートキー20と自動二輪車1との間の通信が無くなることによって不能又は無効になる(施錠状態)。
【0028】
スマートキーシステム11は、電源オンの状態のスマートキー20が規定の認証エリアに入ったときに、スマートキー20とスマートコントロールユニット25との間の双方向通信を行う。これにより、スマートコントロールユニット25がスマートキー20のID情報を読み込み、スマートキー20の認証を行う。認証エリアは、例えば車体中心を基点とした半径2mほどの範囲である。スマートキー20の認証がなされると、メインスイッチノブ31のオン操作が可能になり、かつハンドルロックの解除、車両各部のロックの解除等が可能となる。スマートキー20とスマートコントロールユニット25との間の双方向通信は、例えば電源オンの状態のスマートキー20が規定の認証エリアに入り、さらにメインスイッチノブ31を押下する等の規定操作がなされたときに行われる構成でもよい。
【0029】
スマートキーシステム11は、スマートキー20が認証エリアから出たとき、又はスマートキー20の電源がオフになったときに、スマートキー20とスマートコントロールユニット25との間の通信を停止する。スマートキーシステム11は、メインスイッチノブ31のオフ操作(オフ位置への回転操作)によっても、スマートキー20とスマートコントロールユニット25との間の通信を停止する。
【0030】
スマートキー20は、自動二輪車1と無線通信を行う電子キーの一例であるが、電子キーは、いわゆるスマートエントリーキー、キーレスキーのような専用のハードウェアモジュールで構成されるものに限らない。例えば、運転者が所有するスマートフォン、タブレット等の携帯情報端末を利用して構成されてもよい。すなわち、携帯情報端末に備えられたアプリケーション(ソフトウェアモジュール)によって電子キーを実現してもよい。実施形態におけるスマートキー20は、「運転者が携帯可能な端末20A」の一例である。端末20Aは、電子キーの他、運転者の身体の動きを計測する手段を備えている。
【0031】
図2を参照し、メインスイッチノブ31は、メインスイッチ30をオフ状態にするオフ位置P1と、メインスイッチ30をオン状態にするオン位置P2と、オフ位置P1およびオン位置P2の間に位置してシート7およびフューエルリッド8の開操作を可能とするシート・フューエルロック解除位置P3と、オフ位置P1からオン位置P2と反対側へ押下を伴い回転され、ハンドルロックを含む車両各部のロックを施錠状態とするロック位置P4と、を有している。メインスイッチノブ31がシート・フューエルロック解除位置P3にあるとき、メインスイッチノブ31に隣接するシート・フューエルロック解除スイッチ32の操作が可能又は有効になる。
【0032】
図3を参照し、スマートキー20は、スマートコントロールユニット25との間の無線通信を行うための第一送受信ユニット23を備えている。スマートコントロールユニット25は、スマートキー20との間の無線通信を行うための第二送受信ユニット26を備えている。第一送受信ユニット23は、少なくとも第二送受信ユニット26に対して情報を送信する送信機能を有していればよい。第二送受信ユニット26は、少なくとも第一送受信ユニット23が送信した情報を受信する受信機能を有していればよい。
【0033】
実施形態のスマートキー20はさらに、加速度センサ21と、記憶装置22と、を備えている。
加速度センサ21は、スマートキー20の上下左右の動きを検知し、もってスマートキー20を携帯する運転者の身体の動き(挙動)を検知(計測)可能とする。例えば、加速度センサ21の計測データにおいて、上下方向の振動に加えて左右方向の振動が多いときは、利用者がふらついて歩いていると判断することができる。
【0034】
加速度センサ21は、運転者の身体の動きを計測する手段(センサ)の一例である。利用者の運転者の身体の動きの計測(ひいてはふらつきの検知)は、加速度センサ21に加えジャイロセンサ、地磁気センサ等を利用してもよく、IMU(Inertial Measurement Unit)、GPS(Global Positioning System)を利用してもよい。
【0035】
加速度センサ21等が計測した挙動データ(計測データ)は、記憶装置22に記憶される。この計測データは、各送受信ユニット23,26間の通信によって、後述する判定部12に取得される。判定部12では、取得した計測データに基づき、以下の判定がなされる。すなわち、スマートキー20を携帯した利用者が、閾値以上の横揺れ(ふらつき)がなく所定以上の歩行を継続したか否かの判定がなされる。
【0036】
判定部12において、上記利用者がふらつきの無い所定以上の歩行をしていると認められる場合、この利用者(運転者)による自動二輪車1の運転が可能と判定される。一方、上記利用者がふらつきの無い所定以上の歩行をしていると認められない場合、この利用者(運転者)による自動二輪車1の運転が不能と判定される。このように、メインスイッチ30のオン操作に応じて、自動二輪車1の運転可否の判定が自動でなされる。そして、この判定結果に基づいて、必要に応じて自動二輪車1の駆動システムの運転を制限する制御がなされる。
【0037】
スマートコントロールユニット25は、スマートキー20との間の双方向通信に応じて、メインスイッチ30のオン操作を可能とする。スマートコントロールユニット25には、制御装置14を介してメインスイッチ30が接続されている。スマートコントロールユニット25には、スマートキーシステム11によって作動する各種のロック装置および告知装置等(何れも不図示)が接続されている。
【0038】
自動二輪車1において、運転者による予め定めた始動操作の一つとして、スマートキー20のID認証がなされた状態で、メインスイッチノブ31をオン位置P2側へ回転させる操作(メインスイッチ30のオン操作)がある。このオン操作(始動操作)に応じて、スマートキー20およびスマートコントロールユニット25の各送受信ユニット23,26間で運転可否判定のための通信がなされる。
【0039】
自動二輪車1の主電源をオンにした状態(メインスイッチ30のオン状態)で、後述する運転可否判定装置10の判定結果が「運転可」の場合には、以下の走行準備動作が可能である。すなわち、駆動源にエンジンを備える車両の場合、不図示のセルスイッチを操作することで、エンジンを始動させることが可能である。また、駆動源に電気モータを備える車両の場合、不図示のレディスイッチを操作することで、電気モータを含む駆動システムを駆動待機状態(駆動準備完了状態、アクセル操作によって直ちに走り出せる状態)に移行させることが可能である。
【0040】
図3に示すように、運転可否判定装置10は、運転者が始動操作を行うためのスマートキーシステム11と、自動二輪車1の運転可否を判定する判定部12と、判定部12による運転可否判定の結果に基づいて自動二輪車1の駆動システムの作動を制御する制御部13と、を備えている。
【0041】
スマートキーシステム11は、運転者が保持するスマートキー20と、車体側に搭載されてスマートキー20と無線通信を行うスマートコントロールユニット25と、スマートキー20のID認証がなされた状態でメインスイッチノブ31が操作可能となるメインスイッチ30と、を備えている。
【0042】
判定部12および制御部13は、例えば自動二輪車1が備える電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)において構成されている。判定部12および制御部13は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。判定部12および制御部13は、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
【0043】
判定部12は、以下の条件に基づき、自動二輪車1の運転の可否を判定する。判定部12の判定条件は、加速度センサ21が計測した計測データ(運転者の挙動データ)から、運転者がふらつきの無い状態で予め定めた距離(例えば10m)を継続して歩いたか否かである。この条件を満たすとき(運転者がふらつき無く規定距離以上を歩いたとき)、運転適格有りと判定され、その後にセルスイッチを押下する等により、エンジンの始動を行うことができる。
【0044】
エンジン始動時に運転可否判定のための特別な操作を必要とすることは、運転者が煩わしいと感じることがある。このため、実施形態では、運転直前の規定時間の間は、スマートキー20の加速度センサ21の計測情報を記憶装置22に記憶しておき、この計測情報に基づいて、運転可否判定を自動で行う構成としている。
【0045】
記憶装置22に記憶した計測情報(データ)は、自動二輪車1側との通信によって判定部12に共有される。判定部12では、取得した計測データに基づいて、運転者が自動二輪車1の運転に適している状態か否かの判定を行う。この構成では、運転者が停車した自動二輪車1に向けて歩いている間に、運転可否判定に必要な挙動の計測が完了する。このため、エンジン始動時に運転可否判定のための特別な操作を必要とせず、速やかに運転可否判定を行うことができる。
【0046】
判定部12は、スマートキー20の計測データから、運転者がふらつきの無い状態で規定距離以上を歩いたことを確認できない場合は、現在の運転者による自動二輪車1の運転は不可であると判定する(運転適格無しと判定する。)。この判定に伴い、制御部13がエンジンECUと連係してエンジンの始動を制限し、自動二輪車1の運転を確実に制限する。実施形態では、スタータモータ18を駆動するスタータリレー17に対し、制御装置14が電力供給を停止させることで、エンジンの始動を制限する。すなわち、セルスイッチを押下してもエンジンの始動を行うことができなくなる。エンジンECUは、制御装置14と一体でも別体でもよい。
【0047】
利用者(運転者)が飲酒、過労、病気等により運転適性を低下させた状態では、利用者がふらつき無く歩くことに苦慮することが想定される。この場合、スマートキー20の計測データからは、運転者がふらつきの無い状態で規定距離以上を歩いたことが確認できなくなる。したがって、メインスイッチ30のオン操作時に運転可否判定を行い、運転者がふらつきの無い状態で規定距離以上を歩いたことが確認できない場合、利用者(運転者)が運転適性を低下させた状態にあるものとして運転不可と判定し、エンジン始動を不能とする。
【0048】
加速度センサ21は、スマートキー20の上下左右の動きを検知し、もってスマートキー20を携帯する運転者の身体の動き(挙動)を検知(計測)する。この計測データは、メインスイッチ30のオン操作に伴い、制御装置14の判定部12に送信される。判定部12では、送信された計測データから、運転者のふらつきの無い徒歩(安定歩行)を検出する。
【0049】
図5の上段のグラフは、スマートキー20が計測した運転者の安定歩行距離(ふらつきなく歩いた距離)を縦軸、時間を横軸にそれぞれ示す。図5の下段のグラフは、例えば判定部12から制御部13に出力される始動許可信号のオンオフを縦軸、時間を横軸にそれぞれ示す。図5では、上記安定歩行距離と前記始動許可信号との時間変化の関係を示している。
【0050】
図5を参照し、運転者のふらつきの無い徒歩(安定歩行)は、例えば計測データにおける上下方向の振動がありながらも左右方向の振動が少ない範囲が相当する。図5中A部(右上がりの傾斜部分)は、ふらつきの無い徒歩が継続している部位を示している。ふらつきの無い徒歩が判定閾値(歩行安定閾値)Lを超える距離に達していると、その時点t1で始動許可信号Sがオンになる(制御フラグが立つ)。メインスイッチ30のオン操作時点で始動許可信号Sの制御フラグがオンになっていれば、エンジンを始動させることができる。逆に、制御フラグがオフになっていれば、エンジンを始動させることはできない。
【0051】
運転者が自動二輪車1の停車場所に到着した時点t2で、メインスイッチ30をオン操作することで、判定部12に計測データが送信される。判定部12が取得する計測データの範囲(時間)H1は、例えばメインスイッチ30のオン操作から5~15分ほど前までの範囲である。
始動許可信号Sは、ふらつきの無い徒歩が歩行判定閾値Lを越えた時点t1にオフからオンに変わる。始動許可信号Sの終了時点(オンからオフへの変化)t3は、歩行判定閾値Lを越えた時点t1後の安定歩行の継続に応じて延期される。すなわち、始動許可信号Sは、ふらつきの無い徒歩が歩行判定閾値Lを越えた後に安定歩行が途切れた時点t4から、予め定めた準備時間(例えば3~5分)H2の間はオンとなり、準備時間H2経過後にオフとなる。
【0052】
次に、図3を参照し、実施形態における自動二輪車1の運転可否判定装置10の主な構成について説明する。
運転可否判定装置10は、スマートキーシステム11と、制御装置14と、メータ装置15と、バッテリ16と、スタータリレー17と、スタータモータ18と、を備えている。
【0053】
スマートキーシステム11は、前述したスマートキー20と、スマートコントロールユニット25と、メインスイッチ30と、を備えている。スマートコントロールユニット25およびメインスイッチ30は、制御装置14に接続されている。スマートコントロールユニット25、メインスイッチ30および制御装置14は、車体側に搭載されている。
制御装置14は、判定部12および制御部13を構成する電子制御ユニットである。制御装置14には、スマートコントロールユニット25およびメインスイッチ30の他、メータ装置15、前記セルスイッチおよびバッテリ16等が接続されている。
【0054】
メータ装置15は、車速を示す速度計およびエンジン回転数を示す回転計ならびに各種インジケータ等を備えている。メータ装置15は、自動二輪車1の各種運転状態を運転者に表示する。メータ装置15は、運転可否判定の結果に基づきエンジン始動制限が実行されていることを運転者に表示する制限表示部15aを備えている。制限表示部15aは、例えば始動制限時に点灯または点滅するランプでもよく、あるいは液晶パネル等を利用した表示装置であってもよい。制限表示部15aは、メータ装置15とは独立して設けられてもよい。
【0055】
バッテリ16は、例えば自動二輪車1の補機用電源として車載された12Vバッテリである。
スタータリレー17は、前記セルスイッチの操作により制御装置14から供給された一次電流に応じてオンオフするスイッチであり、バッテリ16とスタータモータ18との間の電力供給の有無を切り替える。
スタータモータ18は、バッテリ16から供給された電力によって駆動し、エンジンをクランキングさせてエンジン始動を可能とする。
【0056】
運転者がエンジン始動操作を行うためにメインスイッチノブ31を電源オン側に回転させると、エンジン始動前に運転可否判定がなされる。その結果、スマートキー20を携帯した運転者が、自動二輪車1を運転可能な状態にあると判定されると、前記セルスイッチによるエンジン始動が可能(有効)となる。この場合、運転者は、通常通りにエンジンを始動させて自動二輪車1を運転する(走行させる)ことができる。
【0057】
一方、運転可否判定の結果、スマートキー20を携帯した運転者が、自動二輪車1を運転不可な状態にあると判定されると、前記セルスイッチによるエンジン始動が不能(無効)となる。この場合、運転者は、エンジンを始動させることができず、自動二輪車1を運転することができない。
【0058】
上記した運転可否の判定は、制御装置14の判定部12においてなされる。判定部12が運転不可と判定した場合、制御装置14の制御部13は、エンジンECUと連係してエンジンの始動を制限する制御(駆動制限制御)を行う。駆動制限制御がなされると、自動二輪車1の電源オン状態でセルスイッチが操作されても、スタータリレー17に一次電流が供給されない(スタータリレー17がオン作動しない)。その結果、スタータモータ18が駆動せず、エンジンが始動させず、自動二輪車1の運転が制限(規制)される。
【0059】
このとき、メータ装置15の制限表示部15aは、運転可否判定の結果(運転不可判定)に基づきエンジンを始動させることができない旨を表示する。
運転が不可であるとの判定(運転者が運転適性を低下させた状態にあるとの判定)は、例えば飲酒による酩酊状態から回復する程度の時間(予め定めた適性回復時間Ta、例えば24時間)が経過した後にリセットされる。なお、所定時間の経過を待つ以外にも、特定のリセット操作等に応じて、運転が不可であるとの判定をリセット可能としてもよい。
【0060】
運転可否判定は、エンジンを停止する度に行われると、特に正常な運転者は煩わしさを感じることがある。この煩わしさを低減するために、実施形態では、運転が可能であるとの判定(運転者が運転適性を有する状態にあるとの判定)がなされてエンジンを始動させた状態から、メインスイッチノブ31の回転等によりエンジンを停止した後、例えば軽食、飲み物等を買いに行く程度の時間(予め定めた判定保持時間Tb、例えば15分程度)の間は、運転可否判定を不要としてエンジン始動を可能とする構成としている。
【0061】
制御装置14は、メインスイッチ30のオフ状態でも運転可否判定を可能とするために、メインスイッチ30のオフ状態でも待機電力が供給された待機状態とされる。
例えば、自動二輪車1がスマートキー20の認証に伴い制御装置14等に電力が供給されて待機状態となる構成としてもよい。また、例えば自動二輪車1が位置情報を検知又は取得可能であれば、場所および時間帯等の条件に応じて、制御装置14に電力が供給されて待機状態となる構成としてもよい。これらの構成により、運転可否判定を可能とするための電力消費を抑えることができる。
【0062】
次に、制御装置14等で行われる運転可否判定に係る処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。以下の処理は、制御装置14等が待機状態にある場合に所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0063】
まず、イグニッションオフ後で適性回復時間Ta、判定保持時間Tbが経過した等の条件が揃った後、スマートキー20のID認証がなされた状態で、メインスイッチ30(スタートスイッチ)が電源オン側に回転操作されると(ステップS11)、スマートキー20およびスマートコントロールユニット25の各送受信ユニット23,26を介して、スマートキー20から運転者の動作情報(歩行情報、動きの計測データ)が判定部12に取得される(ステップS12)。
その後、判定部12において、取得した計測データから、運転者の歩行にふらつき動作があるか否かの判定がなされる(ステップS13)。
【0064】
ステップS12でYES(ふらつき有り)の場合、判定部12において運転適格無しと判定され(ステップS14)、制御部13においてエンジン始動不可な状態(エンジン始動が制限された状態)への移行がなされる(ステップS15)。
ステップS12でNO(ふらつき無し)の場合、判定部12において運転適格有りと判定され(ステップS16)、制御部13においてエンジン始動可能な状態への移行がなされる(ステップS17)。
【0065】
実施形態では、自動二輪車1がエンジン(内燃機関)を走行用の駆動源とする場合の例について説明したが、以下の例も考えられる。すなわち、自動二輪車1が走行用の駆動源に電気モータを含む電動車両である場合、判定部12において運転不可と判定されると、制御部13において駆動システムの駆動待機状態(駆動準備完了状態)への移行が制限され、判定部12において運転可能と判定された場合に、制御部13において駆動システムの駆動待機状態(駆動準備完了状態)への移行が実行されてもよい。
【0066】
以上説明したように、上記実施形態における運転可否判定装置10は、運転者による自動二輪車1の運転の可否を判定する運転可否判定装置10であって、前記運転者が携帯可能な端末20A(スマートキー20)に備えられた第一送受信ユニット23と、前記自動二輪車1に搭載され、前記第一送受信ユニット23から送信された情報を受信する第二送受信ユニット26と、を備え、前記端末20Aは、前記端末20Aを携帯する前記運転者の身体の動きを計測する加速度センサ21と、前記加速度センサ21が計測したデータを記憶する記憶装置22と、を備え、前記加速度センサ21が計測したデータに基づき、前記自動二輪車1の運転可否の判定が行われる。
この構成によれば、運転者が携帯可能な端末20Aにより運転者の歩行情報等の身体の動きを計測しておき、この身体の動きの情報に基づき、当該運転者による自動二輪車1の運転の可否を判定する。この判定は、自動二輪車1に搭載された判定部12においてなされる。運転者が自動二輪車1の運転準備をする際、端末20Aと自動二輪車1との間で通信が行われると、端末20Aから自動二輪車1へ、運転者の身体の動きの計測データが送信され、必要に応じて自動二輪車1の始動を制限する等の制御がなされる。このように、自動二輪車1の運転準備をする際、運転可否の判定のための特別な検査をする必要が無くなり、自動二輪車1の運転準備を迅速に行うことができ、実用性の高い運転可否判定装置10を提供することができる。
【0067】
上記運転可否判定装置10は、前記自動二輪車1の運転可否の判定を行う判定部12を備え、前記判定部12は、前記自動二輪車1に搭載されており、前記端末20Aの第一送受信ユニット23から前記自動二輪車1の第二送受信ユニット26へ、前記加速度センサ21の計測データが送信され、前記判定部12で前記運転可否が判定される。
この構成によれば、自動二輪車1の運転可否の判定を行う判定部12を自動二輪車1側に搭載することで、運転者が自動二輪車1の運転準備をする際、端末20Aと自動二輪車1との間の通信により、端末20Aから自動二輪車1へ、身体の動きの計測データが送信される。この計測データは、自動二輪車1側の判定部12において運転可否の判定に供され、必要に応じて駆動装置の始動を制限する等の制御がなされる。このように、自動二輪車1の運転準備をする際、運転可否の判定のための特別な検査をする必要な無くなり、自動二輪車1の運転準備を迅速に行うことができる。また、判定部12を自動二輪車1側に搭載することで、運転者が携帯する端末20Aを小型化または簡素化することができ、利便性を向上させるとともにコストダウンを図ることができる。
【0068】
上記運転可否判定装置10において、前記判定部12は、前記加速度センサ21の計測データから前記運転者の安定歩行を検出し、前記安定歩行が予め定めた閾値Lを越えると、前記自動二輪車1の運転が可能であると判定し、その後、前記安定歩行が途切れてから予め定めた準備時間H2の間は、前記運転が可能との判定を維持する。
この構成によれば、加速度センサ21の計測データから運転者の安定歩行を検出して自動二輪車1の運転が可能であると判定するとともに、安定歩行が途切れてからも規定時間の間は運転可能判定を維持することで、運転者が自動二輪車1周辺に到着した後にも、運転準備のための時間の余裕を持たせることができる。これにより、自動二輪車1の運転準備を円滑に行うことが可能となり、運転可否判定装置10の利便性を高めることができる。
【0069】
上記運転可否判定装置10において、前記自動二輪車1は、運転者によるオン操作に応じて駆動装置の始動あるいは駆動システムの駆動待機状態への移行を行うためのメインスイッチ30を備え、前記端末20Aの第一送受信ユニット23と前記自動二輪車1の第二送受信ユニット26との間の運転可否判定のための通信は、前記メインスイッチ30がオン操作されたことに基づいて開始される。
この構成によれば、運転者のオン操作により駆動装置の始動等を行うメインスイッチ30を備え、メインスイッチ30の操作に応じて端末20Aと自動二輪車1との間で運転可否判定のための通信が開始されることで、運転者の運転意思を確実に反映して運転可否の判定を行うことができる。このため、端末20A(運転者)が通信エリアに入った際に自動的に運転可否判定のための通信が行われる構成と比べて、端末20Aと自動二輪車1との間の無駄な通信を避けることができ、運転可否判定装置10の通信量および消費電力を抑えることができる。
【0070】
メインスイッチ30の操作部(メインスイッチノブ31)は自動二輪車1側に備えられるが、運転者が携帯する端末20Aにメインスイッチ30の操作部が備えられてもよい。すなわち、端末20A側の操作部は、通信によって自動二輪車1側のメインスイッチ30を操作する構成でもよい。メインスイッチ30の操作部は、メインスイッチノブ31のようないわゆる物理的な操作部に限らず、ソフトウェアモジュールによって実現されるものでもよい。これら何れかの操作部に対するオン操作に応じて、端末20Aと自動二輪車1との間の運転可否判定のための通信が行われる。
【0071】
上記運転可否判定装置10において、前記端末20Aは、前記自動二輪車1と無線通信を行う電子キー(スマートキー20)を備えている。
この構成によれば、運転可否判定装置10における自動二輪車1と通信を行う端末20Aが、自動二輪車1と無線通信を行う電子キーと兼用されることで、運転者の持ち物を少なくして利便性を向上させることができる。
【0072】
上記運転可否判定装置10において、前記判定部12による運転可否判定の結果に基づいて前記自動二輪車1の駆動システムの作動を制御する制御部13を備え、前記制御部13は、前記判定部12が前記自動二輪車1の運転が不可であると判定した場合に、駆動制限制御として、前記自動二輪車1の駆動装置の始動を制限するか、前記駆動システムの駆動待機状態への移行を制限する。
この構成によれば、自動二輪車1の運転不可判定に基づいて自動二輪車1の駆動システムを制御する制御部13が、自動二輪車1の駆動装置の始動を制限するか、あるいは自動二輪車1の駆動システムの駆動待機状態(駆動準備完了状態)への移行を制限することで、自動二輪車1の運転を確実に制限することができ、運転可否判定装置10の実用性を高めることができる。
【0073】
上記運転可否判定装置10において、前記駆動制限制御が実行されていることを表示する制限表示部15aを備えている。
この構成によれば、自動二輪車1の駆動制限制御が実行されていることを示す制限表示部15aを備えることで、自動二輪車1が駆動制限状態にあることを運転者に知らしめることができる。このため、運転者が自動二輪車1の故障ではなく駆動制限状態にあることを容易に理解することができ、運転可否判定装置10の実用性を高めることができる。
【0074】
上記運転可否判定装置10において、前記自動二輪車1が備える運転情報表示装置(メータ装置15)に、前記制限表示部15aが備えられている。
この構成によれば、自動二輪車1の運転情報を表示するメータ装置15に、駆動制限制御が実行されていることを示す制限表示部15aを備えることで、運転者が駆動制限制御が実行されていることに気付きやすく、運転可否判定装置10の実用性を高めることができる。
【0075】
上記運転可否判定装置10において、前記判定部12は、前記自動二輪車1の運転が不可であると判定した後、予め定めた適性回復時間Taの経過後に前記判定をリセットする。
この構成によれば、自動二輪車1の運転不可判定後、規定時間の経過後に前記判定が自動的にリセットされることで、追加のリセット操作を設定することなく自動二輪車1の運転を再開することができる。このため、利便性の高い運転可否判定装置10を提供することができる。
【0076】
上記運転可否判定装置10において、前記判定部12は、前記自動二輪車1の駆動システムの運転状態から前記駆動システムを停止させた後、予め定めた判定保持時間Tbの間は運転可能判定を維持する。
この構成によれば、自動二輪車1の運転状態から駆動システムを停止させた後、規定時間の間は運転可能判定を維持することで、自動二輪車1の短時間の停止後に運転を再開するような場合には、運転可否判定を改めて行うことが不要となる。このため、利便性の高い運転可否判定装置10を提供することができる。
【0077】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について図6図7を参照して説明する。
第二実施形態の運転可否判定装置110は、第一実施形態の運転可否判定装置10に対して、運転可否の判定を行う判定部24が、制御装置114側(自動二輪車1側)ではなくスマートキー120側(端末120A側)に設けられる点で特に異なる。その他の、第一実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細な説明省略する。
【0078】
図6に示すように、第二実施形態のスマートキーシステム111は、スマートキー120と、スマートコントロールユニット25と、メインスイッチ30と、を備えている。
スマートキー120は、第一実施形態のスマートキー20に対し、判定部24(運転適格判定装置)をさらに備えたものである。判定部24は、第一実施形態の判定部12と同様、加速度センサ21が計測した計測データに基づき、スマートキー120を携帯する運転者の運転可否を判定する。この判定結果は、各送受信ユニット23,26間の通信によって、自動二輪車1側の制御装置114の制御部13に取得される。制御装置114は、第一実施形態の制御装置14に対し、判定部12を無くしたものである。制御部13では、前記判定結果に基づき、必要に応じて自動二輪車1の駆動システムの運転を制限する制御を行う。
【0079】
第一実施形態では、自動二輪車1側に判定部12があることから、スマートキー120側に判定部24がある場合と比べて、端末120Aの小型化に寄与する。一方、第一実施形態では、規定時間分の計測データを送信するため、各送受信ユニット23,26間の通信量が多くなってしまう。第二実施形態では、端末120A側に判定部24があるため、各送受信ユニット23,26間の通信では判定結果のみを送信すればよく、通信量を削減することができる。
【0080】
次に、制御装置114等で行われる運転可否判定に係る処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。以下の処理は、制御装置114等が待機状態にある場合に所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0081】
まず、イグニッションオフ後で適性回復時間Ta、判定保持時間Tbが経過した等の条件が揃った後、スマートキー120のID認証がなされた状態で、メインスイッチ30(スタートスイッチ)が電源オン側に回転操作されると(ステップS21)、スマートキー120およびスマートコントロールユニット25の各送受信ユニット23,26を介して、スマートキー120から運転可否判定の結果が制御装置114の制御部13に取得される(ステップS22)。その後、取得した判定結果から、運転適格があるか否か(ふらつきがあるか否か)の判定がなされる(ステップS23)。
【0082】
ステップS23でYES(ふらつき有り)の場合、すなわち運転適格無しと判定された場合、制御部13においてエンジン始動不可な状態(エンジン始動が制限された状態)への移行がなされる(ステップS24)。ステップS23でNO(ふらつき無し)の場合、すなわち運転適格有りと判定された場合、制御部13においてエンジン始動可能な状態(エンジン始動が許可された状態)への移行がなされる(ステップS25)。
【0083】
以上説明した第二実施形態の運転可否判定装置110においても、運転者が携帯可能な端末120Aにより運転者の歩行情報等の身体の動きを計測しておき、この身体の動きの情報に基づき、当該運転者による自動二輪車1の運転の可否を判定する。この判定は、端末120Aに搭載された判定部24においてなされる。運転者が自動二輪車1の運転準備をする際、端末120Aと自動二輪車1との間で通信が行われると、端末120Aから自動二輪車1へ、運転可否の判定結果が送信され、必要に応じて自動二輪車1の始動を制限する等の制御がなされる。このように、自動二輪車1の運転準備をする際、運転可否の判定のための特別な検査をする必要が無くなり、自動二輪車1の運転準備を迅速に行うことができ、実用性の高い運転可否判定装置110を提供することができる。
【0084】
そして、上記運転可否判定装置110は、前記自動二輪車1の運転可否の判定を行う判定部24を備え、前記判定部24は、前記端末120Aに搭載されており、前記端末120Aの第一送受信ユニット23から前記自動二輪車1の第二送受信ユニット26へ、前記判定部24でなされた前記運転可否の判定結果が送信される。
この構成によれば、自動二輪車1の運転可否の判定を行う判定部24を端末120A側に搭載することで、運転者が自動二輪車1の運転準備をする際、端末120Aと自動二輪車1との間の通信により、端末120Aから自動二輪車1へ、運転可否の判定結果が送信される。この判定結果に応じて、自動二輪車1側で駆動装置の始動を制限する等の制御がなされる。このように、自動二輪車1の運転準備をする際、運転可否の判定のための特別な検査をする必要な無くなり、自動二輪車1の運転準備を迅速に行うことができる。また、判定部24を端末120A側に搭載することで、端末120Aの第一送受信ユニット23から自動二輪車1の第二送受信ユニット26への送信情報は判定結果のみで済むため、運転者の動きの計測データ全体を送信する場合と比べて、通信量を削減することができる。
【0085】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、本実施形態の運転可否判定装置は、自動二輪車以外の鞍乗り型車両に適用してもよい。前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪(四輪バギー等)の車両も含まれる。また、鞍乗り型車両以外の車両(乗用車、バス、トラック等)に適用してもよい。
本実施形態の運転可否判定装置は、車両に適用されるものであるが、本発明は車両への適用に限らず、航空機や船舶等の種々輸送機器、ならびに建設機械や産業機械等、様々な乗物や移動体に適用してもよい。さらに、本発明は、乗物以外でも利用者が運転を行う機器であれば、例えば手押しの芝刈り機や清掃機等に広く適用可能である。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 自動二輪車(機器)
10,110 運転可否判定装置
12,24 判定部
13 制御部
15 メータ装置(運転情報表示装置)
15a 制限表示部
20 スマートキー(電子キー)
20A,120A 端末
21 加速度センサ(センサ)
22 記憶装置
23 第一送受信ユニット(送信装置)
26 第二送受信ユニット(受信装置)
30 メインスイッチ(スタートスイッチ)
H2 準備時間
Ta 適性回復時間
Tb 判定保持時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7