(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178720
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】金工用携帯用切断機
(51)【国際特許分類】
B23D 47/00 20060101AFI20231211BHJP
B23D 45/16 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B23D47/00 A
B23D45/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091564
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 弦
【テーマコード(参考)】
3C040
【Fターム(参考)】
3C040AA01
3C040BB01
3C040CC02
3C040DD01
3C040GG16
3C040GG19
3C040GG42
3C040LL05
(57)【要約】
【課題】チップソーカッタとも称される金工用携帯用切断機は、切屑を集塵する集塵ボックスを有する。切屑は蓋を開いて排出口から廃棄される。蓋は高熱の切屑で熱くなっている場合があり、開閉操作時に注意を要する。本開示では、蓋の放熱性を高めて開閉時の操作性を良くすることを目的とする。
【解決手段】集塵ボックス40の排出口を開閉する蓋50の表面の一部に放熱部55を設ける。放熱部55は複数の突条55aを有する。これにより蓋50の表面積が増大されて放熱性が高められる。放熱部55により熱くなりにくくなることで蓋50の開閉時の操作性が良くなる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金工用携帯用切断機であって、
切断刃を有する切断機本体と、
切断により発生する切屑を集塵する集塵ボックスを備え、
前記集塵ボックスは、切屑を排出する排出口と、前記排出口を開閉する蓋を備え、
前記蓋は、表面の一部に放熱部を有する金工用携帯用切断機。
【請求項2】
請求項1記載の金工用携帯用切断機であって、
前記放熱部は、複数の突条を含む金工用携帯用切断機。
【請求項3】
請求項2記載の金工用携帯用切断機であって、
前記複数の突条が相互に平行に配置された金工用携帯用切断機。
【請求項4】
請求項2又は3記載の金工用携帯用切断機であって、
前記蓋は、前記集塵ボックスのボックス本体に回転可能に連結され、
前記複数の突条は、前記蓋の回転方向に対して直交する方向に延設され、
前記蓋は、前記複数の突条の端部同士を連結する壁部を有する金工用携帯用切断機。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1つに記載した金工用携帯用切断機であって、
前記蓋は、前記集塵ボックスのボックス本体に回転可能に連結されるヒンジ部と、前記ヒンジ部の端部から屈曲方向に延在される腕部と、前記腕部から前記ヒンジ部側に凹む凹部を有する金工用携帯用切断機。
【請求項6】
請求項5記載の金工用携帯用切断機であって、
前記凹部は、前記蓋の閉じ状態において前記排出口に進入される金工用携帯用切断機。
【請求項7】
請求項5又は6記載の金工用携帯用切断機であって、
前記凹部は、前記腕部から前記ヒンジ部側に延設される環状の壁部と、前記壁部の端部を覆う底部を有し、
前記放熱部は、前記底部から前記腕部側に突出する複数の突条を有する金工用携帯用切断機。
【請求項8】
請求項5~7の何れか1つに記載の金工用携帯用切断機であって、
前記蓋は、前記腕部の端部から前記ヒンジ部側に屈曲する方向に延在される係合片を有し、前記係合片は、前記集塵ボックスに設けられた係合部に係合する係合孔を有する金工用携帯用切断機。
【請求項9】
請求項8記載の金工用携帯用切断機であって、
前記集塵ボックスは、複数の通気孔が形成された金属製の通気板を有し、
前記係合孔は、前記通気板に対向する金工用携帯用切断機。
【請求項10】
請求項8又は9記載の金工用携帯用切断機であって、
前記蓋は、前記係合片の端部から前記ボックス本体から離れる方向に延設する摘み部を有する金工用携帯用切断機。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1つに記載の金工用携帯用切断機であって、
前記集塵ボックスのボックス本体は、第1合成樹脂と金属が一体化された第1本体部と、前記第1合成樹脂よりも耐熱性の高い第2合成樹脂を素材とする第2本体部を備える金工用携帯用切断機。
【請求項12】
金工用携帯用切断機であって、
切断刃を有する切断機本体と、
切断により発生する切り屑を集塵する集塵ボックスを備え、
前記集塵ボックスのボックス本体は、第1合成樹脂を素材とし、内面に金属板が一体化された第1本体部と、前記第1合成樹脂よりも耐熱性の高い第2合成樹脂を素材とする第2本体部を備える金工用携帯用切断機。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の金工用携帯用切断機であって、
前記第1本体部の前記第1合成樹脂は、透光性を有する金工用携帯用切断機。
【請求項14】
請求項11~13の何れか1つに記載の金工用携帯用切断機であって、
前記ボックス本体は、前記切断刃の板厚方向の一方側に前記第1本体部を有し、他方側に前記第2本体部を有し、前記第2本体部の前記板厚方向の幅が前記第1本体部の前記板厚方向の幅より大きい金工用携帯用切断機。
【請求項15】
請求項11~14の何れか1つに記載の金工用携帯用切断機であって、
前記第2本体部は、前記第2合成樹脂としてポリアミドを含み、かつガラス繊維を含む素材から形成される金工用携帯用切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業者が手に持って移動操作することにより金属の切断加工を行う金工用携帯用切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばチップソーカッタと称される金属用チップソーを使用する金工用の携帯用切断機は、切断加工により発生する火花及び火花の温度が低下したことにより生じる高温の切屑を集塵するための集塵ボックスを備えている。特許文献1に開示されているように集塵ボックスの後部には、集塵された切屑を廃棄するための排出口を有する。排出口は蓋で開閉される。使用者は、集塵ボックスに集塵した切屑を蓋を開いて排出口から廃棄することができる。尚、チップソーとは、チップと台金を別部品として製作し、チップと台金を溶接にて一体化した切断刃の一種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集塵ボックスに集塵された切屑により蓋が高熱になる場合があるため、蓋の特に開閉時には注意を要する。この点で蓋の操作性を良くする必要があった。本開示では、金工用携帯用切断機の集塵ボックスについて、排出口の蓋の操作性をより良くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの局面によれば、金工用携帯用切断機は、例えば切断刃を有する切断機本体と、切断により発生する切屑を集塵する集塵ボックスを備える。集塵ボックスは、例えば切屑を排出する排出口と、排出口を開閉する蓋を備える。例えば蓋は、表面の一部に放熱部を有する。
【0006】
従って、蓋の熱が放熱部により効率良く放熱される。これにより蓋が熱くなりにくくなって開閉時の操作性が良くなる。
【0007】
本開示の他の局面によれば、金工用携帯用切断機は、例えば切断刃を有する切断機本体と、切断により発生する切り屑を集塵する集塵ボックスを備える。集塵ボックスのボックス本体は、例えば第1合成樹脂を素材とし、内面に金属板が一体化された第1本体部と、第1合成樹脂よりも耐熱性の高い第2合成樹脂を素材とする第2本体部で構成される。
【0008】
従って、金属が第1本体部にのみ配置されることで集塵ボックスの軽量化が図られるとともに、第2本体部により集塵ボックスの耐熱性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例に係る金工用携帯用切断機の右側面図である。
【
図2】
図1のII矢視図であって、金工用携帯用切断機の平面図である。
【
図3】
図1のIII矢視図であって、金工用携帯用切断機の前面図である。
【
図4】
図1のIV矢視図であって、金工用携帯用切断機の後面図である。
【
図7】集塵ボックスを取り外した金工用携帯用切断機の右側面図である。
【
図8】集塵ボックスの斜視図である。本図は右斜め前方から見た状態を示している。
【
図9】集塵ボックスの斜視図である。本図は右斜め後方から見た状態を示している。本図は蓋を閉じた状態を示している。
【
図10】集塵ボックスの斜視図である。本図は右斜め後方から見た状態を示している。本図は蓋を開いた状態を示している。
【
図11】第1本体部の斜視図である。本図は、ボックス本体の内部側から見た図であって、左斜め後方から見た斜視図である。
【
図12】第2本体部の斜視図である。本図は、ボックス本体の内部側から見た図であって、右斜め後方から見た斜視図である。
【
図13】集塵ボックスの縦断面図である。本図は蓋を閉じた状態を示している。
【
図15】
図14中XV-XV線断面矢視図であって、蓋の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば放熱部は、複数の突条を含む。従って、複数の突条により蓋の表面積が大きくなって熱が効率よく放熱される。
【0011】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば複数の突条は相互に平行に配置される。従って、突条間に外気が流れやすくなることで放熱性が高められる。
【0012】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば蓋は、集塵ボックスのボックス本体に回転可能に連結される。複数の突条は、例えば蓋の回転方向に対して直交する方向に延設される。蓋は、例えば複数の突条の端部同士を連結する壁部を有する。従って、複数の突条の支持剛性が高められる。
【0013】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば蓋は、集塵ボックスのボックス本体に回転可能に連結されるヒンジ部と、ヒンジ部の端部から屈曲方向に延在される腕部と、腕部からヒンジ部側に凹む凹部を有する。従って、腕部が撓みにくくなることで大形化を招くことなく蓋の剛性が高められる。また、凹部によって腕部の表面積が大きくなることで放熱性が高められる。
【0014】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば凹部は、蓋の閉じ状態において排出口に進入される。従って、蓋の閉じ状態でのコンパクト化が図られる。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば凹部は、腕部からヒンジ部側に延設される環状の壁部と、壁部の端部を覆う底部を有する。例えば放熱部は、底部から腕部側に突出する複数の突条を有する。従って、凹部内に複数の突条が配置されて放熱部のコンパクト化が図られる。
【0016】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば蓋は、腕部の端部からヒンジ部側に屈曲する方向に延在される係合片を有する。例えば係合片は、集塵ボックスに設けられた係合部に係合する係合孔を有する。従って、係合片の係合孔に係合部が係合されることで、蓋が閉じ位置に保持される。また、ヒンジ部と腕部と係合片が湾曲形に配置されることで、開閉時の操作性が向上する。
【0017】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば集塵ボックスは、複数の通気孔が形成された金属製の通気板を有する。例えば係合孔は、通気板に対向する。従って、蓋の閉じ状態において通気孔の通気性が確保される。
【0018】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば蓋は、係合片の端部からボックス本体から離れる方向に延設する摘み部を有する。摘み部により蓋の開閉時の操作性が高められる。
【0019】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば集塵ボックスのボックス本体は、第1合成樹脂と金属が一体化された第1本体部と、第1合成樹脂よりも耐熱性の高い第2合成樹脂を素材とする第2本体部を備える。従って、金属が第1本体部にのみ配置されることで集塵ボックスの軽量化が図られるとともに、第2本体部により集塵ボックスの耐熱性が高められる。
【0020】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば第1本体部の第1合成樹脂は、透光性を有する。従って、切屑の集塵量の視認性が確保される。
【0021】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えばボックス本体は、切断刃の板厚方向の一方側に第1本体部を有し、他方側に第2本体部を有する。例えば第2本体部の板厚方向の幅が第1本体部の板厚方向の幅より大きい。従って、集塵ボックスの高い耐熱性が確保される。
【0022】
1つ又はそれ以上の実施態様において、例えば第2本体部は、第2合成樹脂としてポリアミドを含み、かつガラス繊維を含む素材から形成される。従って、第2本体部の高い耐熱性が確保される。
【実施例0023】
図1~
図4に示すように本実施例に係る金工用携帯用切断機1は、チップソーカッタとも称される金属用チップソーを使用する金工用の携帯用切断機で、切断材2の上面に当接させるベース10と、ベース10の上面側に支持した切断機本体20を備えている。ベース10は、矩形平板形状を有しており、その下面側が切断材2の上面に当接される。
図1,2において、使用者は金工用携帯用切断機1の左側に位置して金工用携帯用切断機1を右方へ移動操作する。これにより切断加工が進行する。以下の説明では、切断進行方向を前側とし、使用者側を後側とする。左右方向については使用者を基準とする。
【0024】
図5~7に示すように切断機本体20は、駆動源としての電動モータ21と、電動モータ21により回転する円板形の切断刃30を備えている。電動モータ21には、大出力かつモータ軸方向にコンパクトなブラシレスモータが用いられている。電動モータ21の回転出力は減速ギア部22を経て出力軸23に出力される。モータハウジング24の右端部にギアハウジング25が結合されている。
【0025】
モータハウジング24とギアハウジング25の結合部の上方にループ形のハンドル26が設けられている。ハンドル26の内周側にスイッチレバー27が設けられている。ハンドル26を把持した手の指先でスイッチレバー27をオン操作することで電動モータ21が起動する。
【0026】
ハンドル26の後部にはバッテリ取付部28が設けられている。バッテリ取付部28に1つのバッテリパック11が取り付けられる。バッテリパック11には、スライド着脱式のリチウムイオンバッテリが用いられる。バッテリ取付部28に取り付けたバッテリパック11の電力を電源として電動モータ21が起動する。バッテリパック11はバッテリ取付部28から取り外して別途用意した充電器により充電することで繰り返し使用できる。
【0027】
図5~7に示すようにギアハウジング25の右端のフランジ部25aに透明樹脂製の固定カバー35が結合されている。固定カバー35は、ポリカーボネート製である。固定カバー35は、2つの固定ねじ35dによりギアハウジング25に結合されている。固定カバー35とギアハウジング25のフランジ部25aは、相互に結合されることによりカバー部材が形成されている。固定カバー35内に出力軸23が突き出されている。出力軸23に切断刃30が取り付けられている。切断刃30は、アウタフランジ31とインナフランジ32により板厚方向に挟まれた状態で固定ねじ33の締め込みにより出力軸23に固定されている。切断刃30には、チップソー(tipped saw blade)とも称される金属材切断用の丸鋸刃が用いられている。
【0028】
切断刃30の上側ほぼ半周の範囲(ベース10の上面側の範囲)が固定カバー35とギアハウジング25のフランジ部25aで覆われている。切断材2に切断刃30が切り込まれることで切断部位3から切屑が発生する。切屑は切断刃30の回転により上方へ吹き上げられる。固定カバー35の前部には角筒形の集塵ダクト部35bが設けられている。切断部位3の上方に集塵ダクト部35bが配置される。集塵ダクト部35bの内周面前側に鋼製の金属プレート35cが設けられている。金属プレート35cによって、高温の切屑の衝突から固定カバー35を保護している。このため切断部位3から吹き上げられた切屑が集塵ダクト部35bを経て集塵ボックス40に流入する。
【0029】
固定カバー35の右側部には、切断刃30の回転方向を示す矢印35aが表示されている。
【0030】
切断刃30の下側ほぼ半周の範囲(ベース10の下面側の範囲)が可動カバー36で覆われる。可動カバー36はギアハウジング25の右側部に回転可能に支持されている。可動カバー36が回転することでベース10の下面側において切断刃30の刃先が開閉される。可動カバー36は閉じ方向に付勢されている。金工用携帯用切断機1の移動操作により切断加工が進行することにより、切断材2に当接させた可動カバー36が付勢力に抗して徐々に開かれていく。
【0031】
切断機本体20は、揺動支持部37を介してベース10の上面に支持されている。切断機本体20は揺動支持部37により上下方向に揺動可能に支持されている。切断機本体20の上下揺動位置を変更することで、切断刃30の切断材2に対する切り込み深さを調整することができる。
【0032】
固定カバー35の右側部には、固定カバー35の内側に流入した切屑を集塵するための集塵ボックス40が着脱可能に取り付けられる。
図8~10に固定カバー35の右側部から取り外した状態の集塵ボックス40が示されている。集塵ボックス40は合成樹脂製のボックス本体41を有する。ボックス本体41の右側部に、切断刃30の回転方向(
図1において反時計回り方向)を示す矢印30aが表示されている。
【0033】
ボックス本体41は、前後方向及び上下方向に延在され、左右幅方向(切断刃30の板厚方向)に薄い箱形を有する。ボックス本体41は左右2分割構造を有する。ボックス本体41は、右側の第1本体部42と左側の第2本体部43を備える。第1本体部42と第2本体部43が向かい合わされて相互に結合されることでボックス本体41が形成されている。図では、第1本体部42と第2本体部43の結合部に符号Jを付して示されている。
図13に示すように第1本体部42と第2本体部43は3つの固定ねじ41aにより前部と後部と上部において相互に結合されている。3つの固定ねじ41aは、第2本体部43側から締め込まれている。このため、固定ねじ41aは第1本体部42側からは見えていない。
【0034】
図11は第2本体部43から分割した第1本体部42の内面側を示している。第1本体部42の周囲3箇所には固定ねじ41aが締め込まれるねじ孔42bが設けられている。第1本体部42は、透光性を有するポリカーボネート(第1合成樹脂)を素材として形成されている。第1本体部42の内面にはアルミニウム製の耐熱板42aが結合されている。耐熱板42aは、圧入により第1本体部42の内側に結合されている。
図5,11に示すように第1本体部42の内面のうち、切断刃30の中心より後方の領域及び前方及び中間の一部領域では下側ほぼ半分の範囲が耐熱板42aで覆われている。耐熱板42aが覆われていない上側ほぼ半分の範囲において、透光性により切屑の集塵量を目視できる。
図1,2に示すように第1本体部42の透光性により内部の集塵量を目視できる領域(透光部40a)が格子状の斜線を付して示されている。
【0035】
図6,11に示すように第1本体部42の内面のうち、中間及び切断刃30の中心より後方の領域では上下方向の全範囲が耐熱板42aで覆われている。これにより第1本体部42の上下方向の全範囲について耐熱性が高められている。
【0036】
図12は第1本体部42から分割した第2本体部43の内面側を示している。第2本体部43は、耐熱性の高いガラス繊維入りのポリアミド(第2合成樹脂)を素材として形成されている。
図2,3,5,6に示すように、第2本体部43の切断刃30の板厚方向の幅W2は、第1本体部42の切断刃30の板厚方向の幅W1よりも大きい。耐熱性の高い第2本体部43の幅W2を大きくすることで、集塵ボックス40の耐熱性がより高められている。
【0037】
図12に示すように第2本体部43の前部内面側には集塵口43aが設けられている。固定カバー35内に吹き上げられた切屑は、切断刃30の回転により発生する風の流れに乗って集塵ダクト部35bを経て集塵ボックス40の入り口に相当する集塵口43aからボックス本体41内に集塵される。集塵口43aは集塵ダクト35bの上方に配置される。
【0038】
図6に示すように集塵ボックス40は固定ねじ44の締め込みにより固定カバー35に対して固定される。
図6,7に示すように固定ねじ44は、ギアハウジング25の右側部に設けたフランジ部25aのねじ孔25bに締め込まれる。
図1,8~10に示すように固定ねじ44の右端部には大型のノブ45が取り付けられている。これにより固定ねじ44の締め込み、緩め操作の操作性が確保されている。固定ねじ44を緩めてねじ孔25bから抜き出すことで集塵ボックス40を取り外すことができる。ノブ45は、ボックス本体41の右側部に設けた円形の凹部40b内に位置される。これによりノブ45のはみ出しがないことにより集塵ボックス40の左右幅方向のコンパクト化が図られている。
【0039】
図10,13に示すようにボックス本体41の後部には、切屑を排出する排出口46と、通気口47が設けられている。排出口46は矩形に開口されている。排出口46は蓋50により開閉される。
図8~10に示すように蓋50は、ボックス本体41の後部に設けた支軸部41bを介して上下に回動可能に支持されている。支軸部41bは、左右両側に突き出されている。
【0040】
蓋50は、ボックス本体41の第2本体部43と同じくガラス繊維入りのポリアミドを素材として形成されている。
図14,15に示すように蓋50は、左右の支軸部41bに連結される左右一対のヒンジ部51,52と、ヒンジ部51,52の端部から屈曲方向に延在される腕部53を有する。左右のヒンジ部51,52の連結孔51a,52aにそれぞれ支軸部41bが挿入されて、蓋50が上下に回転可能に支持されている。
【0041】
図14に示すように右側のヒンジ部51の板厚d1は左側のヒンジ部52の板厚d2よりも厚くなっている。このため右側のヒンジ部51は左側のヒンジ部52よりも硬くなっている。これによりボックス本体41に対して蓋50を組み付ける際の便宜が図られている。より硬い右側のヒンジ部51を先に支軸部41bに連結することにより、より柔らかい左側のヒンジ部52を後から楽に支軸部41bに連結することができる。
図8~10に示すように右側のヒンジ部51の右側面にはいわゆる肉盗みにより形成される凹部51bが形成されている。これにより成形コストの低減が図られている。
【0042】
図13~
図15に示すように腕部53には凹部54が設けられている。凹部54はヒンジ部51,52側(前方)へ凹んでいる。凹部54は、前方に張り出す環状の壁部54aと、壁部54aの端部を覆う底部54bを有する。凹部54の内部に放熱部55が設けられている。放熱部55により蓋50の放熱性が高められる。これにより蓋50の開閉操作時の操作性が良くなる。
【0043】
放熱部55は複数の突条55aを有する。本実施例では4つの突条55aを有する。4つの突条55aは凹部54内に設けられている。4つの突条55aは左右方向に沿って相互に一定の間隔をおいて平行に延在されている。4つの突条55aは、凹部54の底部54bから蓋50の回転方向に対して直交する方向(支軸部41bを中心とする円弧の接線方向)に延設されている。4つの突条55aの端部は凹部54の壁部54aに結合されている。これにより4つの突条55aの端部同士が壁部54aで連結されてそれぞれの支持剛性が高められている。また、4つの突条55aにより凹部54の剛性が高められている。
【0044】
4つの突条55aと凹部54により蓋50の外気側の表面積が増大されることで蓋50の放熱性が高められる。
図13に示すように凹部54は、蓋50の閉じ状態において排出口46に進入される。これにより蓋50の閉止状態での集塵ボックス40の後部のコンパクト化が図られる。また、凹部54と放熱部55が排出口46の内部に進入されることで、排出口46周辺の排熱が促進される。
【0045】
蓋50は係合片56を有する。係合片56は、腕部53の端部からヒンジ部51,52側に屈曲する方向に延在される。係合片56に矩形の係合孔57が設けられている。蓋50を閉じると、係合孔57の下端縁が、集塵ボックス40の後面に設けられた係合部49に弾性的に係合される。蓋50の閉じ状態において係合孔57の下端縁が係合部49に弾性的に係合されることで、蓋50が閉じ位置に保持される。係合部49の後面は、下部側ほど前方へ変位する方向に傾斜している。これにより蓋50の開閉操作時において係合部49に対する係合孔57の下部の係脱の容易性(蓋50の開閉操作性)が高められている。
【0046】
図9,10,13に示すように集塵ボックス40の後面には通気口47が設けられている。通気口47は、通称パンチングメタルと称される金属製の通気板48で覆われている。通気板48には、小径の通気孔48aが複数形成されている。通気板48により通気口47の耐熱性と通気性が確保されている。
図9,13に示すように蓋50の閉じ状態において、通気口47が係合孔57の上部に対向される。このため、通気口47が閉じた蓋50により塞がれることがない。これにより蓋50の閉止時におけるボックス本体41の内部の通気及び排熱が通気口47を経てスムーズになされる。
【0047】
係合片56の下端部に摘み部58が設けられている。摘み部58は、ボックス本体41から離れる方向に延設されている。摘み部58を摘んでボックス本体41から離れる方向に引っ張ることで、係合孔57の下端縁から係合部49が離脱される。そのまま摘み部58を上方へ引っ張ることにより蓋50を開放することができる。蓋50を閉じる際には、摘み部58を下方へ引っ張りつつボックス本体41に接近させることで、係合孔57の下端縁を係合部49に係合させることができる。摘み部58により蓋50の開閉時の操作性が高められる。
【0048】
以上のように構成した本実施例の金工用携帯用切断機1によれば、集塵ボックス40の排出口46を開閉する蓋50は放熱部55を有する。これにより、蓋50の熱が放熱部55により効率良く放熱されることで開閉時の操作性が高められる。
【0049】
実施例によれば、集塵ボックス40のボックス本体41は、第1本体部42と第2本体部43の左右2分割構造を有する。第1本体部42は、ポリカーボネート(第1合成樹脂)を素材とし、内面にアルミニウム製の耐熱板42aが一体化された構成を有する。第2本体部43は、ポリカーボネートよりも耐熱性の高いガラス繊維入りのポリアミド(第2合成樹脂)を素材として形成されている。これにより、金属部材が第1本体部42にのみ配置されることで集塵ボックス40の軽量化が図られるとともに、第2本体部43により集塵ボックス40の耐熱性が高められる。
【0050】
実施例によれば、放熱部55は、複数の突条55aを含む。従って、複数の突条55aにより蓋50の表面積が大きくなって熱が効率よく放熱される。
【0051】
実施例によれば、複数の突条55aは相互に平行に配置される。従って、突条55a間に外気の流路が確保されることで蓋50の放熱性が高められる。
【0052】
実施例によれば、蓋50は、集塵ボックス40のボックス本体41に回転可能に連結される。複数の突条55aは、蓋50の回転方向に対して直交する方向に延設される。蓋50は、複数の突条55aの端部同士を連結する壁部54aを有する。これにより、複数の突条55aの支持剛性が高められる。
【0053】
実施例によれば、蓋50は、集塵ボックス40のボックス本体41に回転可能に連結されるヒンジ部51,52を有する。ヒンジ部51,52の端部から屈曲方向に腕部53が延在される。腕部53は、ヒンジ部51,52側に凹む凹部54を有する。従って、腕部53が撓みにくくなることで大形化を招くことなく蓋50の剛性が高められる。また、凹部54によって腕部53の表面積が大きくなることで放熱性が高められる。
【0054】
実施例によれば、凹部54は、蓋50の閉じ状態において排出口46に進入される。従って、蓋50の閉じ状態でのコンパクト化が図られる。
【0055】
実施例によれば、凹部54は、腕部53からヒンジ部51,52側に延設される環状の壁部54aと、壁部54aの端部を覆う底部54bを有する。放熱部55は、底部54bから腕部53側に突出する複数の突条55aを有する。従って、凹部54内に複数の突条55aが配置されて放熱部55のコンパクト化が図られる。
【0056】
実施例によれば、蓋50は、腕部53の端部からヒンジ部51,52側に屈曲する方向に延在される係合片56を有する。係合片56は、集塵ボックス40に設けられた係合部49に係合する係合孔57を有する。従って、係合片56の係合孔57に係合部49が係合されることで、蓋50が閉じ位置に保持される。また、ヒンジ部51,52と腕部53と係合片56がボックス本体41の後面形状に沿った湾曲形に配置されることで、蓋50の剛性が高められる。これにより蓋50の開閉時の操作性が向上する。
【0057】
実施例によれば、集塵ボックス40は、内部を外気に連通するための通気口47を有する。通気口47は、複数の通気孔48aが形成された金属製の通気板48で覆われている。蓋50の係合孔57は、通気口47(通気孔48a)に対向する。従って、蓋50の閉じ状態において通気口47(通気孔48a)の通気性が確保される。
【0058】
実施例によれば、蓋50は、係合片56の端部からボックス本体41から離れる方向に延設する摘み部58を有する。摘み部58により蓋50の開閉時の操作性が高められる。
【0059】
実施例によれば、第1本体部42の素材であるポリカーボネート(第1合成樹脂)は、透光性を有する。これにより第1本体部42には透光性を有する透光部40aが設けられている。透光部40aにより切屑の集塵量の視認性が確保される。
【0060】
実施例によれば、ボックス本体41は、切断刃30の板厚方向の一方側に第1本体部42を有し、他方側に第2本体部43を有する。第2本体部43の板厚方向の幅W2が第1本体部42の板厚方向の幅W1より大きい。従って、集塵ボックス40の高い耐熱性が確保される。
【0061】
実施例によれば、集塵ボックス40の第2本体部43は、第2合成樹脂としてポリアミドを含み、かつガラス繊維を含む素材から形成される。従って、第2本体部43の高い耐熱性が確保される。
【0062】
以上説明した実施例には種々変更を加えることができる。例えば、放熱部55の4つの突条55aが左右方向に沿って延在される構成を例示したが、上下方向に延在される構成としてもよい。また、複数の突条が格子状に延在される構成としてもよい。
【0063】
複数の突条55aが凹部54内に配置されて腕部53の表面からはみ出さない構成を例示したが、凹部54を省略して複数の突条が腕部53の表面の一部から張り出す構成としてもよい。
【0064】
蓋50の左右のヒンジ部51,52の板厚d1,d2が異なる構成を例示したが同じ板厚に変更してもよい。肉盗みとしての凹部51bは省略してもよい。
【0065】
上下に回動して開閉する蓋50を例示したが、例えば上下にスライドさせて開閉する蓋に例示した放熱部55を適用することができる。
【0066】
第2本体部43の素材をガラス繊維入りのポリアミドに代えて他の高耐熱性樹脂に変更しても良い。
【0067】
蓋50は、第2本体部43と同じくガラス繊維入りのポリアミド等の高耐熱性樹脂を素材として形成してもよい。
【0068】
第1本体部42のアルミニウム製の耐熱板42aは板金(鉄板)製の耐熱板に変更してもよい。
【0069】
ボックス本体41の第1本体部42についても集塵残量視認用の窓部を除いて、第2本体部43と同じくガラス繊維入りのポリアミドを素材として形成してもよい。この場合、耐熱板42aを省略してもよい。集塵残量視認用の窓部は、別途透光性を有するポリカーボネート製の透明板を嵌め込む構成とすることができる。また、ボックス本体は例示したように左右2分割構造ではなく、ブロー成形等により単一の成形部材としてもよい。
【0070】
実施例の金工用携帯用切断機1が本開示の1つの局面における金工用携帯用切断機の一例である。実施例の切断刃30(金属用チップソー)が本開示の1つの局面における切断刃の一例である。金属用チップソーを使用するチップソーカッタに代えて、ダイヤモンドホイールや砥石を使用する金工用携帯用切断機としてもよい。実施例の切断機本体20が本開示の1つの局面における切断機本体の一例である。実施例の集塵ボックス40が本開示の1つの局面における集塵ボックスの一例である。
【0071】
実施例の排出口が本開示の1つの局面における排出口の一例である。実施例の蓋が本開示の1つの局面における蓋の一例である。実施例の放熱部が本開示の1つの局面における放熱部の一例である。
【0072】
実施例のボックス本体41が本開示の他の局面におけるボックス本体の一例である。実施例の第1本体部42が本開示の他の局面における第1本体部の一例である。実施例のポリカーボネートが本開示の他の局面における第1合成樹脂の一例である。実施例の耐熱板42aが本開示の他の局面における金属板の一例である。実施例の第2本体部43が本開示の他の局面における第2本体部の一例である。実施例のガラス繊維入りのポリアミドが本開示の他の局面における第2合成樹脂の一例である。