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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178721
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】運転可否判定装置
(51)【国際特許分類】
   B62J 45/00 20200101AFI20231211BHJP
   B62J 45/415 20200101ALI20231211BHJP
   B62J 50/21 20200101ALI20231211BHJP
   B62J 27/00 20200101ALI20231211BHJP
【FI】
B62J45/00
B62J45/415
B62J50/21
B62J27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091566
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸也
(57)【要約】
【課題】運転可否を判定するための特別な操作を要することなく車両の運転可否の判定を行うことができる運転可否判定装置を提供する。
【解決手段】運転可否判定装置は、運転者による自動二輪車の運転の可否を判定する。運転可否判定装置は、運転者が自動二輪車を所定の姿勢に維持できたか否かを判定する。運転可否判定装置は、自動二輪車の姿勢を燃料の液面の高さを計測する液面センサを用いて判断する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による鞍乗り型車両(1)の運転の可否を判定する運転可否判定装置(10)であって、
前記運転者が前記鞍乗り型車両(1)を所定の姿勢に維持できたか否かを判定し、
前記鞍乗り型車両(1)の姿勢を燃料の液面の高さを計測する液面センサ(50)を用いて判断する、
運転可否判定装置。
【請求項2】
前記鞍乗り型車両(1)の直立状態における前記液面の高さを直立時液面高さとして記憶する記憶部(60)と、
前記液面センサ(50)から取得した前記液面の高さと前記直立時液面高さとの差に基づいて前記鞍乗り型車両(1)の姿勢を検出する姿勢検出部(41)と、
を備え、
前記直立時液面高さは、車両停止時の前記液面の高さである、
請求項1に記載の運転可否判定装置。
【請求項3】
燃料の残量を表示する燃料計(18)と、
前記鞍乗り型車両(1)の姿勢を表示する姿勢表示部(18)と、を備え、
前記燃料計(18)は、前記液面センサ(50)の出力に対して第1の応答性で前記残量を表示し、
前記姿勢表示部(18)は、前記液面センサ(50)の出力に対して第2の応答性で前記鞍乗り型車両(1)の姿勢を表示し、
前記第2の応答性は、前記第1の応答性よりも高い、
請求項1または請求項2に記載の運転可否判定装置。
【請求項4】
前記姿勢表示部(18)は、前記燃料計(18)である、
請求項3に記載の運転可否判定装置。
【請求項5】
前記鞍乗り型車両(1)の運転が可能であると判定された後に、前記燃料計(18)の表示応答性を前記第2の応答性から前記第1の応答性に切り替える、
請求項4に記載の運転可否判定装置。
【請求項6】
前記所定の姿勢は、前記鞍乗り型車両(1)の直立状態に対して傾いた姿勢である、
請求項1または請求項2に記載の運転可否判定装置。
【請求項7】
前記鞍乗り型車両(1)の運転可否の判定を行う判定部(43)と、
前記判定部(43)による運転可否判定の結果に基づいて前記鞍乗り型車両(1)の駆動システムの作動を制御する制御部(44)と、を備え、
前記制御部(44)は、前記判定部(43)が前記鞍乗り型車両(1)の運転が不可であると判定した場合に、駆動制限制御として、前記鞍乗り型車両(1)の駆動装置の始動を制限するか、前記駆動システムの駆動待機状態への移行を制限する、
請求項1または請求項2に記載の運転可否判定装置。
【請求項8】
前記駆動制限制御が実行されていることを表示する表示部(15)を備える、
請求項7に記載の運転可否判定装置。
【請求項9】
前記判定部(43)は、前記鞍乗り型車両(1)の運転が不可であると判定した後、予め定めた適性回復時間の経過後に前記判定をリセットする、
請求項7に記載の運転可否判定装置。
【請求項10】
前記判定部(43)は、前記鞍乗り型車両(1)の前記駆動システムを停止させた後、予め定めた判定保持時間の間は運転可能判定を維持する、
請求項7に記載の運転可否判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転可否判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行前に運転者が運転に適した状態にあるか否か(運転が可能か否か)を判定する運転可否判定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この技術では、車両の走行前に運転者が行う検査として、クラッチペダルを踏みながら指示計の指針を動かし、装置側が指定した課題にペダル操作を追従させることができるか否かで、運転者が運転に適した状態にあるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭59-30573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、運転可否判定に特別な検査が必要となり、心身異常のない運転者にとっては追加の手間が掛かって煩わしいという課題がある。
【0005】
そこで本発明は、運転可否を判定するための特別な操作を要することなく車両の運転可否の判定を行うことができる運転可否判定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る運転可否判定装置は、運転者による鞍乗り型車両(1)の運転の可否を判定する運転可否判定装置(10)であって、前記運転者が前記鞍乗り型車両(1)を所定の姿勢に維持できたか否かを判定し、前記鞍乗り型車両(1)の姿勢を燃料の液面の高さを計測する液面センサ(50)を用いて判断する。
【0007】
第1の態様によれば、鞍乗り型車両の運転時(始動操作時)に、車両に跨った運転者が重心を逸らすように体勢を変えて、車両の傾いた姿勢を維持するだけで、運転可否の判定を行うことが可能となる。このため、運転可否を判定するための追加の操作が不要となり、利便性の高い運転可否判定装置を提供することができる。
さらに、運転可否判定装置は、液面センサを用いて鞍乗り型車両の姿勢を判断する。これにより、鞍乗り型車両の傾斜角度を検出するためのセンサを別に設ける必要がないので、運転可否判定装置の適用に伴う製造コストの増加を抑制できる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る運転可否判定装置は、上記第1の態様に係る運転可否判定装置において、前記鞍乗り型車両(1)の直立状態における前記液面の高さを直立時液面高さとして記憶する記憶部(60)と、前記液面センサ(50)から取得した前記液面の高さと前記直立時液面高さとの差に基づいて前記鞍乗り型車両(1)の姿勢を検出する姿勢検出部(41)と、を備え、前記直立時液面高さは、車両停止時の前記液面の高さであってもよい。
【0009】
第2の態様によれば、鞍乗り型車両の直立状態を基準とした傾斜角度を算出できる。したがって、上述した作用効果を奏する運転可否判定装置が得られる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る運転可否判定装置は、上記第1の態様または第2の態様に係る運転可否判定装置において、燃料の残量を表示する燃料計(18)と、前記鞍乗り型車両(1)の姿勢を表示する姿勢表示部(18)と、を備え、前記燃料計(18)は、前記液面センサ(50)の出力に対して第1の応答性で前記残量を表示し、前記姿勢表示部(18)は、前記液面センサ(50)の出力に対して第2の応答性で前記鞍乗り型車両(1)の姿勢を表示し、前記第2の応答性は、前記第1の応答性よりも高くてもよい。
【0011】
第3の態様によれば、同じ液面センサを用いつつ、燃料の残量を表示する場合と、鞍乗り型車両の姿勢を表示する場合と、で表示の態様を最適化できる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る運転可否判定装置は、上記第3の態様に係る運転可否判定装置において、前記姿勢表示部(18)は、前記燃料計(18)であってもよい。
【0013】
第4の態様によれば、従来の燃料計が設けられたメータ装置を運転可否判定装置に兼用できる。したがって、運転可否判定装置の適用に伴う製造コストの増加を抑制できる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る運転可否判定装置は、上記第4の態様に係る運転可否判定装置において、前記鞍乗り型車両(1)の運転が可能であると判定された後に、前記燃料計(18)の表示応答性を前記第2の応答性から前記第1の応答性に切り替えてもよい。
【0015】
第5の態様によれば、燃料計を用いて鞍乗り型車両の姿勢を表示する構成において、場面に応じて表示応答性が切り替わるので、好適な表示態様とすることができる。
【0016】
本発明の第6の態様に係る運転可否判定装置は、上記第1の態様から第5の態様のいずれかの態様に係る運転可否判定装置において、前記所定の姿勢は、前記鞍乗り型車両(1)の直立状態に対して傾いた姿勢であってもよい。
【0017】
第6の態様によれば、運転者が運転適性を低下させた状態では、運転者が鞍乗り型車両を直立状態に対して傾いた姿勢に維持することに苦慮することが想定される。したがって、運転可否判定の精度を向上させることができる。
【0018】
本発明の第7の態様に係る運転可否判定装置は、上記第1の態様から第6の態様のいずれかの態様に係る運転可否判定装置において、前記鞍乗り型車両(1)の運転可否の判定を行う判定部(43)と、前記判定部(43)による運転可否判定の結果に基づいて前記鞍乗り型車両(1)の駆動システムの作動を制御する制御部(44)と、を備え、前記制御部(44)は、前記判定部(43)が前記鞍乗り型車両(1)の運転が不可であると判定した場合に、駆動制限制御として、前記鞍乗り型車両(1)の駆動装置の始動を制限するか、前記駆動システムの駆動待機状態への移行を制限してもよい。
【0019】
第7の態様によれば、鞍乗り型車両の運転を確実に制限することができ、運転可否判定装置の実用性を高めることができる。
【0020】
本発明の第8の態様に係る運転可否判定装置は、上記第7の態様に係る運転可否判定装置において、前記駆動制限制御が実行されていることを表示する表示部(15)を備えていてもよい。
【0021】
第8の態様によれば、鞍乗り型車両が駆動制限状態にあることを運転者に知らしめることができる。このため、運転者が鞍乗り型車両の故障ではなく駆動制限状態であることを容易に理解することができ、運転可否判定装置の実用性を高めることができる。
【0022】
本発明の第9の態様に係る運転可否判定装置は、上記第7の態様または第8の態様に係る運転可否判定装置において、前記判定部(43)は、前記鞍乗り型車両(1)の運転が不可であると判定した後、予め定めた適性回復時間の経過後に前記判定をリセットしてもよい。
【0023】
第9の態様によれば、追加のリセット操作を設定することなく鞍乗り型車両の運転を再開することができる。このため、利便性の高い運転可否判定装置を提供することができる。
【0024】
本発明の第10の態様に係る運転可否判定装置は、上記第7の態様から第9の態様のいずれかの態様に係る運転可否判定装置において、前記判定部(43)は、前記鞍乗り型車両(1)の前記駆動システムを停止させた後、予め定めた判定保持時間の間は運転可能判定を維持してもよい。
【0025】
第10の態様によれば、駆動システムを停止させた後、判定保持時間の間は運転可能判定を維持することで、鞍乗り型車両の短時間の停止後に運転を再開するような場合には、運転可否判定を改めて行うことなく駆動システムの再始動を行うことができる。このため、利便性の高い運転可否判定装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、運転可否を判定するための特別な操作を要することなく車両の運転可否の判定を行うことができる運転可否判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る自動二輪車のハンドル周辺を示す後面図である。
図2】実施形態に係るメータ装置を示す図である。
図3】燃料タンクの内部構造を示す断面図であって、左右方向および上下方向に沿う断面を後方から見た図である。
図4】実施形態に係る運転可否判定装置の構成を示すブロック図である。
図5】車体を左側にバンクさせた場合の図3に対応する断面図である。
図6】実施形態の制御装置による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】実施形態の運転可否判定装置による運転適性検査を受ける運転者を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。また、以下の説明における前後上下左右等の方向は、以下に説明する車両における方向と同一とする。すなわち、上下方向は鉛直方向と一致し、左右方向は車幅方向と一致する。また、以下の説明に用いる図中において、矢印UPは上方、矢印LHは左方をそれぞれ示している。
【0029】
図1は、実施形態に係る自動二輪車のハンドル周辺を示す後面図である。
図1に示すように、本実施形態における運転可否判定装置10(図3参照)は、自動二輪車1(鞍乗り型車両)に適用されている。例えば、自動二輪車は、スクータ型の車両である。自動二輪車1は、操向輪である前輪と、駆動輪である後輪と、走行用の駆動源としてエンジン(内燃機関)および電気モータのうち少なくとも1つと、を備えている(何れも不図示)。前輪は、フロントフォーク等の懸架部品に支持され、バーハンドル3によって操向可能である。
【0030】
自動二輪車1は、車体フレーム4と、車体カバー5と、メータ装置15(表示部)と、メインスイッチユニット20と、を備える。車体フレーム4の前端部は、前輪を含むステアリング系部品を操向可能に支持する。車体フレーム4は、燃料タンク6(図3参照)を支持している。車体カバー5は、車体フレーム4を覆う。車体カバー5は、レッグシールド2を含む。レッグシールド2は、運転者が着座するシート(不図示)の前方に位置し、シートに着座した運転者の脚部に対する走行風の風除けである。メータ装置15は、バーハンドル3の左右中間部の周辺に配置されている。
【0031】
図2は、実施形態に係るメータ装置を示す図である。
図2に示すように、メータ装置15は、指針16を備えており、速度やエンジン回転数、燃料の残量等を計器盤17と協働して指針表示する。なお本実施形態において以下で説明する指針16は、液体燃料の残量を表示する燃料計18(姿勢表示部)のアナログの指針である。以下、計器盤17に対する指針16の位置について、後方から見た場合の指針16の回動範囲における反時計回り方向の端部を始端位置、後方から見た場合の指針16の回動範囲における時計回り方向の端部を終端位置、始端位置および終端位置の間の所定位置(図2に仮想線で示す指針16の位置)を中間位置と称する。図示の例では、中間位置は、自動二輪車1の直立状態で後方から見て上方を指向する指針16の位置であるが、この場合に限定されるものではない。また、中間位置は、始端位置から終端位置の間であればよい。
【0032】
図1に示すように、メインスイッチユニット20は、レッグシールド2の後面に配置されている。メインスイッチユニット20は、自動二輪車1の電源をオンオフするためのメインスイッチを含む。メインスイッチユニット20は、例えばレッグシールド2の右側部に配置され、レッグシールド2の内側の車体フレーム4等に固定されている。
【0033】
メインスイッチユニット20は、操作キーが差し込まれるキーシリンダ21を備えている。キーシリンダ21は、運転者の操作によって操作キーが差し込まれた状態で回転操作(予め定めた始動操作)が可能であり、この回転操作によって、自動二輪車1の主電源のオンオフがなされるとともに、ハンドルロック等の各種ロック装置の施解錠がなされる。キーシリンダ21と操作キーとの組み合わせは、運転者が自動二輪車1における規定の始動操作を行うためのキー装置11を構成している。
【0034】
図3は、燃料タンクの内部構造を示す断面図であって、左右方向および上下方向に沿う断面を後方から見た図である。
図3に示すように、燃料タンク6内に液面センサ50が配置されている。液面センサ50は、燃料タンク6内の液体燃料の液面Lの高さを計測する。液面センサ50は、フロート式残量センサである。液面センサ50は、燃料タンク6に対して相対変位不能に配置された支持腕51と、支持腕51に変位可能に支持されたフロート52と、を備える。フロート52は、燃料タンク6内の液体燃料中で浮力を発揮する。フロート52は、車体の車幅中心CLに対して左右方向にオフセットして配置されている。図示の例では、フロート52は、車幅中心CLの左方に配置されている。フロート52は、燃料の液面Lの変位に伴って、燃料タンク6の高さ方向に変位する。フロート52は、センサーロッド53に連結されている。センサーロッド53は、フロート52の変位に伴って回転する。センサーロッド53は、支持腕51に回転可能に支持されている。支持腕51は、燃料ポンプを含む燃料供給装置54と一体に設けられている。支持腕51には、フロート52の変位に伴って回転したセンサーロッド53の角位置を検出する検出部が設けられている。検出部は、検出した液面Lの位置を特定する信号を後述する制御装置40に出力する。
【0035】
図1に示す自動二輪車1は、運転者による始動操作が行われた後に、運転可否判定装置10において、運転者による自動二輪車1の運転の可否が判定される。運転可否判定装置10は、運転者が自動二輪車1を所定の姿勢に維持できたか否かを判定する。所定の姿勢は、自動二輪車1の直立状態に対してロール方向に傾いた(バンクした)姿勢である。運転可否判定装置10は、上記判定の結果に基づき、必要に応じて自動二輪車1の駆動システムの運転を制限する制御を行う。運転者が飲酒や過労、病気等により運転適性を低下させた状態では、運転者が自動二輪車1をロール方向に傾いた姿勢に維持することに苦慮することが想定される。したがって、運転者が自動二輪車1を所定の姿勢に維持できなかった場合、運転可否判定装置10は運転者が運転適性を低下させた状態にあるものとして運転不可と判定し、エンジン始動を不能とする。
【0036】
一方で、運転可否判定装置10は、運転者が自動二輪車1を所定の姿勢に維持できた場合、運転可と判定する。運転可否判定装置10の判定結果が「運転可」の場合には、以下の走行準備動作が可能である。すなわち、駆動源にエンジンを備える車両の場合、不図示のスタートスイッチを操作することで、エンジンを始動させることが可能である。また、駆動源に電気モータを備える車両の場合、不図示のスタートスイッチを操作することで、電気モータを含む駆動システムを駆動待機状態(駆動準備完了状態、アクセル操作によって直ちに走り出せる状態)に移行させることが可能である。本実施形態では、運転可否判定装置10は、運転者の飲酒状態に基づく運転可否を判定する。
【0037】
図4は、実施形態に係る運転可否判定装置の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、運転可否判定装置10は、キー装置11と、メータ装置15と、バッテリ33と、スタータリレー35と、スタータモータ37と、液面センサ50と、記憶装置60(記憶部)と、制御装置40と、を備える。
【0038】
バッテリ33は、例えば自動二輪車1の補機用電源として車載された12Vバッテリである。バッテリ33は、液面センサ50や制御装置40等に給電する。
スタータリレー35は、スタートスイッチの操作により制御装置40から供給された一次電流に応じてオンオフするスイッチであり、バッテリ33とスタータモータ37との間の電力供給の有無を切り替える。
【0039】
スタータモータ37は、バッテリ33から供給された電力によって駆動し、エンジンをクランキングさせてエンジン始動を可能とする。
液面センサ50は、検出した液面の変位に応じた信号を制御装置40に出力する。
【0040】
図5は、車体を左側にバンクさせた場合の図3に対応する断面図である。
図5に示すように、車体をロール方向に傾けると、燃料タンク6内で液体燃料が車体の傾く側に寄ることで液面Lが燃料タンク6の高さ方向に変位する。具体的に、車体が左側にバンクすると、フロート52が位置する燃料タンク6内の左半部で液面Lが上昇する。また、車体が右側にバンクすると、燃料タンク6内の左半部で液面Lが下降する。このように液面Lの高さが変位すると、液面センサ50のフロート52も上下動する。これにより、液面センサ50は、車体がロール方向に傾いた際に生じる燃料の液面Lの変位を検出する。
【0041】
図4に示すように、記憶装置60は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等である。記憶装置60は、制御装置40によって使用されるデータを記憶する。
【0042】
制御装置40は、自動二輪車1が備える一体または複数体の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)として構成されている。制御装置40は、姿勢検出部41と、指針制御部42と、運転適性判定部43(判定部)と、始動制御部44(制御部)と、を備える。姿勢検出部41、指針制御部42、運転適性判定部43および始動制御部44は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがプログラムを実行することで実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0043】
姿勢検出部41は、液面センサ50から取得した液面の高さと、基準となる液面の高さとの差に基づいて自動二輪車1の姿勢を検出する。基準となる液面の高さは、自動二輪車1の停止状態かつ直立状態における液面の高さである。姿勢検出部41は、自動二輪車1の停止状態かつ直立状態における液面の高さを直立時液面高さとして記憶装置60に記憶させる。例えば、直立時液面高さは、所定時間ごとに記憶装置60に記憶される。姿勢検出部41は、記憶装置60に記憶された直近の直立時液面高さを参照して自動二輪車1の姿勢を検出する。姿勢検出部41は、直立時液面高さに対して液面センサ50の出力値が液面の上昇を示す場合には、液面の上昇量に応じた車体の左側の傾斜角度(ロール角)を検出する。姿勢検出部41は、直立時液面高さに対して液面センサ50の出力値が液面の下降を示す場合には、液面の下降量に応じた車体の右側の傾斜角度を検出する。なお液面センサ50のフロート52が車幅中心CLの右側に配置されている場合には、液面の上昇および下降と車体の傾斜方向との関係は上述した関係とは逆になる。
【0044】
指針制御部42は、メータ装置15の指針16を制御する。指針制御部42は、運転可否判定装置10による運転可否の判定時に、姿勢検出部41が検出した車体の傾斜角度に基づいて指針16を制御し、メータ装置15に自動二輪車1の姿勢を表示する。指針制御部42は、運転可否の判定時以外の状態(例えば走行動作が可能な状態)にも指針16を制御する。指針制御部42は、運転可否の判定時以外の状態で、計器盤17に対して液面センサ50から取得した液面の高さに応じた位置に指針16が位置するように指針16を制御し、メータ装置15に燃料の残量を表示する。
【0045】
指針制御部42は、液面センサ50の出力に対する指針16による表示応答性を状況に応じて変更する。指針制御部42は、メータ装置15が燃料の残量を表示する場合には、液面センサ50の出力値に対して第1の応答性でメータ装置15に燃料の残量を表示させる。第1の応答性は、車体の傾きや車両の加減速、振動等による残量表示の変化が緩やかになるように、液面センサ50の出力値を平均化するなどして比較的低く設定されている。指針制御部42は、メータ装置15が自動二輪車1の姿勢を表示する場合には、液面センサ50の出力値に対して第2の応答性でメータ装置15に姿勢を表示させる。第2の応答性は、第1の応答性よりも高い。第2の応答性は、指針16がリアルタイム、またはリアルタイムに近い自動二輪車1の姿勢を表示するように比較的高く設定されている。これらの表示応答性の変更は、例えば姿勢検出部41の検出値または液面センサ50の出力値の移動平均のサンプリングタイムを変化させることで実現される。
【0046】
運転適性判定部43は、飲酒や過労、病気等によって低下し得る運転者の運転適性を検査して、運転可否を判定する。運転適性判定部43は、姿勢検出部41が検出した車体の傾斜角度に基づいて、検査対象の運転者の運転可否を判定する(後述)。
【0047】
始動制御部44は、運転適性判定部43の判定結果に基づいて、エンジンの始動を制限する制御を行う。始動制御部44は、運転適性判定部43が運転不可と判定した場合に、駆動制限制御を行う。駆動制限制御は、始動制御部44がエンジンECUと連係してエンジンの始動を制限し、自動二輪車1の運転を確実に制限する。本実施形態では、始動制御部44は、スタータモータ37を駆動するスタータリレー35に対する電力供給を停止させることで、エンジンの始動を制限する。エンジンECUは、制御装置40と一体でも別体でもよい。
【0048】
始動制御部44は、エンジンの始動を制限する場合に、駆動制限制御が実行されていることを表示させるようにメータ装置15を制御してもよい。運転不可の判定は、例えば飲酒による酩酊状態から回復する程度の時間(予め定めた適性回復時間、例えば24時間)が経過した後にリセットされる。なお、所定時間の経過を待つ以外にも、特定のリセット操作等に応じて、運転が不可であるとの判定をリセット可能としてもよい。
【0049】
制御装置40は、操作キーをキーシリンダ21に挿入して電源オン側に回転させると、待機電力が供給されて待機状態となる。例えば、自動二輪車1が以下の防犯装置を備える場合、操作キーの認証に伴い制御装置40に電力が供給されて待機状態となる構成としてもよい。前記防犯装置は、予め設定された認証エリア内で車両と操作キー(リモートキー)との間の通信を行うことによって、操作キーの認証を行うものである。また、例えば自動二輪車1が位置情報を検知又は取得可能であれば、場所および時間帯等の条件に応じて、制御装置40に電力が供給されて待機状態となる構成としてもよい。
【0050】
以下、制御装置40による運転可否判定に係る処理の流れについて図6を参照して説明する。この処理フローは、例えば、キーシリンダ21の回転操作がなされて主電源がオンにされ、制御装置40に電力が供給されたことをトリガーにして実行される。例えば、制御装置40による運転可否判定に係る処理が実行されていることをメータ装置15等に表示してもよい。
【0051】
図6は、実施形態の制御装置による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、ステップS10において、運転適性判定部43は、運転者が運転適性の検査を受けるにあたって傾ける自動二輪車1の目標となる傾斜をメータ装置15の指針16によって指示する。最初に、運転適性判定部43は、運転適性の検査時に運転者が自動二輪車1を傾けるにあたって目標となる基準傾斜角度を決定する。基準傾斜角度は、車体を直立状態からロール方向の左右いずれかに傾けた角度である。基準傾斜角度は、ランダムに決定される。本実施形態では、車体のロール方向の傾斜角度について、車体を右側に傾けた場合の傾斜角度を+と定義し、車体を左側に傾けた場合の傾斜角度を-と定義する。
【0052】
次いで運転適性判定部43は、指針制御部42を通じて、メータ装置15の指針16を検査用のスタート位置に向けて移動させて、スタート位置で停止させる。スタート位置は、基準傾斜角度に対応している。これにより指針16は、検査上の目標となる自動二輪車1の姿勢を表示する。スタート位置は、基準傾斜角度が+の場合、中心位置から終端位置側にずれた位置に設定される。スタート位置は、基準傾斜角度が-の場合、中心位置から始端位置側にずれた位置に設定される。すなわち、スタート位置は、中心位置からずれた位置である。中心位置とスタート位置との間隔は、基準傾斜角度と線形関係にあってもよいし、非線形関係にあってもよい。スタート位置は、始端位置および終端位置それぞれに対して間隔をあけた位置である。続いて、制御装置40はステップS20の処理に移行する。
【0053】
ステップS20において、指針制御部42は、メータ装置15の表示応答性を上記の第2の応答性に設定する。続いて、制御装置40はステップS30の処理に移行する。
【0054】
ステップS30において、指針制御部42は、自動二輪車1の姿勢を表示するように指針16を制御する。指針制御部42は、液面センサ50の出力値に応じた位置に指針16をスタート位置から移動させる。これにより指針16は、リアルタイム、またはリアルタイムに近い自動二輪車1の姿勢を表示する。指針制御部42は、車体のロール方向の傾斜角度が+の場合には、指針16をスタート位置から始端位置側に、車体の傾斜角度に応じた角度だけ移動させる。指針制御部42は、車体のロール方向の傾斜角度が-の場合には、指針16をスタート位置から終端位置側に、車体の傾斜角度に応じた角度だけ移動させる。車体の傾斜角度が基準傾斜角度と一致する状態で、指針16は中心位置に位置する。指針16を移動させる角度は、車体の傾斜角度と線形関係にあってもよいし、非線形関係にあってもよい。続いて、制御装置40はステップS40の処理に移行する。
【0055】
ステップS40において、運転適性判定部43は、指針16が中心位置を基準とした所定の範囲内に所定の判定時間維持されているか否かを判定する。すなわち、運転適性判定部43は、車体のロール方向の傾斜角度が基準傾斜角度を基準とした所定の角度範囲内に所定の判定時間維持されているか否かを判定する。これにより、運転適性判定部43は、自動二輪車1がその直立状態に対して傾いた所定の姿勢を維持しているか判定している。判定時間は、例えば0.5秒程度に設定される。判定時間は、検査履歴等に応じて適宜変更されてもよい。
【0056】
ステップS40で指針16が中心位置に所定の判定時間維持されていると判定された場合(S40:Yes)、運転適性判定部43は運転者が飲酒状態ではない(すなわち運転が可能な状態)と判定する(ステップS50)。その後、始動制御部44においてエンジン始動可能な状態への移行がなされる(ステップS60)。さらに、指針制御部42においてメータ装置15の表示応答性が上記の第1の応答性に変更され(ステップS70)、制御装置40は一連の処理を終了する。この場合、運転者は、通常通りにエンジンを始動させて自動二輪車1を運転する(走行させる)ことができる。
【0057】
一方で、ステップS40で指針16が中心位置に所定の判定時間維持されていないと判定された場合(S40:No)、運転適性判定部43は運転者が飲酒状態(すなわち運転が不可能な状態)と判定する(ステップS80)。その後、始動制御部44においてエンジン始動不可な状態への移行がなされ(ステップS90)、制御装置40は一連の処理を終了する。この場合、運転者は、エンジンを始動させることができず、自動二輪車1を運転することができない。
【0058】
図7は、実施形態の運転可否判定装置による運転適性検査を受ける運転者を示す背面図である。
図7に示すように、運転適性検査を受ける運転者は、メータ装置15の指針16が中心位置に対して傾いている側に、車両のシートに跨った状態で車体をロール方向に傾かせる。図示の例では、仮想線で示すように指針16が左側を指向しているので、運転者は車体を左側に傾かせる。なお指針16が右側を指向している場合には、運転者は車体を右側に傾かせる。運転者が車体を傾かせることで、運転適性判定部43はステップS30の処理により車体の傾斜角度に応じて指針16を中心位置側に移動させる。運転者は、指針16が中心位置に位置し続けるように自動二輪車1の姿勢を維持する。自動二輪車1の姿勢が維持されることで、運転適性判定部43がステップS40の処理によって運転者による運転が可能であると判定するので、エンジンの始動が可能となる。
【0059】
上記の運転可否判定は、エンジンを停止する度に行われると、特に正常な運転者は煩わしさを感じることがある。この煩わしさを低減するために、実施形態では、運転が可能であるとの判定(運転者が運転適性を有する状態にあるとの判定)がなされてエンジンを始動させた状態から、キーシリンダ21の回転等によりエンジンを停止した後、例えば軽食や飲み物等を買いに行く程度の時間(予め定めた判定保持時間、例えば15分程度)の間は、運転可否判定を不要とする。つまり。運転可否判定装置10は、エンジンを停止させた後、判定保持時間の間は運転可能判定を維持し、エンジンの再始動を可能とする。
【0060】
以上に説明したように、本実施形態の運転可否判定装置10は、運転者が自動二輪車1を所定の姿勢に維持できたか否かを判定する。この構成によれば、自動二輪車1の運転時(始動操作時)に、車両に跨った運転者が左右に重心を逸らすように体勢を変えて、車両のロール方向に傾いた姿勢を維持するだけで、運転可否の判定を行うことが可能となる。このため、運転可否を判定するための追加の操作が不要となり、利便性の高い運転可否判定装置10を提供することができる。
【0061】
さらに、運転可否判定装置10は、液面センサ50を用いて自動二輪車1の姿勢を判断する。これにより、自動二輪車1の傾斜角度を検出するためのセンサを別に設ける必要がないので、運転可否判定装置10の適用に伴う製造コストの増加を抑制できる。
【0062】
運転可否判定装置10は、自動二輪車1の姿勢をメータ装置15の指針16によって表示する。この構成によれば、運転者が視覚を頼りにして自動二輪車1を所定の姿勢に維持できるので、足つきした運転者が路面から受ける反力を頼りにして自動二輪車の姿勢を把握する場合と比較して、運転者に自動二輪車1の姿勢の維持状態を直感的に把握させることができる。したがって、ユーザーフレンドリーな運転可否判定装置10を提供できる。
【0063】
姿勢検出部41は、液面センサ50から取得した液面の高さと、直立時液面高さと、の差に基づいて自動二輪車1の姿勢を検出する。この構成によれば、自動二輪車1の直立状態を基準とした傾斜角度を算出できる。したがって、上述した作用効果を奏する運転可否判定装置10が得られる。
【0064】
ここで、燃料計18が燃料の残量を表示する場合には車体の傾きや車両の加減速、振動等による表示揺れを抑えるように残量を表示することが求められるのに対し、燃料計18が自動二輪車1の姿勢を表示する場合にはリアルタイムで表示することが求められる。本実施形態によれば、燃料計18は、液面センサ50の出力に対して第1の応答性で燃料の残量を表示し、液面センサ50の出力に対して第1の応答性よりも高い第2の応答性で自動二輪車1の姿勢を表示する。この構成によれば、同じ液面センサ50を用いつつ、燃料の残量を表示する場合と、自動二輪車1の姿勢を表示する場合と、で表示の態様を最適化できる。
【0065】
しかも、自動二輪車1の姿勢を燃料計18で表示しているので、従来の燃料計が設けられたメータ装置を運転可否判定装置10に兼用できる。したがって、運転可否判定装置10の適用に伴う製造コストの増加を抑制できる。
【0066】
自動二輪車1の運転が可能であると判定された後に、燃料計18の表示応答性を第2の応答性から第1の応答性に切り替える。これにより、燃料計18を用いて自動二輪車1の姿勢を表示する構成において、場面に応じて表示応答性が切り替わるので、好適な表示態様とすることができる。
【0067】
上記の所定の姿勢は、直立状態に対して傾いた姿勢である。この構成によれば、運転者が運転適性を低下させた状態では、運転者が自動二輪車1を直立状態に対して傾いた姿勢に維持することに苦慮することが想定される。したがって、運転可否判定の精度を向上させることができる。
【0068】
運転可否判定装置10は、運転適性判定部43による運転可否判定の結果に基づいて自動二輪車1の駆動システムの作動を制御する始動制御部44を備える。始動制御部44は、運転適性判定部43が自動二輪車1の運転が不可であると判定した場合に、駆動制限制御として、自動二輪車1の駆動装置(エンジン)の始動を制限する。この構成によれば、自動二輪車1の運転を確実に制限することができ、運転可否判定装置10の実用性を高めることができる。
【0069】
メータ装置15は、駆動制限制御が実行されていることを表示する。この構成によれば、自動二輪車1が駆動制限状態にあることを運転者に知らしめることができる。特にメータ装置15はその機能上、運転者によって見られる機会が多いので、駆動制限制御が実行されていることに運転者が気付きやすい。このため、運転者が自動二輪車1の故障ではなく駆動制限状態であることを容易に理解することができ、運転可否判定装置10の実用性を高めることができる。
【0070】
運転適性判定部43は、自動二輪車1の運転が不可であると判定した後、予め定めた適性回復時間の経過後に判定をリセットする。この構成によれば、追加のリセット操作を設定することなく自動二輪車1の運転を再開することができる。このため、利便性の高い運転可否判定装置10を提供することができる。
【0071】
運転適性判定部43は、エンジンを停止させた後、予め定めた判定保持時間の間は運転可能判定を維持する。この構成によれば、エンジンを停止させた後、判定保持時間の間は運転可能判定を維持することで、自動二輪車1の短時間の停止後に運転を再開するような場合には、運転可否判定を改めて行うことなくエンジンの再始動を行うことができる。このため、利便性の高い運転可否判定装置10を提供することができる。
【0072】
上記実施形態では、自動二輪車1がエンジン(内燃機関)を走行用の駆動源とする場合の例について説明したが、以下の例も考えられる。すなわち、自動二輪車1が走行用の駆動源に電気モータを含む電動車両である場合、運転適性判定部43において運転不可と判定されると、始動制御部44において駆動システムの駆動待機状態(駆動準備完了状態)への移行が制限されてもよい。また、運転適性判定部43において運転可能と判定された場合に、始動制御部44において駆動システムの駆動待機状態(駆動準備完了状態)への移行が実行されてもよい。
【0073】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、運転可否判定装置10が自動二輪車1に適用されているが、本発明の運転可否判定装置は運転者が車体を跨いで乗車する鞍乗り型車両全般に適用することができる。すわなち、本発明の運転可否判定装置は自動二輪車だけでなく自動三輪車に適用可能である。
【0074】
上記実施形態では、メータ装置15の指針16がアナログ指針であるが、指針はデジタルメータの指針であってもよい。また、自動二輪車1の姿勢を表示する姿勢表示部を燃料計18とは別に設けてもよい。例えば、スピードメータやタコメータ等に自動二輪車1の姿勢を表示してもよい。
【0075】
上記実施形態では、液面センサ50がフロート式残量センサであるが、この構成に限定されない。液面センサは、車体のロール方向の傾きに応じて変位する燃料の液面の高さを計測できればよく、例えば超音波式残量センサであってもよい。
【0076】
上記実施形態では、姿勢検出部41が自動二輪車1の直立状態における液面の高さを直立時液面高さとして取得しているが、これに限定されない。例えば、姿勢検出部は、サイドスタンドを使用した停車時における液面高さと、車体構造上、一意的に定まるサイドスタンドを使用した際の車体の傾斜角度と、に基づいて直立時液面高さを算出してもよい。
【0077】
上記実施形態では運転適性の検査に際して、自動二輪車1を傾けることで、中心位置からずれたスタート位置から中心位置に指針16を移動させるように構成されているが、これに限定されない。例えば、自動二輪車を傾けることで、中心位置に設定されたスタート位置から、中心位置からずれた所定の位置に指針を移動させるように構成されていてもよい。
【0078】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…自動二輪車(鞍乗り型車両) 10…運転可否判定装置 18…燃料計(姿勢表示部) 41…姿勢検出部 43…運転適性判定部(判定部) 44…始動制御部(制御部) 50…液面センサ 60…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7