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特開2023-178724電気化学測定装置、電気化学センサ及び電気化学測定方法
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  • 特開-電気化学測定装置、電気化学センサ及び電気化学測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178724
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】電気化学測定装置、電気化学センサ及び電気化学測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/414 20060101AFI20231211BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20231211BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G01N27/414 301U
G01N27/416 353Z
G01N27/28 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091569
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(71)【出願人】
【識別番号】513279283
【氏名又は名称】株式会社堀場テクノサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】吉川 剛明
(72)【発明者】
【氏名】田中 悟
(57)【要約】
【課題】例えば数μLオーダー等の微量のサンプル液を電気化学的に測定できるようにする。
【解決手段】サンプル液に含まれる測定対象成分を電気化学的に測定する電気化学測定装置100であって、サンプル液に内部液21bを接触させる液絡部21cと測定対象成分に感応する感応部22aとが露出するセンシング面2Sを有するセンサ本体2と、センシング面2Sとの間でサンプル液を挟むとともに液絡部21c及び感応部22aを覆い、サンプル液を液絡部21c及び感応部22aに行き渡らせるカバー体4とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル液に含まれる測定対象成分を電気化学的に測定する電気化学測定装置であって、
前記サンプル液に内部液を接触させる液絡部と前記測定対象成分に感応する感応部とが露出するセンシング面を有するセンサ本体と、
前記センシング面との間で前記サンプル液を挟むとともに前記液絡部及び前記感応部を覆い、前記サンプル液を前記液絡部及び前記感応部に行き渡らせるカバー体とを備え、
前記カバー体は、前記センシング面に対して着脱するための取り外し部を有する、電気化学測定装置。
【請求項2】
前記カバー体は、液体を通さない又は液体を吸収しない構成のものである、請求項1に記載の電気化学測定装置。
【請求項3】
前記カバー体は、透光性を有するものである、請求項1又は2に記載の電気化学測定装置。
【請求項4】
前記センシング面は、平坦状をなす面である、請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気化学測定装置。
【請求項5】
前記センサ本体は、所定軸に沿って延びる棒状をなすものであり、その先端面に前記センシング面が形成されている、請求項1乃至4の何れか一項に記載の電気化学測定装置。
【請求項6】
前記センシング面は、前記センサ本体の所定軸に対して傾斜して形成されている、請求項5に記載の電気化学測定装置。
【請求項7】
前記感応部は、ISFETチップから構成されるものである、請求項1乃至6の何れか一項に記載の電気化学測定装置。
【請求項8】
前記センシング面に前記サンプル液を滴下する又は接触させる場合は、重力方向に前記カバー体、前記サンプル液及び前記センシング面の順番になるよう配置される、請求項1乃至7の何れか一項に記載の電気化学測定装置。
【請求項9】
前記カバー体における前記センシング面を覆う面積は、前記センシング面より小さい、請求項1乃至8の何れか一項に記載の電気化学測定装置。
【請求項10】
サンプル液に内部液を接触させる液絡部と前記サンプル液に含まれる測定対象成分に感応する感応部とが露出するセンシング面を有するセンサ本体と、
前記センシング面との間で前記サンプル液を挟むとともに前記液絡部及び前記感応部を覆い、前記サンプル液を前記液絡部及び前記感応部に行き渡らせるカバー体とを備え、
前記カバー体は、前記センシング面に対して着脱するための取り外し部を有する、電気化学センサ。
【請求項11】
サンプル液に含まれる測定対象成分を電気化学的に測定する電気化学測定方法であって、
前記サンプル液に内部液を接触させる液絡部と前記測定対象成分に感応する感応部とが露出するセンシング面を有するセンサ本体と、前記液絡部及び前記感応部を覆うものであり、前記センシング面に対して着脱するための取り外し部を有するカバー体とを用い、
前記センシング面と前記カバー体との間で前記サンプル液を挟み、前記サンプル液を前記液絡部及び前記感応部に行き渡らせる、電気化学測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル液に含まれる測定対象成分を電気化学的に測定する電気化学測定装置、電気化学センサ及び電気化学測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
pHセンサ等のイオンセンサでは、従来のガラス電極ではなく、電気化学測定用のセンサチップとしてISFET(Ion Sensitive Field Effect Transistor)チップを用いることにより小型化したものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に示すように、ISFETチップ及び比較電極からなる複合電極を構成するプローブを備えたISFETセンサが考えられている。このISFETセンサでは、プローブの先端部の先端面又は側周面にISFETチップの感応部と比較電極の液絡部とが露出して設けられている。そして、ISFETセンサの先端部をサンプル液に浸漬してpH等を測定し、又は、卓上等にISFETセンサを載置し、ISFETチップの感応部及び比較電極の液絡部にサンプル液を滴下し又は接触させてpH等を測定する。
【0004】
しかしながら、上記のISFETセンサでは、ISFETチップの感応部と比較電極の液絡部とがサンプル液で導通しなければ、サンプル液のpH等の測定対象成分の濃度を測定することができない。このため、ISFETチップの感応部と比較電極の液絡部とが導通する程度のサンプル液を滴下する必要があり、それよりも少ない微量のサンプル液を滴下し又は接触させるだけでは、ISFETチップの感応部と比較電極の液絡部とにサンプル液が広がらず、pH等の測定対象成分の濃度を測定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-242253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上記の問題点を解決すべくなされたものであり、例えば数μLオーダーの微量のサンプル液を電気化学的に確実に測定できるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る電気化学測定装置は、サンプル液に含まれる測定対象成分を電気化学的に測定する電気化学測定装置であって、前記サンプル液に内部液を接触させる液絡部と前記測定対象成分に感応する感応部とが露出するセンシング面を有するセンサ本体と、前記センシング面との間で前記サンプル液を挟むとともに前記液絡部及び前記感応部を覆い、前記サンプル液が微量であっても前記サンプル液を前記液絡部及び前記感応部に行き渡らせるカバー体とを備え、前記カバー体は、前記センシング面に対して着脱するための取り外し部を有することを特徴とする。
【0008】
この電気化学測定装置であれば、センシング面に滴下し又は接触させるだけでは感応部及び液絡部に広がらない微量のサンプル液を、カバー体によって押し広げて、液絡部及び感応部に行き渡らせることができる。その結果、例えば数μLオーダーの微量のサンプル液を電気化学的に確実に測定できるようになる。また、カバー体は、センシング面に対して着脱するための取り外し部を有するので、微量のサンプル液をセンシング面との間で挟む作業や取り外す作業などをする際に、カバー体の取り扱いを容易にすることができる。
【0009】
センシング面との間でサンプル液を確実に液絡部及び感応部に行き渡らせるためには、前記カバー体は、液体を通さない又は液体を吸収しない構成のものであることが望ましい。
このようにカバー体が液体を通さない又は液体を吸収しない構成であれば、サンプル液をロスなく液絡部及び感応部に行き渡らせることができ、微量のサンプル液を電気化学的に確実に測定できるようになる。
【0010】
カバー体が液絡部及び感応部を覆った状態で、サンプル液が液絡部及び感応部に行き渡っているか否かを視認できるようにするためには、前記カバー体は、透光性を有するものであることが望ましい。
【0011】
センシング面においてサンプル液を広げやすくするためには、前記センシング面は、平坦状をなす面であることが望ましい。
【0012】
本発明の電気化学測定装置は、サンプル液をセンシング面とカバー体との間で挟んで測定する方法の他に、センサ本体のセンシング面を貯留されたサンプル液に浸漬等して測定する方法にも使用できる。このような測定方式にも好適に用いるためには、前記センサ本体は、所定軸に沿って延びる棒状をなすものであり、その先端面に前記センシング面が形成されていることが望ましい。
【0013】
前記センシング面は、前記センサ本体の所定軸に対して傾斜して形成されていることが望ましい。
この構成であれば、センシング面を下側にしてサンプル液に浸したとしても、発生した気泡をセンシング面の傾きに沿って逃がすことができる。
【0014】
センシング面を小型化するための具体的な実施の態様としては、前記感応部は、ISFETチップから構成されるものであることが望ましい。
【0015】
また、本発明に係る電気化学センサは、サンプル液に内部液を接触させる液絡部と前記サンプル液に含まれる測定対象成分に感応する感応部とが露出するセンシング面を有するセンサ本体と、前記センシング面との間で前記サンプル液を挟むとともに前記液絡部及び前記感応部を覆い、前記サンプル液を前記液絡部及び前記感応部に行き渡らせるカバー体とを備え、前記カバー体は、前記センシング面に対して着脱するための取り外し部を有することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明に係る電気化学測定方法は、サンプル液に含まれる測定対象成分を電気化学的に測定する電気化学測定方法であって、前記サンプル液に内部液を接触させる液絡部と前記測定対象成分に感応する感応部とが露出するセンシング面を有するセンサ本体と、前記液絡部及び前記感応部を覆うものであり、前記センシング面に対して着脱するための取り外し部を有するカバー体とを用い、前記センシング面と前記カバー体との間で前記サンプル液を挟み、前記サンプル液を前記液絡部及び前記感応部に行き渡らせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上に述べた本発明によれば、例えば数μLオーダーの微量のサンプル液を電気化学的に確実に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る電気化学測定装置の全体模式図及びセンサ本体の先端部の部分拡大図(カバー体を含む。)である。
図2】同実施形態におけるセンサ本体を模式的に示す軸Cに沿った断面図である。なお、(a)の断面図と(b)の断面図とは軸C周りに互いに直交する断面を示している。
図3】同実施形態におけるセンサ本体の先端部を模式的に示す部分拡大断面図である。
図4】同実施形態における(a)センシング面をカバー体で覆う前の状態と、(b)センシング面をカバー体で覆った後の状態とを模式的に示す部分拡大断面図である。
図5】同実施形態の(a)センシング面をカバー体で覆う前の状態と、(b)センシング面をカバー体で覆った後の状態とを模式的に示す平面図である。
図6】同実施形態のカバー体の取り外し部の構成例(a)~(c)を示す図である。
図7】変形実施形態のカバー体を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る電気化学測定装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0020】
<電気化学測定装置の装置構成>
本実施形態の電気化学測定装置100は、サンプル液に含まれる測定対象成分の濃度を電気化学測定するものである。なお、本実施形態の測定対象成分は水素イオンであり、電気化学測定装置100は、サンプル液の水素イオン濃度(pH)を測定するものである。
【0021】
具体的に電気化学測定装置100は、図1に示すように、サンプル液に接触して当該サンプル液に含まれるpHを測定するためのセンサ本体2と、当該センサ本体2からの出力信号に基づいてpHを算出等する演算装置3とを有している。なお、演算装置3は、センサ本体2の校正や測定等を操作するための操作部31やpH等の測定値を表示する表示部32などを有している。センサ本体2と演算装置3とはケーブルKにより接続されている。
【0022】
センサ本体2は、図2に示すように、電極電位の検出の基準となる比較電極21とpHを測定する測定電極22とからなる複合電極を有している。本実施形態のセンサ本体2は、所定軸Cに沿って延びる棒状をなすものであり、その軸方向基端部には、ケーブルKが接続されている。本実施形態では、比較電極21及び測定電極22を収容又は保持するボディ20が所定軸Cに沿って延びる棒状としてある。このボディ20は、非透水性の樹脂から形成されている。
【0023】
比較電極21は、例えば銀/塩化銀電極などの内部電極21aと、当該内部電極21aが浸漬された例えばKCL溶液をゲル化した内部液21bと、当該内部液21bをサンプル液に接触させる例えばセラミックス等の多孔質材からなる液絡部21cとを有している。なお、比較電極21の内部電極21aは、中継配線によりケーブルKに接続されている。
【0024】
測定電極22は、ISFET(Ion Sensitive Field Effect Transistor)チップを用いて構成されている。本実施形態のISFETチップ22は、ゲート絶縁膜上に五酸化タンタル等のイオン感応性膜を形成して感応部22aが構成されたものである。なお、測定電極22は、ボディ20と後述する基板23との間に固定されている(図3参照)。
【0025】
そして、センサ本体2(ここではボディ20)の軸方向先端面には、センシング面2Sが形成されている。このセンシング面2Sは、平坦状をなす面であり、本実施形態では、所定軸Cに対して傾斜して形成されている(図2(a)参照)。
【0026】
また、センシング面2Sには、図1図3に示すように、サンプル液に内部液21bを接触させる液絡部21cと、測定対象成分に感応するISFETチップ22の感応部22aとがサンプル液に接触可能となるように露出している。
【0027】
具体的にセンシング面2Sは、図3に示すように、センサ本体2の軸方向先端部に設けられた平板状をなす基板23を用いて構成されている。この基板23には、表面及び裏面を貫通する液絡部用貫通孔23h1及び感応部用貫通孔23h2が形成されている。液絡部用貫通孔23h1により比較電極21の液絡部21cが外部に露出し、感応部用貫通孔23h2により測定電極22の感応部22aが外部に露出する。なお、基板23の裏面には配線が形成されており、当該裏面にISFETチップ22が例えばフリップチップ実装等により実装されている。また、ISFETチップ22は、基板23を介して中継配線によりケーブルKに接続されている。
【0028】
<サンプル液を広げる構成(カバー体4)>
然して、本実施形態の電気化学測定装置100は、図1図4及び図5に示すように、センシング面2Sとの間で微量のサンプル液を挟むカバー体4を備えている。
【0029】
具体的にカバー体4は、センサ本体2とは別体をなすものであり、液体を通さない又は液体を吸収しない構成のものである。具体的にカバー体4は、サンプル液と接触する接液面が液体を通さない非透水性のものである。なお、カバー体4の接液面は、センシング面2Sとの間でサンプル液を挟んだ状態でセンシング面2Sに対向する面である。本実施形態のカバー体4は、例えば、無孔質のフィルム又はガラスから構成されている。その他、カバー体4は、例えば透明などの透光性を有している。また、本実施形態では、センシング面2Sが平坦面であることから、カバー体4の接液面も平坦面である。
【0030】
そして、カバー体4は、図4及び図5に示すように、センシング面2Sとの間でサンプル液を挟むとともにセンシング面2Sから露出した液絡部21c及び感応部22aを覆うものである。このカバー体4は、液絡部21cの少なくとも一部及び感応部22aの少なくとも一部を覆う形状を有しており、本実施形態では、液絡部21cの全部及び感応部22aの全部を覆う形状を有している(図4(b)、図5(b)参照)。本実施形態のカバー体4は、平面視において円形状をなすものであるが、例えば平面視において矩形状等のその他の形状であっても良い。このカバー体4によりセンシング面2Sとの間でサンプル液を挟むと、カバー体4によりサンプル液が押し広げられて、液絡部21c及び感応部22aに行き渡ることになる(図4(b)、図5(b)参照)。
【0031】
ここで、サンプル液が液絡部21c及び感応部22aに行き渡るとは、サンプル液が液絡部21cの少なくとも一部に接触するとともに、感応部22aの少なくとも一部に接触して、当該サンプル液により液絡部21c及び感応部22aが導通した状態となることである。
【0032】
<電気化学測定装置100を用いた測定方法(電気化学測定方法)>
次に、本実施形態の電気化学測定装置100を用いたサンプル液のpHの測定方法について説明する。
【0033】
(1)カバー体4を用いない測定方法
カバー体4を用いないで測定する場合、センサ本体2のセンシング面2Sをサンプル液内に浸漬して、当該サンプル液のpHを測定することが考えられる。また、センサ本体2をそのセンシング面2Sが上向きとなるようにし、そのセンシング面2Sにサンプル液を滴下して、当該サンプル液のpHを測定することが考えられる。その他、サンプル液が含浸された保持部材(不図示)をセンサ本体2のセンシング面2Sに接触させて、サンプル液のpHを測定することが考えられる。
【0034】
(2)カバー体4を用いた測定方法
カバー体4を用いて測定する場合、センサ本体2をそのセンシング面2Sが上向きとなるようにし、そのセンシング面2Sに微量のサンプル液を滴下する(図4(a)、図5(a)参照)。ここで、微量のサンプル液とは、例えば、センシング面2Sに滴下されたサンプル液が表面張力等によって留まり、感応部22a及び液絡部21cの両方に接触しない程度の量である。具体的にサンプル液の量の範囲としては、2μL~50μLであり、より具体的には、5μL~30μLが望ましい。
【0035】
そして、サンプル液が滴下されたセンシング面2Sにカバー体4を被せることによって、センシング面2Sとカバー体4との間にサンプル液が挟まれる(図4(b)、図5(b)参照)。このとき、センシング面2S上のサンプル液はカバー体4によってセンシング面2S側に押されるとともにセンシング面2S内で広がり、感応部22aと液絡部21cの両方に行き渡ることになる。これにより、微量のサンプル液のpHを測定することができる。
【0036】
その他、カバー体4をテーブルの上面等の載置し、そのカバー体4の上面に微量のサンプル液を滴下する。そして、センサ本体2を操作して、センサ本体2のセンシング面2Sがカバー体4の上面にあるサンプル液に接触して、センシング面2Sとカバー体4との間でサンプル液を挟むようにしても良い。
【0037】
さらに、本実施形態のカバー体4は、カバー体4の取り扱いを容易にするために、カバー体4に取り外し部40が設けられている。この取り外し部40は、微量のサンプル液をセンシング面2Sとの間で挟む作業や取り外す作業などをする際に作業者が触れる領域である。
【0038】
具体的には、図6(a)に示すように、カバー体4に取り外し部40としてツマミ部4Tを設けても良い。このツマミ部4Tを人が手で摘んだり、ピンセットなどの器具を使って摘んだりすることで、カバー体4の取り扱いを容易にすることができる。ツマミ部4Tは、カバー体4と同様、液体を通さない又は液体を吸収しない構成のものが好ましい。また、ツマミ部4Tの材質としては、例えば、無孔質のフィルム又はガラスから構成されている。その他、カバー体4は、例えば透明などの透光性を有している。ツマミ部4Tはカバー体4と一体的に成形されても良いし、カバー体4に熱溶着又は接着剤等による接着によって設けても良い。ツマミ部4Tの位置はカバー体4の平板部の中央部や端部に設けても良い。また、ツマミ部4Tはカバー体4の平板部に対して例えば垂直等のように交差する方向に延びて設けられても良いし、平板部二台して平行に設けられても良い。
【0039】
また、カバー体4を、センサ本体2に装着して固定できるように構成しても良い。この場合、カバー体4は、図6(b)に示すように、センシング面2Sに対向する対向面部41と、当該対向面部41をセンサ本体2に固定するための固定部42とを有する構成となる。具体的には、カバー体4がセンサ本体2の先端部に嵌め込まれて装着されるキャップ構造とすることが考えられる。ここで、例えば円筒状をなす固定部42が取り外し部40となる。
【0040】
さらに、カバー体4は、図6(c)に示すように、平面視において例えば矩形状をなす平板状をなすものであり、そのカバー体4の四隅(センシング面2Sからはみ出した部分)を取り外し部40としたものであっても良い。この場合、カバー体4の面積はセンシング面2Sの面積よりも大きい構成としてある。
【0041】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の電気化学測定装置100によれば、センシング面2Sに滴下し又は接触させるだけでは液絡部21c及び感応部22aに広がらない微量のサンプル液を、カバー体4によって押し広げて、液絡部21c及び感応部22aに行き渡らせることができる。その結果、例えば数μLオーダーの微量のサンプル液を電気化学的に確実に測定できるようになる。また、カバー体4は、センシング面2Sに対して着脱するための取り外し部40を有するので、微量のサンプル液をセンシング面2Sとの間で挟む作業や取り外す作業などをする際に、カバー体4の取り扱いを容易にすることができる。
【0042】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0043】
例えば、カバー体4におけるセンシング面2Sを覆う面積は、センシング面2Sより小さくすることもできる。この構成であれば、微量のサンプル液をセンシング面2Sに確実に接触させることができる。
【0044】
さらに、前記実施形態のカバー体4は、図7に示すように、サンプル液と接触する接液面に親水性処理又は疎水性処理を施しても良い。
【0045】
例えば、カバー体4の接液面に疎水性処理を施す場合には、図7(a)に示すように、疎水性処理を施した疎水領域が、例えば感応部22aの少なくとも一部及び液絡部21cの少なくとも一部を包含するように取り囲んだ位置に形成されていることが望ましい。この構成であれば、カバー体4により押し広げられたサンプル液が疎水領域の内側に留まりやすく、サンプル液を感応部22a及び液絡部21cに確実に接触させることができる。
【0046】
また、カバー体4の接液面に親水性処理を施す場合には、図7(b)に示すように、親水性処理を施した親水領域が、例えば感応部22aの少なくとも一部から液絡部21cの少なくとも一部に渡って形成されていることが望ましい。この構成であれば、カバー体4により押し広げられたサンプル液が親水領域内で広がりやすくなり、サンプル液を液絡部21c及び感応部22aに確実に接触させることができる。
【0047】
さらに、カバー体4の接液面に疎水性処理および親水性処理の両方を施す場合には、例えば、上述した疎水領域の内側に親水領域を形成することが考えられる。
【0048】
加えて、センシング面2S及びカバー体4によりサンプル液を挟んだ状態で、液絡部21c及び感応部22aをサンプル液で導通させやすくするためには、センシング面2S又はカバー体4の接液面に液絡部21c及び感応部22aを連通する溝部を形成しても良い。この構成により、センシング面2S及びカバー体4によりサンプル液を挟むと、サンプル液が溝部を通じて液絡部21c及び感応部22aを導通する。溝部の位置は指定しないが、液絡部21cと感応部22aとの間に形成されて、それらの距離を短くするように形成されていることが望ましく、特に液絡部21cと感応部22aとを最短距離で接続するように形成されていることが望ましい。例えば、溝部は、液絡部21cと感応部22aとを最短距離で結ぶ直線上に形成されていることが望ましい。
【0049】
その上、センシング面2Sに微量のサンプル液を滴下する又は接触させる際に、その目標位置をユーザが分かりやすくするためには、センシング面2Sに目標マーカーを付しておくことも考えられる。この目標マーカーは、例えばセンシング面2Sにおいて液絡部21c及び感応部22aの間(例えば中央部)に設けることが考えられる。
【0050】
前記実施形態では、ISFETチップによりpHを測定する構成であったが、ISFETチップのゲート絶縁膜上にプロトン以外のイオンを選択するイオン選択性膜を形成することにより、その他のイオン種(例えばナトリウムイオンやカリウムイオン、硝酸イオン)の濃度を測定する構成としても良い。
【0051】
前記実施形態では、センサ本体2の先端面にセンシング面2Sが形成されていたが、センサ本体2の外側周面にセンシング面2Sが形成されていても良い。また、センサ本体2の形状は、所定の軸方向に延びる棒状に限られず、例えば板状等の種々の形状とすることができる。
【0052】
また、前記実施形態では、センサ本体2、演算装置3及びカバー体4からなる電気化学測定装置について説明したが、センサ本体2及びカバー体4からなる電気化学センサ(センサセット)も本発明の一実施形態である。
【0053】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0054】
100・・・電気化学測定装置
2・・・センサ本体
3・・・演算装置
K・・・ケーブル
2S・・・センシング面
C・・・所定軸
20・・・ボディ
21・・・比較電極
21a・・・内部電極
21b・・・内部液
21c・・・液絡部
22・・・測定電極(ISFETチップ)
22a・・・感応部
23・・・基板
4・・・カバー体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7