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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178736
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】材料試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/20 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
G01N3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091591
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 和裕
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA07
2G061AB01
2G061CB01
2G061CC11
2G061EA01
2G061EB05
(57)【要約】
【課題】試験体の位置決めのための段取りの時間を短くでき、試験体の設置位置にずれを生じさせることのない材料試験機を提供する。
【解決手段】一対の支点82の上に試験体Tを載せ、試験体Tの中央部M1に試験負荷をかけて曲げ試験を行う材料試験機1において、一対の支点82の外側に配置され、内側に移動させて試験体Tの中央部M1を一対の支点82間の中央位置M2に位置決めする一対のアーム120と、一対のアーム120の移動量を同期させる同期機構と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の支点の上に試験体を載せ、前記試験体の中央部に試験負荷をかけて曲げ試験を行う材料試験機において、
前記一対の支点の外側に配置され、内側に移動させて前記試験体の中央部を前記一対の支点間の中央位置に位置決めする一対のアームと、
前記一対のアームの移動量を同期させる同期機構と、
を備える材料試験機。
【請求項2】
前記同期機構は、前記一対のアームの移動量を同期させるラックピニオン機構を備える請求項1に記載の材料試験機。
【請求項3】
前記一対のアームはベース部に片持ちで支持され、前記ベース部に前記ラックピニオン機構が配置される請求項2に記載の材料試験機。
【請求項4】
前記一対のアームは、前記一対の支点の上の奥行方向の正規の位置に前記試験体を誘導するマークを備える請求項1乃至3のいずれかに記載の材料試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の支点の上に試験体を載せ、ポンチを降下させて、試験体に試験負荷をかけて曲げ試験を行う材料試験機が知られている(特許文献1)。
この種の材料試験機では、ISO/JIS等の規格で、試験力は試験体の中央部に負荷すること、とされている。そのために、従来では、例えば試験体の寸法を測定して試験体の中央部をケガキし、ポンチ中央にそのケガキ線を合わせながら一対の支点の上に試験体を載せる段取りが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-20879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のように、ケガキ線を合わせながらの段取りは、時間がかかり不便である。とくに、試験数が多くなると、段取り時間が長くなり、試験のタクトタイムが長くなるという課題がある。また、従来の段取りでは、目視での設置作業となるため、設置位置にずれが生じる恐れがある。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、試験体の位置決めのための段取りの時間を短くでき、試験体の設置位置にずれを生じさせることのない材料試験機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、一対の支点の上に試験体を載せ、前記試験体の中央部に試験負荷をかけて曲げ試験を行う材料試験機において、前記一対の支点の外側に配置され、内側に移動させて前記試験体の中央部を前記支点間の中央位置に位置決めする一対のアームと、前記一対のアームの移動量を同期させる同期機構と、を備える材料試験機に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の様態によれば、一対のアームと、一対のアームの移動量を同期させる同期機構により、曲げ試験治具の中央に簡便に試験体を設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る材料試験機の正面図である。
図2】負荷機構の拡大斜視図である。
図3】曲げ試験治具の拡大斜視図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5図4のV-V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る材料試験機1の正面図である。
材料試験機1は、負荷機構20と、制御部200と、を備える。
負荷機構20は、台座21を有する。台座21の上部にはテーブル22が設けられている。テーブル22には、鉛直方向上方に延びる一対の支柱23が立設されている。支柱23の上部には、クロスヨーク24が架け渡されている。
【0009】
支柱23の内部には、ボールねじ機構(不図示)が設けられている。ボールねじ機構のねじ棒には、図示しないナットを介して、クロスヘッド25の両端が連結されている。クロスヘッド25は、ねじ棒の回転によりテーブル22に対して昇降する。なお、ねじ棒は、図示しないモータにより回転駆動される。
【0010】
クロスヘッド25には、図2に示すように、ロードセル26が設置されている。ロードセル26には、継手27が取り付けられる。継手27は、下方に延び、継手27の下端には、ポンチ台28が接続されている。ポンチ台28には、スプリング29を介してポンチ30が取り付けられる。
ポンチ30が付与する試験力は、ロードセル26により計測され、計測された信号は制御装置200に入力される。
【0011】
ポンチ30の下方には、曲げ試験治具70が配置される。
曲げ試験治具70は、図3に示すように、平板状の支点取り付け台80と、支点取り付け台80に固定された箱形状の支点台81と、を備える。支点取り付け台80は、取り付けボルト79を介してテーブル22に固定される。
【0012】
支点台81には、支点台81の短手方向(奥行方向)に延びる一対の支点82が設けられる。一対の支点82の上には試験体Tが載置される。
一対の支点82は、それぞれ支持体83に支持される。それぞれの支持体83は、ボールねじ機構(不図示)を介して、調整ハンドル84に連結される。調整ハンドル84を、右又は左に回転させることにより、一対の支点82が、共に、内側又は外側に均等に開いて、支点82の間隔Wが小さく、又は大きく調整される。
支点目盛り86は、一対の支点82の間隔Wを調整するために配置される。一対の支点82の間隔Wは、試験体Tの長さに合わせて調整される。
【0013】
一対の支点82の両側には、試験体Tの中央部M1を、一対の支点82間の中央位置M2に位置決めするための、一対のアーム120が配置される。
一対のアーム120はT字型であり、アーム部120Aと、アーム部120Aの根元の基部120Bと、を備える。一対のアーム120は、支点82の外側に配置され、それぞれ内側に移動させて試験体Tを位置決めする。
一対のアーム120は、右アーム120Rと、左アーム120Lからなる。右アーム120Rと、左アーム120Lは、同期機構(図4参照。)を介して、ベース部100に片持ちで支持され、水平方向に同期して移動可能である。
【0014】
図4は、図3のIV-IV線断面図、図5は、図4のV-V線断面図である。
ベース部100は、箱形本体101の開口部に、平板状の蓋部材102を取り付けて構成される。蓋部材102は、4本の固定具110により、箱形本体101の開口部に固定される。箱形本体101は下部マウント160を備える。下部マウント160は3本の固定具162によって、支点台81に取り付けられる。
【0015】
上記の同期機構は、ラックピニオン機構140により構成され、図5に示すように、ベース部100の箱形本体101の内側に配置される。
ラックピニオン機構140は、一対のラック142と、一対のラック142と噛合うピニオン150と、を備える。ピニオン150は、箱形本体101の内側に支軸151により回転可能に支持される。ベース部100は、支軸151の延長線上に、一対の支点82の間隔Wの中央位置M2(図3参照)を位置させて、3本の固定具162によって、支点台81に取り付けられる。
【0016】
ベース部100の蓋部材102には、図4に示すように、ベース部100の長手方向に延びる上部長孔104と、上部長孔104と平行に延びる下部長孔106と、が形成される。一対のラック142は、上部長孔104に沿って延びる上ラック142Aと、下部長孔106に沿って延びる下ラック142Bと、を備える。
【0017】
下ラック142Bの右端部(一端)は、図5に示すように、下部長孔106を貫通する連結部材148を介して、右アーム120Rの基部120Bの下端に連結される。
また、右アーム120Rの基部120Bの上端に上部長孔104を貫通するピン149が形成され、右アームRがスライド可能に支持される。
下ラック142Bには、連結部材148の近傍と、下ラック142Bの左端部(他端)のそれぞれにガイドピン154が取り付けられ、二つのガイドピン154は、下部長孔106の内側をスライド可能に形成される。右アーム120Rの基部120Bは、ベース部100の右端側(図4の位置G)から、ベース部100の中央側(図4の位置H)までスライドさせることが可能である。
【0018】
上ラック142Aは、下ラック142Bと略対称の形態である。
図4に示すように、上ラック142Aの左端部(一端)は、上部長孔104を貫通する連結部材146を介して、左アーム120Lの基部120Bの上端に連結される。
また、左アーム120Lの基部120Bの下端に下部長孔106を貫通するピン147が形成され、左アームLがスライド可能に支持される。
上ラック142Aには、連結部材146の近傍と、上ラック142Aの右端部(他端)のそれぞれにガイドピン152が取り付けられ、二つのガイドピン152は、上部長孔104の内側をスライド可能に形成される。左アーム120Lの基部120Bは、ベース部100の左端側(図4の位置E)から、ベース部100の中央側(図4の位置F)までスライドさせることが可能である。
【0019】
本実施形態によれば、ラックピニオン機構140により、例えば左アーム120Lの移動量に対して、右アーム120Rの移動量が等しくなる。
例えば左アーム120Lを掴んで中央から離れるように左側へ水平移動させると、右アーム120Rは中央から離れるように等距離だけ右側へ水平移動する。この場合、左アーム120Lは、ピン152でガイドされ、右アーム120Rは、ピン154でガイドされて移動するため、安定した移動が可能である。
【0020】
一対のアーム120の対向面には、目盛り(誘導マーク)125が設けられる。
目盛り125は、一対の支点82の各長手方向の中央部(奥行方向の正規の位置)に、試験体Tを誘導するように配置される。目盛り125は、支点82の長手方向の中央部を0mmの位置として、前後の方向に10mm間隔で配置される。試験体Tの幅が、例えば20mmの場合であれば、目盛り125の10mmの位置に試験体Tを合わせることで、支点82上の奥行方向の正規の位置に誘導が可能である。
【0021】
以下、本実施形態の作用を説明する。
曲げ試験を行う場合には、まず、一対のアーム120を外側に移動させた状態で、一対の支点82の上に、試験体Tを横に寝かせた状態で配置する。
この場合には、一対のアーム120の対向面にある目盛(誘導マーク)125に合わせて、一対の支点82の各長手方向の中央部(正規の位置)に、試験体Tの奥行方向を位置合わせする。目盛り125は、支点82の長手方向の中央部を0mmの位置として、例えば前後の方向に10mm間隔で配置される。したがって、この場合には、試験体Tの幅の寸法を計測し、該幅が例えば20mmであれば、目盛り125の10mmの位置に試験体Tを位置合わせすればよい。
【0022】
この実施形態では、奥行方向の位置合わせを目視で行う場合と比較し、支点82上の正規の位置に試験体Tを簡単に誘導できる。
【0023】
つぎに、一対のアーム120を内側にスライドさせる。
この実施形態では、一対のアーム120は、ラックピニオン機構(同期機構)140により連結される。このため例えば、左アーム120Lの移動量に対して、右アーム120Rの移動量が等しくなり、左アーム120Lを掴んで中央に寄せるように内側へ水平移動させると、右アーム120Rは等距離だけ内側へ水平移動する。
【0024】
一対のアーム120を内側に同期させて移動させることにより、試験体Tが左右の何れかに移動して、試験体Tが一対のアーム120の間に挟まれる。
【0025】
ラックピニオン機構140のピニオン150は、箱形本体101の内側に支軸151により回転可能に支持され、支軸151の延長線上に、一対の支点82の間隔Wの中央位置M2(図3参照)を設定している。
したがって、試験体Tが一対のアーム120間に挟まれた状態で、試験体Tの中央部M1が、一対の支点82間の中央位置M2に位置決めされる。
【0026】
本実施形態では、一対のアーム120と、一対のアーム120の移動量を同期させるラックピニオン機構140を備えるため、一対の支点82の間隔Wの中央位置M2に、試験体Tの中央部M1を簡単に位置決めできる。
このため、従来行われていた、ケガキ線を合わせながらの目視での段取りが必要なくなり、段取り時間が短縮され、試験のタクトタイムを短くできる。
【0027】
ついで、試験体Tを奥行方向の正規の位置にも、横方向(中央位置M2)にも位置合わせした状態で、ポンチ台28を降下させる。
ポンチ台28には、スプリング29を介してポンチ30が取り付けられ、ポンチ30が試験体Tに付与する試験力は、ロードセル26により計測され、計測された信号は制御装置200に入力されて、曲げ試験が行われる。
【0028】
本実施形態では、一対のアーム120は、ベース部100に片持ちで支持され、ベース部100は、支点台81の背面側に取り付けられるため、支点台81の前面側には、試験体Tを配置するための広い作業スペースを確保できる。
一対のアーム120の対向面には、支点82の上の正規の位置に試験体Tを誘導するための、目盛り(誘導マーク)125を設けたため、左右方向のみならず、奥行方向についても正規の位置に試験体Tを設置できる。
【0029】
なお、本開示は、説明した上記実施形態に限定されることはなく、種々の様態で実施することが可能である。
例えば、上記実施形態では、一対のアーム120の同期機構として、ラックピニオン機構140を採用したが、本開示はこれに限定されず、例えばベルトとプーリーとの組み合わせ等による同期機構を採用してもよい。
【0030】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0031】
(第1項)
一様態に係る材料試験機は、一対の支点の上に試験体を載せ、前記試験体の中央部に試験負荷をかけて曲げ試験を行う材料試験機であって、前記一対の支点の外側に配置され、内側に移動させて前記試験体の中央部を前記一対の支点間の中央位置に位置決めする一対のアームと、前記一対のアームの移動量を同期させる同期機構と、を備えてもよい。
【0032】
第1項に記載の材料試験機によれば、一対のアームと、一対のアームの移動量を同期させる同期機構により、曲げ試験治具の中央に簡便に試験体を設置できる。
【0033】
(第2項)
第1項に記載の材料試験機において、前記同期機構は、前記一対のアームの移動量を同期させるラックピニオン機構を備えてもよい。
【0034】
第2項に記載の材料試験機によれば、同期機構は、ラックピニオン機構としたため、同期を簡単な構成で実現できる。
【0035】
(第3項)
第2項に記載の材料試験機において、前記一対のアームはベース部に片持ちで支持され、前記ベース部に前記ラックピニオン機構が配置されてもよい。
【0036】
第3項に記載の材料試験機によれば、ベース部にラックピニオン機構が配置されるため、同期機構の構成が簡素化され、試験体の設置作業時に邪魔にならない。
【0037】
(第4項)
第1項から第3項のいずれか1項に記載の材料試験機において、前記一対のアームは、前記一対の支点の上の奥行方向の正規の位置に前記試験体を誘導するマークを備えてもよい。
【0038】
第4項に記載の材料試験機によれば、奥行方向に延びてマークがあるため、試験体を、左右方向のみならず、奥行方向についても、簡単に位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 材料試験機
20 負荷機構
21 台座
22 テーブル
23 支柱
30 ポンチ
82 支点
84 調整ハンドル
100 ベース部
101 箱形本体
102 蓋部材
104 上部長孔
106 下部長孔
120 アーム
120R 右アーム
120L 左アーム
125 目盛り(誘導マーク)
140 ラックピニオン機構(同期機構)
142 ラック
142A 上ラック
142B 下ラック
150 ピニオン
T 試験体
M1 中央部
M2 中央位置
図1
図2
図3
図4
図5