(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178739
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】歯車製造方法
(51)【国際特許分類】
B23F 5/16 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
B23F5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091598
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】林 真宣
(72)【発明者】
【氏名】秋月 啓作
【テーマコード(参考)】
3C025
【Fターム(参考)】
3C025AA00
3C025AA12
(57)【要約】
【課題】ワークの歯数とスカイビングカッタの歯数との関係を最適化することで、うねりピッチを大きくすることができ、歯車精度の向上を図ることが可能な歯車製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる歯車製造方法の構成は、スカイビングカッタ(スカイビングカッタ110a、またはスカイビングカッタ110b)を用いてワーク(ワーク120a、ワーク120b)を加工して歯車を製造する歯車製造方法において、スカイビングカッタの歯数とワークの歯数とは異なっていて、多い方の歯数が少ない方の歯数の2倍未満である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカイビングカッタを用いてワークを加工して歯車を製造する歯車製造方法において、
前記スカイビングカッタの歯数と前記ワークの歯数とは異なっていて、多い方の歯数が少ない方の歯数の2倍未満であることを特徴とする歯車製造方法。
【請求項2】
前記スカイビングカッタの歯数または前記ワークの歯数のうち、一方または両方の歯数が奇数であることを特徴とする請求項1に記載の歯車製造方法。
【請求項3】
前記スカイビングカッタの歯数および前記ワークの歯数が互いに素であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歯車製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スカイビングカッタを用いてワークを加工して歯車を製造する歯車製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯車製造方法として、スカイビングカッタを用いてワークを加工して歯車を製造するスカイビング加工が知られている。スカイビング加工は、加工対象物であるワークの回転に切削工具であるスカイビングカッタの回転を同期させつつ、ワークの回転軸(ワーク軸)に対してスカイビングカッタの回転軸(カッタ軸)を傾けた状態で行われる。これにより、ワークの回転方向とスカイビングカッタの回転方向とに差異が生じ、ワークにスカイビングカッタを干渉させた際に“すべり”が生じる。このすべりを利用してワークから干渉部分をそぎ落とし、ワークに歯溝などを加工する。
【0003】
スカイビング加工ではないが、例えば特許文献1には、「カム素材を取付けて回転するワーク軸に対して、目的とする正面カムの形状に対応する形状とねじれ角を備えたピニオンカッタを取付けた工具軸を同期回転させ、当該工具軸を前記ワーク軸に直交する面内において前記ワーク軸と直交する方向に送り作動させると共に、当該工具軸の送り方向に対して前記ピニオンカッタのねじれ角に相当する交差角をもって交差させて加工することを特徴とする正面カムの加工方法」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、歯車の製造工程では、ワークに対してカッタの振れ成分や製作上の誤差による周期的なうねりが生じることによって、ワークの歯面にうねりが生じる。このうねりの周期であるうねりピッチが小さいと、それに起因する誤差(ピッチ誤差等)が大きくなる。すると、歯車精度のバラつきが大きくなり、所望の形状の歯車が得られなくなってしまう。
【0006】
うねりピッチを大きくする手法の1つとしては、例えば特許文献1に開示されているように、ワークの歯数とカッタの歯数を互いに割り切れない数に選択することが考えられる。しかし、互いに割りきれない数というだけでは、共通の素因数を含んでいる場合には最小公倍数がさほど大きくならない場合がある。したがって、うねりピッチをより大きくするためには更なる検討の余地があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、ワークの歯数とスカイビングカッタの歯数との関係を最適化することで、うねりピッチを大きくすることができ、歯車精度の向上を図ることが可能な歯車製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明にかかる歯車製造方法の代表的な構成は、スカイビングカッタを用いてワークを加工して歯車を製造する歯車製造方法において、スカイビングカッタの歯数とワークの歯数とは異なっていて、多い方の歯数が少ない方の歯数の2倍未満である。
【0009】
上記スカイビングカッタの歯数または前記ワークの歯数のうち、一方または両方の歯数が奇数であるとよい。また上記スカイビングカッタの歯数および前記ワークの歯数が互いに素であるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ワークの歯数とスカイビングカッタの歯数との関係を最適化することで、うねりピッチを大きくすることができ、歯車精度の向上を図ることが可能な歯車製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態の歯車製造方法に用いるスカイビングカッタおよびワークを例示する図である。
【
図2】
図1に示すワークの歯数、スカイビングカッタの歯数、および送り速度によるうねりピッチの変化について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施の形態の歯車製造方法に用いるスカイビングカッタおよびワークを例示する図である。本実施形態にかかる歯車製造方法では、スカイビングカッタを用いてワークを加工して歯車を製造する。
図1(a)では、スカイビングカッタ110a(図示では120歯)を用いてワーク120a(図示では201歯)の内周を加工し、内歯歯車を製造する場合を例示している。
図1(b)では、スカイビングカッタ110b(図示では200歯)を用いてワーク120b(図示では201歯)の外周を加工し、外歯歯車を製造する場合を例示している。以下、
図1(a)に例示するスカイビングカッタ110aおよびワーク120aおよび
図1(b)に例示するスカイビングカッタ110bおよびワーク120bを区別しないため、単にスカイビングカッタおよびワークと称する。
【0014】
図2は、
図1に示すワークの歯数、スカイビングカッタの歯数、および送り速度によるうねりピッチの変化について説明する図である。なお
図2では、ワークの歯数がスカイビングカッタの歯数よりも多い場合を例示する。ただし、これに限定するものではなく、スカイビングカッタの歯数がワークの歯数より多い場合であっても本発明の歯車製造方法を適用することができる。また、
図2に示す数値は、あくまでも一例で有り、この限りでないことは云うまでもない。
【0015】
図2(a)は、ワークの歯数およびスカイビングカッタの歯数の比とうねりピッチとの関係について説明する図である。例1ではスカイビングカッタの歯数を50とし、例2ではスカイビングカッタの歯数を100とし、例3ではスカイビングカッタの歯数を200としている。また全ての例において、ワークの歯数を201とし、ワーク1回転当たりの送り速度(仕上げ加工送り速度)を0.01mm/revとしている。以下、ワーク1回転当たりの送り速度を送り速度と称する。
【0016】
図2(a)に示す例1-例3では、すべてスカイビングカッタの歯数とワークの歯数は異なる数となっている。また例1では、ワークの歯数はスカイビングカッタの歯数の4.02倍であり、例2では、ワークの歯数はスカイビングカッタの歯数の2.01倍であり、例3では、ワークの歯数はスカイビングカッタの歯数の1.005倍(2倍未満)である。
【0017】
図2(a)に示すように、例3のうねりピッチは、例1および例2のうねりピッチよりも大きくなっている。このことから、上述したようにスカイビングカッタの歯数とワークの歯数のうち、多い方の歯数を少ない方の歯数の2倍未満とすることにより、スカイビングカッタの歯数とワークの歯数とが整数倍にならなくなるため、うねりピッチ(うねりの周期)を大きくすることができることがわかる。したがって本実施形態の歯車製造方法によれば、ワークの歯数とスカイビングカッタの歯数との関係を最適化し、歯車精度の向上を図ることが可能となる。
【0018】
また
図2(a)に示すように、例1-例3ではスカイビングカッタの歯数とワークの歯数との差が小さいほど、うねりピッチが大きいことがわかる。このことから、スカイビングカッタの歯数とワークの歯数との差を小さくすることにより、上述した効果をより高めることが可能である。
【0019】
更にスカイビングカッタまたはワークのうち、一方または両方の歯数が奇数であるとよい。これにより、スカイビングカッタの歯数またはワークの歯数の一方または両方が素因数に2を含まないこととなる。換言すればスカイビングカッタの歯数とワークの歯数との組み合わせは、奇数奇数または奇数偶数となる。したがって、スカイビングカッタの歯数とワークの歯数との最小公倍数を大きくすることができ、うねりピッチをより大きくすることが可能となる。なお、スカイビングカッタについては、ワークとの干渉が生じないのであれば、可能な限り歯数を大きくしてもよい。
【0020】
またスカイビングカッタの歯数およびワークの歯数が互いに素であるとよい。「互いに素である」とは、共通の素因数を含まないことを意味する。これにより、スカイビングカッタの歯数とワークの歯数との最小公倍数を最も大きくすることができる。したがって、うねりピッチを更に大きくすることができ、歯車精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0021】
図2(b)は、送り速度とうねりピッチとの関係について説明する図である。例1では送り速度を0.01mm/revとし、例4では送り速度を0.05mm/revとし、例5では送り速度を0.1mm/revとしている。また全ての例において、ワークの歯数を201とし、カッタの歯数を50としている。
【0022】
図2(b)の例1、例4および例5に示すように、送り速度が速くなるにしたがってうねりピッチは大きくなる。したがって、上述したようにスカイビングカッタの歯数とワークの歯数との関係を最適化し、且つ送り速度を調節することにより、うねりピッチを更に大きくすることができ、歯車精度を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0023】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、スカイビングカッタを用いてワークを加工して歯車を製造する歯車製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
110a…スカイビングカッタ、110b…スカイビングカッタ、120a…ワーク、120b…ワーク