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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178755
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ロータリー式切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/074 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
F16K11/074 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091624
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 宏光
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA13
3H067CC32
3H067DD03
3H067DD12
3H067EA05
3H067FF11
3H067GG23
3H067GG24
(57)【要約】
【課題】低圧流路の壁の補強効果を高め、内外の圧力差による壁の変形を抑制することができるロータリー式切換弁を得ることを目的とする。
【解決手段】ロータリー式切換弁100は、弁本体1と、4個のポート20D、20S、20C、20Eを有する弁座部20と、弁本体1の内部で弁座部20に交差する中心軸6まわりに回転可能に設けられる主弁3と、を備えている。主弁3は、隣り合う2個のポートを連通させる低圧流路30Lを有している。低圧流路30Lには、中心軸6に交差する径方向Yの内径側の壁である内径内壁34と、内径側と反対側の外径側の壁である外径内壁33と、に亘る補強部材7が設けられている。補強部材7は、外径内壁33に対して低圧流路30Lの開口端縁に沿って延びる所定幅を有した外径辺部7bによって接触している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を構成する弁本体と、前記弁室に開口する4個のポートを有する弁座部と、前記弁本体の内部で前記弁座部に交差する中心軸まわりに回転可能に設けられる弁体と、を備えるロータリー式切換弁であって、
前記弁体は、隣り合う2個の前記ポートを連通させる高圧流路および低圧流路を有し、
前記低圧流路には、前記中心軸に交差する交差方向の前記中心軸側である内径側の壁と、前記内径側と反対側の外径側の壁と、に亘る補強部材が設けられ、
前記補強部材は、少なくとも前記外径側の壁に対して前記低圧流路の開口端縁に沿って延びる所定幅を有した外側接触部によって接触していることを特徴とするロータリー式切換弁。
【請求項2】
前記補強部材は、前記外径側の幅寸法が、前記内径側の幅寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のロータリー式切換弁。
【請求項3】
前記補強部材は、前記外径側の高さ寸法が、前記内径側の高さ寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のロータリー式切換弁。
【請求項4】
前記補強部材は、前記外径側の幅寸法と、前記内径側の幅寸法と、が等しいことを特徴とする請求項1に記載のロータリー式切換弁。
【請求項5】
前記高圧流路および前記低圧流路のうち少なくとも前記低圧流路において、前記内径側の壁よりも前記外径側の壁の開口端縁近傍の周長が長く形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリー式切換弁。
【請求項6】
前記高圧流路および前記低圧流路のうち少なくとも前記低圧流路において、前記内径側の壁と前記外径側の壁とは、それぞれ開口端縁近傍が同心で前記中心軸まわりに延びる円弧形状であることを特徴とする請求項1に記載のロータリー式切換弁。
【請求項7】
前記弁体の切換位置において、前記低圧流路が連通させる2個の前記ポートと前記補強部材とは、前記中心軸の軸線方向に見て重ならないことを特徴とする請求項1に記載のロータリー式切換弁。
【請求項8】
前記補強部材は、前記低圧流路の前記内径側の壁に接する内径辺部と、前記低圧流路の前記外径側の壁に接する外径辺部と、前記内径辺部の一端部および他端部から前記外径辺部の一端部および他端部に延びる一対の側辺部と、を有し、前記一対の側辺部は、前記内径側から前記外径側に向かって広がる弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリー式切換弁。
【請求項9】
前記補強部材は、前記内径側の壁に接する内径辺部と、前記外径側の壁に接する外径辺部と、前記内径辺部の一端部および他端部から前記外径辺部の一端部および他端部に延びる一対の側辺部と、を有し、前記一対の側辺部は、直線状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリー式切換弁。
【請求項10】
前記補強部材および前記主弁の少なくとも一方には、前記交差方向に延びる抜け止め部が設けられ、
前記抜け止め部は、前記補強部材が前記弁座部側に変位しようとする際に、前記中心軸の軸線方向に向かって前記補強部材および前記主弁の他方に対して当接する部分を備えていることを特徴とする請求項1に記載のロータリー式切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリー式切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流路を切り換えるロータリー式切換弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のロータリー式切換弁の弁体は、合成樹脂成形品であり、2個の弁通路を有し、弁通路の開口端縁が弁座部に摺接しつつ弁体が回転することで、弁座部に設けられた4個のポートと弁通路との連通状態を切り換えるように構成されている。この弁体において、2個の弁通路のうち一方は高圧流路であり、他方は低圧流路であり、弁室内が高圧となることから、低圧流路の壁には、内外の圧力差による応力が作用することとなる。
【0003】
このような応力に対して壁を補強するものとしては、スライド式切換弁の弁体に設けられる補強ピンが知られている(例えば、特許文献2参照)。補強ピンは、楕円形状のドーム部を有する弁体の内部に形成された弁通路としての椀状凹部の内部を横断するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-22041号公報
【特許文献2】特開2012-82883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のスライド式切換弁の弁体の椀状凹部は、スライド方向に長い長円状に形成され、その肉厚がスライド方向やその直交方向で等しくなっているのに対し、ロータリー式切換弁の2個の弁通路は、それぞれ弁体の中心軸を挟んで中心軸まわりに形成されていることから、特に中心軸の交差方向でその肉厚が異なりやすい。すなわち、中心軸の交差方向では、中心軸まわりの肉がある分、中心軸側と反対側である交差方向外側の肉厚が中心軸側である交差方向内側の肉厚に対して相対的に小さくなりやすい。したがって、ロータリー式切換弁の2個の弁通路のうちの低圧流路においては、内外の圧力差による応力が交差方向外側の壁で大きくなり、その補強としてスライド式切換弁に用いられるような補強ピンを用いたとしても交差方向外側の壁に対する十分な補強効果が得られないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、低圧流路の壁の補強効果を高め、内外の圧力差による壁の変形を抑制することができるロータリー式切換弁を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のロータリー式切換弁は、弁室を構成する弁本体と、前記弁室に開口する4個のポートを有する弁座部と、前記弁本体の内部で前記弁座部に交差する中心軸まわりに回転可能に設けられる弁体と、を備えるロータリー式切換弁であって、前記弁体は、隣り合う2個の前記ポートを連通させる高圧流路および低圧流路を有し、前記低圧流路には、前記中心軸に交差する交差方向の前記中心軸側である内径側の壁と、前記内径側と反対側の外径側の壁と、に亘る補強部材が設けられ、前記補強部材は、少なくとも前記外径側の壁に対して前記低圧流路の開口端縁に沿って延びる所定幅を有した外側接触部によって接触していることを特徴とする。
【0008】
このような本発明によれば、補強部材は、低圧流路の外径側の壁に対して接触する外側接触部によって、低圧流路の開口端縁に沿った所定幅の接触面積を確保することができる。このため、弁体の内外の圧力差による応力が低圧流路の外径側の壁に作用する場合に、その応力を外側接触部によって受けることができ、応力による影響を補強部材によって、所定範囲に亘り抑制することができる。このように、内径側の肉厚に対して相対的に肉厚が小さくなりやすく、上述の応力が大きくなりやすい外径側の壁を補強部材により補強し易くすることができる。したがって、低圧流路の壁の補強効果を高め、内外の圧力差による壁の変形を抑制することができるロータリー式切換弁を得ることができる。
【0009】
この際、補強部材は、前記外径側の幅寸法が、前記内径側の幅寸法よりも大きいことが好ましい。このような構成によれば、低圧流路において、補強部材を外径側の壁に対し、幅寸法の差の分、内径側の壁よりも広範囲に亘って(すなわち、大きな接触面積で)接触させることができる。したがって、外径側の壁の補強効果を増大させることで、補強部材による低圧流路の壁の補強効果を高めることができる。
【0010】
また、前記補強部材は、前記外径側の高さ寸法が、前記内径側の高さ寸法よりも大きいことが好ましい。このような構成によれば、低圧流路において、補強部材を外径側の壁に対し、高さ寸法の差の分、内径側の壁よりも広範囲に亘って接触させることができる。したがって、外径側の壁の補強効果を増大させることで、補強部材による低圧流路の壁の補強効果を高めることができる。
【0011】
また、前記補強部材は、前記外径側の幅寸法と、前記内径側の幅寸法と、が等しくてもよい。
【0012】
また、前記高圧流路および前記低圧流路のうち少なくとも前記低圧流路において、前記内径側の壁よりも前記外径側の壁の開口端縁近傍の周長が長く形成されていてもよい。このような構成では、低圧流路において、外径側の壁の開口端縁近傍の周長が、内径側の壁の開口端縁近傍の周長よりも長くなるので、上述のように応力の影響を受けやすい外径側の壁は、その面積が内径側の壁の面積よりも大きくなり、外径側の壁はより一層応力の影響を受けやすくなる。しかしながら、本構成によれば、外径側の壁に作用する応力を外側接触部によって受けることができるので、応力が大きくなりやすい外径側の壁を補強部材により補強し易くすることができる。
【0013】
また、前記高圧流路および前記低圧流路のうち少なくとも前記低圧流路において、前記内径側の壁と前記外径側の壁とは、それぞれ開口端縁近傍が同心で前記中心軸まわりに延びる円弧形状であってもよい。
【0014】
また、前記弁体の切換位置において、前記低圧流路が連通させる2個の前記ポートと前記補強部材とは、前記中心軸の軸線方向に見て重ならないことが好ましい。このような構成によれば、弁体が2個のポートを連通させている状態で、補強部材が当該ポートに対して中心軸の軸線方向に重ならないので、補強部材が2個のポート間を移動する流体の妨げになることを抑制することができる。したがって、流体の流量低下を抑制しつつ、弁体の補強効果を向上することができる。
【0015】
また、前記補強部材は、前記低圧流路の前記内径側の壁に接する内径辺部と、前記低圧流路の前記外径側の壁に接する外径辺部と、前記内径辺部の一端部および他端部から前記外径辺部の一端部および他端部に延びる一対の側辺部と、を有し、前記一対の側辺部は、前記内径側から前記外径側に向かって広がる弧状に形成されていてもよい。このような構成によれば、補強部材を、内径辺部と、外径辺部と、一対の側辺部とで、例えば銀杏型または扇状型等に形成することができる。
【0016】
また、前記補強部材は、前記内径側の壁に接する内径辺部と、前記外径側の壁に接する外径辺部と、前記内径辺部の一端部および他端部から前記外径辺部の一端部および他端部に延びる一対の側辺部と、を有し、前記一対の側辺部は、直線状に形成されていてもよい。このような構成によれば、補強部材を、内径辺部と、外径辺部と、一対の側辺部とで、例えば台形型等に形成することができる。
【0017】
また、前記補強部材および前記主弁の少なくとも一方には、前記交差方向に延びる抜け止め部が設けられ、前記抜け止め部は、前記補強部材が前記弁座部側に変位しようとする際に、前記中心軸の軸線方向に向かって前記補強部材および前記主弁の他方に対して当接する部分を備えていることが好ましい。このような構成によれば、補強部材および主弁の少なくとも一方に設けられた抜け止め部が、補強部材および主弁の他方に対して軸線方向に向かって当接することで、弁座部側に変位しようとする補強部材の変位を規制することができる。これにより、補強部材が弁座部側に抜け落ちることを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低圧流路の壁の補強効果を高め、内外の圧力差による壁の変形を抑制することができるロータリー式切換弁を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るロータリー式切換弁の組立断面図。
図2】弁体の断面図。
図3】弁体の底面図。
図4】弁体および補強部材の部分拡大図。
図5】第1変形例における弁体の底面図。
図6】第1変形例における弁体および補強部材の部分拡大図。
図7】(A)、(B)は、第2変形例における補強部材の斜視図。
図8】第2変形例における弁体および補強部材の部分拡大図。
図9】(A)~(D)は、幅寸法が一定でない補強部材の形状のバリエーションを示す図。
図10】(A)~(C)は、両端部の幅寸法が同じ補強部材の形状のバリエーションを示す図。
図11】(A)は、冷房運転時の状態を示す冷凍サイクルシステムの概略図であり、(B)は、暖房運転時の状態を示す冷凍サイクルシステムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図1~4および図11に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るロータリー式切換弁100の組立断面図である。図2は、主弁3(弁体)の断面図である。図3は、主弁3の底面図である。図4は、主弁3および補強部材7の部分拡大図である。図11(A)は、冷房運転時の状態を示す冷凍サイクルシステムの概略図であり、図11(B)は、暖房運転時の状態を示す冷凍サイクルシステムの概略図である。
【0021】
なお、図面において、矢印X、矢印Yは、互いに直交する方向であり、矢印Xを弁本体1および中心軸6の軸線方向とし、「軸線X方向」と記す。また、軸線X方向の一方側を「上側X1」とし、他方側を「下側X2」と記す。また、軸線Xに交差する交差方向を矢印Yで示し、「径方向Y」と記す。そして、特に径方向Yにおいて中心軸6のある側を「内径側」とし、内径側の反対側を「外径側」とする。これは、あくまでも説明の便宜のためであり、必ずしもロータリー式切換弁100の実際の使用状態における方向と一致するとは限らず、ロータリー式切換弁100の実際の使用状態における方向を限定するものではない。
【0022】
ロータリー式切換弁100は、弁本体1と、弁座部材2と、主弁3(弁体)と、副弁4と、駆動部5と、中心軸6と、補強部材7と、を備えている。弁本体1は、軸線X方向に延びる筒状の第一円筒部10と、第一円筒部10に連続し第一円筒部10よりも縮径した有底筒状の第二円筒部11と、を備え、主弁3、副弁4、駆動部5、中心軸6、および補強部材7を収容している。第一円筒部10の内部は、弁室10aを構成している。第二円筒部11の内部は、主に駆動部5等を収容する収容部11aを構成している。
【0023】
弁座部材2は、円柱状の弁座部20と、弁座部20の外周に形成されたフランジ部21と、を備えている。弁座部20は、外周面が第一円筒部10の内周面に接するようにして弁本体1に嵌め込まれており、その上面は、径方向Yに延びる弁座面20aを構成している。図3に示すように、弁座部20には、弁座部20の下端部から弁座面20aまで貫通して弁室10aに開口する4個のポート20D、20S、20C、20Eが設けられている。各ポート20D、20S、20C、20Eは、それぞれ90°離間する位置に開口している。
【0024】
4個のポートは、弁室10aと圧縮機の冷媒の吐出側に連通されるDポート20Dと、圧縮機の冷媒の吸入側に連通されるSポート20Sと、室外熱交換器側に連通されるC切換ポート20Cと、室内熱交換器側に連通されるE切換ポート20Eと、で構成されている。各ポート20D、20S、20C、20Eには、それぞれ継手管8(図1にのみ図示)が接続されて冷媒の流路を構成している。フランジ部21は、上面が第一円筒部10の下端面に接触した状態で、溶接により弁本体1に固定されている。
【0025】
主弁3は、樹脂で形成された部材であり、弁本体1の内部で中心軸6まわりに回転可能および軸線X方向に変位可能に設けられている。図2に示すように、主弁3は、椀部30と、椀部30に連続して上側X1に延びる円柱状のピストン部31と、を備えている。椀部30には、弁座面20aに向かって開口する低圧流路30Lおよび高圧流路30Hと、低圧流路30Lの天井から収容部11aに連通する均圧孔30aと、が形成されている。
【0026】
低圧流路30Lは、上述のポート各ポート20D、20S、20C、20Eのうち隣り合う2個のポートを連通させる弁通路であり、中心軸6を挟んで高圧流路30Hと対向して設けられている。この低圧流路30Lには、その開口端縁から下側X2に向かって突出するリブ32が設けられており、リブ32の下端面はシール面32aを構成している。図1に示すように、シール面32aは、弁座面20aに摺接可能となっており、シール面32aと弁座面20aと、で囲まれて弁室10aと隔てられた空間によって上述の4個のポート20D、20S、20C、20Eのうち2個が連通されるようになっている。
【0027】
図3に示すように、低圧流路30Lにおいて、径方向Yの外径側の壁である外径内壁33と、径方向Yの内径側の壁である内径内壁34とは、それぞれ開口端縁近傍が、同心で中心軸6まわりに延びる円弧形状に形成されている。そして、外径内壁33は、内径内壁34に比べて、その開口端縁近傍の周長が長く形成されている。図2に示すように、外径内壁33には、径方向Y外径側に凹む溝状の第一当て止め部33aが形成されている。第一当て止め部33aは、低圧流路30Lの開口端縁に沿って所定幅を有し、その開口端縁から上側X1に向かって形成されている。
【0028】
内径内壁34には、径方向Y内径側に凹む溝状の第二当て止め部34aが形成されている。第二当て止め部34aは、低圧流路30Lの開口端縁に沿って第一当て止め部33aよりも小さい所定幅を有し、その開口端縁から上側X1に向かって形成されている。
【0029】
なお、このような構成では、主弁3に中心軸6まわりの肉(樹脂)がある分、外径内壁33の肉厚がその反対側の内径内壁34の肉厚に対して相対的に小さくなりやすく、主弁3内外の圧力差による応力の影響を外径内壁33が受けやすい。そこで、低圧流路30Lの内部には、第二当て止め部34aから第一当て止め部33aに亘って補強部材7が設置されている。すなわち、低圧流路30Lには、内径内壁34と、外径内壁33と、に亘る補強部材7が設けられている。補強部材7の詳細な説明は後述する。
【0030】
高圧流路30Hは、各ポート20D、20S、20C、20Eのうち、隣り合う2個のポートを連通させる弁通路である。この高圧流路30Hは、その下端部がリブ32のシール面32aよりも上側X1に位置するように形成されている。そして、高圧流路30Hには、図2における断面視で径方向Y外径側の壁から径方向Y内径側に向かって切欠き部30H1が形成されている。これにより、高圧流路30Hは、弁室10aと隔てられない常時開放した空間となっている。
【0031】
椀部30の底面には、下側X2に突出する一対の摺動リブ30bが形成されている。摺動リブ30bは、図3に示すように、椀部30の底面において高圧流路30Hが形成される側の半円部に、周方向に間隔をあけて形成されている。摺動リブ30bは、下端面が上述のシール面32aと軸線X方向の位置が同じになっており、これによって、シール面32aと弁座面20aとが接触した状態の主弁3が、高圧流路30H側に傾くことが抑制されている。
【0032】
ピストン部31は、図1に示すように、その周囲にピストンリングRを嵌め込むように形成されており、ピストンリングRは、主弁3が軸線X方向に変位する際に第二円筒部11の内周面に摺接するようになっている。ピストン部31の中心部には、上側X1に開口する円筒状の凹部が形成されており、この凹部は、副弁4を収容する副弁収容室31aを構成している。
【0033】
副弁収容室31aの内周面には、径方向Y内方に突出し軸線X方向に延びる副弁ストッパ31a1が形成されている。副弁収容室31aの底面には、軸線Xまわりの周上で上側X1に凸となる主弁凸部31a2が形成されている。この主弁凸部31a2には、上述の均圧孔30aの上側X1の端部が開口している。副弁収容室31aの底面中央部は、中心軸6の軸受部を構成し、この軸受部の中心には、軸線X方向に沿って椀部30の下端部まで貫通する軸挿入孔3aが形成されている。軸挿入孔3aには、中心軸6の後述する下側部分6bが挿入されており、これによって、後述するストップピン9(図11(A)および(B)にのみ図示)に当接する第一切換位置(切換位置、図11(A)が示す位置)と、第二切換位置(切換位置、図11(B)が示す位置)と、の間で、主弁3が中心軸まわり(軸線Xまわり)に回転可能および軸線X方向に変位可能に支持されている。
【0034】
副弁4は、主弁3と同様に、中心軸6まわりに回転可能および軸線X方向に変位可能に設けられている。副弁4は、副弁収容室31aに収容される略半円板状のフランジ部40と、フランジ部40の中央に形成され軸線X方向に延びるボス部41と、を備えている。フランジ部40の径方向Y外方側の端部は、上述の主弁3が第一切換位置または第二切換位置でストップピン9に当接し回転を規制された状態で、副弁4が中心軸6まわりに回転した際に上述の副弁ストッパ31a1に当接するようになっており、この当接によって副弁4の中心軸6まわりの回転が規制されるようになっている。
【0035】
フランジ部40の下面には、主弁凸部31a2と同一円周上で下側X2に凸となる複数の副弁凸部40aが形成されている。副弁凸部40aは、2個で1個の主弁凸部31a2を挟みうるように軸線Xまわりで離間して形成されている。副弁凸部40a下端面は、上述の均圧孔30aを封止するシール面40a1を構成している。そして、フランジ部40の下面において、2個の副弁凸部40a間には、均圧孔30aと連通可能な、不図示の均圧流路が形成されている。このため、副弁凸部40aのシール面40a1が均圧孔30aを封止している状態では、高圧の弁室10aと低圧の低圧流路30L内と、が区画されることとなるが、均圧流路と均圧孔30aが連通した状態では、低圧流路30Lと弁室10aとの圧力が均一となる。
【0036】
ボス部41の中心には、上側X1に開口する角孔41aが形成されており、この角孔41aには、後述するウォームホイール50のカム部50aが嵌め込まれるようになっている。角孔41aの底部の中心には、軸線X方向に沿ってフランジ部40の下端まで貫通する軸挿入孔4aが形成されている。軸挿入孔4aには、中心軸6の後述する上側部分6aが挿入されており、これによって副弁4が中心軸6まわりに回転可能および軸線X方向に変位可能に支持されている。
【0037】
駆動部5は、中心軸6に回転可能に配置されたウォームホイール50と、ウォームホイール50に歯合されたウォーム歯車51と、を有している。ウォームホイール50は、下側X2に突出するカム部50aを有しており、カム部50aによって中心軸6に回転可能に配置されている。カム部50aは、副弁4の角孔41aに嵌合されている。これにより副弁4とウォームホイール50とは、一体となり、共に協働して軸線Xまわりに回転するようになっている。そして、ウォームホイール50と副弁4との間には、副弁4を下側X2に付勢するコイルばね52が配置されている。ウォーム歯車51は、図示しないモータの駆動軸に固定されている。
【0038】
中心軸6は、軸線X方向に延びる主軸である。中心軸6は、ウォームホイール50の中心部および副弁4の軸挿入孔4aに挿通される上側部分6aと、上側部分6aよりも小径に形成され、主弁3の軸挿入孔3aに挿通される下側部分6bと、を備えている。上側部分6aの上端部には、円環状のリムをかしめることによりボールBが固定されており、このボールBを介して上側部分6aが、弁本体1の第二円筒部11の天井壁の中心に設けられた軸受溝に支持されている。下側部分6bの下端部は、弁座部材2の弁座部20の中心に設けられた軸受溝に支持されている。上側部分6aと下側部分6bとの連続部分には、ワッシャ61が嵌め込まれており、このワッシャ61を介して主弁3が上側X1に上昇する際の力が中心軸6に伝達されるようになっている。
【0039】
補強部材7は、上述のとおり、低圧流路30Lの内径内壁34と、外径内壁33と、に亘って設けられる部材である。補強部材7は、主弁3を補強する梁として機能し、主弁3の変形を防ぐために設置されている。
【0040】
補強部材7は、例えば、ステンレス、黄銅、アルミニウム、および銅金属などの金属材料や、樹脂で板状に形成されている。この補強部材7は、内径内壁34(低圧流路30Lの径方向Y内径側の壁)に接する内径辺部7aと、外径内壁33(低圧流路30Lの径方向Y外径側の壁)に接する外径辺部7bと、内径辺部7aの一端部および他端部から外径辺部7bの一端部および他端部に延びる一対の側辺部7cと、を備えている。
【0041】
内径辺部7aは、径方向Y内径側の端面が内径内壁34の第二当て止め部34aの径方向Y外径側の面に沿う形状となっており、当該第二当て止め部34aの径方向Y外径側の面に当接するようにして、圧入により固定されている。外径辺部7bは、径方向Y外径側の端面が、外径内壁33の第一当て止め部33aの径方向Y外方側の面に沿う形状となっており、当該第一当て止め部33aの径方向Y外方側の面に当接するようにして、圧入により固定されている。
【0042】
外径内壁33は、上述のように、第二当て止め部34aよりも幅の大きい第一当て止め部33aに沿って、円弧状に延びる外側接触部を構成している。すなわち、補強部材7は、径方向Y外径側の幅寸法が、内径側の幅寸法よりも大きく設定されている。また、補強部材7は、少なくとも外径内壁33に対して開口端縁に沿って延びる所定幅を有した外側接触部によって接触している。
【0043】
一対の側辺部7cは、補強部材7の幅寸法が径方向Y内径側から外径側に向かって大きくなるように弧状に形成されている。すなわち、一対の側辺部7cは、内径側から外径側に向かって広がる弧状に形成されている。そして、これにより、補強部材7は、図3における底面視で銀杏型、または扇型に形成されている。
【0044】
そして、このように構成された補強部材7は、主弁3が各ポート20E、20S、20D、20Cを連通させた第一切換位置または第二切換位置において、低圧流路30Lが連通させる2個のポート(図3では、E切換ポート20EとSポート20S)と、補強部材7とが、中心軸6の軸線X方向に見て重ならないように配置されている。
【0045】
次に、主弁3と副弁4の動作について説明する。まず、図11(A)に示すように、主弁3の低圧流路30LがE切換ポート20EとSポート20Sとを連通させ、高圧流路30HがDポート20DとC切換ポート20Cとを連通させた第一切換位置から、駆動部5が作動する。そうすると、ウォーム歯車51とウォームホイール50の駆動力が、カム部50aを介して副弁4に伝達され、副弁4が軸線Xまわり(左回り)に回転する。
【0046】
なお、このときは、副弁凸部40aのシール面40a1と主弁凸部31a2の上面が図1に示すように当接しているため、主弁凸部31a2に開口する均圧孔30aがシール面40a1によって閉じられている。このため、主弁3は、内外の圧力差により弁座部20に押しつけられた状態であり、副弁4が回転しても主弁3は弁座部20との摩擦力により回転できず、副弁4だけが回転する。
【0047】
副弁4が回転すると、副弁凸部40aが主弁凸部31a2上をスライドして、均圧孔30aが、副弁4のフランジ部40下面において2個の副弁凸部40a間に形成された不図示の均圧流路により開かれる。これにより、主弁3の外部の上側X1の流体の圧力が低圧流路30L内(低圧側)へ逃げる。そして、主弁凸部31a2は、2個の副弁凸部40aに挟まれる位置に移動し、主弁凸部31a2と、2個の副弁凸部40aと、が互い違いに噛み合う。この状態では、主弁3の上側X1と低圧流路30L内は均圧となるため、上述のように主弁3を弁座部20に押し付ける力は小さくなり、主弁3と、弁座部20と、の摩擦力が、主弁凸部31a2と2個の副弁凸部40aとが噛み合う力よりも小さくなる。
【0048】
このため、副弁4を軸線Xまわりに回転させることで、主弁凸部31a2と、副弁凸部40aと、が当接しながら一体となって軸線Xまわりに回転する。これにより、図11(B)に示すように、主弁3は、低圧流路30LがC切換ポート20CとSポート20Sとを連通させ、高圧流路30HがDポート20DとE切換ポート20Eとを連通させる第二切換位置に移動する。この際、高圧流路30Hの壁がストップピン9に当接することで、主弁3はそれ以上軸線Xまわりに回転することが規制される。
【0049】
この状態でさらに副弁4を軸線Xまわりに回転させると、回転を規制されていない副弁4のみが、上述の副弁ストッパ31a1に当接するまで軸線Xまわりに回転する。これにより、副弁凸部40aが主弁凸部31a2に乗り上がり、シール面40a1により均圧孔30aが閉じられる。したがって、高圧の流体は、均圧孔30aから低圧流路30Lに逃げることができないため、主弁3の外部の上側X1が高圧となり、主弁3の上側X1と低圧流路30Lとの圧力差によって主弁3が弁座部20に押し付けられる。
【0050】
次に、ロータリー式切換弁100を流路切換弁に用いた冷凍サイクルシステムについて説明する。図11は実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図であり、空気調和機の冷凍サイクルシステムの例である。空気調和機は、圧縮機P、室外熱交換器60(凝縮器または蒸発器)、膨張弁70、室内熱交換器80(凝縮器または蒸発器)、流路切換弁としてのロータリー式切換弁100を有しており、これらの各要素は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルシステムを構成している 。
【0051】
冷凍サイクルシステムの流路は、ロータリー式切換弁100の主弁3を上記説明のように回転させることで、冷房運転および暖房運転の2通りの流路に切換えられるようになっている。図11(A)の冷房運転時には、ロータリー式切換弁100において主弁3の低圧流路30LによりSポート20SがE切換ポート20Eに接続され、高圧流路30HによりDポート20DがC切換ポート20Cに接続される。そして、図に矢印で示すように、圧縮機Pで圧縮された流体としての冷媒がロータリー式切換弁100のDポート20Dに流入してC切換ポート20Cから室外熱交換器60に流入し、室外熱交換器60から流出する冷媒が、膨張弁70に流入する。そして、この膨張弁70で冷媒が膨張され、室内熱交換器80に供給される。室内熱交換器80から流出する冷媒は、ロータリー式切換弁100でE切換ポート20EからSポート20Sに流れ、Sポート20Sから圧縮機Pへ循環される 。
【0052】
図11(B)の暖房運転時には、ロータリー式切換弁100において主弁3の低圧流路30LによりSポート20SがC切換ポート20Cに接続され、高圧流路30HによりDポート20DがE切換ポート20Eに接続される。そして、図に矢印で示すように、圧縮機Pで圧縮された冷媒がロータリー式切換弁100のDポート20Dに流入してE切換ポート20Eから室内熱交換器80に流入し、室内熱交換器80から流出する冷媒が、膨張弁70に流入する。そして、この膨張弁70で冷媒が膨張され、室外熱交換器60に供給される。室外熱交換器60から流出する冷媒は、ロータリー式切換弁100でC切換ポート20CからSポート20Sに流れ、Sポート20Sから圧縮機Pへ循環される 。
【0053】
以上、本実施形態によれば、補強部材7は、低圧流路30Lの外径内壁33(外径側の壁)に対して接触する外径辺部7b(外側接触部)によって、低圧流路30Lの開口端縁に沿った所定幅の接触面積を確保することができる。このため、主弁3(弁体)の内外の圧力差による応力が低圧流路30Lの外径内壁33に作用する場合に、その応力を外径辺部7bによって受けることができ、応力による影響を補強部材7によって、所定範囲に亘り抑制することができる。このように、内径側の肉厚に対して相対的に肉厚が小さくなりやすく、上述の応力が大きくなりやすい外径内壁33を補強部材7により補強し易くすることができる。したがって、低圧流路30Lの壁の補強効果を高め、内外の圧力差による壁の変形を抑制することができるロータリー式切換弁100を得ることができる。
【0054】
また、外径辺部7bの幅寸法が、内径辺部7aの幅寸法よりも大きいので、低圧流路30Lにおいて、補強部材7を外径内壁33に対し、幅寸法の差の分、内径内壁34よりも広範囲に亘って(すなわち、大きな接触面積で)接触させることができる。したがって、外径内壁33の補強効果を増大させることで、補強部材7による低圧流路30Lの壁の補強効果を高めることができる。
【0055】
なお、本実施形態のような低圧流路30Lにおいては、外径内壁33の開口端縁近傍の周長が、内径内壁34の開口端縁近傍の周長よりも長くなるので、外径内壁33の面積が内径内壁34の面積よりも大きくなり、上述のように応力の影響を受けやすい外径内壁33(外径側の壁)はより一層応力の影響を受けやすくなる。しかしながら、上述の構成によれば、外径内壁33に作用する応力を外径辺部7bによって受けることができるので、応力が大きくなりやすい外径内壁33を補強部材7により補強し易くすることができる。
【0056】
また、主弁3が2個のポートを連通させている状態で、補強部材7が当該ポートに対して中心軸6の軸線X方向に重ならないので、補強部材7が2個のポート間を移動する流体の妨げになることを抑制することができる。したがって、流体の流量低下を抑制しつつ、主弁3の補強効果を向上することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、補強部材7を、内径辺部7aと、外径辺部7bと、一対の側辺部7cとで、銀杏型または扇型等に形成することができる。
【0058】
また、低圧流路30Lの壁の補強効果を高め、内外の圧力差による壁の変形を抑制することができるロータリー式切換弁100を流路切換弁として、冷凍サイクルシステムを構成することができる。
【0059】
次に、ロータリー式切換弁100の第1変形例について説明する。図5は、第1変形例における主弁3の底面図である。図6は、第1変形例における主弁3および補強部材7の部分拡大図である。第1変形例では、第一当て止め部33aの形状が、上述の実施形態と異なっている。第一当て止め部33aは、補強部材7の外径辺部7bの幅方向一端部と他端部に接触する部分のみ形成されている。なお、この第一当て止め部33aの径方向Y外径側の面の曲率は、当接する外径辺部7bの部分の曲率よりも、やや大きい曲率で形成しておくことが好ましい。この構成によれば、外径辺部7bの幅方向両端部を、第一当て止め部33aに確実に当接させることができるので、外径内壁33に対して、外径辺部7bの幅方向一端部から他端部に亘る範囲を補強部材7により補強し易くすることができる。
【0060】
具体的には、外径内壁33に対して、外径辺部7bの幅方向一端部から他端部に亘る範囲を、最低でも間隔をあけた二点で支持することができるので、従来のように補強ピンにより一点を支持する構成と比較して、広範囲を補強部材7により支持して外径内壁33に対する応力を分散させるとともに、外径内壁33の変形できる範囲を小さくすることができる。
【0061】
また、このように構成しておけば、仮に外径辺部7bや第一当て止め部33aに寸法公差等が生じた場合にも、外径辺部7bの幅方向両端部が、第一当て止め部33aに確実に当接することで、外径辺部7の幅方向中央部のみが第一当て止め部33aに対して点接触するおそれを低減できるので好適である。
【0062】
また、このような構成によれば、図6に示すように、補強部材7の外径辺部7bの幅方向一端部と他端部に接触する部分以外の部分の幅寸法Wを、上述の実施形態と比較して大きくすることができるので、外径内壁33の強度を高めることができる。
【0063】
次に、ロータリー式切換弁100の第2変形例について説明する。図7(A)、(B)は、第2変形例における補強部材7の斜視図である。図8は、第2変形例における主弁3および補強部材7の部分拡大図である。第2変形例では、補強部材7の形状が上述の実施形態、および第1変形例と異なっている。補強部材7の内径辺部7aには、径方向Y内径側に突出する内径突起7a1(抜け止め部)が形成されている。内径突起7a1は、先端に向かうほど軸線X方向の幅が小さくなる略三角形状に形成されている。また、外径辺部7bには、径方向Y外径側に突出する一対の外径突起7b1(抜け止め部)が形成されている。外径突起7b1は、内径突起7a1と同形状に形成され、外径辺部7bの幅方向一端側と他端側とにそれぞれ配置されている。これらの内径突起7a1と、外径突起7b1とは、それぞれプレス加工により形成されている。内径突起7a1及び外径突起7b1の下側X2を向く面(部分)は、補強部材7が弁座部20側に変位しようとする際に、下側X2に向かって主弁3に当接するようになっており、これによって内径突起7a1および外径突起7b1は、抜け止めとして機能するようになっている。
【0064】
上述の実施形態、および第1変形例では、外径辺部7bと内径辺部7a、すなわち補強部材7の端面をそれぞれ第一当て止め部33aおよび第二当て止め部34aに圧入することで、補強部材7を主弁3に固定していたが、第2変形例では、外径突起7b1および内径突起7a1をそれぞれ第一当て止め部33aおよび第二当て止め部34aに食い込ませることで、補強部材7を主弁3に強固に固定することができる。なお、この構成では、第一当て止め部33aおよび第二当て止め部34aの溝の深さを調整することで、外径突起7b1および内径突起7a1に加えて、外径辺部7bと内径辺部7aの端面をそれぞれ第一当て止め部33aおよび第二当て止め部34aに当接させ、補強部材7を主弁3に固定してもよい。
【0065】
このような構成によれば、外径辺部7bの幅方向両端部を、外径突起7b1により、第一当て止め部33aに確実に当接させることができるので、外径内壁33に対して、外径辺部7bの幅方向一端部から他端部に亘る範囲を補強部材7により補強し易くすることができる。また、内径突起7a1を第二当て止め部34aに食い込ませ、外径突起7b1を第一当て止め部33aに食い込ませることで、補強部材7が主弁3に固定された状態を安定して維持することができる。そして、この場合、内径突起7a1および外径突起7b1は、それぞれ抜け止めとして機能するので、振動や流体力による補強部材7の抜けが防止される。
【0066】
なお、図示は省略するが、補強部材7の抜けを防止する抜け止め部に関しては、主弁3側に設けてもよい。例えば、第一当て止め部33a及び第二当て止め部34aからそれぞれ径方向Y内径側に突出する突起部を設け、これを抜け止め部とすることができる。すなわち、突起部の上側X1を向く部分を、補強部材7が弁座部20側に変位しようとする際に、上側X1に向かって補強部材7に当接する部分とし、これを補強部材7の下側X2の部分に当接させることで、補強部材7を支持し、補強部材7が下側X2(弁座部20側)に抜けることを抑制することができる。
【0067】
このような構成によれば、補強部材7および主弁3の少なくとも一方に設けられた抜け止め部(例えば、内径突起7a1、外径突起7b1)が、補強部材7および主弁3の他方に対して軸線X方向に向かって当接することで、弁座部20側に変位しようとする補強部材7の変位を規制することができる。これにより、補強部材7が弁座部20側に抜け落ちることを防止することができる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態、および変形例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0069】
本実施形態および変形例では、補強部材7は、図2に示すように、平板状に形成したが、補強部材7の形状はこれに限られない。例えば、補強部材7は、外径辺部7bのある側(外径側)の高さ寸法が、内径辺部7aのある側(内径側)の高さ寸法よりも大きく設定されてもよい。これにより、外径辺部7b、すなわち外側接触部による外径内壁33との接触面積を増大させることができ、より多くの応力を当該外側接触部で受けることができるので、応力による影響をより一層低減することができる。この場合、外径辺部7bのある側の高さ寸法を大きくして、上述の接触面積を大きくする手段としては、外径辺部7bを単純に厚肉に形成してもよいし、外径辺部7bの径方向Y外径側の端部を軸線X方向、すなわち上側X1および下側X2のいずれかに折り曲げてもよい。なお、この際、厚肉にする、または折り曲げる部分は、補強部材7のうち、上述の応力を受け易い内壁に当接する側だけとしてもよい。
【0070】
また、補強部材7は、図2に示すように、平板状に形成した。しかしながら、補強部材7は、例えば図7に示す外径側もしくは内径側から、径方向Yに見た場合の側面形状又は断面形状が、軸線X方向の上側X1および下側X2のいずれかに湾曲して円弧を描くような形状に形成してもよい。このような構成によれば、補強部材7は、平板状に形成された場合と比較して、径方向Yに圧力が加わった場合に座屈し難くなるため、補強部材7の強度向上の観点から好適である。また、補強部材7は、上述のように金属または樹脂で形成したが、特に材料は限定されず、剛性と冷媒適合性さえあればどのような材料を用いてもよい。
【0071】
また、補強部材7は、必ずしも銀杏型や扇型に形成する必要はなく、様々な形状に形成してよい。図9(A)~(D)は、幅寸法が一定でない補強部材の形状のバリエーションを示す図である。これによれば、例えば、図9(D)のように、補強部材7は、内径内壁34に接する内径辺部7aと、外径内壁33に接する外径辺部7bと、内径辺部7aの一端部および他端部から外径辺部7bの一端部および他端部に延びる一対の側辺部7cと、を有し、一対の側辺部7cは、直線状に形成されている。すなわち、補強部材7は、内径辺部7aと、外径辺部7bと、一対の側辺部7cと、で台形型等に形成されていてもよい。
【0072】
また、低圧流路30Lにおいて、径方向Yの外径側の壁である外径内壁33と、径方向Yの内壁側の壁である内径内壁34とは、図3に示すように、それぞれ開口端縁近傍が、同心で中心軸6まわりに延びる円弧形状に形成されていなくてもよい。また、低圧流路30Lにおいて、径方向Yの外径側の壁である外径内壁33は、径方向Yの外径側の壁である内径内壁34に比べて、その開口端縁近傍の周長が長く形成されていなくてもよい。すなわち、低圧流路30Lの開口端縁近傍の形状は、長円や楕円であってもよい。これは、高圧流路30Hも同様である。
【0073】
また、上述の実施形態および変形例では、第二当て止め部34aは、低圧流路30Lの開口端縁に沿って第一当て止め部33aよりも小さい所定幅を有するように形成し、低圧流路30L内に幅一定でない補強部材7を設けることで、異なる面積の内壁(外径内壁33と内径内壁34)によって構成される低圧流路30Lの耐圧性を向上していた。しかしながら、十分な補強効果を得られる場合には、第一当て止め部33aと第二当て止め部34aの所定幅を同じに設定し、両端部の幅寸法が同じ補強部材7を設けるようにしてもよい。図10(A)~(C)は、両端部の幅寸法が同じ補強部材7の形状のバリエーションを示す図である。これによれば、図10(A)のように、補強部材7を幅一定に形成してもよいし、図10(B)、(C)に示すように、補強部材7の端部の幅寸法のみを、それぞれ同じに形成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
X 軸線
Y 径方向(交差方向)
1 弁本体
3 主弁(弁体)
6 中心軸
7 補強部材
7b 外径辺部(外側接触部)
10a 弁室
20 弁座部
20E E切換ポート
20C C切換ポート
20D Dポート
20S Sポート
30H 高圧流路
30L 低圧流路
34 内径内壁(内径側の壁)
33 外径内壁(外径側の壁)
100 ロータリー式切換弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11