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特開2023-178775皮下埋込型注入ポート用のコネクタおよび皮下埋込型注入ポートセット
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  • 特開-皮下埋込型注入ポート用のコネクタおよび皮下埋込型注入ポートセット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178775
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】皮下埋込型注入ポート用のコネクタおよび皮下埋込型注入ポートセット
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20231211BHJP
   A61M 39/02 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
A61M37/00 560
A61M39/02 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091664
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】衣川 雄規
【テーマコード(参考)】
4C066
4C267
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF01
4C066GG03
4C066GG19
4C066JJ03
4C267AA75
4C267BB05
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB26
4C267CC05
4C267EE07
(57)【要約】
【課題】 カテーテルを容易に接続でき、かつ、その離脱や薬液漏洩を防止できる皮下埋込型注入ポート用のコネクタおよび皮下埋込型注入ポートセットを提供する。
【解決手段】 コネクタ2は、接続管32に外嵌した状態のカテーテル3に挿通される挿通孔56、および、挿通孔56の径方向に可撓である可撓片58、を有するカシメ部材50と、中心線C1に沿ってカシメ部材50に近づく第1方向へ移動するよう操作されることで径方向のうち中心線C1に近づく第2方向へ可撓片58を変形させる作用部80を有する操作部材52と、を備える。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体貯留用の内腔を有するハウジング、および、前記内腔に連通すると共にカテーテルが接続される接続管を有する接続ポート、を備える皮下埋込型注入ポートにおける前記接続ポートに接続されるコネクタであって、
前記接続管に外嵌した状態の前記カテーテルが挿通される挿通孔および前記挿通孔の径方向に可撓である可撓片を有するカシメ部材と、
前記挿通孔の中心線に沿って前記カシメ部材に近づく第1方向へ移動するよう操作されることで前記径方向のうち前記中心線に近づく第2方向へ前記可撓片を変形させる作用部を有する操作部材と、を備える、
皮下埋込型注入ポート用のコネクタ。
【請求項2】
前記操作部材は、前記作用部が前記可撓片を変形させた状態で、前記注入ポートに対して係止される、
請求項1に記載の皮下埋込型注入ポート用のコネクタ。
【請求項3】
前記接続管の外周面には、前記外周面から突出すると共に前記接続管の軸心回りに周回する凸条部が設けられており、前記操作部材が前記注入ポートに係止された状態で、前記凸条部と前記可撓片とは前記中心線に沿った方向の位置が互いに異なっている、
請求項2に記載の皮下埋込型注入ポート用のコネクタ。
【請求項4】
前記操作部材は、前記注入ポートが備える第1被係合部に係合する第1係合部を有し、
前記操作部材の前記第1方向への移動により、前記第1係合部が前記第1被係合部と係合し、かつ、前記可撓片が前記第2方向へ変形する、
請求項1乃至3の何れかに記載の皮下埋込型注入ポート用のコネクタ。
【請求項5】
前記カシメ部材は、内部に前記挿通孔が形成された本体部を有し、前記本体部の一端部から前記可撓片が前記中心線に沿って延びており、
前記操作部材は、前記カシメ部材を収容する収容凹部を有し、前記作用部は、前記収容凹部に収容された前記カシメ部材の前記可撓片に対して前記第1方向に当接することで前記可撓片を前記第2方向へ変形させる、
請求項4に記載の皮下埋込型注入ポート用のコネクタ。
【請求項6】
前記カシメ部材は、前記注入ポートが備える第2被係合部に係合する第2係合部を有すると共に、前記操作部材に係合される第3被係合部を有し、
前記操作部材は、前記第3被係合部に係合する第3係合部を有し、
前記操作部材の前記第1方向への移動により、前記第3係合部が前記第3被係合部に係合し、かつ、前記可撓片が前記第2方向へ変形する、
請求項1乃至3の何れかに記載の皮下埋込型注入ポート用のコネクタ。
【請求項7】
前記カシメ部材は、内部に前記挿通孔が形成された本体部を有し、前記本体部の一端部から前記可撓片が前記中心線に沿って延びており、
前記操作部材は、前記第3係合部が前記第3被係合部に係合したときに少なくとも前記可撓片を収容する収容凹部を有し、前記作用部は、前記収容凹部に収容された前記カシメ部材の前記可撓片に対して前記第1方向に当接することで前記可撓片を前記第2方向へ変形させる、
請求項6に記載の皮下埋込型注入ポート用のコネクタ。
【請求項8】
液体貯留用の内腔を有するハウジング、および、前記内腔に連通すると共にカテーテルが接続される接続管を有する接続ポート、を含む皮下埋込型注入ポートと、前記接続管に外嵌した状態の前記カテーテルが挿通されるカシメ部材を有するコネクタと、を備える皮下埋込型注入ポートセットであって、
前記接続管の外周面には、前記外周面から突出すると共に前記接続管の軸心回りに周回する凸条部が設けられており、
前記カテーテルの内径をD1、前記凸条部の外径をD2、前記接続管における前記凸条部以外の部分の外径をD3とした場合に、前記接続管はD2>D1>D3を満たす寸法となるよう構成されている、
皮下埋込型注入ポートセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療分野において患者の皮膚下に埋め込まれて体内へ薬液を注入する際に用いられる皮下埋込型注入ポート用のコネクタおよび皮下埋込型注入ポートセットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば癌の治療において抗癌剤を投与する化学療法では、長期間にわたって患者に薬剤を投与する場合がある。しかし、長期にわたり薬剤の投与を注射により何度も行うと、血管に静脈炎が発症することがあり、患者にとって負担が小さくない。そこで、患者の負担を軽減するため、カテーテルと共に外科手術によって患者の皮下に埋め込んで用いる皮下埋込型注入ポートが提案されている。この皮下埋込型注入ポートとしては、特許第3482577号公報および特許第5419515号公報に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3482577公報
【特許文献2】特許第5419515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年ではカテーテルとして内径のより大きいものが要望されている。ここで、カテーテルの内径の拡大に伴って外径も大きくすると、カテーテルが埋設される患者の負担が増すことから、外径は大きくせず内径のみを大きくするのが望ましい。しかし、この場合はカテーテルの壁部の厚み寸法が小さくなり、弾性力が小さくなってプッシャビリティが低下するため、注入ポートが有する接続管へのカテーテルの接続が困難になる。
【0005】
特に、投与中の薬液漏洩防止の観点から、注入ポートの接続管とカテーテルとを強固に接続するべく、特許文献1,2の注入ポートでは、接続管の外周面に拡径部が形成されている(特許文献1の「テーパ7b」、特許文献2の「拡径部14a」を参照)。しかし、上記のように壁厚の小さいカテーテルはプッシャビリティが低いため、拡径部に被せることが難しい。一方、壁部内に編組体を埋設することでプッシャビリティを高めることができるが、編組体は可撓性が乏しいゆえ、このようなカテーテルを拡径部に被せることはやはり難しい。
【0006】
また、特許文献1の場合、「キャップ8」が「コネクタ7」に螺合しつつカテーテルを挟持するため、カテーテルにはその外面に対して押圧力が加わると共に、外面に対してその接線方向へ擦る摺接力も加わる。特許文献2の場合も、「係合突部24」がカテーテルの外面を押圧しつつ摺動するため、カテーテルの画面には押圧力が加わると共に接線方向へ擦る摺接力も加わる。このうち摺接力は、カテーテルと接続管との接続強度の向上に寄与しないばかりか、壁厚が小さいカテーテルにおいては壁部を損傷する恐れがある。
【0007】
更に、プッシャビリティの低いカテーテルであっても接続できるよう、注入ポートの接続管の外径を小さくすることが考えられる。しかしその場合、カテーテルと接続管との間のシール性が低くなり、投与中の薬液漏洩や、接続管からのカテーテルの脱離などが懸念される。
【0008】
そこで本開示では、壁厚の小さいカテーテルであっても、カテーテルの損傷を抑制しつつ注入ポートの接続管に容易に接続でき、かつ、薬液漏洩やカテーテルの脱離を防止できる、皮下埋込型注入ポート用のコネクタおよび皮下埋込型注入ポートセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様に係る皮下埋込型注入ポート用のコネクタは、液体貯留用の内腔を有するハウジング、および、前記内腔に連通すると共にカテーテルが接続される接続管を有する接続ポート、を備える皮下埋込型注入ポートにおける前記接続ポートに接続されるコネクタであって、前記接続管に外嵌した状態の前記カテーテルが挿通される挿通孔および前記挿通孔の径方向に可撓である可撓片を有するカシメ部材と、前記挿通孔の中心線に沿って前記カシメ部材に近づく第1方向へ移動するよう操作されることで前記径方向のうち前記中心線に近づく第2方向へ前記可撓片を変形させる作用部を有する操作部材と、を備える。
【0010】
これにより、カシメ部材の可撓片を変形させてカテーテルを外方から押圧することで、カテーテルを接続管に対して強固かつ液密に、容易に接続することができる。また、操作部材を第1方向へ移動するよう操作することで、可撓片が第2方向へ変形してカテーテルを押圧する構成であるため、カテーテルの外面を擦る摺接力が抑制される。その結果、壁厚の小さいカテーテルであってもその損傷を抑制することができる。さらに、操作部材の操作方向が第1方向(すなわち、注入ポートに近づく方向)であるため、皮下の注入ポートにカテーテルを接続する処置において、患部に向かう方向へ力が掛かりにくく、患者への負担を軽減できる。
【0011】
本開示の第2の態様に係る皮下埋込型注入ポート用のコネクタは、第1の態様において、前記操作部材は、前記作用部が前記可撓片を変形させた状態で、前記注入ポートに対して係止されるものであってもよい。
【0012】
これにより、可撓片を変形させる操作部材が、注入ポートに対して(直接的または間接的に)係止されるので、カテーテルと接続管との接続状態を安定的に長期間維持することができる。
【0013】
本開示の第3の態様に係る皮下埋込型注入ポート用のコネクタは、第2の態様において、前記接続管の外周面には、前記外周面から突出すると共に前記接続管の軸心回りに周回する凸条部が設けられており、前記操作部材が前記注入ポートに係止された状態で、前記凸条部と前記可撓片とは前記中心線に沿った方向の位置が互いに異なっていてもよい。
【0014】
これにより、カテーテルが凸条部および可撓片により中心線に沿った方向の異なる2か所でシールされるため、シール性が向上すると共にカテーテルの抜け止め効果も向上する。
【0015】
本開示の第4の態様に係る皮下埋込型注入ポート用のコネクタは、第1乃至第3の何れかの態様において、前記操作部材は、前記注入ポートが備える第1被係合部に係合する第1係合部を有し、前記操作部材の前記第1方向への移動により、前記第1係合部が前記第1被係合部と係合し、かつ、前記可撓片が前記第2方向へ変形するものであってもよい。
【0016】
これにより、操作部材を第1方向へ移動させるための操作を行うだけで、操作部材を注入ポートに係止できると共に、可撓片を変形させて(カシメて)カテーテルを接続管に対して強固に接続することができる。
【0017】
本開示の第5の態様に係る皮下埋込型注入ポート用のコネクタは、第4の態様において、前記カシメ部材は、内部に前記挿通孔が形成された本体部を有し、前記本体部の一端部から前記可撓片が前記中心線に沿って延びており、前記操作部材は、前記カシメ部材を収容する収容凹部を有し、前記作用部は、前記収容凹部に収容された前記カシメ部材の前記可撓片に対して前記第1方向に当接することで前記可撓片を前記第2方向へ変形させるものであってもよい。
【0018】
これにより、カシメ部材および操作部材を備えるコネクタをシンプルな構成により実現することができる。また、カシメ部材を操作部材の収容凹部に入れた状態でカシメ部材の挿通孔にカテーテルを通せば、カシメ部材および操作部材へのカテーテルの挿入を1回の処理で済ませられるため、作業性がよい。
【0019】
本開示の第6の態様に係る皮下埋込型注入ポート用のコネクタは、第1乃至第3の何れかの態様において、前記カシメ部材は、前記注入ポートが備える第2被係合部に係合する第2係合部を有すると共に、前記操作部材に係合される第3被係合部を有し、前記操作部材は、前記第3被係合部に係合する第3係合部を有し、前記操作部材の前記第1方向への移動により、前記第3係合部が前記第3被係合部に係合し、かつ、前記可撓片が前記第2方向へ変形するものであってもよい。
【0020】
これにより、操作部材を第1方向へ移動させるための操作を行うだけで、操作部材をカシメ部材に係合できると共に、可撓片を変形させて(カシメて)カテーテルを接続管に対して強固に接続することができる。
【0021】
本開示の第7の態様に係る皮下埋込型注入ポート用のコネクタは、第6の態様において、前記カシメ部材は、内部に前記挿通孔が形成された本体部を有し、前記本体部の一端部から前記可撓片が前記中心線に沿って延びており、前記操作部材は、前記第3係合部が前記第3被係合部に係合したときに少なくとも前記可撓片を収容する収容凹部を有し、前記作用部は、前記収容凹部に収容された前記カシメ部材の前記可撓片に対して前記第1方向に当接することで前記可撓片を前記第2方向へ変形させるものであってもよい。
【0022】
これにより、カシメ部材および操作部材を備えるコネクタをシンプルな構成により実現することができる。
【0023】
本開示の第8の態様に係る皮下埋込型注入ポートセットは、液体貯留用の内腔を有するハウジング、および、前記内腔に連通すると共にカテーテルが接続される接続管を有する接続ポート、を含む皮下埋込型注入ポートと、前記接続管に外嵌した状態の前記カテーテルが挿通されるカシメ部材を有するコネクタと、を備える皮下埋込型注入ポートセットであって、前記接続管の外周面には、前記外周面から突出すると共に前記接続管の軸心回りに周回する凸条部が設けられており、前記カテーテルの内径をD1、前記凸条部の外径をD2、前記接続管における前記凸条部以外の部分の外径をD3とした場合に、前記接続管はD2>D1>D3を満たす寸法となるよう構成されている。
【0024】
このように、D1>D3とすることでカテーテルに接続管を挿入しやすくしつつ、D2>D1とすることでカテーテルと接続管との接続箇所のシール性を確保することができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示に係る皮下埋込型注入ポート用のコネクタおよび皮下埋込型注入ポートセットによれば、壁厚の小さいカテーテルであっても、カテーテルの損傷を抑制しつつ注入ポートの接続管に容易に接続でき、かつ、薬液漏洩やカテーテルの脱離を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施の形態1に係る皮下埋込型注入ポート用のコネクタを含む皮下埋込型注入ポートセットの斜視図である。
図2図2Aは、皮下埋込型注入ポートの平面図である。図2Bは、皮下埋込型注入ポートの側面図である。
図3図3は、皮下埋込型注入ポートを図2AのIII-III線で切断したときの断面図である。
図4図4Aは、コネクタが有するカシメ部材の斜視図である。図4Bは、カシメ部材を図4AのIVB-IVB線で切断したときの断面図である。
図5図5Aは、コネクタが有する操作部材の斜視図である。図5Bは、操作部材を図5AのVB-VB線で切断したとき断面図である。
図6図6Aは、皮下埋込型注入ポートの接続ポートにコネクタを接続する前の状態を示す断面図である。図6Bは、皮下埋込型注入ポートの接続ポートにコネクタを接続した状態を示す断面図である。
図7図7Aは、実施の形態2に係る皮下埋込型注入ポートセットが備えるコネクタのカシメ部材の斜視図である。図7Bは、カシメ部材を図7AのVIIB-VIIB線で切断したときの断面図である。
図8図8Aは、コネクタが有する操作部材の斜視図である。図8Bは、操作部材を図8AのVIIIB-VIIIB線で切断したときの断面図である。
図9図9Aは、皮下埋込型注入ポートの接続ポートにコネクタを接続する前の状態を示す断面図である。図9Bは、皮下埋込型注入ポートの接続ポートにコネクタを接続した状態を示す断面図である。
図10図10は、変形例に係る構成を説明するための図面であり、接続ポートおよびカテーテルを拡大して示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施の形態に係る皮下埋込型注入ポート用のコネクタおよび皮下埋込型注入ポートセットについて図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、各開示の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する皮下埋込型注入ポート用のコネクタおよび皮下埋込型注入ポートセットは本開示の一実施形態に過ぎない。従って、本開示は以下の実施形態に限定されず、開示の趣旨を逸脱しない範囲で構成の追加、削除、変更が可能である。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る皮下埋込型注入ポート1用のコネクタ2を含む皮下埋込型注入ポートセット100の斜視図である。図2Aは、皮下埋込型注入ポート1の平面図であり、図2Bは、皮下埋込型注入ポート1の側面図である。図3は、図2AのIII-III線での断面図である。図1に示すように、皮下埋込型注入ポートセット100(以下、「セット100」)は、皮下埋込型注入ポート1(以下、「注入ポート1」)とコネクタ2とを備え、注入ポート1にはカテーテル3の一端部が接続される。
【0029】
[皮下埋込型注入ポート]
注入ポート1は、ハウジング10に蓋体12と接続ポート14とが取り付けられた構造になっている。ハウジング10の外形は、図2Bに示すように側面視で上部よりも下部が大きい台形状を成し、図2Aに示すように上部は平面視で円形状を成している。また、図3に示すようにハウジング10は、上部開口16および下部開口18を有する筒状のアウターハウジング20と、アウターハウジング20の下部開口18を閉じるベースハウジング22とを有する。アウターハウジング20の上部開口16には蓋体12が内方に嵌まるようにして装着されている。
【0030】
ハウジング10は、硬質の合成樹脂または金属などにより構成され、蓋体12は、エラストマーまたはゴムなどの弾性材により構成されている。ハウジング10は、その上部開口16が蓋体12により塞がれることで、その内部には薬液などの液体を貯留することのできる内腔24が形成される。図2Bに示すように、内腔24はハウジング10の下側に位置しており、内腔24の上側は蓋体12が位置している。従って、注入ポート1の外から蓋体12に注射針を穿刺し、その針先を内腔24に位置させることで、注射針を通じてシリンジ内の薬液を内腔24へ供給することができる。
【0031】
ハウジング10の周方向の一部は内方へ凹んだ凹部26を成し、この凹部に接続ポート14が設けられている。なお、本実施の形態1では、内腔24に対して蓋体12が位置する方向を「上」、その反対方向を「下」とし、ハウジング10において接続ポート14が設けられた方向を「前」、その反対方向を「後」とする。さらに、前方から見たときを基準にして「左」および「右」を定める。この場合、上述した凹部26は、図1に示すようにハウジング10の周方向の一部が後方へ凹んで形成され、前方に面する縦壁面28を有している。また、縦壁面28のうち、その下部であって左右方向の中央部分は、ベースハウジング22の前壁部の前面により構成され、その他の部分はアウターハウジング20の前壁部の前面により構成されている。
【0032】
接続ポート14は、ポート基部材30、接続管32、および、左右一対の第1被係合部34を有している。このうちポート基部材30は、図3に示すように、縦壁面28の下部であって左右方向の中央部分(ベースハウジング22で構成された部分)に設けられている。ポート基部材30は、内部に通路36を有する円筒状を成している。そして、ポート基部材30は、軸心を前後方向に向けた状態で、その後部がベースハウジング22の前壁部に形成された嵌挿孔38に前方から後方へ向けて嵌められ、かつ、その前部は縦壁面28から前方へ突出している。また、ベースハウジング22の前壁部には前後方向へ延びる通路40が形成されている。この通路40の後端は内腔24に連通し、前端は嵌挿孔38の後端で開口すると共に、この嵌挿孔38に嵌められたポート基部材30の通路36の後端に連通する。
【0033】
ポート基部材30の前端は、中間部分に比べて内径および外径が共に前方へ向かうに従って縮径されたテーパ状を成し、縮径された通路36の前端には接続管32の後端が接続されている。接続管32の後端は通路36の前端に内嵌するようにして接続され、接続管32の内部の通路42とポート基部材30の通路36とは互いに連通している。従って、接続管32は、その通路42が、前述の通路36および通路40を介して内腔24に連通している。なお、これらの通路36,40,42は互いに同軸芯状に位置している。
【0034】
接続管32は、例えば金属材料から成る小径の管材であり、図1に示すように、ポート基部材30から前方へ突出した部分にはカテーテル3が被さるように外嵌して装着される。また、図2A等に示すように、接続管32の前部外周面には、拡径方向への突起が軸心回りを周回するようにして形成された凸条部44が設けられている。この凸条部44は、前端よりも後端の方が接続管32の外周面からの高さ寸法が大きい傾斜面を有し、傾斜面の後端と接続管32の外周面とは、当該外周面に対してほぼ垂直な壁面によって接続されている。このような凸条部44により、接続管32に被せられたカテーテル3の脱離が防止される。
【0035】
第1被係合部34は、ポート基部材30の左右それぞれにて、ハウジング10の縦壁面28から前方へ突出するようにして設けられている。より具体的にいうと、各第1被係合部34は6面を有する直方体形状を成し、縦壁面28において下部の左右部分(アウターハウジング20で構成された部分)に、各面を前後左右上下のそれぞれに向けるようにして突設されている。なお、第1被係合部34の前端は、ポート基部材30の前端よりも後方に位置し、第1被係合部34の上下方向寸法は、ポート基部材30の上下方向寸法(すなわち、外径寸法)よりも小さい。そして、左側の第1被係合部34はポート基部材30の左外面に接するか近接し、右側の第1被係合部34はポート基部材30の右外面に接するか近接している。
【0036】
このような第1被係合部34には、コネクタ2と係合するための第1被係止突起46が設けられている。つまり、左側の第1被係合部34においては、その前端かつ左端の位置から左方向へ突出するようにして第1被係止突起46が形成されている。同様に、右側の第1被係合部34においては、その前端かつ右端の位置から右方向へ突出するようにして第1被係止突起46が形成されている。
【0037】
[コネクタ]
次に、上述した注入ポート1に接続して用いるコネクタ2について説明する。コネクタ2は、図1に示すようにカシメ部材50および操作部材52を備えている。図4Aはカシメ部材50の斜視図であり、図4Bはカシメ部材50を図4AのIVB-IVB線で切断したとき断面図である。図5Aは操作部材52の斜視図であり、図5Bは操作部材52を図5AのVB-VB線で切断したときの断面図である。
【0038】
図4Aおよび図4Bに示すように、カシメ部材50は、中心線C1が前後方向を向く円筒状の本体部54を有する。カシメ部材50は、カテーテル3に比して硬い部材として構成されている。本体部54の内部には、接続管32に外嵌した状態のカテーテル3に挿通される挿通孔56が中心線C1に沿って形成されている。挿通孔56の孔径は、カテーテル3の外径とほぼ同一寸法か若干大きい程度である。また、本体部54の一端部(前端部)からは、中心線C1に沿って前方へ可撓片58が延びており、この可撓片58は挿通孔56の径方向に変形可能となっている。可撓片58は、本体部54の前端部においてその周方向に複数設けられており、図4Aでは4つ設けられた構成を例示している。また、隣り合う可撓片58の間には、これら2つの可撓片58を隔てるスリット60が形成されている。
【0039】
可撓片58は、円筒状の本体部54の前端部を切頭円錐状に形成した上で周方向等間隔にスリット60を形成するようにして構成されている。これにより可撓片58は、本体部54の外周面と面一に連続する基部62と、基部62の前端から前方へ向かうに従って中心線C1に近づくように外面が傾斜したテーパ部64とを有する。テーパ部64は、前方へ向かうに従って周方向寸法および厚み寸法が共に小さくなっている。テーパ部64の傾斜した外面は被押圧面66を成し、後述するように被押圧面66が押圧されることで可撓片58は中心線C1の方向へ撓む。なお、テーパ部64の内周面は、本体部54の内周面に対して面一に連続して前方へ延びている。また、スリット60の幅方向寸法(本体部54の周方向に沿った寸法)は、前後方向の任意の位置において同一になっている。
【0040】
図5Aおよび図5Bに示すように、操作部材52は、中心線C2が前後方向を向く貫通孔を有する本体部68を有する。本体部68は、前部分70、中間部分72、および後部分74から成る。前部分70は円筒状を成し、内部にはカテーテル3が挿通する挿通孔76が形成されている。挿通孔76の孔径は、カテーテル3の外径とほぼ同一寸法である。
【0041】
中間部分72の外形は、その前部については前部分70と同様の円筒状であるが、後方へ向かうに従って左右方向の寸法が大きくなり、後部は中心線C2に直交する横断面が長円形状を成している。中間部分72の内部には、中心線C2と同軸を成す横断面円形の孔である収容凹部78が形成されている。収容凹部78は、カシメ部材50を互いの中心線C1,C2を一致させて収容可能であり、収容凹部78の内径はカシメ部材50の本体部54の外径とほぼ同一寸法か若干小さい程度である。
【0042】
また、収容凹部78の前部には押圧面82を有する作用部80が形成されている。すなわち、収容凹部78の前部内周面は前方へ向かうに従って縮径した傾斜面を成し、当該傾斜面は押圧面82を成している。このような押圧面82を有する作用部80は、後述するように、カシメ部材50の可撓片58を変形させる。なお、作用部80の押圧面82の傾斜角度(中心線C2に対して鋭角を成す角度)は、可撓片58のテーパ部64の被押圧面66の傾斜角度(中心線C1に対して鋭角を成す角度)よりも大きい。
【0043】
後部分74は、外形が中間部分72の後部と同様の長円形状を成し、内部には、接続ポート14の第1被係合部34と係合する第1係合部84が形成されている。第1係合部84は、左右一対の第1被係合部34を収容する横長の直方体形状を成す係合空間86を有する。また、係合空間86を画定する左右の内壁部分には、左右の中央方向(中心線C2に近づく方向)に突出した第1係止突起88が形成されている。また、係合空間86を画定する上下の内壁部分には、前後方向に延びる丸底の案内溝90が形成されている。この上下の案内溝90は、カシメ部材50の本体部54の上下の外周面に対して形状が整合するように内周面が形成され、収容凹部78の内周面と面一に接続されている。
【0044】
[皮下埋込型注入ポートセットの使用態様]
上述した構成の注入ポート1およびコネクタ2を備えるセット100の使用態様について説明する。図6Aは、注入ポート1の接続ポート14にコネクタ2を接続する前の状態を示す断面図であり、図6Bは、注入ポート1の接続ポート14にコネクタ2を接続した状態を示す断面図である。注入ポート1およびカテーテル3は、コネクタ2を用いて以下のようにして接続される。この接続手技は、注入ポート1を患者の皮下に埋め込む前、あるいは、外科手術により患者の皮下に埋め込む最中などに行われる。
【0045】
はじめに、使用者は患者体内から外部に露出するカテーテル3を適当な長さにカットする。その後、カテーテル3の一端部から操作部材52およびカシメ部材50の順序で挿通される。すなわち、カテーテル3の一端部は、操作部材52の前部分70の挿通孔76に挿通されて後部分74の後端から露出される。続いて、カテーテル3の一端部は、カシメ部材50の挿通孔56に前端から挿通されて後端から所定寸法だけ露出される。なお、これに替えて、操作部材52の収容凹部78にカシメ部材50を収容しておき、この状態で連通している挿通孔76,56に対してカテーテル3の一端部を一回の操作で挿通してもよい。カシメ部材50はカシメ構造として可撓片を採用しているため、材質、寸法等の自由度が高く、使用者はカシメ部材50をカテーテル3に外挿させやすい。
【0046】
次にカテーテル3の一端部を、注入ポート1の接続ポート14の接続管32に外嵌させる。カテーテル3は、その一端部が凸条部44を越えてポート基部材30の前端に至るまで接続管32に外嵌して押し込まれる。図6Aは、この状態でのセット100を表しており、一例として操作部材52の外にカシメ部材50が位置している様子を図示している。
【0047】
次に、図6Aの状態から操作部材52を後方へ、すなわち、注入ポート1に接近する方向へ移動するよう操作する。この操作により操作部材52が注入ポート1に近づくに従い、カシメ部材50は操作部材52の収容凹部78に収容されていき、操作部材52の作用部80が後方(第1方向)へ移動してカシメ部材50の可撓片58に近づく。操作部材52を更に後方へ操作すると、操作部材52の第1係合部84と注入ポート1の第1被係合部34とが互いに係合する。具体的には、第1被係合部34の第1被係合突起46が、第1係合部84の第1係合突起88を超えて奥へ収まることで、注入ポート1にコネクタ2が係止された係止状態となる。
【0048】
このような係止状態になるとき、操作部材52の内部では、カシメ部材50によるカテーテル3に対するカシメが行われる。詳述すると、係止状態へ至る過程で、操作部材52が第1方向へ向かうに従って作用部80がカシメ部材50の可撓片58に近づき、互いに当接する。更に操作部材52を第1方向へ操作すると、カシメ部材50はその後端がポート基部材30の前端に当接して後退不能となり、作用部80の押圧面82と可撓片58の被押圧面66との接触圧力が増大する。
【0049】
ここで、可撓片58に対する第1方向への当接圧力は、被押圧面66又は押圧面82が傾斜面を成すゆえ、効率的に径方向の中心線C1に近づく第2方向へ可撓片58を押圧する圧力となる。その結果、可撓片58は第2方向へ変形し、カテーテル3を外方から押圧して接続管32に密着させる。なお、ポート基部材30の前端から接続管32の凸条部44までの寸法よりも、カシメ部材50の前後方向の寸法の方が小さい。従って、図6Bに示すように係止状態において、可撓片58は凸条部44よりも後方に位置している。よって、カテーテル3は凸条部44よりもポート基部材30に近い後方位置にて可撓片58によりカシメられる。
【0050】
このように、操作部材52が後方(第1方向)へ操作されることで、第1係合部84が第1被係合部34と係合し、かつ、作用部80がカシメ部材50の可撓片58を第2方向へ変形させる(カシメさせる)。その結果、コネクタ2は注入ポート1に係止(接続)される。
【0051】
[作用および効果]
以上の説明から分かるように、コネクタ2を用いたセット100では、カテーテル3を接続管32に対して容易かつ強固に接続することができる。また、カシメ部材50によりカテーテル3を押圧するとき、カテーテル3の外面が擦れるのを抑制できるため、壁厚の小さいカテーテル3を用いる場合であってもその損傷を抑制できる。換言すれば、壁厚を小さくすることで内径をより大きくしたカテーテル3を用いることができる。
【0052】
また、注入ポート1はベースハウジング22の底面を体側にして蓋体12を外側にして患者の皮下に埋め込まれて使用される。そして、本実施の形態に係るセット100は、患者の体内でカテーテル3の接続作業をする場合の操作方向(図6Bの第1方向)が、患者に向かう方向ではない。従って、皮下埋込後のカテーテル接続作業において、患者への負担を軽減することができる。
【0053】
また、図6Bに示すように、操作部材52が注入ポート1に係止された状態で、凸条部44と可撓片58とは中心線C1に沿った方向の位置が互いに異なっており、特に本実施の形態の構成では、可撓片58が凸条部44よりも後方(すなわち、カテーテル3の一端部側)に位置している。これにより、カテーテル3が凸条部44および可撓片58により異なる2か所でシールされるため、シール性が向上すると共にカテーテル3の抜け止め効果も向上する。
【0054】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る皮下埋込型注入ポート101用のコネクタ102を含む皮下埋込型注入ポートセット200について説明する。なお、実施の形態2に係るセット200を構成する注入ポート101は、実施の形態1で説明した注入ポート1と同様の構成であるため、その説明は省略する。ただし、説明の便宜上、実施の形態1の注入ポート1が備える「第1被係合部34」および「第1被係止突起46」は、本実施の形態2では「第2被係合部34」および「第3被係止突起46」とそれぞれ称する。
【0055】
一方、実施の形態2に係るコネクタ102は、実施の形態1で説明したコネクタ2とは構成が異なっている。このコネクタ102は、カシメ部材110および操作部材112を備えている。図7Aはカシメ部材110の斜視図であり、図7Bはカシメ部材110を図7AのVIIB-VIIB線で切断したときの断面図である。図8Aは操作部材112の斜視図であり、図8Bは操作部材112を図8AのVIIIB-VIIIB線で切断したときの断面図である。
【0056】
図7Aおよび図7Bに示すように、カシメ部材110は、前後方向に直交する断面外形が長円形状を成す本体部114を有している。本体部114には、接続管32に外嵌した状態のカテーテル3に挿通される挿通孔116が中心線C3に沿うようにして形成されている。挿通孔116の孔径は、カテーテル3の外径とほぼ同一寸法である。
【0057】
本体部114の内部には、接続ポート14の第2被係合部34(図1参照)と係合する第2係合部118が形成されている。この第2係合部118は、実施の形態1に係るコネクタ2の操作部材52に形成された第1係合部84と同様の構成になっている。具体的には、第2係合部118は、左右一対の第2被係合部34を収容する横長の直方体形状を成す第2係合空間120を有する。また、第2係合空間120を画定する左右の内壁部分には、左右の中央方向(中心線C3に近づく方向)に突出した第3係止突起122が形成されている。また、第2係合空間120を画定する上下の内壁部分には、前後方向に延びる丸底の案内溝124が形成されている。この上下の案内溝124は挿通孔116の一部を成し、接続ポート14のポート基部材30(図1参照)の上下の外周面に対して形状が整合するように内周面が形成されている。
【0058】
図7Aに示すように、本体部114の一端部(前端部)からは、中心線C3に沿って前方へカシメ部126が延設されている。カシメ部126は前後方向に軸心を有する円筒状を成し、その内部空間は上述の挿通孔116の一部を成している。すなわち、カシメ部126の軸心は本体部114の中心線C3と一致し、かつ、挿通孔116は、本体部114およびカシメ部126の両方にわたって形成されている。このカシメ部126は、操作部材112に係合される第3被係合部128と、挿通孔116の径方向に可撓である可撓片130とを有している。
【0059】
第3被係合部128は内部に挿通孔116が通る円筒状を成し、その外周面132には雄ネジ134が形成されている。雄ネジ134は凸条を成すと共に外周面132に沿ってほぼ1周分だけ周回して形成されている。
【0060】
可撓片130は、第3被係合部128の一端部(前端部)から中心線C3に沿って前方へ延びている。可撓片130は、第3被係合部128の前端部においてその周方向に複数設けられており、図7Aでは4つ設けられた構成を例示している。また、隣り合う可撓片130の間には、これら2つの可撓片130を隔てるスリット136が形成されている。可撓片130は、円筒状部材に対してその前端からスリット136を周方向等間隔に形成するようにして構成されている。なお、本実施の形態2に示す可撓片130の構成は一例であり、これに替えて、例えば実施の形態1の可撓片58と同様の構成を採用してもよい。
【0061】
図8Aおよび図8Bに示すように、操作部材112は、中心線C4が前後方向を向く貫通孔を有する本体部140を有する。本体部140は、前部分142および後部分144から成る。前部分142は円筒状を成し、内部にはカテーテル3が挿通する挿通孔146が形成されている。挿通孔146の孔径は、カテーテル3の外径とほぼ同一寸法である。
【0062】
後部分144の外形は、その前部については前部分142と同様の円筒状であるが、後方へ向かうに従って左右方向の寸法が大きくなり、後部は中心線C4に直交する横断面が長円形状を成している。後部分144の内部には、中心線C4と同軸を成す横断面円形の孔である収容凹部148が形成されている。収容凹部148は、カシメ部材110のカシメ部126(第3被係合部128および可撓片130)を収容可能であり、収容凹部148の内径はカシメ部材110の外径とほぼ同一寸法である。
【0063】
収容凹部148の後部には、第3被係合部128に係合する第3係合部150が形成されている。第3係合部150は、収容凹部148の内周面152に形成された雌ネジ154を有している。この雌ネジ154が第3被係合部128の雄ネジ134と螺合する。すなわち、中心線C3,C4を一致させるようにして第3被係合部128を収容凹部148に内挿し、一方を他方に対して周回させると、雄ネジ134と雌ネジ154とが螺合する。その結果、操作部材112はカシメ部材110に近づくよう後方(第1方向)へ移動し、両者は接続される。
【0064】
また、収容凹部148の前部には押圧面158を有する作用部156が形成されている。すなわち、収容凹部148の前部内周面は前方へ向かうに従って縮径した傾斜面を成し、当該傾斜面は押圧面158を成している。このような押圧面158を有する作用部156は、後述するように、カシメ部材110の可撓片130を変形させる。
【0065】
[皮下埋込型注入ポートセットの使用態様]
上述した構成の注入ポート101およびコネクタ102を備えるセット200の使用態様について説明する。図9Aは、注入ポート101の接続ポート14にコネクタ102を接続する前の状態を示す断面図であり、図9Bは、注入ポート101の接続ポート14にコネクタ102を接続した状態を示す断面図である。注入ポート101およびカテーテル3は、コネクタ102を用いて以下のようにして接続される。この接続手技は、注入ポート101を患者の皮下に埋め込む前、あるいは、外科手術により患者の皮下に埋め込む最中などに行われる。
【0066】
はじめに、カテーテル3の一端部が、操作部材112およびカシメ部材110に、この順序で挿通される。すなわち、カテーテル3の一端部は、操作部材112の前部分142の挿通孔146に挿通されて後部分144の後端から露出される。続いて、カテーテル3の一端部は、カシメ部材110の挿通孔116に前端から挿通されて後端から所定寸法だけ露出される。
【0067】
次にカテーテル3の一端部を、注入ポート101の接続ポート14の接続管32に外嵌させる。カテーテル3は、その一端部が凸条部44を越えてポート基部材30の前端に至るまで接続管32に外嵌して押し込まれる。カテーテル3の一端部が接続管32に外嵌すると、カシメ部材110が注入ポート101に接続される。すなわち、カシメ部材110の第2係合部118が注入ポート101の第2被係合部34に係合される。図9Aは、この状態でのセット200を表している。
【0068】
次に、図9Aの状態から操作部材112を後方へ、すなわち、注入ポート101に接近する方向へ移動するよう操作する。具体的には、前述したように操作部材112をカシメ部材110に対して周方向へ回動させることで、それぞれの雄ネジ134と雌ネジ152とが螺合し、操作部材112は後方(第1方向)へ移動するよう操作される。この操作により操作部材112が後方の注入ポート101に近づくに従い、カシメ部材110のカシメ部126は操作部材112の収容凹部148に収容されていき、操作部材112の作用部156が後方(第1方向)へ移動してカシメ部126の可撓片130に近づく。操作部材112を更に後方へ操作すると、第3係合部150と第3被係合部128とが互いに確実に係合し、注入ポート101にコネクタ102(カシメ部材110および操作部材112)が係止された係止状態となる。
【0069】
このような係止状態になるとき、操作部材112の内部では、カシメ部材110によるカテーテル3に対するカシメが行われる。詳述すると、係止状態へ至る過程で、操作部材112が第1方向へ向かうに従って作用部156がカシメ部材110の可撓片130に近づき、互いに当接する。更に操作部材112を第1方向へ操作すると、作用部156の押圧面158と可撓片130の先端部との接触圧力が増大する。
【0070】
ここで、作用部156の押圧面158が傾斜面を成すゆえ、可撓片130に対する第1方向への当接圧力は、効率的に径方向の中心線C3に近づく第2方向へ可撓片130を押圧する圧力となる。その結果、可撓片130は第2方向へ変形し、カテーテル3を外方から押圧して接続管32に密着させる。
【0071】
このように、操作部材112が後方(第1方向)へ操作されることで、第3係合部150が第3被係合部128と係合し、かつ、作用部156がカシメ部材110の可撓片130を第2方向へ変形させる(カシメさせる)。その結果、コネクタ102は注入ポート101に係止(接続)される。また、カシメさせる際に、雄ネジ134と雌ネジ154を利用するため、第一実施形態に比してかしめに大きな力が不要となる。
【0072】
[作用および効果]
以上の説明から分かるように、コネクタ102を用いたセット200では、カテーテル3を接続管32に対して容易かつ強固に接続することができる。また、カシメ部材110によりカテーテル3を押圧するとき、カテーテル3の外面が擦れるのを抑制できるため、壁厚の小さいカテーテル3を用いる場合であってもその損傷を抑制できる。換言すれば、壁厚を小さくすることで内径をより大きくしたカテーテル3を用いることができる。さらに、本実施の形態に係るセット200は、患者の体内でカテーテル3の接続作業をする場合の操作方向(図9Bの第1方向)が、患者に向かう方向ではない。従って、皮下埋込後のカテーテル接続作業において、患者への負担を軽減することができる。
【0073】
また、図9A図9Bに示すように、カシメ部材110の可撓片130の先端部と凸条部44とは中心線C1に沿った方向の位置が互いに異なっており、特に本実施の形態の構成では、可撓片130の先端部より凸条部44の方が後方(すなわち、カテーテル3の一端部側)に位置している。これにより、カテーテル3が凸条部44および可撓片130により異なる2か所でシールされるため、シール性が向上すると共にカテーテル3の抜け止め効果も向上する。
【0074】
(変形例)
上述した実施の形態1,2において説明した各形態は好適な構成の例であるが、本開示はこれに限定されず、他の様々の変形例を採用し得る。例えば、第二実施形態のおける雄ネジ134と雌ネジ154は逆であってもよいし、雄ネジ134がカシメ部材ではなく、接続ポートに設けられてもよい。
【0075】
図10は、実施の形態1,2に適用しうる変形例に係る構成を説明するための図面であり、注入ポート1(注入ポート101)の接続ポート14およびカテーテル3を拡大して示している。
【0076】
図10に示すように、接続ポート14は、ポート基部材30の前端から延びる接続管32を有し、接続管32の前部の外周面32aには、拡径方向への突起が軸心回りを周回するようにして形成された凸条部44が設けられている。本変形例では、カテーテル3の内径をD1、凸条部44の外径をD2、接続管32における凸条部44以外の管部分32b(特に凸条部44の前後の近傍部分)の外径をD3とした場合に、接続管32はD2>D1>D3を満たす寸法となるよう構成されている。
【0077】
これにより、カテーテル3と接続管32との間の液密性(シール性)を向上できると共に、カテーテル3と接続管32との接続時における凸条部44の干渉を最小限に抑えることができ、カテーテル3に接続管32を挿入しやすくなる。従って、壁厚が小さくプッシャビリティの低いカテーテル3であっても、接続管32との接続作業を比較的容易に行うことができる。また、カテーテル3が髄用のカテーテルである場合、一般的な血管用のカテーテルよりも細く、かつ、編組入りゆえ柔軟性が乏しいが、接続管32を上記D3>D1>D2を満たすよう構成することで、シール性を確保しつつ接続作業がしやすくなる。
【0078】
なお、一例として図10に示すカテーテル3は、外径として4Fr以下(髄用の場合、好ましくは1.5[mm]以下)、内径(D1)として1.5[mm]以下の寸法を採用することができる。このようなカテーテル3の好適な例として、カテーテル3の外径が1.20±0.03[mm]、内径(D1)が0.50±0.03[mm]のものを挙げることができる。
【0079】
また、一例として図10に示す接続管32は、凸条部44の外径(D2)とカテーテル3の内径(D1)との差(D2-D1)として、0<D2-D1≦0.1[mm]の寸法を採用できる。また、管部分32bの外径(D3)とカテーテル3の内径(D1)との差(D3-D1)として、D3-D1≦0.09[mm](0未満も含む)の寸法、より好ましくは-0.05≦D3-D1≦+0.05[mm]の寸法を採用できる。さらに、凸条部44と外周面32aとの段差(H1)として、H1≦0.1[mm]の寸法を採用できる。このような接続管32の好適な例として、管部分32bの外径(D3)が0.45[mm]、凸条部44の外径(D2)が0.55±0.03[mm]、凸条部44と外周面32aとの段差(H1)が0.05±0.03[mm]のものを挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示は、医療分野において患者の皮膚下に埋め込まれて体内へ薬液を注入する際に用いられる皮下埋込型注入ポート用のコネクタおよび皮下埋込型注入ポートセットに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 皮下埋込型注入ポート
2 コネクタ
3 カテーテル
10 ハウジング
14 接続ポート
34 第1被係合部,第2被係合部
50,110 カシメ部材
52,112 操作部材
56,116 挿通孔
58,130 可撓片
78,148 収容凹部
80,156 作用部
84 第1係合部
118 第2係合部
128 第3被係合部
150 第3係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10