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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178788
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】入力保護回路及び電気機器
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
G01R19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091686
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮内 洋一
【テーマコード(参考)】
2G035
【Fターム(参考)】
2G035AB01
2G035AC01
2G035AC16
2G035AD02
2G035AD04
2G035AD10
2G035AD20
2G035AD56
(57)【要約】
【課題】入力保護回路は、入力電圧が上限電圧よりも大きい場合に入力電圧を上限電圧以下の電圧とすることと、入力電圧が上限電圧以下かつ下限電圧以上の場合に入力電圧に与える誤差を低減することとを両立する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る入力保護回路は、入力電圧に上限電圧が定められている保護対象回路と、入力電圧を出力する出力装置とを電気的に接続する接続線上に備えられる。入力保護回路は、接続線上に備えられる抵抗部と、抵抗部と保護対象回路との間の接続線上の第1接続点と上限電圧よりも電圧が小さい第1逃し先部とに接続され、上限電圧よりも大きい電圧が入力されることから保護対象回路を保護する第1保護部と、を備える。第1保護部は、入力電圧が上限電圧よりも大きい場合、抵抗部に電流を流すことで入力電圧を上限電圧以下に低下させ、上限電圧以下の場合、抵抗部に電流を流さない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧に上限電圧が定められている保護対象回路と、前記入力電圧を出力する出力装置とを電気的に接続する接続線上に備えられる入力保護回路であって、
前記接続線上に備えられる抵抗部と、
前記抵抗部と前記保護対象回路との間の前記接続線上の第1接続点と前記上限電圧よりも電圧が小さい第1逃し先部とに接続され、前記上限電圧よりも大きい電圧が入力されることから前記保護対象回路を保護する第1保護部と、を備え、
前記第1保護部は、
前記入力電圧が前記上限電圧よりも大きい場合、前記抵抗部に電流を流すことで前記入力電圧を前記上限電圧以下に低下させ、
前記入力電圧が前記上限電圧以下の場合、前記抵抗部に電流を流さない、
入力保護回路。
【請求項2】
前記第1保護部は、第1端子と第2端子と第3端子とを備える第1トランジスタを含み、
前記第1トランジスタの前記第1端子は前記第1接続点に接続され、かつ、前記第1トランジスタの前記第2端子は前記第1逃し先部に接続される、請求項1に記載の入力保護回路。
【請求項3】
前記第1保護部は、第1入力端子が前記第1接続点に接続され、かつ、第2入力端子が前記上限電圧と等しい電圧を出力する参照電源に接続され、かつ、出力端子が前記第3端子に接続される第1オペアンプを含む、請求項2に記載の入力保護回路。
【請求項4】
前記保護対象回路に接続される前記出力装置が複数ある場合、
前記第1接続点と前記第1入力端子との間に第1ダイオードをさらに備え、
前記第2入力端子は、前記参照電源のかわりに、前記保護対象回路の基準電源に接続される、請求項3に記載の入力保護回路。
【請求項5】
第1端が前記基準電源に接続され、かつ、第2端が前記第1入力端子に接続される電圧保持部をさらに備える、請求項4に記載の入力保護回路
【請求項6】
前記保護対象回路に入力できる電圧に下限電圧が定められている場合、
前記抵抗部と前記保護対象回路との間の前記接続線上の第2接続点と前記下限電圧よりも電圧が大きい第2逃し先部とに接続され、前記下限電圧よりも小さい電圧が入力されることから前記保護対象回路を保護する第2保護部をさらに備え、
前記第2保護部は、
前記入力電圧が前記下限電圧よりも小さい場合、前記抵抗部に電流を流すことで前記入力電圧を前記下限電圧以上に上昇させ、
前記入力電圧が前記下限電圧以上の場合、前記抵抗部に電流を流さない、
請求項1から請求項5のいずれか1つの請求項に記載の入力保護回路。
【請求項7】
入力電圧に上限電圧が定められている保護対象回路と、前記入力電圧を出力する出力装置とを電気的に接続する接続線上に備えられる入力保護回路を備える電気機器であって、
前記接続線上に備えられる抵抗部と、
前記抵抗部と前記保護対象回路との間の前記接続線上の第1接続点及び前記上限電圧よりも小さい電圧である第1逃し先部に接続され、前記上限電圧よりも大きい電圧が入力されることから前記保護対象回路を保護する第1保護部と、を備え、
前記第1保護部は、
前記入力電圧が前記上限電圧よりも大きい場合、前記抵抗部に電流を流すことで前記
入力電圧を前記上限電圧以下に低下させ、
前記入力電圧が前記上限電圧以下の場合、前記抵抗部に電流を流さない、
電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入力保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力できる電圧に上限電圧が定められている保護対象回路と、保護対象回路に入力される入力電圧を出力する出力装置との間に備えられ、入力電圧が上限電圧よりも大きい場合に上限電圧以下の電圧を出力することで保護対象回路を保護する入力保護回路に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5―70016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、入力保護回路は、入力電圧が上限電圧よりも大きい場合に入力電圧を上限電圧以下の電圧とすることで保護対象回路を保護することと、入力電圧が上限電圧以下かつ下限電圧以上の場合に入力電圧に与える誤差を低減することとを両立することが、重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態に係る入力保護回路は、入力電圧に上限電圧が定められている保護対象回路と、前記入力電圧を出力する出力装置とを電気的に接続する接続線上に備えられる。前記入力保護回路は、前記接続線上に備えられる抵抗部を備える。前記入力保護回路は、前記抵抗部と前記保護対象回路との間の前記接続線上の第1接続点と前記上限電圧よりも電圧が小さい第1逃し先部とに接続され、前記上限電圧よりも大きい電圧が入力されることから前記保護対象回路を保護する第1保護部を備える。前記第1保護部は、前記入力電圧が前記上限電圧よりも大きい場合、前記抵抗部に電流を流すことで前記入力電圧を前記上限電圧以下に低下させる。前記第1保護部は、前記入力電圧が前記上限電圧以下の場合、前記抵抗部に電流を流さない。
【0006】
本開示の一実施形態に係る電気機器は、入力電圧に上限電圧が定められている保護対象回路と、前記入力電圧を出力する出力装置とを電気的に接続する接続線上に備えられる入力保護回路を備える。前記電気機器は、前記接続線上に備えられる抵抗部を備える。前記電気機器は、前記抵抗部と前記保護対象回路との間の前記接続線上の第1接続点と前記上限電圧よりも電圧が小さい第1逃し先部とに接続され、前記上限電圧よりも大きい電圧が入力されることから前記保護対象回路を保護する第1保護部を備える。前記第1保護部は、前記入力電圧が前記上限電圧よりも大きい場合、前記抵抗部に電流を流すことで前記入力電圧を前記上限電圧以下に低下させる。前記第1保護部は、前記入力電圧が前記上限電圧以下の場合、前記抵抗部に電流を流さない。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、入力電圧が上限電圧よりも大きい場合に上限電圧以下の電圧を出力することと、入力電圧が上限電圧以下の場合に入力電圧に与える誤差を低減することとができる入力保護回路を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1に係るブロック図である。
図2図2は、実施形態1に係る入力保護回路のブロック図である。
図3図3は、実施形態1に係る第1保護部のブロック図である。
図4図4は、実施形態1に係る第1保護部のブロック図である。
図5図5は、実施形態1に係る第2保護部のブロック図である。
図6図6は、実施形態1に係る第2保護部のブロック図である。
図7図7は、実施形態1に係る出力装置の出力電圧と保護対象回路の入力電圧との関係を示す図である。
図8図8は、実施形態2に係る入力保護回路のブロック図である。
図9図9は、実施形態2に係る第1保護部のブロック図である。
図10図10は、実施形態2に係る第2保護部のブロック図である。
図11図11は、実施形態3に係る第1保護部のブロック図である。
図12図12は、実施形態3に係る第2保護部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものである。
【0010】
なお、以下の説明では、電圧及び電流は正負の符号を含めたものである。それ以外の数値は、正負の符号を含まないものである。
【0011】
[実施形態1]
(入力保護回路10)
入力保護回路10は、出力装置30と保護対象回路20との間に接続される。図1は、出力装置30と入力保護回路10と保護対象回路20との関係を図示したブロック図である。
【0012】
入力保護回路10は、抵抗部110と第1保護部120と第2保護部130とを備える。図2は、入力保護回路10を図示したブロック図である。
【0013】
入力保護回路10の動作については、第1保護部120及び第2保護部130の説明において、説明する。
【0014】
入力保護回路10は、保護対象回路20が備えられる電気機器1に備えられる。電気機器1は、電気をエネルギー源として動作する機器である。電気機器1は、例えば、ガス流量計、ガス温度計、又はガス圧力計等のガス関連の計測機器であってもよい。電気機器1は、例えば、燃料電池装置に関する装置であってもよい。電気機器1は、燃料電池装置であってもよく、燃料電池装置に含まれる装置であってもよい。
【0015】
また、入力保護回路10は、出力装置30を備える電気機器1と同一の電気機器1に備えられてもよい。また、入力保護回路10は、保護対象回路20を備える電気機器1又は出力装置30を備える電気機器1とは異なる電気機器1に備えられてもよい。また、入力保護回路10と保護対象回路20と出力装置30とは、いずれも同じ電気機器1に備えられてもよい。
【0016】
[保護対象回路20]
保護対象回路20は、保護対象回路20に入力される電圧(以下、入力電圧Vinという。)に上限電圧Vulと下限電圧Vllが設定されている回路である。上限電圧Vulは、入力電圧Vinの上限となる電圧である。また、下限電圧Vllは、入力電圧Vin
の下限となる電圧である。例えば、保護対象回路20は、集積回路又は半導体回路であってもよい。保護対象回路20は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。保護対象回路20は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)ロジック回路、アナログーデジタル変換(ADC:Analog-to-Digital Converter)回路、TTL(Transistor-Transistor Logic)回路等であってもよい。
【0017】
ここで、入力保護回路10による保護対象回路20の保護とは、後述する出力装置30が出力する電圧に関わらず、保護対象回路20に上限電圧Vulよりも大きい電圧が入力されることを防ぐこと、及び、保護対象回路20に下限電圧Vllよりも小さい電圧が入力されることを防ぐことをいう。言い換えると、入力保護回路10による保護対象回路20の保護とは、出力装置30が出力する電圧に関わらず、保護対象回路20に入力される電圧を、上限電圧Vul以下かつ下限電圧Vll以上に保つことを意味してもよい。例えば、出力装置30が上限電圧Vulよりも大きい電圧を出力した場合に、出力装置30と保護対象回路20とに接続される入力保護回路10が上限電圧Vulを保護対象回路20に入力することで、保護対象回路20の保護が実現されてもよい。例えば、出力装置30が下限電圧Vllよりも小さい電圧を出力した場合に、出力装置30と保護対象回路20とに接続される入力保護回路10が下限電圧Vllを保護対象回路20に入力することで、保護対象回路20の保護が実現されてもよい。例えば、出力装置30が上限電圧Vul以下かつ下限電圧Vll以上の電圧を出力した場合に、出力装置30と保護対象回路20とに接続される入力保護回路10が出力装置30の出力した電圧を保護対象回路20に入力することで、保護対象回路20の保護が実現されてもよい。
【0018】
保護対象回路20は、上側基準電源21と下側基準電源22とに接続される。上限電圧Vulは、上側基準電源21に基づいて設定されてもよい。例えば、所定の上側電圧差ΔVuを、上側基準電源21の電圧Vddに足した電圧を上限電圧Vulとしてもよい。例えば、所定の上側電圧差ΔVuは、0.3Vであってもよく、0.6Vであってもよい。下限電圧Vllは、下側基準電源22に基づいて設定されてもよい。例えば、所定の下側電圧差ΔVlを、下側基準電源22の電圧Vssから引いた電圧を下限電圧Vllとしてもよい。例えば、所定の下側電圧差ΔVlは、0.3Vであってもよく、0.6Vであってもよい。
【0019】
上側基準電源21は、電圧Vddを出力する定電圧電源である。上側基準電源21は、保護対象回路20の正電源であってもよい。電圧Vddは、例えば、3.3V又は5.0V等であってもよい。保護対象回路20が、片電源の回路の場合、上側基準電源21は、
グラウンドの電圧を基準として、3.3V又は5.0V等の電圧を出力する電源であって
もよい。保護対象回路20が、両電源の回路の場合も、上側基準電源21は、グラウンドの電圧を基準として、3.3V又は5.0V等の電圧を出力する電源であってもよい。な
お、本開示では、上側基準電源21の電圧を電圧Vddと表記しているが、電圧Vccと表現してもよい。
【0020】
下側基準電源22は、電圧Vssを出力する定電圧電源である。下側基準電源22は、保護対象回路20の負電源であってもよい。電圧Vssは、例えば、0V又は-0.3V等であってもよい。この場合、下側基準電源22はグラウンドであってもよい。保護対象回路20が、片電源の回路の場合、下側基準電源22は、グラウンドであってもよい。保護対象回路20が、両電源の回路の場合、下側基準電源22は、定電圧電源であってもよい。なお、本開示では、下側基準電源22の電圧を電圧Vssと表記しているが、電圧Veeと表現してもよい。
【0021】
上側基準電源21は、保護対象回路20が備えられる電気機器1に備えられてもよく、
保護対象回路20が備えられる電気機器1と異なる電気機器1に備えられてもよい。下側基準電源22は、保護対象回路20が備えられる電気機器1に備えられてもよく、保護対象回路20が備えられる電気機器1と異なる電気機器1に備えられてもよい。上側基準電源21と下側基準電源22とは、同一の電気機器1に備えられてもよく、異なる電気機器1にそれぞれ備えられてもよい。
【0022】
[出力装置30]
出力装置30は、保護対象回路20に入力される電圧を出力する装置である。出力装置30は、出力装置30が計測した結果を電気信号として保護対象回路20に出力する装置であってもよい。
【0023】
例えば、ガス流量計、ガス温度計、又はガス圧力計等のガス関連の計測機器であってもよい。この場合、出力装置30が出力する電圧は-20Vから20Vの間の電圧であってもよい。例えば、電流計、電圧計、又は電力計等の電気関連の計測機器であってもよい。この場合、出力装置30が出力する電圧は―5Vから5Vの間の電圧であってもよい。
【0024】
出力装置30は、燃料電池装置に関する装置であってもよい。出力装置30は、燃料電池装置であってもよく、燃料電池装置に含まれる装置であってもよい。また、出力装置30は、電気機器1に備えられてもよい。
【0025】
[第1逃し先部40]
第1逃し先部40は、上限電圧Vulよりも電圧が小さい。第1逃し先部40は、上限電圧Vulよりも小さい電圧を出力する電源であってもよい。また、第1逃し先部40は、グラウンド、又は、グラウンドに接続する接地端子であってもよい。第1逃し先部40は、第2逃し先部50と同一であってもよく、それぞれ独立していてもよい。
【0026】
[第2逃し先部50]
第2逃し先部50は、下限電圧Vllよりも電圧が大きい。第2逃し先部50は、下限電圧Vllよりも大きい電圧を出力する電源であってもよい。また、第2逃し先部50は、グラウンド、又は、グラウンドに接続する接地端子であってもよい。第2逃し先部50は、第1逃し先部40と同一であってもよく、それぞれ独立していてもよい。
【0027】
[入力保護回路10に含まれる部分]
[抵抗部110]
抵抗部110は、第1保護部120又は第2保護部130に電流が流れる場合に、第1保護部120又は第2保護部130に流れる電流によって電圧降下を起こすために用いられる。抵抗部110の動作は、後述する第1保護部120の動作の説明、及び、後述する第2保護部130の動作の説明の中で合わせて説明する。抵抗部110は、接続線L1上の出力装置30と接続点P1の間に位置する。
【0028】
接続線L1は、出力装置30と保護対象回路20を接続する線である。接続線L1は、例えば導線であってもよい。接続線L1上には、抵抗部110以外の電気素子などが接続されてもよい。
【0029】
抵抗部110は、電気抵抗である。電気抵抗は、金属、半導体、絶縁体、又はそれらの混合物であってもよい。電気抵抗は、チップ抵抗器、リード付抵抗器、又は巻線抵抗器であってもよい。電気抵抗は、イオン性液体であってもよい。
【0030】
[第1保護部120]
第1保護部120は、保護対象回路20を上限電圧Vulよりも大きい過電圧から保護
する。具体的には、第1保護部120は、出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合に入力電圧Vinが上限電圧Vulとなるように電流を流す。第1保護部120は、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合に電流を流さない。第1保護部120の動作の詳細は後述する。
【0031】
第1保護部120は、接続点P1で接続線L1に接続する。第1保護部120の一例を図3に示す。ただし、第1保護部120は図3の電気素子と装置の組合せに限定されるものではない。第1保護部120は、第1オペアンプ121と第1トランジスタ122と上側参照電源123とを備えてもよい。
【0032】
第1オペアンプ121は、第1入力端子が接続点P11に接続する。第1オペアンプ121は、第2入力端子が上限電圧Vulと等しい電圧を出力する上側参照電源123に接続する。第1オペアンプ121は、出力端子が第1トランジスタ122の第3端子に接続する。ここで、第1入力端子は、入力された電圧が反転されずに入力される端子である。第1入力端子は、非反転入力端子と呼ばれる端子であってもよい。第2入力端子は、入力された電圧が反転されて入力される端子である。第1入力端子は、反転入力端子と呼ばれる端子であってもよい。第1オペアンプ121は、両電源オペアンプ、片電源オペアンプ、又はRail―to―Railオペアンプであってもよい。
【0033】
第1オペアンプ121は、非反転入力端子に入力される電圧と反転入力端子に入力される電圧とに基づいて、出力端子から出力端子電圧Vop1を出力する。第1オペアンプ121は、非反転入力端子に入力される電圧と反転入力端子に入力される電圧とを比較して、出力端子から出力端子電圧Vop1を出力してもよい。第1オペアンプ121は、非反転入力端子に入力される電圧から反転入力端子に入力される電圧を引いた差分に増幅度A1を乗じた電圧を、出力端子電圧Vop1としてもよい。
【0034】
第1オペアンプ121は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧よりも大きい場合、出力端子電圧Vop1として正の電圧を出力してもよい。つまり、第1オペアンプ121は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧よりも大きい場合、出力端子電圧Vop1として0よりも大きい電圧を出力してもよい。この場合、第1オペアンプ121は、正電源端子に入力される電圧を出力端子電圧Vop1としてもよい。また、第1オペアンプ121は、正電源端子に入力される電圧から所定の電圧を引いた電圧を出力端子電圧Vop1としてもよい。
【0035】
また、第1オペアンプ121は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧よりも大きい場合、非反転入力端子に入力される電圧から反転入力端子に入力される電圧を引いた電圧に応じた電圧を、出力端子電圧Vop1として出力してもよい。この場合、出力端子電圧Vop1は、非反転入力端子に入力される電圧から反転入力端子に入力される電圧を引いた電圧に応じた電圧に、第1オペアンプ121に定められた増幅度A1を乗じた電圧を出力してもよい。
【0036】
第1オペアンプ121は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧と等しい場合、出力端子電圧Vop1として大きさが0の電圧を出力してもよい。大きさが0の電圧は、グラウンドの電圧と等しい電圧であってもよい。
【0037】
第1オペアンプ121は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧よりも小さい場合、出力端子電圧Vop1として負の電圧を出力してもよい。つまり、第1オペアンプ121は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧よりも小さい場合、出力端子電圧Vop1として0よりも小さい電圧を出力してもよい。この場合、第1オペアンプ121は、負電源端子に入力される電圧を出力端子電
圧Vop1としてもよい。また、第1オペアンプ121は、正電源端子に入力される電圧から所定の電圧を足した電圧を出力端子電圧Vop1としてもよい。
【0038】
また、第1オペアンプ121は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧よりも小さい場合、非反転入力端子に入力される電圧から反転入力端子に入力される電圧を引いた電圧に応じた電圧を、出力端子電圧Vop1として出力してもよい。この場合、出力端子電圧Vop1は、非反転入力端子に入力される電圧から反転入力端子に入力される電圧を引いた電圧に応じた電圧に、第1オペアンプ121に定められた増幅度A1を乗じた電圧を出力してもよい。
【0039】
第1オペアンプ121の非反転入力端子は、保護回路電圧Vprが入力されるように接続線L1と接続される。第1オペアンプ121の非反転入力端子は、接続点P1に接続されてもよい。
【0040】
第1オペアンプ121の反転入力端子は、上限電圧Vulが入力されるように接続される。第1オペアンプ121の反転入力端子は、上側参照電源123に接続されてもよい。この場合、上側参照電源123は、出力する電圧が上限電圧Vulである電源である。
【0041】
第1オペアンプ121の正電源端子は、0よりも大きい電圧を出力する電源に接続される。例えば、正電源端子は、10V、12V又は15V等の定電圧電源に接続されてもよい
【0042】
第1オペアンプ121の負電源端子は、0よりも小さい電圧を出力する電源に接続される。例えば、負電源端子は、8V、10V又は15V等の定電圧電源に接続されてもよい。
【0043】
第1トランジスタ122は、第1端子が接続点P1に、第2端子が第1逃し先部40に、第3端子が第1オペアンプ121の出力端子に接続される。第1トランジスタ122は、バイポーラトランジスタであってもよい。例えば、第1トランジスタ122は、npn型のバイポーラトランジスタであってもよい。また、第1トランジスタ122は、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)のようなユニポーラトランジスタであってもよい。例えば、第1トランジスタ122は、接合型FET又はMOS型FETであってもよい。また、第1トランジスタ122は、サイリスタ(SCR:Silicon Controrlled Rectifier)、ユニジャンクショントランジスタ(UJT:Uni-Junction Transitor)、プログラマブルユニジャンクショントランジスタ(PUT:Programable Uni-junction Transistor)、絶縁型ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Inslated Gate Bipolar Transistor)、フォトトランジスタ、又はフォトインターラプタトランジスタ等であってもよい。
【0044】
第1トランジスタ122の第1端子は、第1トランジスタ122の電流が流れる場合に、第1トランジスタ122の外部から電流が流れ込む端子である。例えば、第1トランジスタ122がnpn型のバイポーラトランジスタである場合、第1端子は、npn型のバイポーラトランジスタのコレクタである。例えば、第1トランジスタ122がnチャネルの電界効果トランジスタである場合、第1端子は、nチャネルの電界効果トランジスタのドレインである。例えば、第1トランジスタ122がサイリスタである場合、第1端子は、サイリスタのアノードである。
【0045】
第1トランジスタ122の第2端子は、第1トランジスタ122の電流が流れる場合に、第1トランジスタ122の外部から電流が流れ出す端子である。例えば、第1トランジスタ122がnpn型のバイポーラトランジスタである場合、第2端子は、npn型のバ
イポーラトランジスタのエミッタである。例えば、第1トランジスタ122がnチャネルの電界効果トランジスタである場合、第2端子は、nチャネルの電界効果トランジスタのソースである。例えば、第1トランジスタ122がサイリスタである場合、第2端子は、サイリスタのカソードである。
【0046】
第1トランジスタ122の第3端子は、第1トランジスタ122の電流が流れる場合に、第1トランジスタ122の外部から電流が流れ込む端子であり、第3端子に流れ込む電流量は第1端子に流れ込む電流量よりも小さい端子である。例えば、第1トランジスタ122がnpn型のバイポーラトランジスタである場合、第3端子は、npn型のバイポーラトランジスタのベースである。例えば、第1トランジスタ122がnチャネルの電界効果トランジスタである場合、第3端子は、nチャネルの電界効果トランジスタのゲートである。例えば、第1トランジスタ122がサイリスタである場合、第3端子は、サイリスタのゲートである。
【0047】
例えば、第1トランジスタ122がnpn型のバイポーラトランジスタである場合、第1トランジスタ122のコレクタは接続点P1に接続されてもよい。第1トランジスタ122のベースは、第1オペアンプ121の出力端子に接続されてもよい。第1トランジスタ122のエミッタはグラウンドに接続されてもよい。
【0048】
例えば、第1トランジスタ122がnチャネルのMOS型FETである場合、第1トランジスタ122のドレインは接続点P1に接続されてもよい。第1トランジスタ122のゲートは、第1オペアンプ121の出力端子に接続されてもよい。第1トランジスタ122のソースは、上限電圧Vulよりも電圧の小さい第1逃し先部40に接続されてもよい。例えば、第1逃し先部40は、グラウンド又は保護対象回路20の下側基準電源22であってもよい。
【0049】
第1トランジスタ122がnpn型のバイポーラトランジスタである場合、第1トランジスタ122のベースに流れこむ電流Ib1の大きさに応じて、第1トランジスタ122のコレクタと第1トランジスタ122のエミッタの間に電流Ice1を流すことができる。電流Ice1の大きさは、電流Ib1大きさに第1トランジスタ122に定められた電流増幅率hfe1を乗じた大きさであってもよい。第1トランジスタ122は、第1トランジスタ122のベースに電流Ib1が流れこんでいる間だけ、電流Ice1を流してもよい。電流Ice1は、出力装置30から、抵抗部110及び第1トランジスタ122を介してグラウンドに流れてもよい。電流Ice1は、抵抗部110で電圧降下を生じることで、保護回路電圧Vprを出力電圧Vxに対して下降させてもよい。
【0050】
第1トランジスタ122がnpn型のバイポーラトランジスタである場合、入力保護回路10は、図4のように、第1オペアンプ121の出力端子と第1トランジスタ122のベースとの間に第1ベース抵抗部124をさらに備えてもよい。第1ベース抵抗部124を備えることで、第1トランジスタ122の故障を低減することができる。
【0051】
第1ベース抵抗部124がない場合、第1オペアンプ121の出力端子と第1トランジスタ122のベースとが導線で接続されることになる。このため、第1オペアンプ121の出力端子電圧Vop1が大きいと、第1トランジスタ122のベースに流れる電流が大きくなりすぎて、第1トランジスタ122の故障を引き起こす場合があるからである。
【0052】
第1トランジスタ122がnpn型のバイポーラトランジスタである場合、入力保護回路10は、図4のように、第1トランジスタ122のベースと第1トランジスタ122のエミッタとの間に第1ベース・エミッタ間抵抗部125をさらに備えてもよい。第1ベース・エミッタ間抵抗部125を備えることで、第1トランジスタ122の誤作動を低減す
ることができる。
【0053】
第1オペアンプ121からのノイズによる電流、又は、第1トランジスタ122のコレクタから第1トランジスタ122のベースへの漏れ電流等の影響により、第1トランジスタ122のベースには、電流が流れてしまう場合がある。このような電流が第1トランジスタ122のベースに流れた結果、第1トランジスタ122のコレクタと第1トランジスタ122のエミッタの間に電流Ice1が流れてしまうと、抵抗部110で電圧降下が生じることになる。この場合、出力装置30の出力電圧Vxと保護対象回路20の入力電圧Vinとの間に、電圧降下分だけの誤差が生じてしまう。
【0054】
ここで、第1トランジスタ122のベースと第1トランジスタ122のエミッタとの間に第1ベース・エミッタ間抵抗部125を備えることで、第1オペアンプ121からのノイズによる電流、又は、第1トランジスタ122のコレクタから第1トランジスタ122のベースへの漏れ電流等を第1ベース・エミッタ間抵抗部125に流すことで、第1トランジスタ122の誤作動を低減することができる。
【0055】
[第1保護部120の動作]
ここでは、第1保護部120の動作について説明する。また、入力保護回路10の一例として図3と同じ回路を用いて説明する。加えて、説明の簡単のために、第1逃し先部40がグラウンドであるとして説明する。
【0056】
以下では、保護対象回路20が電圧駆動回路である場合を例に説明する。保護対象回路20が電圧駆動回路である場合、定常状態において、保護対象回路20には電流が流れないものであってもよい。または、保護対象回路20が電圧駆動回路である場合、定常状態において、保護対象回路20には電流が無視できるほど小さいものであってもよい。
【0057】
出力装置30の出力電圧Vxが変化した場合を考える。変化する前の出力電圧Vxと変化した後の出力電圧Vxの組合せで4つのパターンに分けて説明する。具体的には、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合と、出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合で場合を分ける。また、上限電圧Vul以下の電圧を電圧V1及び電圧V1´とする。一方で、上限電圧Vulよりも大きい電圧を電圧V2及び電圧V2´とする。
【0058】
(1.変化する前の出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合)
出力電圧Vxが変化する前の出力装置30の出力電圧Vxが電圧V1であった場合を説明する。
【0059】
(1.1.変化した後の出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合)
出力電圧Vxが変化した後の出力装置30の出力電圧Vxが電圧V1´となった場合を説明する。つまり、出力装置30の出力電圧Vxが、上限電圧Vul以下の電圧V1から、上限電圧Vul以下の電圧V1´となった場合を説明する。
【0060】
この場合、出力電圧Vxが電圧V1´に変化した瞬間から保護回路電圧Vprは、電圧V1´に向けて変化する。電圧V1´が電圧V1より小さい場合、保護回路電圧Vprは、電圧V1から電圧V1´に向けて下降していく。一方で、電圧V1´が電圧V1より大きい場合、保護回路電圧Vprは、電圧V1から電圧V1´に向けて上昇していく。
【0061】
ここで、保護回路電圧Vprが電圧V1から電圧V1´に向けて変化する間、保護回路電圧Vprは常に上限電圧Vul以下の電圧である。したがって、第1オペアンプ121の非反転入力端子に入力される電圧は上限電圧Vul以下である。一方で、第1オペアンプ121の反転入力端子に入力される電圧は上限電圧Vulである。この場合、第1オペ
アンプ121の出力端子電圧Vop1は0以下となる。
【0062】
第1オペアンプ121の出力端子電圧Vop1が0以下である場合、第1トランジスタ122のベースには電流が流れこまない。言い換えると、第1オペアンプ121の出力端子から第1トランジスタ122のベースに向けて電流が流れない。
【0063】
ここで、第1オペアンプ121はnpn型トランジスタであるため、第1トランジスタ122のベースに電流が流れる場合に、第1トランジスタ122のコレクタと第1トランジスタ122のエミッタの間に電流Ice1が流れるようになる。言い換えると、第1トランジスタ122のベースに電流が流れない場合に、第1トランジスタ122のコレクタと第1トランジスタ122のエミッタの間に電流Ice1は流れない。電流Ice1が流れる場合、電流Ice1は出力装置30から抵抗部110を介して第1トランジスタ122にコレクタに流れる。この場合、電流Ice1が抵抗部110に流れることで、抵抗部110で電圧降下が生じる。このため、電流Ice1が抵抗部110に流れることで、出力装置30の出力電圧Vxに対して、保護回路電圧Vprは、抵抗部110での電圧降下分だけ小さくなる。
【0064】
出力電圧Vxが電圧V1から電圧V1´に変化する場合、第1オペアンプ121の出力端子電圧Vop1が0以下であるため、電流Ice1が流れない。この場合、抵抗部110での電圧降下は生じない。したがって、出力電圧Vxが電圧V1から電圧V1´に変化する場合、保護回路電圧Vprも電圧V1から電圧V1´に変化する。そして、保護回路電圧Vprが電圧V1´となることで、入力保護回路10が定常状態となる。
【0065】
入力保護回路10が定常状態となった後、接続点P1と保護対象回路20は接続線L1で接続されているため、保護回路電圧Vprと入力電圧Vinは等しくなる。したがって、出力電圧Vxが電圧V1から電圧V1´に変化した後であって入力保護回路10が定常状態となった後、入力電圧Vinは電圧V1´となる。
【0066】
保護対象回路20に入力される電圧V1´は上限電圧Vul以下の電圧であるため、保護対象回路20に上限電圧Vulよりも大きい電圧が入力されることはない。
【0067】
また、第1保護部120は電流Ice1が流さないため、抵抗部110での電圧降下は生じない。言い換えると、出力電圧Vxと入力電圧Vinとが等しくなると考えてもよい。
【0068】
したがって、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合において、ダイオードを用いた従来の入力保護回路10での漏れ電流による影響と比較して、出力装置30と保護対象回路20との間に入力保護回路10が接続されることによる影響を低減することができる。つまり、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合において、ダイオードを用いた従来の入力保護回路10での漏れ電流による影響と比較して、出力装置30と保護対象回路20との間に入力保護回路10が接続されることによる出力電圧Vxと入力電圧Vinとの間に生じる誤差を低減することができると考えてもよい。
【0069】
(1.2.変化した後の出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合)
出力電圧Vxが変化する前の出力装置30の出力電圧Vxが電圧V2となった場合を説明する。つまり、出力装置30の出力電圧Vxが、上限電圧Vul以下の電圧V1から、上限電圧Vulよりも大きい電圧V2となった場合を説明する。
【0070】
この場合、出力装置30と保護対象回路20とに接続される入力保護回路10が、出力装置30の出力電圧Vxに関わらず、上限電圧Vulを保護対象回路20に入力する。こ
れにより、入力保護回路10は、上限電圧Vulよりも大きい電圧が保護対象回路20に入力されることを防ぎ、保護対象回路20を保護することができる。入力保護回路10は、第1保護部120が入力保護回路10の出力する電圧が上限電圧Vulとなるように抵抗部110に電流を流すことで、上限電圧Vulを保護対象回路20に入力してもよい。第1保護部120は、出力装置30の出力電圧Vxと上限電圧Vulとの差分に基づいて、入力保護回路10の出力する電圧が上限電圧Vulとなるように抵抗部110で電圧降下が生じさせる電流を流してもよい。
【0071】
以下では、入力保護回路10の第1保護部120の動作を具体的に説明する。
【0072】
まず、出力電圧Vxが電圧V2に変化した瞬間から保護回路電圧Vprは、電圧V2に向けて上昇する。ここで、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulまで上昇するまでの間と、上限電圧Vulに到達した瞬間以降とに分けて説明する。
【0073】
保護回路電圧Vprが、電圧V1から上限電圧Vulまで上昇する間は、前述の(1.
1.変化した後の出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合)と同様に第1保護部120は動作する。
【0074】
保護回路電圧Vprが電圧V1から上限電圧Vulに向けて変化する間、保護回路電圧Vprは常に上限電圧Vul以下の電圧である。したがって、第1オペアンプ121の非反転入力端子に入力される電圧は上限電圧Vul以下である。一方で、第1オペアンプ121の反転入力端子に入力される電圧は上限電圧Vulである。この場合、第1オペアンプ121の出力端子電圧Vop1は0以下となる。
【0075】
第1オペアンプ121の出力端子電圧Vop1が0以下である場合、第1トランジスタ122のベースには電流が流れこまない。言い換えると、第1オペアンプ121の出力端子から第1トランジスタ122のベースに向けて電流が流れない。したがって、第1トランジスタ122のコレクタと第1トランジスタ122のエミッタの間に電流Ice1は流れない。
【0076】
次に、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulに到達した瞬間以降について考える。まず、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulから電圧Vul+ΔVuに上昇した瞬間について
考える。ここで、ΔVuは微小な電圧の変化とする。
【0077】
保護回路電圧Vprが電圧Vul+ΔVuになった瞬間において、第1オペアンプ12
1の非反転入力端子に入力される電圧は上限電圧Vulよりも大きい電圧Vul+ΔVu
である。一方で、第1オペアンプ121の反転入力端子に入力される電圧は上限電圧Vulである。この場合、第1オペアンプ121の出力端子電圧Vop1は正となる。言い換えると、第1オペアンプ121の出力電圧Vxは0よりも大きくなる。
【0078】
第1オペアンプ121の出力端子電圧Vop1が正である場合、第1トランジスタ122のベースには電流が流れこむ。言い換えると、第1オペアンプ121の出力端子から第1トランジスタ122のベースに向けて電流が流れる。したがって、第1オペアンプ121はnpn型トランジスタであるため、第1トランジスタ122のベースに電流が流れる場合に、第1トランジスタ122のコレクタと第1トランジスタ122のエミッタの間に電流Ice1が流れるようになる。
【0079】
ここで、電流Ice1について説明する。第1オペアンプ121の出力端子電圧Vop1は、第1オペアンプ121の増幅度A1を用いて、以下の式(1)のように表せる。
【0080】
Vop1=A1{(Vul+ΔVu)―Vul}=A1・ΔVu・・・式(1)。
【0081】
次に、図3には図示していないが、第1オペアンプ121の出力端子と第1トランジスタ122のベースの間のベース間抵抗の値をRb1とすると、第1トランジスタ122のベースに流れる電流Ib1は、以下の式(2)のように表せる。
【0082】
Ib1=Vop1/Rb1=A1・ΔVu/Rb1・・・式(2)。
【0083】
そして、第1トランジスタ122の電流増幅率hfe1を用いて、第1トランジスタ122のコレクタと第1トランジスタ122のエミッタの間に電流Ice1は、以下の式(3)のように表せる。
【0084】
Ice1=hfe1・Ib1=hfe1・A1・ΔVu/Rb1・・・式(3)。
【0085】
したがって、電流Ice1が抵抗部110に流れた後の保護回路電圧Vprは、以下の式のように表せる。
【0086】
Vpr=(Vul+ΔVu)―R0・Ice1・・・式(4)。
【0087】
上式に、式(4)に式(3)を代入すると、以下の式(5)のように表せる。
【0088】
Vpr=Vul+(1-hfe1・A1・R0/Rb1)ΔVu・・・式(5)。
【0089】
ここで、ΔVuの係数が負となるようにすることで、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulよりも小さくすることができる。具体的には、第1オペアンプ121の増幅度A1、ベース間抵抗の抵抗値Rb1、第1トランジスタ122の電流増幅率hfe1、及び抵抗部110の抵抗値R0をΔVuの係数が負となるように決定することで、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulよりも小さくすることができる。
【0090】
一般的に、第1オペアンプ121の増幅度A1は10000以上の値をとり、第1トランジスタ122の電流増幅率hfe1は100以上の値をとる。また、ベース間抵抗の抵抗値Rb1は1000Ω~10000Ω程度の値、抵抗部110の抵抗値R0は100Ω~1000Ω程度の値をとる。したがって、一般的に、式(5)中のΔVuの係数が負となる。
【0091】
保護回路電圧Vprが上限電圧Vul以下となると、前述の(1.1.変化した後の出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合)と同様に第1保護部120は動作するため、電流Ice1が流れなくなる。そして、再度、保護回路電圧Vprが上昇する。
【0092】
保護回路電圧Vprが上限電圧Vulを超える瞬間では、第1オペアンプ121の出力端子電圧Vop1が正となって電流Ice1が流れることで、上限電圧Vul以下に保護回路電圧Vprが下降する。そして、保護回路電圧Vprが上限電圧Vul以下となると、保護回路電圧Vprは再び上昇する。第1オペアンプ121によって上限電圧Vulを境界として保護回路電圧Vprが上昇と下降を繰り返すことで、入力保護回路10の定常状態では、保護回路電圧Vprは上限電圧Vulとなる。言い換えると、第1オペアンプ121によって、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulとなるように帰還がかけられていると考えることができる。
【0093】
以上をまとめると、出力電圧Vxが電圧V1から電圧V2に変化する場合、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulとなることで、入力保護回路10が定常状態となる。
【0094】
入力保護回路10が定常状態となった後、接続点P1と保護対象回路20は接続線L1で接続されているため、保護回路電圧Vprと入力電圧Vinは等しくなる。したがって、出力電圧Vxが電圧V1から電圧V2に変化した後であって入力保護回路10が定常状態となった後、入力電圧Vinは上限電圧Vulとなる。保護対象回路20に入力される電圧は上限電圧Vulであるため、保護対象回路20に上限電圧Vulよりも大きい電圧が入力されることはない。つまり、出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合であっても、保護対象回路20が入力電圧Vinを上限電圧Vulまで低下させることができるため、保護対象回路20に上限電圧Vulよりも大きい電圧が入力されることはない。
【0095】
なお、定常状態において、抵抗部110では、出力電圧Vxの電圧V2から保護回路電圧Vprである上限電圧Vulに相当する電圧降下が起こっている。したがって、定常状態において抵抗部110に流れる電流Ice1は、以下の式(6)のように表せる。
【0096】
Ice1=(V2―Vul)/R0・・・式(6)。
【0097】
(2.変化する前の出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合)
出力電圧Vxが変化する前の出力装置30の出力電圧VxがV2であった場合を説明する。
【0098】
(2.1.変化した後の出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合)
出力電圧Vxが変化した後の出力装置30の出力電圧VxがV2´となった場合を説明する。つまり、出力装置30の出力電圧Vxが、上限電圧Vulよりも大きい電圧V2から、上限電圧Vulよりも大きい電圧V2´となった場合を説明する。
【0099】
まず、電圧V2´が電圧V2よりも大きい場合を考える。出力電圧Vxが電圧V2´になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、V2´から、式(6)に表される電流Ice1が抵抗部110で生じる電圧降下分だけ小さい電圧となる。出力電圧VxがV2´になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、以下の式(7)のように表すことができる。
【0100】
Vpr=V2´―Ice1・R0・・・式(7)。
【0101】
上式に、式(6)を代入すると、以下の式(8)のように表せる。
【0102】
Vpr=V2´―(V2―Vul)=Vul+(V2′―V2)>Vul・・・式
(8)。
【0103】
したがって、出力電圧Vxが電圧V2´になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、上限電圧Vulよりも大きい電圧となる。
【0104】
ここで、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulよりも大きい電圧となったため、(1-2.変化した後の出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合)と同様に第1保護部120が動作することで、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulとなる。具体的には、(1-2.変化した後の出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合)の説明におけるΔVを(V2′―V2)に置き換えることで説明される。
【0105】
次に、電圧V2´が電圧V2よりも小さい場合を考える。出力電圧Vxが電圧V2´になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、V2´から、式(6)に表される電流Ice1が抵抗部110で生じる電圧降下分だけ小さい電圧となる。出力電圧VxがV2´になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、以下の式(9)のように表すことができる。
【0106】
Vpr=V2´―Ice1・R0・・・式(10)。
【0107】
上式に、式(6)を代入すると、以下の式(11)のように表せる。
【0108】
Vpr=V2´―(V2―Vul)=Vul+(V2′―V2)<Vul・・・式
(11)。
【0109】
したがって、出力電圧Vxが電圧V2´になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、上限電圧Vulよりも小さい電圧となる。
【0110】
ここで、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulよりも小さい電圧となったため、(1-2.変化した後の出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合)と同様に第1保護部120が動作することで、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulとなる。
【0111】
以上をまとめると、出力電圧Vxが電圧V2から電圧V2´に変化する場合、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulとなることで、入力保護回路10が定常状態となる。
【0112】
入力保護回路10が定常状態となった後、接続点P1と保護対象回路20は接続線L1で接続されているため、保護回路電圧Vprと入力電圧Vinは等しくなる。したがって、出力電圧Vxが電圧V2から電圧V2´に変化した後であって入力保護回路10が定常状態となった後、入力電圧Vinは上限電圧Vulとなる。保護対象回路20に入力される電圧は上限電圧Vulであるため、保護対象回路20に上限電圧Vulよりも大きい電圧が入力されることはない。つまり、出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合であっても、保護対象回路20が入力電圧Vinを上限電圧Vulまで低下させることができるため、保護対象回路20に上限電圧Vulよりも大きい電圧が入力されることはない。
【0113】
なお、定常状態において、抵抗部110では、出力電圧Vxの電圧V2´から保護回路電圧Vprである上限電圧Vulに相当する電圧降下が起こっている。したがって、定常状態において抵抗部110に流れる電流Ice1´は、以下の式(12)のように表せる。
【0114】
Ice1´=(V2´―Vul)/R0・・・式(12)。
【0115】
(2.2.変化した後の出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合)
出力電圧Vxが変化する前の出力装置30の出力電圧VxがV1となった場合を説明する。つまり、出力装置30の出力電圧Vxが、上限電圧Vulよりも大きい電圧V2から、上限電圧Vul以下の電圧V1となった場合を説明する。
【0116】
出力電圧Vxが電圧V1になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、V1から、式(6)に表される電流Ice1が抵抗部110で生じる電圧降下分だけ小さい電圧となる。出力電圧VxがV1になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、以下の式(13)のように表すことができる。
【0117】
Vpr=V1―Ice1・R0・・・式(13)。
【0118】
上式に、式(6)を代入すると、以下の式(14)のように表せる。
【0119】
Vpr=V1―(V2―Vul)=Vul+(V1―V2)<Vul・・・式(1
4)。
【0120】
したがって、出力電圧Vxが電圧V1になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、上限電圧Vulよりも小さい電圧となる。
【0121】
保護回路電圧Vprが上限電圧Vul以下の電圧に変化した場合、第1オペアンプ121の非反転入力端子に入力される電圧も上限電圧Vul以下である。一方で、第1オペアンプ121の反転入力端子に入力される電圧は上限電圧Vulである。この場合、第1オペアンプ121の出力端子電圧Vop1は0以下となる。したがって、電流Ice1が流れなくなる。
【0122】
保護回路電圧Vprは、式(14)で表される電圧から出力電圧Vxである電圧V1に向けて変化する。そして、保護回路電圧Vprが電圧V1となることで、入力保護回路10が定常状態となる。
【0123】
入力保護回路10が定常状態となった後、接続点P1と保護対象回路20は接続線L1で接続されているため、保護回路電圧Vprと入力電圧Vinは等しくなる。したがって、出力電圧Vxが電圧V2から電圧V1に変化した後であって入力保護回路10が定常状態となった後、入力電圧Vinは電圧V1となる。
【0124】
保護対象回路20に入力される電圧V1は上限電圧Vul以下の電圧であるため、保護対象回路20に上限電圧Vulよりも大きい電圧が入力されることはない。
【0125】
また、第1保護部120は電流Ice1が流さないため、抵抗部110での電圧降下は生じない。言い換えると、出力電圧Vxと入力電圧Vinとが等しくなると考えてもよい。
【0126】
したがって、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合において、ダイオードを用いた従来の入力保護回路10での漏れ電流による影響と比較して、出力装置30と保護対象回路20との間に入力保護回路10が接続されることによる影響を低減することができる。つまり、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合において、ダイオードを用いた従来の入力保護回路10での漏れ電流による影響と比較して、出力装置30と保護対象回路20との間に入力保護回路10が接続されることによる出力電圧Vxと入力電圧Vinとの間に生じる誤差を低減することができると考えてもよい。
【0127】
(3.第1保護部120の動作のまとめ)
出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合は、第1保護部120は、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulとなるように電流Ice1を流す。言い換えると、出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合は、第1保護部120は、入力電圧Vinが上限電圧Vulとなるように電流Ice1を流す。
【0128】
一方で、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合、第1保護部120は電流Ice1を流さないため、保護回路電圧Vprは出力電圧Vxと等しくなる。言い換えると、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合、第1保護部120は電流Ice1を流さないため、入力電圧Vinは出力電圧Vxと等しくなる。
【0129】
したがって、出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合に入力電圧Vinが上限電圧Vulとなるように電流を流し、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合に電流を流さない第1保護部120を有するため、入力保護回路10は、保護対象回路20を上限電圧Vulよりも大きい過電圧から保護することができる。
【0130】
以上の場合では、保護対象回路20が電圧駆動回路である場合で説明した。しかし、保護対象回路20が電圧駆動回路以外の場合でも、第1保護部120は、保護対象回路20を過電圧から保護することができる。保護対象回路20が電圧駆動回路以外の場合であっても、第1オペアンプ121が保護回路電圧Vprを上限電圧Vulとなるように帰還をかけるからである。
【0131】
したがって、保護対象回路20が電圧駆動回路である場合だけでなく、保護対象回路20が電流駆動回路のような電圧駆動回路以外の場合であっても、第1保護部120を備えるため、入力保護回路10は上限電圧Vulよりも大きい過電圧が入力されることから保護対象回路20を保護することができる。保護対象回路20は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)ロジック回路、アナログーデジタル変換(ADC:Analog-to-Digital Converter)回路、TTL(Transistor-Transistor Logic)回路等であってもよい。
【0132】
[第2保護部130]
第2保護部130は、保護対象回路20を下限電圧Vllよりも小さい過電圧から保護する。具体的には、第2保護部130は、出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合に入力電圧Vinが下限電圧Vllとなるように電流を流す。第2保護部130は、出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合に電流を流さない。第2保護部130の動作の詳細は、後述する。
【0133】
第2保護部130は、接続点P1で接続線L1に接続する。第2保護部130の一例を図5に示す。ただし、第2保護部130は図5の電気素子と装置の組合せに限定されるものではない。なお、第2保護部130は、接続線L1上の接続点P1と異なる接続点P2に接続してもよい。
【0134】
第2保護部130は、第2オペアンプ131と第2トランジスタ132と下側参照電源133とを備える。
【0135】
第2オペアンプ131は、第1入力端子が接続点P11に接続する。第2オペアンプ131は、第2入力端子が下限電圧Vllと等しい電圧を出力する下側参照電源133に接続する。第2オペアンプ131は、出力端子が第2トランジスタ132の第3端子に接続する。ここで、第1入力端子は、入力された電圧が反転されずに入力される端子である。第1入力端子は、非反転入力端子と呼ばれる端子であってもよい。第2入力端子は、入力された電圧が反転されて入力される端子である。第1入力端子は、反転入力端子と呼ばれる端子であってもよい。第2オペアンプ131は、両電源オペアンプ、片電源オペアンプ、又はRail―to―Railオペアンプであってもよい。
【0136】
第2オペアンプ131は、非反転入力端子に入力される電圧と反転入力端子に入力される電圧とに基づいて、出力端子から出力端子電圧Vop2を出力する。第2オペアンプ131は、非反転入力端子に入力される電圧と反転入力端子に入力される電圧とを比較して、出力端子から出力端子電圧Vop2を出力してもよい。第2オペアンプ131は、非反転入力端子に入力される電圧から反転入力端子に入力される電圧を引いた差分に増幅度A2を乗じた電圧を、出力端子電圧Vop2としてもよい。
【0137】
第2オペアンプ131は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧よりも大きい場合、出力端子電圧Vop2として正の電圧を出力してもよい。つまり、第2オペアンプ131は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧よりも大きい場合、出力端子電圧Vop2として0よりも大きい電圧を出力して
もよい。この場合、第2オペアンプ131は、正電源端子に入力される電圧を出力端子電圧Vop2としてもよい。また、第2オペアンプ131は、正電源端子に入力される電圧から所定の電圧を引いた電圧を出力端子電圧Vop2としてもよい。
【0138】
また、第2オペアンプ131は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧よりも大きい場合、非反転入力端子に入力される電圧から反転入力端子に入力される電圧を引いた電圧に応じた電圧を、出力端子電圧Vop2として出力してもよい。この場合、出力端子電圧Vop2は、非反転入力端子に入力される電圧から反転入力端子に入力される電圧を引いた電圧に応じた電圧に、第2オペアンプ131に定められた増幅度A2を乗じた電圧を出力してもよい。
【0139】
第2オペアンプ131は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧と等しい場合、出力端子電圧Vop2として大きさが0の電圧を出力してもよい。大きさが0の電圧は、グラウンドの電圧と等しい電圧であってもよい。
【0140】
第2オペアンプ131は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧よりも小さい場合、出力端子電圧Vop2として負の電圧を出力してもよい。つまり、第2オペアンプ131は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧よりも小さい場合、出力端子電圧Vop2として0よりも小さい電圧を出力してもよい。この場合、第2オペアンプ131は、負電源端子に入力される電圧を出力端子電圧Vop2としてもよい。また、第2オペアンプ131は、正電源端子に入力される電圧から所定の電圧を足した電圧を出力端子電圧Vop2としてもよい。
【0141】
また、第2オペアンプ131は、非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧よりも小さい場合、非反転入力端子に入力される電圧から反転入力端子に入力される電圧を引いた電圧に応じた電圧を、出力端子電圧Vop2として出力してもよい。この場合、出力端子電圧Vop2は、非反転入力端子に入力される電圧から反転入力端子に入力される電圧を引いた電圧に応じた電圧に、第2オペアンプ131に定められた増幅度A2を乗じた電圧を出力してもよい。
【0142】
第2オペアンプ131の非反転入力端子は、保護回路電圧Vprが入力されるように接続線L1と接続される。第2オペアンプ131の非反転入力端子は、接続点P1に接続されてもよい。
【0143】
第2オペアンプ131の反転入力端子は、上限電圧Vulが入力されるように接続される。第2オペアンプ131の反転入力端子は、下側参照電源133に接続されてもよい。この場合、下側参照電源133は、出力する電圧が下限電圧Vllである電源である。
【0144】
第2オペアンプ131の正電源端子は、0よりも大きい電圧を出力する電源に接続される。例えば、正電源端子は、10V、12V又は15V等の定電圧電源に接続されてもよい
【0145】
第2オペアンプ131の負電源端子は、0よりも小さい電圧を出力する電源に接続される。例えば、負電源端子は、8V、10V又は15V等の定電圧電源に接続されてもよい。
【0146】
第2トランジスタ132は、第2端が接続点P1に、第2端が第2オペアンプ131の出力端子に、第3端が第2逃し先部50に接続される。第2トランジスタ132は、バイポーラトランジスタであってもよい。例えば、第2トランジスタ132は、pnp型のバイポーラトランジスタであってもよい。また、第2トランジスタ132は、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)のようなユニポ
ーラトランジスタであってもよい。例えば、第2トランジスタ132は、接合型FET又はMOS型FETであってもよい。
【0147】
第2トランジスタ132の第1端子は、第2トランジスタ132の電流が流れる場合に、第2トランジスタ132の外部から電流が流れ込む端子である。例えば、第2トランジスタ132がpnp型のバイポーラトランジスタである場合、第1端子は、pnp型のバイポーラトランジスタのエミッタである。例えば、第2トランジスタ132がpチャネルの電界効果トランジスタである場合、第1端子は、pチャネルの電界効果トランジスタのソースである。
【0148】
第2トランジスタ132の第2端子は、第2トランジスタ132の電流が流れる場合に、第2トランジスタ132の外部から電流が流れ出す端子である。例えば、第2トランジスタ132がpnp型のバイポーラトランジスタである場合、第2端子は、pnp型のバイポーラトランジスタのコレクタである。例えば、第2トランジスタ132がpチャネルの電界効果トランジスタである場合、第2端子は、pチャネルの電界効果トランジスタのドレインである。
【0149】
第2トランジスタ132の第3端子は、第2トランジスタ132の電流が流れる場合に、第2トランジスタ132の外部から電流が流れ込む端子であり、第3端子に流れ込む電流量は第1端子に流れ込む電流量よりも小さい端子である。例えば、第2トランジスタ132がpnp型のバイポーラトランジスタである場合、第3端子は、pnp型のバイポーラトランジスタのベースである。例えば、第2トランジスタ132がpチャネルの電界効果トランジスタである場合、第3端子は、pチャネルの電界効果トランジスタのゲートである。
【0150】
例えば、第2トランジスタ132がpnp型のバイポーラトランジスタである場合、第2トランジスタ132のコレクタは接続点P1に接続されてもよい。第2トランジスタ132のベースは、第2オペアンプ131の出力端子に接続されてもよい。第2トランジスタ132のエミッタはグラウンドに接続されてもよい。
【0151】
例えば、第2トランジスタ132がpチャネルのMOS型FETである場合、第2トランジスタ132のドレインは接続点2に接続されてもよい。第2トランジスタ132のゲートは、第2オペアンプ131の出力端子に接続されてもよい。第2トランジスタ132のソースは、下限電圧Vllよりも電圧の大きい第2逃し先部50に接続されてもよい。例えば、第2逃し先部50は、保護対象回路20の上側基準電源21又はグラウンドであってもよい。
【0152】
第2トランジスタ132がpnp型のバイポーラトランジスタである場合、第2トランジスタ132のベースに流れ出す電流Ib2の大きさに応じて、第2トランジスタ132のコレクタと第2トランジスタ132のエミッタの間に電流Ice2を流すことができる。電流Ice2の大きさは、電流Ib2大きさに第2トランジスタ132に定められた電流増幅率hfe2を乗じた大きさであってもよい。第2トランジスタ132は、第2トランジスタ132のベースに電流Ib2が流れこんでいる間だけ、電流Ice2を流してもよい。電流Ice2は、グラウンドから、第2トランジスタ132及び抵抗部110を介して出力装置30に流れてもよい。電流Ice2は、抵抗部110で電圧降下を生じることで、保護回路電圧Vprを出力電圧Vxに対して上昇させてもよい。
【0153】
第2トランジスタ132がpnp型のバイポーラトランジスタである場合、入力保護回路10は、図6のように、第2オペアンプ131の出力端子と第2トランジスタ132のベースとの間に第2ベース抵抗部134をさらに備えてもよい。第2ベース抵抗部134
を備えることで、第2トランジスタ132の故障を低減することができる。
【0154】
第2ベース抵抗部134がない場合、第2オペアンプ131の出力端子と第2トランジスタ132のベースとが導線で接続されることになる。このため、第2オペアンプ131の出力端子電圧Vop2が大きいと、第2トランジスタ132のベースに流れる電流が大きくなりすぎて、第2トランジスタ132の故障を引き起こす場合があるからである。
【0155】
第2トランジスタ132がpnp型のバイポーラトランジスタである場合、入力保護回路10は、図6のように、第2トランジスタ132のベースと第2トランジスタ132のエミッタとの間に第2ベース・エミッタ間抵抗部135をさらに備えてもよい。第2ベース・エミッタ間抵抗部135を備えることで、第2トランジスタ132の誤作動を低減することができる。
【0156】
第2オペアンプ131からのノイズによる電流、又は、第2トランジスタ132のコレクタから第2トランジスタ132のベースへの漏れ電流等の影響により、第2トランジスタ132のベースには、電流が流れてしまう場合がある。このような電流が第2トランジスタ132のベースに流れた結果、第2トランジスタ132のコレクタと第2トランジスタ132のエミッタの間に電流Ice2が流れてしまうと、抵抗部110で電圧降下が生じることになる。この場合、出力装置30の出力電圧Vxと保護対象回路20の入力電圧Vinとの間に、電圧降下分だけの誤差が生じてしまう。
【0157】
ここで、第2トランジスタ132のベースと第2トランジスタ132のエミッタとの間に第2ベース・エミッタ間抵抗部135を備えることで、第2オペアンプ131からのノイズによる電流、又は、第2トランジスタ132のコレクタから第2トランジスタ132のベースへの漏れ電流等を第2ベース・エミッタ間抵抗部135に流すことで、第2トランジスタ132の誤作動を低減することができる。
【0158】
[第2保護部130の動作]
ここでは、第2保護部130の動作について説明する。また、保護対象回路20の一例として図4と同じ回路を用いて説明する。加えて、説明の簡単のために、第2逃し先部50がグラウンドであるとして説明する。なお、第2逃し先部50は、グラウンドに限られず、保護対象回路20の上側基準電源21であってもよい。
【0159】
以下では、保護対象回路20が電圧駆動回路である場合を例に説明する。保護対象回路20が電圧駆動回路である場合、定常状態において、保護対象回路20には電流が流れないものであってもよい。または、保護対象回路20が電圧駆動回路である場合、定常状態において、保護対象回路20には電流が無視できるほど小さいものであってもよい。
【0160】
出力装置30の出力電圧Vxが変化した場合を考える。変化する前の出力電圧Vxと変化した後の出力電圧Vxの組合せで4つのパターンに分けて説明する。具体的には、出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合と、出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合で場合を分ける。また、下限電圧Vll以上の電圧を電圧V3及び電圧V3´とする。一方で、下限電圧Vllよりも小さい電圧を電圧V4及び電圧V4´とする。
【0161】
(4.変化する前の出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合)
出力電圧Vxが変化する前の出力装置30の出力電圧Vxが電圧V3であった場合を説明する。
【0162】
(4.1.変化した後の出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合)
出力電圧Vxが変化した後の出力装置30の出力電圧Vxが電圧V3´となった場合を
説明する。つまり、出力装置30の出力電圧Vxが、下限電圧Vll以上の電圧V3から、下限電圧Vll以上の電圧V3´となった場合を説明する。
【0163】
この場合、出力電圧Vxが電圧V3´に変化した瞬間から保護回路電圧Vprは、電圧V3´に向けて変化する。電圧V3´が電圧V3より小さい場合、保護回路電圧Vprは、電圧V3から電圧V3´に向けて下降していく。一方で、電圧V3´が電圧V3より大きい場合、保護回路電圧Vprは、電圧V3から電圧V3´に向けて上昇していく。
【0164】
ここで、保護回路電圧Vprが電圧V3から電圧V3´に向けて変化する間、保護回路電圧Vprは常に下限電圧Vll以上の電圧である。したがって、第2オペアンプ131の非反転入力端子に入力される電圧は下限電圧Vll以上である。一方で、第2オペアンプ131の反転入力端子に入力される電圧は上限電圧Vulである。この場合、第2オペアンプ131の出力端子電圧Vop2は0以上となる。
【0165】
第2オペアンプ131の出力端子電圧Vop2が0以上である場合、第2トランジスタ132のベースから電流が流れ出さない。言い換えると、第2トランジスタ132のベースから第2オペアンプ131の出力端子に向けて電流が流れない。
【0166】
ここで、第2オペアンプ131はpnp型トランジスタであるため、第2トランジスタ132のベースから電流が流れだす場合に、第2トランジスタ132のコレクタと第2トランジスタ132のエミッタの間に電流Ice2が流れるようになる。言い換えると、第2トランジスタ132のベースに電流が流れ出さない場合に、第2トランジスタ132のコレクタと第2トランジスタ132のエミッタの間に電流Ice2は流れない。電流Ice2が流れる場合、電流Ice2は第2トランジスタ132のコレクタから抵抗部110を介して出力装置30に流れる。この場合、電流Ice2が抵抗部110に流れることで、抵抗部110で電圧降下が生じる。このため、電流Ice2が抵抗部110に流れることで、出力装置30の出力電圧Vxに対して、保護回路電圧Vprは、抵抗部110での電圧降下分だけ大きくなる。
【0167】
出力電圧Vxが電圧V3から電圧V3´に変化する場合、第2オペアンプ131の出力端子電圧Vop2が0以下であるため、電流Ice2が流れない。この場合、抵抗部110での電圧降下は生じない。したがって、出力電圧Vxが電圧V3から電圧V3´に変化する場合、保護回路電圧Vprも電圧V3から電圧V3´に変化する。そして、保護回路電圧Vprが電圧V3´となることで、入力保護回路10が定常状態となる。
【0168】
入力保護回路10が定常状態となった後、接続点P1と保護対象回路20は接続線L1で接続されているため、保護回路電圧Vprと入力電圧Vinは等しくなる。したがって、出力電圧Vxが電圧V3から電圧V3´に変化した後であって入力保護回路10が定常状態となった後、入力電圧Vinは電圧V3´となる。
【0169】
保護対象回路20に入力される電圧V3´は下限電圧Vll以上の電圧であるため、保護対象回路20に下限電圧Vllよりも小さい電圧が入力されることはない。
【0170】
また、第2保護部130は電流Ice2が流さないため、抵抗部110での電圧降下は生じない。言い換えると、出力電圧Vxと入力電圧Vinとが等しくなると考えてもよい。
【0171】
したがって、出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合において、ダイオードを用いた従来の入力保護回路10での漏れ電流による影響と比較して、出力装置30と保護対象回路20との間に入力保護回路10が接続されることによる影響を低減することができ
る。つまり、出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合において、ダイオードを用いた従来の入力保護回路10での漏れ電流による影響と比較して、出力装置30と保護対象回路20との間に入力保護回路10が接続されることによる出力電圧Vxと入力電圧Vinとの間に生じる誤差を低減することができると考えてもよい。
【0172】
(4.2.変化した後の出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合)
出力電圧Vxが変化する前の出力装置30の出力電圧Vxが電圧V4となった場合を説明する。つまり、出力装置30の出力電圧Vxが、下限電圧Vll以上の電圧V3から、下限電圧Vllよりも小さい電圧V4となった場合を説明する。
【0173】
この場合、出力装置30と保護対象回路20とに接続される入力保護回路10が、出力装置30の出力電圧Vxに関わらず、下限電圧Vllを保護対象回路20に入力する。これにより、入力保護回路10は、下限電圧Vllよりも小さい電圧が保護対象回路20に入力されることを防ぎ、保護対象回路20を保護することができる。入力保護回路10は、第1保護部120が入力保護回路10の出力する電圧が下限電圧Vllとなるように抵抗部110に電流を流すことで、下限電圧Vllを保護対象回路20に入力してもよい。第1保護部120は、出力装置30の出力電圧Vxと下限電圧Vllとの差分に基づいて、入力保護回路10の出力する電圧が下限電圧Vllとなるように抵抗部110で電圧降下が生じさせる電流を流してもよい。
【0174】
以下では、入力保護回路10の第1保護部120の動作を具体的に説明する。
【0175】
まず、出力電圧Vxが電圧V4に変化した瞬間から保護回路電圧Vprは、電圧V4に向けて下降する。ここで、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllまで下降するまでの間と、下限電圧Vllに到達した瞬間以降とに分けて説明する。
【0176】
保護回路電圧Vprが、電圧V3から下限電圧Vllまで下降する間は、前述の(4.1.変化した後の出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合)と同様に第2保護部130は動作する。
【0177】
保護回路電圧Vprが電圧V3から下限電圧Vllに向けて変化する間、保護回路電圧Vprは常に下限電圧Vll以上の電圧である。したがって、第2オペアンプ131の非反転入力端子に入力される電圧は下限電圧Vll以上である。一方で、第2オペアンプ131の反転入力端子に入力される電圧は下限電圧Vllである。この場合、第2オペアンプ131の出力端子電圧Vop2は0以上となる。
【0178】
第2オペアンプ131の出力端子電圧Vop2が0以上である場合、第2トランジスタ132のベースには電流が流れ出さない。言い換えると、第2トランジスタ132のベースから第2オペアンプ131の出力端子に向けて電流が流れない。したがって、第2トランジスタ132のコレクタと第2トランジスタ132のエミッタの間に電流Ice2は流れない。
【0179】
次に、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllに到達した瞬間以降について考える。まず、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllから電圧Vll―ΔVlに上昇した瞬間について考える。ここで、ΔVlは微小な電圧の変化とする。
【0180】
保護回路電圧Vprが電圧Vll―ΔVlになった瞬間において、第2オペアンプ131の非反転入力端子に入力される電圧は下限電圧Vllよりも小さい電圧Vll―ΔVlである。一方で、第2オペアンプ131の反転入力端子に入力される電圧は下限電圧Vllである。この場合、第2オペアンプ131の出力端子電圧Vop2は負となる。言い換
えると、第2オペアンプ131の出力電圧Vxは0よりも小さくなる。
【0181】
第2オペアンプ131の出力端子電圧Vop2が負である場合、第2トランジスタ132のベースから電流が流れ出す。言い換えると、第2トランジスタ132のベースから第2オペアンプ131の出力端子に向けて電流が流れる。したがって、第2オペアンプ131はpnp型トランジスタであるため、第2トランジスタ132のベースから電流が流れ出す場合に、第2トランジスタ132のコレクタと第2トランジスタ132のエミッタの間に電流Ice2が流れるようになる。
【0182】
ここで、電流Ice2について説明する。第2オペアンプ131の出力端子電圧Vop2は、第2オペアンプ131の増幅度A2を用いて、以下の式(15)のように表せる。
【0183】
Vop2=A2{(Vll―ΔVl)―Vll}=―A2・ΔVl・・・式(15)。
【0184】
次に、図5には図示していないが、第2オペアンプ131の出力端子と第2トランジスタ132のベースの間のベース間抵抗の値をRb2とすると、第2トランジスタ132のベースに流れる電流Ib2は、以下の式(16)のように表せる。
【0185】
Ib2=Vop2/Rb2=―A2・ΔVl/Rb2・・・式(16)。
【0186】
そして、第2トランジスタ132の電流増幅率hfe2を用いて、第2トランジスタ132のコレクタと第2トランジスタ132のエミッタの間に電流Ice2は、以下の式(17)のように表せる。
【0187】
Ice2=hfe2・Ib2=―hfe2・A2・ΔVl/Rb2・・・式(17)。
【0188】
したがって、電流Ice2が抵抗部110に流れた後の保護回路電圧Vprは、以下の式(18)ように表せる。
【0189】
Vpr=(Vll―ΔVl)―R0・Ice2・・・式(18)。
【0190】
上式に、式(17)を代入すると、以下の式(19)のように表せる。
【0191】
Vpr=Vll+(―1+hfe2・A2・R0/Rb2)・ΔVl・・・式(19)。
【0192】
ここで、ΔVlの係数が正となるようにすることで、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllよりも大きくすることができる。具体的には、第2オペアンプ131の増幅度A2、ベース間抵抗の抵抗値Rb2、第2トランジスタ132の電流増幅率hfe2、及び抵抗部110の抵抗値R0をΔVlの係数が正となるように決定することで、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllよりも大きくすることができる。
【0193】
一般的に、第2オペアンプ131の増幅度A2は10000以上の値をとり、第2トランジスタ132の電流増幅率hfe2は100以上の値をとる。また、ベース間抵抗の抵抗値Rb2は1000Ω~10000Ω程度の値、抵抗部110の抵抗値R0は100Ω~1000Ω程度の値をとる。したがって、一般的に、式(19)中のΔVlの係数が負となる。
【0194】
保護回路電圧Vprが下限電圧Vll以上となると、前述の(4.1.変化した後の出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合)と同様に第2保護部130は動作するため、電流Ice2が流れなくなる。そして、再度、保護回路電圧Vprが上昇する。
【0195】
保護回路電圧Vprが下限電圧Vllを下回る瞬間では、第2オペアンプ131の出力端子電圧Vop2が負となって電流Ice2が流れることで、下限電圧Vll以上に保護回路電圧Vprが上昇する。そして、保護回路電圧Vprが下限電圧Vll以上となると、保護回路電圧Vprは再び下降する。第2オペアンプ131によって下限電圧Vllを境界として保護回路電圧Vprが下降と上昇を繰り返すことで、入力保護回路10の定常状態では、保護回路電圧Vprは下限電圧Vllとなる。言い換えると、第2オペアンプ131によって、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllとなるように帰還がかけられていると考えることができる。
【0196】
以上をまとめると、出力電圧Vxが電圧V3から電圧V4に変化する場合、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllとなることで、入力保護回路10が定常状態となる。
【0197】
入力保護回路10が定常状態となった後、接続点P1と保護対象回路20は接続線L1で接続されているため、保護回路電圧Vprと入力電圧Vinは等しくなる。したがって、出力電圧Vxが電圧V3から電圧V4に変化した後であって入力保護回路10が定常状態となった後、入力電圧Vinは下限電圧Vllとなる。保護対象回路20に入力される電圧は下限電圧Vllであるため、保護対象回路20に下限電圧Vllよりも小さい電圧が入力されることはない。つまり、出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合であっても、保護対象回路20が入力電圧Vinを下限電圧Vllまで上昇させることができるため、保護対象回路20に下限電圧Vllよりも小さい電圧が入力されることはない。
【0198】
なお、定常状態において、抵抗部110では、出力電圧Vxの電圧V4と保護回路電圧Vprである下限電圧Vllとの差分に相当する電圧降下が起こっている。したがって、定常状態において抵抗部110に流れる電流Ice2は、以下の式(20)のように表せる。
【0199】
Ice2=(V4―Vll)/R0・・・式(20)。
【0200】
(5.変化する前の出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合)
出力電圧Vxが変化する前の出力装置30の出力電圧VxがV4であった場合を説明する。
【0201】
(5.1.変化した後の出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合)
出力電圧Vxが変化した後の出力装置30の出力電圧VxがV4´となった場合を説明する。つまり、出力装置30の出力電圧Vxが、下限電圧Vllよりも小さい電圧V4から、下限電圧Vllよりも小さい電圧V4´となった場合を説明する。
【0202】
まず、電圧V4´が電圧V4よりも小さい場合を考える。出力電圧Vxが電圧V4´になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、V4´から、式(20)に表される電流Ice2が抵抗部110で生じる電圧降下分だけ出力電圧Vxよりも大きい電圧となる。出力電圧VxがV4´になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、以下の式(21)のように表すことができる。
【0203】
Vpr=V4´+Ice2・R0・・・式(21)。
【0204】
上式に、式(20)を代入すると、以下の式(22)のように表せる。
【0205】
Vpr=V4´―(V4―Vll)=Vll―(V4―V4´)<Vll・・・式(22)。
【0206】
したがって、出力電圧Vxが電圧V4´になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、下限電圧Vllよりも小さい電圧となる。
【0207】
ここで、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllよりも小さい電圧となったため、(3-2.変化した後の出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合)と同様に第2保護部130が動作することで、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllとなる。具体的には、(3-2.変化した後の出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合)の説明におけるΔVlを(V4―V4′)に置き換えることで説明される。
【0208】
次に、電圧V4´が電圧V4よりも大きい場合を考える。出力電圧Vxが電圧V4´になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、V4´から、式(20)に表される電流Ice2が抵抗部110で生じる電圧降下分だけ出力電圧Vxよりも大きい電圧となる。出力電圧VxがV4´になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、以下の式(23)のように表すことができる。
【0209】
Vpr=V4´+Ice2・R0・・・式(23)
上式に、式(20)を代入すると、以下の式(24)のように表せる。
【0210】
Vpr=V4´―(V4―Vll)=Vll+(V4′―V4)>Vll・・・式
(24)。
【0211】
したがって、出力電圧Vxが電圧V4´になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、下限電圧Vllよりも大きい電圧となる。
【0212】
ここで、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllよりも大きい電圧となったため、(3-2.変化した後の出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合)と同様に第2保護部130が動作することで、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllとなる。
【0213】
以上をまとめると、出力電圧Vxが電圧V4から電圧V4´に変化する場合、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllとなることで、入力保護回路10が定常状態となる。
【0214】
入力保護回路10が定常状態となった後、接続点P1と保護対象回路20は接続線L1で接続されているため、保護回路電圧Vprと入力電圧Vinは等しくなる。したがって、出力電圧Vxが電圧V4から電圧V4´に変化した後であって入力保護回路10が定常状態となった後、入力電圧Vinは下限電圧Vllとなる。保護対象回路20に入力される電圧は下限電圧Vllであるため、保護対象回路20に下限電圧Vllよりも小さい電圧が入力されることはない。つまり、出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合であっても、保護対象回路20が入力電圧Vinを下限電圧Vllまで上昇させることができるため、保護対象回路20に下限電圧Vllよりも小さい電圧が入力されることはない
なお、定常状態において、抵抗部110では、出力電圧Vxの電圧V4´と保護回路電圧Vprである下限電圧Vllとの差分に相当する電圧降下が起こっている。したがって、定常状態において抵抗部110に流れる電流Ice2´は、以下の式(25)のように表せる。
【0215】
Ice2´=(V4´―Vll)/R0・・・式(25)。
【0216】
(5.2.変化した後の出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合)
出力電圧Vxが変化する前の出力装置30の出力電圧VxがV3となった場合を説明する。つまり、出力装置30の出力電圧Vxが、下限電圧Vllよりも小さい電圧V4から、下限電圧Vll以上の電圧V3となった場合を説明する。
【0217】
出力電圧Vxが電圧V3になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、V3から、式(20)に表される電流Ice2が抵抗部110で生じる電圧降下分だけ出力電圧Vxに対して大きい電圧となる。出力電圧VxがV3になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、以下の式(26)のように表すことができる。
【0218】
Vpr=V3―Ice2・R0・・・式(26)。
【0219】
上式に、式(20)を代入すると、以下の式(27)のように表せる。
【0220】
Vpr=V3―(V4―Vll)=Vll+(V3―V4)>Vll・・・式(2
7)。
【0221】
したがって、出力電圧Vxが電圧V3になった瞬間では、保護回路電圧Vprは、下限電圧Vllよりも大きい電圧となる。
【0222】
保護回路電圧Vprが下限電圧Vll以上の電圧に変化した場合、第2オペアンプ131の非反転入力端子に入力される電圧も下限電圧Vll以上である。一方で、第2オペアンプ131の反転入力端子に入力される電圧は下限電圧Vllである。この場合、第2オペアンプ131の出力端子電圧Vop2は0以上となる。したがって、電流Ice2が流れなくなる。
【0223】
保護回路電圧Vprは、式(27)で表される電圧から出力電圧Vxである電圧V3に向けて変化する。そして、保護回路電圧Vprが電圧V3となることで、入力保護回路10が定常状態となる。
【0224】
入力保護回路10が定常状態となった後、接続点P1と保護対象回路20は接続線L1で接続されているため、保護回路電圧Vprと入力電圧Vinは等しくなる。したがって、出力電圧Vxが電圧V4から電圧V3に変化した後であって入力保護回路10が定常状態となった後、入力電圧Vinは電圧V3となる。
【0225】
保護対象回路20に入力される電圧V3は下限電圧Vll以上の電圧であるため、保護対象回路20に下限電圧Vllよりも小さい電圧が入力されることはない。
【0226】
また、第2保護部130は電流Ice2が流さないため、抵抗部110での電圧降下は生じない。言い換えると、出力電圧Vxと入力電圧Vinとが等しくなると考えてもよい。
【0227】
したがって、出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合において、ダイオードを用いた従来の入力保護回路10での漏れ電流による影響と比較して、出力装置30と保護対象回路20との間に入力保護回路10が接続されることによる影響を低減することができる。つまり、出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合において、ダイオードを用いた従来の入力保護回路10での漏れ電流による影響と比較して、出力装置30と保護対象回路20との間に入力保護回路10が接続されることによる出力電圧Vxと入力電圧Vinとの間に生じる誤差を低減することができると考えてもよい。
【0228】
(6.第2保護部130の動作のまとめ)
出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合は、第2保護部130は、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllとなるように電流Ice2を流す。言い換えると、出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合は、第2保護部130は、入力電圧Vinが下限電圧Vllとなるように電流Ice2を流す。
【0229】
一方で、出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合、第2保護部130は電流Ice2を流さないため、保護回路電圧Vprは出力電圧Vxと等しくなる。言い換えると、出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合、第2保護部130は電流Ice2を流さないため、入力電圧Vinは出力電圧Vxと等しくなる。
【0230】
したがって、出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合に入力電圧Vinが下限電圧Vllとなるように電流を流し、出力電圧Vxが下限電圧Vll以上である場合に電流を流さない第2保護部130を有するため、入力保護回路10は、保護対象回路20を下限電圧Vllよりも小さい過電圧から保護することができる。
【0231】
以上の場合では、保護対象回路20が電圧駆動回路である場合で説明した。しかし、保護対象回路20が電圧駆動回路以外の場合でも、第2保護部130は、保護対象回路20を過電圧から保護することができる。保護対象回路20が電圧駆動回路以外の場合であっても、第2オペアンプ131が保護回路電圧Vprを上限電圧Vulとなるように帰還をかけるからである。
【0232】
したがって、保護対象回路20が電圧駆動回路である場合だけでなく、保護対象回路20が電流駆動回路のような電圧駆動回路以外の場合であっても、第2保護部130を備えるため、入力保護回路10は下限電圧Vllよりも小さい過電圧が入力されることから保護対象回路20を保護することができる。保護対象回路20は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)ロジック回路、アナログーデジタル変換(ADC:Analog-to-Digital Converter)回路、TTL(Transistor-Transistor Logic)回路等であってもよい。
【0233】
[入力保護回路10の動作]
ここでは、入力保護回路10の動作について説明する。また、入力保護回路10の一例として図3及び図5と同じ回路を用いて説明する。
【0234】
以下では、保護対象回路20が電圧駆動回路である場合を例に説明する。保護対象回路20が電圧駆動回路である場合、定常状態において、保護対象回路20には電流が流れないものであってもよい。または、保護対象回路20が電圧駆動回路である場合、定常状態において、保護対象回路20には電流が無視できるほど小さいものであってもよい。
【0235】
出力装置30の出力電圧Vxと、保護対象回路20の入力電圧Vinとの関係について説明する。具体的には、出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下かつ下限電圧Vll以上である場合、出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合で場合を分ける。
【0236】
(7.出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合)
出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合、第1保護部120は、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulとなるように電流Ice1を流す。一方で、出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合、第2保護部130は電流Ice2を流さない。出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合は、出力電圧Vxが下限電圧Vll以上の場合に含まれるからである。
【0237】
したがって、第1保護部120だけが電流Ice1を流すので、保護回路電圧Vprが上限電圧Vulとなる。つまり、出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合、入力保護回路10は上限電圧Vulを出力する。言い換えると、保護対象回路20の入力電圧Vinが上限電圧Vulとなる。
【0238】
これにより、出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合であっても、入力保護回路10は、保護対象回路20を上限電圧Vulよりも大きい過電圧から保護することができる。
【0239】
(8.出力電圧Vxが上限電圧Vul以下かつ下限電圧Vll以上である場合)
出力電圧Vxが上限電圧Vul以下かつ下限電圧Vll以上である場合、出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合、第1保護部120は電流Ice1を流さない。出力電圧Vxが上限電圧Vul以下かつ下限電圧Vll以上である場合は、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下の場合に含まれるからである。また、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下かつ下限電圧Vll以上である場合、第2保護部130も電流Ice2を流さない。出力電圧Vxが上限電圧Vul以下かつ下限電圧Vll以上である場合は、出力電圧Vxが下限電圧Vll以上の場合に含まれるからである。
【0240】
したがって、第1保護部120が電流Ice1を流さず、かつ、第2保護部130も電流Ice2を流さないので、保護回路電圧Vprは出力電圧Vxと等しくなる。つまり、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下かつ下限電圧Vll以上である場合、入力保護回路10は出力電圧Vxと等しい電圧を出力する。言い換えると、保護対象回路20の入力電圧Vinが出力電圧Vxと等しくなる。
【0241】
したがって、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合において、ダイオードを用いた従来の入力保護回路10での漏れ電流による影響と比較して、出力装置30と保護対象回路20との間に入力保護回路10が接続されることによる影響を低減することができる。つまり、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下である場合において、ダイオードを用いた従来の入力保護回路10での漏れ電流による影響と比較して、出力装置30と保護対象回路20との間に入力保護回路10が接続されることによる出力電圧Vxと入力電圧Vinとの間に生じる誤差を低減することができると考えてもよい。
【0242】
(9.出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合)
出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合、第2保護部130は、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllとなるように電流Ice2を流す。一方で、出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合、第1保護部120は電流Ice1を流さない。出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合は、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下の場合に含まれるからである。
【0243】
したがって、第2保護部130だけが電流Ice2を流すので、保護回路電圧Vprが下限電圧Vllとなる。つまり、出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合、入力保護回路10は下限電圧Vllを出力する。言い換えると、保護対象回路20の入力電圧Vinが下限電圧Vllとなる。
【0244】
これにより、出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合であっても、入力保護回路10は、保護対象回路20を下限電圧Vllよりも小さい過電圧から保護することができる。
【0245】
(10.入力保護回路10の動作のシミュレーション結果)
図7において、実施形態1に係る入力保護回路10の動作のシミュレーションの結果を示す。横軸が、出力装置30の出力電圧Vxである。縦軸が、保護対象回路20の入力電圧Vinである。図7では、抵抗部110は抵抗値470Ωの抵抗である。上側基準電源21は、3.3Vの定電圧電源、下側基準電源22はグラウンドである。上側参照電源123は、3.6Vの定電圧電源、下側参照電源133は、―0.3Vの定電圧電源である。
【0246】
図7から、出力電圧Vxが上限電圧Vulよりも大きい場合(3.6V<Vx)、出力電圧Vxが上限電圧Vul以下かつ下限電圧Vll以上である場合(―0.3V≦Vx≦3.6V)、出力電圧Vxが下限電圧Vllよりも小さい場合(Vx<―0.3V)のいずれの場合でも、入力電圧Vinが上限電圧Vul以上かつ下限電圧Vll以下(―0.3V≦Vit≦3.6V)となっていることがわかる。したがって、入力保護回路10は
、保護対象回路20を上限電圧Vulよりも大きい過電圧、及び、下限電圧Vllよりも小さい過電圧のいずれからも保護することができていることがわかる。
【0247】
[実施形態2]
以下において、実施形態2について説明する。以下においては、実施形態1に対する相違点について主として説明する。
【0248】
図8は、実施形態2に係る入力保護回路10のブロック図である。図9は、実施形態2に係る入力保護回路10の第1保護部120に関する回路図である。図10は、実施形態2に係る入力保護回路10の第2保護部130に関する回路図である。
【0249】
実施形態2は、保護対象回路20に複数の接続端子が備えられている場合において、入力保護回路10が複数の接続端子の間で共有される場合である。具体的には、第1接続端子201と第2接続端子202とで、入力保護回路10が共有される場合を用いて説明する。
【0250】
第1接続端子201は第1出力装置31と接続される。第1接続端子201と第1出力装置31とを結ぶ接続線を第1接続線L1とする。入力保護回路10と第1接続線L1との接続点を接続点P11とする。第1出力装置31と接続点P11との間に第1抵抗部111が備えられる。
【0251】
実施形態2に係る入力保護回路10は、接続点P11と第1保護部120との間の位置に第1ダイオード61をさらに備える。第1ダイオード61のアノードが接続点P11に、第1ダイオード61のカソードが第1保護部120に接続される。
【0252】
また、第2実施形態に係る入力保護回路10は、接続点P11と第2保護部130との間、の位置に第2ダイオード62をさらに備える。第2ダイオード62のカソードが接続点P11に、第2ダイオード62のアノードが第2保護部130に接続される。
【0253】
第2接続端子202は第2出力装置32と接続される。第2接続端子202と第2出力装置32とを結ぶ接続線を第2接続線L2とする。入力保護回路10と第2接続線L2との接続点を接続点P12とする。第2出力装置32と接続点P12との間に第2抵抗部112が備えられる。
【0254】
実施形態2に係る入力保護回路10は、接続点P12と第1保護部120との間の位置に第3ダイオード63をさらに備える。第3ダイオード63のアノードが接続点P12に、第3ダイオード63のカソードが第1保護部120に接続される。
【0255】
また、実施形態2に係る入力保護回路10は、接続点P12と第2保護部130との間、の位置に第4ダイオード64をさらに備える。第4ダイオード64のカソードが接続点P12に、第4ダイオード64のアノードが第2保護部130に接続される。
【0256】
第1ダイオード61、第2ダイオード62、第3ダイオード63、及び第4ダイオード64は、p型半導体とn型半導体の接合している部分(pn接合ともいう)を有する素子である。第1ダイオード61、第2ダイオード62、第3ダイオード63、及び第4ダイオード64は、一般整流ダイオード、スイッチングダイオード、ファストリカバリダイオード、ショットキーバリアダイオード、ダイオードブリッジ、ステップリカバリダイオード、ツェナーダイオード、アバランシェダイオード、トンネルダイオード、発光ダイオード、フォトダイオード、レーザーダイオード、定電流ダイオード、可変容量ダイオード、ゲルマニウムダイオード、ガンダイオード、PINダイオード、インパッドダイオード、又はショックレーダイオード等の何れの形式のダイオードであってもよい。なお、第1ダイオード61、第2ダイオード62、第3ダイオード63、及び第4ダイオード64は、いずれもが同じ形式のダイオードであってもよく、一部が異なる形式のダイオードであってもよい。
【0257】
実施形態2に係る第1保護部120において、第1オペアンプ121の反転入力端子に接続される上側参照電源123が出力する電圧は、実施形態1と異なる。これは、接続点P11と第1オペアンプ121との間に第1ダイオード61が、接続点P12と第1オペアンプ121との間に第3ダイオード63が存在するため、第1ダイオード61の順方向電圧及び第3ダイオード63の順方向電圧の大きさを考慮したものである。
【0258】
具体的には、実施形態1に係る上側参照電源123の出力する電圧は上限電圧Vulと等しい大きさである。一方で、実施形態2に係る上側参照電源123の出力する電圧は、第1ダイオード61の順方向電圧又は第3ダイオード63の順方向電圧を上限電圧Vulから引いた値の大きさの電圧である。第1ダイオード61の順方向電圧と第3ダイオード63の順方向電圧が異なる場合、実施形態2に係る上側参照電源123の出力する電圧は、第1ダイオード61の順方向電圧又は第3ダイオード63の順方向電圧のうち大きい方を上限電圧Vulから引いた値の大きさの電圧である。
【0259】
実施形態2に係る第2保護部130において、第2オペアンプ131の反転入力端子に接続される下側参照電源133が出力する電圧は、実施形態1と異なる。これは、接続点P11と第2オペアンプ131との間に第2ダイオード62が、接続点P12と第2オペアンプ131との間に第4ダイオード64が存在するため、第2ダイオード62の順方向電圧及び第4ダイオード64の順方向電圧の大きさを考慮したものである。
【0260】
具体的には、実施形態1に係る下側参照電源133の出力する電圧は下限電圧Vllと等しい大きさである。一方で、実施形態2に係る下側参照電源133の出力する電圧は、第2ダイオード62の順方向電圧又は第4ダイオード64の順方向電圧を下限電圧Vllに加えた値の大きさの電圧である。第2ダイオード62の順方向電圧と第4ダイオード64の順方向電圧が異なる場合、実施形態2に係る下側参照電源133の出力する電圧は、第2ダイオード62の順方向電圧又は第4ダイオード64の順方向電圧のうち大きい方を上限電圧Vulに加えた値の大きさの電圧である。
【0261】
第2実施形態に係る第1保護部120は、第1ダイオード61又は第3ダイオード63のカソードの電圧に基づいて動作する。例えば、第1ダイオード61のカソードの電圧が、上限電圧Vulから第1ダイオード61の順方向電圧を引いた電圧よりも大きい場合に、第1保護部120は電流Ice1を流してもよい。この場合、電流Ice1は、第1抵抗部111と第1ダイオード61と第1保護部120とを介して、第1出力装置31から
グラウンドに向けて流れてもよい。
【0262】
また、第1ダイオード61のカソードの電圧と第3ダイオード63のカソードの電圧の両方が、上限電圧Vulから第1ダイオード61の順方向電圧を引いた電圧又は上限電圧Vulから第3ダイオード63の順方向電圧を引いた電圧よりも大きい場合に、第1保護部120は電流Ice1を流してもよい。この場合、電流Ice1は、第1抵抗部111と第1ダイオード61と第1保護部120とを介して第1出力装置31からグラウンドに向けて流れ、かつ、第2抵抗部112と第2ダイオード62と第1保護部120とを介して、第2出力装置32からグラウンドに向けて流れてもよい。
【0263】
第2実施形態に係る第2保護部130は、第2ダイオード62又は第4ダイオード64のアノードの電圧に基づいて動作する。例えば、第2ダイオード62のアノードの電圧が、下限電圧Vllから第2ダイオード62の順方向電圧を加えた電圧よりも小さい場合に、第2保護部130は電流Ice2を流してもよい。この場合、電流Ice2は、第1抵抗部111と第2ダイオード62と第2保護部130とを介して、グラウンドから第1出力装置31に向けて流れてもよい。
【0264】
また、第2ダイオード62のアノードの電圧と第4ダイオード64のアノードの電圧の両方が、下限電圧Vllから第2ダイオード62の順方向電圧を加えた電圧又は下限電圧Vllから第4ダイオード64の順方向電圧を加えた電圧よりも小さい場合に、第2保護部130は電流Ice2を流してもよい。この場合、電流Ice2は、第1抵抗部111と第2ダイオード62と第2保護部130とを介してグラウンドから第1出力装置31に向けて流れ、かつ、第2抵抗部112と第4ダイオード64と第2保護部130とを介して、グラウンドから第2出力装置32に向けて流れてもよい。
【0265】
以上のような構成とすることで、保護対象回路20が接続端子を複数備える場合であっても、入力保護回路10を複数の接続端子同士で共有することできるため、入力保護回路10を設置するコストを低減することができる。
【0266】
[実施形態3]
以下において、実施形態3について説明する。以下においては、実施形態2に対する相違点について主として説明する。図11は、実施形態3に係る入力保護回路10の第1保護部120に関する回路図である。図12は、実施形態3に係る入力保護回路10の第2保護部130に関する回路図である。
【0267】
実施形態3は、入力保護回路10が、第1電圧保持部126及び第2電圧保持部136をさらに備える場合である。
【0268】
第1電圧保持部126及び第2電圧保持部136は、電気抵抗である。電気抵抗は、金属、半導体、絶縁体、又はそれらの混合物であってもよい。電気抵抗は、チップ抵抗器、リード付抵抗器、又は巻線抵抗器であってもよい。電気抵抗は、イオン性液体であってもよい。
【0269】
第1電圧保持部126の第1端は、第1ダイオード61のカソードと第1オペアンプ121の非反転入力端子との間、かつ、第3ダイオード63のカソードと第1オペアンプ121の非反転入力端子との間の位置に接続される。第1電圧保持部126の第2端は、保護対象回路20の上側基準電源21に接続される。第1電圧保持部126が接続されることで、第1トランジスタ122に電流Ice1が流れている状態において、第1オペアンプ121の非反転入力端子に入力される電圧を安定させることができる。
【0270】
第2電圧保持部136の第1端は、第2ダイオード62のアノードと第2オペアンプ131の非反転入力端子との間、かつ、第4ダイオード64のカソードと第2オペアンプ131の非反転入力端子との間の位置に接続される。第2電圧保持部136の第2端は、保護対象回路20の下側基準電源22に接続される。第2電圧保持部136が接続されることで、第2トランジスタ132に電流Ice2が流れている状態において、第1オペアンプ121の非反転入力端子に入力される電圧を安定させることができる。
【0271】
[その他の実施形態]
本開示を諸図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づいた種々の変形および修正を行うことが可能であることに留意されたい。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の機能部およびステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、前述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することも可能である。
【0272】
[本開示のまとめ]
本開示には、以下の内容が含まれる。
【0273】
一実施形態において、(1)入力保護回路は、入力電圧に上限電圧が定められている保護対象回路と、入力電圧を出力する出力装置とを電気的に接続する接続線上に備えられる。入力保護回路は、接続線上に備えられる抵抗部を備える。入力保護回路は、抵抗部と保護対象回路との間の接続線上の第1接続点と上限電圧よりも電圧が小さい第1逃し先部とに接続され、上限電圧よりも大きい電圧が入力されることから保護対象回路を保護する第1保護部を備える。第1保護部は、入力電圧が上限電圧よりも大きい場合、抵抗部に電流を流すことで入力電圧を上限電圧以下に低下させ、入力電圧が上限電圧以下の場合、抵抗部に電流を流さない。
【0274】
(2)上記(1)の入力保護回路において、第1保護部は、第1端子を第1接続点に接続し、かつ、第2端子を第1逃し先部に接続する第1トランジスタを含んでもよい。
【0275】
(3)上記(1)から(2)のいずれかの入力保護回路において、第1保護部は、第1入力端子が第1接続点に接続し、かつ、第2入力端子が上限電圧と等しい電圧を出力する参照電源に接続し、かつ、出力端子がトランジスタの第3端子に接続する第1オペアンプを含んでもよい。
【0276】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つの入力保護回路において、保護対象回路に接続される出力装置が複数ある場合、第1接続点と前記第1入力端子との間に第1ダイオードをさらに備え、第2入力端子は、参照電源のかわりに、保護対象回路の基準電源に接続されてもよい。
【0277】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つの入力保護回路において、第1端が基準電源に接続され、かつ、第2端が第1入力端子に接続される電圧保持部をさらに備えてもよい。
【0278】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つの入力保護回路において、保護対象回路に入力できる電圧に下限電圧が定められている場合、抵抗部と保護対象回路との間の接続線上の第2接続点と下限電圧よりも電圧が大きい第2逃し先部とに接続され、下限電圧よりも小さい電圧が入力されることから前記保護対象回路を保護する第2保護部と、をさらに
備え、第2保護部は、入力電圧が下限電圧よりも小さい場合、抵抗部に電流を流すことで入力電圧を下限電圧以上に上昇させ、入力電圧が下限電圧以上の場合、抵抗部に電流を流さなくてもよい。
【0279】
一実施形態において、(7)電気機器は、上記(1)から(6)のいずれか1つの入力保護回路を含む。
【符号の説明】
【0280】
1 :電気機器
10 :入力保護回路
110 :抵抗部
111 :第1抵抗部
112 :第2抵抗部
120 :第1保護部
121 :第1オペアンプ
122 :第1トランジスタ
123 :上側参照電源
124 :第1ベース抵抗部
125 :第1ベース・エミッタ間抵抗部
126 :第1電圧保持部
130 :第2保護部
131 :第2オペアンプ
133 :第2トランジスタ
133 :上側参照電源
134 :第2ベース抵抗部
135 :第2ベース・エミッタ間抵抗部
136 :第2電圧保持部
20 :保護対象回路
201 :第1接続端子
202 :第2接続端子
21 :上側基準電源
22 :下側基準電源
40 :第1逃し先部
50 :第2逃し先部
61 :第1ダイオード
62 :第2ダイオード
63 :第3ダイオード
64 :第4ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12