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特開2023-178805アクチュエータドライバおよびその制御方法、それを用いたカメラモジュール、電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178805
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】アクチュエータドライバおよびその制御方法、それを用いたカメラモジュール、電子機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20231211BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20231211BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20231211BHJP
   H04N 23/57 20230101ALI20231211BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B30/00
H04N5/225 100
H04N5/225 700
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091718
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】前出 淳
【テーマコード(参考)】
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2K005AA20
2K005BA47
2K005BA52
2K005CA02
2K005CA14
2K005CA23
2K005CA40
2K005CA53
2K005CA60
5C122EA06
5C122GA01
5C122GA23
5C122GE05
5C122GE11
5C122HA82
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】可動範囲内に障害物が存在する状況において、消費電力を削減し、または、信頼性の低下を抑制可能なアクチュエータドライバを提供する。
【解決手段】誤差検出器232は、位置指令PREFと、可動部の位置を示すフィードバック信号PFBとの誤差信号errを生成する。補償器234は、誤差にerr応じて、制御信号ctrlを生成する。クランプ回路236は、制御信号ctrlを、許容範囲に収まるようにクランプして、クランプ制御信号ctrl’を生成する。駆動部220は、クランプ制御信号ctrl’に応じた駆動信号をボイスコイルモータに印加する。保護回路238Aは、クランプ回路236に入力される制御信号ctrlを監視し、制御信号ctrlが所定範囲を逸脱した状態が、所定時間にわたり持続するとき、クランプ回路236の許容範囲を狭める。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を位置決めするアクチュエータを駆動するアクチュエータドライバであって、
位置指令と、前記可動部の位置を示すフィードバック信号との誤差信号を生成する誤差検出器と、
前記誤差信号に応じて、制御信号を生成する補償器と、
前記制御信号に応じた駆動信号をボイスコイルモータに印加する駆動部と、
前記アクチュエータの発振の有無を監視し、前記発振が検出されると、前記補償器のゲインを低下させ、発振が収まったら、前記ゲインを元に戻す発振抑制部と、
を備える、アクチュエータドライバ。
【請求項2】
前記発振抑制部は、前記ゲインを低下させた後に、前記発振が収まらない場合、前記ゲインをさらに低下させる動作を繰り返す、請求項1に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項3】
前記発振抑制部は、前記発振が収まったときの前記ゲインの値を保存するメモリを含む、請求項1または2に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項4】
前記発振抑制部は、前記発振を検出した後、前記発振が収まると、インクリメントされるカウンタを含む、請求項1または2に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項5】
前記カウンタの値が所定値に達すると、外部に通知を出力する、請求項4に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項6】
前記発振抑制部は、前記発振を検出した後、前記発振が収まると、インクリメントされるカウンタを含み、
前記発振抑制部は、発振が収まったときの前記ゲインの値を保存するメモリを含み、
前記カウンタの値が所定値に達すると、前記メモリに保存した前記ゲインに固定する、請求項1または2に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項7】
前記発振抑制部は、前記誤差信号にもとづいて、前記発振の有無を監視する、請求項1に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項8】
前記発振抑制部は、前記誤差信号の振幅が所定のしきい値を越えると、前記発振していると判定する、請求項7に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項9】
前記発振抑制部は、
前記誤差信号の絶対値を生成する絶対値回路と、
前記誤差信号の前記絶対値を受けるローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタの出力を前記しきい値と比較する比較器と、
を含む、請求項8に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項10】
前記発振抑制部は、
前記誤差信号を受けるローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタの出力を受けるピークホールド回路と、
前記ピークホールド回路の出力を前記しきい値と比較する比較器と、
を含む、請求項8に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項11】
前記補償器は、比例積分制御器を含む、請求項1または2に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項12】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1または2に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項13】
イメージセンサと、
前記イメージセンサへの入射光路上に設けられた手ブレ補正レンズと、
前記手ブレ補正レンズを含む可動部を位置決めするアクチュエータと、
請求項1または2に記載のアクチュエータドライバと、
を備える、カメラモジュール。
【請求項14】
請求項13に記載のカメラモジュールを備える、電子機器。
【請求項15】
可動部を位置決めするアクチュエータを駆動するアクチュエータドライバの制御方法であって、
位置指令と、前記可動部の位置を示すフィードバック信号との誤差信号を生成するステップと、
補償器によって、前記誤差信号に応じて制御信号を生成するステップと、
前記制御信号に応じた駆動信号をボイスコイルモータに印加するステップと、
前記アクチュエータの発振の有無を監視し、前記発振が検出されると、前記補償器のゲインを低下させ、発振が収まったら、前記ゲインを元に戻す発振抑制部と、
を備える、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクチュエータドライバおよびそれを用いたカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンなどの電子機器に搭載されるカメラモジュールに、光学手ぶれ補正(OIS:Optical Image Stabilizer)の採用が進められている。光学手ぶれ補正付きのカメラモジュールは、イメージセンサ、イメージセンサの撮像面と平行なXY平面内で移動可能なレンズ(手ブレ補正用レンズと称する)、レンズを位置決めするアクチュエータ、アクチュエータを制御するアクチュエータドライバを備える。ジャイロセンサなどのブレ検出手段によってブレが検出されると、アクチュエータドライバは、ブレが相殺されるようにアクチュエータを駆動し、レンズをシフトさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-138984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクチュエータドライバは、フィードバックによる位置制御を行う。具体的には、ホールセンサなどによって可動部の位置を示す位置検出信号を生成し、位置検出信号と、可動部の目標位置を指示する指令値の誤差がゼロに近づくように、アクチュエータに供給する電力をフィードバック制御する。
【0005】
本発明者は、サーボ中に可動部に対して外力、衝撃が加わった場合や、可動部に不具合が発生した場合に、フィードバック系が発振状態に陥ることを認識した。
【0006】
本開示は係る状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、発振を抑制可能なアクチュエータドライバの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、可動部を位置決めするアクチュエータを駆動するアクチュエータドライバに関する。アクチュエータドライバは、位置指令と、可動部の位置を示すフィードバック信号との誤差信号を生成する誤差検出器と、誤差信号に応じて、制御信号を生成する補償器と、制御信号に応じた駆動信号をボイスコイルモータに印加する駆動部と、アクチュエータの発振の有無を監視し、発振が検出されると、補償器のゲインを低下させ、発振が収まったら、ゲインを元に戻す発振抑制部と、を備える。
【0008】
本開示の別の態様は、可動部を位置決めするアクチュエータを駆動するアクチュエータドライバの制御方法に関する。制御方法は、位置指令と、可動部の位置を示すフィードバック信号との誤差信号を生成するステップと、補償器によって、誤差信号に応じて制御信号を生成するステップと、制御信号に応じた駆動信号をボイスコイルモータに印加するステップと、アクチュエータの発振の有無を監視し、発振が検出されると、補償器のゲインを低下させ、発振が収まったら、ゲインを元に戻す発振抑制部と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0010】
本開示のある態様によれば、発振を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、手振れ補正機能を備えるカメラモジュールのブロック図である。
図2図2は、アクチュエータドライバのブロック図である。
図3図3は、実施形態に係るサーボコントローラを備えるアクチュエータドライバのブロック図である。
図4図4は、アクチュエータドライバにおけるゲイン抑制のフローチャートである。
図5図5は、発振抑制部の構成例を示すブロック図である。
図6図6は、第1構成例に係る発振検出部のブロック図である。
図7図7は、第2構成例に係る発振検出部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0013】
一実施形態に係るアクチュエータドライバは、可動部を位置決めするアクチュエータを駆動する。アクチュエータドライバは、位置指令と、可動部の位置を示すフィードバック信号との誤差信号を生成する誤差検出器と、誤差信号に応じて、制御信号を生成する補償器と、制御信号に応じた駆動信号をボイスコイルモータに印加する駆動部と、アクチュエータの発振の有無を監視し、発振が検出されると、補償器のゲインを低下させ、発振が収まったら、ゲインを元に戻す発振抑制部と、を備える。
【0014】
この構成によると、発振を検出すると、補償器のゲインを低下させることにより、発振を抑制できる。そして発振が収まると、ゲインを元に戻すことで、通常のゲインでアクチュエータを制御できる。
【0015】
一実施形態において、発振抑制部は、ゲインを低下させた後に、発振が収まらない場合、ゲインをさらに低下させる動作を繰り返してもよい。
【0016】
一実施形態において、発振抑制部は、発振が収まったときのゲインの値を保存するメモリを含んでもよい。
【0017】
一実施形態において、発振抑制部は、発振を検出した後、ゲイン制御の結果、発振が収まると、インクリメントされるカウンタを含んでもよい。発振が起こった回数をカウントすることにより、アクチュエータの不具合などを検出できる。
【0018】
一実施形態においてアクチュエータドライバは、カウンタの値が所定値に達すると、外部に通知を出力してもよい。これにより、カメラモジュールを備える電子機器は、ユーザに対して、故障している可能性を通知し、部品の修理、交換を促すことができる。
【0019】
一実施形態において、発振抑制部は、発振を検出した後、発振が収まると、インクリメントされるカウンタを含んでもよい。発振抑制部は、発振が収まったときのゲインの値を保存するメモリを含んでもよい。カウンタの値が所定値に達すると、メモリに保存したゲインに固定してもよい。
【0020】
アクチュエータに、恒久的な不具合が発生している場合、ゲインを元に戻す度に発振する状況に陥る可能性がある。この場合、補償器のゲインを発振しないゲインに固定することで、性能を犠牲にして、確実に動作させることが可能となる。
【0021】
一実施形態において、発振抑制部は、誤差信号にもとづいて、発振の有無を監視してもよい。フィードバック信号にもとづいて発振を検出することも可能であるが、その場合、フィードバック信号が振動している場合に、位置指令の変化による振動であるのか、発振による振動であるのかを区別するための処理が必要となる。誤差信号を監視する場合、位置指令とは無関係に、発振の有無を判定できる。
【0022】
一実施形態において、発振抑制部は、誤差信号の振幅が所定のしきい値を越えると、発振していると判定してもよい。
【0023】
一実施形態において、発振抑制部は、誤差信号の絶対値を生成する絶対値回路と、誤差信号の絶対値を受けるローパスフィルタと、ローパスフィルタの出力をしきい値と比較する比較器と、を含んでもよい。
【0024】
一実施形態において、発振抑制部は、誤差信号を受けるローパスフィルタと、ローパスフィルタの出力を受けるピークホールド回路と、ピークホールド回路の出力をしきい値と比較する比較器と、を含んでもよい。
【0025】
一実施形態において、補償器は、比例積分制御器を含んでもよい。
【0026】
一実施形態において、アクチュエータドライバは、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0027】
一実施形態に係るカメラモジュールは、イメージセンサと、イメージセンサへの入射光路上に設けられた手ブレ補正レンズと、手ブレ補正レンズを含む可動部を位置決めするアクチュエータと、上述のいずれかのアクチュエータドライバと、を備える。
【0028】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0029】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0030】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0031】
図1は、手振れ補正機能を備えるカメラモジュールのブロック図である。カメラモジュール100は、イメージセンサ102、手ブレ補正レンズ104、第1アクチュエータ106_1、第2アクチュエータ106_2、アクチュエータドライバ200、位置検出素子110_1,110_2、ブレ検出手段112、CPU(Central Processing Unit)114を備える。カメラモジュール100はその他、オートフォーカス用のレンズ、アクチュエータなどを備えるが、図1では省略している。
【0032】
理解の容易化のため、手ブレ補正レンズ104の光軸方向をZ軸にとるものとする。また、カメラモジュール100が、図1の姿勢にあるときの、左右方向をX軸、上下方向をY軸にとるものとする。X軸を第1軸、Y軸を第2軸とも表記する。
【0033】
手ブレ補正レンズ104は、イメージセンサ102に入射する光の光路上に配置される。イメージセンサ102は、CMOSセンサやCCDであり、手ブレ補正レンズ104を透過した像を撮影する。
【0034】
手ブレ補正レンズ104は、イメージセンサ102の撮像面と平行な面内(XY平面)において、X方向およびY方向に移動可能な状態で支持されている。第1アクチュエータ106_1は、手ブレ補正レンズ104を含む可動部105を第1軸(X軸)方向に位置決めし、第2アクチュエータ106_2は、可動部105を第2軸(Y軸)方向に位置決めする。第1アクチュエータ106_1および第2アクチュエータ106_2は、リニアアクチュエータであり、たとえばボイスコイルモータが用いられる。手ブレ補正レンズ104を含む可動部105は、第1軸方向、第2軸方向それぞれについて、可動範囲が機械的に制約されている。可動範囲の端部を、メカ端と称する。第1軸方向について、正方向と負方向それぞれに、メカ端が存在し、第2軸方向についても正方向と負方向それぞれに、メカ端が存在する。
【0035】
ブレ検出手段112は、カメラモジュール100のブレを検出し、ブレを示すブレ検出信号S1を生成する。ブレ検出手段112はたとえばジャイロセンサであり、カメラモジュール100のX軸周りの角速度ω、Y軸周りの角速度ω、Z軸周りの角速度ωを検出する。手ブレ補正レンズ104のX軸方向の位置が制御することにより、Y軸周りの回転(ブレ)を補正することができ、手ブレ補正レンズ104のY軸方向の位置が制御することにより、X軸周りの回転(ブレ)を補正することができる。ブレ検出信号S1は、少なくとも2軸の角速度ω,ωを含む。
【0036】
アクチュエータドライバ200は、ブレ検出手段112が検出したブレ検出信号S1にもとづいて、ブレが相殺されるように、手ブレ補正レンズ104の変位の目標値を示すターゲットコード(位置指令)を生成する。アクチュエータドライバ200は、内部で生成したターゲットコードにもとづいて、第1アクチュエータ106_1および第2アクチュエータ106_2それぞれに対する駆動信号S2_1,S2_2を生成する。アクチュエータ106_i(i=1,2)は、対応する駆動信号S2_iに応じて手ブレ補正レンズ104を位置決めする。
【0037】
手振れ補正では、手ブレ補正レンズ104を正確に位置決めする必要があるため、フィードバック制御(クローズドループ制御)が採用される。位置検出素子110_1,110_2はそれぞれ、手ブレ補正レンズ104の第1軸方向の位置(変位量)Pおよび第2軸方向の位置(変位量)Pを示す位置検出信号S3_1,S3_2を生成する。位置検出素子110はたとえばホールセンサなどを用いることができる。
【0038】
アクチュエータドライバ200は、手ブレが補正されるように、第1アクチュエータ106_1および第2アクチュエータ106_2を駆動する。具体的には第1モードにおいて、アクチュエータドライバ200は、第1位置検出信号S3_1の示す手ブレ補正レンズ104の位置Pが、ターゲットコードが示す目標位置PX(REF)と一致するように、駆動信号S2_1をフィードバック制御する。同様に、アクチュエータドライバ200は、第2位置検出信号S3_2の示す手ブレ補正レンズ104の位置Pが、ターゲットコードが示す目標位置PY(REF)と一致するように、駆動信号S2_2をフィードバック制御する。
【0039】
以上がカメラモジュール100の全体の構成である。続いて、アクチュエータドライバ200について説明する。
【0040】
図2は、アクチュエータドライバ200のブロック図である。アクチュエータドライバ200は、制御部210、第1駆動部220_1および第2駆動部220_2を備える。ジャイロセンサ112Aは、図1のブレ検出手段112であり、カメラモジュール100の角速度を検出する。
【0041】
制御部210は、位置指令生成部212、第1サーボコントローラ230_1、第2サーボコントローラ230_2、第1位置検出部240_1、第2位置検出部240_2を備える。
【0042】
位置指令生成部212は、第1モードにおいて、ジャイロセンサ112Aが生成するブレ検出信号S1を受け、X軸およびY軸それぞれについて、ブレを相殺することができる手ブレ補正レンズ104の位置を示す位置指令XREF,YREFを生成する。たとえば位置指令生成部212は、X軸周りの角速度ωを積分して所定のゲインを乗算することにより、位置指令XREFを生成する。同様に、位置指令生成部212は、Y軸周りの角速度ωを積分して所定のゲインを乗算することにより、位置指令YREFを生成する。
【0043】
位置検出素子110_1が生成する位置検出信号S3_1は、第1位置検出部240_1に入力される。第1位置検出部240_1は、位置検出信号S3_1にもとづいて、アクチュエータ106_1の可動子の位置を示すフィードバック信号XFBを生成する。
【0044】
同様に、位置検出素子110_2が生成する位置検出信号S3_2は、第2位置検出部240_2に入力される。第2位置検出部240_2は、位置検出信号S3_2にもとづいて、アクチュエータ106_2の可動子の位置を示すフィードバック信号YFBを生成する。フィードバック信号XFB,YFBはそれぞれ、可動部105のX方向、Y方向の位置(X座標,Y座標)を示す。
【0045】
第1サーボコントローラ230_1は、フィードバック信号XFBと位置指令XREFの誤差がゼロに近づくように、制御信号S4_1を生成する。第1駆動部220_1は、制御信号S4_1に応じた駆動信号S2_1を生成する。制御信号S4_1はたとえば電流指令であり、第1駆動部220_1は、制御信号S4_1に応じた電流量の駆動電流を、第1アクチュエータ106_1に供給する。あるいは制御信号S4_1は電圧指令であり、第1駆動部220_1は、制御信号S4_1に応じた電圧レベルの駆動電圧を、第1アクチュエータ106_1に供給する。
【0046】
同様に、第2サーボコントローラ230_2は、位置検出素子110_2が生成する位置検出信号S3_2を、可動部105のY座標を示すフィードバック信号YFBとして受ける。第2サーボコントローラ230_2は、フィードバック信号YFBと位置指令YREFの誤差がゼロに近づくように、制御信号S4_2を生成する。第2駆動部220_2は、制御信号S4_2に応じた駆動信号S2_2を生成する。
【0047】
図2において、アクチュエータ106_1に対応するアクチュエータドライバ200の構成(220_1,230_1,240_1)と、アクチュエータ106_2に対応するアクチュエータドライバ200の構成(220_2,230_2,240_2)は同様である。
【0048】
図3は、実施形態に係るサーボコントローラ230を備えるアクチュエータドライバ200のブロック図である。サーボコントローラ230は、図2の第1サーボコントローラ230_1または第2サーボコントローラ230_2に対応する。図3におけるPは、図2のXまたはYである。
【0049】
位置検出部240は、位置検出素子110からの位置検出信号(例えばホール信号)を、デジタル値に変換するA/Dコンバータ242を含む。位置検出部240はさらに、A/Dコンバータ242の出力を温度に応じて補正したり、線形補償する構成を備えてもよい。
【0050】
サーボコントローラ230は、誤差検出器232、補償器234、発振抑制部250を備える。誤差検出器232は、位置指令PREFと、可動部105の位置を示すフィードバック信号PFBとの誤差信号errを生成する。誤差検出器232は、減算器で構成できる。
【0051】
補償器234は、誤差errに応じて、制御信号ctrlを生成する。補償器234をサーボフィルタとも称する。
【0052】
補償器234は、たとえばPI(比例・積分)制御器234aと、ゲイン回路234bを含む。PI制御器234aは、誤差信号errに比例ゲインkpを乗算した値と、誤差信号errの積分値に積分ゲインkiを乗算した値と、を加算する。PI補償器に代えて、PID(比例・積分・微分制御器)補償器を用いてもよい。
【0053】
補償器234はさらにゲイン回路234bを含む。ゲイン回路234bはPI補償器234aの出力に、ゲインgを乗算し、制御信号ctrlを生成する。ゲイン回路234bは、ゲインgが制御可能に構成される。発振抑制部250は、発振を検出すると、ゲイン回路234bのゲインgを低下させる。
【0054】
駆動部220は、制御信号S4(ctrl)に応じた駆動信号S2を、アクチュエータ106のボイスコイルに印加する。
【0055】
発振抑制部250は、アクチュエータ106の発振の有無を監視する。そして発振抑制部250は、発振が検出されると、補償器234のゲインを低下させる。具体的には、発振抑制部250は、発振を検出すると、ゲイン回路234bのゲインgを低下させる。
【0056】
たとえば発振抑制部250は、発振を検出すると、ゲイン回路234bのゲインを1ステップ低下させる。そして発振の有無を監視し、発振が収まっていれば、ゲインを初期値に戻し、発振が収まっていなければ、ゲインをさらに1ステップ低下させる。発振抑制部250は、発振が収まるまでこの動作を繰り返す。ゲインを、可変範囲の最小値まで低下させても、発振が収まらない場合は、アクチュエータドライバ200の動作を停止してもよい。
【0057】
一実施例において、発振抑制部250は、誤差信号errにもとづいて、アクチュエータ106の発振状態を検出することができる。たとえば発振抑制部250は、誤差信号errの振幅が、所定のしきい値を越えると、発振状態と判定してもよい。
【0058】
以上がアクチュエータドライバ200の構成である。このアクチュエータドライバ200によれば、発振を検出すると、サーボコントローラ230のゲインを低下させることにより、発振を抑制できる。
【0059】
図4は、アクチュエータドライバ200におけるゲイン抑制のフローチャートである。発振の有無が監視される(S100)。そして発振が検出されなければ(S100のN)、監視が継続する(S100)。発振が検出されると(S100のY)、ゲインが低下する(S102)。ゲインを下げた結果、引き続き発振が検出される場合(S104のY)、処理S102にもどり、さらにゲインが下げられる。
【0060】
ゲインを下げた結果、発振が停止した場合(S104のN)、そのときのゲインを保存する(S106)。発振抑制部250は、発振が発生した回数をカウントするカウンタを有しており、カウント値をインクリメントする(S108)。カウント値が所定値Cth以下であるとき(S110のY)、ゲインの値がリセットされ、初期値に戻される(S112)、処理S100に戻る。
【0061】
カウント値が所定値Cthを超えると(S110のN)、ゲインをリセットせずに、処理S100に戻る。
【0062】
図4のフローチャートによれば、発振が繰り返し起こるような状況において、ゲインを、発振が起こらない値に固定することができる。
【0063】
図5は、発振抑制部250の構成例を示すブロック図である。発振抑制部250は、発振検出部252、ゲインコントローラ254、カウンタ256、メモリ258を含む。発振検出部252は、誤差信号errにもとづいて、発振の有無を監視する。発振検出部252は、発振を検出すると、検出信号OSC_DETをアサート(たとえばハイ)する。
【0064】
ゲインコントローラ254は、検出信号OSC_DETのアサートに応答して補償器234のゲインを低下させる。また低下したゲインを、メモリ258に保持する。ゲインコントローラ254は、ゲインを下げた結果、ゲインが収まって、検出信号OSC_DETがネゲートされると、カウンタ256をインクリメントする。カウンタ256の値は、発振した回数を示す。
【0065】
ゲインコントローラ254は、カウンタ256の値、すなわち発振した回数が所定値Cthを超えると、補償器234のゲインを、メモリ258に保持している値に固定する。
【0066】
発振抑制部250は、カウンタ256の値が所定値Cthに達すると、アクチュエータドライバ200の外部に通知を出力してもよい。通知先は、カメラモジュール100が搭載される電子機器のアプリケーションプロセッサであってもよい。通知を受けたアプリケーションプロセッサは、ユーザに、カメラモジュールが故障していることを通知し、さらには部品の修理、交換を促してもよい。
【0067】
続いて発振検出部252の構成例を説明する。発振検出部252は、誤差信号errの振幅が所定のしきい値を越えると、発振していると判定する。
【0068】
図6は、第1構成例に係る発振検出部252aのブロック図である。発振検出部252aは、絶対値回路260、ローパスフィルタ262、比較器264を含む。絶対値回路260は、誤差信号errの絶対値absを算出する。たとえば絶対値回路260は、誤差信号errを2乗して、絶対値absを生成してもよい。ローパスフィルタ262は、絶対値absを平滑化する。これにより誤差信号の検波値detが生成される。比較器264は、検波値detを閾値THと比較し、det≧THとなると、検出信号OSC_DETをアサートする。
【0069】
図7は、第2構成例に係る発振検出部252bのブロック図である。発振検出部252bは、ローパスフィルタ266、ピークホールド回路268、比較器270を含む。ローパスフィルタ266は、誤差信号errの高周波成分を除去する。ピークホールド回路268は、ローパスフィルタ266の出力を受け、そのピーク値peakをホールドする。比較器270は、ピーク値peakをしきい値THと比較し、peak≧THとなると、検出信号OSC_DETをアサートする。
【0070】
(変形例)
上述した実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なことが当業者に理解される。以下、こうした変形例について説明する。
【0071】
(変形例1)
発振検出部252による発振の検出は、誤差信号errにもとづくものに限定されない。たとえば発振検出部252は、フィードバック信号PFBにもとづいて、発振を検出してもよい。
【0072】
(変形例2)
実施形態では、手ブレ補正レンズ104による手ブレ補正機構を有するカメラモジュール100について説明したが、手ブレ補正機構はレンズシフトによるものに限定されず、プリズムを用いた手ブレ補正機構にも本開示は適用可能である。
【0073】
(変形例3)
実施形態では、手ブレ補正機構の位置制御システムを説明したが、本開示はそれに限定されず、オートフォーカス用の位置制御システムにも適用可能である。
【0074】
(変形例4)
実施形態では、ゲイン回路234bのゲインを変化させることにより補償器234のゲインを変化させたがその限りでない。たとえばゲイン回路234bを省略して、PI補償器234aのゲインを可変とし、発振を検出した場合に、PI補償器234aのゲインを低下させてもよい。
【0075】
(変形例5)
実施形態では、補償器234のゲインを段階的に低下させたが、それに代えて、確実に発振が収まるようなゲインまで一気に低下させてもよい。
【0076】
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものであり、したがって、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
100 カメラモジュール
102 イメージセンサ
104 手ブレ補正レンズ
105 可動部
106 アクチュエータ
110 位置検出素子
112 ブレ検出手段
112A ジャイロセンサ
114 CPU
200 アクチュエータドライバ
210 制御部
212 位置指令生成部
230_1 第1サーボコントローラ
230_2 第2サーボコントローラ
220 駆動部
230 サーボコントローラ
232 誤差検出器
234 補償器
234a PI補償器
234b ゲイン回路
240 位置検出部
250 発振抑制部
252 発振検出部
254 ゲインコントローラ
256 カウンタ
258 メモリ
260 絶対値回路
262 ローパスフィルタ
264 比較器
266 ローパスフィルタ
268 ピークホールド回路
270 比較器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7