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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178809
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】送波器
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/22 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
H04R1/22 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091724
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】599161890
【氏名又は名称】NECネットワーク・センサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】山本 潤
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA09
5D019BB10
5D019BB21
5D019FF01
5D019GG11
(57)【要約】
【課題】出力を広帯域化することができる送波器を提供する。
【解決手段】送波器を、円筒型の第1の圧電振動子11と、円筒型の第2の圧電振動子21とを備える構成とする。第2の圧電振動子21は、第1の圧電振動子11と、第1の圧電振動子11の円筒の軸方向に、第1の圧電振動子11と隣接して配置され、第1の圧電振動子11と共振周波数特性が異なる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒型の第1の圧電振動子と、
前記第1の圧電振動子の円筒の軸方向に、前記第1の圧電振動子と隣接して配置され、前記第1の圧電振動子と共振周波数特性が異なる、円筒型の第2の圧電振動子と
を備える送波器。
【請求項2】
前記第1の圧電振動子と、前記第2の圧電振動子は、圧電振動子それぞれの円筒の円の直径方向に振動する、
請求項1に記載の送波器。
【請求項3】
前記第2の圧電振動子は、円筒の軸が前記第1の圧電振動子の円筒の軸の延長線上と重なるように配置されている、
請求項1に記載の送波器。
【請求項4】
前記第1の圧電振動子と、前記第2の圧電振動子の円筒の軸方向の両端に円板をそれぞれ備え、
前記第2の圧電振動子は、円板が前記第1の圧電振動子の円板が接するように配置されている請求項1に記載の送波器。
【請求項5】
前記第1の圧電振動子と、前記第2の圧電振動子に電気信号を並列に印加する信号回路をさらに備える、
請求項1に記載の送波器。
【請求項6】
前記第1の圧電振動子と、前記第2の圧電振動子の円筒の円の直径は互いに異なる、
請求項1から5いずれかに記載の送波器。
【請求項7】
前記第1の圧電振動子と、前記第2の圧電振動子の円筒の円の直径は、同一であり、前記第1の圧電振動子の材料と、前記第2の圧電振動子の材料は、共振周波数が互いに異なる材料特性を有する、
請求項1から5いずれかに記載の送波器。
【請求項8】
前記第1の圧電振動子の円筒の軸方向に配置され、前記第1の圧電振動子および第2の圧電振動子と周波数特性が異なる、円筒型の第3の圧電振動子をさらに備え、
前記第3の圧電振動子は、前記第1の圧電振動子および前記第2の圧電振動子と並列に電気信号が印加される、
請求項1から4いずれかに記載の送波器。
【請求項9】
前記第1の圧電振動子の円筒の円の直径は、前記第2の圧電振動子の円筒の円の直径より大きく、前記第2の圧電振動子の円筒の円の直径は、前記第3の圧電振動子の円筒の円の直径より大きい、
請求項8に記載の送波器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送波器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送波器において、例えば、水平方向の無指向性を有する音波を発するために、円筒型の圧電振動子が用いられることがある。円筒型の圧電振動子では、円筒の直径方向の振動によって、音波が生じる。円筒の直径方向の振動を用いる場合に、圧電振動子が発する音波の帯域は、円筒の直径方向の振動に主に依存する。よって、円筒型の圧電振動子を用いた場合には、広帯域化が難しい場合がある。一方で、例えば、送波器には、広帯域の音波の出力が要求され得る。このため、円筒型の圧電振動子を用いた送波器が出力する音波を広帯域化できることが望ましい。
【0003】
特許文献1の円筒型送波器は、複数の円筒型振動子の配列間隔を調整することによって出力する音波の帯域を広帯域化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-98595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の円筒型振動子は、出力する音波の広帯域化が難しい場合がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、出力を広帯域化することができる送波器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の送波器は、円筒型の第1の圧電振動子と、第1の圧電振動子の円筒の軸方向に、第1の圧電振動子と隣接して配置され、第1の圧電振動子と共振周波数特性が異なる、円筒型の第2の圧電振動子とを備える
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、送波器の出力を広帯域化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態の送波器の構成の例を示す図である。
図2】本発明の実施形態の圧電振動子の振動を模式的に示す図である。
図3】本発明の実施形態の圧電振動子の例を示す図である。
図4】圧電振動子の構成の例を示す図である。
図5】圧電振動子の構成の例を示す図である。
図6】圧電振動子の電圧感度特性の例を示す図である。
図7】本発明の実施形態の送波器の構成の例を示す図である。
図8】圧電振動子の構成の例を示す図である。
図9】本発明の実施形態の送波器の電圧感度特性の例を示す図である。
図10】本発明の実施形態の送波器の電圧感度特性の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について図を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態の送波器100の構成の例を示す断面図である。送波器100は、基本構成として、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21とを備える。第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、円筒型の圧電振動子である。図1は、円筒型の圧電振動子の円筒の軸を含み、円筒の軸方向に平行な面で送波器100を切断した場合における断面図である。また、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21には、信号回路200が接続されている。円筒型の圧電振動子は、圧電材料または圧電材料が積層された板を円筒に加工した圧電振動子である。第1の圧電振動子11は、圧電振動子の円筒の両端に円板12を備える。また、第2の圧電振動子21は、圧電振動子の円筒の両端に円板22を備える。
【0011】
送波器100は、例えば、ソナーにおいて、水平方向に無指向性を有する音波を発生させる際に用いられる。水平方向は、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21の円筒の直径方向である。水平方向は、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21の円筒の側面方向である。よって、水平方向の音波は、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21の円筒の側面が振動することで生じる。第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、信号回路200によって印可される電気信号に応じて振動する。第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21の円筒は、円筒の軸に垂直な切断面が正円でなくてもよい。第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21の円筒は、例えば、円筒の軸に垂直な切断面が円とみなせる形状であればよい。第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21の円筒は、例えば、圧電振動子の円筒を製造する際の加工の誤差の範囲で完全な円筒形状とは異なっていてもよい。
【0012】
第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、圧電振動子それぞれの円筒の直径方向に振動する。図2は、第1の圧電振動子11および第2の圧電振動子21の振動方向を模式的に示す図である。直径方向に振動するとは、円筒の直径が小さくなる方向と、大きくなる方向に円筒が交互に変化することをいう。すなわち、直径方向に振動とは、円筒の径が小さくなる方向と、大きくなる方向に、圧電振動子が交互に振動することをいう。円筒の直径方向の振動は、内外呼吸振動ともいう。円筒の直径方向の振動を用いることで、送波器100は、水平方向に無指向性を有する音波を出力することができる。
【0013】
第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21には、例えば、圧電セラミックスを用いることができる。圧電セラミックスは、例えば、酸化チタン、または酸化バリウムである。圧電セラミックスに用いるセラミックス材料の例は、上記に限られない。また、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21には、高分子材料が用いられてもよい。また、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21には、金属酸化物が用いられてもよい。金属酸化物には、例えば、酸化亜鉛を用いることができる。第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21に用いる材料は、上記に限られない。円筒型の圧電振動子は、板状の圧電材料または圧電材料が成膜された板状の部材を円筒にすることで製造することができる。
【0014】
第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、互いに共振周波数が異なる。第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21には、例えば、同一の材料が用いられる。同一の材料が用いられる場合に、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、円筒の大きさが互いに異なる。円筒の大きさは、例えば、円筒の直径および軸方向の長さである。円筒の軸方向の長さは、円筒の高さともいう。第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、軸方向の長さが同一で、円筒の直径が互いに異なっていてもよい。円筒型の圧電振動子は、圧電材料の材料定数と、圧電振動子の大きさに応じた固有の共振周波数を有する。よって、同一の材料で、円筒の大きさが異なる場合に、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、互いに異なる共振周波数を有する。
【0015】
図3は、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21のそれぞれの構成を模式的に示す斜視図である。また、図4は、第1の圧電振動子11を1つのみ用いた場合の送波器の構成の例を示す断面図である。また、図5は、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21とを組み合わせた場合における送波器の構成の例を示す断面図である。
【0016】
同一の材料を用いる場合に、例えば、第1の圧電振動子11の各寸法は、第2の圧電振動子21よりも大きくなるよう設計される。例えば、第1の圧電振動子11の円筒の内径がa、外径がb、軸方向の長さがcであるとする。また、第2の圧電振動子21の円筒の内径がa、外径がb、軸方向の長さがcであるとする。このとき、第2の圧電振動子21の各寸法は、例えば、a=0.9×a、b=0.9×b、c=0.9×cとなるように設定される。
【0017】
円筒の軸は、圧電振動子の円筒を、断面が正円となるように切断した場合において、円の中心を通る法線と一致する。円筒の内径は、圧電振動子の円筒を、断面が正円となるように切断した場合において、円筒の内側の空洞部分に相当する円の直径である。また、円筒の外径は、円筒の外側の表面に相当する円の直径である。
【0018】
第2の圧電振動子21のそれぞれの寸法が第1の圧電振動子11の0.9倍となるように設定されると、第2の圧電振動子21の共振周波数は、第1の圧電振動子11の共振周波数と比べて、1÷0.9倍分、高周波側にずれる。このように、圧電振動子の大きさが変化することで、共振周波数は、変化する。よって、大きさが異なる2つの圧電振動子をスタック構造とすることで、送波器100から出力される音波の周波数の帯域は、広帯域化する。スタック構造は、例えば、図1のように円板の平面どうしが接するように。圧電振動子を組み合わせた構造である。スタック構造は、積層構造ともいう。また、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21の大きさは、上記の例に限られない。第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21の大きさは、例えば、送波器100に要求される帯域に応じて適宜、設定され得る。また、図1では、第1の圧電振動子11の上に、第2の圧電振動子21を配置しているが、第2の圧電振動子21の上に、第1の圧電振動子11を配置してもよい。
【0019】
円板12および円板22は、円形に加工された金属製の板である。円板12の直径は、例えば、第1の圧電振動子11の円筒の外径bと同一である。円板12の直径は、第1の圧電振動子11の円筒の外径bとほぼ同一であればよい。円板12は、例えば、第1の圧電振動子11の内径aより大きく、外径bよりも小さい円形の板となるように加工されている。また、円板22の直径は、例えば、第2の圧電振動子21の外径bと同一である。円板22の直径は、第2の圧電振動子21の外径bとほぼ同一であればよい。円板22は、例えば、第2の圧電振動子21の内径aより大きく、外径bよりも小さい円形の板となるように加工されている。また、円板12と、円板22は、正円でなくてもよい。円板12と、円板22は、例えば、円とみなせる形状であればよい。円板12と、円板22は、例えば、円板を製造する際の加工の誤差の範囲で完全な円、すなわち正円とは異なっていてもよい。
【0020】
第2の圧電振動子21は、例えば、第1の圧電振動子11の円筒の軸方向に、第1の圧電振動子11と隣接して配置される。第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、例えば、円板12と、円板22の平面が接するように重ね合わされる。第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、第1の圧電振動子11の上側の円板12と、第2の圧電振動子21の下側の円板22の平面が接するように重ね合わされる。ここで、第1の圧電振動子11の上側とは、第1の圧電振動子11の円筒における、第2の圧電振動子21側のことをいう。また、第2の圧電振動子21の下側とは、第2の圧電振動子の円筒における、第1の圧電振動子11側のことをいう。
【0021】
円板12と、円板22の間には、空隙が存在してもよい。また、送波器100は、円板12と、円板22の間に、他の部材をさらに有していてもよい。また、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子の間の円板は、1枚のみであってもよい。すなわち、第1の圧電振動子11の上側の円板12と、第2の圧電振動子21の下側の円板22は、一体の部材であってもよい。
【0022】
第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、例えば、第2の圧電振動子21の円筒の軸が、第1の圧電振動子11の円筒の軸の延長線上と重なるように重ね合わされる。すなわち、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、第1の圧電振動子11の円筒の円の中心と、第2の圧電振動子21の円筒の円の中心が一致するように重ね合わされる。第2の圧電振動子21の円筒の軸が、第1の圧電振動子11の円筒の軸の延長線上と重なる場合に、第2の圧電振動子21の円筒の軸と、第1の圧電振動子11の円筒の軸を延長した線は、互い平行となる。また、第2の圧電振動子21の円筒の軸は、第1の圧電振動子11の円筒の軸の延長線上と完全に重なっていなくてもよい。第2の圧電振動子21は、円筒の軸が第1の圧電振動子11の円筒の軸の延長線上と重なっているとみなせる範囲に配置されていればよい。第2の圧電振動子21の円筒の軸は、例えば、製造時の誤差の範囲で第1の圧電振動子11の円筒の軸の延長線上とずれていてもよい。また、第2の圧電振動子21は、円筒の軸が、第1の圧電振動子11の円筒の軸を延長した線と平行とみなせるように配置されていればよい。
【0023】
信号回路200は、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21に、電気信号を印加する。信号回路200は、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21の円筒の内側と、外側にそれぞれ接続されたリード線を用いた信号線を介して、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21に接続している。リード線は、例えば、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21の円筒の内側と、外側にそれぞれ形成された電極に接続してる。第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21の円筒の内側と、外側に接続されたリード線を介して電気信号が印加されることで、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、円筒の直径方向に振動する。
【0024】
圧電振動子の円筒の内側に接続されているリード線は、例えば、円板12および円板22に開けられた穴を通って、円筒の内側に接続している。円板12および円板22における穴の部分は、例えば、リード線を通した後に、接着剤を用いて封止されている。また、円板12および円板22には、穴に代えて水密コネクタが取り付けられていてもよい。水密コネクタを用いる場合には、信号回路200は、例えば、水密コネクタに接続されている水密ケーブルを介して、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21の円筒の内側に電気信号を印加する。水密コネクタを用いる場合には、水密コネクタと、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21の円筒の内側は、例えば、リード線を用いて接続されている。
【0025】
円板12および円板22の穴または水密コネクタは、例えば、円板12および円板22の円の中心に配置される。穴または水密コネクタが円板12および円板22の円の中心に配置されることで、出力される音波の水平指向性が保たれ得る。穴または水密コネクタが配置される場所は、円の中心とみなせる位置であればよい。円板12および円板22上において穴または水密コネクタを配置する位置は、例えば、加工の誤差の範囲で円の中心からずれていてもよい。また、リード線を通す穴が、円板12および円板22の直径に対して十分に小さい場合には、リード線を通す穴の位置は、円板12および円板22の円の中心以外であってもよい。
【0026】
また、円板と、圧電振動子との間にダンパー材を有する場合には、リード線は、円板と、圧電振動子との間のダンパー材に形成された穴を介して、圧電振動子の円筒の内側に接続されていてもよい。ダンパー材には、例えば、コルク、または弾性ゴムが用いられる。ダンパー材の例は、上記に限られない。
【0027】
信号回路200は、例えば、信号回路200に入力された信号に応じた電圧を、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21に印加する。そして、電圧が印可されている間、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、それぞれ振動する。送波器100がソナーに用いられる場合に、信号回路200に入力される信号は、例えば、送波器100による音波の出力を開始するタイミングと、音波を出力する時間の長さを示す信号である。
【0028】
第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21は、信号回路200に並列に接続されている。よって、信号回路200は、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21に、同一の電気信号を並列に印加する。
【0029】
図6は、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21それぞれの送波電圧感度のグラフの例を示す図である。図6のグラフの例は、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21それぞれを単独で送波器の圧電振動子として用いた場合における送波電圧感度の測定結果である。図6のグラフの例において、縦軸は、送波電圧感度、横軸は、周波数を示している。送波電圧感度は、例えば、送波器から1メートル離れた位置において測定した音波の音圧レベルを示す。図6のグラフの例において、送波電圧感度は、周波数ごとの音圧レベルとして示されている。図6のグラフの例において、音圧レベルが最大となる周波数は、例えば、それぞれの圧電振動子の共振周波数に対応する。
【0030】
図6のグラフの例に示す通り、第2の圧電振動子21の音圧レベルが最大となる周波数は、第1の圧電振動子11の音圧レベルが最大となる周波数に比べて高周波側にシフトしている。第1の圧電振動子11の音圧レベルが最大となる周波数を周波数fとすると、第2の圧電振動子21の音圧レベルが最大となる周波数fは、例えば、f=f÷0.9となる。よって、大きさが異なる2つの圧電振動子を組み合わせることで、送波器100から出力される音波の帯域は、広帯域化され得る。すなわち、大きさが異なる2つの圧電振動子を組み合わせることで、出力レベルが高い周波数の幅が広くなり得る。
【0031】
上記の説明では、2種類の大きさの圧電振動子を用いた送波器100の例を示したが、送波器には、3種類以上の大きさの圧電振動子が用いられてもよい。すなわち、送波器には、互いに異なる共振周波数を有する3種類以上の圧電振動子が用いられてもよい。
【0032】
図7は、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21に加え、第3の圧電振動子31をさらに用いた送波器110の構成の例を示す図である。第3の圧電振動子31は、円筒の両端に円板32を備える。図7の例において、信号回路200は、第1の圧電振動子11と、第2の圧電振動子21と、第3の圧電振動子31に、電気信号を並列に印加する。図8は、図7に示す送波器110において、第1の圧電振動子11、第2の圧電振動子21、および第3の圧電振動子31の寸法の例を示す断面図である。
【0033】
図8の例に示すように、第3の圧電振動子31の円筒の大きさ、例えば、第2の圧電振動子21よりも小さい。例えば、第1の圧電振動子11と第2の圧電振動子21の寸法が送波器100と同じであり、第3の圧電振動子31の円筒の内径a、外径b3、軸方向の長さがcであるとする。このとき、第3の圧電振動子31の大きさは、例えば、a=0.8×a、b3=0.8×b、c3=0.8×cとなるように設定される。それぞれが第1の圧電振動子11の0.8倍の大きさとなるように大きさが設定されると、第3の圧電振動子31の共振周波数は、第1の圧電振動子11の共振周波数と比べて、1÷0.8倍分、高周波側にずれる。よって、円筒の大きさが異なる3つの圧電振動子をスタック構造とすることで、送波器が出力する音波の帯域は、さらに広帯域化し得る。
【0034】
図9は、同一の大きさの円筒のみの圧電振動子を有する送波器と、送波器100と、送波器110の送波電圧感度のグラフの例を示す図である。また、図10は、図9のグラフの例において、ピーク値に対して-3dB、および-6dBに相当する周波数幅を示す図である。図10に示すように、-3dB幅、および-6dB幅ともに、円筒の大きさが異なる圧電振動子が増えるに従って、幅が広くなる。すなわち、送波電圧感度のピーク値幅を基準とした場合に、円筒の大きさが異なる圧電振動子が増えるに従って、帯域幅が広がっている。このため、円筒の大きさが異なる圧電振動子が増えるに従って、送波器から出力される音波の帯域は、広帯域化する。
【0035】
また、上記の説明では、送波器100および送波器110には、用いられている材料が同一であり、圧電振動子の円筒の大きさが異なることで共振周波数が異なる複数の圧電振動子が用いられている。このような構成に代えて、送波器には、圧電振動子の円筒の大きさが同一で材料定数が異なることで共振周波数が異なる複数の圧電共振子が用いられてもよい。また、材料定数と、円筒の大きさの両方が異なることで、共振周波数が異なる複数の圧電振動子が用いられてもよい。
【0036】
また、上記の説明では、信号回路200から入力される信号に基づいて、音波を出力する送波器100および送波器110の例について説明したが、送波器100および送波器110は、音波を受信する受波器としての機能を有していてもよい。受波器として用いる場合には、例えば、水中を伝搬してきた音波が圧電振動子によって電気信号に変換される。
【0037】
本実施形態において、送波器100および送波器110として示す送波器は、共振周波数が異なる複数の円筒型の圧電振動子を、円筒の軸方向に隣接して有している。このような構成を有することで、圧電振動子の円筒の側面方向である水平方向の無指向性を維持しつつ、出力を広帯域化することができる。また、圧電振動子の円筒の端部に円板を有する構成とする場合に、例えば、2つの円筒の円板が互いに接するように円筒型の圧電振動子を組み合わせればよいため、送波器の製造が容易になる。また、圧電振動子の円筒の円板が互いに接するように円筒型の圧電振動子を組み合わせればよいため、圧電振動子間の間隔の変化を抑制することができる。このため、送波器から出力される音波の周波数特性は安定する。よって、本実施形態の送波器は、安定した周波数特性を得つつ、出力を広帯域化することができる。
【符号の説明】
【0038】
11 第1の圧電振動子
12 円板
21 第2の圧電振動子
22 円板
31 第3の圧電振動子
32 円板
100 送波器
110 送波器
200 信号回路
図1
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図10