IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノンファインテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-熱転写シート 図1
  • 特開-熱転写シート 図2
  • 特開-熱転写シート 図3
  • 特開-熱転写シート 図4
  • 特開-熱転写シート 図5
  • 特開-熱転写シート 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178811
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】熱転写シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20231211BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20231211BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20231211BHJP
   C09J 131/04 20060101ALI20231211BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20231211BHJP
【FI】
B32B27/40
C09J7/35
C09J133/14
C09J131/04
B32B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091726
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林田 寿子
(72)【発明者】
【氏名】戸根 健輔
(72)【発明者】
【氏名】川上 正人
(72)【発明者】
【氏名】北城 大造
(72)【発明者】
【氏名】阿竹 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】河野 健一
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK15D
4F100AK15E
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100AK51C
4F100AK68D
4F100AK68E
4F100AL01D
4F100AL01E
4F100AT00A
4F100CB00B
4F100CB00E
4F100EJ42D
4F100JA04A
4F100JA05B
4F100JA11A
4F100JA12B
4F100JK09
4F100YY00A
4F100YY00B
4J004AA08
4J004AB03
4J004CA06
4J004CB03
4J004CE01
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA08
4J040DC031
4J040DE021
4J040DF001
4J040JA09
4J040JB01
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA08
4J040NA10
4J040PA30
(57)【要約】
【課題】
耐擦過性および箔切れ性が良好な保護層を有する熱転写シートの提供。
【解決手段】
基材上に、第1接着層と保護層と接着強化層と第2接着層が順次積層され、前記基材が前記第1接着層から分離可能な熱転写シートにおいて、前記基材は、結晶性樹脂からなるフィルムであり、前記第1接着層は、ガラス転移点が50℃以下の非晶性樹脂で形成されており、前記保護層は、アクリルポリオールとイソシアネート系化合物とで生成される架橋物を含有しており、前記接着強化層は、ビニル系化合物の熱変性物を含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、第1接着層と 保護層と 接着強化層と 第2接着層が順次積層され、前記基材が前記第1接着層から分離可能な熱転写シートにおいて、
前記基材は、結晶性樹脂からなるフィルムであり、
前記第1接着層は、ガラス転移点が50℃以下の非晶性樹脂で形成されており、
前記保護層は、アクリルポリオールとイソシアネート系化合物とで生成される架橋物を含有しており、
前記接着強化層は、ビニル系化合物の熱変性物を含有している、
ことを特徴とする熱転写シート。
【請求項2】
前記結晶性樹脂の融点が100℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記非晶性樹脂のガラス転移点が30℃以上50℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記第1接着層の平均膜厚が0.3μm以上1μm未満であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項5】
前記第2接着層はビニル系化合物を含有する材料からなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項6】
前記ビニル系化合物はカルボニル基を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項7】
前記ビニル系化合物は塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録物の表面に保護層を転写形成する熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録物の表面に透明な保護層を転写して、記録面に耐擦過性を付与する熱転写シートが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材上に保護層と表面層が積層された熱転写シートが開示されている。表面層は接着層として機能し、これを記録物(被転写体ともいう)の表面に接着して保護層と表面層を基材から剥離することで、表面が保護層で覆われた記録物が製造できる。また、保護層は、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸カルボキシアルキル等の重合成分を含む重合物で形成されており、その厚みを10μm以下にすることで、基材から剥離する際の箔切れ性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-167567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の保護層は薄く、耐擦過性が不十分であった。保護層を厚くすることで耐擦過性は改善できるが、保護層が厚いと、転写シートと被転写体との接着物から保護層で覆われた記録物を切り離す際に、保護層が被転写体のエッジに沿って綺麗に切断できず、箔切れ性が悪化する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような構成の熱転写シートを用いる。
【0007】
基材上に、第1接着層と保護層と接着強化層と第2接着層が順次積層され、前記基材が前記第1接着層から分離可能な熱転写シートにおいて、前記基材は、結晶性樹脂からなるフィルムであり、前記第1接着層は、ガラス転移点(Tg)が50℃以下のアクリル樹脂で形成されており、前記保護層は、アクリルポリオールとイソシアネート系化合物とで生成される架橋物を含有しており、前記接着強化層は、ビニル系化合物の熱変性物を含有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐擦過性および箔切れ性に優れた保護層を有する熱転写シートが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の熱転写シートの断面図である。
図2】第1接着層の機能を説明するための説明図である。
図3】尾引きが発生した記録物を被転写体側から見た上面図である。
図4】接着強化層の加熱前後の変化を示す比較図である。
図5】記録物の製造方法を説明するための説明図である。
図6】温度に対する樹脂の体積変化を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
[熱転写シート]
図1に示すように、本発明の熱転写シート10は、基材60上に、第1接着層50、保護層40、接着強化層30、及び第2接着層20が積層されたものである。図2に示すように、熱転写シート10は、第2接着層20を被転写体80へ当接して、第1接着層50と保護層40と接着強化層30と第2接着層20とを被転写体80へラミネート(以下、転写ともいう)し、その後基材60を剥離することで、箔切れ性が良好な記録物100を製造することができる。ここで、箔切れ性とは、熱転写シート10と被転写体80を加熱および加圧して接着した接着物から記録物100を切り離す工程において、第1接着層50と、保護層40と、接着強化層30と、第2接着層20と、が被転写体80のエッジに沿った形状で剥離される際の切り離されやすさを意味する。箔切れ性が悪いと、図3に示すように、第1接着層50から第2接着層20までの切断面にバリ70や尾引き71が発生する。尾引きとは、記録物100を一方の端部から切り離す際に下流側で生じる現象であり、第1接着層50から第2接着層20までの積層物が、被転写体80のエッジから大きく突出して切れることを意味する。
【0012】
[基材]
本発明で使用される基材60は、熱転写シート10のカールを抑制し、搬送性を良好にする役割を果たすと同時に、転写後に剥離することが可能なセパレーターとして機能する。
【0013】
基材60を構成する素材は、熱転写シート10の用途に応じて適宜選択すればよい。ただし、転写時に加熱されることから、耐熱性、寸法安定性、加工の容易さ等を考慮して、樹脂製のフィルムを用いることが好ましい。基材の厚みに関しては、第1接着層や保護層を塗工して積層すること、転写時に加熱されることを考慮して、12μm以上50μm以下であることが好ましい。厚みを12μm以上とすることで塗工時のカールの影響を低減でき、50μm以下とすることで転写時の第2接着層への熱伝導性を上げることができる。
【0014】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン-4フッ化エチレン共重合体等のポリフッ化エチレン系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド系樹脂;塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体樹脂;三酢酸セルロース、セロハン等のセルロース系樹脂;ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリイミド等の、その他の合成樹脂;等からなるフィルムが挙げられる。中でも、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の、融点(Tm)が100℃以上の結晶性樹脂からなるフィルムが、比較的安価で入手しやすい上、耐熱性や寸法安定性に優れているので好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を複合あるいは積層して用いてもよい。
【0015】
また、上記樹脂フィルムには、転写時の熱伝導性を上げる目的で、樹脂フィルム中にシリカ、アルミナ、グラファイト等のフィラーを添加したり、搬送性を向上させる目的で、フィルムの裏面に滑りを改善する補助層を設けてもよい。
【0016】
[第1接着層]
本発明の熱転写シート10は、後述する保護層40と基材60の間に第1接着層50を備えている。
【0017】
第1接着層50は、保護層40と基材60の両方に接着しているが、図2に示すように、熱転写シート10と被転写体80とを加熱および加圧して接着した接着物から記録物100を切り離すと、基材60から剥離して記録物100の最表面に残る。つまり、第1接着層50は、基材上に設けられ、剥離後に基材上に残存する一般的な離型層と機能が異なる。
【0018】
第1接着層50を構成する素材としては、基材60および保護層40の両方に接着できること、さらに、記録物100の最表面に残るという点で高い透明性が要求されることから、非晶性のアクリル樹脂を用いることが好ましい。例えば、ポリメタクリレート、スチレン-アクリル共重合体、ポリエチレンアクリル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステルとビニル化合物の共重合物等が使用できる。中でも、アクリル酸エステルとビニル化合物の共重合物が好ましく、特に、分子内に水酸基を有するアクリルポリオールは、後述する保護層40と同種の素材であり、保護層との接着性が良いことからより好ましく使用できる。
【0019】
また、第1接着層50に使用するアクリル樹脂は、Tgが30℃以上50℃以下であることが好ましい。Tgが30℃以上であれば、第1接着層50が記録物100の最表面に存在してもベタつくことがない。また、Tgを50℃以下とすることで、基材60との接着性が確保できる。なお、Tgが上記範囲であれば、異なるTgを有するアクリル樹脂を2種類以上併用してもよい。
【0020】
第1接着層50の平均膜厚は、0.3μm以上1μm未満であることが好ましい。第1接着層50の平均膜厚が0.3μm以上であれば、基材60および保護層40との接着が良好となり、箔切れ性が改善される。また、第1接着層50の平均膜厚を1μm未満にすることで、傷が目立たなくなり、耐傷性が良好となる。
【0021】
第1接着層50と基材60との接着強度は、30℃(常温)以下で、10N/25mm以上15N/25mm以下であることが好ましい。10N/25mmよりも大きくすることで、記録物100を切り離す際に生じるバリや尾引きが抑制でき、15N/25mmより小さくすることで、記録物100の切り離しが容易に行える。
【0022】
[保護層]
本発明の熱転写シート10は、これを用いて製造される記録物100を、様々な環境変化や、薬品、摩擦等から保護できる保護層40を備えている。また、本発明の熱転写シート10を用いて製造される記録物100は保護層40を通して観察されるため、保護層40は透明であり、その透明度は、JIS K7375に基づく全光線透過率で50%以上、さらに90%以上であることが好ましい。
【0023】
保護層40の素材としては熱可塑性のアクリル樹脂が好ましく、例えば、ポリメタクリレート、スチレン-アクリル共重合体、ポリエチレンアクリル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステルとビニル化合物の共重合体等が使用できる。中でも、アクリル酸エステルとビニル化合物の共重合物が好ましく、特に、分子内に水酸基を有するアクリルポリオールは、イソシアネート系の架橋剤を用いて穏和な条件で架橋することができるので好ましい。
【0024】
なお、保護層40に使用するアクリルポリオールは、後述する疎水性の架橋剤(イソシアネート系化合物)と混合できるように、疎水性のものを選択することが好ましい。
【0025】
また、保護層40に使用するアクリルポリオールのTg(ガラス転移温度)は、40~80℃であることが好ましい。Tgがこの範囲であれば、異なるTgを有するアクリルポリオールを2種類以上併用してもよい。Tgが40℃以上のアクリルポリオールを使用することで耐擦過性が良好となり、Tgが80℃以下のアクリルポリオールを使用することで、熱転写シート10をロール状に巻き取った際に保護層40が基材60から剥離することを抑制できる。
【0026】
さらに、保護層40で使用するアクリルポリオールは、重量平均分子量(Mw)と水酸基価(mgKOH/g)の比率が1,000:1~2,500:1の範囲であることが好ましい。比率を1,000以上にすることで分子間の架橋の間隔が適度になり、保護層に必要な擦過耐性が得られる。また、比率を2,500以下にすることで、熱転写シート10をロール状に巻き取る際に、保護層に割れが発生することを防止できる。
【0027】
また、保護層40には、透明度を損なわない範囲で、シリカやアルミナなどのナノサイズの無機微粒子を添加しても良い。これにより、保護層40の箔切れ性がさらに向上できる。
【0028】
保護層40の厚みは特に限定しないが、8μm以上30μm以下であることが好ましい。保護層40の厚みを8μm以上とすることで耐擦過性が確保でき、保護層40の厚みを30μm以下とすることで箔切れ性が確保できる。
【0029】
[架橋剤]
本発明における保護層40は、主成分であるアクリル樹脂(アクリルポリオール)が架橋剤によって架橋された架橋物を含有している。これにより、保護層40の耐擦過性が向上される。
【0030】
架橋剤としては、アクリルポリオールの水酸基と反応する官能基(-NCO)を有する公知のイソシアネート系化合物が利用できる。イソシアネート系化合物には、ジイソシアネートのような2官能型のポリイソシアネートや、後述する3官能型のポリイソシアネートが存在するが、3官能型のポリイソシアネートの方が、少量で高い架橋度が得られるので好ましい。
【0031】
また、3官能型のポリイソシアネートには、3つに分岐したアルキル鎖の末端に官能基(-NCO)が結合したビウレット型やアダクト型のポリイソシアネート、イソシアヌレート環に付加した3つのアルキル鎖に官能基(-NCO)が結合したイソシアヌレート型のポリイソシアネートが存在するが、イソシアヌレート型のポリイソシアネートの方が構造的に安定しているので好ましい。さらに、イソシアヌレート型のイソシアネートとして、芳香族系のTDI(トルエンジイソシアネート)や、脂肪族系のHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)が存在するが、HDIは耐候性に優れている(変色劣化しない)ので好ましく使用できる。
【0032】
架橋剤の添加量は、アクリルポリオールの水酸基(-OH)と架橋剤の官能基(-NCO)の含有比率が、モル比で1:0.75~1.0となるように調整することが好ましい。この範囲に制御することで耐擦過性に優れた保護層40が形成できる。なお、水酸基(-OH)と官能基(-NCO)の含有量は、以下の計算式より算出できる。
水酸基量(mmol)=アクリルポリオールの使用量(g)×アクリルポリオールの水酸基価(mgKOH/g)/KOHの式量(56.1g/mol)・・・式1
NCO量(mmol)=架橋剤の使用量(g)×NCO含有量(%)/NCOの式量(42.0g/mol)×1000・・・式2
【0033】
[接着強化層]
本発明の熱転写シート10は、保護層40と第2接着層20との間の接着強度を向上させるために、保護層40と第2接着層20の間に接着強化層30を備えている。接着強化層30の厚みに制限はないが、薄すぎると接着強度が確保できず、厚すぎると箔切れ性が悪くなるため、0.01μm~1μmの範囲で調整することが好ましい。
【0034】
接着強化層30に用いる材料は、特に限定されず公知のものが使用できるが、転写後に接着強化層30が画像上に配置されることから、透明性を有する材料を選択することが好ましい。具体的には、酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル、塩化ビニル等のビニル系化合物が挙げられる。中でも、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体は、保護層40との接着強度に優れているので好ましい。
【0035】
本発明の熱転写シート10は、基材60上に第1接着層50と保護層40と接着強化層30をこの順に形成して積層体を作製した後、得られた積層体に加熱処理を施し、その後、該積層体の接着強化層30上に第2接着層20を形成することで製造できる。加熱処理自体は、保護層40中のアクリルポリオールと架橋剤を反応させる目的で実施されるが、このとき接着強化層30が加熱されることで、架橋後の保護層40(すなわち、アクリルポリオールと架橋剤(イソシアネート系化合物)とで生成される架橋物を含む保護層)と接着強化層30の接着性が向上できる。加熱処理における温度や時間は特に限定されず、アクリルポリオールと架橋剤とが50%以上架橋できれば問題ない。また、第1接着層50、保護層40、接着強化層30、および第2接着層20を形成する装置は特に限定されず、公知のコーターが使用できる。
【0036】
接着強化層30を加熱することで、架橋後の保護層40と接着強化層30の接着性が向上できる詳細な理由は不明である。しかしながら、予め架橋した保護層40(アクリルポリオールとイソシアネート系化合物とで生成される架橋物を含む保護層)の上に接着強化層30を形成すると、保護層40と接着強化層30の接着性が著しく低下する。また、後述するように加熱したビニル系化合物を分析すると、熱変性した物質が確認できることから、この熱変性物が保護層40と接着強化層30の接着性に関与している可能性は高いと推察される。
【0037】
接着強化層30がビニル系化合物の熱変性物を含むことは、加熱前後の接着強化層30を赤外分光法(IR)で測定することで確認できる。例えば、接着強化層30に使用する塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を単独で加熱処理すると、図4に示すような結果が得られる。点線は加熱前の接着強化層30の吸収曲線、実線は加熱後の接着強化層30の吸収曲線であり、基準を1230cm-1のC-O伸縮に基づくピークに合わせると、加熱前後で波形が変化している。具体的には、1230cm-1のピークを基準にした場合の、加熱前の1700cm-1のピーク(X、C=O伸縮)に対する加熱後の1700cm-1のピーク(Y)の相対強度が変化しており、この変化から加熱後の接着強化層30に熱変性物が含まれていることが確認できる。接着強化層30に塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を用いた場合、ピーク(Y)のピーク(X)に対する相対強度が110%以上であれば、架橋物を含む保護層40と第2接着層20との間の接着強度が良好となり、好ましい。
【0038】
また、赤外分光法によるデータ(図4)を観察すると、加熱前後の1700cm-1のピーク強度の変化は、C=O伸縮振動に基づくピークが1710cm-1から1700cm-1へシフトしたことで生じているように見える。つまり、ビニル系化合物の熱変性物は、ビニル系化合物中のカルボニル基の一部が変異したものであり、これが接着強化層30内に生成されたことで接着強化層30自体の性質が変化し、その結果として、架橋した保護層40と接着強化層30の接着性が改善されたのではないかと考えられる。なお、接着強化層30中のビニル系化合物の熱変性物は、熱転写シート10の断面を斜めに切断し、その切断面を顕微赤外分光分析計を用いて測定することで直接確認することも可能である。
【0039】
[第2接着層]
本発明の熱転写シート10は、転写により被転写体80と接着するため、接着強化層30上に第2接着層20を有する。第2接着層20の厚みは、薄すぎると接着性が確保できず、厚すぎると箔切れ性に影響があるため、0.01μm~1μmの範囲で調整することが好ましい。
【0040】
第2接着層20に用いる材料は、特に限定されず公知のものが使用できるが、転写後、第2接着層20が画像上に配置されることから、透明性を有する材料を選択することが好ましい。また、製造した熱転写シート10をロール状に巻き取る際に、第2接着層20の基材60への貼り付きを防止するために、第2接着層20にはTgが室温以上、熱転写温度以下である材料を用いることが好ましい。
【0041】
具体的には、酢酸ビニル、ポリオール、ポリビニルアセタール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース、オレフィン、スチレン、ユリア、メラミン、フェノール、レゾルシノール、エポキシ、ポリウレタン、シリコーン、ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、イソシアネート、クロロプレンゴム、二トリルゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリサルファイド、ブチルゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、変性シリコーンゴム、ウレタンゴム、シリル化ウレタンなどの樹脂系接着剤;ケイ酸ソーダ等の水ガラス系、セラミックス系などの無機系接着剤が挙げられる。これらのうちの1種もしくは複数が併用できるが、接着強化層30との接着性を考慮して、接着強化層30と同じ材料を用いるのがより好ましい。
【0042】
中でも、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含む材料は、熱変性物を含む接着強化層30や後述する被転写体80との接着強度に優れているので好ましい。
【0043】
[記録物]
本発明の記録物100は、被転写体80上に、第2接着層20、接着強化層30、保護層40、第1接着層50が順に積層されたものである。
【0044】
[被転写体]
被転写体80の材質は特に限定されず、公知のものが使用できる。例えば、パルプやコットンなどからなる紙、コート紙やアート紙等のコーティング紙、塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PET-Gなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、ポリエステル系樹脂などのフィルムあるいはカードが挙げられる。また、被転写体80は、これらを単独あるいは積層した複合物であってもよい。
【0045】
[記録物の製造方法]
本発明の記録物100は、図5に示した工程で製造することができる。
【0046】
具体的には、第2接着層20を被転写体80に当接し、熱転写シート10と被転写体80を重ねた状態でヒートローラー90および加圧ローラー91を用いて加熱および加圧して接着する(図5(a)、(b)参照)。その後、剥離ローラー92を用いて基材60を剥離することで記録物100が得られる(図5(c)、(d)参照)。尚、ヒートローラー90の温度は、第1接着層50と基材60の温度が、第1接着層50を構成する非晶性樹脂のガラス転移点(Tga)~基材60を構成する結晶性樹脂の融点(Tmc)の範囲となるように設定することが好ましい。これにより、第1接着層50と基材60の界面に部分的に剥がれが生じやすくなり、熱転写シート10と被転写体80の接着物から記録物100を容易に切り離すことができる。加熱・加圧する装置は特に限定されず、公知のラミネーターが使用できる。
【0047】
[記録物製造時の箔切れ性]
記録物100の製造において、第1接着層50は、熱転写シート10と被転写体80が接着していない領域(a)における第1接着層50と基材60との接着力(A)と、熱転写シート10に被転写体80が接着された領域(b)における第1接着層50と基材60との接着力(B)と、第2接着層20から第1接着層50までの積層物を切断するのに要する力(C)が、A>BおよびA>Cの関係となるように機能する。これにより、記録物100の切り離しが容易に行え、良好な箔切れ性が得られる。
【0048】
これらに限定されないが、領域(a)における第1接着層50と基材60との接着力(A)と、領域(b)における第1接着層50と基材60との接着力(B)と、の関係がA>Bとなる理由については、次のように推察している。
【0049】
領域(b)は、図5(a)および図5(b)に示すように、熱転写シート10と被転写体80とが重ね合わされ、ヒートローラー90および加圧ローラー91によって、加熱・加圧される。その際、熱転写シート10の各層は、それぞれの線熱膨張係数に応じて体積変化するが、第1接着層50と基材60では変化量が大きく異なる。例えば、第1接着層50を後述するアクリルポリオール(非晶性樹脂、ガラス転移点(Tga):35℃)で形成した場合、線熱膨張係数は図6に示すようにαgからαlへと変化し、第1接着層50の体積はTgaを超える領域で大きく変化する。これに対して、基材60にポリエチレンテレフタレート(結晶性樹脂、融点(Tmc):260℃)製の樹脂フィルムを使用した場合、線熱膨張係数αcは一定であることから、基材60の体積はTga以上に加熱されても第1接着層ほど変化しない。このように、熱転写シート10と被転写体80を接着する際に、第1接着層50と基材60が、非晶性樹脂のガラス転移点(Tga)~結晶性樹脂の融点(Tmc)の温度で加熱されると、第1接着層50と基材60の体積変化の差(ΔV)が大きくなり、両者の界面に部分的に剥がれが生じて接着力が低下する。
【0050】
一方、領域(a)は、被転写体80がないので加圧される度合いが低く、ヒートローラー90から熱転写シート10への熱も伝わり難いことから、第1接着層50の温度は領域(b)よりも低くなる。したがって、領域(a)では、第1接着層50と基材60の界面に剥がれが生じることはなく、接着力はほぼ変化しない。このように、領域(b)の接着力のみが低下したことで、A>Bという関係が生じたと考えられる。
【0051】
また、第2接着層20から第1接着層50までの積層物を切断するのに要する力(C)は、領域(a)と領域(b)の境界で弱められており、このことも箔切れ性の改善に寄与したと考えられる。これらに限定されないが、次のように推察している。
【0052】
すなわち、保護層40において、アクリルポリオールが架橋剤と架橋して3次元網目構造が形成されると、樹脂自体は剛直になり、耐擦過性が向上する。その一方で、3次元網目構造が増加すると脆くなりクラックが生じ易くなる。そのため、本発明における熱転写シート10は、加熱および加圧して接着する際に、熱転写シート10と被転写体80が接着していない領域(加熱および加圧されていない領域)(a)と、熱転写シート10に被転写体80が接着された領域(加熱および加圧されている領域)(b)との境界で、保護層40に小さなクラックが発生し易くなり、これを起点として切れ目が生じ易くなったことで、箔切れ性が向上したと考えられる。
【0053】
さらに、上述したようにビニル系化合物の熱変性物を含む接着強化層30は、保護層40と第2接着層20との接着性を向上させ、転写シートに接着された記録物を切り離す際の剥がれを防止し、箔切れ性をよくする。
【0054】
このように、本発明の一実施形態における熱転写シート10は、被転写体80に加熱および加圧して接着する際に、第1接着層50は基材60から剥離しやすく、また第2接着層20から第1接着層50までの積層物は切断しやすくなり、耐擦過性の高い記録物100を箔切れ性よく切り離すことができる。
【実施例0055】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例によっていかなる制限を受けるものではない。なお、以下の記載における「部」、「%」は特に断らない限り質量標準である。
【0056】
[第1接着層形成用塗工液aの調製]
アクリルポリオール(商品名:アクリディック WAU-137-BA 、Tg:35℃、固形分濃度:55.0%、DIC社製)2.5部と、MEK97.5部を加えて第1接着層形成用塗工液aを調製した。
【0057】
[第1接着層形成用塗工液bの調製]
アクリルポリオール(商品名:アクリディック TU-979、Tg:50℃、固形分濃度:65%、DIC社製)2.5部と、MEK97.5部を加えて第1接着層形成用塗工液bを調製した。
【0058】
[第1接着層形成用塗工液cの調製]
アクリルポリオール(商品名:アクリディック AU-7003、設計Tg:20℃、固形分濃度:60%、DIC社製)2.5部と、MEK97.5部を加えて第1接着層形成用塗工液cを調製した。
【0059】
[第1接着層形成用塗工液dの調製]
アクリルポリオール(商品名:アクリディック BL-616-BA、Tg:60℃、固形分濃度:45%、DIC社製)2.5部と、MEK97.5部を加えて第1接着層形成用塗工液dを調製した。
【0060】
[保護層形成用塗工液の調製]
アクリルポリオール(商品名:アクリディック BL-616-BA、Tg:60℃、水酸基価:18mgKOH/g、固形分濃度:45.0%、DIC社製)51.9部(水酸基量:7.49mmol)と、イソシアネート系化合物(商品名:デュラネート TPA-100、NCO量:23.1%、固形分濃度100%、旭化成社製)1.36部(NCO量:7.48mmol)と、MEK46.7部を加えて保護層形成用塗工液を調整した。
【0061】
[接着強化層形成用塗工液の調製]
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(商品名:ソルバインC、固形分:30%、昭和インキ社製)1部に、MEK1部を加えて接着強化層形成用塗工液を調整した。
【0062】
[第2接着層形成用塗工液の調製]
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(商品名:ソルバインC、固形分:30%、昭和インキ社製)1部に、MEK1部を加えて第2接着層層形成用塗工液を調整した。
【0063】
[熱転写シートAの製造]
基材としてPETフィルム(商品名:テトロンG2、融点:260℃、厚さ:25μm、帝人デュポンフィルム社製)を用意し、その上に、第1接着層形成用塗工液aを乾燥後の第1接着層の厚みが0.6μmになるようにグラビアコーター(塗工速度:10m/分、乾燥温度:100℃)を用いて塗工した。次に、第1接着層上に、保護層形成用塗工液を乾燥後の保護層の厚みが12.5μmになるようにグラビアコーター(塗工速度:10m/分、乾燥温度:120℃)を用いて塗工した。次に、保護層上に、接着強化層形成用塗工液を乾燥後の層の厚みが1μmになるようにグラビアコーター(塗工速度:10m/分、乾燥温度:80℃)を用いて塗工した。その後、60℃で5日間加熱処理をおこなった。次に、接着強化層上に、第2接着層形成用塗工液を乾燥後の第2接着層の厚みが1μmになるようにグラビアコーター(塗工速度:10m/分、乾燥温度:80℃)を用いて塗工し、熱転写シートAを製造した。
【0064】
(接着強化層の熱変性物の確認)
接着強化層形成用塗工液をシャーレに入れて80℃で乾燥し、乾燥後の層の厚みが1μmの疑似接着強化層を2つ作製した。その後、一方を60℃で5日間加熱して、これと、加熱しなかったものをIR(製品名:IR Prestige-21、島津製作所社製)で各々200×3回測定し、その平均スペクトルから各々の1710cm-1のピーク強度を求めた。さらに、加熱しなかったものに対する加熱したものの相対強度を求めることで、接着強化層中の熱変性物の有無を確認した。得られた相対強度は120%であった。
【0065】
[熱転写シートBの製造]
第1接着層形成用塗工液aを第1接着層形成用塗工液bへ変更したこと以外は、熱転写シートAと同様にして転写シートBを製造した。
【0066】
[熱転写シートCの製造]
第1接着層の厚みを0.3μmに変更したこと以外は、転写シートAと同様にして熱転写シートCを製造した。
【0067】
[熱転写シートDの製造]
第1接着層の厚みを1.0μmに変更したこと以外は、転写シートAと同様にして熱転写シートDを製造した。
【0068】
[熱転写シートEの製造]
保護層の厚みを8.0μmに変更したこと以外は、転写シートAと同様にして熱転写シートEを製造した。
【0069】
[熱転写シートFの製造]
保護層の厚みを20.0μmに変更したこと以外は、転写シートAと同様にして熱転写シートFを製造した。
【0070】
[熱転写シートGの製造]
第1接着層形成用塗工液Aを第1接着層形成用塗工液cへ変更したこと以外は、熱転写シートAと同様にして転写シートGを製造した。
【0071】
[熱転写シートHの製造]
第1接着層の厚みを0.2μmに変更したこと以外は、転写シートAと同様にして熱転写シートHを製造した。
【0072】
[熱転写シートIの製造]
第1接着層の厚みを1.5μmに変更したこと以外は、転写シートAと同様にして熱転写シートIを製造した。
【0073】
[熱転写シートJの製造]
第1接着層形成用塗工液Aを第1接着層形成用塗工液dへ変更したこと以外は、熱転写シートAと同様にして転写シートJを製造した。
【0074】
[熱転写シートKの製造]
第1接着層を形成しなかったこと以外は、転写シートAと同様にして熱転写シートKを製造した。
【0075】
(実施例1)
熱転写シートAの第2接着層20を被転写体80であるPVCカードに当接し、熱転写シートAと被転写体80を重ねた状態でヒートローラーを用いて加熱加圧して接着し、その後、基材60を剥離することで記録物Aを製造した。ヒートローラーの設定温度は180℃、搬送速度は30mm/sであった。尚、この条件の下でPVCカードのみを通すと、カード上面の表面温度は100℃まで上昇した。
【0076】
(評価1:保護層の耐擦過性)
テーバー摩耗試験(製品名:ロータリーアブレーションテスタ TS-2、東洋精機製作所社製)を用いて、回転速度:60rpm、荷重:500g、摩耗輪:CS-10Fを試験条件として記録物Aの保護層の耐擦過性を評価した。得られた結果を表1に示す。表内の「耐擦過性」における「〇」は摩耗輪を2,000回以上回転させても印字面が削られなかったことを示し、「△」は摩耗輪の回転数が1,000回以上2,000回未満で印字面が削られたことを示し、「×」は摩耗輪の回転数が1,000回未満で印字面が削られたことを示す。
【0077】
(評価2:箔切れ性)
被転写体に熱転写シートを加熱圧着した後、基材を剥離させる際に非接着部を角度90°で引張り、被転写体側に残ったカード端部からはみ出ている保護層の長さを評価した。得られた結果を表1に示す。表内の「箔切れ性」における「〇」はカード端部からはみ出ている保護層の長さが0.1mm未満であることを示し、「△」はカード端部からはみ出ている保護層の長さが0.1mm以上0.2mm未満であることを示し、「×」はカード端部からはみ出ている保護層の長さが0.2mm以上であることを示す。
【0078】
(評価3:タック性)
25℃、55%RHの環境下で、記録物Aの第1接着層上にPVCフィルムを重ねて、PVCフィルムの上から荷重0.1kgf/cmで1時間押圧した。その後、PVCフィルムの端部をフィルム面に対して垂直方向に引張り、記録物AからPVCフィルムを剥がすことで第1接着層のタック性を評価した。得られた結果を表1に示す。表内の「タック性」における「〇」は、記録物AからPVCフィルムを剥がす際の力が0.1kgf未満であったことを示し、「△」は記録物AからPVCフィルムを剥がす際の力が0.1kgf以上0.2kgf未満であったことを示し、「×」は記録物AからPVCフィルムを剥がす際の力が0.2kgf以上であったことを示す。
【0079】
(評価4:耐傷性)
鉛筆硬度試験機(製品名:501鉛筆引っかき試験機、Elcometer社製)を用いて、記録物Aの第1接着層の耐傷性を評価した。得られた結果を表1に示す。表内の「耐傷性」における「〇」はBの鉛筆で傷つかなかったことを示し、「△」は2Bの鉛筆で傷つかなかったことを示し、「×」は2Bの鉛筆で傷ついたことを示す。
【0080】
(実施例2~9)
熱転写シートAを熱転写シートB~熱転写シートIとしたこと以外は、実施例1と同様にして記録物B~記録物Iを作製し、耐擦過性、箔切れ性、タック性、耐傷性を評価した。得られた結果を表1または表2に示す。
【0081】
(比較例1~2)
熱転写シートAを熱転写シートJまたは熱転写シートKとしたこと以外は、実施例1と同様にして記録物Jまたは記録物Kを作製し、耐擦過性、箔切れ性、タック性、耐傷性を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
本実施形態の開示は、以下の構成および方法を含む。
【0085】
(構成1)
基材上に、第1接着層と 保護層と 接着強化層と 第2接着層が順次積層され、前記基材が前記第1接着層から分離可能な熱転写シートにおいて、
前記基材は、結晶性樹脂からなるフィルムであり、
前記第1接着層は、ガラス転移点が50℃以下の非晶性樹脂で形成されており、
前記保護層は、アクリルポリオールとイソシアネート系化合物とで生成される架橋物を含有しており、
前記接着強化層は、ビニル系化合物の熱変性物を含有している、
ことを特徴とする熱転写シート。
【0086】
(構成2)
前記結晶性樹脂の融点が100℃以上であることを特徴とする構成1に記載の熱転写シート。
【0087】
(構成3)
前記非晶性樹脂のガラス転移点が30℃以上50℃以下であることを特徴とする構成1または2に記載の熱転写シート。
【0088】
(構成4)
前記第1接着層の平均膜厚が0.3μm以上1μm未満であることを特徴とする構成1~3のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【0089】
(構成5)
前記第2接着層はビニル系化合物を含有する材料からなることを特徴とする構成1~4のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【0090】
(構成6)
前記ビニル系化合物はカルボニル基を含むことを特徴とする構成1~5のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【0091】
(構成7)
前記ビニル系化合物は塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体である、ことを特徴とする構成1~6のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【符号の説明】
【0092】
10:熱転写シート
20:第2接着層
30:接着強化層
40:保護層
50:第1接着層
60:基材
70:バリ
71:尾引き
72:熱転写シートと被転写体の接着物から記録物を切り離す方向
80:被転写体
90:ヒートローラー
91:加圧ローラー
92:剥離ローラー
100:記録物
図1
図2
図3
図4
図5
図6