(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023178813
(43)【公開日】2023-12-18
(54)【発明の名称】色素増感太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01G 9/20 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
H01G9/20 119
H01G9/20 303C
H01G9/20 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091729
(22)【出願日】2022-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(72)【発明者】
【氏名】鹿内 聖純
(57)【要約】
【課題】シールの線幅のばらつきに影響されずに安定したパッケージ化が可能な色素増感太陽電池を提供すること。
【解決手段】色素増感太陽電池は、第1の基板に形成された電極と、電極の上に形成される電子輸送層と、電子輸送層の上に形成され、電子捕集剤と色素とを含む光吸収層と、第1の基板と対向して配置される第2の基板に形成された対向電極と、対向電極の上に形成される触媒層と、光吸収層の上に配される電解液とを備える。電解液は、光吸収層を平らな膜とみたときの主面と同一のサイズ及び同一の形となるように配される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板に形成された電極と、
前記電極の上に形成される電子輸送層と、
前記電子輸送層の上に形成され、電子捕集剤と色素とを含む光吸収層と、
前記第1の基板と対向して配置される第2の基板に形成された対向電極と、
前記対向電極の上に形成される触媒層と、
前記光吸収層の上に配される電解液と、
を具備し、
前記電解液は、前記光吸収層を平らな膜とみたときの主面と同一のサイズ及び同一の形となるように配される、
色素増感太陽電池。
【請求項2】
前記電極と、前記電子輸送層と、前記光吸収層と、前記対向電極と、前記触媒層と、前記電解液とを含む複数のユニットが間隔を空けて配置されている、
請求項1に記載の色素増感太陽電池。
【請求項3】
前記電解液には前記光吸収層と前記触媒層との間を支える支えが形成されている、
請求項1に記載の色素増感太陽電池。
【請求項4】
前記電解液と離れた位置に第1の基板と前記第2の基板との間を支える支えが形成されている、
請求項1に記載の色素増感太陽電池。
【請求項5】
前記電極と、前記電子輸送層と、前記光吸収層と、前記対向電極と、前記触媒層と、前記電解液を封止するとともに前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせるシールをさらに具備する、
請求項1に記載の色素増感太陽電池。
【請求項6】
前記シールは、前記シールの形成時に空けられ、前記第1の基板と前記第2の基板との貼り合わせの後で封止される開口を含む、
請求項5に記載の色素増感太陽電池。
【請求項7】
前記第1の基板、前記第2の基板及び前記シールは、撥水加工されている、
請求項5に記載の色素増感太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、IoT(Internet of Things)デバイス用の電源及びエナジーハーベスティング素子として期待されている。太陽電池は、シリコン系太陽電池、化合物系太陽電池、有機系太陽電池に大別される。有機系太陽電池の中で、色素増感太陽電池(Dye sensitized Solar Cell: DSC)が知られている。色素増感太陽電池は、光を吸収するための色素と、電解液とを用いた酸化還元反応によって発電する。色素増感太陽電池に用いられる電解液には、固体型電解液と液体型電解液とがある。液体型電解液は、例えばODF(One Drop Filling)方式を用いて注入されることがある。注入された電解液を含む色素増感太陽電池のセルは、シールによって封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ODFプロセスの場合、色素増感太陽電池のセルのサイズを小さくしようとするほどにパッケージ化は困難になる。パッケージ化を困難にする要因として、シールの線幅の精度の要求が厳しくなること、セルに設けられる光吸収層の膜厚の精度の要求が厳しくなること、電解液の滴下量の精度の要求が厳しくなることが挙げられる。特に、セルの内部に電解液が充填されていて電解液とシールとが接触している場合、シールの線幅のばらつきによって滴下する電解液の量を変える必要が生じる。つまり、シールの線幅に対する電解液の過不足によってシールが劣化するおそれがある。
【0005】
本開示は、シールの線幅のばらつきに影響されずに安定したパッケージ化が可能な色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様の色素増感太陽電池は、第1の基板に形成された電極と、電極の上に形成される電子輸送層と、電子輸送層の上に形成され、電子捕集剤と色素とを含む光吸収層と、第1の基板と対向して配置される第2の基板に形成された対向電極と、対向電極の上に形成される触媒層と、光吸収層の上に配される電解液とを備える。電解液は、光吸収層を平らな膜とみたときの主面と同一のサイズ及び同一の形となるように配される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、シールの線幅のばらつきに影響されずに安定したパッケージ化が可能な色素増感太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る1つの色素増感太陽電池セルの構成の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線で切断して上から見た上面図である。
【
図3】
図3は、1つのユニットにおける発電原理を説明するための図である。
【
図4A】
図4Aは、色素増感太陽電池セルの製造工程を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、色素増感太陽電池セルの製造工程を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、色素増感太陽電池セルの製造工程を示す図である。
【
図4D】
図4Dは、色素増感太陽電池セルの製造工程を示す図である。
【
図4E】
図4Eは、色素増感太陽電池セルの製造工程を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、電解液の線状の描画滴下について示す図である。
【
図6】
図6は、貼り合わせ時の第1の基板を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1は、一実施形態に係る1つの色素増感太陽電池セルの構成の一例を示す断面図である。
【0010】
一実施形態に係る色素増感太陽電池セル1は、複数の色素増感太陽電池のユニットを含み得る。
図1では、2つのユニットが示されている。ユニットの数は、2つに限定されるものではない。
【0011】
図1に示すように、それぞれのユニットは、第1の基板11と第2の基板12との間に形成される。第1の基板11は、ガラス基板等の透明基板である。第2の基板12は、第1の基板11と対向するように配置される。第2の基板12は、第1の基板11と同様に、ガラス基板等の透明基板である。
【0012】
第1の基板11のそれぞれのユニットの位置には、電極13が形成されている。電極13の間隔は、例えば隣接する電極間でのリーク電流等の影響がない程度の間隔である。電極13は、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)といった透明導電酸化膜(TCO)によって形成される。それぞれの電極13は、対応するユニットのアノード電極として用いられる。ここで、
図1では示されていないが、それぞれのユニットの電極13は、色素増感太陽電池セル1の外部に引き出されている。引き出された電極13には、端子が形成されている。端子からは配線が引き出されている。この配線は、図示しない負荷の一端に接続される。
【0013】
第2の基板12のそれぞれのユニットの位置には、対向電極14が形成されている。対向電極14の間隔は、例えば隣接する電極間でのリーク電流等の影響がない程度の間隔である。対向電極14は、電極13と同様、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)といった透明導電酸化膜(TCO)によって形成される。それぞれの対向電極14は、対応するユニットのカソード電極として用いられる。ここで、
図1では示されていないが、それぞれの対向電極14は、色素増感太陽電池セル1の外部に引き出されている。引き出された対向電極14には、端子が形成されている。端子からは配線が引き出されている。この配線は、図示しない負荷のもう一端に接続される。
【0014】
それぞれのユニットのアノード電極を構成する電極13の上には電子輸送層15が形成されている。電子輸送層15は、酸化チタン(TiOx)の金属酸化膜で構成される。電子輸送層15は、金属よりも高抵抗なTCOで構成される電極13による損失を抑制するために設けられ得る。なお、電子輸送層15は、電極13よりも薄く形成されることが望ましく、例えば10nm以下の薄い層であることが望ましい。
【0015】
それぞれの電子輸送層15の上には、光吸収層16が形成されている。光吸収層16は、電子捕集剤に色素が吸着されて構成された層である。電子捕集剤は、例えば微小な酸化物半導体、例えば酸化チタン(TiO2)の集積体である。色素は、例えばルテニウム(Ru)色素(RU)(N719色素等)等である。電子捕集剤は、酸化チタンに限らず、例えば酸化亜鉛、酸化錫、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化インジウム及びその複合体等であってもよい。また、色素は、N719色素に限らない。例えば、ルテニウム系色素として、N3色素、BlackDyeや、純粋有機色素として、D149、キサンテン、PVK、メロシアニン、オキサジン等が用いられてもよい。
【0016】
それぞれのユニットのカソード電極を構成する対向電極14の上には触媒層17が形成されている。触媒層17は、例えば白金層である。なお、触媒層17は、対向電極14よりも薄く形成されることが望ましく、例えば10nm以下の薄い層であることが望ましい。
【0017】
それぞれのユニットの光吸収層16の上には、電解液18が配されている。つまり、実施形態では、電解液18は、光吸収層16を平らな膜とみたときの主面、すなわち最も面積の広い面と同一のサイズ及び同一の形となるように配される。電解液18の溶媒としては、例えばアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、炭酸エチレン等が用いられ得る。電解液18の溶質としては、例えばヨウ素(I2)、1,2-ジメチル-3-n-プロピルイミダゾリウムアイオダイド(DMPImI)、ヨウ化リチウム(LiI)、4-tert-ブチルピリジン(TBP)等が用いられ得る。
【0018】
さらに、色素増感太陽電池セル1の最外周部には、色素増感太陽電池セル1の電解液18等の他の要素と間隔を空けるようにしてメインシール19が形成されている。メインシール19は、第1の基板11と第2の基板12とを貼り合わせる。つまり、色素増感太陽電池セル1の各要素は、第1の基板11と、第2の基板12と、メインシール19とによって封止されている。メインシール19は、例えば樹脂である。
【0019】
ここで、前述した例ではそれぞれのユニットの電極13及び対向電極14は、色素増感太陽電池セル1の外部に引き出されるとされている。これに対し、隣接するユニットの電極13と対向電極14とが色素増感太陽電池セル1の内部又は外部で接続されてもよい。これにより、隣接するユニットは、直列接続され得る。
【0020】
図2は、
図1のII-II線で切断して上から見た上面図である。
図2に示すように、実施形態では、電解液18は、光吸収層16を平面とみたときの主面と同一のサイズ及び同一の形となるように配される。したがって、電解液18は、メインシール19と接していない。また、隣接する2つのユニットの電解液18同士も接触していない。
【0021】
なお、
図2に示すように、メインシール19の一部には封止部19aが形成される。色素増感太陽電池セル1の製造時には、セルの内部が真空状態のままとならないようにするためにメインシール19の一部に開口が形成される。窒素置換等によってセルの内部が真空状態でなくなった後、
図2に示すようにして封止部19aによってメインシール19に形成された開口が封止される。色素増感太陽電池セル1の製造方法については後で詳しく説明する。
【0022】
図3は、1つのユニットにおける発電原理を説明するための図である。ここで、以下の例では電子捕集剤は酸化チタン(TiO
2)であり、色素はルテニウム(Ru)色素であり、電解液18はヨウ素(I)電解液であるとする。
【0023】
まず、色素増感太陽電池セル1に光が入射すると、その光は基板に形成された色素16aによって吸収される。色素16aは、光を吸収することによって励起する。反応式は、例えば以下の式(1)で示される。
Ru→Ru++e- (1)
励起された色素16aから放出された電子(e-)は、例えば多孔質の酸化チタン(TiO2)で構成される電子捕集剤16bに注入される。電子捕集剤16bに注入された電子は、アノード電極である電極13に移動する。
【0024】
一方、電子(e-)を失った色素16aは、電解液18中の例えばヨウ化物イオン(I-)から、電子を供給される。電解液18中のヨウ化物イオン(I-)は、電子(e-)を色素16bに供給すると三ヨウ化物イオン(I3
-)になる。反応式は、例えば以下の式(2)、式(3)で示される。
Ru+e-→Ru (2)
3I-→I3
-+2e- (3)
このような酸化反応によって生じた三ヨウ化物イオン(I3
-)は、カソード電極である対向電極14から電子(e-)を受け取ろうとする。このとき、対向電極14と電極13との間には、電位差が発生する。対向電極14と電極13との間に負荷が接続されていれば、電極13まで移動した電子は、負荷を通って対向電極14まで移動する。そして、対向電極14に達した電子は、三ヨウ化物イオン(I3
-)によって吸収される。このような還元反応により、三ヨウ化物イオン(I3
-)はヨウ化物イオン(I-)に戻る。反応式は、例えば以下の式(4)で示される。
I3
-+2e-→3I- (4)
以上の酸化還元反応が繰り返されることにより、色素増感太陽電池セル1のユニットは発電する。このような酸化還元反応が起きるためには、励起状態の色素16aのエネルギー準位は、電子捕集剤16bのエネルギー準位よりも高く、かつ、基底状態の色素16aのエネルギー準位は、電解液18のエネルギー準位より低いという関係を要する。
【0025】
以上のようなそれぞれのユニットでの酸化還元反応が繰り返されることにより、色素増感太陽電池セル1は発電する。
【0026】
次に、色素増感太陽電池セル1の製造方法を説明する。
図4A-
図4Eは、色素増感太陽電池セル1の製造工程を示す図である。実施形態では、アノード電極が形成されるアノード基板とカソード電極が形成されるカソード基板とを別々に形成した後、両者を貼り合わせることによって色素増感太陽電池セル1が製造される。
【0027】
まず、アノード基板の製造方法について
図4A-
図4Cを参照して説明する。
図4Aに示すように、ガラス基板等の第1の基板11に、電極13、電子輸送層15及び光吸収層16が順次に形成される。例えば、第1の基板11にITO膜等の透明導電酸化膜及び酸化チタン(TiO
x)膜が順次に成膜された後、電極13及び電子輸送層15の形状に合わせて透明導電酸化膜及び酸化チタン膜がエッチングされる。続いて、それぞれのユニットの電子輸送層15の上に光吸収層16が形成される。このために、まず、電子捕集剤としての例えばTiO
2のペーストがそれぞれのユニットの電子輸送層15の上にスクリーン印刷及びディスペンスといった手法で製膜される。そして、それぞれのユニットの電子輸送層15に成膜されたTiO
2のペーストが300℃-550℃といった高温で60分-240分程度焼成される。さらに、焼成されたTiO
2の膜に色素が沈着される。例えば、TiO2の膜が室温にて色素液に16-48時間程浸漬されることで、色素が沈着される。
【0028】
次に、
図4Bに示すように、ディスペンスといった手法により、色素増感太陽電池セル1の外周部の位置にメインシール19が塗布される。
図4Bでは示されていないが、複数の色素増感太陽電池セル1が第1の基板11に形成される場合には、最外周の色素増感太陽電池セル1を囲むように外周シールが形成され得る。メインシール19及び外周シールの塗布量は、第1の基板11と第2の基板12との貼り合わせがされたときに所望のセルギャップが得られる程度の塗布量である。前述したように、実施形態では、メインシール19は、色素増感太陽電池セル1の外周をすべて囲むようには塗布されずに、一部に開口ができるように塗布される。外周シールが形成される場合もメインシールと同様に、一部に開口ができるように塗布される。
【0029】
次に、
図4Cに示すように、それぞれの光吸収層16の上にだけ、電解液18が塗布される。実施形態では、電解液18は、第1の基板11の上方から滴下する方式で塗布される。ただし、必要量の電解液18の1滴滴下の場合、色素増感太陽電池セル1の個々のユニットのサイズが小さい場合には電解液18が多すぎて光吸収層16からはみ出してしまうことが考えられる。そこで、実施形態では、
図5Aに示すように、必要量の電解液18が少量に分けられて多点滴下される。これにより、必要量の電解液18が光吸収層16に対してほぼ均一な膜状に塗布される。なお、電解液18の塗布は、必ずしも多点滴下に限るものではない。例えば、電解液18の塗布は、
図5Bに示すような線状の描画滴下であってもよい。
【0030】
以上のようにしてアノード基板が作成される。なお、アノード基板の作成は、真空環境下で行われることが望ましい。
【0031】
次に、カソード基板の製造方法について
図4Dを参照して説明する。
図4Dに示すように、ガラス基板等の第2の基板12に、対向電極14及び触媒層17が順次に形成される。例えば、第2の基板12にITO膜等の透明導電酸化膜及び白金膜が順次に成膜された後、対向電極14及び触媒層17の形状に合わせて透明導電酸化膜及び白金膜がエッチングされる。このようにして、カソード基板が製造される。なお、カソード基板の作成は、真空環境下で行われることが望ましい。
【0032】
アノード基板及びカソード基板が製造された後、
図4Eに示すようにして、アノード基板とカソード基板とがメインシール19を介して貼り合わされる。実施形態では、それぞれのユニットにおける電解液18の滴下量のばらつきが少ないので、第1の基板11と第2の基板12との貼り合わせによって、電解液18は、光吸収層16の上に均一に広がる。
【0033】
ここで、実施形態では、貼り合わせは、真空環境下で行われる。
図6は、貼り合わせ時の第1の基板11を上から見た図である。
図6では、第1の基板11に6個の色素増感太陽電池セルが形成された色素増感太陽電池モジュールが示されている。この場合、第1の基板11には、6個の色素増感太陽電池セルを囲むように外周シール20が形成されている。また、それぞれの色素増感太陽電池セルは、8個のユニットを含んでいる。
【0034】
このような場合において、色素増感太陽電池セルの内部が真空状態といった低圧力状態で第1の基板11と第2の基板12とが貼り合わせられた場合、第1の基板11の自重等による撓みによって色素増感太陽電池セルの中央付近に配されたユニットが潰れてしまい、中央付近のユニットのセルギャップが周辺のユニットのセルギャップに比べて狭くなってしまうことが起こり得る。セルギャップが狭くなったユニットについては、電解液18の漏れ出しが発生し、漏れ出した電解液18が隣接するユニットの電解液18やメインシール19と接触してしまう可能性が生じる。電解液18とメインシール19の接触は、メインシール19の劣化を引き起こす要因となり得る。
【0035】
これに対し、実施形態では、
図6に示すように、それぞれのユニットのメインシール19に開口19bが設けられているとともに、外周シール20にも開口20aが設けられている。これらの開口19b及び開口20aにより、例えば第1の基板11と第2の基板12とが貼り合わせられた後に例えば窒素置換が行われることによって色素増感太陽電池セルの内部を真空状態でなくすことができる。これにより、色素増感太陽電池セルの中央付近に配されたユニットが潰れてしまうことが抑制される。したがって、電解液18の漏れ出しも抑制され、結果としてメインシール19の劣化も抑制され得る。
【0036】
ここで、
図4Eの説明に戻る。第1の基板11と第2の基板12とが貼り合わせられた後、メインシール19が硬化される。例えば、メインシール19が紫外線硬化樹脂であれば、紫外線の照射によってメインシール19が硬化される。さらにその後、メインシール19の開口19bに例えば紫外線硬化樹脂による封止材が塗布された後、紫外線が照射されて封止材が硬化されて封止部19aが形成される。なお、第1の基板11に外周シール20が形成されている場合には、メインシール19と同様に例えば紫外線の照射によって硬化される。このようにして、色素増感太陽電池セル1の製造が完了する。
【0037】
以上説明したように一実施形態によれば、光吸収層16の上にだけ電解液18が配される。つまり、電解液18は、光吸収層16の平らな膜とみたときの主面、すなわち最も面積の広い面と同一のサイズ及び同一の形となるように配される。この場合、電解液18がメインシール19と接しない。したがって、電解液18によるメインシール19の劣化が抑制され得る。また、本実施形態によれば、メインシール19の線幅に応じて滴下する電解液18の量を変える必要もない。これにより、安定したパッケージ化が行われ得る。
【0038】
また、光吸収層16の上にだけ電解液18が配されるので、ユニットの間も仕切りによって仕切られる必要がない。ユニットの間の仕切りが不要なので、ユニットの配置の間隔を狭くすることもできる。結果として、小型な色素増感太陽電池セル1が提供される。
【0039】
さらに、電解液18の滴下は、少量の多点滴下又は描画滴下によって行われる。これにより、滴下された電解液18が光吸収層16の上に均一に広がる。
【0040】
[変形例]
実施形態の変形例を説明する。実施形態では、電解液18が薄い膜状に必要な量だけ形成されているために、第1の基板11の自重等による撓みに起因する電解液18の漏れ出しは起こりにくい。一方で、
図7Aに示すように電解液18の中に光吸収層16と触媒層17との間を支えるように支え21が設けられていることにより、第1の基板11の撓みが抑えられ、より電解液18の漏れ出しの可能性が低減され得る。支え21としては光吸収層16に混入される微小粒子、例えばシリカが利用され得る。つまり、予めシリカが混入されたTiO
2が光吸収層16として用いられることでシリカが支え21として機能し得る。
【0041】
また、支え21は、電解液18に混入されるものに限らない。例えば、
図7Bに示すように、支え21は、ユニットの外に第1の基板11と第2の基板12とを支えるように形成されてもよい。この場合の支え21にもシリカが用いられてよい。
図7Bに示す支え21は、メインシール19を形成するためのシール材にシリカを混入しておくことで形成される。このようにしておくことで、メインシール19の形成と同一プロセスで支え21が形成され得る。なお、
図7Aで示したユニットの内部の支え21及び
図7Bで示したユニットの外部の支え21は、同時に用いられてもよい。
【0042】
さらに、仮に電解液18が漏れ出した際の電解液18との接触が防止されるように、光吸収層16以外の各箇所に撥水加工が施されてもよい。光吸収層16以外の各箇所は、例えば第1の基板11の第2の基板12との対向面、第2の基板12の第1の基板11との対向面、メインシール19といった箇所を含み得る。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0044】
1 色素増感太陽電池、11 第1の基板、12 第2の基板、13 電極、14 対向電極、15 電子輸送層、16 光吸収層、16a 色素、16b 電子捕集剤、17 触媒層、18 電解液、19 メインシール、20 外周シール、21 支え。